2023年3月30日 第96回社会保障審議会年金数理部会 議事録

年金局総務課首席年金数理官室

日時

令和5年3月30日 15時00分~17時00分

場所

全国都市会館 大ホール

出席者

翁部会長、野呂部会長代理、小野委員、駒村委員、佐藤委員、庄子委員、寺井委員、枇杷委員、山口委員

議題

  1. (1)公的年金財政状況報告-令和3年度-について
  2. (2)その他

議事

議事内容

○村田首席年金数理官
 それでは、定刻より少し早いですけれども、皆様方おそろいでございますので、ただいまより第96回「社会保障審議会年金数理部会」を開催させていただきます。
 審議に入ります前に、資料の確認をさせていただきます。
 本日準備している資料は、議事次第、委員名簿、座席図のほか、
資料は「公的年金財政状況報告-令和3(2021)年度-(案)」
でございます。
 資料は、5つの資料に分かれておりまして、
資料-1は「表紙、委員名簿、目次、ポイント、概要」
 資料-2は「第1章」
 資料-3は「第2章」
 資料-4は「第3章」
 資料-5は「付属資料」
でございます。
 次に、本日の委員の出欠状況について御報告いたします。
 本日は、全委員が御出席でございます。
 御出席いただきました委員の方が3分の1を超えておりますので、会議は成立しておりますことを御報告申し上げます。
 なお、駒村委員につきましては、オンラインでの御参加でございます。
 それでは、以降の進行については、翁部会長にお願いいたします。

○翁部会長
 委員の皆様には御多忙の折、お集まりいただき、ありがとうございます。
 本日は、公的年金財政状況報告-令和3年度-について審議を行いたいと思います。
 カメラの方がいらっしゃいましたら、ここで退出をお願いいたします。

(カメラ退出)

○翁部会長
 令和3年度の報告書の作成に当たっては、委員の皆様に御協力いただき、あらかじめ作業班において作業を行い、本日の資料である報告書案を作成いただきました。
 それでは、事務局から、本年度の報告案について、説明をお願いいたします。

