第1回ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会議事録

労働基準局安全衛生部労働衛生課

日時

令和6年3月29日(金)13:00~

場所

中央合同庁舎5号館17階共用第9会議室(東京都千代田区霞が関1-2-2)

議題

  1. (1)職場のメンタルヘルス対策の現状等について
  2. (2)その他

議事

議事内容
○夏井産業保健支援室長補佐 それでは定刻を過ぎておりますが、これより「ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会」を開催したいと思います。本日は大変お忙しい中、皆様には御参集いただきまして誠にありがとうございます。座長が選出されるまでの間、事務局にて議事進行を担当させていただきます、私、労働衛生課の夏井でございます。よろしくお願いいたします。それでは、まずはじめに安全衛生部長の小林より御挨拶を申し上げます。
○小林安全衛生部長 安全衛生部長の小林でございます。本日は皆様お忙しい中、御参集を頂きまして、本当にありがとうございます。また日頃より、労働安全衛生行政につきまして御理解と御支援を賜りまして、この場を借りて厚く御礼を申し上げます。
 労働者が職業生活の全ての期間を通して、心身ともに健康で働くことができるようにするためには、事業者の方がメンタルヘルス対策を進めていくというのが非常に重要になっています。これは、高齢化が進んでいる中で、ますます重要性を増していると思います。事業場におけるメンタルヘルス対策につきましては、メンタルヘルス不調の未然防止、一次予防の強化等の観点で、平成27年12月にストレスチェック制度が導入されておりまして、この制度に基づいて、種々の取組が進められておるところでございます。
 一方、令和4年度の精神障害の労災支給決定件数は過去最も多い700件を超えており、年々増加をしているところでございます。また、メンタルヘルス対策に取り組む事業場の割合は、50人以上の規模の事業場では9割を超えているので、かなり良い状態だと思っていますが、一方、30~49人規模では約7割、10~29人規模では約6割で、規模が小さくなるにつれてメンタルヘルス対策の取組は低調になっている状況でございます。
 最近の動きといたしましては、昨年6月16日に閣議決定されました「骨太の方針2023」の中で、メンタルヘルス対策の強化等の働き方改革を一層進めることとされております。
 また、皆さん御案内のとおりでございますけれども、平成26年に労働安全衛生法が改正されまして、その改正法の中には、改正法の施行後5年を経過した場合において、検討を行って、必要があると認めるときには、その結果に基づいて必要な措置を講ずるということが附則で規定されているところです。
 こうしたことを踏まえまして、ストレスチェック制度等の事業場のメンタルヘルス対策について検討を行うために、皆様方に御参集をお願いいたしまして、この検討会を開催する次第でございます。お集まりいただきました皆様方は、それぞれ専門的な御知見をお持ちでいらっしゃいますので、是非、専門的なお立場から活発に御議論いただければと思います。本日は是非よろしくお願いいたします。
○夏井産業保健支援室長補佐 それでは、報道関係者の皆様にお願いでございます。カメラ撮りはここまでとさせていただきます。続きまして、オンラインで御参加いただいている構成員の皆様に、御発言の方法などを御説明させていただきます。会議中、御発言の際は「手を挙げる」ボタンをクリックし、座長の指名を受けてから、マイクのミュートを解除し御発言をお願いいたします。御発言終了後は、再度マイクをミュートにしてくださいますようお願い申し上げます。また、議題に関しまして御賛同いただく際には、カメラに向かって「うなずいていただく」ことで、「異議なし」の旨を確認させていただきます。
 それでは、本日の出席者を御紹介申し上げます。構成員の先生方を、資料1の名簿の順に御紹介申し上げます。私のほうでお名前をお呼び申し上げますので、簡単に御挨拶を頂ければと思います。公益社団法人日本精神科病院協会政策委員会委員長、新垣様でございます。
○新垣構成員 新垣といいます。日本精神科病院協会というところの立場でまいりました。普段は、どちらかというとメンタルでお休みになる方の診断書、それからまた、職場等のやり取りなどをやっております。よろしくお願いします。
○夏井産業保健支援室長補佐 ありがとうございます。続きまして、公益社団法人日本精神神経学会産業保健に関する委員会委員長、井上様でございます。
○井上構成員 井上幸紀と申します。どうぞよろしくお願いいたします。今回は、日本精神神経学会の産業保健に関する委員会から御指名を頂きまして参加させていただきます。もともとは大阪公立大学の精神科におりまして、大阪のさんぽセンターと職域に関わる仕事をさせていただいております。どうぞよろしくお願いいたします。
○夏井産業保健支援室長補佐 ありがとうございます。続きまして、産業医科大学産業生態科学研究所産業精神保健学研究室教授、江口様でございます。
○江口構成員 皆様、こんにちは。産業医科大学の江口でございます。私自身は職場のメンタルヘルスの研究をしている身でございまして、その一方で今回のこの検討会におきましては、1つは14次防の評価を担当させていただいているという点と、あとは産業医としての実務も専属で10数年やっておりましたので、そういったところから役割を果たしていければと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
○夏井産業保健支援室長補佐 ありがとうございます。続きまして、全国中小企業団体中央会常務理事、及川様でございます。
○及川構成員 及川です。よろしくお願いします。中小企業の実態を踏まえて発言をしていきたいというふうに思っておりますので、よろしくお願い申し上げます。
○夏井産業保健支援室長補佐 ありがとうございます。続きまして、日本商工会議所産業政策第二部長、大下様でございます。
○大下構成員 日本商工会議所、大下と申します。どうぞよろしくお願いいたします。及川構成員同様、中小企業団体からの参加でございます。地方の企業、中小企業の実態を踏まえて、この制度の取組について意見を申し上げていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○夏井産業保健支援室長補佐 ありがとうございます。続きまして、独立行政法人労働者健康安全機構山形産業保健総合支援センター所長、神村様でございます。
○神村構成員 御紹介いただきました神村です。こんにちは。日本医師会常任理事として産業保健の担当をしておりますので、先生方には大変お世話になっております。今日もどうぞよろしくお願いいたします。
○夏井産業保健支援室長補佐 ありがとうございます。続きまして、東京大学大学院医学系研究科デジタルメンタルヘルス講座特任教授、川上様でございます。
○川上構成員 川上でございます。長いこと職場のメンタルヘルスの研究と実践の支援をさせていただいてきました。今は、東京大学の所属以外に、岡山の一般財団法人淳風会という所で理事長もさせていただいておりまして、労働衛生機関で働いております。メンタルヘルスの問題、どんどん複雑になってきておりまして、この検討会、とても大事だと感じています。ちょうど2年前にWHOが職場のメンタルヘルスの対策ガイドラインを出し、また、同時にWHOとILOが Policy Briefという、その使い方に関する手引を出していますが、こういう国際的な動向も進んでおりますので、この検討会では、そうした側面も考慮に入れながら、よりよいメンタルヘルス対策につなげることができればというふうに思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
○夏井産業保健支援室長補佐 ありがとうございます。続きまして、東邦大学名誉教授/一般社団法人日本産業精神保健学会理事長、黒木様でございます。
○黒木構成員 黒木でございます。私は大学病院を2016年に退官しまして、その後は(月)、(水)、(金)、(土)と外来、一応臨床をやっております。(火)、(木)は9つぐらいの企業と労働局に関わっております。どうぞよろしくお願いいたします。
○夏井産業保健支援室長補佐 ありがとうございます。続きまして、一般社団法人日本経済団体連合会労働法制本部統括主幹、坂下様でございます。
○坂下構成員 経団連の坂下でございます。日頃は基準法、安衛法、国際労働等々を担当しております。どうぞよろしくお願いいたします。
○夏井産業保健支援室長補佐 ありがとうございます。続きまして、公益社団法人日本医師会副会長、茂松様でございます。
○茂松構成員 ただいま御紹介いただきました、日本医師会副会長の茂松でございます。産業保健を担当しておりまして、日本医師会に来るまでは、大阪府医師会で会長を6年間務めさせていただきました。その間、大阪の産業保健センターに関わらせていただきました。その関係上、何か御意見ができればと思っております。どうぞよろしくお願い申し上げます。
○夏井産業保健支援室長補佐 ありがとうございます。続きまして、日本産業ストレス学会理事、島津様でございます。
○島津構成員 御紹介ありがとうございます。島津と申します。私は日本産業ストレス学会、また公認心理師の立場として参加をさせていただいております。普段は企業で心理職としての産業保健活動、メンタルヘルス活動全般に携わっております。この会では公認心理師の立場から、現場から若しくは現状の課題感のところから是非、御発言等をさせていただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○夏井産業保健支援室長補佐 ありがとうございます。続きまして、立教大学兼任講師、砂押様でございます。
○砂押構成員 労働法専攻です。労働者のプライバシーの問題について研究してきておりまして、その観点からの参加ということでございます。どうぞよろしくお願いいたします。
○夏井産業保健支援室長補佐 ありがとうございます。続きまして、公益社団法人日本精神神経科診療所協会常任理事、高野様でございます。
○高野構成員 高野知樹と申します。よろしくお願いいたします。日頃は精神医療と産業保健に関わってきております。この会では日本精神神経科診療所協会という診療所の協会として参加させていただきます。厚生労働省のウェブサイトの「こころの耳」の委員長をさせていただいております。よろしくお願いいたします。
○夏井産業保健支援室長補佐 ありがとうございます。続きまして、公益社団法人日本公認心理師協会常務理事、種市様でございます。
○種市構成員 日本公認心理師協会の種市康太郎と申します。どうぞよろしくお願いいたします。私は公認心理師協会の産業労働分野委員会の委員長を務めていると同時に、普段は桜美林大学で心理学を教えたり、あるいは公認心理師の養成に関わっています。また、実際に企業や組織に対してストレスチェックの職場集団分析結果を用いて、職場環境改善にも取り組んできておりますので、そのような現場の状況も含めてお話ができればと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○夏井産業保健支援室長補佐 ありがとうございます。続きまして、公益社団法人日本看護協会常任理事、中野様でございます。
