第85回 厚生科学審議会感染症部会 議事録

日時

  • 令和6年5月27日(月)15:00~17:00

場所

航空会館ビジネスフォーラム(7階)

議題

(1)急性呼吸器感染症の今後の取扱いについて
(2)新型インフルエンザ対策における今後のワクチン・治療薬の取扱いについて
(3)新型コロナの抗体保有状況調査の実施結果について(報告)
 

議事

議事内容
○杉原エイズ対策推進室長 それでは、時間となりましたので、ただいまから第85回「厚生科学審議会感染症部会」を開催いたします。
 構成員の皆様におかれましては、御多忙にもかかわらず、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
 本日、議事進行を務めさせていただきます、感染症対策部感染症対策課の杉原と申します。よろしくお願いいたします。
 本日の議事は、公開となります。また、これまでと同様、議事の様子をユーチューブで配信いたしますので、あらかじめ御了承ください。
 なお、事務局で用意しておりますユーチューブ撮影用以外のカメラ撮りにつきましては、議事に入るまでとさせていただきますので、プレス関係者の方々におかれましては、御理解と御協力のほど、よろしくお願いいたします。
 また、傍聴の方は、「傍聴に関しての留意事項」の遵守をお願いいたします。なお、会議の冒頭の頭撮りを除きまして、写真撮影、ビデオ撮影、録音をすることはできませんので、御留意ください。
 本日は、ウェブ会議で開催することとしております。まず、ウェブ会議を開催するに当たりまして、会議の進め方について、御連絡させていただきます。まず、御発言される場合は、挙手機能を用いて挙手いただくか、チャットに発言される旨のコメントを記載いただき、部会長から指名されてから、御発言をお願いいたします。なお、ウェブ会議ですので、若干タイムラグが生じますが、御了承願います。また、会議の途中で長時間音声が聞こえないなどの機械トラブル等がございましたら、あらかじめお知らせしております番号までお電話をいただきますよう、よろしくお願いいたします。
 続きまして、委員の出欠状況の確認をさせていただきます。
 まず、今回新しく感染症部会に加わられた委員を御紹介いたします。
 公益社団法人日本医師会常任理事の笹本洋一様です。
 笹本様、一言いただけますでしょうか。
○笹本委員 よろしくお願いします。
○杉原エイズ対策推進室長 どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございます。
 次に、委員の出欠状況について、御報告いたします。
 御出席の委員の方におかれましては、通信の確認も踏まえて、委員のお名前をこちらから申し上げますので、一言、お返事をいただければと思います。
 五十音順に、失礼いたします。
 今村委員。
○今村委員 今村です。よろしくお願いいたします。
○杉原エイズ対策推進室長 越田委員。
○越田委員 越田です。よろしくお願いいたします。
○杉原エイズ対策推進室長 坂本委員。
○坂本委員 坂本です。よろしくお願いいたします。
○杉原エイズ対策推進室長 笹本委員。
○笹本委員 笹本でございます。よろしくお願いいたします。
○杉原エイズ対策推進室長 四宮委員。
○四宮委員 四宮です。よろしくお願いします。
○杉原エイズ対策推進室長 白井委員。
○白井委員 白井です。よろしくお願いします。
○杉原エイズ対策推進室長 谷口委員。
○谷口委員 谷口です。よろしくお願いします。
○杉原エイズ対策推進室長 土井委員。
○土井委員 土井です。よろしくお願いします。
○杉原エイズ対策推進室長 戸部委員。
○戸部委員 戸部です。よろしくお願いいたします。
○杉原エイズ対策推進室長 中野委員。
○中野委員 中野です。よろしくお願いします。
○杉原エイズ対策推進室長 藤田委員。
○藤田委員 藤田です。よろしくお願いします。
○杉原エイズ対策推進室長 森川委員。
○森川委員 森川です。よろしくお願いします。
○杉原エイズ対策推進室長 森田委員。
○森田委員 森田です。よろしくお願いします。
○杉原エイズ対策推進室長 四柳委員。
○四柳委員 四柳です。よろしくお願いいたします。
○杉原エイズ対策推進室長 脇田委員。
○脇田部会長 脇田です。よろしくお願いします。
○杉原エイズ対策推進室長 お願いします。
 なお、味澤委員、大曲委員、小西委員、成田委員からは、御欠席の連絡を、今村委員、戸部委員、中野委員、四柳委員からは、中途退席の御連絡をいただいております。
 また、本日は、参考人といたしまして、国立感染症研究所より、神垣様、鈴木様、俣野様の御参加をいただいております。
 以上、現在、感染症部会委員19名のうち、15名に御出席いただいておりますので、厚生科学審議会令に基づきまして、本日の会議は成立したことを御報告いたします。
 それでは申し訳ございませんが、冒頭の頭撮りにつきましては、ここまでとさせていただきますので、御協力をお願いいたします。
(カメラ退室)
○杉原エイズ対策推進室長 なお、これ以降は、写真撮影、ビデオ撮影、録音をすることはできませんので、御留意ください。
 それでは、議事に入る前に、資料の確認をさせていただきます。
 議事次第、委員名簿、座席図、資料1~3、参考資料1~3-3になります。
 不備等がございましたら、事務局までお申し出ください。
 それでは、ここからの進行は、脇田部会長にお願いいたします。
○脇田部会長 承知しました。
 皆様方、本日も、感染症部会をよろしくお願いいたします。
 まず、議事に入る前に、事務局から、審議参加に関する遵守事項についての御報告をお願いいたします。
○杉原エイズ対策推進室長 ありがとうございます。
 本日御出席の委員の方々の過去3年度における関連企業からの寄附金などの受取状況について、申告いただきまして、事務局において当該内容を確認いたしました。
 その結果、中野委員におかれましては、厚生科学審議会感染症部会審議参加規程に基づきまして、議題2「新型インフルエンザ対策における今後のワクチン・治療薬の取扱いについて」においては、一時、御退席いただくこととなります。また、土井委員に関しましても、参加規程に基づきまして、御意見を述べることはできますが、議決には加わらないことといたします。
 以上、御報告いたします。
○脇田部会長 ありがとうございました。
 それでは、議事に入ってまいります。
 議事次第を御覧ください。今日は、議題が、3つ、ございます。1番目に「急性呼吸器感染症の今後の取扱いについて」、2番目に「新型インフルエンザ対策における今後のワクチン・治療薬の取扱いについて」、3番目は、報告になりますが、「新型コロナの抗体保有状況調査の実施結果について」となります。
 最初は、議題1「急性呼吸器感染症の今後の取扱いについて」から、始めてまいります。
 資料1に沿って、まず、事務局から、御説明をお願いします。
○杉原エイズ対策推進室長 ありがとうございます。事務局でございます。
 資料1を御覧ください。
 2ページ目をおめくりください。ページ番号でいくと1ですけれども、これが本日の検討事項ということで、簡単に御説明させていただければと思います。これまで、新型コロナが5類に移行する前の段階で、急性呼吸器感染症に関してどのように取り扱うかという議論をこちらの部会でもさせていただいたところでございますが、それを踏まえまして、研究等も進みまして、今後の方向性について、一定の事務局案ができております。それについて、御相談させていただくものでございます。まず、特定感染症予防指針の取扱いについて、次に急性呼吸器感染症の発生動向、いわゆるサーベイランスの方法について、3番目に、「重症」急性呼吸器感染症の動向の把握についてということで、この3点について、御意見をいただきたいと考えております。
 3ページ目を御覧ください。新型コロナを含む急性呼吸器感染症対策に関する現状についてでございます。新型コロナにつきましては、今年の3月31日で、移行期間が終了いたしまして、公費支援等を含む種々の特例措置が終了したところでが、現時点で新型コロナに対する中長期的な対策の方向性を定めた文書は策定されていない状況でございます。同じような急性呼吸器感染症であります、略して「ARI」と呼んでいますけれども、インフルエンザについては、「インフルエンザに関する特定感染症予防指針」が定められておりまして、それにより総合的な対策の方針が定められているところでございます。また、第70回感染症部会、コロナの5類移行前、昨年1月の段階で議論した件ですが、将来のパンデミックに備えて、季節性インフルエンザ、新型コロナ、RSウイルス感染症等を含む急性呼吸器感染症のサーベイランスの在り方や5類感染症の病原体定点を活用した変異株のモニタリングを含む5類感染症の病原体サーベイランスの在り方について、医療機関における負担も考慮しながら、本部会において検討を進めることについて、御了承いただいておりました。また、WHOにおきましても、今後のこういった新型コロナやインフルエンザ等の感染症については、ほかの呼吸器感染症とともに、こういった急性呼吸器感染症(ARI)という枠組みの中でサーベイランスの一環として実施していくことが推奨されているところでございます。こうした観点を含めまして、新型コロナに関しての中長期的な方向性を定めた特定感染症予防指針の策定の必要性や方向性、新型コロナを含む急性呼吸器感染症のサーベイランス体制について、検討いただきたいと考えているところでございます。