○村田首席年金数理官
 委員の皆様には、作業班で報告書案の作成に御尽力いただきまして、どうもありがとうございました。
 作成いただいた令和3年度の公的年金財政状況報告の案につきまして、事務局より御説明させていただきます。
 報告書の案は5分冊になっておりまして、かなりのボリュームとなっていますので、本日は、資料-1を中心に御説明いたします。
 資料-1を開けていただきますと、最初に表紙、次に委員名簿とありまして、続いて目次が6ページほどございます。
 その後に、下にありますページ番号でいうと1ページから2ページになりますが、こちらに「公的年金財政状況報告-令和3年度-ポイント」がございます。
 こちらのポイントですが、これは、年金数理部会として、この報告で一番伝えたいことをまとめたものになっております。
 今回、一般の方に分かりやすいものにしようということで、委員の皆様から多くの御意見をいただきまして、昨年度のものから大幅にリニューアルしております。
 では、内容について御説明いたします。
 まず、一番上の枠囲みの中ですけれども、公的年金財政状況報告についてですが、こちらは、年金数理部会が、公的年金の毎年度の財政状況について、公的年金の各制度・各実施機関からの報告に基づき、専門的な観点から横断的に分析・評価を行った結果をとりまとめたものです。
 この報告では、実績の動向等を明らかにしたり、財政検証との比較や財政状況の評価といったことを行っていますほか、共済組合等も含めた厚生年金全体での財政状況もとりまとめております。
 では、中身に入りますけれども、まず、ポイントですが、今回ポイントとしては2つございます。
 1つ目は、公的年金の収支状況でございます。
 下の図表「令和3年度の単年度収支状況」をご覧ください。
 こちらは、年金数理部会が、公的年金の財政状況を制度横断的に比較・分析しているものでございます。
 表側に収支項目が並んでいますけれども、ここでは、賦課方式を基本とする財政運営が行われていることを踏まえまして、財政収支状況を、「運用損益分を除いた単年度収支残」と「運用損益」に分けて分析をしております。
 それから、表頭のほうをご覧いただきますと、厚生年金計、国民年金勘定、基礎年金勘定、公的年金制度全体とありますけれども、ここで、厚生年金計について御説明しておきます。
 平成27年10月に被用者年金制度が一元化されておりますけれども、効率的な事務処理を行うという観点から、共済組合等を実施機関として活用することになっています関係で、厚生年金の財政は、「厚生年金勘定」と、厚生年金の実施機関たる共済組合等の「厚生年金保険経理」に分かれて管理されておりまして、厚生年金拠出金と厚生年金交付金をやりとりすることで、財政的に一元化されているということでございます。
 そういったこともありまして、決算についても各々に分かれて実施されておりますので、ここでは、厚生年金勘定を所管している厚生労働省と、共済組合等を所管している財務省、総務省、文部科学省から御報告いただいた資料をもとに、厚生年金全体の財政収支状況をとりまとめております。
 その際、単純に各実施機関の決算の数値を合計するというわけではありませんで、厚生年金全体としての財政収支状況をとらえるために、例えば、厚生年金拠出金、厚生年金交付金といった厚生年金の実施機関の間でのやりとりについては、収入・支出の両面から除いて整理しております。
 また、厚生年金計と、そのお隣、国民年金の国民年金勘定と基礎年金勘定、これらをあわせて、公的年金制度全体の財政収支状況をとりまとめたものが、一番右の欄になります。
 ここでも、公的年金制度内でのやりとり、図表中で言いますと、マル2の基礎年金拠出金、それからマル1の基礎年金交付金のところになりますけれども、こういった収入と支出に同じ額が計上されて相殺されるようなものについて、公的年金制度内のやりとりということなので、収入・支出の両面から除いております。
 このように、厚生年金全体ですとか、公的年金制度全体の財政収支状況を明らかにするということも、この年金数理部会の大きな役割の1つであると思っております。
 では、数字のほうをみていきたいのですが、令和3年度の公的年金制度全体の単年度収支状況ですが、まず収入面では、保険料収入が39.9兆円、それから、国庫・公経済負担が13.3兆円などとなっておりまして、運用損益分を除いた単年度の収入総額は54.0兆円でございました。
 一方、支出面につきましては、大宗を占める給付費が53.4兆円でございまして、支出総額は53.7兆円となっています。
 この結果、運用損益分を除いた単年度収支残は0.3兆円のプラスでございました。
 また、運用損益につきましては、外国株式市場の大幅な上昇や円安によりまして、時価ベースで11.9兆円のプラスとなっております。
 これらの結果、公的年金制度全体の時価ベースの年度末積立金は、246.1兆円となっておりまして、前年度末に比べて12.2兆円の増加となってございます。
 続きまして、2ページをご覧ください。
 こちらは、ポイントの2つ目、公的年金の財政状況の評価です。今回の財政状況報告における最も重要な結論でございます。
 この報告では、令和3年度までの実績と、令和元年財政検証の前提や将来見通しを比較して分析を行っているのですけれども、公的年金の財政状況の評価に当たりましては、そういった単なる比較だけではなく、長期的な財政の均衡の観点から評価をしております。
 評価については、この水色の枠組みの中に記載しております。各々のバックデータにつきましては、後ほど、概要の御説明の中で触れさせていただきますので、ここでは評価の結果を述べさせていただきます。
 枠囲みの中ですが、まず、国民年金第1号被保険者は財政検証の見通しを下回り、厚生年金被保険者は上回る状況、そういった状況が続いていることが確認されました。
 一方で、令和元年以降の合計特殊出生率をみますと、平成29年人口推計における出生中位と出生低位の仮定値の間に位置しておりまして、出生中位の仮定値との乖離は拡大していることが確認されております。
 これらの将来見通しからの乖離が、一時的なものではなく中長期的に続いた場合には、年金財政に与える影響は大きなものとなる。
 そして、年金財政の観点からは、人口要素、経済要素等、いずれも短期的な動向にとらわれることなく、長期的な観点から財政状況の動向を注視すべきである。
これが財政状況の評価として、今回まとめたものになります。
 それから、下のほうにてんびんの絵がありますけれども、ここのところでは、長期的な財政の均衡について理解する際の助けとなるように、公的年金財政の均衡イメージの図を掲載して、説明を加えております。
 これは、委員の皆様から、年金財政を考える上で、一般の方にもぜひ理解しておいてほしい重要な考え方・仕組みだという御意見を多数いただきましたので、ポイントの中で取り入れたものでございます。
 内容としましては、※印にありますように、公的年金財政における長期的な財政の均衡は、図の左側ですが、将来の保険料収入と将来の国庫負担、それから、現在保有する積立金をあわせた財源の全体と、図の右側になりますが、将来の年金給付の全体で図られているということになります。
 ポイントについては、以上になります。
 続きまして、公的年金財政状況報告の概要について御説明いたします。資料の3ページ以降になります。
 まず、ページで言って4ページ、項番で言うと0番の「公的年金財政状況報告-令和3(2021)年度-について」をご覧いただきたいのですが、報告書の構成が点線の枠囲みの中に書いてありますけれども、報告書につきましては、第1章、第2章、第3章、付属資料という構成になっています。
 まず、第1章につきましては、本報告全体を理解する上で必要となる基本的な事項を中心に、公的年金の概要を説明しております。
 主として、公的年金財政の仕組みですとか、被用者年金一元化などについて、詳しく説明しています。
 第2章につきましては、被保険者、受給権者、財政収支、財政指標についての現状及び推移ということで、実績の確認や分析をしております。
 第3章におきましては、財政検証結果との比較ということで、実績と財政検証の将来見通しとの比較、積立金の乖離の分析、そして、財政状況の評価といったことをしております。
 一番下の枠囲みにありますが、概要では、この報告書の第2章と第3章から重要だと思われるところを抜粋しておりまして、また、最後のところに参考資料として、年金数理部会の概要ですとか、年金制度の体系、それから、公的年金の財政の仕組みといったものを掲載しております。
 次に5ページをご覧ください。
 こちらは「被保険者の現状及び推移」ということで、第2章の第1節から抜粋したものになります。
 こちらの扉につきましては、委員の先生から、取り上げている内容の流れが少し分かりにくいのではないかといった御意見がございまして、今回から、この扉のページのところに、この中で掲載している項目を記載することで、何が掲載されているかを一覧できるような形にしております。
 被保険者の現状と推移につきましては、ここにあるように、被保険者数の推移ですとか、年齢分布の変化、それから、厚生年金の標準報酬月額別被保険者の分布といったものを取り上げています。
 続きまして、6ページ、1番の「公的年金の被保険者数の推移」を見てください。
 こちらにグラフがございますが、左のほうから、平成7年度末から27年度末までは5年おき、27年度以降については毎年度の数値を示しております。
 棒グラフになっておりまして、厚生年金と国民年金を足し上げるような形で表示させていただいていますけれども、まず、近年の状況をみますと、国民年金第1号被保険者と国民年金第3号被保険者、図のグレーのところですが、こちらは、近年減少傾向にございます。一方で、厚生年金につきましては、ここのところ増加傾向が続いているといった状況になっています。
 令和3年度末につきましては、厚生年金の被保険者数が増加し、国民年金の第1号被保険者、第3号被保険者が減少したということなのですけれども、公的年金全体でみますと、被保険者数は0.4%の減少ということになっております。
 それから、厚生年金をみますと、厚生年金の被保険者数の増加率は、全体で0.5%となっているのですが、このうち、短時間労働者を除いた被保険者数の増加率が0.4%。短時間労働者につきましては7.4%の増加ということで、短時間労働者のほうが伸びている状況です。男女別にみますと、男性が5.1%、女性が8.2%ということで、女性が大きく伸びているという状況でございます。
 続きまして、項番2の「被保険者の年齢分布」についてでございます。
 令和3年度末の被保険者の年齢分布をグラフでお示ししておりますが、一番左にあります厚生年金計と、一番右にあります国民年金第3号被保険者のところでは、45~49歳の年齢階級の割合が最も大きくなっています。こちらは、ちょうど団塊ジュニア世代の方が属しているところになります。
 それから、厚生年金被保険者のうちの短時間労働者についてみますと、左から2番目ですけれども、男性は、緑のところですが、60歳以上の被保険者が多くなっていまして、女性のほうは、45~64歳のところの被保険者が多いということでございます。
 一方で、国民年金第1号被保険者をみますと、グラフの右から2番目ですが、一番下のほう、20~24歳の年齢階級の割合が最も大きくなっています。こちらは、主として学生の方が属しているところでございまして、全体の2割強を占めるということになります。
 続きまして、項番3からは、今みた年齢分布の変化についてみております。項番3は厚生年金計についてでございます。
 下にグラフが2つございますが、左側が被保険者数のグラフで、右側が総人口比のグラフになっています。
