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- 第27回 厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会 議事録
第27回 厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会 議事録
日時
令和4年8月4日(木) 13:30~18:14
場所
オンライン開催
出席者
- 委員
-
- 祖父江 元 部会長
- 土岐 祐一郎 部会長代理
- 大西 昭郎 委員
- 庄子 育子 委員
- 中野 貴司 委員
- 根岸 茂登美 委員
- 花井 十伍 委員
- 深見 希代子 委員
- 藤川 裕紀子 委員
- 前村 浩二 委員
議題
- 1開会
- 2議事
- (1)国立研究開発法人国立国際医療研究センターの令和3年度業務実績評価について
- (2)国立研究開発法人国立がん研究センターの令和3年度業務実績評価について
- (3)その他
- 3閉会
配布資料
- 国立研究開発法人国立国際医療研究センター
- 資料1-1 令和3事業年度 業務実績評価書(案)
資料1-2 令和3事業年度 業務実績概要説明資料
資料1-3 令和3事業年度 財務諸表等
資料1-4 令和3事業年度 監査報告書
- 国立研究開発法人国立がん研究センター
- 資料2-1 令和3事業年度 業務実績評価書(案)
資料2-2 令和3事業年度 業務実績概要説明資料
資料2-3 令和3事業年度 財務諸表等
資料2-4 令和3事業年度 監査報告書
議事
- 第27回 厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会
○大臣官房厚生科学課国立高度専門医療研究センター支援室武藤室長補佐
定刻となりましたので、ただいまより、第27回国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会を開催いたします。新型コロナウイルス感染症対策の観点から、オンライン会議とさせていただいております。委員の皆様には 大変お忙しい中お集まりいただき、誠にありがとうございます。進行役を務めさせていただきます大臣官房厚生科学課国立高度専門医療研究センター支援室の武藤と申します。どうぞよろしくお願いいたします。本日は、全ての委員の方に御出席いただいておりますので、会議は成立することをこの場で御報告いたします。
続きまして、本日のオンライン会議の進め方について御説明いたします。マイクの設定についてですが、御発言時以外はマイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。御発言の際はZoomサービス内の「手を挙げる」ボタンをクリックいただき、部会長による指名を受けた後に御発言をお願いいたします。その際はマイクのミュートを解除していただきますようお願いいたします。御発言の際ですが、必ず冒頭にお名前を述べていただき、資料を用いて御説明する際には、資料番号と該当ページを明示いただきますようお願いいたします。また、御発言終了後は再度マイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。なお、進捗管理のため、事務局よりZoomサービス内のチャット機能を利用して、経過時間を画面に表示させていただきますので、御了承いただければと思います。
続きまして、本日の議題を説明いたします。本日は、国立国際医療研究センター及び国立がん研究センターに関する令和3年度業務実績評価に係る意見聴取を行います。評価に係る意見聴取の流れにつきましては、評価項目ごとに法人から御説明をしていただいた後、委員の皆様から御意見、御質問を頂きたいと存じます。それでは、本日の会議資料の御確認をお願いいたします。委員の皆様におかれましては、お手元に議事次第、資料1-2、資料1-4、資料2-2、資料2-4を御用意いただいているかと思います。そのほかの資料につきましては、事前にお知らせいたしましたURLより閲覧していただきますようお願いいたします。なお、資料1-2につきまして本日、訂正版をホームページに公開しておりますので、本日はそちらのほうを御確認いただければと思います。評定記入用紙につきましては、様式の電子媒体を送付しておりますので、そちらに御記入いただき、事務局に御提出をお願いいたします。資料の閲覧方法について御不明な点等ございましたら、チャット機能で事務局までお申し付けください。事務局からの説明は以上ですが、何か御質問はございますでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、以降の進行につきまして、祖父江部会長にお願いします。
○祖父江部会長
どうもありがとうございました。今日は皆様お忙しいところ、しかもコロナの中、今日はちょっと全国的に涼しいかもしれませんが、非常に暑い中お集まりいただきまして、ありがとうございます。今日は2つの議題がございまして、少し長丁場になっておりますが、活発な御意見を賜れたらと思います。どうぞよろしくお願いいたします。それでは、今御案内がございましたけれども、まず第1番目は国立研究開発法人国立国際医療研究センターの令和3年度の業務実績評価について議論したいと思います。恒例により、まず議事に先立ち、法人の理事長先生、國土先生から御挨拶を賜ることになっておりますので、國土先生、お願いできますでしょうか。よろしくお願いいたします。
○国立国際医療研究センター國土理事長
祖父江先生、ありがとうございます。国立国際医療研究センターの理事長の國土です。本日は委員の皆様、お忙しい中、評価部会を開催いただきまして大変ありがとうございます。まず最初に、職員の逮捕の件についてお詫びを申し上げるところから始めたいと思います。報道されましたとおり、6月3日に当センターの総務課係長が収賄容疑で逮捕され、24日に起訴されました。高度なモラルが求められる国立研究開発法人として厳粛に受け止める必要があり、再発防止策を講じて信頼回復を行うことを今、目指しているところです。具体的には、内部調査チームを発足させました。そして、つい先日、外部から弁護士をメンバーに加え、更に調査委員会を設置いたしまして今、調査をしているところです。財務諸表につきましては、幸いなことに影響はないということを監査法人、監事の先生方に確認いただきまして、6月30日に報告させていただいたところです。
さて、私どもは感染症を中心とする疾患に対して対応するナショナルセンターとして、昨年度も活動してまいりました。新型コロナウイルス感染症につきましては、通算いたしますと、入院患者延べ数で言うと2万3,211人・日、入院患者総数では1,790人ということになりますが、多くの患者さんの治療、研究開発に取り組んでまいりました。学術的な面では、最近ではオミクロン株に対するワクチンの効果とか、オミクロンに対する既存の3つの薬剤が有効であるという趣旨の論文を『The New England Journal of Medicine』『Nature』などのトップジャーナルに報告しております。また、その後の新興・再興感染症も含めて対応のために、COVIDのレジストリであるCOVIREGIからREBIND事業、データベース構築が始まっておりまして、つい最近はサル痘にも対応できるように体制を整えているところです。これまで、感染症に関しては臨床研究の経験が十分積まれておりませんでしたが、私どもの所にGLIDEという臨床研究支援基盤を立ち上げさせていただきました。また昨年度、アジア諸国との連携のために、ARISEという国際的なAROを構築しております。JHの活動状況につきましては、この後、植木本部長から報告があると思いますが、例えば象徴的なものとして、6NC-EHRsはナショナルセンターのカルテを結んで臨床研究をするもので、現在までに60万件以上のデータがつながっていると聞いておりますが、そういう展開が期待されております。そのほかには、例えば東京オリンピック・パラリンピックの協力など、社会的な活動も行ってまいりました。
経営面では、コロナ補助金や研究費獲得などにより、幸いなことに繰越欠損金を昨年度も大幅に減らすことができて、累積では最高107億円までいっておりましたが、40億円まで減少いたしました。ただ、アフターコロナに向けて、これから病院の経営をどうするかを考え、経営改善をするための努力を続けております。本日はそのようなことについて各担当から詳細を説明させていただきます。御評価、よろしくお願いいたします。
○祖父江部会長
どうもありがとうございました。國土先生、非常にコンプレヘンシブに、全体をバランスよく御説明いただきましたし、最初のお話は広く報道された内容でもございましたので、もし何かあれば議論になるかもしれませんが、よろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。それでは、早速議事に入りたいと思います。まずは、1-1、1-2、研究開発の成果の最大化に関する事項で、時間は38分ございます。説明を20分していただいて、その後18分の討議ということです。まず最初に、先ほども御案内がございましたように、法人から御説明を20分間いただき、その後、総合討議としたいと思いますので、御説明をよろしくお願いいたします。まずは満屋先生でしょうか。よろしくお願いいたします。
○国立国際医療研究センター満屋研究所長
研究所長を拝命しております満屋です。それでは早速、データのほうをお願いいたします。まず2ページを御覧いただきたいと思います。2ページ、組織概要で、研究所の項が一番上にありますが、研究所は感染症や糖尿病、代謝性疾患及び肝炎、免疫疾患を中心とした疾患の基礎的研究と発症機序の解明を通じて、先駆的な診断・治療法の開発の推進を旨としており、各センター内の研究部を含めて計16の研究部、4つのプロジェクト、3つのテニュアトラック部を設置し、総計23の研究グループで構成されておりまして、7月の段階で研究所の総員は256名です。
続いて5ページを御覧いただきたいと思います。評価項目1-1で、自己評価は相当の成果が上がったと考えておりまして、Sとさせていただいております。特に疾病に着目した研究、そして均てん化に着目した研究が進展しており、重要度及び難易度いずれも「高」、高いとしておりまして、特に下段のほうに書いておりますその理由としましては、研究と臨床を一体的に推進できるナショナルセンターの特徴をいかすことによって、研究成果の実用化に大きく貢献することが求められていますが、この求めに十分に答えたと考えているところです。
○国立国際医療研究センター満屋研究所長
今述べました一番下に、難易度「高」の理由としては、特にCOVID-19の病理と治療に関する知見を挙げ、標的分子の候補の決定等を行い、相当な困難を伴うというふうに考えておりまして、そうしたことから難易度も高い、「高」としているところです。
6ページを御覧いただきたいと思います。指標の達成状況では、研究成果は達成度140%と数字的にはなっておりまして、原著論文数も125.7%と過量な達成状況と判断しているところです。
次に7ページを御覧いただきたいと思います。評定の根拠ですが、特に今回は3つ挙げております。1つはSARS-CoV-2の変異株の感染・病原性の解析とワクチン・治療薬の有効性の評価でございまして、『Nature』などのトップ、高インパクト学術誌に結果を多数発表して、世界の最高水準での研究成果を上げたものと考えております。中段左側に書いております根拠ですが、NCGMセンター病院でのCOVID-19患者診療のサポートと新規治療法の開発ということで、特にその画期性とトランスレーショナル・リサーチの質が極めて高く、世界と日本において与えたインパクトは大きいと考えております。一番下、新規B型肝炎治療候補薬のE-CFCPは前年度も御報告したところですが、特にB型肝炎ウイルスの感染細胞核内のcccDNAというものがございまして、この減少・枯渇をもたらして治癒を実現する可能性を示したことから、特に将来的な特別な成果を創出すると期待してS評価の根拠としているところです。
その内容を若干詳しく御説明したいと思います。8ページを御覧いただきたいと思います。まず図1、茶色で示しているところを見ていただきますと、ここでは従来型の感染、従来型のウイルスに感染させたハムスターと、ガンマ型の感染ハムスターで体重変化を示しておりますが、非感染のハムスターと比べますと体重が伸び悩んでいるのがお分かりかと存じます。これについてBA.1、BA.2、今我々が遭遇している一番大きな問題となっておりますウイルスですが、これに感染させますと、体重がやはり下がっておりまして、呼吸機能もBA.1、BA.2は、デルタ型に比べますと強い呼吸機能の評価はありません。特に図2の一番下、右の一番下を見ていただきますと、デルタ型では呼吸機能/最大呼気流量が大幅に低下しております。今、オミクロン株が東京とか日本全国、全地域で大きな問題を起こしているところですが、オミクロン株では、少なくともこのハムスターで見る限りは、余り大きな呼吸機能の低下等は見られていないということで、このような成果は『Nature』等に報告しているところですが、これはセンター病院で入院された患者さんから私たちが取り出しましたウイルスを使って、つまりNCGMセンター病院で分離して、研究所と一体化して研究成果をいち早く報告できたものと考えております。
次の9ページを御覧いただきたいと思います。右上の図4を見ていただきますと、これは225人のプロアクティブの、いわば最初から計画して行いましたメッセンジャーRNAのワクチンの投与、接種により中和抗体価、実際に抗体量ではなくて、中和抗体というその活性の定量をしたものです。御覧のように225人から始めまして28日目では、NT50というのは中和活性で50%になる値で、これが高ければ高いほどウイルスに対する活性が高いということになります。
図4の左上に506という数字がございます。これで220人のデータを見てみますと、かなりのバラつきがあって、中には一番下、ほとんど活性がない方もあります。右上に2,570という数字がございますが、これは506であったものが、3回目の接種後では2,570ということで、かなり高い反応が得られています。しかも御覧のように、3回目のDay-300と書いております所では、205人の方々、これは病院のスタッフですけれども、この全ての方でかなり高い中和活性が見られているのがお分かりかと存じます。これはウーハンという野生株で、今、私たちの世界にはもういないということになっておりますが、これがミュー型とかBA.1、BA.2といったオミクロン株に対してどれくらい効くかというのが、前後しますが、図3に書いてございます。ここで見ますと、全くないわけではないけれども、例えばオミクロン株では9倍くらい低くなっているということで、効果は若干減りますけれども、まだかなりの中和活性が認められた。これも『Nature』あるいは『Journals of Infectious Disease』等に論文として報告しているところです。しかし、このモノクローナル抗体、中段の表1を見ていただきますと、減弱したというところがございまして、一部の抗体治療薬ではその効果が大きく減弱することも示しているところです。