 次のページをお願いいたします。先ほどお伝えしたとおりですが、現状、新型コロナにつきましては、特定感染症予防指針が定められておりません。この特定感染症予防指針は、感染症のうち、特に総合的に予防のための施策が必要なもの、それを推進する必要があるものにつきまして、厚生労働省令で定めるものでございます。こうした急性呼吸器感染症の中で現在定められているものは、インフルエンザのみでございます。今後の方向性なのですけれども、幾つか方向性はあると思っております。1つ目が、新型コロナに関して個別に特定感染症予防指針を作成する方法、2つ目が、インフルエンザと新型コロナに関しての特定感染症予防指針を作成する、インフルエンザの予防指針を廃止してそれら2つを併せた予防指針をつくるという方向性、3つ目が、新型コロナやインフルエンザを含めた急性呼吸器感染症に関する包括的な特定感染症予防指針を作成する方向性でございます。こちらに関して、事務局の案としましては、今後、将来のパンデミック対策の必要性の観点で、国際的にもこの急性呼吸器感染症に関する包括的なサーベイランス体制への移行が推奨されているところもございまして、現在のインフルエンザに関する特定感染症予防指針を廃止しまして、新型コロナとインフルエンザ、その他の呼吸器感染症を含めた「急性呼吸器感染症に関する特定感染症予防指針」を包括的に策定することとしてはどうかと考えております。
 次をお願いいたします。どういったものを急性呼吸器感染症に含めるかという具体的な範囲の観点でございますが、非常に様々な議論があるところかと思いますけれども、現状、感染症法では、こちらの2つ目の四角で囲った中にあるような種類の感染症が、いわゆる急性呼吸器症状を呈する感染症として、感染症法上の届出疾患に指定されております。このうち、主に上気道炎を呈して、かつ、国内で発生が見られる疾患としましては、インフルエンザ、新型コロナ、RSウイルス感染症、咽頭結膜熱、ヘルパンギーナ、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎、百日咳等が挙げられます。主に下気道炎を呈して国内で発生が見られるものとしましては、クラミジア肺炎、マイコプラズマ肺炎、レジオネラ肺炎、あとはオウム病といったものが挙げられます。このほか、特に、法第14条第1項に規定する疑似症、ICU等を有する医療機関を基幹定点として、原因不明の重症肺炎で感染症を疑うものについては、疑似症サーベイランスとして、報告をいただいているところでございます。このほか、国内での発生がまれな疾患、他の症状が主体、慢性に経過するものと、様々な呼吸器症状を呈するものがございますが、今回のARIの予防指針の範疇としましては、このように一般的に国内で見られるような上気道炎または肺炎・気管支炎等の下気道炎を呈する疾患を定義してはどうかと考えております。
 次をお願いいたします。具体的にどのような事項について定められているかといいますと、「インフルエンザに関する特定感染症予防指針」においては、この下にあるような項目が定められております。新たに作成する「急性呼吸器感染症に関する特定感染症予防指針」につきましては、インフルエンザの予防指針を参考にしながら、一般的な急性呼吸器感染症に関する総合対策に加えまして、インフルエンザや新型コロナなどに特異的な対策もございますので、そういうものに関して各論的に記載する形にしてはどうかと考えております。こちらにつきましては、御意見をいただきまして、その上で、今後の感染症部会でさらに詳細な議論を進めていきたいと考えております。
 次をお願いいたします。また、この把握方法について、サーベイランスの方法論で、幾つか、現状を簡単に御説明させていただきます。まず、現状につきましては、インフルエンザと新型コロナは1つの定点のスキーム、全国5,000か所のインフルエンザ・コロナ定点で把握を行っておりまして、RS、咽頭結膜熱、ヘルパンギーナ、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎については、全国500か所の小児科定点で把握を行っているところでございます。また、マイコプラズマ肺炎・クラミジア肺炎は、基幹定点で把握しておりまして、その他、レジオネラ肺炎、百日咳、オウム病は全数把握をしております。こうした把握の仕方をする場合、その疾患により指定されている定点が異なり、分母となる「症候群」であります「急性呼吸器感染症」の発生数が不明であるということで、個々の疾患の発生割合が分からないこと、サーベイランスで病原体を取ってくる方法、病原体を調査する方法が統一されていないので、包括的な検体収集やゲノム解析を行う体制となっていないこと、また、パンデミックのときに、柔軟に有事体制・平時体制に移行、活用が可能なサーベイランス体制になっていないこと、海外からの入国者の動向や病原体の分子疫学的動向との比較が困難であること、重症例の臨床像を迅速に把握するスキームがないこと、分離株を研究開発に利活用することが困難であること、こういった課題となる観点がございまして、新たなARIサーベイランスを検討する上では、上記のような課題を解決することが重要と考えております。
 次のページをお願いいたします。このARIの発生動向の把握について、国際動向です。先ほどお話ししたとおり、WHOは、急性呼吸器感染症、または、「Influenza Like Illness」と言っておりますが、「インフルエンザ様疾患」というもので、サーベイランスを実施していくことを推奨しています。CDCにおきましても、このインフルエンザ様疾患の発生動向を把握するとともに、全米20か所の救急部門を受診したARI患者の呼吸器ウイルスの陽性割合等の動向を把握しています。また、全国600か所のラボから報告される呼吸器ウイルスの陽性割合についても、把握しているところです。国内におきましては、そういった国内の体制と国際的な動向も考えまして、患者の発生と病原体のサーベイランスにつきまして、それぞれ、軽症例については、ARIの定点を定めることによってその把握を行うことと入国時のゲノムサーベイランスを継続して行うこと、重症例に関しましても、重症例の急性呼吸器感染症のサーベイランス、また、その疑似症サーベイランスでやっているものを継続して行っていくこと、病原体につきましても、これらの定点から得られる病原体を活用していく、下水等を活用しながら活用していくということを考えておるところでございます。
 次のページをお願いいたします。具体的な方向性になりますが、ARI定点、病原体定点、重症例としてのサーベイランス、海外からの流入を把握する入国時ゲノムサーベイランスは、今後、実施していくということで、下の把握体制のところを見ていただければと思いますけれども、まず、軽症例に関しては、発生動向調査として、新たにARIの定点を定めて、病原体を同時に収集していく体制をつくっていく。入国時の感染症ゲノムサーベイランスに関しては、今年の4月より開始しておりますが、こういったものによって渡航者の感染症の発生動向を見ていく。重症例につきましては、新たに開設するものとしまして、後で御説明させてだきますが、REBIND事業の中で重症呼吸器感染症のサーベイランスを実施してはどうかと考えております。
 症例定義につきましては、研究班で検討を行っております。具体的にどのようなARIの症例定義が望ましいかということを検討したものでございますが、こちらに関しましては、この後に神垣参考人から追加で御説明をお願いできればと考えております。
 その前に、重症急性呼吸器感染症についても、簡単に御説明させていただきます。次のページをお願いいたします。こちらが、いわゆる肺炎を含めた重症の急性呼吸器感染症の発生動向に関して、現状、重症急性呼吸器感染症における病原体の割合、病原体が不明の割合が把握できていないということで、パンデミック対策の観点からは、重症例の呼吸器の病原体の早期探知と動向の把握が必要でありますが、同時に、こういった重症急性呼吸器感染症は、臨床症状や検体やゲノム情報等の非常に詳細な情報も重要であるということで、これらを経時的に把握することが重要と考えております。方向性の選択肢としましては、これはいわゆるインフルエンザで現在やっている方法になりますが、基幹定点として新たに入院事例を把握する方法と、これをREBINDの新規感染症に位置づける方法があると考えております。方向性としましては、臨床症状、検体、病原体ゲノム情報の詳細情報を把握することの重要性の観点から、略してSARI(サリ)といいますが、重症急性呼吸器感染症をREBINDの新規対象感染症として追加して把握する形としてはどうかと考えております。
 最後、3-2がREBINDにおけるSARIサーベイランスの全体像でございます。REBINDに関しましては、今、新型コロナに関して検体を収集しているところですけれども、コロナ単体の検体の収集は終了いたしまして、あくまでも重症急性呼吸器感染症という枠の中で、新型コロナがあれば新型コロナも収集していくという形で、そういった重症急性呼吸器感染症の中で得られた新型コロナのヒトゲノムに関しては、その中で得られた症例を、解析対象としてはどうかと思っております。システムに関しましては、このようにREBINDの中で開始する形にしてはどうかということで考えております。
 事務局からの報告は、以上になります。
○脇田部会長 ありがとうございました。
 続きまして、感染研の神垣参考人から、参考資料1の御説明をお願いいたします。
○神垣参考人 よろしくお願いします。ありがとうございます。
 それでは、簡単に、「急性呼吸器感染症サーベイランスの実施に向けた研究結果」としまして、昨年度の厚労科研によって実証研究をいたしましたので、その結果の概要について、御説明させていただきます。