 グラフとしては、直近の令和3年度末と、5年前、10年前を比較して変化をみておりまして、5年おきの状況がみてとれるようになっています。
 まず、厚生年金計の男性をみていただきますと、左側の青い線のところですが、最も被保険者が多い年齢階級は、10年前は35~39歳、5年前は40~44歳、令和3年度末では45~49歳とシフトしておりまして、これは先ほども言いましたけれども、団塊ジュニア世代がどんどん移ってきているということになります。
 一方、女性のほうをみますと、赤いグラフになりますが、一部15~19歳ですとか、40~44歳のところは若干減少しておりますけれども、それを除いて全体としては、被保険者数は増加しているということです。
 男女ともに、65~69歳の被保険者のところが、ここのところ増加しておりまして、この5年でも増加しています。
 こちらの被保険者数につきましては、先ほど団塊ジュニア世代ということを言いましたけれども、人口の凸凹といいますか、人口の影響を受けてしまっているので、なかなかその状況が見づらいということで、右のほうに総人口比としまして、各年齢層ごとに、被保険者数の人口に対する割合を示したものをつけております。
 被保険者数を人口比でみますと、男女ともに5年前と比べて、おおむね15~19歳を除いて上昇しているということです。左側のグラフに比べて、動きが分かりやすいかと思います。
 グラフの男性のほうをみますと、最近の状況だと、だいたい25歳のところから59歳ぐらいのところまで、8割前後になっています。
 女性のほうは、25~29歳のところが7割ぐらいありますけれども、そこから年齢が上がるにつれて割合が減っていきまして、40歳代から50歳代前半ぐらいのところまでがだいたい5割ぐらいとなっています。いずれも10年前から比べると大きく上昇していることが分かるかと思います。
 それから、一番右のほうの65~69歳のところをみていただきますと、こちらもかなりこの10年間で上昇してきておりまして、この5年で数値をみますと、男性が21.8%から32.8%に、女性が8.3%から13.8%にということで、65歳以上の雇用が進展している状況が分かるかと思います。
 続きまして、項番4は、短時間労働者についての年齢分布の変化をみたものでございます。
 厚生年金計のうちの短時間労働者につきましては、前年度末に比べまして、男性の15~19歳、それから、60~64歳のところを除いて、全体として被保険者数が増加しているということでございます。
 左側の図を見ていただきますと、緑のほうが男性で、橙色のほうが女性なのですが、女性のところの直近の令和3年度末のところが、結構ぎざぎざしているかと思うのですけれども、これは人口の影響でございます。
 そこを右側の総人口比でみますと、今みたぎざぎざがなくなって、きれいな形のグラフになっているかと思いますけれども、女性につきましては、年齢の低いところからどんどん割合が上がっていって、60~64歳のところまでずっと上昇するような形になっています。
 それから、前年度末と比べますと、男性の15~19歳と60~64歳を除きまして、全体として上昇していることが分かるかと思います。
 続いて、項番5の「被保険者の年齢分布の変化(国民年金第1号)」についてでございます。
 国民年金第1号被保険者は、被保険者数全体が減少しておりますので、それと同じように、この分布自体も減少しているのですけれども、左側の人数のほうでみますと、団塊ジュニア世代のシフトはございますが、それを除くと、男女ともに、全体的に被保険者数が減少している状況でございます。
 右側の人口比でみましても、5年前と比べて、全体的に低下しているということで、男性の60~64歳と女性の20~24歳のところを除いて、全体でみれば低下ということが分かるかと思います。
 続いて、項番6の国民年金第3号の変化についてでございます。
 第3号被保険者につきましては、ほとんどが女性ということなので、女性を中心にみていきますけれども、左側のグラフの人数でみますと、44歳以下のところ、こちらの被保険者数の減少が著しくなっています。
 ただ、右側のほうの人口比でみますと、年齢問わず、全体的にこの10年間で割合が落ちてきていることがみてとれるかと思いますけれども、女性でみると、5年前と比べて、全ての年齢階級で低下している、男性のほうは、あまり大きな変化はみられないということでございます。
 それから、次にいきまして、項番7は、厚生年金の標準報酬月額別の被保険者の分布をみております。
 左側をみますと、青のほうが男性で、赤のほうが女性ということで表示しておりますけれども、まず男性につきましては、一番右の65万円のところが、一番被保険者数が多くなっています。他には、真ん中辺の26~30万円のところと41万円のところにピークがある、2つの山みたいになった形の分布になっています。
 それから、女性のほうにつきましては、22万円のところにピークがある分布ということになります。
 左側のグラフをみていただきますと、点線が5年前で実線が令和3年度末なのですが、左側の月額が低いところは人数が減っていて、右側の高いほうが人数が増えているということで、若干ですけれども、高いほうにシフトしていることが分かるかと思います。
 一方、短時間労働者についてみたのが、右側です。
 こちらにつきましては、男性、女性ともに11.8万円のところにピークがある分布になっているということでございます。
 続いて、「受給権者の現状及び推移」のところにいきます。こちらは、第2章第2節から抜粋しております。
 内容としましては、ここにありますように、受給権者の年金総額ですとか、老齢・退年相当の受給権者の年齢分布、そして、共済組合等の職域加算部分を除いた場合の老齢・退年相当の平均年金月額、老齢相当の受給権者の年齢階級別の平均年金月額、最後に老齢相当の年金月額階級別の受給権者数といったものをみていきます。
 14ページ、項番8の「受給権者の年金総額の推移」でございます。
 年金総額の推移を棒グラフで示しております。
令和3年度末の年金総額は、グラフの一番右ですけれども、公的年金制度全体で57.6兆円になっておりまして、令和2年度末に比べると、0.1%の増加になっています。
 こちらにつきまして、グラフの上の四角が4つあるところの一番右のところを見ていただきたいのですけれども、令和3年度につきましては、旧厚生年金の女性において、報酬比例部分の支給開始年齢が62歳に引き上げられておりまして、こういった影響もあって、微増にとどまっているということです。
 今、旧厚生年金と申しましたけれども、これは、いわゆる民間被用者の方の厚生年金のことを、こういう呼び方で言っておりまして、よく見る事業統計ですと、「厚生年金(第1号)」と呼んでいるものの数値でございます。
 次に、実施機関別の内訳などもみていきたいのですけれども、一番下の注にありますように、平成27年度以降、一元化した後の国共済、地共済、私学共済につきましては、一元化前の共済年金の受給権者の年金総額と、一元化後の厚生年金の受給権者の年金総額を合計したものでみております。
 こちらをみていきますと、旧厚生年金と国共済と地共済、こちらでは、昨年度に比べ減少しております。
 一方、私学共済と国民年金では増加しているということになっています。
 それら全体を合わせると、全体で0.1%の伸びだったということでございます。
 次に、項番9の「老齢・退年相当の受給権者の年齢分布」について御説明いたします。
 こちらは、厚生年金の実施機関ごとに棒グラフで示しておりますけれども、まず、地共済の女性を除きましては、70~74歳の年齢階級の受給権者数が最も多くなっています。
 地共済の女性につきましては、図の左下ですが、65~69歳のところが最も多くなっています。
 それから、右上の国共済についてですが、こちらは少し特徴的な形をしておりまして、女性の受給権者が少ないということと、それから、女性については、65歳以上の各年齢階級における受給権者数が、ほとんど差がない、あまり差がないという形になっているということが分かるかと思います。
 続きまして、項番10ですが、こちらは「共済組合等の職域加算部分を除いた、老齢・退年相当の平均年金月額(推計)」になります。
 共済組合等の共済年金には、職域加算部分が含まれておりますので、これらの職域加算部分を除いた厚生年金相当部分の年金額を推計しております。
 推計した結果ですけれども、厚生年金計の平均年金月額は、表の一番右のほうにありますように、全体で14.9万円、男女別にみますと、男性が16.6万円、女性が11.3万円となっています。
 こちらの表を見ていただきますと、実施機関によって年金月額に差が生じているのが分かるかと思います。まず、男性についてみますと、旧厚生年金に比べると、各共済が金額が高いということですが、平均加入期間は、旧厚生年金のほうが国共済や私学共済より長いということなのですけれども、年金額の算定の基礎となる標準報酬額が、共済組合等のほうが高いと考えられること、それから、共済組合等における受給権者の年齢が、旧厚生年金より高いということで、結果的に給付乗率が高い方が多いと、そういったことが影響して、こういった差になっているということでございます。
 女性については、年金額の算定基礎となる標準報酬額の差があるということに加えて、共済組合等の平均加入期間が、旧厚生年金よりも相当程度長いということ、それから、国共済と私学共済におきましては、受給権者の年齢が旧厚生年金より高くなっていること、そういったことが影響していると考えられます。
 続きまして、11番「老齢相当の受給権者の年齢階級別平均年金月額」でございます。
 枠囲みの中にありますように、旧厚生年金の平均年金月額は、受給権者全体の平均加入期間が伸長する中で、減少傾向にあるということなのですが、その要因としては、ここに書いているようなことが考えられておりまして、
1つは、報酬比例部分の給付乗率の引下げ、
 2番目として、定額部分の定額単価の引下げ、
 3番目としまして、定額部分の支給開始年齢の引上げ、
 4番目として、加給年金の対象者の減少、
 5番目として、年金改定率、
 6番目として、特例水準の解消、
ということが考えられております。
 下のほうには、直近の令和3年度末と、5年前、10年前という3つの線で、年齢階級別の平均年金月額を示しております。
 まず、四角囲みの真ん中辺のところを見ていただきたいのですけれども、男性のグラフをみていただきたいのですが、平均加入期間は年齢の低い世代ほど長くなっていることがあるのですけれども、その一方で、昭和21年4月1日以前に生まれた方、年齢で言いますと、令和3年度末で76歳以上の方につきましては、年齢が低いほど、報酬比例部分の給付乗率ですとか、定額部分の定額単価が引き下げられているということで、10年前、5年前と比べると、年金額が落ちているということもありますし、また、同一の年度でみても、年齢が高くなるにつれて年金額が上がっていくという形になっているかと思います。
 ただ、こちらは、下の女性のほうをみますと、かなりグラフの形がフラットになっているかと思いますが、女性については男性に比べて、平均加入期間の伸びの影響が結構大きく出ていて、男性ほどに折れ線グラフが上がっていかないことになっているのかと思います。
 それから、右側の四角のところにありますけれども、10年前から5年前にかけては、少し特殊な事情がありまして、特例水準の解消があったということも影響しております。
 それから、左のほう、64歳以下のところになりますけれども、こちらにつきましては、定額部分の支給開始年齢が引き上げられたということで、5年前、10年前に比べて年金額が下がっているということでございます。