○中野構成員 中野でございます。日本看護協会の常任理事をしておりまして、精神保健、産業保健を担当しております。日本看護協会では、働く方々の健康管理が今、非常に優先性の高い課題だと考えております。その意味で、看護職がそこでしっかりと役割を果たせるように頑張ってまいりたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
○夏井産業保健支援室長補佐 ありがとうございます。続きまして、近畿大学法学部教授/一般社団法人日本産業保健法学会副代表理事、三柴様でございます。
○三柴構成員 近畿大学、産業保健法学会の三柴と申します。私は今のウエスタンの、西洋の潮流とは異なる対応が必要だと思っています。具体的には日本の組織とか現場に合った、個人と組織の価値観とか役割期待の相性に着目した対策が今後、必要になってくると考えております。よろしくお願いいたします。
○夏井産業保健支援室長補佐 ありがとうございます。続きまして、一般財団法人京都工場保健会理事、森口様でございます。なお、森口様におかれましては、今、音声が御発言できない環境だというふうに伺っておりますので、御挨拶は割愛させていただきます。続きまして、キヤノン株式会社人事本部安全衛生部副部長健康支援室長、矢内様でございます。
○矢内構成員 キヤノン株式会社、矢内です。よろしくお願いいたします。保健師です。私は企業の中で約30年間、健康支援業務やメンタルヘルス施策に関わってきました。今回は企業の現場の立場から積極的に意見や検討に参加させていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
○夏井産業保健支援室長補佐 ありがとうございます。続きまして、日本労働組合総連合会労働法制局長、山脇様でございます。
○山脇構成員 連合で労働法制局長を務めております山脇と申します。安全衛生分科会の委員も務めております。労働者保護の観点からしっかり参加してまいりたいと思いますので、御指導をよろしくお願いいたします。
○夏井産業保健支援室長補佐 ありがとうございます。続きまして、一般社団法人日本精神科産業医協会共同代表理事/日本CHRコンサルティング株式会社代表取締役、渡辺様でございます。
○渡辺構成員 渡辺でございます。よろしくお願いいたします。私は精神科産業医としまして、黒木先生と一緒に精神科産業医協会の共同代表理事をしております。それと同時に、2008年に立ち上げました日本CHRコンサルティングという会社、これは職場のメンタルヘルスを支援する機関でございます。そこの会社を通しまして、ストレスチェックのプログラムを提供する側でもあります。厚労省様が今、中小企業に向けて提供されているプログラムを、実は私の会社で提供しております。また、コールセンターもうちの会社で引き受けておりますので、実際に運用される会社がどんなことで困っておられるかというようなことを、つぶさに聞いているところでございます。実際に活用している側とプログラムを提供する側、両方の立場から皆様方と意見が交換できればと思っております。よろしくお願いいたします。
○夏井産業保健支援室長補佐 ありがとうございました。続きまして、本日の出欠状況でございます。北里大学の堤様におかれましては、途中からの御出席と伺っております。また、及川様、茂松様におかれましては、途中退席予定と伺っております。また、オンラインで参加いただいている皆様でございます。及川様、大下様、黒木様、堤様は後ほど。それから中野様、三柴様、森口様におかれましては、オンラインでの御参加ということでございます。
 次に、事務局を御紹介いたします。安全衛生部長の小林でございます。
○小林安全衛生部長 改めまして、よろしくお願いいたします。
○夏井産業保健支援室長補佐 労働衛生課長の松岡でございます。
○松岡労働衛生課長 よろしくお願いいたします。
○夏井産業保健支援室長補佐 産業保健支援室長の大村でございます。
○大村産業保健支援室長 よろしくお願いいたします。
○夏井産業保健支援室長補佐 中央労働衛生専門官の小野でございます。
○小野中央労働衛生専門官 小野でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
○夏井産業保健支援室長補佐 続きまして、お手元の資料の確認をいたします。お手元の端末のほうに、あらかじめ資料をインストールさせていただいております。また、オンラインで参加の皆様におかれましては、事前にメールのほうで資料を送付させていただいております。資料ですが、議事次第、「資料1、ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会開催要綱」です。「資料2、職場におけるメンタルヘルス対策の現状等」です。それから「資料3、堤構成員提出資料」です。「資料4、ストレスチェック制度の効果・エビデンス」です。資料の不足等がありましたら、事務局までお申し付けください。
 続きまして、開催要綱について御説明いたします。
○大村産業保健支援室長 資料1を御覧ください。開催要綱です。
本検討会の「1 目的」ですが、事業場におけるメンタルヘルス対策については、メンタル不調の未然防止である一次予防の強化等の観点で、平成27年12月にストレスチェック制度が導入され、その制度の推進等を通じて、取組を進めているところです。
 この一方で、精神障害の労災支給決定件数を見てみると、令和4年度で700件超という過去最も多い数字となっております。このような状況から、まだまだメンタルヘルス対策に係る取組が低調であると考えております。こうした中で、「経済財政運営と改革の基本方針2023(骨太の方針2023)」ですが、「メンタルヘルス対策の強化等の働き方改革を一層進め」ることと規定されたところです。これらの状況を踏まえて、ストレスチェック制度を含めたメンタルヘルス対策について、実施状況等を踏まえながら検証するとともに、検証の結果、必要なものについて対応を検討することとしております。
 「2 検討内容」です。(1)ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検証等について、(2)事業場におけるメンタルヘルス対策について、(3)その他関連する事項についてです。
 「3 構成」です。本検討会は、厚生労働省労働基準局安全衛生部長が、本日御参加の構成員の皆様方を参集して開催をさせていただきます。
 「4 検討会の運営」です。本検討会、会議資料及び議事録については、原則として公開とさせていただきます。以上です。
○夏井産業保健支援室長補佐 それでは、次に座長の選出を行います。開催要綱にもありますとおり、座長は構成員の皆様の互選により選出いたします。構成員の方から、推薦はございますでしょうか。
○三柴構成員 三柴ですが、よろしいでしょうか。
○夏井産業保健支援室長補佐 お願いします。
○三柴構成員 川上憲人構成員が適任と考えますが、いかがでしょう。
○夏井産業保健支援室長補佐 ただいま三柴構成員から、川上構成員を座長とする旨の御提案がございました。皆様、御賛同いただけますでしょうか。
(他の委員の賛同)
○夏井産業保健支援室長補佐 ありがとうございます。それでは今後の議事進行につきましては、座長の川上構成員にお願い申し上げます。
(川上構成員座長席へ)
○川上構成員 選出ありがとうございました。三柴先生の御推挙によりまして、座長に着任いたしました川上です。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、本日の検討会の議事は川上が進行させていただきますけれども、今日の議題は、議事次第にありますように、2つありまして、1つは「職場のメンタルヘルス対策の現状等について」、2つ目が「その他」となっております。「その他」では、第1回ですので少し検討会の進め方や様々な御意見を頂きたいと思っております。まずは、議題(1)「職場のメンタルヘルス対策の現状等について」、事務局で資料を御用意いただいておりますので、そちらの説明をお願いできたらと思っております。では、事務局から議題(1)に関する資料を御説明いただけますでしょうか。
○大村産業保健支援室長 それでは説明をさせていただきます。
 構成員の皆様のうち、今、資料1を御覧の方、左下に本型のマークがございます。これがちょうどメニューへ戻る記号になっておりますので、一度クリックをお願いできればと思います。
 メニューに戻っていただきまして、上段の真ん中に、02資料2とございます。こちら、資料2を開いていただきたいと思います。こちらの画面、横にスライドできる形になっております。一番最初が一番左側、スライド2から1つ右にめくっていただくと、2つ目のスライドが見られるという形になっております。
 それでは説明させていただきます。スライド3を御覧いただきたいと思います。左のほうにスライドを3枚送っていただければと思います。「これまでのメンタルヘルス対策に係る経緯」ということで、過去の経緯をまとめてみました。昭和63年9月1日でございますが、「事業場における労働者の健康保持増進のための指針(THP指針)」でございますが、メンタルヘルスケアと心理相談担当者を規定したというところが、現行のメンタルヘルス対策のまず第一歩というところでございます。
 続いて、平成18年3月31日でございますが、労働安全衛生法第69条に根拠をおく指針としまして、「労働者の心の健康の保持増進のための指針」が策定をされております。また、同年4月1日におきましては、改正労働安全衛生法が施行され、それに合わせて2つ目の「・」でございますが、衛生委員会における審議事項に「労働者の精神的健康の保持増進を図るための対策の樹立」ということが追加されております。次のスライドをお願いいたします。
 スライド4でございます。一番上でございます。平成20年4月に第11次労働災害防止計画の策定され、この中の目標として、メンタルヘルスケアに取り組んでいる事業場の割合を50%以上とするという目標が設定をされております。また、平成21年10月には、働く人のメンタルヘルス・ポータルサイトの「こころの耳」が開設をされております。次のスライドをお願いいたします。
 スライド5でございます。上から2つ目でございますが、平成27年12月1日に、現在のストレスチェック制度(改正労働安全衛生法)が施行され、創設されております。以上がこれまでのメンタルヘルス対策に関わる経緯の主な点でございます。
 続きまして、スライド7を御覧いただきたいと思います。「メンタルヘルス対策の体系とストレスチェック」でございます。職場におけるメンタルヘルス対策につきましては、3本の柱からなっております。一次予防がメンタルヘルス不調の未然防止、二次予防がメンタルヘルス不調の早期発見と適切な対応、三次予防が職場復帰支援でございます。また、ストレスチェック制度につきましては、ストレスの状態を把握することでメンタルヘルス不調を未然に防止することを目的としておりまして、一次予防のための仕組みと位置付けられているところでございます。