 次のスライドをお願いします。この辺は、繰り返しになってしまうのですが、症候群の中でどのウイルスあるいはどの病原体の陽性割合があるのかということを把握するサーベイランスは、そのサーベイランスの傾向やトレンドを病原体間で比べる際には非常に重要であろうというところがあり、将来的なパンデミックに備えて、インフルエンザ、COVID-19、RSウイルス感染症などを一体的に把握するような体制を整備するための実証研究を行っております。最後のブレットは、先ほどと同様です。
 次をお願いします。研究期間は少し短いのですが、今年の第4疫学週から第11疫学週まで、1月下旬から3月中旬まで、全国21の医療機関で検討をしております。方法AとBは、BのほうがマルチプレックスPCRを用いており、Aのほうはビオメリュー社のSpotfireないしFilmArrayを使った病院、20か所になっております。定義としては、ARI症例定義を用いており、ここだけは読ませてください。咳嗽、咽頭痛、呼吸困難、鼻汁、鼻閉のどれか1つを呈して、急性発症であって、医師が感染症を疑う外来症例のいずれをも満たす症例ということになっている。ちなみに、先ほど出てきたインフルエンザ様疾患は、発熱があるということになっております。体温の程度に関しては、37.8度、38度と、定義によって変わりますが、いずれにせよ、発熱を有しているところがポイントになっており、ARIの症例定義に関しては、発熱自体をチェックはしているのですが、それ自体を症例定義として入れていないというところがポイントになっております。毎週10人程度をめどに、年齢区分を考慮した方法で、検体を収集しております。
 次をお願いします。ちなみに、少し見にくくて申し訳ないのですが、右上のグラフです。発生動向で見ます、インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症、RS感染症の動向です。インフルエンザとCOVID-19に関しては、左側の軸で見ていただいて、RSに関しては、小児科定点ですので、少し数が減ります。右側の軸で見てください。インフルエンザが第3週のピークをもってその後は下がり出していて、COVID-19も第2週のピークをもってその後は同じように下がっているという状況に対して、第4週から漸増的に上がっていっているRS感染症ということになっております。使った検査機器あるいは検査パネルによって、ターゲットとしているウイルスあるいは細菌については異なるのですが、網羅的に検出できる系を使って、検討しております。
 次をお願いします。ここからが結果ですが、トータルで1,338例のILI患者が登録されて、そのうち、インフルエンザ様疾患、発熱を有した方は、73.5%、いらっしゃいました。除外として検討したアレルギー様症状、この中でいうと、下から3つ目と2つ目、結膜充血眼掻痒感は、18例のみでした。
 次をお願いします。紫で字を反転しているところが、取りあえずというか、今回検討したかった、インフルエンザウイルス、SARS-Cov-2、RSウイルスになっております。左から、ARIの中でどれだけのパーセンテージが検出できたのか、パーセントがずらっと並んでおります。それに対して、1個を飛ばしていただいて、「アレルギー様(-)」と書いてあるところは、アレルギー様疾患がなかった人たちということになっております。ざっと見ていただくと、ほとんどの数字、パーセンテージが変わっていない。25.8%のB型インフルエンザに対して25.9%で、数字がほとんど変わっていないことが見てとれるかと思います。真ん中に、インフルエンザ様疾患があります。ざっと見ていただいても、インフルエンザ様疾患の場合の検出割合は、特にインフルエンザでは7ポイントぐらい高くて、SARS-Cov-2は同様で、RSに関しては0.2ポイント低いという状況です。その2つ隣の「アレルギー様(-)」と書いてあるところとILIのところを見ていただきますと、この数字自体にはほとんど差がなかったというところが見てとれるかと思います。
 次をお願いします。症状別に陽性的中率を算出しております。釈迦に説法で大変申し訳ございませんが、症例定義に該当するもののうち当該ウイルスが陽性であった割合を「陽性的中率」と呼んでおり、特に注目していただきたいものは、一番右側、「RS virus」と書いてあるところのPPVなのですが、「発熱38℃以上」が上から6個目のところにあって、0.05と書いてあります。その3つ上に上がっていただくと、「呼吸苦」のPPVが0.2で、この群でのRSウイルス感染症の的中率が最も高いということになっております。特にインフルエンザBが流行していた時期ですので、そこでのPPVは押しなべて症状としては高いということがありますが、先ほど申し上げたとおり、アレルギー様症状ではいずれも的中率が低かったということになっております。
 次をお願いします。考察なのですが、1月から3月において、全国21か所の医療機関で実証研究を実施できました。B型に関しては、ILIの症例定義を用いた場合の検出割合は高いのですが、SARS-Cov-2では変わらず、RSウイルスのときにはARIがやや高かったということがあります。また、アレルギー様症状を除外しても、検出割合の改善はしなかった。陽性的中率は対象ウイルスによって異なるというところがありますので、今回、3ウイルスをターゲットにしているところもありますし、WHOなどでも、RSを対象疾患として入れる場合のサーベイランスではARIによる感度上昇が期待できるということがあります。3ウイルスを検討していく場合に、一番重要なARIサーベイランス、検出割合でのトレンド把握のためにも、分母情報、陰性情報を含めて検討していく必要があります。今回、この実証を踏まえて我々として提案することは、ARIの症例定義を用いたサーベイランスがよいのではないかということで、結論とさせていただいております。
 ありがとうございました。
○脇田部会長 神垣先生、どうもありがとうございました。
 ただいま、資料1に関しては、特定感染症予防指針の策定、急性呼吸器感染症(ARI)と重症呼吸器感染症(SARI)の発生動向の把握について、現状と課題、その方向性についての御説明をいただきました。また、神垣先生からは、ARIサーベイランスの実施に向けた研究の結果を御説明いただいたということになります。今日は、皆様から、これに関しての御意見をいただいていきたいということでございます。
 成田先生は、今日、御欠席なのですけれども、御意見をいただいているところなので、事務局から代読していただけるということです。
 よろしくお願いします。
○杉原エイズ対策推進室長 ありがとうございます。
 先に、成田委員からいただいております御意見を代読させていただければと思います。
 まず、資料1の今後のARIの取扱いについてです。
 ARIの把握方法どう考えるかという点でございます。現行の5類感染症定点で把握していたARIに含まれる感染症は、今後はARIとして包括的にサーベイランスをするのか。現行のサーベイランスは維持すべきと考える。
 ARIの症例定義をどのように考えるかということでございます。ARI定点のサーベイランスで把握した情報をどのようなアクションにつなげるのか、お示しいただきたい。症例定義に発熱を入れたほうがよいと考える。どのような症例定義がよいのか等を考えるに当たりまして、先行自治体のARI定点サーベイランスの事例も紹介いただきたい。
 ARI定点の在り方をどのように考えるかという点です。ARI病原体サーベイランスでは、病原体定点医療機関に機器を設置して医療機関において検査を実施するよりも、地衛研で実施したほうが、効率がよいと考える。また、医療機関において検査を実施する場合は、医療機関の負担も併せて検討いただきたい。ARIの病原体定点は全都道府県が指定するのか、指定数の考え方について、お示しいただきたい。また、検体搬入数の目安の方針等についても、併せてお示しいただきたいという御意見をいただいております。
○脇田部会長 ありがとうございました。
 具体的な御意見や御質問があったので、後ほどまた事務局からレスポンスをいただくとして、四柳先生、まだいらっしゃいますか。
○四柳委員 まだおりますけれども、チャットに入れさせていただきましたので、それに対して御検討いただければと。5点ほど、長いチャットを入れましたが、お願いできればと思っております。
○脇田部会長 承知しました。
 それでは、委員の皆様から、御意見をいただければと思います。
 谷口先生、お願いします。
○谷口委員 ありがとうございます。
 国際的な方向性に従った、しかも、今後のパンデミックにどうしても必要なサーベイランスだと思います。実は、個人的にはとてもうれしいです。
 ただ、多くの場合、アメリカは、NREVSS、つまり、ウイルスが対象で、イギリスも、Respiratory DataMartはウイルスが対象なのです。今回は、細菌も入っているのです。これは国の状況に従って考えればいいと思うので、これに対して異論はないのですが、そもそもrespiratory virusesでpandemic potentialとついていますので、D68などでも大きな流行を起こすことがありますので、この感染症法に規定されている疾患だけではなくて、ヒトメタニューモあるいはライノ、エンテロといったpandemic potentialがあると考えられるウイルスも、病原体サーベイランスとしては、一緒に入れていただければと思うことが、1点。
 もう一つ、これから検討されるのかもしれませんが、定点は、欧米では、かなり目的に沿った定点を、負荷を配分するというところで、いろいろな性格を持った医療機関に配分していますが、それについて、考えられているところがあれば、御教示いただきたい。