臨床的にどのようなことを進めたかと申しますと、同じ9ページの[2]に書いておりますが、私どもはこのSARS-CoV-2の感染症に対する対応と研究陣容を緊急シフトいたしまして、特にセンター病院での患者診療を技術・学術面でフルにサポート・リードし得たと思っております。また同時に、一番下のほうに書いておりますが、SARS-CoV-2の主要プロテアーゼ、次のページでも御説明いたしますが、MPROを分子標的とする小分子化合物を発見、開発を進めております。今、日本でよく使われておりますファイザー社のnirmatrelvirというものがあり、パクスロビドという商品名ですが、これよりも150倍ほど強力な新規化合物を既にデザイン・合成・同定に成功しております。これをNCGM発の新しい治療薬とするために、導出の努力等を進めているところです。
具体的に次のページ、10ページの表2の一番上にnirmatrelvir、青色で書いておりますが、そこの一番左側のEC50という所を見ていただきますと、ウイルスの増殖を50%ブロックする濃度がnirmatrelvirでは仮に1.09μMですが、これに比べて245では0.04ですから、これでもう25倍。ここでは示しておりませんが、更にこれを改良したもので272というものについては、先ほども申し上げましたように、このnirmatrelvir、既に日本で使われておりますものよりも150倍ほど強いものが既に私たちの手にあるわけです。これも図6を見ていただきますと、実際に研究所で作りましたhACE2強制発現マウスに投与いたしますと、御覧のように統計学的に有意の差で、オミクロン及びデルタ型の肺での感染と増殖を有意に抑制することを示しているところです。
3つ目ですが、先ほど申し上げました新規B型肝炎治療候補薬についても、この図7だけを見ていただきますと、これまで使われておりますETVやTAFはどれほど濃度を高くしても100%にはなかなかなりませんが、今我々が開発中のE-CFCPはかなり低い濃度でも100%ブロックします。cccDNAがB型肝炎の持続感染の原因とされておりまして、この減少がまだ達成されていないところが、このE-CFCPでは、そうしたcccDNAの減少・枯渇をもたらすと期待されているところです。
11ページは、以上の3つの課題について取り上げましたけれども、2021年度でどのようなことが分かったかということについてまとめておりますので、お目通しをお願いしたいと存じます。私の御報告は以上です。
○国立国際医療研究センター杉浦臨床研究センター長
続きまして、評価項目1-2について、これは研究・開発に関する事項、実用化を目指した研究・開発の推進及び基盤整備について、臨床研究センター長を務めております私から御説明いたします。
16ページを御覧ください。この評価項目に関しては、重要度を「高」としております。その理由に関しては、このスライドの下のほうに書いております。目標は全部で8項目あります。17ページに各項目の達成度が書いてあります。特に、100%を超えていない項目について、80%以下のものについて、18ページで御説明をさせていただきます。
まず、First in Human試験実施件数ですが、これは中長期の中で1件以上を目標としておりますが、2021年度には1件も実施することはありませんでした。ただ、ここにも書いてあるように、2023年度、今、実際に計画を進めている試験はありますので、中長期の中では十分達成が可能と考えております。
続きまして、医師主導治験の件数です。こちらは6年で14件ということで、2~3件/年実施すれば一応目標は達成ということですが、厳しめに3件/年を目標とし66%とさせていただきました。件数は少ないのですが、今回達成した2件については、レムデシビルとバリシチニブですが、いずれも薬事承認に関わる薬剤ということで、社会的な貢献は大きかったと自己評価をしております。
続きまして、20ページに飛びます。幾つか特出しでご説明したいものがあります。まず、次の新興・再興感染症への備えとして、これは評価項目の2番目に当たるバイオバンク・データセンターに関するものです。冒頭で國土理事長からお話がありましたREBINDといったものを、厚生労働省の委託で、私どもで実施しております。スライドの左上には、そこでの立て付けのようなものが書いてあります。現在の状況ですが、参加施設が14施設、同意取得している症例数が190例ということで進んでおります。若干全体計画が遅れておりましたが、現在は参加施設を増やすとともに、サンプル数も徐々に伸びてきているということで、順調に進んでいると考えております。右下には、今まで解析をしたヒトゲノム、ウイルス全ゲノム及び分離したゲノムの解析数が出ておりますが、大体ここに書いてあるような数値を達成しております。現在、利活用もスタートしておりまして、近々、研究所の方にデータ及びサンプルを提供できる体制が整うと考えております。
続きまして、21ページです。これは評価項目では1番目に相当します。臨床研究の中核的な役割を実現するために、こちらも冒頭で国土理事長からお話がありましたが、現在、国内の臨床研究ネットワークを立ち上げております。私どもNCGM、藤田医科大学及び聖マリアンナ医科大学、こういった3者が協力をして、国内の感染症の治験がスムーズに進むようなシステム作りに取り組んでおります。この2年間は新型コロナに関して、我が国では治療薬等の研究ではアウトプットがなかったことをきちんと振り返り、とにかく早く治験の症例登録が進むような体制、早く結論が出るような体制の整備を目指しております。
21ページの下、クリニカルイノベーション・ネットワークも臨床研究に関わるところですが、製薬企業等が薬剤を国内で開発するときに、多額の開発資金が掛かるということで、それを既存の各種レジストリを用いることで、開発に必要な情報の一部を補完できないかというのがもともとの構想の始まりです。こちらを6NCと一緒に、あるいは厚生労働省からの委託で現在進めております。
続きまして、22ページは評価項目4に関連するものになります。ASEAN、東アジア国際共同研究臨床アライアンスということで、これは国内ではなくて、国際的な治験を支援するためのARO機能の整備になります。2021年12月9日に、タイ、フィリピン、インドネシア、ベトナムなどのアジア諸国とMOUを締結し、スライドの下のほうに写真がありますが、このようなネットワークを立ち上げて活動を開始しております。加えて、ハーバード、MRCTセンターともMOUを結びまして、特に人材育成の分野において協力をしていくことを進めております。
23ページは、評価項目5に相当するものですが、産官学の連携強化です。ここに書いてあるように、私どもでは東京都医工連携HUB機構とニーズ・マッチングを中小企業等とやっております。2021年度には18件の面談希望があり、また、12件のコメント等が寄せられております。実際に製品化したものは23ページの右下にありますが、このような挿管を補助するような枕であったり、COVID19の人工肺カバーは消毒等に有効ということで、このようなものを製品化して発売をすることを達成しております。右上に産官学連携の契約件数が出ておりますが、このように右肩上がりで数が増えてきております。また、左下には、先ほどの国際連携にもつながるのですが、国際感染症フォーラムを年2回から5回実施しておりまして、非常に多くの製薬企業及び国内の研究機関等に御参加いただいております。
24ページについては、先ほどの評価項目1に相当する部分です。私どもでは、JCRACというデータセンターを持っております。こちらは臨床研究のデータマネジメントをするということで、特に日本国内の大規模な多施設共同研究のデータマネジメントを引き受けております。JCRACは我々も非常に力を入れているところで、右下の図2に契約件数が出ておりますが、これについても右肩上がりで増えてきております。現在、JCRACは、ISO27001を取得する方向で整備をしており、情報品質担保というものも最優先の課題として進めております。私からは以上です。ありがとうございました。
○祖父江部会長
非常に広範な内容を簡潔に御説明いただいたと思います。いかがですか、早速、質疑、質問あるいはコメント等ありますか。
○花井委員
まず、トランスレーショナル・リサーチというか、研究所と臨床をやっているというところで、今回、かなり研究所と臨床の関係が密に連携して研究を進められたのだと感心して聞いていました。ワクチンについて、もちろん3回だとよく効くという話ですが、力価は落ちてもBセルの立ち上がりは早くて、それによってワクチンの効果は薄れているのですが、実はBセルの立ち上がりについては効果があるとか、そういうこともデータとしてお持ちなのかというのが1つ目の質問です。それから、治療に関して、いわゆる高力価血漿というのを利用すると聞いたのですが、これは側聞すると、日本赤十字社等と連携して特殊免疫グロブリン開発という話は立ち消えてしまったのかなと思って、血漿ではなくてイミュノグロブリンということはどんな感じになっているか教えてほしいというのが2点目です。3点目は、JHの活動について説明が薄かったので、詳しく教えていただけたらと思います。以上です。
○国立国際医療研究センター満屋研究所長
JHについては、この後で植木本部長からの報告があると思います。
○花井委員
分かりました。
○国立国際医療研究センター満屋研究所長
ワクチンですが、おっしゃるとおりだと思います。ただ、そのようなデータが、9ページの図4に示しているように、これはプロアクティブで計画をしてから始めたということで、一番正しいと思われるデータが得られる方向でやっておりますが、今おっしゃった、3回目の後で実際に感染が起こったときにどのようなことが起こっているかについてはデータを持ち合わせておりませんが、恐らく、おっしゃったようなことが起こっていると思います。
しかし、この中和活性はウーハン株というものですので、本来的にはオミクロン株でやらないといけません。今日はお見せしておりませんが、同時にこのような高い活性を獲得した人たちの血清中のγグロブリン、イミュノグロブリンについて見ますと、やはり落ちているということを観察しております。それは左側の図3にあるものと同じです。
2つ目の御質問の免疫グロブリン製剤がどのようになったかということですが、実は、私どもが前向きの臨床研究まで進めて、同時に回復後の患者さんから血液を頂いて、血清として、血漿として投与まで進めて、一部のデータは既に報告したところです。免疫グロブリン製剤を作っておりますが、これはウーハン株に対してはかなり強い効果をもたらしますが、デルタあるいはオミクロンに対しては効果が余りない。臨床的に使用できるものではなくなってしまったということで、今、かなりの量がまだ私どもの手元にあります。免疫グロブリン製剤まで作っておりますが、ここまで早く変異株が次々と現れるということになりました現段階では、残念ながら臨床的な価値はかなり急速に減少しているという次第です。やはり、ワクチンはオミクロンあるいは次に現れるような変異株の抗原に対する抗体を使う必要があると考えられております。私たちも、実際に今日御覧に入れましたデータからも、そのとおりだと思っているところです。
○花井委員
ありがとうございます。よく分かりました。
○国立国際医療研究センター満屋研究所長
ありがとうございます。
○国立国際医療研究センター杉浦臨床研究センター長
2番目の御質問に対して少し追加させていただきます。NCGMでは、日赤と共同で、感染者の血漿からの精製抗体を作成しました。これはヒトに投与するような実用化までには至らなかったのですが、どちらかと言いますと、今後また新たな新興・再興感染症が発生したときのプリペアードネスと言うのでしょうか、どのような体制を取れば、治療用の精製抗体が迅速に準備できるかという、そういう体制作りという視点での仕事であったと考えております。以上です。
○祖父江部会長
中野先生、よろしくお願いします。
○中野委員
素晴らしい御発表をありがとうございました。私も1点は、早期から手掛けておられた回復期血漿の実用化の方向性とか現状をお伺いしたかったので、それに関してはクリアになりました。ありがとうございます。
もう1点お伺いしたいことは、抗ウイルス薬に関してです。満屋先生は特に御専門の領域で、御指導いただきたいのですが、RNAポリメラーゼ阻害薬、プロテアーゼ阻害薬、いろいろな方向性があると思うのですが、新しく出てきている薬剤も併用薬の問題とか、妊婦の問題とか、いろいろクリアしなければならない点があって、非常にコモンな一般的な感染症であるSARS-CoV-2の感染症を私たちが乗り越えるための治療薬として、今後どんな方向性で開発とか研究をお考えになっておられるのか御示唆いただければ有り難く存じます。
○国立国際医療研究センター満屋研究所長
今のところ、その強さ、その効果が高いかどうかということと、もう1つは、こうした変異株の出現に対応できるかというのが、今の一番の課題だと思います。
もう1つは、今おっしゃったように、薬の飲み合わせが余りよくない。これはリトナビルという薬と併用することで、いろいろな薬物相互作用に害をもたらすということが問題であると思います。その3つについて考えてみますと、特に私たちが今進めているアプローチは、HIV感染症で得られた知識と技術、テクノロジーを用いておりまして、ほとんど同じような考え方からいきますと、プロテアーゼ阻害剤というのは、HIV感染症で耐性に十分対応できると考えられております。先ほどのTKB-245あるいは272という新しい薬物は、先ほど申し上げましたが、パクスロビド、nirmatrelvirよりも100倍以上強いということで、その効果が非常に高いわけですので、パクスロビドよりもより強力にウイルスの感染と増殖をブロックできるのではないかと、そのような方向で進んでおります。また、耐性も起こりにくいということがHIV感染症の場合で既に記録して残されております。同じように、私たちはMPRO、主要プロテアーゼに対する治療薬の臨床開発を進めていきたいと思っているところです。
また、RNAポリメラーゼに対するものは、若干難しくてデザインがなかなかできないというのは、細胞の中に入って三リン酸化されないといけないという隘路があります。今、日本で作られているものについては、特に催奇形性の問題が指摘されております。この2つは主要プロテアーゼ、MPROと言いますが、パクスロビドもその効果が余り強くないために、5日間というのはいかにも短過ぎたのだと思いますが、リバウンドが大きな問題として立ち上がってきていることからしますと、やはりもっと強力なもので、7日とか2週間とかの投与が必要になると思います。