 それから、少し細かいのですけれども、左上の四角になりますが、65~69歳のところの男性についてですけれども、こちらは、先ほど言った給付乗率や定額単価が引き下げられているというところには関係しない年齢層なのですけれども、それにもかかわらず、ここで他の年齢階級と同程度低下していることにつきましては、加給年金の対象者数が減少している影響があるのではないかと考えられます。それから、点線で書いてありますが、真ん中の点線のところにいた方が、5年経って青の実線の右側の70~74歳のところに移っているということを考えると、同一コーホートで、ここの金額が下がっているのですけれども、こちらは配偶者に係る加給年金が、配偶者が65歳に達したことで加算されなくなるといった影響が入っているのではないかと思います。
 続いて、項番12でございます。こちらは「老齢相当の年金月額階級別受給権者数」になります。
 こちらは、基礎年金を含む額でお示ししておりまして、旧厚生年金について書かせていただいておりますが、グラフをみていただきますと、男性は16~20万円のところに、女性は8~12万円のところにピークがあるということです。
 続いて、19ページからは、「財政収支の現状」ということで、第2章第3節から抜粋しております。
 財政収支につきましては、各々の収入項目ですとか、支出項目について、本編のほうで現状と推移をみているのですけれども、こちらではその中から、ここに書いてある3つについて、ピックアップしてお示ししています。
 まず、20ページ、項番13の「令和3年度の単年度収支状況」でございます。
 こちらにつきましては、先ほどポイントのところで詳しく御説明いたしましたので、省略させていただきます。
 続いて、項番14の「厚生年金の保険料収入の増減要因の分析」になりますけれども、右上の図表のところに、厚生年金の保険料収入の推移が書いてございますが、一番右のところ、厚生年金の合計をみますと、令和3年度におきましては、保険料収入が38.6兆円ございまして、3.5%増加しているということでございます。それを、厚生年金勘定、国共済、地共済、私学共済ごとに分析してみたのが、こちらになります。
 保険料収入の対前年度増減率を、実施機関ごとにみますと、厚生年金勘定が4.0%、私学共済が3.7%と伸びが大きく、国共済と地共済は、それぞれ0.5%、0.1%の伸びになっています。
 まず、伸びが大きい厚生年金勘定をみますと、特殊な要因としては、一番下のところから2番目の四角にありますが、要因別の寄与分をみたときに、その他のところで2.3%上がっておりまして、こちらは、要因分析の残差が入っているということになりますが、新型コロナウイルス感染症への対応として実施した納付猶予特例制度の影響が含まれていると考えております。
 令和2年1月分から12月分までの保険料の納付を、申請によって1年間猶予していたのですけれども、その1年間の猶予が終わって納付されたということで、金額が上がっているということでございます。
 それから、私学共済について3.7%と大きく伸びていますけれども、こちらについては、一番下の枠囲みにありますように、私学共済については、まだ保険料率を引き上げている途中でございまして、令和3年度中に保険料率が引き上げられたことが影響しているということです。
 それから、全体としてみますと、ピンクの枠囲みですけれども、被保険者数の増加が、各実施機関とも保険料収入を増加させる方向に寄与しています。
 それから、地共済の伸びが低かったのですけれども、こちらにつきましては、橙のところですけれども、1人当たり標準報酬額が、地共済につきましては減少しているということで、それが保険料収入を減少させる方向に寄与しているという分析になっています。
 続いて、22ページの項番15は、国民年金勘定の現年度保険料収入について、増減要因を分析したものでございます。
 こちらは、結構大胆な仮定を置いてやっているので、だいたいこんなものということでみていただきたいのですが、国民年金の現年度保険料収入につきましては、この表の一番右にあるように、0.7%の上昇であったのですけれども、このうち、まず一番大きく伸びるほうに寄与していましたのは、現年度納付率です。こちらの現年度納付率が上昇したということで、保険料収入を増加させたということでございます。
 それから、水色の枠囲みですけれども、国民年金の保険料につきましては、名目額では、今回上昇しておりますので、そういったことも保険料収入の増加に寄与しております。
 一方で、ピンクと橙のところになりますが、国民年金第1号被保険者の減少ですとか、保険料免除の方の割合の上昇といったものは、保険料収入を減少させる方向に寄与しているということでございます。
 続いて、「財政収支等及び財政指標の実績と将来見通しとの比較」に移らせていただきます。こちらは、第3章の第2節と第3節から抜粋しております。
 いろいろな前提ですとか、人数の将来見通しですとか、収支項目の将来見通しなどについて、実績と比較するということをしておりますのと、それから、積立金、財政指標についてもみております。
 24ページの16番のところを見ていただきたいと思います。
 こちらは「合計特殊出生率と65歳平均余命の実績と前提との比較」でございます。
 左側が合計特殊出生率についてです。こちらについては、先ほどポイントのところで、結果だけを取り上げたかと思いますが、グラフで内容を確認させていただきます。
 この下のグラフですけれども、黒い線が実績です。点線が将来推計人口の仮定値になっておりまして、上から出生高位、出生中位、出生低位となっています。
 実績につきましては、令和3年は前年よりも0.03ポイント低下したのですけれども、将来推計人口と比較しますと、出生中位と出生低位の仮定値の間に位置しています。
 昨年、令和2年でみたときには、ちょうど中間ぐらいのところにあったのですけれども、今回は、令和元年以降、出生中位の仮定値との乖離が拡大しているということで、低位のほうに近づいてきたという状況でございます。
 それから、右側のグラフは、65歳平均余命についてみております。
 こちらも実績は黒になっておりますけれども、令和3年の実績は、前年より男性で0.11年、女性で0.14年低下しておりまして、男女ともに死亡中位の仮定値を下回っているという状況です。
 こちらにつきましては、令和3年の簡易生命表の概況というのがあるのですが、そちらで平均寿命が低下していて、その要因として、老衰ですとか、新型コロナウイルス感染症の影響などを挙げておりますので、そういったことがこちらにも影響しているかと思います。
 続いて、25ページ、17番の「物価上昇率の実績と前提との比較」でございます。
 実績が黒線になっておりまして、赤い線が成長実現ケース、青い線がベースラインケースの数値になっています。
 令和3年の実績は、原油価格の上昇などによる、ガソリンや灯油などの上昇があったという一方で、携帯電話の通信料が大幅に下落したということで、前年比△0.2%でございました。成長実現ケース、ベースラインケースのいずれの前提も下回ったということです。
 こちらについては、もう次の年の結果が出ておりまして、令和4年には2.5%の物価上昇率となっているところです。
 続いて、26ページの項番18は、実質賃金上昇率についてみたものです。
 実質賃金上昇率、これは対物価上昇率でみた賃金上昇率になりますけれども、こちらの実績は、財政検証における前提を上回っているということです。
 続いて、項番19のところですけれども、運用利回りについてです。
 一番下の緑のところに書いてありますけれども、運用利回りにつきましては、実績と前提を比較する際には、公的年金では保険料や新規裁定の給付費が名目賃金上昇率を基本として増減するということから、長期的な観点からは、実質的な運用利回りで比較することが適当ということなので、対名目賃金上昇率でみた運用利回りであります、実質的な運用利回りについてみております。
 令和3年度の実績をみますと、外国株式市場の大幅な上昇や円安があったということで、財政検証における前提を上回っている状況です。
 こちらの実績のほうは線が2つありまして、緑のほうが通常の実績で、黒いほうが5年移動平均でみたものですけれども、どちらでみても、実績が前提を上回っているという状況になっております。
 続いて28ページ、項番20は、労働力率について、実績と前提を比較したものです。
 左側に男性、右側に女性ということでグラフを書いております。
 黒い線が実績でございまして、赤と青と緑で推計値を書いておりますが、赤が労働参加の進むケースとなっています。
 実績と労働参加が進むケースを比較してみますと、5年おきにしか労働力率の推計が出ておりませんので4年先の令和7年と比較しているのですが、令和3年の実績と令和7年の労働参加が進むケースの推計値を比較しますと、比較している推計値が4年先のものであるということには留意が必要なのですが、もう今の時点で、男性で言いますと、15~29歳、それから60歳以上のところ、女性で言いますと15~29歳のところは、既に実績が推計値を上回っているという状況になっています。
 続いて29ページ、項番21の「被保険者数の実績と将来見通しとの比較」です。
 こちらについても、ポイントで取り上げた事項になります。
 グラフは、実績が黒い星印で、見通しのほうが棒グラフで示しておりますけれども、令和3年度の状況をみますと、厚生年金計では、実績が将来見通しを上回っている状況です。こちらは厚生年金計です。
 一方で、右側の国民年金第1号被保険者数をみますと、実績が将来見通しを下回っているということで、先ほどのポイントにありましたように、厚生年金計では実績が将来見通しを上回って、国民年金第1号では実績が将来見通しを下回る状況、これが続いているということでございます。
 続いて30ページは、受給者数について、実績と将来見通しを比較しております。
 左側の厚生年金計でみますと、実績が将来見通しを下回っている状況、右側の基礎年金では、実績が将来見通しとほぼ同水準となっています。
 次に、23番からは収支の主な項目についてみていきます。
 財政検証は、いろいろなケースがございますが、こちらでは、例示として、ケースⅠとケースⅢとケースⅤをみております。
 「保険料収入の実績と将来見通しとの比較」でございますけれども、令和3年度は、厚生年金計、国民年金勘定ともに、実績が将来見通しを上回っている状況になっています。
 続いて項番24は、給付費についてみております。
 左側をみますと、厚生年金計では、実績が将来見通しを下回る状況、そして、右側の国民年金勘定のほうは、実績が将来見通しを上回っている状況でございます。
 ここで言っている国民年金勘定は、グラフの上のところに書いてありますように、国民年金第1号被保険者及び任意加入被保険者に係る付加年金等の国民年金独自の給付に係るものになっています。ですので、左と右で金額のスケールが違っております。
 続きまして、項番25は「基礎年金拠出金の実績と将来見通しとの比較」でございます。
 令和3年度ですけれども、厚生年金計では実績が将来見通しを下回り、国民年金勘定では実績と将来見通しがほぼ同水準ということになりました。
 次に、項番26の「積立金の実績と将来見通しとの比較」でございます。
 平成3年度末の状況ですけれども、先ほどから言っておりますように、外国株式市場の大幅な上昇や円安ということがございまして、厚生年金計、それから国民年金勘定、いずれも実績が、図の星印ですが、将来見通しを上回っている状況にございます。