 この中にインフルエンザウイルスのstrain surveillanceが入ってくると思うのですね。strain surveillanceは、今回のサーベイランスとは若干目的が違って、次期ワクチンという目的がありますので、一定数が必要になると思うのです。その検体の採取戦略も一緒に考えていく必要があると思いますので、そういったところは恐らく今後詳細を詰めていくのだろうと思いますが、現時点でのお考えがあれば、教えていただきたいと思います。
○脇田部会長 ありがとうございました。
 それでは、御意見を伺ってまいります。
 今村先生、お願いします。
○今村委員 今村です。
 今回発表された内容は、今後に向けた非常に重要なサーベイランスの方向性であり、その移行を目指すことを評価したいと思います。
 特定感染症予防指針の取扱いについて、インフルエンザに関する特定感染症予防指針を廃止して、新たに急性呼吸器感染症に関する特定予防指針を包括的に策定するという方向性、そして、その対象を、資料1の4ページに示された1.及び2.に含まれる感染症とすることにも、全般的には賛成ですが、谷口委員も述べられたように、対象疾患の範囲については、さらなる検討が必要かもしれません。
 一方で、資料内にも課題として挙げられているように、各疾患における発生動向の把握方法及び症例定義については、さらなる議論が必要であると考えます。
 また、重症呼吸器感染症(SARI)をREBINDの新規対象感染症として追加することにも、異論はありません。それによって、国内で発生する重症呼吸器感染症をより早期に感知して、その病態や病原体の解析につながることを期待します。
 対象疾患の範囲を拡大させていくことに併せて、現場対応における負担軽減や得られた情報が早期に利活用できるようにすることについても、さらに検討を進めていただけたらと思います。
 こちらからは、以上です。
○脇田部会長 ありがとうございました。
 次に、笹本委員、お願いいたします。
○笹本委員 御説明をありがとうございました。
 ただいまの特定感染症予防指針の取扱いの方向性案と急性呼吸器感染症に関する特定予防指針として取り扱うことに関しまして、賛成でございます。
 一方で、8ページの把握体制について、質問がございます。把握体制案によりますと、軽症例の疾患特異的なものの発生動向調査は、定点把握と全数把握とございます。これまでの定点報告等の医療機関の内容に比べて報告の負担が増えないようになっているかどうかという疑問がございます。
 もう一点、診断に用いるキットや解析装置に必要なキットなどが、流行期におきましても潤滑に提供されるかどうか。
 この2点が担保されているかどうかをお伺いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 以上です。
○脇田部会長 ありがとうございました。
 次に、白井委員、お願いします。
○白井委員 白井です。よろしくお願いいたします。
 ARIのサーベイランスについては、資料から拝見しましたけれども、発熱がない状態でも把握率がいいという形で、現実的になっているのではないかと思います。特定感染症予防指針についても、インフルエンザを包括した形での指針をつくっていただくということに賛成いたします。
 また、神垣先生からとても興味深い資料をいただきまして、少し質問です。医療機関のn数が21ということで、決して多くはないと思うのですけれども、どのような形でこれを選定されたのかなと思いました。割と平均的なよく把握できているようなところなのかなと思ったのですけれども、それを全国の定点に活用するとしたら、今の定点のいろいろな背景としましては、診療所、医療機関、病院であっても、地域の医療資源の変更というか、少し代替わりがあったり、医療機関の編成・移転があったりという問題もありますので、そういうことも含めて定点を見直すチャンスもあるのではないかと思いました。
 四柳先生も書いていらっしゃいましたが、現在の定点は小児科が主になっているところが多いので、成人、高齢者もどのように把握するのか、その定点の在り方としても、考えるチャンスになるかと思います。今、A群溶レン菌感染症がはやっていますけれども、小児だけではなく成人の把握もきちんとする必要があるのではないかという思いでありまして、そのような意見を申し上げたいと思います。
 以上です。
○脇田部会長 ありがとうございました。
 次に、越田委員、お願いします。
○越田委員 私も、基本的には、事務局案に賛成です。
 特に、今回、ARIという形で一まとめにして疾患を定義するということに関して、賛成です。実は現場では「新型インフルエンザ等」という言葉にかなり振り回されているところがあるので、こうして大きくくくってしまったほうが、現場対応は柔軟にできるのではないかという感じがいたします。これまではどうしても「インフルエンザ」という言葉に引っ張られていたのではないかと思っています。新型コロナの初動に関しましても、本当は我々自治体でも「新型コロナウイルス等感染症に対する行動計画」を作成していたのですが、当初はCOVID-19が指定感染症にに位置付けられたので、行動計画を読み込むことをあまりしませんでした。広い意味での呼吸器感染症という形の対処方針、予防指針があったらいいなと思っております。
 4ページにございます定義について、ここで国内での発生がまれな疾患を除外してありますが、実際にこういう感染症がが入ってきたときに、まずはバイブルとしてのよりどころが必要ではないかなと思います。SARSやMERSのように、未知の指定感染症や新規感染症が入ってきた場合に、初道のための何らかのよりどころがないと、また混乱が起こるのではないかと思います。できればゾーンセクションという形で含めたほうがいいのではないかという気がいたします。また、どうしても小児科定点に引っ張られる形のサーベイランスになりますが、実際に指針をつくるに当たっては、ヘルパンギーナや咽頭結膜熱まで含めていいのかどうかという点は、小児科医としては、疑問に思ったりもするところでございます。むしろ、今回のコロナ等、パンデミックになるような疾患に絞ってもいいのではないか。その様な気がいたします。
 REBINDにSARIを加えることに関しては、大賛成でございます。
 以上です。
○脇田部会長 ありがとうございました。
 そのほかはよろしいですか。
 四柳先生は、お話しにはならなかったのですけれども、一応、チャットに書いてありますが、少し読むという感じで御紹介したいと思います。
 資料1に関しては、ウイルス性呼吸器感染症に関して、既に動いているサーベイランスシステムが自治体やアカデミアなどに幾つかある。サーベイランスの方法はそろわなければいけないので、お互いに協力して、よりよい在り方を議論することも大切。
 2番目に、ウイルスを念頭に置いたものであるが、細菌感染症に関して、今回挙げられた感染症は薬剤耐性が問題になっているものが多いので、JANISなどとの連携も大切。
 3番目として、ウイルスの主なシステムは小児をターゲットにしたものであるので、小児科医を中心に協力体制が構築されており、実績も上がっている。この先の問題は、高齢者。特に高齢者施設の入所者を対象としたサーベイランスが、この先は大切。
 4番目、呼吸器サーベイランスとは少し離れるが、下水サーベイランスの在り方をしっかりと議論すべきである。高齢者施設でも、下水サーベイランスが国の主導でパイロット研究として行われ、自治体や民間でも研究が行われている。下水のお話ですね。
 5番目に、SARIのREBINDの追加に関しては、賛成しますということでございました。
 それでは、今いただきました御意見に対して、最初の成田委員からの御意見も含めて、事務局からレスポンスをいただければと思うのですが、いかがでしょうか。
○杉原エイズ対策推進室長 たくさんの御意見をいただきまして、ありがとうございます。
 まず、把握方法に関しまして、成田委員からも御指摘がございましたが、5類感染症に関してどのように包括するかということです。現状については、呼吸器感染症に関しては、個別で動向を把握しつつ、そこに併せてその他のものも含めて急性呼吸器感染症として定義する形を想定はしておりますが、これに関しても、現場の方々の御意見等も踏まえて、どのような形にしていくかということで、具体的な定点の設定方法について、また、症例定義に関しても、今回、研究発表もいただきまして、御意見もいただいたところですが、これらも踏まえて、どのような形にしていくのか、具体的な感染症はどれを盛り込むのか、指針に関してもそうですけれども、サーベイランス体制にしても、整理を進めていきたいと考えているところでございます。
 また、先行自治体の定点のサーベイランス事例の紹介に関しても、これまで、今回の研究以前にも、様々な研究がなされております。そちらに関しても、また次回以降のタイミングで御紹介させていただければと思っております。
 サーベイランスの病原体の部分に関して、医療機関で行うことと地衛研で行うこと、どちらの効率がよいのかというお話に関しても、迅速性やそれぞれの特徴があるかと思いますので、それらも踏まえまして、今後、検討を進めていければと考えております。
 指定の数や定点に関しての検体搬入数の目安に関しても、非常に重要な各論の論点でありまして、先ほど笹本委員からも御指摘がございましたが、報告負担にもつながってまいりますので、そういったところに関しても、今後、具体的な設計の中で、検討を進められればと思っております。実際に、定点の報告の負担に関しましては、御指摘のあったとおり、急性呼吸器感染症になりますと、その数が増えますので、そういったところの報告負荷が増える可能性はあるのですが、それに関しても先行で実験を実施している自治体等もございますので、そういうところの御意見等も、今後、踏まえていく形でできればと考えております。