もう1つが、今のリトナビルという薬の飲み合わせを害するようなものを用いなくても、つまり、リトナビルなしで投与できるような薬物として245と272という、私たちが持ち合わせているものはまだ人体に投与しておりませんが、少なくともヒトの肝臓を移植したマウスで見る限りは、リトナビルは必ずしも必要ではないという予備的なデータもありますから、このような方針で進めていきたいと考えております。以上です。ありがとうございました。
○中野委員
どうもありがとうございました。
○祖父江部会長
次の質問者は深見先生、よろしくお願いします。
○深見委員
同じような質問ですが、まず、阻害薬のところで、阻害薬は低分子化合物ということでしたが、全く新しく開発したものですか、それとも、既存薬からの。
○国立国際医療研究センター満屋研究所長
全く新しいもので、デザインして合成して同定したものです。新規の薬物です。
○深見委員
全くの新規化合物ということですね。分かりました。ありがとうございました。もう1つは、ワクチンの変異株に対する効果は非常にきれいにお示しいただいたのですが、こういうことの社会への発信に対しては、どういうふうに取り組んでいたのかということについてはどうですか。
○国立国際医療研究センター満屋研究所長
社会への発信というのは、私たちは研究ですし、これは信頼性と再現性というのが一番重要だと考えておりますので、やはり、できるだけ早くインパクトの高い雑誌に報告して、それから、いろいろな形で国民の皆様に報告するという形になると思います。ですから、論文として公刊する、パブリケーションが一番重要だと今も考えているところです。
○深見委員
論文を優先しているということですね。
○国立国際医療研究センター満屋研究所長
優先というわけではないのですが、同業者による厳しい指摘に応えられるような内容でないと、これは私どもが、いわばいい加減なデータを国民の皆様に示して、違った方向に進むようなことがあってはならないということからしますと、どうしても同業者による査読を経て、その一部がマスコミにも流れるということが、国民の皆様に対する責任であると考えているところです。ただし、ワクチンがどのような方向で進んでいかなければいけないかというのは、私たちの論文からも察することができますが、いろいろな政治的状況や、開発の費用の問題等がありまして、なかなか私たちが希望しているようには進んでいないというところも強調しておきたいと思います。
○深見委員
ありがとうございました。
○祖父江部会長
土岐先生、よろしくお願いします。
○土岐部会長代理
20ページのREBIND事業についてですが、当初は非常に変異もいろいろあって価値もあったのですが、今現在、例えば1日20万人も患者さんが出る状況において、どこまでサンプリングをするのかというのと、これは利活用、実際に製薬企業等に利用されているのか。今後のサンプリング事業の在り方と、そのデータの利活用の方向について教えていただけますか。
○国立国際医療研究センター杉浦臨床研究センター長
杉浦が回答します。まず、サンプルの収集状況ですが、これは当初、武漢株のときに始めたもので、基本、入院患者を中心にサンプリングをするということで、体制作りをしてまいりました。ただ、現在、1日20万人という中で、入院患者よりむしろ外来等で、あと自宅待機のような方が多い中で、必ずしも作り上げた体制が現状にはマッチしていないということは認識しておりまして、現在、チームのほうでは、その辺のことも検討しながら、より多くのサンプルが集まるような体制作りを検討しております。利活用については、このシステムはもともと企業が利活用できるようにということで、同意文書のところから第三者への提供を取れるような体制を取っております。ただ、現時点ではまだ企業の具体的な活用というのはありませんが、問合せは頂いております。以上です。
○土岐部会長代理
ありがとうございます。
○祖父江部会長
他にはよろしいですか。私から1つだけ最後にお聞きします。先ほどの主要プロテアーゼ、MPROのインヒビターというのでしょうか、結合して、今までのnirmatrelvirに比べますと、150倍もウイルスを減らす効果があるという素晴らしい結果だと思います。しかも、これがオミクロン株に対しても相当効いているというデータだと思うので、非常にプロミシングだと思います。先ほど少し触れられましたが、これを実用化に向けてどういう展開を今後されていくのか、いつ頃どうなのかというところが少し気になるのですが、その辺はいかがですか。
○国立国際医療研究センター満屋研究所長
これは同類の、非常に似通った構造を持っていまして、それでいろいろな部分を少しずつ変えて、もう既に100種類ぐらい、全部合わせますと、この2年間で1,000種類ぐらい作って、一定の方向が明らかになったものです。今のTKBというのは、東京医科歯科大学の玉村教授との共同研究を進めているところで、全て私どもでデザインして合成し、新規であり、これはもう1年前に特許を申請しておりまして、新規の化合物であるということを確認しております。
実は、この御報告はNIHの私の研究室からしているのです。こちらのメガファーマ、NCI、米国国立がん研究所との共同研究でもありますので、ここを通じて、アメリカのフェデラルレジストリ等で宣伝をするということで、こちらのリーダーシップとの話を進めているところです。同時にメガファーマとの接触も既に始めているところで、どこかにライセンシングをして、早いうちに臨床研究へと進めたいというところです。日本の企業にもかなり働き掛けてはみたのですが、残念ながら、なかなか手を挙げていただけない。やはり、かなりのお金が掛かるのと、現段階では、いつこのウイルスが大きな問題とならなくなるかまだ不明な点がたくさんあります。そうしたことから、メガファーマも静観したり、傍観的な態度を取っているということもあります。ですから、できるだけ早くそういうパートナーを探そうということで、同時に非臨床試験をできるところまで進めて、比較的な大量合成を既に始めているところです。
○祖父江部会長
いつも伺うようなアメリカと日本の関係みたいなものでしょうか。お聞きしたような気がしましたが。
○国立国際医療研究センター満屋研究所長
これはいわばNCGM単独で特許を申請しているところですが、これも軌道修正する必要があるかもしれません。
○祖父江部会長
なるほど。ありがとうございました。実用化になるまではなかなか大変だと思いますが、是非、今後もよろしくお願いします。
○国立国際医療研究センター満屋研究所長
ありがとうございます。
○祖父江部会長
時間になりましたので、よろしかったでしょうか。次が1-1に所属しているということですが、先ほど少し御質問がありましたJH、医療研究連携推進本部についての説明が入ります。15分の時間を頂いておりますので、説明を10分、質疑が5分ということになっております。まずは法人から御説明を10分でお願いできますか。よろしくお願いします。
○国立高度専門医療研究センター植木医療研究連携推進本部長
JH本部長を拝命しております植木が説明させていただきます。資料の12ページを御覧いただければと思います。JHには現在、6NCから27名がクロスアポイントメントで、JHの職員として従事しており、本部はNCGM内にあります。右下にあるような6NCの理事長会議の下に、データ基盤課、共同研究課、知財・法務課、広報課、人材育成課の5つの課があり、理事長の先生方の御助言・御承認の下に、2.にあるミッション達成のために事業を推進しているところです。
13ページをお願いいたします。2021年度の具体的な事業の内容及び成果について御説明したいと思います。JHでは、3つの大きな柱の事業を重視しております。[1]新たなニーズに対応した研究開発機能支援・強化ですが、1.としてJHは現在、14の横断的研究課題を支援しております。その中の1つの成果でもある6NC職員への疫学調査で、新型コロナウイルスワクチン2回目接種後の抗体価に与える影響について、喫煙、飲酒、男性では肥満などが抗体価の低下に寄与することを明らかにしております。この研究ではこのほかにも、既に10報以上の論文が発表されております。
2.で、6NC間のインターネットの超高速化を支援し、これをJH Super Highwayと称しておりますが、6NCの全ての関連施設、病院や看護大学校も含めた9施設で、10Gbpsでの接続を完了しております。
冒頭に國土理事長からも御発言がありましたが、3.では6NC統合電子カルテデータベース(6NC-EHRs)というものを構築し、2021年度は4NCから60万人分のデータを抽出し、これを用いてコロナの流行が通常以外の疾患に与えた診療実態への影響を解析するパイロット研究を開始しております。これについては、後で詳しく御説明いたします。
4.では、研究支援人材の育成に取り組むために、6NCでどのような研究支援人材が不足しているかという実態調査を行いました。特に生物統計家が不足しているということで、生物統計家が比較的多く存在しているNCにおけるOn the Job Trainingのシステムを開始し、不足しているNCでの人材の支援体制を構築しております。
5.では、6NC共通教育用プラットフォームを構築いたしました。これはICRwebに公開しておりますけれども、既存の6NCの教育コンテンツ、あるいは必要であるというものを新たに作り、その教育・研修コンテンツの配信を開始いたしました。
[2]6NC連携で効果的な研究開発が期待される領域の取組を支援・強化ですが、先ほど申し上げたように、6NCが共同で実施する横断的推進研究費14課題を、現在、進捗管理及び外部評価の下で、その方向性について指導をさせていただいており、来年度の課題についてもその採択方針を決定しております。この14課題の中の1つが、JSTのCRESTを獲得しております。また、NC連携の若手グラントは、主に2つのNC間の若手の共同研究で、2021年度は12課題を採択し、2022年度の開始課題も12課題を採択して、進捗管理・評価を行っているところです。
[3]6NC全体として研究成果の実臨床への展開を支援・強化ですが、1.で、6NC共通で構築した知財・法務に関する相談スキームのシステムがあり、6NC間における知見や課題の共有化、支援・強化を推進しているところです。2.で、JHが支援している研究課題やその概要等について、JHのWebページを充実させ、後ほど御説明するJHシンポジウムを開催いたしました。
次のページを御覧いただければと思います。6NC-EHRsです。下の図にあるように、各NCのカルテベンダーというのは各々違っておりますけれども、全てSS-MIX2を使っておりますので、患者の基本情報・病名・検査データ・処方データ・入退院情報などが、そこに蓄積されております。これをインターネット越しにNCGMにある統合データベースに送り、それを解析する体制を整えました。先ほど申し上げたように、2021年度時点では4NCからデータが集まっており、これをどのように活用するかというパイロット研究を開始しています。本年度は各NCから研究課題を公募し、新しい研究を開始する予定にしております。今後の展開としましては、今は体重や血圧のような構造化されていないデータは入っておりませんので、各NCの研究者からの御要望で、診療テンプレートを開発する、画像データを取り込むようにできる、あるいはNCGMなどのオミックスデータと連携できるようにするということを目標に、開発を進めているところです。
先ほど申し上げた2.の新型コロナウイルスに関する抗体価に与える影響ですが、6NC共同の研究として健康診断の際などに、抗体とともに詳細なアンケートを取っております。下にあるような喫煙あるいは飲酒量、右下の赤は女性で、肥満度は全く影響がありませんが、青線にお示しするように、男性では肥満度が増すと抗体価が低下するという結果を得ております。これは今後来年度まで、取りあえず3年間は追跡するということになっております。
15ページの[3]です。JHシンポジウム2021を開催いたしました。これはJHの存在を広く世の中に知っていただくということもありますけれども、JH Super Highwayが開通したことを記念し、「6NCがSuper Highwayで加速する日本のメディカルサイエンス」というテーマで、完全オンラインでしたけれども、事前に666名に御登録いただき、NCの職員のみならず、各大学あるいは省庁からも御参画いただいております。また、製薬メーカー、電子カルテベンダーなどからも参画いただいて、JHが展開している研究などを御披露し、今後のJHの在り方について、外部からの意見も交えてディスカッションもいたしました。
[4]ですけれども、若手研究者や研究支援人材に係る人材育成を開始しております。先ほど申し上げた若手研究助成の12課題については、[3]でお話したJHシンポジウムでデジタルポスターを発表いただいて、外部の方も含めた投票なども行い、若手のモチベーションの向上につなげています。また、生物統計家の育成については、現在はNCCでのOn the Job Trainingを開始していて、3名の新たな生物統計家の育成を行っているところです。今後とも若手研究者、研究支援人材の育成に取り組む予定にしております。私からの御報告は以上です。
○祖父江部会長
どうもありがとうございました。時間が余りないところでまとめていただいたと思います。今回、初めて何をやっているのかというデータを御提示いただいたのではないかと思います。質疑応答はちょっと短めですが、今の御説明に対していかがでしょうか。前村先生、よろしくお願いします。
○前村委員
前村です。JHで6NCの共同のプロジェクトが進んでいるということはよく分かりました。14ページの6NC電子カルテ統合データベースについて、御質問したいと思います。6NCでは電子カルテのベンダーが違うので、SS-MIX2を使ってデータを取っているというのは分かりました。こういうデータベースを作るときに、自動的にデータが取れれば非常に省力化できていいのですけれども、やはり入力しないといけない部分がある程度あって、そこがネックになっていると思うのです。このデータベースの場合は、ほとんどSS-MIX2でデータが取れているのでしょうか。あるいは、ある程度の部分は後から入力する必要があるのでしょうか。
○国立高度専門医療研究センター植木医療研究連携推進本部長
現在はSS-Mix2に入っているデータしか取っておりませんので、実際に何らかの入力をする必要は全くありません。ただし、先ほどお話したように、血圧や体重などというのは、SS-Mix2の中に入っておりません。それは日常診療で取得できる大事なデータですので、将来的にはベンダーの垣根を超えた診療テンプレートを入れて収集したいと考えております。
○前村委員
あと、これと関連して、データベースを作るのとは別に、診療上、お互いの病院のセンターで診療情報が見られるようになると、非常に利便性が上がるという取組もあると思うのです。そのような方向性は考えていらっしゃいますか。