 それから、時価ベースの運用収益と過去の平均収益の差額について、過去5年度分を平滑化して積立金評価に反映しております、「時価評価による変動を平滑化した後の積立金額」というのをみますと、こちらの図でいうと白い丸印になりますが、こちらにおいても、将来見通しを上回っているということになります。
 続きまして、項番27です。
 こちらは、財政指標についての比較になります。今回新たに概要で取り上げることにしたものでございます。
 年金数理部会では、財政状況の把握の一助とするために、制度の成熟度を表す年金扶養比率ですとか、保険料賦課ベースでみた給付費用の大きさを表す総合費用率ですとか、積立状況を表す積立比率など、幾つかの財政指標を作成し、分析しています。
 財政指標につきましては、昨年度、令和2年度の報告において課題をいただいておりまして、「平成16年改正による財政フレームが確立した現在の年金制度の下で、それ以前から用いている財政指標が、引き続き適切な指標となっているかについては、今後とも検討すべき課題である」ということになっておりましたことから、今回、報告の作成に当たって検討を行いました。
 様々検討しましたのですが、結果としまして、引き続き、今までの財政指標を作成していこうということになりました。
 ここでは、財政指標のうち、年金扶養比率と積立比率について、実績と将来見通しを比較したものを掲載させていただいております。
 まず、上のほう、年金扶養比率でございます。こちらは制度の成熟度を表す指標でございますが、こちらにつきましては、厚生年金計、基礎年金ともに、実績が将来見通しを上回っている状況になっています。
 下のほうの積立状況を表す積立比率につきましては、令和3年度については、厚生年金計、国民年金勘定ともに、実績が将来見通しを上回っているということでございました。
 続きまして36ページからは「積立金の乖離の分析と財政状況の評価」になります。
 項番の28にいきますが、積立金の乖離の分析について、乖離分析の方法について図に示したものでございます。乖離分析の流れといったことになりますけれども、簡単に御説明しますと、まず、左側にありますように、令和3年度末において、積立金の将来見通しからの乖離があるわけですが、左から2つ目、まず、それを乖離の発生年度ごとに分解いたします。
 また、3つ目ですが、年度ごとに分解したものを、さらに、名目運用利回りの乖離によるものと、それ以外のものと、2つに分解しています。
 それから、一番右になりますが、さらにそれらについて細かく発生要因別に分解するということで、乖離の内容を細かく分けるということをしております。
 次の38ページからが、こうした乖離分析の結果になります。
 項番29ですが、まず最初に、積立金の実績と将来見通しとの乖離につきまして、発生年度ごとに乖離状況をみたものです。
 ここでは例示として、ケースⅢを示させていただいておりますが、グラフのほうをみていただきますと、一番左側に、令和3年度末の将来見通しと実績の乖離が書いてありまして、それを右側のほうで分解して、各年度別にしているということです。
 こちらをみていただきますと、一番左側にあるように、令和3年度末の積立金は、実績が将来見通しを上回って、乖離がプラスとなっているのですけれども、これを発生年度ごとにみますと、令和元年度に係る発生要因がマイナスの寄与になっておりますが、そのマイナスの寄与計を上回って、令和2年度と令和3年度に係る発生要因の寄与計の合計がプラスになったということで、元年度のマイナスを打ち消して、2年度、3年度でプラスの乖離になり、最終的にプラスになったということになります。
 これは、国民年金勘定についても同じような状況になっています。
 続いて項番30からは、乖離分析の結果について、令和3年度に発生した分について細かく要因別にみたものです。
 30番は、厚生年金計になります。
 図の一番左側のところに、乖離の発生要因が書いてございまして、右側のところに、それぞれに起因する積立金への影響を示しております。
 下の注にありますように、積立金の乖離について、先ほど細かく分けたものから、要因別に取り出して集約するということをいたしまして、ケースⅠとケースⅢとケースⅤのうちの最大値と最小値ということで表示したものでございます。
 こちらをみていただきますと、令和3年度に生じた厚生年金計の積立金の乖離が、8.42~8.77兆円ございましたけれども、その中をみますと、主として名目運用利回りの乖離によるものが6.90兆円ということで、大宗を占めているという結果でございます。
 次に、国民年金についても同じようにみたものが、40ページの項番31になります。
 こちらは、国民年金について、積立金全体で令和3年度が0.30兆円のプラスだったのですが、ここにありますように、そのほとんどが名目運用利回りの乖離によるもので、そちらが0.30兆円ということでございました。
 続きまして項番32、ここからは「厚生年金の財政状況の評価」になります。
 こちらは、今年度初めて新規に追加したページになるのですけれども、厚生年金の財政状況の評価の考え方について、まとめさせていただいています。
 厚生年金の財政状況の評価ですが、年金数理部会では、積立金の実績と、「評価の基準となる積立金額(推計値)」、こちらとの差を考察することによって行っています。
 ここで、「評価の基準となる積立金額」といいますのは、財政検証の積立金の将来見通しを、賃金上昇率及び物価上昇率の実績と財政検証における前提との乖離に対応する分だけ補正したものでございます。
 こちらについて、詳しくは、※印にありますように、報告書の280ページ、281ページを御参照いただきたいのですが、簡単にイメージだけお伝えいたしますと、財政検証の見通しでは、この下のてんびんの絵のような均衡イメージにおいて、左側と右側が均衡する状態になっています。
 ここで、仮に、厚生年金において、今後の保険料収入と給付費が、完全に賃金上昇率に連動するとした場合を考えますと、例えば賃金上昇率の実績が前提よりも低かったとすると、将来の各年度の保険料収入とか、将来の各年度の給付費のキャッシュフローもその分だけ少なくなります。
 その結果、このてんびんの絵の右側にあります、将来の年金給付ですとか、左側にある将来の保険料収入、それから、年金給付に連動して変わる将来の国庫負担、これらが一斉に賃金上昇率が低かった分、少なくなることになります。
 そうしますと、このてんびんの図において、現時点で保有すべき積立金のところも、この賃金上昇率が低かった分だけ少ない額を保有していれば、それで、有限均衡方式の下で財政が均衡することになる、ということで、積立金の実績を比較する際には、将来見通しの積立金を、この賃金上昇率の乖離に対応する分だけ補正してあげて、それと比較すればよいということになります。
 ただ、実際には、今後の給付費のうちの全部が賃金上昇率に連動するわけではございませんで、例えば、既裁定の方の年金は、賃金上昇率ではなくて物価上昇率に連動するということになりますので、その分についても補正したものをつくりまして比較しているということでございます。これが、「評価の基準となる積立金額」ということです。
 四角の中の2つ目になりますが、また、この考察では、公的年金財政の均衡が、将来の保険料収入と国庫負担、それから現在保有する積立金をあわせました財源の全体、図の左側ですが、それと、右側にあります、将来の年金給付の全体で図られていること。それから、保険料水準が固定された上で、将来の給付費が将来の保険料収入及び積立金等の財源と均衡するように、給付水準を自動調整する仕組みとなっていること。そういったことなどを踏まえまして、こちらの分析では、積立金と将来の保険料収入の財源と対比して、積立金の乖離をみるということで、財政状況の評価をしております。
 42ページの項番33、こちらが結果でございます。
 令和3年度末における厚生年金の財政状況について、財政検証のケースⅠ、Ⅲ、Ⅴ、それから、法改正後のケースⅢ、Ⅴという5通りで分析を行っておりまして、その結果が、この左側の表になります。
 左側の表に、積立金の実績ですとか、評価の基準となる積立金の推計値ですとか、その差、それから財源、そして財源に対する積立金の実績と評価の基準となる積立金額の差の比率といったものを書かせていただいております。
 右側には、例としてケースⅢについて図示しています。
 結果をみますと、積立金の実績と評価の基準となる積立金額の推計値の差額、表で言うと上から3つ目になりますが、こちらはマル4の財源との対比で、プラス2.2~プラス2.4%というレベルでございました。
 また、括弧書きで時価評価による変動を平滑化した場合についても分析しておりますが、こちらで言いますと、プラス1.6~1.7%ということで、この結果は、積立金の乖離が、だいたい財源の2%程度に相当することを示しているということです。
これが、令和3年度の厚生年金の財政状況の評価になります。
 続いて43ページ、項番34「公的年金の財政状況の評価」ですが、こちらはポイントで説明しましたので、省略させていただきます。
 44ページ以降に、参考資料をつけております。
 こちらは、昨年度までは参考資料1しかなかったのですけれども、今回新たに参考資料の2から4までを追加させていただいています。
 最初の参考資料1ですが、こちらは、年金数理部会について役割等を書いたものでございます。
 図の下のほうにありますように、基本的に数理部会のミッションとしましては、財政検証のときにピアレビューをするということと、右側になりますが、毎年度の決算について報告をいただいて、それを審議しまして、公的年金財政状況報告をとりまとめるといったことをやっております。今回の報告書も、この公的年金財政状況報告の令和3年度版ということになります。
 それから、参考資料2、45ページですが、こちらは、年金数理部会の役割について分かりやすく図示したものです。
 上側は公的年金各制度・実施機関が行っていることで、下側は年金数理部会が行うことです。
 公的年金各制度・実施機関におきまして、少なくとも5年ごとに財政検証が行われて、その間、毎年度決算が行われるわけですけれども、年金数理部会では、財政検証の後、「財政検証のピアレビュー」をしたりですとか、それから毎年度の決算の後には、「毎年度の財政状況の分析・評価」をし、公的年金財政状況報告をとりまとめるということをしておりまして、これらについて、ある意味提案といったようなことで、次の財政検証につなげていくということになります。
 46ページは、よく見る「年金制度の体系図」になっておりまして、こちらは第1章のほうにも掲載しております。
 最後、参考資料4の「公的年金の財政の仕組み」でございます。
 こちらは、経過的措置等の終了した後の姿ということで、基礎年金交付金などは省いておりますけれども、大まかな財政の仕組みが図示できていると思います。
 概要についての説明は以上になるのですが、このほか、本文について、昨年度からの変更点を1点だけ説明させていただきます。
 第2章の第3節のところ、公的年金各制度の財政収支の現状と推移のところですとか、それから長期時系列表のところで、図表の作り方を変えておりまして、平成27年10月の被用者年金一元化から一定の期間が経過したということなので、それを踏まえまして、これまで被用者年金一元化後のみだけで作っていた図表を、被用者年金一元化の前後を接続した図表に変更しています。
 すなわち、一元化前は共済組合等の職域加算等を含み、一元化後は厚生年金相当分になっているといったものを接続させていただいて、厚生年金全体あるいは公的年金全体の数値としての時系列が明確になるように、ということで修正を加えております。
 少し長かったですけれども、資料の説明は以上となります。