 検査キットの供給に関しましては、外来でも、いわゆる新型コロナの定点に関しましては、今回はインフルと新型コロナで1つの定点になっておりますけれども、基本的には協定を締結していただいていることが前提になっております。今後も新型コロナを診療することが前提になっておりますので、そういう観点では、そういったところで優先的に診断がなされていくことになりますので、そういった形で担保をする形になるかと考えております。
 高齢者をどう把握するかということは、実際にどのように診断をするかというところに絡んでおりまして、特に、RSウイルス感染症とかですと、診断キットの適応等の課題もあります。こちらに関しても、病原体での把握と患者の把握という2つの方法論があるわけですが、それらも踏まえて、どのような形がいいか、現状も踏まえて、検討したいと思っております。
 事務局からは、以上です。
○脇田部会長 ありがとうございました。
 神垣先生に白井先生から御質問がありましたので、神垣先生、お答えできますでしょうか。
○神垣参考人 御質問いただき、ありがとうございました。
 先生がおっしゃるとおり、私が今日お示ししたデータは、谷口先生に非常に御尽力いただきまして、もともとSpotfireやFilmArrayの検査機器があるところにアプローチをして集めたデータです。一方で、今日は時間の関係でお示しできなかったのですが、2つ目の実証として、病原体定点のところにSpotfireを導入して、実証というか、検査をしたところがあります。こちら側と、RSなのですけれども、陽性率はほとんど変わらず検出しておりまして、病院、少なくとも病原体定点と言われるところで、このようなサーベイランスを稼動させることによって、動向の把握は非常にうまくいくのではないかなと考えております。資料をお示しできず、申し訳ございませんが、そのような状況です。
○脇田部会長 どうもありがとうございました。
 いかがでしょうか。今まで、おおむね今日お示ししていただいた資料の方向性には賛成するという意見が多かったのですけれども、その上で、少し論点をいろいろと挙げていただいたということになります。今日結論が出るわけではないので、さらに検討を進めていくという方向性を事務局にもお話しいただいています。その上で、さらに追加の御意見等があれば、承りたいと思いますが、よろしいでしょうか。
 特にこの時点でなければ、先に進みますね。
 今の議題1ですけれども、皆様の御意見を踏まえて、さらに議論が必要だと思いますので、事務局のほうでまた検討を引き続きよろしくお願いいたします。
 それでは、議題2に参りたいと思います。
 「新型インフルエンザ対策における今後のワクチン・治療薬の取扱いについて」ですが、冒頭に事務局から説明がありました当部会の審議参加規程に基づいて、恐れ入りますが、中野委員に、一時、御退席をお願いすることになります。議題が終了しましたら、事務局からまた中野先生には御連絡を差し上げるところであります。よろしくお願いいたします。
(中野委員退室)
○脇田部会長 それでは、事務局から、資料2に基づいて、御説明をお願いいたします。
○竹下パンデミック対策推進室長 それでは、資料2-1、資料2-2、資料2-3とありますけれども、資料2-1から御説明させていただきます。
 資料2-1「抗インフルエンザ薬の今後の備蓄(確保)方針について」は、先日のMCM小委員会でも御議論いただきました。
 めくっていただきまして、現行の抗インフルエンザ薬の備蓄方針でございます。今、行動計画の議論がございますが、これは現時点版の行動計画ベースの記載でございます。行動計画とガイドラインの記載がございますが、全罹患者の治療、その他の医療対応に必要な量を目標として備蓄することが決定されております。それに基づきまして、ガイドラインで、備蓄目標量として4500万人分、この中には、流通備蓄1000万人分、行政備蓄として国と都道府県で3500万人分を備蓄することとなっております。なお、備蓄の種類には多様性を持たせるということでございまして、市場に流通しているものに加えて、ファビピラビルを200万人分備蓄ということで、この4500万人分に加えて200万人分を備蓄することが決まってございます。備蓄の薬剤の割合自体は、ここに記載がございますとおり、市場流通の割合や想定する新型インフルエンザウイルスによる疾病の重症度を踏まえるものとなってございます。
 次をよろしくお願いします。今、ガイドライン・行動計画等の議論がございますが、その中で、今後検討する内容としまして、備蓄方針について、議論をさせていただきました。ファビピラビルは、一般流通はしていないことから、国が備蓄することとなっております。そういうことではございますが、パンデミック初期の研究において、ファビピラビルについてもほかの5剤と同様に活用される可能性があること、催奇形性などの課題はありますが、パンデミック時には丁寧な注意喚起を行った上での使用が想定されることから、今後は備蓄目標量の4500万人分の内数として備蓄することとしてはどうかということを今回は提案させていただきたいと思います。なお、ファビピラビルについては、引き続き、ほかの抗インフルエンザ薬が無効または効果が不十分な場合で、厚生労働大臣が使用と判断した場合のみ使用することとしたいと考えています。このファビピラビルにつきましては、先日、5月24日に、SFTSについての承認が取れてはございますが、インフルエンザについては、引き続き、ほかのインフルエンザ薬が無効または効果が不十分な場合ということになっておりますので、このような対応とさせていただくことを提案させていただきたいと思います。
 続きまして、資料2-2になります。「プレパンデミックワクチンの今後の備蓄の種類について(案)」でございます。これは、先日、新型インフルエンザ小委員会で御審議いただいた内容でございます。
 プレパンデミックワクチンの備蓄の経緯です。平成9年から、鳥インフルエンザに対して備蓄の検討が始まっておりまして、平成18年から、備蓄を行うこととしております。当初はH5N1でしたが、世界的な流行状況に合わせてH7N9株に変更したのが第25回厚生科学審議会でした。これは平成30年ですけれども、その後、さらに世界の流行状況が変わってきておりまして、H5亜型のほうが主流になってきたということでございまして、令和5年の厚生科学審議会感染症部会で、改めて、今度はH5亜型に変えたということです。昨年は、H5N8のAstrakhan株をワクチン株とすることとしております。このときは、H5亜型の中でも、H5N1のものでワクチン株として世界的に安全性等まで確認されているものがなかったということで、H5N8のAstrakhan株にしております。今後備蓄する亜型について検討をしているものが2.以降でございますが、端的に申しますと、昨年度から今年度にかけて、亜型のリスクアセスメントとして、変更されているものではございません。
 次のページをめくっていただきたいのですけれども、ちょうど下線部が引いてあるところです。哺乳類の感染例は多数報告されていること、また、H5N1へのヒトの曝露機会が増加していて、今後も散発的なヒトの感染例が報告される可能性が高いという状況でございます。こういった状況を踏まえまして、H5亜型、Clade2.3.4.4bのワクチン株が引き続き必要ということですが、今年度につきましては、入手されるものとして、H5N1で安全性及び抗原性についてWHOによる確認が完了したワクチン株として、A/Ezo red fox/Hokkaido/1/2022(NIID-002)がございます。流行株とワクチン株の抗原性の比較等を行っておりますが、最近の流行株に対しても非常によく反応したと判断されたこともありまして、今回の備蓄するワクチン株の追加については、A/Ezo red fox/Hokkaido/1/2022(NIID-002)とすることはどうかということを、今回、提案させていただきたいと考えております。令和7年度以降に備蓄するワクチン株の変更については、引き続き、企業の製造可能性を含めて、最新の知見を踏まえて検討を行っていくことも、併せて提案させていただきたいと思います。
 続いて、資料2-3でございます。こちらにつきましては、「プレパンデミックワクチンの開発体制について」、今後どのように進めていくかということを提案させていただく内容でございます。
 1ページをめくりまして、現行の行動計画及びガイドラインに書いてある内容でございます。プレパンデミックワクチン自体は、行動計画で、原薬の製造・備蓄を進めていくことを記載されておりまして、予防接種に関するガイドラインで、実際にこの株を用いてプレパンデミックワクチンを接種した者の保存血清から交差免疫性を確認できるようにしておくことまでが記載されております。
 次のページをお願いします。これは、今回の改定予定で今検討されている行動計画とそれに合わせてのガイドラインの内容でございますが、これまで実施している内容をより詳細に記載していく必要性があるということを考えておりまして、タイムスケジュールを含めて、提案させていただいているものでございます。