 続きまして、スライド8を御覧いただきたいと思います。「ストレスチェック制度の実施手順」でございます。労働者の皆さんにストレスチェックを受けていただくということになります。現行では50人以上の事業場では、ストレスチェックの実施が義務付けられております。その結果、高ストレスの労働者の方につきましては本人から面接指導の申出があった場合、医師による面接指導を実施し、また事業者におきましては、医師から意見聴取を行いまして、就業上の措置を実施するということになっております。
 また、この一方で、職場全体としましては、一定規模のまとまりごとに集計・分析、いわゆる集団分析を行い、その結果を踏まえまして職場環境の改善を行っていただくということになっております。現在、こちらの部分につきましては努力義務という定義になっております。いずれにしましても、こういった取組を通じまして、メンタルヘルス不調を未然に防止していくことを進めているということでございます。
 続きまして、スライド9を御覧いただきたいと思います。「第14次労働災害防止計画 一部抜粋」でございます。計画の目標ということで、アウトプット指標を記載してございますが、その中では使用する労働者数50人未満の小規模事業場におけるストレスチェック実施の割合を2027年までに50%以上とするという目標が設定されております。また、重点事項ごとの具体的取組ということで、一番下になりますが、集団分析、職場環境改善の実施及び小規模事業場におけるストレスチェックの実施を促進するための方策を検討し、取り組むということであり、この検討会も含まれるというところでございます。
 続きまして、スライド10を御覧いただきたいと思います。「経済財政運営と改革の基本方針2023」、いわゆる骨太の方針2023でございますが、令和5年6月16日に閣議決定をされております。この中におきましては、メンタルヘルス対策の強化等の働き方改革を一層進めながらということで、政府全体としましても、メンタルヘルス対策の強化について規定をしているというところでございます。
 続きまして、スライド12を御覧ください。「精神障害の労災補償状況」でございます。左側の棒グラフでございますが、精神障害に係る労災の認定件数につきましては、残念ながら年々増加している傾向にございまして、令和4年度には710件というデータになっております。また、右側の表でございますが、出来事別に決定件数を見てみますと、パワーハラスメントが一番多い類型になっております。
 続きまして、スライド13を御覧ください。こちら、協会けんぽによる集計でございますが、「傷病手当金 傷病別件数の年度別構成割合」でございます。一番下に、「精神及び行動の障害」による件数がございます。令和3年度におきましては32.96%ということで、全体の3分の1弱が「精神及び行動の障害」による件数というところでございます。
 続きまして、スライド14をお願いいたします。「メンタルヘルス不調により休業または退職した労働者がいる事業所の割合」ということで、「連続1か月以上休業した労働者」または「退職した労働者」、いずれかに該当する労働者がいた事業所の割合を並べております。こちらは、いずれの項目につきましても、残念ながら年々増加するという傾向が確認できるところでございます。
 続きまして、スライド15を御覧ください。「メンタルヘルス不調により休業または退職した労働者の割合」ということで、「連続1か月以上休業した労働者」、「退職した労働者」の割合を記載しております。グラフの青の「連続1か月以上休業した労働者」でございますが、増加する傾向があるというところでございます。
 続きまして、スライド16を御覧ください。「職業生活で強い不安、悩み、ストレスを感じている労働者の割合」でございます。直近、令和4年におきましては、82.2%の方が職業生活で強い不安、悩み、ストレスを感じているという回答となっております。
 なお、令和3年と4年で数字の断続がございますが、これについては、調査の設問の形式を変更したということがございます。また、「強い不安、悩み、ストレス」の内容につきまして、複数回答でございますが3つまで回答を頂いておりまして、その結果を見ますと、「仕事の量」、「仕事の質」、「対人関係」、「仕事の失敗、責任の発生」等、こういった項目で「強い不安、悩み、ストレスをお感じになっている労働者の方が非常に多いということが明らかになっております。
 続きまして、スライド17をお願いいたします。「職業生活で強い不安、悩み、ストレスを感じている労働者の割合」を事業所の規模別で記載をしております。一番左が82.2%ということで、これが合計の値となっております。「10~29人」というように事業所規模別で並べてみますと、若干のバラツキはございますが、大きな傾向等は確認できなかったというところでございます。
 続きまして、スライド18を御覧ください。同じく「職業生活で強い不安、悩み、ストレスを感じている労働者の割合」で、業種別に集計をしております。一番左が82.2%ということで、合計の値となっております。業種別に見ますと、若干バラツキがあるというところでございます。一番小さい値としては「生活関連サービス業、娯楽業」の65.9%、一番多いところで見ますと、「医療、福祉」の88.3%というところでございます。
 続きまして、スライド20を御覧ください。「メンタルヘルス対策の実施状況」についてでございます。上の折れ線グラフでございますが、事業所の規模別でメンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の割合をまとめております。青い線、「50人以上」の部分でございますが、9割を上回る水準にあるというところでございます。その一方、「10~29人」では6割に満たないというところでございます。
 続いて、右下のグラフを見ていただきたいと思います。「メンタルヘルス対策に取り組んでいない理由」ということで内訳を見てみますと、「該当する労働者がいない」「取り組み方が分からない」「専門スタッフがいない」。こういったところが各々の事業所の規模でも回答としては非常に多いというところでございます。
 続きまして、スライド21を御覧ください。令和3年令和4年でございますが「ストレスチェック制度の実施状況」ということで、1として「ストレスチェック実施状況」、2として「集団分析の実施状況」、3として「集団分析結果の活用状況」、いわゆる職場環境改善の実施状況等をまとめております。基本的な傾向としましては、事業所の規模にかかわらず、ストレスチェック実施状況が数値が一番高く、次に集団分析、次に集団分析結果というところで、実施状況についてはバラツキがあるというところでございます。
 続きまして、スライド23をお願いいたします。「ストレスチェック実施状況」を「事業場規模別・年次推移」でまとめております。一番左の図でございますが、過去、平成27年12月の制度創設から各年度ごとの実施状況ということで、全事業場分をまとめてございます。上段の右のほうが「49人以下」の事業場、下の段が「50人以上」の事業場で各々規模別にまとめております。「50人以上」の規模の事業場におきましては、法令でストレスチェックの義務付けが掛かっているということもありまして、ほぼ100%というような実施状況でございます。上段の「49人以下」の事業場、赤枠で囲った部分の左側でございますが、まだ4割弱程度ということで、義務付けされていないこともあり、努力義務というのもあり、こういう状況にあるということでございます。
 続きまして、スライド24でございます。「ストレスチェックを実施していない理由」。ストレスチェックが努力義務でございます50人未満、49人以下の事業場からの回答でございます。こちらにつきましては、50人未満の事業場であり、「実施義務がなかった」、あるいは「ストレスチェック制度の義務化を知らなかった」。こういう回答を、実施していない理由として挙げられているというところでございます。
 続きまして、スライド25でございます。「ストレスチェック結果に基づく面接指導の実施状況と評価」でございます。左側の円グラフでございますが、事業場のほうに面接指導を申し出る労働者の方の割合を確認した結果でございます。全体の4分の3以上で「5%未満」であるという回答を得ております。右の上でございますが、「面接指導を受けない理由」、これは労働者の方に確認をしておりますが、その理由としましては「医師による面接指導がどのように役立つのかが分からなかった」あるいは「必要性を感じなかった」「時間がなかった」。こういう回答が多いというところでございます。
 なお、下のグラフでございますが、「面接指導を受けたことの評価」ということで、実際に面接指導を受けられた労働者の方、約7割程度の方から、「とても有効」、あるいは「いくらか有効」という評価を頂いているという現状にございます。
 続きまして、スライド26を御覧ください。「ストレスチェック結果の集団分析の実施状況」ということでございます。左側が規模別の実施状況でございます。50人以上の事業場ではストレスチェックの実施義務が掛かっておりますが、こちらの規模では80%を超える実施状況というところでございます。
 右側でございますが、実施しなかった理由ということで各々回答を得ておりまして、一番多かったのが「集団分析の必要性を感じなかった」、次に「時間的余裕がなかった」「マンパワーや経費を確保できなかった」。こういった理由を挙げられております。
 続きまして、スライド27を御覧ください。「集団分析結果に基づく職場環境改善の実施状況」でございます。左側が「職場環境改善の実施状況」でございます。
 すみません。先ほどスライド26の集団分析のところで、実施義務が掛かっていると申し上げましたが、失礼しました。こちらは「努力義務」でございます。
 職場環境改善も、集団分析と同じく努力義務でございますが、こちらにつきましては約50%以上で実施をしているというところでございます。実施しなかった理由としましては、一番多かったのが「職場・部署ごとのリスク・課題を洗い出すのが困難だった」という回答が一番多うございまして、そのほか「必要性を感じなかった」「職場・部署ごとのリスク・課題を洗い出す時間的余裕がなかった」、あるいは「マンパワーや経費が確保できなかった」などの回答が挙げられております。
 続きまして、スライド28を御覧ください。「集団分析結果に基づく職場環境改善の具体的内容」でございます。一番上、「職場で行う研修の充実や従業員に対する情報提供態勢等の改善」ということでございます。また2つ目、「心の健康を含む社内相談窓口の開設や機能の拡充」、それから6つ目、「作業環境や職場環境の見直し」、7つ目、「職場内の相互支援態勢の見直し」。こういった項目につきまして、職場環境改善が具体的に実施されているという回答が多いということでございます。
 続きまして、スライド29を御覧ください。左側の図でございますが、職場環境改善を行った事業場に所属する労働者が、「改善された」と認識している割合は2割以下でございまして、職場環境改善が労働者側にはなかなか伝わっていない現状が認められるところでございます。また、職場環境改善があったと労働者の方が認識しているケースでは、労働者による職場環境改善の効果は高く、約8割の方が有効であるというように評価をされております。
 続きまして、スライド30を御覧ください。「ストレスチェック制度に対する事業者側の認識」でございます。「社員のメンタルヘルスセルフケアへの関心度の高まり」「メンタルヘルスケアに理解ある風土の醸成」「職場の雰囲気の改善」、こういった項目につきまして、ストレスチェック制度に対する事業者の方の認識としては回答として得られているというところでございます。