○国立高度専門医療研究センター植木医療研究連携推進本部長
その点は非常に大事だと思っております。まず、現在は研究ベースで行っているのですが、厚労省にも確認をさせていただいて、これは6NCの事業としてやることで問題ないだろうということなので、どこまで匿名化しないといけないかという問題はあるかと思うのですが、例えば各病院でどのような診療トレンドが見られるのか、どういうように改善していったらいいのかという情報にも、将来的には使えるのではないかと考えております。
○前村委員
どうもありがとうございます。
○祖父江部会長
それでは花井先生、よろしくお願いします。
○花井委員
花井です。今と似たような質問です。EHRsは薬事利用などにも使えるように考えていらっしゃるのですか。PMS利用とか、そういうこともできるように実装していこうと考えていらっしゃるのでしょうか。その辺を教えてください。
○国立高度専門医療研究センター植木医療研究連携推進本部長
現在ワンアームでしか行われていないPMS、市販後調査については、6NC-EHRsを活用してバックグラウンドをそろえた対照群を置くことが出来ますので、良い活用法ではないかと考えています。
○花井委員
この辺はMID-NETというのもありますけれども、企業のほうから一定程度、費用をもらえるということも考え得るのでしょうか。
○国立高度専門医療研究センター植木医療研究連携推進本部長
直接的にデータそのものを企業に出すという形ではなくて、花井先生がおっしゃるように、現在のところは企業からお金を頂いて、こちら側から解析をして答えをお返しするようなシステムを考えております。
○花井委員
ありがとうございます。
○祖父江部会長
私からも1つだけ教えていただきたいと思います。生物統計分野の人材が不足しているので、これを6NCでJHという枠組みの中で育てていこうというお話だったと思うのです。6NCの中身を見ると、先ほどのコンピューター、電カルもそうですが、疾患がばらばらですよね。データも結構ばらばらで今まで保持されている。その中でどういうものを研究のアウトカムとして目指していくのかという研究の構築のところが、私は非常に重要ではないかと思っているのです。むしろデータサイエンス数理というか、統計家というのはどういう方をおっしゃっているのか分かりませんが、データサイエンスやデータマネジメント人材というものも広く、研究のあるべき方向を見出せるような方が必要ではないかと思いました。
○国立高度専門医療研究センター植木医療研究連携推進本部長
「生物統計家」というように申し上げましたけれども、正しく祖父江先生がおっしゃっているような意味で、実際にOn the Job Trainingでやっているのは、研究の立上げからデザインの方法、どのようなプロトコールが適切なのか、最終的には解析の方法という一通りを学んでいただけるようなコースを作っております。
○祖父江部会長
では、幅広い意味で使っておられて、ビッグデータを処理できる人という感じですね。ありがとうございます。ほかにはよろしいでしょうか。このセッションは新しいものの割に、質疑応答の時間が短いのですけれども、もう1つぐらい御質問があればと思います。よろしいですか。その片鱗が見渡せるという感じの段階ではありますけれども。土岐先生、よろしくお願いします。
○土岐部会長代理
何かあったらということだったのですみません。1つは研究テーマで、今回も評価をやっている認知症などは、長寿もやっていますし、精神・神経もやっていますし、循環器病でもやっているというように、結構重複している分野もあるような気がするのです。やってはいけないわけではないので、密に連絡を取りながら、お互いの知識を共有していくという試みはなされているのでしょうか。
○国立高度専門医療研究センター植木医療研究連携推進本部長
認知症ではないのですけれども、14課題の1つとして現在、フレイルについて6NCで共同で、基礎的研究やデータベースも使ったような臨床的研究を進めているところです。重要な疾患については、どんどんそのような形で進めていきたいと思っております。
○祖父江部会長
少し時間が取れるようでしたら、また後で戻って議論をしていただいても結構だと思います。どうもありがとうございます。
それでは、次のセッションです。1-3から1-7、医療の提供とその他業務の質の向上に関する事項ということで、これは58分の時間を頂いております。御説明を30分掛けてやっていただくことになっております。その後、28分ぐらいで議論ということなので、まずは法人から御説明をよろしくお願いいたします。
○国立国際医療研究センター杉山病院長
医療の提供に関する事項は、センター病院は杉山が、国府台病院は青柳院長が説明いたします。まず、25ページの表をお願いします。自己評価はAとしました。次のページをお願いします。26、27ページに指標の達成状況があります。28ページをお願いいたします。28ページの指標の達成状況で、要因分析、実績値、目標値が120%以上又は80%未満について御説明いたします。2番目のセカンドオピニオンの実施件数は、昨年度は非常に少なく、実際に満たすことはできませんでしたけれども、患者数の一定の回復と、オンラインによる海外からのセカンドオピニオンの対応を積極的に進めた結果、セカンドオピニオンの実施件数が増えました。それから、センター病院においては入院の初診患者数が増加しております。これはCOVIDの疑い及び確定症例の患者を積極的に受け入れたことから、初診患者数の増加になったものと考えております。国府台病院、よろしくお願いします。
○国立国際医療研究センター青柳国府台病院長
国府台病院長の青柳です。よろしくお願いします。同じく達成状況ですが、一番上の項目、精神科救急入院病棟及び精神科急性期治療病棟における重症身体合併症率は、目標が15%だったところ、昨年度は18.7%でした。重症身体合併症というのは、単独でも入院が必要となるような疾患を指しており、具体的には肺炎、骨折、がんなどです。これらを合併する精神科患者に対応できる施設というのは、現状では限られているのですけれども、目標を上回る実績を上げることができました。
4項目目の平均在院日数の目標値は15.6日であるところ、昨年度は11.7日と短縮することができました。これは地域連携ですね。病診連携、病連携に力を入れたことによる結果であろうと考えております。
最後の5項目目の手術件数に関しては、国府台病院はコロナ患者も診ていたのですけれども、影響は比較的少なかったということもあり、目標値に対して約174%の手術件数を達成することができました。これは主に整形外科、眼科等の手術が増えたことが大きな要因となっております。
○国立国際医療研究センター杉山病院長
手術数について、センター病院は全体的なコロナ対応のために入院患者数が減ったこと、予定手術を延期させたことによって手術制限が行われたために、十分な目標を達成することができませんでした。
設定の根拠として、COVID-19への対応です。COVID-19に対しては、東京都新型コロナウイルス感染症入院重点医療機関として、特定感染症病棟及び集中治療室での集中治療機能を活用し、重症のCOVID-19に積極的に取り組んでおりました。それから第4波、更には東京オリンピック・パラリンピックなどへの対応もしましたし、年末からはオミクロン株による第6波に対しても機動的に対応いたしました。したがって、今年度は設定しておりませんが、COVID-19感染症診療をリードする施設として、重症患者対応などに十分取り組んだものとして、評定を一段階引き上げるに相当するものと考えております。救急医療については、後で説明いたします。
続いて、29ページをお願いいたします。COVID-19への対応です。左下の図を御覧ください。第1波から現在の第7波に至る入院患者数、受入患者数を示しております。緑色が入院患者数です。それに対応して人工呼吸器を要する重症患者も増えておりますが、第5波を契機として第6波は重症患者数が減っておりますし、今の第7波で重症患者数はほとんどいないという状況になっております。右上のHCUハイケアユニットというのは、完全にCOVID対応した病棟で、ここで集中治療を行っておりました。右下は、NCGMのCOVID-19の治療フローチャートです。割と早い段階から我々の施設はフローチャート、治療の指針を示して、これは厚労省の手引きにも採用されております。
30ページをお願いいたします。救急医療の提供についてです。左下の図を御覧ください。左下の棒グラフは、三次救急の受入件数です。2019年度、2020年度、2021年度と年々、第三次の救急の受入件数が増えております。第5波、第6波と書かれているのは、特に三次救急の受入れが多くなりましたが、受入件数が多くなった分、応需率が下がったということで、最終的な救急患者の応需率は減ったことになります。このときは周辺の救命センターが機能停止したこともあり、我々の施設に多くの患者が運ばれた結果、こういうことになったと考えております。右下のグラフが、東京都における年間の救急車の受入件数です。本年も昨年度も、東京都では一番多い救急患者の受入件数となりました。
31ページをお願いします。総合病院としての取組です。まずはHIV/エイズ患者の診療です。血友病HIV患者に対するがんスクリーニングを積極的に行っており、この結果として、全国の血友病HIV感染者の生存数は約700名で、今回のスクリーニング検査で得られた結果、全国に約40名の未診断がん患者が存在し、毎年新たに約20名のがんが発生すると推定されました。この集団に対するがんスクリーニングの重要性を示す結果であり、これを基にHIV感染者に対するがんスクリーニングの手引きを作成する予定です。
中段は膵島移植についてです。膵島移植プロジェクトは、臓器提供者の膵臓から膵島を単離し、患者の肝臓内に点滴で細胞を移植する臨床試験です。2022年3月に、脳死ドナーから2例目を実施しております。完全なインスリン離脱は難しいものの、患者にとっては血糖管理の負担が大きく減った形を継続できております。
一番下が、高難度新規技術による先端的医療の充実です。da Vinciのロボット支援下での手術で、手術件数は年々増えております。
○国立国際医療研究センター青柳国府台病院長
続いて32ページをお願いします。上段が「摂食障害診療への取り組み」です。国府台病院は、千葉県の摂食障害支援拠点病院になっております。右の棒グラフはDPCデータから持ってきた、摂食障害の入院患者数上位施設の年次推移です。ほぼ一貫して、全国1位の入院患者数を実績として残してきております。また、昨年度は摂食障害相談ホットラインの開設、あるいはSNS等による情報発信も強化し、摂食障害診療の均てん化にも力を入れ始めたところです。
次に、下段の「肝炎医療への取り組み」です。昨年度は肝炎情報センターを中心として全国の肝疾患診療連携拠点病院に、各種指標の達成状況の第4回目の調査を行い、課題の抽出と改善に向けた取組を行いました。これらの指標はかなり細かいので、ここではお示ししておりませんが、今回の調査で各指標値はおおむね高く、肝炎診療の均てん化が進んでいることが確認されました。また、昨年度は右の図にありますように、肝炎すごろくというものを開発し、一般の方々への肝炎の啓蒙の推進に役立てています。国府台は以上です。
○国立国際医療研究センター池田国際協力局長
国際協力局長の池田です。評定項目1-4、5、6につきまして、17分使って御説明します。33ページを御覧ください。人材育成に関する事項です。人材育成はNCGMが医療政策を牽引する上で特に重要であると考えておりまして、国内外の有為な人材育成拠点となるように努力しています。指標として、リーダーとして活躍できる人材の育成、モデル的研修・講習の実施を中長期目標としておりますが、指標の中の、センター外の医療従事者向け各種研修会等開催回数については対面の研修のみを実績値としてカウントしているため、指標が未達成になっております。オンライン開催の研修はむしろ増えておりますが、オンデマンド形式の研修は開催回数の実績値という形で記載がしにくいということがあって、ここではカウントしておりません。後ほど出てきますが、受講者としては、一昨年の2020年度に必要に迫られて非常に多く実施したCOVID-19関係以外の研修については受講者数が2倍以上となっているため、自己評価をAとしております。34ページは、今申し上げた評定の根拠です。
35ページを御覧ください。リーダーとして活躍できる人材を国内外で育成しております。例えば、下の左は、先ほど理事長からもありました、国際臨床研究を主導する研究者を対象に、e-learningプログラムを開発して、パイロット的な位置付けでARISE、AROアライアンスネットワークの加盟施設から推薦を受けた29名にまず研修を実施し、後にこの人たちが中心になって、フィリピン、インドネシア、タイ、ベトナムの参加施設が主体となって、このプログラムによる研修をアジアで広げました。最終的には1,683名が参加しております。
下の真ん中ですが、教育シンポジウムです。アジア、アフリカ各国の研究者を対象にした臨床研究、治験、医療プロダクト開発に関する教育シンポジウムを実施して、475名が登録いたしました。ニーズはあるが製品が開発されていないアンメットニーズをなくすためには、国際共同臨床試験を通じた開発協力を行う専門家の育成が欠かせません。この育成に向けたシンポジウム・研修を継続して開催し、これによってアンメットニーズをどんどん減らしていきたいと考えております。下の右ですが、臨床試験に関する企画、研究デザイン、オペレーション等、それから、GCPなどのICHガイドライン、医薬品規制調和国際会議で合意しているガイドラインについての共通国際研修プログラムをAMEDの研究費で、がんセンター、阪大、京大と共に開発しました。既に使われておりますが、この研修はAMEDの研究費で行っているものですから、必ずしも持続性がなかったもので、今後の研修について、国際臨床医学会に運営を継承する交渉を行っておりまして、そういった形で持続性を担保しようと考えております。
36ページです。国際協力につきましても、国内外の若手人材を対象に様々な研修を実施しています。日本人に対しては、医師向け研修コース、職種を問わない研修コース、中堅向け研修コースを実施しておりまして、国際協力を志す若手人材の入口として高く評価されています。外国人に対しても、リモートで工夫をしながら様々な研修を実施しております。また、右側にあるのは、WHOをはじめとする国際機関が設置する国際的な基準やルール、共通ルールを策定する委員会の委員として、若手職員を送り出しておりまして、活躍してもらうことによって、グローバルヘルスにおける日本人の存在感を高めることに貢献しております。