○翁部会長
 ありがとうございました。
 それでは、報告書の案につきまして、何か御意見がありましたらお願いいたします。いかがでしょうか。
 枇杷委員、お願いします。

○枇杷委員
 御説明ありがとうございました。
 1点だけ表記上の問題に気がついてしまったのですけれども、ポイントの2ページ目のブルーの枠囲みの第1段落なのですけれども「国民年金第1号被保険者(自営業者、学生など)は財政検証の見通しを下回り」と書いてあり、これは、被保険者の数のことだと思うのですが、数という言葉が入っていないので、本文ではそうなっているかと思いますので、数という言葉を入れていただく。あと「厚生年金被保険者は」の部分、その続く文章も同じなのですが、数であることを明記したほうがよろしいかと思いました。
 細かい点で恐縮ですが、以上です。

○翁部会長
 それでは、御対応をお願いいたします。

○村田首席年金数理官
 こちらについては、直させていただきます。

○翁部会長
 ありがとうございます。
 そのほか、いかがでしょうか。
 小野委員、お願いします。

○小野委員
 ありがとうございます。
 まずは、何回かの会議におきまして、様々な疑問とか提案を整理されまして、報告書をおまとめいただいたことに関しまして、事務局の皆さんに御礼申し上げます。
 今回感じたことを申し上げますと、庄子委員がいらっしゃる席で恐縮なのですけれども、当部会が公表する公的年金財政状況報告書というのは、日本アクチュアリー会が実施する資格試験のうちの年金分野の科目の参考書に指定されているということでございます。
 この例を見ましても、報告書というのは、専門家ないし専門家を目指す人向けの資料ですし、これに限らず、公的年金の研究者にとっても重要な情報を提供する資料だと思います。
 その意味では、報告書を公表する当部会の第1の役割というのは、正確かつ誤解のない情報を提供することだと思います。
 これに加えて、当部会が公的年金の財政検証の健全な運営に一役買っているということを、世の中に分かっていただくために、最小限の情報でポイントを作成したという、こういった工夫についても、よかったなと思っております。今後も不断の見直しによりまして、改善していけたらいいなと思っております。
 少し細かい点で恐縮なのですが、1点だけ指摘させていただきたいと思います。資料1の45ページ、概要の参考資料2の中の右側の緑色の矢印の線の件なのですけれども、ポイントにもありますとおり、財政状況報告書というのは、各実施機関からの報告に基づいて横断的に分析評価を行った結果をとりまとめたものだということですので、財政検証への提案は明示的には行っていないということになろうかと思います。
 一方で、ピアレビューは、直近の報告書では第5章の第1節が、「今後の財政検証への提言」と書いてあるとおり、明示的な提案を行っているということです。
 そこで、この点を正確に記述するために、ピアレビューから出ている線の矢印の矢じりをなくして、これを財政状況報告書からの点線に合流させてしまったほうがよろしいのではないかと思います。
 提案という箱は、できればピアレビューからであることが分かるように、ピアレビューから出ている線上に下ろすというのはいかがでしょうかということなのです。もちろん、財政状況報告が次の財政検証につながることを意識しているということは理解しておりますけれども、現状は若干誤解が生じる可能性があるかなと思って、少し気になりました。変更の要否につきましては、事務局と部会長にお任せするということにさせていただきたいと思います。
 以上です。

○翁部会長
 ありがとうございます。
 私もそのほうがいいかなと思いますね。今日の報告を見ても、提案が書いてあるというわけではございませんし、ピアレビューのところに提案が分かるような感じで、少し修正していただければと思いますが、それでいかがでしょうか。お願いいたします。

○村田首席年金数理官
 それでは、対応させていただきます。

○翁部会長
 ほかにいかがでございますか。
 庄子委員、いかがでしょうか。

○庄子委員
 ありがとうございます。
 御指名でございますので、私は今年度から年金数理部会の委員になりましたが、いろいろ事務局との事前の検討を行いまして、それで、勉強になったこともたくさんあります。特に最初のポイントのところなどは、今年度はかなり工夫をしていただいて、ここの部分については、広く一般にも分かりやすいような内容にするという観点で、これまでとは少し違ったものになったと感じており、私はとてもよかったのではないかと感じております。
 また、来年以降もいろいろと見ていけば、いろいろと気がつくところはあるかもしれませんが、私からは、今年はそのような感想を持ったということを申し上げたいと思います。
 ありがとうございました。