 なお、いずれにしましても、グラフの青の「職場環境改善を実施した事業場」とグラフのピンクの「職場環境改善を実施していない事業場」を比べてみますと、青のほうが数字が大きいというところでございますので、やはりストレスチェック制度につきましては、職場環境改善を実施した場合においては、事業者側の方につきましてもこういった認識をお持ちになりやすいというところでございます。
 続きまして、国による支援制度の説明でございます。スライド32を御覧いただきたいと思います。「産業保健活動総合支援事業」でございます。こちらの事業につきましては、事業場における産業保健活動の活性化を図るため、ストレスチェック制度を含めたメンタルヘルス対策、治療と仕事の両立支援等の取組に対して、事業者、産業医等産業保健スタッフに対する研修等を実施し、あるいは情報提供等を行う。また、小規模事業場に対する産業保健サービスの提供、助成金等の各種支援を行っております。労働者健康安全機構におきまして、産業保健総合支援センター、また地域産業保健センターを設置して、これらの業務を展開しているというところでございます。
 続きまして、スライド33を御覧ください。「働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」」でございます。こちらの「こころの耳」におきましては、職場のメンタルヘルスに関する総合的な情報提供を行うとともに、メンタルヘルス不調、過重労働による健康障害に関する相談窓口を設置するという事業になっております。毎年度、多くの方からアクセスを頂いております。
 続きまして、スライド34を御覧ください。「厚生労働省版ストレスチェック制度実施プログラムの概要」でございます。ストレスチェック制度が事業者の皆様に円滑に導入いただけるように、ストレスチェックの受検、ストレスチェックの結果出力、集団分析等を行う「厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム」を無料で公開しております。単年度で大体3万件余りダウンロードしていただいております。
 スライド35、36、37が「個人結果の例」、また、スライド38以降に「集団分析結果の例」、アウトプットの様式をお付けしております。御参照いただければと思います。
 資料2の説明につきましては以上でございます。
○川上座長 御説明ありがとうございました。あと資料は3と4があり、それぞれ順番に御説明いただきます。堤構成員が、資料3の説明をする予定になっており、もう入られましたか。堤構成員、御発言大丈夫でしょうか。もしよろしければ、資料3の御説明をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
○堤構成員 堤でございます。声は、聞こえますでしょうか。
○川上座長 大丈夫です。
○堤構成員 すみません。本日は、当方のこちらの事情でそちらに伺うことができず、オンラインでの参加になります。また、遅れまして大変申し訳ございませんでした。それでは、資料3に挙げた「ストレスチェック制度の効果検証に係る文献情報」ということで、情報提供いたします。約10分ほどですが、どうぞお付き合いください。
 次のページをお願いいたします。ここに挙げたのは、今回のまとめに使った資料です。逐一御紹介するものではありませんが、3つ目ぐらいに「令和3年度厚生労働省委託事業:ストレスチェック制度の効果検証に係る調査等事業報告書」というのがあります。この中の構成員の皆様、多くの方がこの報告書は御覧いただいている部分があるかと思いますが、今回、労働衛生課から、この報告書近辺で新しく増えた情報等をまとめてくださいという御依頼でしたので、ここを中心にお話したいと思っています。1行目に少し書いておりますが、抽出させていただいた情報は学術論文、研究報告書といったような形で、一応ストーリーが完結したものを御紹介するようにしました。一般に言われているナラティブレビューや、解説といったような文書、学会発表の抄録とかまとめというものは、今回は省いておりますことを御了承いただければと思います。
 それでは、次のページをお願いいたします。まず、「ストレスチェック制度の効果」で幾つか、いわゆるレビュー、報告書、文献を挙げております。4つありますが、少し御紹介します。一番上が、常勤の労働者3,800名ほどにインターネット調査をした結果です。前向きのフォローをされており、ストレスチェックを受検し、かつ、職場環境改善も経験したという労働者の方々は、そのどちらも経験されていないという労働者の方々に比べて、ストレス反応が有意に低下をしていたというような報告です。これは、学会誌に報告がなされております。
 次は、IT関連企業に勤務する労働者370人程度の方々に、ここはその企業の強みをいかして、ストレス状態や関連要因、個別な結果、アドバイスというものをすぐに労働者の方に返すようなシステムを組んだものです。そうしますと、導入前に比べて、ストレス対処の特徴への気づき、対処の意欲が増進したといったような効果が見られているような報告です。こちらも学会誌に挙がっております。
 3つ目です。規模は小さくなりますが、食品製造業の労働者の方々にストレスチェックを行った後に、規模が小さいということもあったと思いますが、全社員の面談を行い、社員へのストレスセルフケアの研修、管理監督者研修を加えて実施されました。製造業という特徴もあるかもしれませんが、身体的ストレス反応が改善したという報告です。ただ、心理的ストレス反応の改善は見られておりません。
 最後は、規模がもっと小さくなります。今回の構成員となっております森口先生等が実施された研究です。本当に小さな事業場で、労働衛生機関が中心となり、皆さんが参加して職場環境改善をやることを、いろいろとアドバイスをしながら介入をされたということです。指標としては、前後の比較で統計学的に有意な変化は認めておられませんが、労働者のインタビュー結果からは、全員参加で達成感ができた、満足感があるといったような肯定的な意見を頂いている報告です。一方で、職場環境改善ということに関しては、担当者の方が少し負担だという報告も挙がっております。
 次のスライドをお願いいたします。ここから2枚は報告書でのもので、御紹介いたします。一番上は、最近の報告書です。新旧職業性ストレス簡易調査票を用いて行った集団分析の事例収集したものです。全体で84事例が集まっております。このうち、職場環境改善におけるアクションプランを実行していたというのは、いわゆる職場環境改善をやったというところが38事例です。うち、報告として学術雑誌に挙がっているものが1本だけあります。これは、先ほど紹介した森口先生等の調査研究です。集団分析結果を職場にフィードバックしていたものを45事例といった形でカウントさせていただいております。後ほど、今回の報告のまとめで少し触れますが、まだまだ論文になっている職場環境改善の事例は少ないといった状況です。
 2つ目です。これは、先ほど御紹介した令和3年度の事業で挙がっていたものです。事業者へのインタビューですが、ストレスチェック制度を行うことで、社員のセルフケアへの関心度が高まったということが53%、メンタルヘルスに理解のある職場風土の醸成があったというのが30%弱という効果を感じております。労働者のほうですが、半数以上がストレスチェック制度の効果として、自身のストレスを意識することになったという報告があります。
 3つ目です。座長の川上先生等の研究報告書から頂いております。ストレスチェックを受検した労働者に対するインターネット調査、医師面接を受けた者における医師面接が有用だったとする方が、2016年で60%、2017年で、やはり57%。また、ストレスチェックを受検して職場環境改善を経験した者における職場環境改善が有用だったとする者が2016年で63%、2017年で59%ということで、5割から6割以上が有用性を感じられていたという御報告です。
 次をお願いいたします。こちらも、同様の報告書から頂いております。生産性が上がるといった報告が挙がっております。2015年~2017年まで、2年間にインターネット調査に参加した2,000人弱の労働者を対象として、やはり前向きに調査をしたものです。ストレスチェック受検で、かつ、職場環境改善の実施を経験したと回答した方々が、そうでない方々に比べて、自己評定ですが、労働生産性の向上ということを報告されております。
 最後です。こちらは、事業場のメンタルヘルス対策が進んだということが挙がっております。ストレスチェック制度を開始した事業場では、開始しなかった事業場に比べて、心の健康づくり計画が進捗をした事業場の割合、メンタルヘルス対策の重要度が増加した事業場の割合、メンタルヘルス対策の方向性が拡充された事業場の割合、早期発見と対応の対策を新規開始した事業場の割合といったところが、それぞれ比較した上で統計学的に有意に増加しております。
 次をお願いいたします。こちらは、ストレスチェックではありませんが、関連の、いわゆる海外でのシステマティックレビューというものがありました。そのエッセンスだけ参考のために持ってきたものです。どちらも2007年の研究ですが、職場環境改善については、研究自体は非常に多いものです。そういう中から系統的にレビューが行われているのですが、上のレビューでは90の研究が精査されたということです。メインのコメントは、2行目に書いています、職場環境改善というのは、セルフケアなどの個人向けのアプローチと比較して、効果が持続しやすいということが報告されております。これは、いわゆる研究論文の結果に基づいて、そういう報告になっております。想像に難くはないと思いますが、環境に、いわゆる大元に対応しますので、そういう状況が生まれるのだろうと思います。
 2つ目のレビューです。規模は小さいのですが、示唆的なコメントをされています。対照群を設定した12の研究のうち、8つの研究で健康指標は改善をしていました。一方で、経営合理化などの状況下での効果は限定的であるといった形で、職場環境改善をいつやってもいいというものではなく、やるときがあるだろうというような適応の限界などについてコメントをされておりました。
 次をお願いします。ここ2、3枚では職業性ストレス簡易調査票、いわゆるストレスチェックで使われている「ツールの妥当性」について御紹介をします。1つ目です。このツールは本当に多くの研究で使われており、現在では150を超える研究で、各種アウトカム、心身のアウトカムとの関連性が確認されているということです。
 2つ目です。職業性ストレス簡易調査票をスクリーニングとして使われると効果があるかということが検討されています。御存じのとおり、特定の疾患のスクリーニングに使うものではありませんが、ここではどういうことをやっているかというと、K6と言われる調査票があり、これが13点以上であると、重症精神障害者相当とされるメンタルヘルス不調者という方々を拾い上げている調査票です。そういう13点以上の方々が、その集団の中に大体13%ぐらいいた集団で、職業性ストレス簡易調査票で高ストレス者を振り分けるようなスクリーニングの操作をすると、スクリーニングされた方々の中にK6の13点以上の方が約半数入っていました。言い換えますと、不調者を効率的に拾い上げるということを示している結果です。