 次のページで、詳細を説明させていただきます。現在の開発体制ですけれども、平時と有事で分けさせていただいています。平時には、まず、ワクチン株を作成または輸入をした上で、今回のこのような会議でワクチン株を決定した後に、企業で増殖能・製造可能性の検討を行って、実際に製造した場合には、製造・品質試験を行って、納品する形になります。その納品されたものを使って感染研または企業で動物の攻撃試験などを行った上で、製剤化したものを用いて今度は臨床試験をし、その製剤化の臨床試験をした者の血清を保存するというところまでが、平時のプロセスでございます。実際の有事、何か問題が起きたとき、または、パンデミックの疑いが非常に強いものが出てきたときには、その保存された血清を用いて、流行株との交差反応性を見た上で、実際に有効かどうかということを検討した上で、有効性が期待されれば、必要な薬事法の手続を行った上で、接種を開始するものでございます。
 次のページをお願いします。ワクチン株の決定ですけれども、毎年2月と9月にWHOワクチン推奨株選定会議において、季節性のインフルエンザのワクチン株だけではなくて、Zoonotic influenza、つまり、動物由来のインフルエンザについても議論がされております。例年のスケジュールはある程度決まっておりますので、これに基づいてのスケジュールを事前にセットして、今後、検討していくことを明確にしていきたいと考えております。2月から3月にかけての選定会議を基に、感染研によるリスク評価を行った上で、ワクチン作業班または小委員会を開くことによってある程度の方向性を決めた上で、5月から6月にかけての感染症部会ではプレパンデミックワクチンの購入すべきワクチン株を決定していきたいと考えております。決定した後に、感染症法、家畜伝染病予防法、カルタヘナ法による手続を行った上で、製造販売業者へワクチン株を供与していくということで、製造プロセスを進めていきたいと思います。また、9月のワクチン推奨株選定会議の後に、感染研によるリスク評価を行っていくということで、進めていきたいと考えております。当然、パンデミックによるリスクの高いインフルエンザの流行が見られた場合には、このタイミング以外でもリスク評価とワクチン株に関する検討を行いたいと考えております。
 次のページを見ていただきたいと思います。プレパンデミックワクチンのワクチン株の決定の考え方を、具体的な段階ごとに、記載したものでございます。WHOが指定したワクチン株の中から感染研に保管するワクチン候補株を納入し、その中から、科学的な要件の確認を行った中で、ワクチン候補株を決めていくという形にしたいと思います。さらに、ワクチン候補株の中で、企業での製造可能性があるものを確認した上で、ワクチン作業班/新型インフルエンザ対策に関する小委員会で検討した後に、感染症部会で承認を受けたものがワクチン株になっていくというプロセスで進めていきたいと考えております。
 以上でございます。
○脇田部会長 御説明をありがとうございました。
 抗インフル薬の備蓄の件が1点目、プレパンデミックワクチンの株の変更のお話、今後の備蓄の種類、さらに、プレパンデミックワクチンの開発体制について、今後のプレパンデミックワクチンのワクチン株の決定の考え方といいますか、スケジュールと開発体制というか、そういったところをお示しいただきました。
 それでは、皆様から御意見をいただければと思いますが、いかがでしょうか。
 谷口先生、お願いいたします。
○谷口委員 御説明をありがとうございました。よく分かりました。
 以前にも一度申し上げたことがあると思うのですが、抗ウイルス薬は結構高いと思うのですが、期限が来たら廃棄するということはとてももったいないと思います。欧米では、リボルビング備蓄、つまり、順に回していって、常に最新のものが手元にあるという形でやっているところがあると思うのです。日本は、構造としては、そういったことは難しいのでしょうか。物価も高いことですしと思いまして。
 以上です。
○脇田部会長 ありがとうございました。
 大事な御指摘だと思います。
 続きまして、笹本委員、お願いします。
○笹本委員 日本医師会の笹本でございます。御説明をありがとうございました。
 ただいまの抗インフルエンザ薬の今後の備蓄方針案、プレパンデミックワクチンの今後の備蓄案、プレパンデミックワクチンの開発体制案とワクチン決定の考え方については、賛成でございます。
 一方、お聞きしたいのは、パンデミック発生時に、このような抗インフルエンザ薬の大量生産あるいはワクチンの大量生産が本当に可能なのかということは、心配しております。現在、ワクチン及び医療用医薬品の出荷停止・出荷調整が繰り返されておりまして、製造工程の老朽化等がかいま見えるような現状でございます。改めて、パンデミック発生時の大量生産が可能なのか、体制の確認等が行われているかなどを伺わせていただきたいと思います。
 以上でございます。
○脇田部会長 ありがとうございました。
 それでは、今、ほかに手は挙がっていないようです。
 谷口先生、笹本先生から、御意見、御質問がございましたので、事務局から、レスポンスをいただければと思います。
○竹下パンデミック対策推進室長 ありがとうございます。
 まず、谷口先生から御指摘のありました、抗ウイルス薬の、リボルビングを含めた、より安定的なというか、経済的な効率性も含めての考え方ということでございます。この件は以前から指摘をされていると承知しておりまして、例えば、原薬備蓄の形を取る、科学的な妥当性やそういった知見を基に備蓄数の変更をしていくという形で、対応をさせていただいております。実際に期限が来たものについては廃棄という形になってはいるのですけれども、そういった形で、より適正な形で、または、効率的にできることがないかということは、今後も模索していきたいと考えております。
 また、笹本先生からありました、インフルエンザのワクチン、特にパンデミックが起きたときのワクチンということだと思いますけれども、細胞培養法の製造に対しては、6か月以内に全国で製造できる体制は、H5N1については、整備をしたところでございます。亜型やそういったものについて、それぞれ対応できるかどうかというところはございますので、それについては、これまでも、各社にできるかどうかというところを確認しながら、進めているところでございます。一方で、このプレパンデミックワクチンの備蓄等を通じて実際に製造できるところも確認しているところでございまして、そういったところを用いて、速やかに製造できるよう、検討していきたいと考えております。
 また、先ほどチャットでございましたところではございますが、数をどうしていくのかということは、今後、確かに検討を進めていく必要性があると考えております。
○脇田部会長 ありがとうございました。
 戸部先生からも、チャットに御意見をいただいています。資料2-1に関して、今回の御提案に異論はありませんが、これまで国家備蓄を放出したことがないということで、ひょっとしたら備蓄し過ぎなのかもしれないと思いました、予防的な対応として、万が一を想定としてのこととは思いますが、対策の結果を随時適切に見直して対応を柔軟に修正していくことも予防原則に随伴する重要な視点ですということです。スリム化の可能性を含めて検討すべきと思いましたということでしたね。
 ありがとうございます。
 今日は、資料2-1の、ファビピラビルの備蓄分を4500万人分の内数に含めるという変更案の御提案、資料2-2の、プレパンデミックワクチンの備蓄すべきワクチン株について、Ezo red fox株、H5N1株に変更するというところ、資料2-3の、最後のところが一番重要かなと思いますけれども、ワクチン株の決定の考え方、進め方についてというところを御提案いただいて、もし御異論がなければ承認をしていただくということかと思いますが、さらに、御質問、御意見等があれば、伺いたいと思います。いかがでしょうか。よろしいですか。
 大きな御異論はないということと思いましたので、事務局からの御提案の案については、感染症部会として了承することにしたいと思います。
 ありがとうございました。
 それでは、次の議題に入りますので、事務局から、中野委員に、入室の御案内をお願いできますでしょうか。中野先生が入室されたら、次の議題に進みたいと思います。
(中野委員入室)
○脇田部会長 それでは、議題3に進みたいと思います。
 事務局から、議題3について、御説明をお願いします。
○杉原エイズ対策推進室長 ありがとうございます。事務局でございます。
 資料3を1枚めくっていただいて、実施結果を御覧ください。新型コロナの抗体保有割合実態調査については、これまで、累次の調査を行ってまいりました。この感染症部会でも、コロナの5類移行の昨年の春のとき、そして、その後のフォローとして、昨年12月にも御報告させていただいておりますが、それらにつきまして、今年の3月までのまとめが出来上がりましたので御報告させていただきます。こちらが、これまで新型コロナに関して実施してまいりました抗体保有割合実態調査あるいは血清疫学調査の全体像のまとめとなります。新型コロナでは、複数の手法を用いて実施してまいりました。当初の段階では、輸血の制限等、いろいろな制限もありましたので、住民基本台帳からの無作為抽出者等を対象とした住民調査を行いました。これらを2022年4月まで行ってまいりまして、それ以降、住民調査と並行して、その前の段階で献血等に関しての規制が変更されたことがありまして、その後、献血の検査用検体の残余検体を用いた抗体保有割合実態調査を、感染症法に基づいて国が行う積極的調査の一環として、実施してきたものでございます。これが実際に始まったのは2022年11月からでございます。これ以降、献血の調査に関しては、累次、行っておりまして、同時に、献血検体の場合は16歳未満と70歳以上は含まれないということもありますので、全年齢の調査をするために、民間検査会社の血液検査の残余検体を用いた実態調査と、これの妥当性も評価するという観点で、別のポピュレーションを使うということで、健診での血液検査の残余血液を用いた抗体保有割合実態調査も並行して行いました。これらにつきましては、第81回感染症部会、12月の感染症部会のときにも御説明させていただきましたが、これに加えまして、今回、小児における検体の残余血液を用いた抗体保有割合実態調査も実施したほか、その後、1月と3月に、それぞれ、献血と民間検査会社での調査を行っておりますので、これらの結果を踏まえまして、御説明させていただければと思います。