37ページです。各センターや国府台病院でも、COVID-19、HIV感染症等の、NCGMが有する高度かつ専門的な医療技術に関する様々なモデル的な研修・講習を実施しております。右のグラフにあるように、一昨年の研修はCOVID-19によって国際感染症センターがぐんと伸びている以外は、準備ができていなかった所もありますが、昨年はどこのセンターでもe-learningの準備が整いまして、一昨年に非常に受講者の多かった国際感染症センター以外に関しては2倍の受講者数を獲得しております。
38ページ、評価項目1-5、医療政策の推進等に関する事項です。中長期目標は、国等への政策提言、医療の均衡化、情報の収集及び発信、公衆衛生上の重大な危害への対応を挙げています。研究や医療の均てん化、NC連携によるデータベースやレジストリ整備、国際協力等に取り組む中で明らかになった課題等について、患者さんを含めた国民の視点から、科学的見地を踏まえた政策提言等を様々な形で行っております。指標として、新感染症の発生に備えるための訓練については、COVID-19の流行と医療逼迫状況を勘案して、2回目のシナリオ訓練は見合わせたため、指標を達成しておりません。しかし、この件に関しては、日々、実際の感染症に対する中で、On the Job Trainingのような形で、日々ほかの医療機関からの相談に乗っておりますので、評価をAとしております。39ページは、今申し上げたような評定の根拠です。
40ページですが、国等への政策提言につきましては、いろいろな審議会の委員として、専門的な立場から助言をしています。下の左に写真がありますが、東京都の新型コロナウイルス感染症モニタリング会議での大曲先生の発言の様子は、先生方もニュースでよく御覧になっていると思います。真ん中と右側は、途上国の保健省アドバイザーとして、COVID-19への対応も含めて、国の保健医療政策の立案に参画したり助言したりしています。
41ページを御覧ください。右側の写真ですが、グローバルヘルス戦略推進協議会などで、日本のグローバルヘルスにおける課題に対する提言・助言等も行っているほか、国際的には、右下にあります、COVID-19の承認済みのワクチンを公平に分配する枠組みであるCOVAXが作成したコロナワクチン分配プロポーザルを検証する専門委員の一員として技術貢献しております。左の下は、WHOの子宮頸がん排除に向けての技術諮問委員会委員として、WHOの世界戦略策定にも貢献しております。また、日本の子宮頸がんワクチンの接種勧奨再開についての論文を『The Lancet Oncology』に載せるという形の情報発信をしております。御案内だと思いますが、2013年に日本で子宮頸がんワクチンの積極的な接種勧奨を中止したことは、SNS等で世界中にばらまかれまして、世界の反ワクチン運動の根拠になっておりました。昨年末に接種勧奨再開が決断され、この4月から再開されております。外国の研究者からは、それは非常に素晴らしいことだが、全然英語で発信していないではないか、英語で発信してくれないと日本が中止したことによって起きたことに対して何も回収ができないではないかという指摘を受け、うちの局員が『The Lancet Oncology』に投稿したものです。この投稿によって、先月に行われたランセットサミットでも発言を求められまして、そこでも口頭発表し、幾つか質問にも答えております。こういう形の発信も貢献の在り方として非常に重要だと考えています。
42ページを御覧ください。エイズ治療・研究開発センターでは、首都圏中核拠点病院会議をWeb開催して、HIV治療の均てん化を図るとともに、右上にありますように、患者の視点から、「からだ・こころ・くらし・くすりノート」など、患者さんが自分らしく長期療養できるための資料をホームページに公開し、時代に合わせて、毎年更新するとともに、全国に配布しております。他にも、輸入感染症講習会、予防接種基礎講座、糖尿病診療用患者説明資材や研修講座等で医療の均てん化に貢献するとともに、全国の糖尿病のデータをリアルタイムで蓄積する診療録直結型全国糖尿病データベース資料も実施しております。
下にあるのは、在日外国人のための保健医療アクセスに関して、様々な活動を実施するとともに、WPROパートナーフォーラム等、複数のシンポジウム、英文査読誌等で情報を発信したため、国際移住機関(IOM)から、在日ベトナム人向けの健康ハンドブックの作成の依頼を受けました。直接関係ありませんが、このIOMのベトナム事務所の職員はたまたま日本人でして、かつ、以前にNCGMのセンター病院で看護師をしていた方でした。NCGM全体として、世界で活躍できる人材を育成していることの証左だと思ったところです。
43ページ、情報収集・発信についてです。NCGMの活動全般についても広く国民に知っていただきたいと考えております。右上にありますように、NCGMの職員向けの情報誌「NCGM Plus」を外部に向けて編集し、冊子として外部関係者、患者さん等に配布しております。COVID-19関係では、日々の診療に追われながらも、ほかの医療機関の従事者への研修を行うとともに、感染対策、各診療科の対応、発表論文の要旨をホームページに掲載したり、メディア対象の勉強会を開催する等、情報収集・発信に努めております。また、この経験を後世に残すために記録を残しておりまして、内部向けに冊子を2冊作っております。右にありますように、『それでも闘いは続く』という本を出版して、一般の方に理解していただけるようにしました。その下にありますのは、国際英文ジャーナル『Global Health & Medicine』で、引き続き2か月に1冊程度発行を続けており、英語での情報発信にも努めております。
44ページを御覧ください。公衆衛生上の重大な危害への対応ですが、COVID-19対策が一番挙げられると思います。NCGMホームページに特設サイトを設置しまして、臨床情報やNCGMにおける取組を迅速に公開しております。また、昨年度は東京オリンピック・パラリンピックがあったことから、左下の写真ですが、大会開催中に、COVID-19の患者の受入れをしていたことに加えて、感染症対策センターや選手村の濃厚接触者検査エリア支援を実施し、この経験は『JAMA』にも掲載されております。一番下の右の写真は、第6波のとき、東京都宿泊療養施設、これは医療機関の逼迫を防ぐために、COVID-19の症状が比較的軽い、といっても認知症や基礎疾患のある高齢者を引き受ける、病院ではない施設ですが、ここへの支援を実施しました。病院ではない所で、医療従事者も寄せ集めで数も少なく、徘徊等をしている高齢者を数多くケアする施設でして、お看取りもある中、苦労が多かったと聞いております。
45ページを御覧ください。評価項目1-6、グローバルヘルスに貢献する国際協力です。中長期目標には、UHCの達成と健康格差縮小のための技術協力活動の総合的な展開、グローバルヘルスの重要課題に関する政策の情報収集・分析、国、国際機関、新興国・途上国に対する政策提言、実践的なエビデンスの創出、地球規模の課題解決に資するソーシャルイノベーションや革新的事業の創出の支援というものがあります。日本は従来から健康というものが開発・経済政策の基盤として非常に重要であるという認識の下、グローバルヘルスを国際協力の重点分野の1つとして推進し、貢献してきておりますが、COVID-19によるパンデミックの中で、グローバルヘルスの重要性は更に高まっております。そうした中で、日本が新興国や途上国に対して、ニーズに合った専門的な支援を効率的に推進し、グローバルヘルスに関する日本のリーダーシップを示すことは、来年、G7サミットの議長国を務める日本にとって非常に重要だと考えており、COVID-19禍でも引き続きやっていることから、重要度、難易度は「高」と考え、自己評価をSとしております。
46ページには指標の達成状況があります。2021年度には、ザンビアの1次レベル病院運営管理能力強化プロジェクトと、モンゴルの医師・看護師卒後教育強化プロジェクトの2件に携わっております。彼らからの人材の受入れはコロナ禍で行われておりませんでしたが、この指標は国際展開推進事業を除いたリモート研修の受入数となっており、おおむね100%を達成しています。
47ページを御覧ください。コロナ禍の中でも総合的な技術協力活動を進めておりまして、プロジェクト8件、保健省の技術顧問3件に長期専門家を延べ16人、WHOへ2名の長期派遣をしておりまして、10か国で活躍しております。
48ページを御覧ください。左下はWHOのGOARN、地球規模感染症に対する警戒と対応ネットワークの枠組みで、パプアニューギニアでCOVID対策として、サーベイランス体制の整備、検疫体制の改善等を実施しています。真ん中はザンビアのプロジェクトです。これは病院管理のプロジェクトなのですが、コロナ禍ということで、通常のプロジェクト進行に加えて、コロナ対策として、発熱外来、コロナ病棟での感染管理等についての指導が必要となって実施しております。医療機材についても迅速に供与し、きちんと使えるように指導しています。右側には、各国での様々な技術指導等について、写真を載せております。
49ページを御覧ください。さらに、日本の健康・医療戦略を踏まえ、日本の医療技術・医療製品等の国際展開を推進し、7事業・11例で相手国の国家計画やガイドラインに採択され、10種類の医療機器が相手国の調達につながっています。下段は、実践的なエビデンスの創出ということで、先ほど申し上げたように、COVID-19に関して、オリパラ東京大会選手村における濃厚接触者対策や、入国者における感染リスク評価と対策、検疫における効果的なスクリーニング検査等について論文化をしております。また、ラオスで麻疹が非常に増えたときに、具体的にはワクチンの温度管理がなっていないのではないかと、エビデンスと共にWHO及びラオス国に対して提言したところ、きちんと対応を取ってくれまして、報告された麻疹の患者数は激減するというような実績も上げています。50ページをお願いします。ほかにも様々な形でエビデンスを創出しています。
51ページをお願いします。先ほど御説明したように、日本政府に対する政策提言に加え、カンボジア、ラオス、セネガル、モンゴル、コンゴ等の国に対しても政策提言を実施するとともに、国際的委員会の場にも参加して、国際的なルール設定やガイドライン策定に貢献しております。
最後ですが、革新的な取組に向けた基盤整備です。日本の医療技術・医療製品等の国際貢献のための基盤整備として、様々な雑誌で資料を紹介したりセミナーを開催しております。また、企業相談窓口を設けて、関心のある企業の具体的な相談に乗っております。日本企業は必ずしも国際展開が得意ではありません。実際、一番透明性が高くて参入しやすい、国連の実施する国際公共調達事務部門でも、金額で1.3%しかありません。ただ、NCGMには中進国・途上国の保健医療事情を熟知している専門家がおります。彼らが伴走支援をすることによって、更なる国際展開が推進できるものと期待しています。以上です。
○国立国際医療研究センター萱間国立看護大学校長
私は看護大学校長の萱間です。評価項目1-7を説明させていただきます。NCの職員の養成及び研修を目的として、看護に関する学理、技術の教授、研究及び研修を行うこと、NCとの連携を更に進めるとともに、NCのニーズに対応した人材育成を行うこととなっており、5つの指標があります。いずれも達成度は100~150%ですので、自己評価はAとしています。53ページには評定の根拠を示しています。
54ページを御覧ください。学部・研究課程部がありますが、ともに定員を充足する志願者数を継続的に確保しています。18歳人口が減少し、看護系の大学は280校を超えて急増しておりますが、新型コロナウイルス感染症拡大の中で、オープンキャンパスや公開講座等をWebによる方法で4回実施し、定員100名に対して志願者が468名、倍率4.7倍で、優秀な学生を確保しております。他大学の倍率等を右上のグラフに示しております。一番右側が国立看護大学校です。国家試験に関しては、本学の学生は看護師国家試験、助産師国家試験とも、合格率は100%です。横に全国平均を示しています。
3番目、国際交流研究・国際看護実習に向けた基盤づくりですが、ベトナムとの連携は前年度と同様、オンラインで行っております。学生が100名参加いたしました。インドネシアとの間では、インドネシア老年看護学会をカウンターパートとして、教育スキル強化事業、VRを用いたオンライン実習の方法の開発を行い、200名規模のWebinarを主催しております。
55ページです。このような状況下で、COVID-19に対応した学事の施行を継続しております。2020年度と比較しますと、講義・演習はできるだけ対面で行うということで、時期を選んで行っております。病院等でも6NCで実習を受け入れていただき、2021年では病院に行っての実習がある程度できるようになりました。経済的に困窮する学生については、緊急給付金を支給しております。今のところ、流行を理由とした学生・教職員の退学や休学などはありません。
5番目です。東京オリパラの運営に関しては、先ほどの国際協力局と協働の機会を頂き、選手村での検査エリアの運営支援を行っております。6番目、先ほど出ましたJHの若手研究助成課題については、1課題で採択されております。以上です。
○祖父江部会長
どうもありがとうございました。それでは、いかがでしょうか、非常に広範な内容を含んでおりますが。根岸先生、よろしくお願いします。
○根岸委員
根岸です。よろしくお願いいたします。御発表ありがとうございました。大変質の高い医療が提供されていると確信いたしました。特にコロナへの様々な対応につきましては感謝申し上げます。43ページの『それでも闘いは続く』という書籍は私も拝読させていただきました。初期の対応から、その後の活動に至るまで大変示唆のある書物だと思いました。こういう形で記録に残すということは、大変価値のあることだと思いました。
1つ質問があります。26ページのセカンドオピニオンについて、先ほど御説明がありましたが、セカンドオピニオンにつきましては、かなり高い達成度を上げていらっしゃったかと思います。その中でオンラインによるセカンドオピニオン、更に海外に範囲を拡大していらっしゃるというようなことだったと思いますが、実際に海外と国内の比率、それから対面とオンラインの比率が分かれば教えていただきたいのと、もう1つ、実際にどういう方から、どういう所からになるのかもしれませんが、分かりませんけれども、どういう内容の相談があったのか、これは差し支えない範囲で構いませんので、是非教えてください。よろしくお願いいたします。
○国立国際医療研究センター杉山病院長
センター病院長の杉山が御説明します。対面とオンラインの比率がどうかというのは、なかなか難しくて正確な数は把握していませんが、オンラインのほうがはるかに多いです。それから、外国はベトナムと中国が多いです。これは、以前からベトナムの患者を定期的に受け入れていまして、その患者さんたちのフォローアップなど、一切できていなかったことがありまして、それをオンラインで代用したところがございます。ベトナムに関しては軍の施設や公的病院とのコネクションがありますし、中国に関しては仲介業者を通してオンラインの話がございます。