 次のページをお願いします。高ストレス者となった方が、その後どうなったかということも検討されています。上は、ホワイトカラーの男女1万5,000人余りを職業性ストレス簡易調査票で、高ストレス者とそうでない方々を分類し追跡したところ、高ストレス者は、そうでない方に比べて、1か月の疾病休業を発生する方が男性で6.6倍、女性で3倍弱という数字が挙がっております。
 少し解説をしますと、集団寄与危険割合というのがどういう数字かというと、小さい字で書かせていただいていますが、集団全体の疾病罹患リスクにおける、ばく露による罹患リスク上昇の占める割合。少し難しいので、もっと言い換えますと、その集団で高ストレス状態にある方々をなくすと、どれぐらい疾病休業が減るかという数字と取っていただければと思います。いわゆる高ストレス状態ということがなくなりますと、この研究結果では1か月以上の疾病休業をする方が男性、女性で20%弱減るという数字でございました。同様な検討は離職でも行われており、高ストレス者は、そうでない方に比べて、統計学的に有意に離職をされるという数字が挙がっているのが下の研究です。
 次をお願いいたします。ここからは、令和3年度の先ほどの調査研究事業での報告書に挙がっていた「事例」を3つほどピックアップさせていただいております。一番上が、労働者1,000人規模の製造業です。各事業場での監督者を集めたミーティングを実施するなど、ストレスチェックとプラスしてミーティングを行うといったことに効果があり、実施前に比べてメンタルヘルス不調者が5分の1に減少したという事例です。
 2つ目は、中規模事業場です。集団分析の結果の解釈をさんぽセンターのメンタルヘルス対策促進員の助言を受けて、その会社の検討チームで改善案を検討したといったことを行っています。管理監督者も加わっていただき、幾つかの取組をしたところ、コミュニケーションが良くなったり、総合健康リスクが低下したり、メンタルヘルスに理解のある風土が醸成されたと報告されています。
 最後になります。また規模が大きくなり、1,000人規模の製造業です。各事業場の健康管理責任者がストレスチェックの結果を閲覧できる専用システムから算出できる集団分析結果というものが、その当時は全国平均値のみだったのですが、この読み取りをもう少し分かるように支援をしたり、それを基に職場の環境改善をしたりといった工夫を追加することで、身体面の負担が減ったといったことが報告されております。
 最後のスライドを御紹介したいと思います。この報告でのまとめだけ少し報告いたします。報告は、途中で御紹介しましたが、効果評価を行っている研究は、学術論文レベルではまだまだ少ない状況です。その中で比較的、職場環境改善は多くの蓄積があって拾えているのですが、集団分析や、面接指導の効果評価については十分には検討できていないところがありますので、御了解いただければと思います。また、こういう報告は、どうしても効果があったほうが報告をされやすいというバイアスがありますので、その点も十分に考慮に入れて、今後検討していくべきものです。
 一方で、比較的コメントできるものに関しましては、職業性ストレス簡易調査票のツールは、比較的妥当性が高いと言えそうです。今後、効果評価をやることができるかどうかに関しては、もう既に制度化されておりますので、無作為に比較対照を設定する研究は少し難しいだろうと思われます。なので、事例や、無作為ではないけれども比較をした答えがあれば、それは俎上に上がってくるかもしれませんが、本当に科学的にきちんと検証できるかどうかは少し難しい部分があるかと思います。
 途中で、少し各事例を含めて御紹介をしておりましたが、単にストレスチェックをしただけではなく、制度の運用に種々の工夫が見られており、その効果が上がったという報告があり、ストレスチェックの制度の実施方法等を含めた整理をしていくと、私たちはもっとこのことがよく理解できていくのではないかと思います。好ましい結果だけでなく、好ましくない結果も、その原因も整理ができると好ましいのではないかと思います。
 今回は、いわゆる学術論文や研究報告書で御報告をしましたが、先ほども御紹介した実施方法の工夫等については、むしろ会議録や学会発表、解説に情報がまだまだあるようで、今回はそういうものが除かれていることも御理解いただければと思っております。私からは以上です。どうもありがとうございました。
○川上座長 堤先生、どうもありがとうございました。それでは、もう1つ資料がありますので、資料4について事務局から御説明いただいて、その後、質疑に入りたいと思います。
○大村産業保健支援室長 説明させていただきます。「ストレスチェック制度の効果・エビデンス」ということで、スライド2を御覧いただきたいと思います。左側に実施内容ということで入れていますが、「ストレスチェックのみを行った場合」、「ストレスチェックに健康相談を加えて行った場合」、「ストレスチェックに面接指導を加えて行った場合」、「ストレスチェックに集団分析を加えて行った場合」、「ストレスチェックに集団分析と職場環境改善を加えて行った場合」、こういった「実施内容」ごとに、それぞれ「効果の有無」、「得られる効果」、「エビデンス」等を取りまとめていくことができるのではないかと考えています。なお、ストレスチェックについては、50人以上の事業場では義務付け、50人未満の事業場では努力義務となっております。また、集団分析の実施については、職場環境改善と併せて努力義務となっております。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。本検討会の開催要綱を見ると、「ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検証等について」というのが検討内容の1番に上がっていて、これに関連して、事務局のほうで職場のメンタルヘルス対策の現状等についてまとめていただき、堤構成員からストレスチェック制度に関する研究の現状について御説明いただいて、資料4に基づいて今後の検討会の進め方についても事務局から御提案があったところです。構成員の皆様方も、現状や課題について、いろいろなお考えがあると思います。恐らく30分か40分ぐらいお時間が取れるかと思いますので、ただいまの説明に関連して御意見、御質問がある場合は御発言いただけたらと思います。オンラインで御参加の構成員におかれましては、御発言においては挙手をしていただければと思いますが、座長が見逃すことがあるかもしれないので、事務局にも手伝っていただいて、教えていただければと思います。
 それでは、いかがでしょうか。御意見、御質問等を頂きたいと思います。神村構成員、お願いいたします。
○神村構成員 さんぽセンターの所長の立場として発言をさせていただきます。私自身も認定産業医、嘱託産業医で、山形という地方のさんぽセンターの所長です。産業保健に長らく関わっておりますが、地方では産業基盤が脆弱で、中小規模の事業場が多いです。産業保健を推進する、あるいはメンタルヘルス対策を推進するということで、さんぽセンターの担う役割は大きいと大変感じております。
 特に、さんぽセンターはいろいろな団体、組織との連携もありますし、山形では20年ほど前から毎月、産業メンタルヘルス研究会というものを開催して、毎回、固定のメンバーではない20名以上の参加を得て研究会を開催しております。この中で、ストレスチェック制度そのものを取り上げられることは余りないのですが、もう既に、どのように不調者に対応したらいいかというところが最近は大きな問題で、あるいは職場環境をどのように改善していくかというところです。
 今、堤先生に御説明いただいた所にも、職場環境の改善はいろいろできるだろうと思いますが、最後の辺りで、やはり職場ごと、職種ごとにいろいろストレスの状況は違いますので、何らかの支援、アドバイスがあればと感じました。その意味では、さんぽセンターにはメンタルヘルス対策の推進、促進員がこれまであって、職場環境だけの対策促進員だったのですが、4月からはメンタルヘルス対策アドバイザーという名前に変わって、個人のメンタル不調者にも対応するというところが強化されています。
 ただ、何分にも地方のさんぽセンターは陣容が小さいですので、もう少し予算的な支援を頂ければと思います。最後の所が一番言いたい所なのですが、特に、職場環境の改善には外部からの支援というのは有効ではないかと。特に専門職、心理職などの方々のお力も借りて対策を取っていければと現場では望んでおります。以上です。
○川上座長 さんぽセンターの現状と御意見をありがとうございました。オンラインの黒木構成員が手を挙げていらっしゃいましたか。黒木構成員、お願いできますか。
○黒木構成員 堤先生の先ほどの報告、本当に興味深く拝見させていただきました。食品業の会社の全員に面談をされたと。これは誰が面談をされて、それから、心理的・身体的な反応をお聞きになったりということも言われていたと思うのですが、何を基準に判断されたのかということを教えていただければと思います。
○川上座長 堤先生、よろしいでしょうか。
○堤構成員 御質問ありがとうございます。後者のほうから御報告しますと、ちょっと確認はしなければいけませんけれども、恐らく評価のほうは、職業性ストレス簡易調査票の後半部分での身体的・心理的愁訴で把握したのだと、そのように推測しております。その点はまた確認させていただきます。それから、全職員にストレスチェック実施後に面接をしたというのが、どなたがされたかというのは、論文をこの時間内で探せれば、確認して御報告いたします。
○黒木構成員 どうもありがとうございます。
○川上座長 ありがとうございました。今、お話に出ました食品製造業の方は、保健師の方が全者面談をされていたと記憶しております。堤先生のほうで調べて、フィードバックいただければと思います。それから、先にオンラインで三柴先生が手を挙げていらっしゃいます。会場のほうの構成員の先生方も、御発言があるときは早めに手を挙げておいていただければ、私が見付けてまいりますので、まず三柴先生、お願いいたします。
○三柴構成員 1点に絞って伺いたいと思うのですが、堤先生と事務局の両方へのお尋ねになります。職場環境改善というのは、何を示しているかということです。以前に公表された川上先生の厚生労働科学研究の報告書を拝見しても、経営あるいは人事労務管理の根幹に関わるような、そういう改善策というのは余り取られていないという認識なのです。つまり、就業のルールや業務管理の仕方を変えたとか、人事労務管理というと人選、職務設計、教育、モチベーションとかですが、そういうところに関わるような改善が余り行われていないと。要するに、形だけ変えたというような、そういうものが見受けられたので、環境改善といっても、いろいろあり得ると。
 一方、堤先生の今の御報告では、最後のほうで事例が出されて、個別の事例においてはうまくいったケースが見られると。それがよく分かるのは、経営者の考え方とかスタイル、それから労働者側のもともとの能力とか性格、そういうものを踏まえたテーラーメイドの対策が取られた場合には、比較的効果があったかもしれないということだと、もとに帰って、職場環境改善はメンタルにおいて何なのかということが問われると思うので、本質的な対策を想定していいのかどうかという、そこを伺いたいと思います。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。まずは、職場環境改善の定義、範囲という御質問でよろしいでしょうか。