○翁部会長
 ありがとうございます。
 そのほかには、いかがですか。佐藤委員、お願いします。

○佐藤委員
 ありがとうございます。
 冒頭にもありましたように、一般の方に分かりやすくということを踏まえて、ポイントは簡潔に大変よくまとまった内容になっております。
 分かりやすく、せっかく委員の皆様、それから関係者の方々が苦労して作成した報告書を、いかに国民の方にも広く周知していただくかという広告活動が重要なのではないかと思います。
 昨年の議事録も拝見して、こちらは毎年話題にも上っているようなのですが、自分でも年金財政YouTubeということで検索をしてみました。そうしましたら、年金機構が、公的年金の仕組みについて大変よいYouTubeを30分で作成しておりまして、30分というのは少し長い、大体人がぱっと見るには15分ぐらいで、難しい注文かもしれないのですけれども。このようなYouTubeがあるという、多分、年金機構が大変良いものをつくっていても、その存在を御存じの方は、どれだけいらっしゃるのかなという疑問もございまして、存在感も含めて、PRのほうを積極的にお願いしたいと思います。
 以上でございます。

○翁部会長
 ありがとうございます。
 御検討をぜひお願いしたいと思います。

○村田首席年金数理官
 どこまでできるか分からないのですけれども、前向きに頑張りたいと思います。

○翁部会長
 ほかは、いかがでございますか。
 寺井委員、どうぞお願いいたします。

○寺井委員
 ありがとうございます。
 今、佐藤委員のほうからポイントについて、あと、広報活動についてお話があったのですけれども、私も今年度から参画させていただいて、特にこのポイントについて、非常に活発な議論が行われたことが、すごく印象に残っております。
 その中でも出生率の現在地といいますか、予想されたシナリオと比べて、今、日本の出生率の現状がどこにあるのかということを、ポイントで明確に示すことができた。かつ、中長期的な視点でもって、年金財政を見た場合に、もし、これが一時的なものでなければ、年金財政に与える影響は大きいと指摘した点というのは、すごく大きなことではないかと思っておりまして、日本の出生数については関心が非常に高くて、いろいろなメディアでの議論を拝見しますと、憶測に基づいて非常に不安を煽るような、そういう議論も見受けられます。正しく心配するということが非常に大事だと思いますので、国民の年金財政、年金に対する信頼や不安に誠実に応えるという意味でも、今回のポイントというのは非常に大きな意味を持つし、ぜひ広く知っていただきたいと思います。
 以上です。

○翁部会長
 どうもありがとうございました。
 ほかにいかがでございますか、山口委員、お願いします。

○山口委員
 ありがとうございます。
 今の先生方の御意見とも重なるところですけれども、今年度は、ポイントの作成において、年金財政の仕組みと現況、それと、これに対する評価が、簡潔にうまくまとめられたというところが、よかったと思います。
 一方で、今、お話がありましたように、情報提供、発信については課題があるということで、今後、議論を先に進めていく上で、検討できないかと考えることが1点あります。
 先ほどのてんびんの図ですとか、概要に示されている参考資料の2の部会の役割に関係しますが、年金の制度運営に関係する各機関として、GPIFとか年金機構などがあります。年次報告書とかウェブサイトなどで、制度についても説明されています。それぞれに長期的視点に立つ制度運営に主眼を置いているということなのですけれども、その時々の年度ごとの状況について、まとめて見られる場所というか、そういうところがないと思います。
 当部会からの報告ですとか、財政検証結果、報告書を1つの場所でまとめて置いたりできないのかと少し考えました。ウェブサイトにリンクを張るとかでもいいと思います。
 その理由として、例えば、GPIFは情報発信に力を入れていらっしゃいますけれども、運用に関する情報に関心を持って見ている方がいます。そこにリンクさせて、当部会の報告を併せて見られるようにしておくと、情報の厚みが増すのではないかと思います。
 長期的視点と言った場合に、GPIFの場合ですと、どちらかというと、やはり短期的な運用の成果に注目が集まりやすいということがあり、部会の報告のような仕組みの前提となる情報と重ねて見ていただくとよいかと考えます。
 というわけで、情報発信については、今後も検討を進めていけたらと思います。
 以上です。ありがとうございます。

○翁部会長
 具体的な御提案をありがとうございます。
 こういった年金全体をうまく見せるような、リンクするような工夫というのが、やはり大変重要ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

○岡部総務課長
 総務課長でございます。
 おそらく今の御提案は、財政を含めて年金制度に関心を持つ人が、ひとつのところでいろいろなところにアクセスできるような、ポータルサイトのようなものがあったらどうかということと伺いました。
 実は、年金ポータルというホームページがありまして、そこは国民のいろいろな層が、被保険者なのか、受給者なのか、また、もしかしたら企業の方かもしれませんが、年金をキーワードに、いろいろな情報にアクセスしやすいリンク集みたいな形をつくってはいるのですけれども、できたのが数年前でして、あまり中身が、まだリニューアルされていないというのと、正直なところ、本当に使いやすいものになっているのかなというところは、我々も問題意識を持っておりまして、その改良を、今、考えているところでございます。
 この報告書についても、その中でどのように見せていくのかというのを考えようと思います。
 以上です。

○翁部会長
 ありがとうございます。
 ぜひ御検討をお願いしたいと思います。
 それでは、ほかにいかがでしょうか、駒村委員、いかがでしょうか。

○駒村委員
 どうもありがとうございます。
 本当に、多くの議論を積み重ねて、よくまとめていただき、事務局の御尽力にお礼を申し上げたいと思います。
 もう多くの委員が御指摘されたわけであります。寺井先生も出生動向のインパクトというのは、どう考えるのかというようなことを指摘されており重要な点だと思います。あるいは、参考資料も今回大変充実しております。参考資料の3では、従来、1号を自営業というように表記したところに、学生も加えて、より実態に近いような表記に変えていただいたということも、大変よかったかなと思います。
 参考資料2も、先ほど小野委員から御指摘があって、そのとおりだろうなと思って伺っておりました。ただ、今までこの参考資料2はなかったので、この部会の役割とか、毎年度の状況報告の意義というのが、これで分かったのではないかと思います。
 先ほどから、この報告書を世の中にどのように知らしめるかということ、これもすごく重要で、先ほどもお話がありましたYouTube、こういうのを説明するのは、なかなか難しい技術かもしれませんけれども、いろいろなルートで情報提供をしていただければと思います。
 それで、先日、年金部会も再開されたわけであります。年金部会より、もし、この数理部会が先に開催されていれば、本来、数理部会の年々の状況報告や、ピアレビューの状況も年金部会にも共有してもらいたいと思いますので、今日は総務課長もいらしていますので、ぜひとも次の年金部会には、この公的年金財政状況報告やピアレビューの概要も共有していただきたいと。部会間でも、ちゃんと情報共有していただくように配慮していただきたいと思います。
 以上です。

○翁部会長
 いかがでしょうか、よろしく御回答をお願いいたします。

○岡部総務課長
 駒村先生、伺いました、検討いたします。

○翁部会長
 それでは、よろしく御検討をお願いいたします。
 それでは、野呂さん、お願いいたします。

○野呂部会長代理
 ありがとうございます。
 すでに委員の皆様方が言われたとおり、今回は、より分かりやすく、しかも一般の方に訴求できるようにというところに、かなり議論の焦点を持ってきて、その成果は明確に出ているのかなと思います。
 今、特に御説明いただいた資料1につきましては、これまで、どちらかと言えば、資料集のスライドだったのですけれども、読み物としてしっかり読めるようになり、非常にいいものになったと思っております。
 これ以上は、あまり平易に一般的な言葉にしていくと、今度は、正確性の問題が出てくると思いますので、今後、来年度以降、より分かりやすくということになりますと、少し角度を変えたほうがいいと思います。
 御説明はなかったのですけれども、資料4の第3章の結論のところで、最近の国民の関心ということについて、288ページの3-6-1の最後のところに「国民の関心は財政状況にとどまらず、将来の給付水準のあり方にも広がっている」ということで、やはり自分が、これから年金を幾らもらえるのかというところに、国民の圧倒的な関心があるかと思います。できれば、特に概要において、そういう方向で、もうひと工夫あると、説明の仕方を超えたところで分かりやすさ、あるいは身近感が出てくるのではないかなと思います。
 例えば、今、御説明のありました資料1の中の34ページ、資料ナンバー26ですけれども、確かに積立金についての実績と将来の見通しの乖離というのは、非常に重要なポイントではあるのですが、これが何兆円になったからといって、普通の方にはなかなか心に届かないと思いますので、もし、将来の年金額にどれぐらい影響されるのかという形で示せれば、インパクトがあるのではないかなと思います。
 ちなみに5年ごとの財政検証では、ケースごとに将来の年金額、これは物価上昇率で割り戻したものですけれども、それと、現役世代男子の手取り収入との比較などがありまして、これなどは非常に分かりやすいので、こうした手法を、今後、財政報告で見られるといいのではないかと思います。
 もう一つは、かなり気を使って単年度の一過性の運用収益による影響の部分と、それ以外の部分、とりわけ出生率のような構造変化に影響を与えるようなものに分けて書いていらっしゃるのですけれども、もう一段、運用以外の部分を取り上げて、将来の給付であるとか、あるいは保険料収入に対する構造的な影響を、運用を除いた形で分析していくことも考えてはどうかと思います。
 あまり参考になりませんけれども、保険会社では、利源分析と申しまして、運用による収支の部分と、それ以外の収支の部分を分けて分析をしており、そうしますと、今回強いインパクトを持って表現された、出生率の部分であるとか、もっと言いますと、平均余命の部分なども、数量的にピックアップされるのではないかと思いました。
 最後、これは毎年申し上げていて恐縮なのですけれども、資料1で御説明をいただいた22ページの現年度保険料収入の増減要因の中の橙色というか、ヤマブキ色の部分ですが、保険料免除者というのが年々増えてきていまして、これまでは一過性のものかと思ったのですけれども、最近の傾向では構造的になっており、最近はコロナの影響で免除が増えたということもあるようだということも、事務局から教えていただいているのですけれども、この免除者の増加が保険料減少の原因のかなりの部分を占めておりますので、今後どう推移するのかということについては、丁寧なウォッチングが要るのではないかと思っております。
 以上でございます。