○根岸委員
分かりました。ありがとうございます。セカンドオピニオンは大変重要な役割かと思います。引き続きよろしくお願いいたします。ありがとうございます。
○祖父江部会長
ありがとうございました。次は花井先生、よろしくお願いします。
○花井委員
花井です。よろしくお願いします。スライドの31、32ページで若干政策も絡めて伺います。いわゆる非感染HIVのsexual Health外来のコホートなのですけれども、これはやはり予防的投薬、つまりPrEPの研究みたいなことをやっていたと思うのですが、その後、進捗して、日本ではなかなかPrEPは根付かないところがあるのですけれども、それはどういう状況かというのが分かれば教えていただきたいというのが1点目。
2点目は、その次のスライド32です。摂食障害につきましては、入院に関しては診療報酬で見ているのですけれども、やはり本来的にはクリニックで、外来で長期的に診るものなのですが、手間の割に一切もうからないということで、結果的にクリニックではSSRIなどを大量に投与してそれで終わりというような、ちょっと誤った治療がまだあるというふうに認識をしています。その辺りの、やはり全国的なクリニックで摂食障害をちゃんと診れるような均てん化、あるいは、均てん化したところでもうからなければやらないという話になると困るので、そういった診療報酬上のいわゆる評価というものをエンパワーするような取組はあるのでしょうか。以上2点です。
○国立国際医療研究センター杉山病院長
最初の件についてお答えします。この件に関しては多分、花井先生のほうがよく御存じかもしれませんが、PrEPに関しては、以前からずっと続けて臨床研究をして継続しております。ただし、出口が難しいというのはおっしゃるとおりだと思います。
○国立国際医療研究センター青柳国府台病院長
続いて摂食障害に関しましては、やはり、おっしゃっていただいたとおり、まず専門に診れる施設が全国に少なく、なおかつ今の日本の診療報酬上のこれに対する手当が薄いということもありまして、かなりバラバラで、特にクリニックでは、そういう薬の乱用というか、含めてかなり多剤投与というような面も、問題点もあります。そういう中で私どもとしては、そこは苦しい中でもこのように患者数を抱えて、その摂食障害診療、均てん化、診療側の向上に関して努めているところであります。
○花井委員
ありがとうございます。今後とも、特に心療内科のその辺りの質の向上につながるようなことは是非、NCとしてちょっと力を入れていただけたらと思います。ありがとうございます。
○国立国際医療研究センター杉山病院長
ちょっと追加情報です。SH外来において、臨床研究してHIV感染の予防、ばく露前予防、PrEPをやっているのですけれども、今のところHIVの罹患率は3.0/100pyと非常に高いので、これをPrEPを行うことによって新規感染者がゼロであるということになっておりますので、これを基にして公知申請をお願いしているところです。
○花井委員
ありがとうございます。
○祖父江部会長
どうもありがとうございました。それでは、続きまして、前村先生、お願いします。
○前村委員
コロナ禍の中で精力的に人材育成、国際協力が行われていることが分かりました。37ページについてお伺いしたいと思います。ここ2年間、コロナに対応できる人材を育成するというのが大きな課題だったと思うのですが、これのDCCのグラフを見ますと、令和2年が非常に多くて、令和3年は従来よりは多少多いのですが、かなり少なくなっているのです。これは、令和2年はこのコロナに対応する人材の教育というのを一手に行って、それが一段落して令和3年は少なくなったというような解釈でよろしいでしょうか。この内訳について教えていただければ幸いです。
○国立国際医療研究センター池田国際協力局長
国際協力局長の池田です。基本的にはそのように、先生のお考えのように取っていただいてよろしいかと思っております。
○前村委員
ある程度、もうコロナに対応できる人材は教育されたと考えてよろしいでしょうか。
○国立国際医療研究センター杉山病院長
YouTubeを使ったりとか、あるいは書籍を出すことによって、かなりそういう情報発信をいたしましたので、今はほとんど問題なく、どんな地域でもできるようになったというふうに考えております。
○前村委員
分かりました。ありがとうございます。
○祖父江部会長
ありがとうございます。それでは、根岸先生、もう1回よろしくお願いします。
○根岸委員
根岸です。よろしくお願いします。54ページの国立看護大学校について教えてください。まずは、看護師、助産師の国家試験100%の合格ということで、大変おめでとうございます。すばらしい結果だと思います。
そこで2つ質問です。まず1点目は、今年の3月に卒業された学生さんの進路についてお尋ねしたいと思います。それからもう1つは、看護大学では今年の4月から新しいカリキュラムがスタートしているかと思います。様々な医療技術の進歩への対応や、地域包括ケアシステムを推進するための学習など、いろいろな課題がある中で、国立看護大学校における新カリの特色、どんなところに特徴を持たせたのか教えていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○国立国際医療研究センター萱間国立看護大学校長
御質問ありがとうございます。看護大学校長の萱間です。国家試験の合格について、ありがとうございます。進路状況については、看護学部100名の卒業となっておりますが、NCに89名が就職いたしました。6NCのいずれかです。そして、一般の医療施設に就職した者が6名、修士課程に進学した者が4名、本人の事情で就職しなかった者が1名です。
もう1点の新カリキュラムへの対応ですが、本学では、今回強化されたのが先生御指摘の地域包括ケアシステムへの対応でございまして、1年生のときからそういった視点を入れて、地域・在宅看護学を充実させるということでございました。政策医療の教育をするというところで、その辺はもともと多くの科目で網羅していたところです。さらに、地域の要素、退院支援や地域ケアについての要素を入れていくというところで、科目としては変えておりませんが、それで対応でき、今後内容を更に充実させてまいりたいと思っております。以上です。
○根岸委員
ありがとうございます。多職種連携については、いかがでしょうか。
○国立国際医療研究センター萱間国立看護大学校長
清瀬市には3つの大学がございまして、薬科大学と福祉系の社会事業大学と連携協定を結んでおります。今後、IPE、IPWについての科目は、私どものほうで窓口を務めて進めていく計画もございまして、連携を進めてまいりたいと思います。以上です。
○根岸委員
よく分かりました。ありがとうございます。
○祖父江部会長
それでは、土岐先生、よろしくお願いします。
○土岐部会長代理
看護に関することで、1点、私からですが、国立循環器病研究センターが、自分の所が唯一、特定行為研修をやっていますということをおっしゃっていたのですが、今後、特定行為研修を広めていく、ナショナルセンターの間で広めていく、そういう方針を音頭を取ってされる予定なのかどうか教えていただけないでしょうか。
○国立国際医療研究センター國土理事長
理事長の國土です。医道審議会で私はこの議論に参加していますので、私からお答えいたします。NC全体としては先生のおっしゃったようなことについて、はっきりディスカッションしたことはありませんが、NCGMとしては、病院として、臨床研修、人材育成に力を入れたいと思っております。
ただ、現状では初期研修医との、何と言いますか、棲み分けというのが、かなりまだ難しいところもございます。最近では滋賀医大とか関西医大などが、かなり積極的に導入していることを了解しておりますけれども、それに倣って病院としてどのようにやるか、これから検討するというところです。よろしくお願いします。
○土岐部会長代理
もう1点よろしいでしょうか。コロナの院内の対策について、ほかの病院若しくは東京都の基準よりも、かなりガチガチに厳しく職員に指導されたのかということと、院内クラスター的なものも、実は我々も、やってもやってもやはり出てしまうのですが、頑張っても、やはり感染症センターでも出てしまうものなのでしょうか。
○国立国際医療研究センター杉山病院長
センター病院の杉山が説明します。多分、うちはかなり緩いほうだと思います。それほどガチガチにはしていません。面会もかなり早い段階からOKにしましたし、職員の行動にもほとんど制限を掛けていませんでした。唯一行動制限を掛けたのは会食とアルコールだけです。
今まではそれで持ったのですが、オミクロンになってからは、どうしても感染は増えてきています。現在も3病棟ぐらいが院内で軽いクラスターを起こしたのですが、それ以上広めないようにするために、その病棟で封じ込めを行っています。結局、早い段階での検知と、それから絨毯爆撃的にPCRを掛けてしまって、早めに抑え込んでしまうしかないと思っています。
○土岐部会長代理
我々も、院内の職員間での感染が今まではなかったのですが、やはり、職員間というのが起きてしまって、なかなか苦労していますので、是非、また教えていただけたらと思います。よろしくお願いします。
○国立国際医療研究センター杉山病院長
ありがとうございます。
○祖父江部会長
どうもありがとうございます。ほかにはよろしいでしょうか。それでは、今の1つ前の議論と絡むのですが、先ほど特定行為の研修についてちょっと御意見を頂きました。もう1つのNPというのがありますね、ナースプラクティショナーというのが、医師の行為を代行してやれるような、大学院の修士課程でやるというものがありますが、それについてはいかがですか。非常に今、日本ではまだ足りないといいますか、非常に少ないのですけれども、その辺りへのスコープというか、今後どうされていくのかということを教えていただけると有り難いと思います。
○国立国際医療研究センター萱間国立看護大学校長
看護大学校長の萱間です。先生が御指摘のNPは非常に重要なことと存じております。NPにはいろいろな定義がありまして、日本では特定行為研修を全て終了した者を指す場合もございますし、国際標準では、修士課程以上の教育を受けて、定型的な処方もできるような実践家を指す場合もあると思います。ですので、まず国内でどういうことが必要とされ、そしてどのように連携をしていけるのか、タスクシフトの問題も含めて、コンセンサスを得ることがとても大切なことと存じております。看護系の学会や大学の協議会でも、今、そのコンセンサスづくりに取り組んでいるところです。以上です。
○祖父江部会長
ちなみに先生の所では、NPは病院としては何人か持っておられますか。
○国立国際医療研究センター國土理事長
NPはいませんが、特定行為研修修了者は何人かおりまして、それは毎年研修を行っております。
○祖父江部会長
そうですか、ありがとうございます。そのほか、何か御質問等ございませんでしょうか。少し急ぎ過ぎて時間がまだございますが、いかがでしょうか。非常に幅広い内容でしたので、ちょっとどこを質問していいのか分かりにくいということもありますが、ございませんか。
○土岐部会長代理
すみません、土岐ですが、よろしいでしょうか。コロナの対応について、もちろん院内のことは患者さんのこと、入院患者、それから外来とかなりきっちりとされていると思いますが、いわゆる地域で、もちろん東京都の会議などで大曲先生をお見掛けしたりもしますが、それ以外に、地域の老健施設に指導に行くとか、例えば療養施設、我々だったらホテル療養の手伝いに行くとか、地域に出ていって何か活動するようなことは病院としてはされているのでしょうか。
○国立国際医療研究センター杉山病院長
病院長の杉山です。初期の段階ではホテル療養に医師を派遣したり、高齢者を一時預かりする施設に継続的に協力区から人を出していただきました。それから、私のいる新宿区はそういう連携が非常に密接で、週に1回オンラインの会議をしておりまして、そこで特に訪問診療の先生なども入って情報を密接にやり取りしております。ですので、クラスターが出たとか何かあれば、割と早めに、そこに介入するようなことをしております。ただ、病院としてどうかということは、そこまではやっておりません。
○土岐部会長代理
是非、病院だけではなくて地域の感染にも貢献していただけるように、よろしくお願いいたします。
○祖父江部会長
ありがとうございます。今の土岐先生の御質問とちょっと絡むかもしれません。去年も同じ質問をさせていただいたと思うのですが、やはり、先生方の所はエビデンスに基づいたしっかりした情報を、国全体といいますか、オールジャパンに対して発信していただきたいなというのが、私は前から感じているところです。今後、国立感染症研究所と一緒になられて、そういう非常にコアなデータに基づいて、オールジャパンの1つのスタンダードを発信していただける方向を探っていかれるというような感じを、私自身はちょっと期待しているのですが、今の現状ではいかがでしょうか。個別の情報はパラパラ入ってくるのですが、今のように、どれぐらいのことをやると、例えば病棟にもよりますし、現場でも大分違うのですが、その辺りのエビデンスベースドのデータを発信していただくというところがなかなかないのですが、その辺りのことについてはいかがでございましょうか。
○国立国際医療研究センター國土理事長
理事長の國土です。COVIDについては先生がおっしゃるようなエビデンス、それから、それに基づく提言のようなもの、広報が一番大事だと思っておりまして、広報企画室を中心に継続的に発信しているつもりではございます。例えば、ホームページを見ていただきますと、トップページからすぐにCOVIREGIのページがございまして、そこを開いていただきますと、最新情報が、論文だけではなくて、各診療科の対応など、いろいろと現場でお役に立つ情報を発信しておりますが、先生が御覧になってまだ足りないというご評価であれば、また更に努力をしたいと思っております。
今、感染研と合併の方向で検討は始まっているのですけれども、その中ではもちろん先生がおっしゃるような、感染研にも広報がありますので、それぞれシナジーを持って更に強い発信ができるのではないかと期待しております。
○祖父江部会長
ありがとうございます。去年も同じようなお答えを頂いて。
○国立国際医療研究センター國土理事長
すみません。
○祖父江部会長
既にかなり努力はされているということではないかと思いました。いかがでしょうか、もう少しだけ時間がございますが、何か御質問はございますでしょうか。藤川先生、どうぞ。
○藤川委員
今のお話に関連するのですが、確かに一般の人からすると、COVIDに関しては感染研がイメージ強くて、国際医療研究センターというのは、すごく活躍していらっしゃるのは私は分かるけれども、つつましやかな広報のような気がしてならないのです。せっかくなので、もう少し、マスコミの人たちを呼びつけると言ったら何ですけれども、もっといろいろ教えてあげて、相当分かっていないんじゃないかなと思われる局も多いので、しっかり教育をするようなことをしていただけると、民間人にとっても非常に有り難いのではないかなと強く思っております。以上です。