○三柴構成員 そうですね、そういうお尋ねと考えていただくのがいいと思います。
○川上座長 堤先生、まず先生の御報告の範囲で、職場環境改善はどのようなものになっているか御説明いただけますか。あと、事務局のほうから、もし回答が頂けるようでしたら、お願いいたします。
○堤構成員 三柴先生がおっしゃることはそのとおりというか、どういうことで職場というか組織を含めて改善していくか、それが効果に関わっていくだろうというところは往々にしてそのとおりではないかと思っています。職場環境改善の定義というか、何をしているかということに関しては、文献上では、その状況、ディペンデントというか、作業場ディペンデントなので、事業場でできることという形でされているという感じです。先ほど御紹介した最後のほうで申し上げたように、本当に何をしているのかと、どういう文脈で何をしているのかというのが分かると、効果とかというようなことがもっとよく分かってくるのではないかというところも、恐らく同じお考えかと思います。
 もう1つですが、参加型職場環境改善とかという形で、日本発でいいと思うのですけれども、この10年やられてきたもののコアは、ILO等が環境改善をやってきたときの考え方を踏襲しています。早く変えられるものは変えよう、現場でできるものを変えようというようなコンセプトでかなり強く動いていて、そういうことは、報告の中にも上がってくる部分に関しては比較的多いのではないかと思います。組織的にどういう、態勢を変えたかどうかというのは、また調べてみないと分かりませんが、比較的多いのは、そのように流れてきた部分もありますが、タスクレベルとか、それが効果があったというような形の御報告があるのではないかと私は考えております。ちょっと補足をしていただいたほうがいいかもしれません。
○川上座長 ありがとうございました。事務局、何か御追加で御発言いただくことはございますか。
○大村産業保健支援室長 事務局よりお答えさせていただきます。まず、労働安全衛生規則、法令上の整理ですが、労働安全衛生規則第52条の14第2項が職場環境改善に関わる条文となっております。そこでは、「その必要があると認めるときは、当該集団の労働者の実情を考慮して、当該集団の労働者の心理的な負担を軽減するための適切な措置を講ずるよう努めなければならない」という規定があって、「集団の労働者の心理的な負担を軽減するための適切な措置」というのが、職場環境改善の法令上の整理であると認識しております。
 一方で、具体的には、関連するマニュアルの中では、「職場環境等の改善とは、職場の物理的レイアウト、労働時間、作業方法、組織、人間関係等の職場環境を改善する」という例示がありまして、具体的な項目としては、こういった項目が挙げられると理解しています。なお、資料2のスライド28に、具体的な内容ということで、調査結果で明らかになった取組をお示ししております。その中では、「職場で行う研修の充実や従業員に対する情報提供態勢の改善」、あるいは「心の健康を含む社内相談窓口の開設や機能の拡充」、「勤務時間や職場体制・態勢の見直し」、「作業環境や職場環境の見直し」、「職場内の相互支援態勢の見直し」等とありますので、事業場の皆さんが今取り組まれている内容については、行政の認識に沿った取組がなされているという理解でおります。
○川上座長 説明ありがとうございました。三柴先生、よろしいでしょうか。
○三柴構成員 そうですね。一言だけ加えますと、今、事務局で挙げられたような要素が重要だということは、多分、誰も異論がないと思うのですが、実際にそれで問題が余り解決していかない、諸外国でも似たような項目を挙げてもなかなかうまくいかないというのは、価値観や役割期待のズレとか、より本質的な問題、もう少し根深い問題があると思っています。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。では、渡辺構成員、発言をお願いいたします。ほかの構成員も、もし御発言予定があれば。了解いたしました。
○渡辺構成員 渡辺でございます。一番の根本的なことになると思うのですが、先ほどから出ていますように、この制度は一次予防の制度であるということが一番の趣旨です。そういう意味で言うと、一次予防の制度であるのですが、職場あるいは労働者、医療関係者がどのように認識されているのかということが、とても大きいと思うのです。そういった研究があれば教えてほしいのですが、私の知る限り、それはないと思います。いろいろな所で話を聞きますと、ほとんどの現場、管理職も経営者層も労働者も、「ストレスチェック制度は何のチェックだと思いますか」というと、まず100%労働者の症状のチェック、メンタルヘルスの症状があるかないかをチェックする制度、そして、ストレスの症状があれば早めに医者に送る制度、すなわち二次予防の制度として認識されてしまっているところです。
 したがって、この制度をいかに一次予防、職場環境改善につないでいくかというと、まずこの制度を一次予防の制度ということで、きちんと周知徹底していく、これがまず一番重要だろうと考えています。それに関して申しますと、一次予防の制度として、趣旨はしっかりそのように書かれているのですが、体制図とか運用マニュアルを見ると、必ずしも一次予防という制度になっていない、どうも齟齬があるのです。
 例えば、体制図を見ますと、実施者が企画あるいは結果の評価をすることになっています。実施者というのは、産業医であったり保健師であったり、健康管理の人間です。ところが、職場環境改善を趣旨とするのであれば、当然、労務問題とか人事問題、労務人事マターになってくるはずで、その人事労務マターの責任者が、産業医とか保健師という健康管理の責任者が行うというのは、どうも齟齬があります。
 体制図でも一番上に事業者というのが書かれているのですが、事業者の役割、責任が明確になっていません。職場環境改善を趣旨にするのであれば、事業者、実施責任者を明確にして、実施責任者が少なくともこの制度の企画、結果の評価、事後措置までは事業者責任であるということをはっきりさせないと、一次予防の制度として定着していかないと思います。
 あるいは、もう少し細かくなっていきますが、高ストレス者の基準も今はB群、症状優位なのです。症状が強い人が高ストレス者になっています。一方、幾らストレス因子が強くても、A群、C群が幾ら高くても、症状が軽いと高ストレス者には入ってこないのです。これも、やはり本来の趣旨との齟齬があると思います。
 そういった意味で、本来の趣旨と体制あるいは運用マニュアル、そういったところに齟齬があるということは非常に大きくて、一次予防の制度でありながら、現場では二次予防の制度として受け入れられてしまって、そこを何とかしていくということが今回の改正でとても重要なポイントではないかと思っております。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。恐らくこれは、御意見として承っておくのがよいのかと思いました。それでは、茂松構成員、御発言をお願いいたします。
○茂松構成員 今の渡辺構成員の意見とよく似ているところがあるのですが、一次予防としては、今のところは、それなりに結果は残していると思います。ただやはり問題となるのは、職場環境改善であろうと思います。職場環境の改善に向けて一番大切なのは、結果を分かっている本人と、ストレスチェックをやった実施者だけではなく、そこに誰が関与してくるかということが非常に大事であろうと思いました。
 それに、産業医が専門的な立場から助言をするというだけでは駄目だということが、明らかに分かってきている。そうなると、やはり渡辺構成員が言ったように、事業主と、あと従業員、また、それを担当する労務や人事の担当員がどのように考えてその職場を作っていくのか、働く人たちが信頼を持ってその事業主に付いていけるのか、そういう環境をしっかり作っていくということが最も重要ではないかと思うところではあります。
 それと、本日の資料に示されました精神障害の労災補償ですが、これも増加傾向にあると。協会けんぽの傷病手当金における精神障害が占める割合も増加傾向ということから、中小企業の従業員の産業保健の窓口が本当に重要であろうかと思います。
 そのためには先ほど神村構成員が言いましたように、地さんぽの窓口をしっかりさせていくと。そのためには予算化ですね。その辺の予算を少し上げていただきたいということをしっかり申し述べたいと思います。それに環境改善については、事業主と従業員との信頼関係を作るためには、どうしたらいいのかということは大切ではないかと思います。今、健康経営という1つの考え方がありますが、あれも1つのほうに偏っておりますので、そこもうまく利用しながら、何か新しいきっかけを作っていくことが必要ではないかと思います。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。オンラインのほうは中野構成員でしょうか、手を挙げていらっしゃるのは。
○中野構成員 はい。
○川上座長 お願いします。
○中野構成員 ありがとうございます。中野でございます。まず資料2の29ページに、ここまでの質疑の延長線にもあることかと思うのですけれども、職場改善の効果が、なかなか労働者側に伝わっていないような調査結果が示されています。これは今までの質疑の中にあったように、その改善の中身といいますか、改善の取組が現場の価値観だとかニーズにどのぐらいフィットしていたかという、中身の問題かもしれないですし、もしかしたら、ストレスチェックをした後に、分析して職場改善をしていくのだという全体の流れ自体が、あまり労働者に理解されていないというか周知が図られていない状況なのかと思っています。
 労働者も一様ではなくて、一次予防の早期に発見するというストレスチェックの段階で、高ストレスに振り分けられる者と、特に問題がないとして振り分けられる者とでは、当然こういったことへの関心も価値観も違ってきます。多様な人が混ざっている労働者に対して、この制度自体の意味や、全体のフローにどう労働者も関わっていくのかという辺りをしっかりと分かるように示していく。堤先生の御報告の中でも制度運用、あるいは参加意識が大事だということもありましたが、そういったことも踏まえて、全体のプロセスを見ていくのが必要なのではないかと思ったのが1つです。
 それから、その次のページに、事業者側のストレスチェック制度に対する認識のグラフがありますが、実施をしていない事業場で、最も答えが多い回答が40%なのに比して、「その他」の部分が10数%というのは、比較的、全体の分布から言うと多いかと思っております。この「その他」と答えた未実施の事業場がどのような思いから「その他」のところに御回答されたかという辺りも、一旦見えていない事業者の認識として、拾うべきものがあれば拾ったほうがいいと思うので、ここでもし共有すべき内容があるなら教えていただければと思いました。