○翁部会長
 何かコメントはございますか。

○村田首席年金数理官
 財政の状況について、年金額みたいな分かりやすい表示をしたらどうかということで、おっしゃるとおりかなと思うのですが、ただ、我々の年金数理部会の分析では、積立金の乖離について、財源の大体2%程度のプラスだったと、そういった大きな形でしか分析していません。これは大ざっぱに言えば、財源の2%程度のプラスということは将来の年金給付全体を2%程度増やすことができるということになるので、ざっくり言えば2%程度ということは分かるかと思うのですが、そこから、将来の年金額への影響をきちんと出すというところには、若干少し距離があって、例えば、各年度の給付の重みですとか、そういったことがもろもろあるので、そのまま年金額という形で示すのはなかなか厳しいなと。将来的な課題かなという受け止めをしています。
 それから、運用収入の関係とそれ以外のところで分けてみるということにつきましては、今でも実績をみるところとか乖離分析については分けてみているのですけれども、それが財政状況の評価のところになると、そこまではやっていないということですけれども、こちらについては、比較する実績のほうを何か少し加工して、運用損益分を除いたものでみるといった、そういった工夫といったものは考えられなくもないかなと、考える余地はあるかなとは思います。
 ただ一方で、昨年度から平滑化後の積立金との比較というのも始めていまして、こちらをみることで、ある程度、過度に単年度の動きをみるわけではなくて、数年間ならしたトレンドまで踏まえた評価をするということもできているかなとも思いますので、一定程度は、野呂委員の御指摘のことについて、回答を示しているようなことはやってきているのではないかなと思います。
 それから、出生率などの構造的なものをみたいというお話だったのですが、数理部会の分析は、被保険者や受給者などについて、既に顕在化している部分の影響というのは捉えられているのですけれども、例えば出生率みたいに、これから20年先辺りに表れてくるような、顕在化していない潜在的なものの影響については、この分析では捉えることができていないので、今の分析を深めても出生の影響というのはみることが難しいかなと思っています。
 これから、来年度以降、分析の手法をさらによいものにできないかということは、皆様と一緒に検討していければと思います。
 以上です。

○翁部会長
 ありがとうございました。
 皆様から御意見がたくさん出ましたけれども、今回は新しいメンバーも加わって、大変フレッシュな目で見直しを進めて、よりメッセージを分かりやすく出していくということで、いろいろな見直しができてよかったと思っております。
 また、本質的に重要な少子化の問題とかも、引き続き、長期的に見ていく必要があるという見解も出しておりますし、今、野呂委員がおっしゃった点も、私も共感しておりまして、基本的には長期でどうなるのだということに関心があって、そこについては、所得代替率とか、しっかり下のほうの注では示していて、ケースⅤの場合は39.7%になると、これは、去年から出しているのですけれども、そういう警鐘は鳴らしているつもりなのですが、そういう意味で健全な形での年金制度の維持のために、健全な危機感を持ち、しっかり発信していくということが大事かなと私も思っておりますので、そういったことで何ができるかということは、引き続き、分かりやすさと同時に、不断の見直しができればと思っております。
 追加的に何かございますか、皆様、御発言いただきましたが、非常に見せ方とか発信の仕方についても、大変多数御意見をいただきましたので、どうぞ御検討いただきますよう、お願いいたします。
 よろしいでしょうか。
 枇杷委員。

○枇杷委員
 すみません、そういう意味では、広報の部分に関してなのですけれども、今年の財政状況報告を説明する前の段階として、そもそも財政の仕組みはどうなっていましたかということを、多分、知らない人が圧倒的に、特に若い人は多いと思いますので、その辺りをどう説明していくかということは大事かなと思います。
 今回の概要ですと、そこは入っていなくて、最初から今年の数字の説明から入っていくので、その前提知識がない人が読むと分からないという気がしました。ですので、そこら辺を工夫した方がよいのかなと思いました。
 あと、年金広報検討会さんのほうでも、課題でいろいろ取組をされていらっしゃると思うので、そこで小、中、高生への教育なども取組をされていると理解しています。
 ですので、例えば、これはジャストアイデアですけれども、学校で子供に宿題を出して、家でそういう話を親御さんとしていただくみたいなこととか、あるいはドラマみたいな仕立てのビデオをつくって、それを見てもらってディスカッションしてもらうようなこともいいのではないかなと、これは思いつきですけれども、そう思いましたので、YouTubeだけではなくて、いろいろな観点で少し取り組んでいただけるとよいかなと思いました。
 以上です。

○翁部会長
 ありがとうございます。
 村田さん、どうぞ、いろいろと検討していただければと思います。

○岡部総務課長
 ありがとうございます。
 年金広報検討会のほうでも、小学生、中学生、高校生、そして大学生を中心に年金対話集会をやっていますが、それをどういう形で、同じような効果を持つ取り組みを、数多い小、中、高に広げていくか、実は中で、今、考えているところです。
 具体的には、年金の仕組みというか、そもそもの位置づけとか、意義とか、それから年金財政の本当の簡単なところというのを、何らかの形で中学生なり高校生に分かってもらうような仕組みを考えております。いつになるかは分かりませんけれども、できるだけ近いうちに、また、御報告したいと思います。
 また、年金財政については、厚生労働省のホームページに、漫画で学ぶというコーナーがございます。大学生向けの年金対話集会を開催するときに、事前にPDFのファイルにしまして、参加する学生に見ていただくということをやっていることもあります。そうすると、非常によく分かったと、まず漫画で読んでからこの話を聞いたので、理解が非常に深まったという声が非常に多いので、こういう工夫をしてくといいかなと思います。また、こういうことは工夫してまいります。
 ありがとうございました。

○翁部会長
 ありがとうございます。
 それでは、皆様には、いろいろと御意見をいただき、御議論を尽くしていただいたものと思います。今日は2つぐらい修正点が出てきましたけれども、それを前提としまして、報告書そのものについて、大きな変更が必要というようなことはございませんでしたので、これをもちまして、本部会の令和3年度公的年金財政状況報告とさせていただきたいと思います。よろしいでしょうか。

(異議なしの意思表示あり)

○翁部会長
 それでは、異議ないと認めます。本部会の報告とさせていただきたいと思います。
 誤字脱字等、細部の修正が必要になった場合には、私に御一任いただければと思います。
 それでは、少し早いのですけれども、令和3年度公的年金財政状況報告についての審議は、以上とさせていただきたいと思います。
 事務局から今後の日程などにつきまして、お願いいたします。

○村田首席年金数理官
 今後の日程につきましては、調整して御連絡申し上げますので、どうぞよろしくお願いいたします。

○翁部会長
 それでは、第96回「年金数理部会」は、これにて終了いたします。どうもありがとうございました。