○国立国際医療研究センター國土理事長
重要な御指摘をありがとうございます。COVIDに関するメディアセミナーというものを定期的に開催していますが、最近少し頻度は減っておりますので、心してまた検討したいと思います。ありがとうございます。
○祖父江部会長
よろしいでしょうか。それでは、どうもありがとうございました。非常に活発な御議論を頂いたと思っております。お話いただいた内容がいろいろと幅広かったので、また後で、もし何かあれば追加の御発言を頂いてもいいかとは思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、次のセッションに移りたいと思います。次は2-1から4-1の業務運営の効率化、財務内容の改善及びその他の業務運営に関する事項ということで、時間は14分と少し短めですが、御説明8分、質疑応答6分という内容です。ほかのものと同じように、まずは法人から御説明をお願いできますでしょうか。よろしくお願いします。
○国立国際医療研究センター岡野統括事務部長
統括事務部長の岡野から説明させていただきます。56ページをお願いします。業務運営の効率化に関する事項ということで、中長期目標の内容が大きく3つございます。効率的な業務運営とするため弾力的な組織の再編及び構築を行う、2つ目が、効率化による収支改善、3つ目として、業務の効率化、質の向上のための電子化の推進です。
57ページをお願いします。特に定量的な指標として4つ挙げております。1つ目の経常収支率は、中長期期間の累計で100%以上、年度計画では100.3%以上という目標に対して、実績については横にあるとおり、大幅に上回る106.4%となっております。
2つ目の後発医薬品の数量シェアは中長期期間を通じて85%以上ですが、年度計画では90%以上を設定しております。これも実績については大きく上回っており、センター病院では91%、国府台病院では94.1%になっております。
3番目の一般管理費は、前中長期期間の最終年度の額から5%以上の削減ということで、これは減価償却等の増加が大きくあった関係で、残念ながら削減にはなっておりません。4番目の医業未収金の比率ですが、これは前期の一番低かったときの率の0.072以下に低減するということです。これは事務的なお話になりますが、新型コロナ感染症の公費負担等の未確定分が増したことなどで低減はできなかったという結果になっております。
58ページをお願いします。評定の根拠です。経常収支について、令和元年度から3年連続の黒字というように推移することができております。大きな要因をまとめると、先ほど来、話が出ておりましたが、センター病院については、新型コロナウイルス感染症への対応を初期段階から、通常の診療機能への制約を受けながらも継続して積極的に行ってきているところです。これらの実績に対して補助金等が国や東京都から手当されており、結果として、補助金等の獲得が前年度と同様ですが、経常収支率を引き上げる要因となっております。
一方、新型コロナ以外の診療において、61ページを見ていただきたいと思います。ここでは手術件数のグラフを書いております。センター病院では、受診抑制、あるいは、病床運用の制約が避けられない厳しい状況の中で、救急患者や高難度手術等の治療が必要な患者の受入れ、効率的な病床運営管理などの収支改善努力を行って、医業収益としては増となっております。
国府台病院においても、新型コロナの影響を受けながらも整形外科等を中心に手術等の充実・強化、効率的な病床の運営管理に取り組んだ結果、医業収支の黒字を維持しております。こうした改善努力により、全体の医業収益の面でも前年度を上回る結果となっております。その上で、補助金等を合わせた経常収支率として、中長期目標及び年度計画を大きく上回っているというふうに考えております。
58ページをお願いします。少し戻りますが、後発医薬品です。これは供給が不安定になったという実情の中、随時、切替えに努めシェアを更に改善した。それから、電子化の推進に関しては、システムのセキュリティ強化、あるいは、ペーパーレス等を順次進めてきたという経過です。この項目に関しては、特に経常収支率と後発医薬品の数量シェアで、目標、計画を大きく上回ることができた点を踏まえ、A評価とさせていただいております。
59ページをお願いします。評価項目の3-1、財務内容の改善に関する事項です。中長期目標の内容として大きく2つございます。自己収入の増加のため、競争的資金等の外部資金の積極的な導入に努める。2つ目として、資産及び負債の管理として計画的な投資を行い、中長期的に適正なものとなるよう努めるというものです。
指標と達成状況がございます。指標については、繰越欠損金を中長期期間に71.8億円から16.1%、年に換算すると1.9億ですが、減少させるということです。これに対して実績として、理事長からもお話が出ておりましたが、予定額を大きく上回る30.9億円の減少ということになっております。
これに関しては、62ページを御覧ください。財務状況の資料です。真ん中に損益計算書があります。一番下、当期総損益30.9億円が実質的に減少した分です。大きな要因として、先ほども申し上げたとおり補助金等の収益がございました。ただし、医業収益、あるいは、研究収益等の収益増の取組の上での最終的な損益というふうに考えております。それから、左側の貸借対照表の下のほうです。繰越欠損金として、△40.89億円とあります。これは30.9億円減少した後の残高です。
61ページを御覧ください。自己収入の関係です。競争的資金ですが、AMED等から研究費として55.48億円を獲得。前年度の70.2億円から減少がありますが、高い水準を維持しております。受託研究等として総額19.29億円。これは企業から受託研究として総額5億円の受入れのほかに、先ほどのお話にも出ておりましたREBIND、あるいは、Clinical Innovation Networkという事業費が14億円超ということで受入れを行っています。前年度の8.59億円から大きく増加しています。
それから、治験に関しては企業治験に積極的に取り組み、総額3.2億円の受入れ。前年度3.56ということですが、おおむね同水準と考えております。この項目に関しては、自己収入増加の取組の上で、特に繰越欠損金について30.9億円減少と大きく解消できた点を踏まえ、A評価とさせていただいております。
60ページをお願いします。評価項目4-1、その他業務運営に関する重要事項です。主要なものを2つ書いております。人事の最適化とエイズ裁判の和解に基づく対応です。定量的な指標はございませんが、61ページを見ていただきたいと思います。
一番下のほうに書いてあります、特に大きな柱となっているエイズ裁判の和解に基づく対応です。HIV感染症、C型肝炎、血友病、心のケアなど様々な問題に対して包括的なケアを同じ場所で受けられる包括外来について、センター全体でサポートを行い、原告血友病患者の方の94%が受診されました。それから、個別救済医療としてACCの関与が必要な患者をリストアップし、地元医療機関と連携、院外の症例も含めて9例の肝臓がん対応を行いました。
このほかに、PMDAとはばたき福祉事業団との共同で、全国の原告団患者に対する個別医療の対応を行った、あるいは、薬害HIV感染者に関する治療法の評価会議をはばたき福祉事業団と合同で実施した等、たくさんあります。これは実績評価書には書いておりません。恐縮です。こういう内容に関して、新型コロナの対応等で様々な制約がある中、エイズ裁判の和解に基づく対応を着実に実施したという点を踏まえ、B評価としております。
最後に、63ページは当センターのパフォーマンスの資料となっておりますので、参考に御覧いただければと思います。項目2-1、3-1、4-1に関する説明は以上です。よろしくお願いします。
○祖父江部会長
どうもありがとうございました。全体としては、非常に好調な感じがいたしました。いかがでしょうか。藤川先生、よろしくお願いします。
○藤川委員
最初に伺いたいのですが、コロナ関連で研究も、今御説明いただいた部分も非常に大きな影響があったと感じます。コロナの補助金は全体で幾らだったのでしょうか。足し上げてみて、40億弱、38億ぐらいかと思ったのですが、まず、それを教えてください。
○国立国際医療研究センター岡野統括事務部長
コロナ関連の補助金は幾つか種類がございますが、37.6億円となっております。
○藤川委員
当然、御努力に対応する補助金であると思いますし、日本をリードする体制を敷いてやっていただいているので、もらうべきものは当然もらっていただくべきと思っています。それとは別に、コロナの影響なかりせば、実際どれぐらいの収支になるのかということは、当然、構造改革と言いますか、体質改善していかなければいけない状況とすれば考えていらっしゃるのかと思います。その辺りをどう考えていらっしゃるのか。
最初、理事長先生も、アフターコロナにおいてどう改善していくのかを考えなければいけないというようなことをおっしゃっていました。非常に厳しい言い方をすれば、2-1、3-1いずれもコロナの影響があり大きなプラスになっているので、それがなかったらどうなのかという点で言うと、Aを付けるのはどうしたものかと。達成度などは120になっていないものがほとんどなので、この辺りの評価が非常に難しい点だと感じました。
それから、厳しい申し上げ方をすると、最初に御説明があった元職員の逮捕の件です。これも6月という期がずれてからの逮捕だったのですが、対象となった業者に関しては、国立病院機構と同じ先が対象になっていることもあり、恐らく、そことの取引がないかなどということもお調べになったでしょうし、中でいろいろリサーチを進められたのではないかと思います。この辺りを後発事象と考えればC評価にするということも検討されたのかと思いましたので、その辺りを御説明いただければと思いました。以上です。
○国立国際医療研究センター杉山病院長
まず、最初のコロナなかりせばの話です。令和元年度はコロナがなかった時代で、法人が初めて黒字になりました。しかし、最後の1~3月はコロナの影響が出てしまったのです。もしあれがなければ、多分、5億円ぐらいの黒字になったと思います。ですから、恐らく、それがベースになると思います。あのときに比べると、患者さん1人当たりの単価も上がり、在院日数も下がり、高難度の手術も増えていますので、多分、かなり稼げると思い、その準備を整えているところです。
○国立国際医療研究センター岡野統括事務部長
先生がおっしゃられたように、実際に起きた時期等を考えると令和元年度ぐらいからになっておりますので、今回、入れるかどうかは中で検討いたしました。6月に逮捕という流れとなり、それまでの間、あるいは、そこから1か月以上たちましたが、警察の捜査に協力している過程では、余り国際医療研究センターとしての調査が動けない状況にございました。これは警察に協力する関係上、余り動けなかった実情があり、先だって起訴という段階まで行きましたので、これから明確に再発防止等に主眼を置いた実態調査をしっかりやっていく段階になっております。その辺りを整理した内容が、明確に申し上げていいか分かりませんけれども、今年度の業務実績評価をしていただく際には触れる内容になるのではないかというふうに考えてございます。
○祖父江部会長
よろしいでしょうか。どうもありがとうございました。続いて、中野先生、よろしくお願いします。
○中野委員
57ページの一番下の所について教えてください。医業未収金比率の所で、特殊な精算処理となったゾルゲンスマに関わる診療による訪日診療は、メディカルツーリズムかと推測しました。今の時代の特徴的なことですし、NCGM様ならではのことかとも思ったので、もう少しお教えいただけると参考になるので、御教授いただければと思います。
○国立国際医療研究センター岡野統括事務部長
ここは最初に少し触れたのですが、アンダーラインが掛かっているオレンジ色の部分は、今朝、修正させていただきました。ゾルゲンスマの関係は最初、記載しておりましたが、治療時期等で少し誤りがありました。今回の数字の理由としては、そこには入ってこないということです。
内容的に多かったものは、公費負担の事務処理の関係で出てきた未収金であったということで、修正させていただいたものです。基本的に海外からの患者さんであれば、前金のような形で準備していただくこともありますので、年度をまたがって入金されたりすれば、未収金という形で数字が出てしまうことがあろうかと思います。
○中野委員
失礼いたしました。では、今回はゾルゲンスマの精算処理の件は、これには関与していないという理解でよろしいでしょうか。
○国立国際医療研究センター岡野統括事務部長
はい、入ってございません。申し訳ありません。
○中野委員
かしこまりました。ありがとうございます。
○祖父江部会長
ありがとうございました。土岐先生、少し、簡単によろしくお願いします。
○土岐部会長代理
感想だけです。30.9億の黒字が補助金を中心にということなのですが、その額は適切なのかということは、やはり、ほかのナショナルセンター、ほかの病院から見て黒字の幅が大きい。NCGMがそれでいいのかという、そこが少し気になりました。16兆円というコロナの病院への補助金が適切に使われたかどうかというのは、国民の間ですごく問題になっています。30.9に対する説明は、相当気を付けないといけないのではないかと感じます。
○国立国際医療研究センター國土理事長
これに関してはいろいろなお考えがあると思うので、難しいと思います。ただ、2年前を振り返ってみると、4月に5億円ぐらいのマイナスがあったでしょうか。土岐先生も大学病院長でしたから、このままいくと年間50億円ぐらいのマイナスになるのではないかというような危機感をお持ちだったと思います。
そういうときから国と自治体などのご支援でここまで戻していただいたので、空床補填については、モラルハザードの病院もあるのではないかという意見もあると思いますが、もちろん、私どもとしてはそういうことはありません。黒字部分を職員にかなり還元した病院もあるというふうに聞いております。我々も少しボーナスを出しましたが、今のところは、黒字の大半は累積欠損金の解消に使わせていただいております。そういう意味では、国民に対して御説明できるのではないかと思っております。
○祖父江部会長
これはいろいろな意見が出るところです。ありがとうございました。それでは、時間が過ぎましたので、このセッションは、これで終わりたいと存じます。全体を振り返って、何か御質問、御発言、言い忘れた、聞き逃したということがあれば御発言いただけたらと思います。よろしいでしょうか。議論を十分やっていただいたというふうに御理解させていただきます。どうもありがとうございました。