 また、資料4は、ストレスチェック制度の効果・エビデンスを今後まとめて、推進に向けて使っていくことだと思うのですけれども、ここで言う効果が、どの立場に対する効果なのか。労働者本人に対する効果が、多分この制度では一義的に重要だとは思うのですが、事業者に対する効果も、当然、この制度を推進するという意味では大事であり、そこも入ってくると思うと、この表が幾つかできるのか、それとも今回はどこか対象を絞ってするのかという辺りも、少し最初に整理をしておくべきかと思います。事業者にとって、もし評価という視点を表の中でも当然入れていくとすれば、表の縦の列に書いてあるチェックのみ健康相談をする、面接をする、分析をする、環境改善をするという、この取組が付加されることによって、必要な人材やコストも変わってくると思いますので、そういった部分もこの効果と併せて少し情報提供できると、様々な意思決定に役に立つのではないかと思いました。以上でございます。
○川上座長 御意見をありがとうございました。御指摘を頂いた部分で事務局のほうにお伺いしたいのは、まず令和3年度の委託事業の報告書で、資料2の30ページの「その他」の内訳を、また後ほどで多分いいと思うのですが、整理ができるかどうかという点と、あと資料4のほうで、先ほどのエビデンスという効果の先を生産性などの事業者の関心のあるものまで広げるのか、あるいはコストについての御質問があったと思いますが、どういうように考えたらよろしいでしょうか。
○大村産業保健支援室長 事務局よりお答えさせていただきます。まず、資料2のスライド30のストレスチェック制度に対する事業者側の認識の部分でございますが、今、手元に御指摘の部分にお答えできる情報を持ち合わせておりませんので、また確認しまして、結果につきましてはお伝えをさせていただきます。
 それから資料4につきまして、非常に重要な御指摘をありがとうございます。構成員の先生方から、是非とも、今後の取りまとめにつきましては、御示唆を頂戴したいと思っておりまして、今の御指摘も踏まえて、資料4の表の取りまとめを進めてまいりたいと思います。具体的に申し上げますと、対象者につきましては労働者、労働者が属する集団、事業者、いわゆるステークホルダーはあるのだろうという認識でおります。そのほか、まだまだあるかと思いますので、本日の検討会の御指摘等を踏まえて、精査してまいりたいと思います。
 また、コストについての御指摘もございました。こちらも御指摘を踏まえ、全体的な取りまとめの中でコストをこの表の中に入れるか、あるいは表とは別の形で整理をするべきか、いろいろあるかと思いますが、いずれにしましても、そういったコスト面についても、十分に情報収集していきたいと考えています。
○川上座長 ありがとうございました。御意見をと思いますが、どうぞ、高野構成員、お願いします。
○高野構成員 どちらかというと意見という形になると思うのですけれども、ストレスチェックが制度化されて、少なくとも衛生委員会で1年に2、3回はストレスについて審議したり、協議する場ができた。それはとても良かったと思っております。
 10年近くたってきて、集団分析の資料2の26ページなどを見ると、少なくとも50人以上の事業場においては、集団分析も80%以上の実施をしている現状から、そろそろの努力義務を外して、義務化してもよろしいのではないかというように感じています。というのは、義務の部分だけでやると、医師面接指導の意見書という部分でしか事業者へフィードバックできる機会がなく、それが医師面接指導を受けるのは全労働者の1%ぐらいの意見となると、なかなか職場環境改善につながらないと思います。多くは実際にこの集団分析が使われているのではないかと思いますので、そろそろ義務化をしてもいいのではないかという意見です。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。どうぞ、山脇構成員、お願いいたします。
○山脇構成員 労働者としての受け止めと、今後こういう視点を持って御検討いただきたい点について発言させてもらいたいと思います。
まずメンタルヘルス対策につきましては、この間、労使が取組を進めてきたことはもとより、産業保健あるいは地域医療に関わる多くの方々の御尽力によって、着実に前進が図られてきたものと認識しております。
 その一方で、資料2を見ますと、例えば精神障害の労災の認定件数やメンタル不調による休業、退職した労働者がいる事業場割合が増加傾向にあるほか、労働者の8割強が職場生活で強いストレス、不安を抱えているといった状況にあります。こうした実態を踏まえると、メンタルヘルス対策については一層の強化が必要と受け止めております。
 特に、メンタルヘルス対策について取り組んでいる事業所の割合を事業所の規模ごとに見ると、規模が小さくなるほど実施している割合が少なくなっていますので、小規模事業所における対策の強化が必要と考えます。
本来、労働者であれば事業場の規模にかかわらず、安全安心に働くことができるように環境整備を図っていくということが重要であり、現行、事業場の規模によって取り扱いが異なる事項については解消を図っていくことを、今後の検討に当たっての1つの視点に置くべきと思っているところです。
 その上で、ストレスチェック制度についても、労働者の立場から意見を申し述べたいと思います。まずストレスチェック制度の対象者につきましては、今申し上げたとおり、事業場の規模によって取り扱いが異なりますが、事業場の規模にかかわらず、同様の制度が適用されるのがあるべき姿だと思います。50人未満の事業場についても義務化し全ての労働者に対象を拡大していくべきではないかと考えます。
 この点に関しては、皆様も御承知のとおり、2014年2月の法律案要綱の中では、全ての労働者に対してストレスチェック制度の実施を義務付けることとされておりましたが、その後、法案の修正が求められて、結果として現行の50人未満の事業場が努力義務にされたものと承知しております。前回の法律案要綱、これは労政審の建議に基づくものであり、三者構成による合意事項であった重みを踏まえて、検討を進めてもらいたいと思っています。
 なお、この検討拡大に当たっては、先ほど神村先生などからも御発言があったとおり、小規模事業場における支援が不可欠だと思いますので、地さんぽによる支援の拡大、拡充もセットで検討すべきですし、それに当たって地さんぽの体制の強化も不可欠だと思っています。
 続いて、集団分析の関係でありますが、現行努力義務とされているものを、義務化していくことを検討すべきではないかと思ってます。先ほどの報告にもありましたとおり、8割の労働者が集団分析が有効と回答していることや、集団分析を行っている事業所と行っていない事業所を比べると、行っている事業所のほうが職場改善が進んでいることが明らかとなっています。プライバシーの確保ということは前提としつつも、義務化に向けた検討が必要ではないかと思います。
 ただ、集団分析については、小規模事業場での実施が課題となってくると思いますので、どういった形で展開できるのか、ここについては好事例の展開ということも含め、具体的な提言を、この検討会の中で検討いただけないかと思ってます。
 最後、資料4のストレスチェック制度の効果・エビデンスについてです。一番下の欄で、ストレスチェック+集団分析+職場環境改善ということが書かれています。例えば健康相談、あるいは面接指導の結果から傾向や課題を把握をすることができると思いますので、健康相談や面接指導とセットで職場環境改善について検討するようなパターンも作っていただけないかと思っています。以上です。
○川上座長 御意見をありがとうございました。また、この検討会での検討課題につきましても御提案いただきありがとうございました。
 オンラインのほうで、森口先生が手を挙げていらっしゃるように見えたのですが、よろしいでしょうか。
○森口構成員 よろしくお願いします。最初、御挨拶できず申し訳ありませんでした。京都工場保健会の森口と申します。神村先生がおっしゃった地さんぽを更に活用していくというのは私も賛成でして、今、分析の義務化のお話がありましたが、分析を義務化する際には、やはり改善活動も抱き合わせでやるという、分析だけにとどまらないということも是非盛っていただければと思っております。
 また先ほど、なかなか職場環境改善活動が労働者に響いていないというか、そのようなお話がありましたけれども、堤先生が御紹介くださった私たちの同僚黒木等と一緒にまとめた論文の経験を少し御紹介しますと、あのときは労働者10人弱ぐらいの会社に対して職場環境改善をして、やったこととしては、余りストレスチェックの結果にこだわりすぎずに、ややフリーに近いような形で労働者に職場環境改善について議論をしてもらった。そこで挙がってきた、かなり簡単な、道具置き場をきれいにしましょうとか、技能向上に役立つ書籍を先輩たちが職場に持ってきて、若手が読めるようにしましょうとか、すごい簡単なことをやったのですが、皆さん、その討論自体が良かったとか、お互いの気持ちが分かり合えたというようなことで、その辺りが非常に良かったというようなことを確認しております。
 また、2年連続でやったのですけれども、1年目は我々が研究ベースでやりましたので、3人の医師、保健師、心理職などがドヤドヤと乗り込んで行って、相手も身構えるような状況が当初ございましたけれども、2年目は、去年のあれかというような形で少し慣れも出てきて、心理的なストレスチェックで得られる指標なども1年目は少し、むしろ悪化するぐらいのところでしたけれども、2年目はちょっといい方向に動いていくということも確認したところです。ですので、もし経営者が1年で、これは駄目だと判断したら、2年目の成果はなかったということかと思っていますので、少し長い目で見るようなことも必要かと思っております。
 また、この研究に関わった企業数社、5、6年たってから私どもの心理職が少し状況を確認しに行ったようなことがありましたが、そのときに教えさせていただいたというか、そういうレクチャーさせていただいた手法みたいなものを、少し形を変えて、メンタルという切り口ではないのですけれども、「ずっと使っています」というお話も聞けました。彼らとしては非常に使えるものだという認識で継続利用してくださっているところもありましたので、1つのやり方の参考として、今御説明しました。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。会場の江口構成員、種市構成員の順でと思いますが、その後、坂下構成員でお願いいたします。
○江口構成員 産業医大の江口でございます。御報告もろもろありがとうございました。私からもコメントの形になりますけれども、本日、種市構成員や島津構成員といった、職場環境改善の実務経験が豊富な方々もいらっしゃるので、今後そのようなお立場から職場環境改善について御意見をいただけると思うのですが、基本的に、先ほど高野先生からもありましたとおり、実施率が上がっている、50人以上上がっているという状況があるのですけれども、これをもって精神障害の申請件数とか認定件数が減っていないということは、やはり職場環境改善が実態としてどうなっているのかはとても大切なところかと思っております。
 当然ながら、介入強度と効果はトレードオフの関係にあるわけでして、その点をある程度、もしこの職場環境改善の実施を義務化していくということであれば、一定の質を担保するガイドラインお出していくのは不可欠であろうと思っております。恐らく、この調査の中でも、うちは職場環境改善をやっているという会社でも、ただデータを共有しているだけの介入強度が薄い所もあれば、かなりがっつりやっている所もあるかと思っております。そういうところで一定のガイドラインが必要かと思った次第です。
