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あさコラム vol.16
感染症エクスプレス@厚労省 2016年8月5日
神頼み
こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。
先日、米国フロリダ州マイアミ市のダウンタウンで、地元で蚊に刺されてジカ
ウイルスに感染した方が10名以上、確認されました。
リオ五輪が開幕したブラジルでは、未だにジカウイルスやデング熱、黄熱の感
染の心配も尽きません。
アジア、中南米を中心に、世界各地で蚊媒介ウイルス感染症が流行しています。
私たち厚生労働省も、検疫所の検査体制の整備や流行状況などの情報提供に努
めてまいりますが、海外に渡航される方は、渡航先の衛生状況を確認するととも
に、蚊にはぜひご注意していただきたい。
流行地に渡航された皆さんが蚊に刺されないように、ウイルスに感染しないよ
うにと、コルコバードのキリスト像をTVで見るたびに心から祈るばかりです。
(もちろん、国内でも、蚊に刺されないように、ウイルスに感染しないようにと、
祈っております)
まさに「神頼み」ですが、まだウイルスや細菌が知られていない時代、感染症
は疫病神として祀りあげられていました。
特に天然痘は「疱瘡神」として祀られ、症状が軽く済むようにと祈りを捧げた
ということが知られています。
疱瘡神は別名、芋神とも呼ばれ、この神を祀った社寺が日本各地にありますが、
先の週末、こうした寺社のひとつである長昌寺(横浜市金沢区)へ行ってまいり
ました。
長昌寺には天然痘除けの神様で知られる芋神様(芋観世音)が祀られ、通称、
芋観音と呼ばれています。
この芋観音、戦国時代末期に時の地頭や村人たちによって観音堂が建てられた
のですが、昭和11年(1936年)頃、横浜海軍航空隊の開設にあたり、別当寺であ
る長昌寺に移されました。
その昔、芋観音の池の水を用いると、天然痘が癒え、瘢痕がきれいに治ったと
評判になり、「疱瘡除けの観音様」として広く信仰されたそうです。
江戸時代には、相模国や武蔵国などの近隣諸国から天然痘の瘢痕で悩む人々で
賑わったとのこと。
旧東海道の程ヶ谷(保土ヶ谷)宿跡から分岐する古道にある「ほうそう守神富
岡山芋大明神江之道」との道標からも、当時の様子がうかがえます。
ちなみに、写真に写っている芋神様の前の狛犬は、天保7年(1836年)の作品
です。
う~ん、歴史を感じますねぇ。
天然痘については、種痘(ワクチン)の普及やWHO(世界保健機関)天然痘根絶
計画の取り組みにより、昭和55年(1980年)5月にはWHOが天然痘の根絶を宣言す
るに至りました。
しかし、ヒトのウイルス感染症で根絶されたのは、この天然痘のみ。
私たちは次から次へと、新興・再興感染症のリスクに晒される日々を送り続けて
います。
こうした新興・再興感染症が起こらないこと、さらには、今般のリオ五輪で無事
にわが国の皆さんが帰国できることを、一生懸命に芋神様にお願いしてまいりまし
た。
ちなみに、この芋神様、お詣りすればいかなる願いごとも叶えられ、容貌を美し
くしてくださるということです。
乞うご期待!
長昌寺
芋観音水屋
芋神様の前の狛犬
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