 次のページをお願いいたします。こちらが、献血検体の抗体保有割合実態調査での実際の抗N抗体保有割合の推移の全体像でございます。献血調査に関しましては、抗N抗体の保有割合は、これは全体の都道府県人口や年齢の補正を行った上での数値になりますが、第1回の2022年11月のときには28.6%であったものが、第8回の今年の3月には64.5%まで上昇しておりました。同時に行っております民間検査会社の残余血液を用いた抗体保有割合を見ましても、2023年7月には45.3%、今年の3月に同時に行ったものでは60.7%ということで、同じように上昇傾向が見られております。健診調査につきましては、11月のときに実施しておりまして、このときは、民間検査会社の調査と同じような数字ですけれども、53%という数字でした。
 次をお願いいたします。こちらは、年齢別の報告になります。献血の調査は、先ほどお話ししたとおり、年齢群が16~69歳ということで、その年齢層で比較しておりまして、民間検査調査では、全年齢群を対象にしております。5歳以上の低年齢層は抗N抗体保有割合が高く、年齢が上がるにつれて抗N抗体保有割合が低くなっているところが見てとれます。
 次をお願いします。0~4歳で民間検査調査を実施しているのですが、これだと、母体からの移行抗体の影響とか、小児における抗体の保有状況はなかなか分からないということがございましたので、これを踏まえまして、同時期に小児に特化した調査を実施していただいております。こちらは関連学会の協力を得まして実施したものですが、小児科の医療機関での採血の残余検体を使っておりまして、0.5~1.5歳、6~17か月齢を対象に実施しております。実際にこちらのグラフを御覧いただければと思いますけれども、0.5~1.5歳の年齢層で実施した抗体保有割合については、民間検査調査と比べても低かったという結果です。こちらは、年齢対象が狭いため、民間検査調査における1.5~4歳の累積感染者数が抗体保有割合に反映されていなかったためと考えております。こちらに関しましては、この後、鈴木参考人から詳細の御説明をいただきます。
 次のページを御覧いただきまして、新型コロナにおける血清疫学調査の結果を踏まえまして、今後の感染症危機における血清疫学調査の考え方ということで、簡単に、これまでの振り返りという形で、御提示させていただいております。実際、新型コロナの初期のときの血清疫学調査のときは、既存の血清の抗体保有者が存在しない感染症を調査対象とする場合において、未診断・未報告の感染者を含む全ての既感染者数割合の代替指標として、流行の規模や拡大の程度の把握で感染症の発生動向調査を補完することが可能である、特に検査用検体の残余血液を用いたコロナの血清疫学調査は大規模で必要に応じて実施することが可能であったということで、特に2023年以降の国内の感染者数の推移については、非常に有用な知見を提供することできたと考えております。また、感染の防御免疫に相関する抗体価を測定することで、感染者と免疫保持者を区別して、感染リスク集団の特定など、公衆衛生対策に資する知見の創出に寄与する可能性があるということでございます。一方で、この調査手法に関しましては、実施方法で、様々な検討の上で行ってまいりましたが、年齢層や地域が限定されて偏る可能性があること、被験者の基礎疾患の収集の有無などの情報をどのように収集するかということ、収集が実際は難しい場合もあるわけですが、こういったことで、単一の手法だけではなかなか全体の抗体保有割合の把握は困難ということで、複数の割合を組み合わせることで総合的に評価する必要があると思っております。今回、重層的なサーベイランスということで新型コロナのサーベイランスを行ってまいりましたが、血清疫学調査は他のサーベイランスと並行して実施していく、また、可能な範囲で、複数の手法で経時的に実施するということが必要であると考えられました。
 残りの資料は、参考資料ですので、説明は省かせていただきたいと思います。
 事務局からは、以上です。
○脇田部会長 ありがとうございました。
 そうしましたら、次に、鈴木参考人から、御説明をお願いします。
○鈴木参考人 鈴木からは、参考資料3-1を御説明させていただきます。
 先ほど事務局からありました、今回新たに実施しました小児における検査用検体の残余血液を用いた抗体保有割合実態調査、通称「小児調査」について説明させていただきます。こちらの調査の背景としましては、これまでに民間検査調査として、全年齢層を対象とした抗体保有割合の調査を実施してまいりましたが、その中で0~4歳という年齢区分を詳しく見ていきますと、1歳未満の抗体保有割合、特に抗S抗体の保有割合が1~9歳と比べて高いという結果が得られており、これは母体からの移行抗体の影響が考えられました。民間検査調査においても0~1歳の年齢層は、得られる検体数が限られていることもありまして、民間検査調査で得られた結果は本当にこの年齢層に対する感染を反映しているのか、移行抗体の影響だけを見ているのかということの評価が十分にできていなかったということで、今回、特別に、1歳半未満を対象としまして、月齢ごとに抗体価の変動を詳細に評価していくことを試みました。さらに、移行抗体の影響を評価するためには、IgG抗体とIgA抗体の2種類のアイソタイプを比較していくことによって、その影響を評価できるということが他の感染症に対する抗体調査で知られております。そこで、今回、これまで実施してきた他の抗体保有状況に関する調査とは異なり、アイソタイプごとに抗体保有割合を出して、考察をしています。また、これまでの調査で使ってきました検査系ですと、検査用検体が200マイクロリットル以上必要ということで、小児において、検査に必要となる血液量が残っている検体を確保することが困難であったという民間検査調査での経験を踏まえ、50マイクロリットル程度の小容量で検査を実施できるように検査系を変更して調査を実施しております。こちらに調査の結果の要約を示します。まず、1つ目として検出可能な抗N抗体と抗S抗体の移行抗体の残存期間が異なっているということが分かりました。抗N抗体は5か月齢まで、抗S抗体は14か月齢まで、移行抗体が検出されておりまして、移行抗体が検出される時期は抗体検査で児への感染・ワクチン接種による抗体保有状況の評価は困難であると考えられます。移行抗体の影響がない月齢で抗体保有割合を計算しますと、6~17か月齢の抗N抗体の保有割合は26.8%。抗S抗体におきましては、15~17か月齢の抗体保有割合が36.4%、同じ時期で抗N抗体の保有割合は、31.8%という結果になりました。注意すべき点として、こちらの抗S抗体の保有割合は、発症予防レベルの抗S抗体を保有している者の割合ということではなくて、今回の検査系で陽性と判断できるレベルの抗S抗体を保有している者ということになっております。
 次のページをよろしくお願いいたします。少し詳しくデータの説明をさせていただきます。抗S抗体価と抗N抗体価、それぞれIgG・IgAのアイソタイプの経時的な変化を見ておりますが、上段のIgG抗体は、抗S抗体・抗N抗体ともに月齢が上がるに従って、低下していきます。一方、IgA抗体のほうは、抗S抗体・抗N抗体のいずれも月齢が上がっていくと上昇していくということがわかります。以上から、教科書的に知られていますように、IgG抗体は母体から胎児に移行し出生直後から漸減していく、一方、IgA抗体は移行しにくいということを踏まえた結果と考えております。
 こちらのデータを基に、それぞれの検査について適切な閾値を設定して、抗体陽性者の割合を算出しましたものが、次のページになります。こちらの結果の解釈ですが、IgG抗体保有割合がIgA抗体保有割合に比べて有意に高い月齢区分においては、移行抗体の影響が強く残っておりまして、その月齢区分におきましては、児への感染・ワクチン接種による抗体保有割合の評価は困難であると考えました。その結果、抗N抗体に関しましては、0~5か月齢までは移行抗体が残存しており評価不能であり、抗S抗体に関しましては、0~14か月齢まで移行抗体が残存しており評価不能であろうと考えました。評価可能な期間に限って考えた場合に、抗N抗体で考えますと、6~17か月齢で26.8%抗体陽性者という結果でした。今までの調査では、1歳未満の抗体陽性割合について移行抗体の影響で実態が見えていなかったですが、2024年1月から2月の時点で、半年齢から1歳になるまでの乳児で2~3割程度の児が新型コロナウイルス感染を経験している可能性があることが、今回の調査で分かったということになります。以降のページでは、詳細なデータと、この調査結果を解釈するための注釈をつけております。
 以上になります。
○脇田部会長 御説明をありがとうございました。
 これまで継続的に行ってきた抗体保有率調査の今回の結果の御説明と、特に、今回は、小児、0歳児の年齢が非常に若いところで、移行抗体の影響を考えた場合の感染の割合といいますか、その推定というところだったと思います。ただいまの事務局と鈴木参考人からの御説明も踏まえて、委員の皆様から、御意見があれば、お願いしたいと思います。
 土井委員、お願いします。
○土井委員 ありがとうございます。