 その点は留意が必要かと思ったところと、あともう1つは、やはりこの研究ベースのところの大きな限界としては、私もいろいろメンタルヘルスの研究をしているのですが、していただける所でやらせていただいていることはやはり大きな留意点かと思っております。義務化して全職場でやることになりますと、恐らく、それはストレスチェックのときにも同様の事項が発生したと思っておりますが、職場環境改善に後ろ向きなところではいろいろな無理が発生してくるのではないかと思います。以前であれば、やれる所でやっていたストレスチェックを全体にやったときに、まだまだストレスチェックもやれない職場であってもやっていったところがありますので、そういうところも留意して議論をしていく必要があるかと思った次第です。私からは以上になります。
○川上座長 ありがとうございました。種市構成員、お願いいたします。
○種市構成員 職場環境改善に絞って1点お伝えしたいのは、職場環境改善は誰が何をどこまでするかというところが、割とまだ曖昧な部分が残っているかと思います。まず、誰がということでは、例えば管理職が研修を受けて、管理職が判定図を読んで実施するパターンもあれば、森口先生がおっしゃったように、労働者が参加して、労働者自身が自分の職場を良くしようというタイプもあります。労働者が参加すると労働者が勇気づけられるというか、自分で自分の仕事をしやすくできるみたいな形の認識ができるので非常に有効だというのは実感としてありますので、その部分を整理する必要があるだろうと。
 もう1点は、実際に実施してみると、例えば管理職の課長が実際にはもう仕事の量が多すぎるのに対して人が足りないと。これはむしろ人事のせいなのだから私のせいではないというように認識していて、形上、環境改善の改善項目には書くけれど、結局やったことは昼食会開きましたみたいな感じで、全然本質的なことと改善の内容がずれているところがある。やはり判定図であったり、ストレスチェックの結果を通して、あなたの職場はこうだと言われたときに、ああ、なるほど、うちの職場はこうなのだと読めるような、例えば、うちはすごい忙しいと思っていたけれど本当に忙しいというように、相対的に見ても分かるように伝えられるファシリテーター、つまり専門スタッフ側の能力も必要だし、そういうものとしてストレスチェックが、先ほど渡辺先生がおっしゃったように、結局その職場のストレス要因の部分がよく分かる検査なので、そこを認識していただくことが大事なのかと。
 ついては専門スタッフの育成が大事で、公認心理師のようなスタッフだけではなくて、保健師や衛生管理者とか、ほかのPSWだったり、ほかのスタッフも含めてこの環境改善に含まれるような育成が大事かと思います。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。坂下構成員、お願いできますでしょうか。
○坂下構成員 経団連の坂下でございます。皆さんの発言を聞いた上で御発言させていただこうと思っておりましたので、遅くなりました。いろいろご意見がありましたけれども、一番皆様のご意見が集中しているのが集団分析と、職場環境改善という印象を持ちました。経団連におきましては、会員企業が、職場環境改善について具体的にどのようなことを行っているのかを聞いた調査はなく、各社がどこまで何をされているのか把握していません。経団連の会員企業は大企業が中心ですので、集団分析もセットで行っている企業が多いです。その背景には健康経営の推進というような面もあり、経営者の理解もありますので、進めやすい取組みになっていると思います。
 集団分析は努力義務ですが、企業規模にかかわらず義務化していくことについては、むしろ私より中央会さんとか日商さんがご発言されたほうがよいかもしれませんが、大事なことは一次予防をしっかり実現することです。また、職場環境改善が伴わなければ、あまり意味がないといいますか、できる企業は対応すべきだと個人的には思いますけれども、事業者の立場に立ちますと、どうしてもコストも含めた負担面は無視できない要素になります。そこをどう考えるか。その支援のあり方は様々あると思いますが、例えば地さんぽに努力していただくこともあるかと思います。何かを新たに取組みを強化していく場合には、それができるような環境がきちんと整えられるのかどうか、そこも含めて検討していく必要があるかと思います。
 また、効果・結果に関する調査、文献などが十分にないというご説明を堤先生から頂きましたが、そういう科学的な分析のようなものがあると、経営者も取組みやすいかと思いますので、そのようなものが今後出てくるのであれば、是非拝見したいと思います。
 あと50人未満の事業所を義務にすることについては、山脇委員からご指摘があったとおりで、当時の法案要綱は50人以下としていました。当時と今で状況が変わっているのかどうか、検討する際に確認しなければならないと思っています。
 いずれにしましても、検討会で、法改正等を見据えた議論をどこまでするのかというのは、論点の立て方にもよると思いますので、その点はしっかりと議論をさせていただきたいと思っております。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。関連して、及川構成員、大下構成員、何か御発言ありますでしょうか。今は大丈夫ですか。お願いします。
○大下構成員 日商の大下です、ありがとうございます。皆様の御発言をお伺いし思いましたが、中小企業は規模も小さい、つまり職場の職員の健康管理等を専門的に見る人員がいない。規模の小さな職場の場合、人事と経理兼務といったケースも相応にございます。仮にこのような状況下でストレスチェック制度が義務化されたとき、果たして有効に活用されるのかという点に非常に大きな課題があると思っております。実行にあたっては先ほどお話があった地域産業保健センター等のバックアップは不可欠ではないかと思っています。
 同時に、これまでの議論でも登場いたしましたが、ストレスチェックを大企業が実施したことによって、職場のメンタルヘルスの部分について我が国では改善がなされており、従って中小企業にも広げましょうといった根拠のあるデータや、取組を実施したことによって効果が生まれているといった個社事例等の提示が必要ではないかと思います。中小企業は人手不足ですので、限られた人数の中で事業活動を行っております。その中で、例えばメンタルを病んでしまって職場から離れてしまうことは、経営の側からしても大きなリスクですし、マイナスとなります。このようなリスクを防ぐために、ストレスチェックはこのように有用で、結果が出ていますというデータ・事例があれば、中小企業も義務化に対してポジティブに受け止められると思う反面、データ等での説明ができていない状況の中、必要性の観点のみで対象を拡大されてしまうと、中小の事業所において効果を生むかは、現時点ではかなり疑問が残ると思います。どのように中小企業の取組への動機付けをするのか。実施にあたってどのように実務的なサポートをするのか。この2点が整わないままで対象だけ拡大された場合、中小企業側で負担感だけが増えてしまうこともありえると、ここまでのお話を伺っていて思いました。私からは以上です。
○川上座長 ありがとうございました。及川構成員も手を挙げていらっしゃいますか。すみません、ありがとうございました。そろそろ時間になってきたのですが、島津構成員の手が挙がっていましたので、お願いできればと思います。
○島津構成員 すみません、時間のないところで恐縮です。先生方からの御意見とも重なる所はあるのですけれども、このストレスチェックの本来的な意義のところで、一次予防が非常に大事だというところを考えると、集団分析、セットとしての職場環境改善の義務化というのはやはりあるといいと思っています。1つに、産業保健の長年の流れを見ていますと、大分遡りますけれども、やはり2000年のメンタルヘルスのガイドラインが出たときの企業側の動きというか、受け止めというか、メンタルヘルスをやらなければいけないのだと、ギュッと舵を切ったところがあったかと思っていて、その後のストレスチェックの義務化というのがあって、大企業を中心にストレスチェックに取り組まなければいけないということで、メンタルヘルスの意識も大分変わってきたところがあると思っています。
 併せて、集団分析、職場環境改善も義務化を行う場合には、そこの背景、理由、なぜ義務化していくのか、なぜそこが重要なのかを改めて伝えることで、経営者を含めて、企業の方も重要性を認識するというのが1つあるのかと思っています。
 一方で、今まで御議論の中でも出てきましたように、ただただ拡充だけを言っていると空振りに終わるという御懸念も正にそうだろうと思っていて、マンパワーの拡充のところはそれこそ地さんぽの拡充も含めて、マンパワーを、専門職をいかに拡充していくかは必ずセットで必要だと思っています。企業の中で職場環境改善に取り組む中でも、それこそストレス判定図1つも管理職の方にフィードバックをすると量的な負担が少ないというと、イコール人を増やさなければいけない、それしか解決策がないと思ってしまうような職場も中にはあったり、それこそ結果の読み込み、先ほども御意見がありましたけれども、若しくは、そこに対する対策を含めてどのようにアドバイスをしていくか、そのようなサポートをするスタッフがいるかというのも必要でしょう。
 あとは結果も、先ほど森口先生のお話にありましたように、従業員の方が参加型で改善するというのもあれば、管理職が参加型、若しくは主導して改善するのもあれば、例えば課題を経営層に上げて、その経営層がそこの課題認識を、出た課題認識を持って、それこそ会社としてのメッセージを発信したり、場合によっては会社が施策を進めていく中に新たに考えを取り入れたり、そこからアイディアを得たりということで、経営層と組んでしていくやり方もあるかと思いますので、いろいろなこのストレスチェックの活用の仕方、データの取扱いについての留意点は十分に注意した上で、いろいろなパターンを少し用意した上で育成していけるようなところも、マンパワーの拡充とセットでできるといい形になっていくのかというのを1つ考えました。
○川上座長 ありがとうございました。たくさんの議論をありがとうございました。所定の時間がまいりましたので、また続けての意見交換は第2回ということで、引き続きお願いできればと思います。本日の御意見など踏まえまして、事務局で次回の議論に向けて整理などもお願いをいたしたいと思います。
 それでは、進行を事務局にお返しいたします。よろしくお願いします。
○夏井産業保健支援室長補佐 事務局です。本日は御議論ありがとうございました。事務局から連絡事項が2点ございます。次回の日程は4月25日の開催を予定しております。構成員の皆様には、また近づきましたら改めて御連絡をさせていただきます。
 また、本日の議事録ですが、先生方に内容を御確認いただいた上で、厚労省のホームページに掲載したいと思っております。これもまた追って御確認のお願いをさせていただきますので、その際はよろしくお願い申し上げます。
○川上座長 本日の検討会は以上で終了とさせていただきます。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。