 事務局にお伺いしたいのですけれども、今回の残余血清を用いた献血等の大規模血清疫学調査は、非常に流行状況の把握に役立ちましたし、メッセージングの上でも有用であったと感じております。先ほどの御説明の中で、制度上の問題等があり、2022年でしたか、途中から始まったという御指摘があったと思うのですけれども、この辺は、次の感染症に対応するという観点では、次回には解決しているという認識でよろしいのでしょうか。
○脇田部会長 ありがとうございました。
 後ほど事務局に確認をしたいと思います。
 中野委員、お願いします。
○中野委員 事務局並びに鈴木先生、御丁寧な御報告をどうもありがとうございます。大変よく理解できました。
 移行抗体でS抗体とN抗体を比べると、S抗体のほうが、残存が長い。先ほど鈴木先生にお示しいただいた内容かと思うのですが、今回鈴木先生がお使いになられたキットは、私自身は測定したことがないので、分からないところもあるので、教えていただきたいのですが、ほかのキットとかで測っても、出てくる数値は、N抗体よりS抗体のほうが絶対値が測定値としては高く出る傾向にあるかなと思っているのです。そうなると、S抗体を検出できる感度のほうがいろいろな試薬においても高いので、それで長く残存しているように見えるのかなと、実際のところは、どの分画が防御抗体なのかということはなかなか難しいですし、その辺りの臨床的意義は難しいと思うのです。なぜそれを御質問申し上げたかというと、生後6か月とか、小さい子供さんは、多分、親御さんは、臨床の現場では、すごく注意をして、感染症にかからないように注意していただいている一方で、親御さんが病気になると、どうしても親御さんと分離できないという年齢層でもあるわけです。その中で、私たちは、新型コロナのパンデミックの中で、いろいろな注意点あるいは入院するときにどうしたらいいかということに頭を悩ませながら対応してきたわけなのですけれども、その結果として、現在、1歳半までの子供たちの感染率はそんなには高くない。病原体に曝露されることを避けようとしてきた結果がこうであって、より活動性が高まると感染の機会が高まるという、今の私の解釈で、間違っていないのかなということも確認したかったので、お尋ねしました。
○脇田部会長 ありがとうございます。
 事務局にいく前に、私から、1点。今回は、データをありがとうございました。参考資料3-3の1ページを見ると、民間検査の残余血清を用いた抗体保有率の割合が、年齢別で、4回の推移が出ているのです。それを見ると、70歳以上だと、本当に感染者数はそんなに増えていない。非常に低いところにあって、3割ぐらいしか感染していないのですよね。それとともに、60歳代、50歳代も、5~6割程度になるので、日本においては高齢者の感染割合はまだ低いですから、これからもワクチンの重要性はあるだろうなというところになります。65歳以上は定期接種ということになるので、冬に1回ということになろうかと思いますけれども、それ以外の年齢層においてもワクチンがなるべく受けやすくなるような体制は、ここから見ても、必要ではないかと感じたというコメントをしておきたいと思いました。
 坂本委員、どうぞ。
○坂本委員 すみません。的外れかもしれませんが、今回のこの小児のデータなのですけれども、月齢から考えると、産まれたのは新型コロナが5類になった年かそれ以降のお子さんが主体だと思うのです。そういった医療体制の変更による受診行動の変化がこのデータに何らかの影響を与えた可能性に関して、何かお考えがあれば、お聞かせいただきたいのです。
○脇田部会長 ありがとうございます。
 最後の坂本委員の御質問には、鈴木参考人から、何かコメントはありますか。
○鈴木参考人 今の質問だけでよろしいでしょうか。
○脇田部会長 取りあえず、いいですか。
○鈴木参考人 今のこと、坂本先生からのコメントに関しては、今回使った小児の検体は、特に新型コロナウイルス感染症の過去の診断歴等とかを取得せずに対象医療機関を受診した者の残余血液ということでやっていますので、感染の有無に関しては、バイアスはかかっていないとは考えておりますが、この月齢においては医療機関を受診し採血するような者は、ある程度は限られておりますので、何らかのバイアスがかかっている可能性は否定できないと考えています。ただし、本調査では対象者の情報がほとんど得られていませんので、そこを考察するには情報が足りていないと考えています。
○坂本委員 ありがとうございます。
○脇田部会長 ありがとうございます。
 鈴木参考人、ごめんなさい。ついでに、ほかの御意見にも、何かレスポンスがあれば。
○鈴木参考人 そうしましたら、中野先生からのコメントですが、我々としても、同じように考えておりまして、民間検査調査の同じ時期の0~4歳区分で抗体陽性割合が5割でしたが、同じ時期に実施したこの調査では2~3割ということでしたので、1歳半以降の感染者、1歳半から4歳までの感染者の割合が非常に高くなっていると考えています。2023年5月以降から2024年3月までの血清疫学調査で親となる年齢層の抗体保有割合の変化を見ますと、この期間で抗体陽性者割合が2~3割程度高くなっていますので、それが反映されているのかなとは考察しております。
○脇田部会長 ありがとうございました。
 それでは、事務局から、ございますか。
○杉原エイズ対策推進室長 ありがとうございます。
 土井委員から御指摘いただきました制度上の問題点ですけれども、実際、今回のこの調査自体は、国の実施する積極的疫学調査ということで、感染症法第15条2項を適用して実際に実施したものでございます。そういった意味では、実際にできるということ、これまでもやったことはあるかもしれませんが、今回、初めてこのように大規模にやって実証できたという観点はあったと思います。制度上の課題といいますか、実際に感染者の疫学調査が実施されたり、輸血の安全性とかが確認されていなかったときに輸血を行うまでのインターバルが設定されたり、様々なそういった制度上の課題は感染症によって異なってくるということがありますので、そういう観点で、実施できる方法をどのような方向で実施するのがよいのかというところは変わってくるかなとは感じております。最初の頃には、住民調査ということで、いわゆるランダムサンプリングで行っていくような調査を実施いたしましたが、こちらに関しても、例えば、実際にランダムに抽出してお手紙を送っても、返答される方はやはり検査に対する意識が高い方や実際に自分が感染しているかどうかを調べたい方が応答されるということで、どうしてもバイアスがかかっていないデータは得られにくいということがあります。その時々で、様々な方法論を俎上に置いて、その中でできるものということで、経時的に変わってくる点もあるかと思いますけれども、複数の方法論について実施していくことが必要かと考えているところでございます。
 以上です。
○脇田部会長 ありがとうございました。
 そういうことですけれども、委員の皆様、さらに、御意見、御質問等があればと思いますが、いかがですか。よろしいでしょうか。
 越田委員から、どうぞ。
○越田委員 今回、採決が困難な小児の血清抗体価が調べられております。しかし、今年に入ってからの検体採取の依頼でした。今後はある程度システマチックに、小児の抗体価を測定するための仕組みを作っておくことが大切であると思います。小児科の診療現場では、採血は、発熱等の感染症が疑われるときに行われます。従って、感染症が疑われないフラットな状態、例えば、術前検査の採血等で、システマチックに供与していただけるような仕組みがあると、よりいいのではないかなという気がいたしました。
 以上です。
○脇田部会長 ありがとうございます。
 続いて、四宮委員、お願いします。
○四宮委員 これは脇田先生が途中で言われたことですけれども、昨年12月、今年1月・2月、いわゆる第10波と言われるところの死亡診断書に基づくコロナ死亡者の数が出ているのですけれども、大体1万3000人ぐらいで、第6波よりも高くて、第7波に迫るぐらいの数なのです。先ほどのデータでも高齢者の抗N抗体保有は小児に比べて低いということなので、今年の冬ごろタイミングよく、もう一度ワクチン接種の機運を高めることは重要と思いました。
○脇田部会長 四宮先生、御意見をどうもありがとうございました。
 今、越田先生と四宮先生からも御意見をいただきましたが、それについては、事務局、何かありますか。大丈夫ですか。
○杉原エイズ対策推進室長 ありがとうございます。
 越田委員からも御指摘いただきましたとおり、小児において、今回は、こういった形で、まさに医療機関の方々に御協力いただいてできたというところございますので、今後の体制に関しても、今回の経験を踏まえて、どのようなことができるかということは検討していきたいと考えております。
○脇田部会長 ありがとうございました。
 そうしましたら、さらなる御意見がないようでしたら、今後もこの抗体保有状況の調査は継続されるものと思いますので、今日いただいた御意見も参考にして進めていただければと思います。
 それでは、今日の議題は以上となりますが、そのほかで、委員の先生方から、何かございますか。
 特にないようでしたら、事務局にお返ししたいと思います。
○杉原エイズ対策推進室長 ありがとうございました。
 本日の委員の皆様の御意見を踏まえまして、進めさせていただきたいと思います。
 この後、当方で、記者ブリーフィングとして、議事の概要を説明させていただく予定としております。
 また、次回につきましては、事務局より、改めて御連絡させていただきます。
 本日は、お忙しい中、御出席いただきまして、誠にありがとうございました。
○脇田部会長 皆様、どうもありがとうございました。