それでは、最後に、法人理事長の國土先生と監事の先生方からヒアリングを行うというセッションが1つ残っております。これは時間は短くて結構です。まず、法人の監事から、監査結果等を踏まえ、それから、できれば今後の課題、あるいは、改善方針などにも少し触れながら御発言いただけると有り難いと思います。いかがでしょうか。よろしくお願いいたします。
○国立国際医療研究センター石井監事
監事の石井です。今、いろいろ御議論いただきましたが、令和2年度に続き3年度も、決して穏やかとは言えない1年であったと認識しております。単にコロナだけではなく、本日、國土理事長から、幾つかの事項について今までなかったことが起きたという御発言を頂きました。その中には、残念ながら事務職員の逮捕という問題もございました。
私ども監事も、監査報告書の署名は法定期限ぎりぎりで何とか署名させていただきました。ただ、この背景は当然ですが、監査法人が本件に関わる検証手続をしっかり行い、監査法人としても適正な意見が出せるという前提の下で、私ども監事も意見を公表しております。その辺りは御理解いただければと思います。
それから、このような状況の中でしたが、國土理事長には、監事として認識している監事の視点からの課題についてしっかり御報告し、御要望もさせていただいております。そういう意味では、きちんと監事機能を果たせたという認識をしてございます。以上です。
○祖父江部会長
どうもありがとうございました。非常に簡潔におまとめいただいたと思います。御発言、御質問等はございますか。最後になりますが、続いて、法人の國土理事長から、今日の議論なども交えながら、もしできれば今後の展望も、最初に非常に良いイントロダクションを頂いたので、大体あれで尽きている感じはいたしますが、いかがでしょうか。最後に、締めの御発言を頂けると有り難いと思います。よろしくお願いいたします。
○国立国際医療研究センター國土理事長
祖父江先生、委員の先生方、本日は長時間にわたり御評価いただきありがとうございました。いろいろ貴重なサジェスチョンも頂いたと思っております。話が戻りますが、やはり、職員の逮捕の件については、改めて法人として深く反省し、これから再発防止に取り組みたいと思っております。
まだ調査が全て終わっておりません。捜査に協力した関係で手を付けるのが非常に遅かったのですが、アンケートなどの暫定的な報告によると、幸いながら、今のところ逮捕された個人以外に不正に関与した職員はなさそうだと。それから、当該の会社以外の企業でこのような不適切な関係はなかったという、暫定情報ですが、今のところそういうふうに聞いております。これについては徹底的に調査して、早い時期に報告書をまとめていただきたいと思っております。
それから、もう1つ大きな課題は、国立感染症研究所との統合です。6月末に厚労大臣に面会し、そこで脇田所長と私が直接に、その方向性である、そういう作業を進めることを通告いただきました。現時点で私どももまだ白紙と言いますか、まな板の鯉ではあるのですが、私どもが聞いている情報としては、厚労省の中にタスクフォースのようなものが出来て、実際、私どもの職員の一部がそこにも参加して作業に加わるというふうに聞いております。現段階ではまだ何も申し上げられないのですが、ざっくりした予定としては、令和7年スタートぐらいを目指して、法案については来年の通常国会に出るのではないかと予想しております。全体像については、早い時期にもう少し分かってくるのではないか。組織防衛ではありませんが、我々が懸念しているのは、私どもは総合病院として感染症に関わらない部分がかなりありますので、ジェネラルのところをやっておりますので、その部分がどういう扱いになるのかというのを組織として注視しております。国民目線で見れば、感染症の総本山が出来るということで、新型コロナ、将来くるかも分からない新興・再興感染症に対応できることはいいことですので、シナジーをもって更に強固なものになるということについて、我々としては、これから前向きに、積極的に関与していきたいというふうに思っております。実際、感染情報に関して言うと、感染研と一緒になることによって、我々が得られていなかった臨床情報など、いろいろなものが得られるのではないかということで、研究開発には更にプラスになると確信しております。
経営については、先ほども申し上げましたように、ポストコロナの時代に備えて病院機能、収益を更に上げなければいけない。あとは、申し忘れましたが、御存じのように、今、ウクライナ危機の問題などでエネルギーの価格が非常に上昇しており、電力料金については、先日も名古屋大学病院で、年間6億円ぐらい負担がプラスになるというような話がありました。そこまではいかなくても、私どもは経営的にかなりマイナス要因があると考えておりますので、その点も含めて、今年度について注視しながら頑張っていきたいと思っております。以上です。ありがとうございます。
○祖父江部会長
國土先生、どうもありがとうございました。最後に締めを頂いて、特に一番最後にお話いただいた感染研との合体と言いますか、新しい組織を作っていただいて、我が国の感染の元締を更に強化した組織になるというところが、実は一番ディスカッションするところなのですが、今お話を聞くと時期尚早でしたので話題にはなりませんでしたけれども、最後の締めでそれをうたっていただきました。あと3年ぐらいということですので、その構想がかなり早い時期に出てくるのではないかと期待しておりますし、皆さんも非常に期待しているところではないかというふうに感じております。今日は、本当にどうもありがとうございました。では、これで終わりたいと思います。事務方、10分の休憩はいいですか。
○大臣官房厚生科学課国立高度専門医療研究センター支援室武藤室長補佐
10分の休憩後、4時13分から再開いたしますが、よろしいでしょうか。
○祖父江部会長
どうもありがとうございました。それでは、これで終わります。
(国立研究開発法人国立国際医療研究センター 退室)
(休憩)
(国立研究開発法人国立がん研究センター 入室)
○祖父江部会長
時間になりましたので、本日2か所目の議論を始めたいと思います。国立研究開発法人国立がん研究センターの令和3年度業務実績評価についてです。これは慣例ですが、実際の質疑応答、議論に入る前に、理事長先生からの御挨拶を一言だけ毎回頂いておりますので、今回も是非お願いしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
○国立がん研究センター中釜理事長
理事長の中釜です。各部門からの発表に先立ちまして、私から御挨拶させていただきます。本日は当センターの令和3年度の業務実績についての発表の機会を頂き、ありがとうございます。新型コロナの感染状況が落ち着かない中、今回もまたWebでの開催となりましたけれども、本日はよろしくお願いいたします。
当センターにおきましても、この1年、昨年度からの新型コロナウイルス感染症の影響はどうしても診療面で、特に中央病院では東京都の依頼を受けて病床を確保するなどの対応を迫られ、患者さんの診療の面では少なからず影響があったわけですが、そういう中においても手術件数や治験の件数、外来通院治療は着実に実施できたことから、研究開発法人としての目標・目的に関しては達成できたと考えております。また、そういう中において、国際研究の展開や国際連携も進めることができましたし、人材育成に関する新たな試み、更にはPPIの視点からの強化についても新しい試みを行うことができましたので、その辺りについて御評価いただければと思います。本日はよろしくお願いいたします。
○祖父江部会長
どうもありがとうございました。非常に簡潔にまとめていただきまして、オリエンテーションがつきやすくなったのではないかなと思っております。ありがとうございます。
それでは、本題に入りたいと思います。まずは、評価項目別に分かれておりまして、1-1及び1-2、研究・開発の成果の最大化に関する事項から始めていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。時間が全体で38分ありまして、説明をまず法人から20分間、その後18分ぐらい掛けて質疑応答を進めたいと思います。それでは、法人から御説明をお願いいたします。
○国立がん研究センター間野研究所長
よろしくお願いします。評価項目1-1と1-2については、研究所長及びC-CAT長の間野から説明させていただきます。資料2-2の4ページを御覧ください。評価項目1-1担当領域の特性を踏まえた戦略的かつ重点的な研究・開発の推進になります。自己評価をSとさせていただきました。以下、項目を絞って御説明申し上げます。
ページ6を御覧ください。左側の1、がんの本態解明に関する研究で、[1]全ゲノム解析によってスキルス胃がんの治療標的を同定。皆さん御存知のように、スキルス胃がんは最も予後の悪いがんの一種でありますけれども、これまで治療標的が全く同定されていませんでした。当研究所においては、スキルス胃がんになった患者さんの腹水からがん細胞を純化して、それを大規模に全ゲノム解析を行うという実験を行いました。その結果、大変驚いたことに、スキルス胃がんの約半数に治療標的が発見され、しかもその半数、つまり全体の4分の1は既存の分子標的療法の対象になることが動物モデルを用いて証明することができました。この成果は科学誌『Nature Cancer』に出版されています。
同じページの右側を御覧ください。[2]肺がんの免疫療法に関する新規耐性メカニズムを解明。オプジーボのような免疫チェックポイント阻害薬は、ゲノムの変異が多いがんの種類に対してよく効くことが知られていますが、そのようながんであっても3分の1から4分の1ぐらいはチェックポイント阻害薬が有効でなくて、そのメカニズムを解明することに成功しました。肺がんにおいて、がん細胞だけでなくて、そこに浸潤している免疫細胞を詳細に解析することで、肺がんの3分の1に関しては、実はWNMT/βカテニン経路の活性化が起きていて、その結果、免疫エフェクター細胞の浸潤をブロックしていることが分かりました。それであるならば、βカテニン経路を阻害すると、免疫担当細胞がまた戻ってきて、チェックポイント阻害薬は有効になるのではないかということが予想されましたが、実際にその仮説を動物モデルを用いて証明することに成功しました。これは『Science Immunology』に出版されています。
ページ8を御覧ください。右側、がんの予防法や早期発見手法に関する研究で、[2]国際共同研究による食道がん全ゲノム解析を通して、日本人食道がんに特徴的な発がんメカニズムの解明。当研究所では英国サンガー研究所及びその他の国際機関と共同で、食道がん552例という非常に大きな症例群での全ゲノム解析を行いました。その結果、ゲノム変異に様々なバックグラウンドが見つかったのですけれども、下の図にありますが、興味深いことに、ゲノムの変異パターンがブラジルと日本だけ特徴的に多い種類があることが分かりました。ゲノムの変異のパターンというのは、DNAに傷を与える原因によって特徴的な変異を示します。例えばたばこ、喫煙によってはGがTに変わる塩基変異が特徴的ですし、紫外線のばく露によっては、CがTに変わったりします。そういう変異パターンは変異シグネチャーと言いますが、ブラジルと日本の食道がんだけにこのSBS16という変異シグネチャーが極端に多いことが分かりました。このことは恐らく、その原因である生活習慣、あるいは食習慣、あるいは感染症において、ブラジルと日本に共通の素因があることを予測することができますから、予防疫学の面からも意義のある結果ではなかったかと思います。この結果は『Nature Genetic』に出版されました。
次のページ9を御覧ください。右側3番、アンメットメディカルニーズに応える新規薬剤開発に関する研究です。[1]希少なHER2陽性大腸がんに対して、医師主導治験データとレジストリを活用した外部対照群データで有効な治療法を世界に先駆けて承認。HER2という遺伝子が増幅している大腸がんは、大腸がんの中でも希少フラクションですけれども、そのような大腸がんに対してHER2阻害剤が有効であることを証明して、日本で薬事承認まで至ったものです。このプロジェクトでは特に2つの大きな特徴があります。1つは希少フラクションですので、対照群である標準治療を行ったHER2陽性大腸がんを新たに選び出してくるのは大変ですので、後ほど説明しますけれども、SCRUM-Japanで豊富にデータがたまっている既存のレジストリデータの中からHER2陽性大腸がんを選び出し、新しい薬と標準治療の有効性の比較を行って、その結果をもって薬事承認に至ることができました。恐らくPMDAがこういうレジストリデータを対照群に使ったような薬事承認を許可したのは第1例ではないかと思いますので、その上でも大事なプロジェクトだったと思います。
もう1つの重要な点は、右下の図にありますが、これまでのようにがん組織を使った解析で患者さんをセレクションするだけでなく、Circulating Tumor DNAで、患者さんの末梢血を流れているDNAを測定して行ったものですけれども、いわゆるリキッドバイオプシーによっても、HER2陽性大腸がんの患者さんを十分にセレクションすることができたことを示したということにおいても重要な成果ではなかったかと思います。
次の10ページの左側を御覧ください。[2]RAS遺伝子変異による発がんに関わる新たなメカニズムと、その弱点を発見し核酸医薬による新規治療を提唱。RASというのは、人のがんで最も多くの原因となっている遺伝子で、RASタンパクの12番目のアミノ酸か13番目か、61番目のアミノ酸が置換するとがん化能を獲得することが知られています。ところが、大変驚いたことに、実は61番目のアミノ酸は同時に59番目のアミノ酸をコードしている塩基がサイレント変異を起こすこと、サイレント変異というのはアミノ酸を換えない塩基置換ですけれども、それが一緒にないとがん化能を獲得しないことを発見しました。なぜその59番目のサイレント変異が有効かというと、RNAのスプライシングを調整している箇所がそこだったのです。その結果、59番目のサイレント変異と61番目のアミノ酸置換が同時に存在するときだけがん化能を獲得することを明らかにしました。そこで今度は、たとえ61番目のアミノ酸変異があっても、59番目のサイレント変異をブロックするような核酸医薬を開発して、それが実際に有効であることを動物において証明しました。この結果は科学誌『Nature』に出版されました。
次の11ページを御覧ください。左側です。[2]手術支援ロボットのNCC発ベンチャーでの開発・薬事申請と大手企業へのM&A。当センターではNCC発ベンチャーを支援しておりますけれども、そのうちの1つ、株式会社A-Traction、これは手術支援ロボットを扱うものです。助手が医者の代わりをしてくれる手術支援ロボットを開発するベンチャーですが、それができまして、大手の企業である朝日インテックがM&Aを行って、しかも朝日インテックから薬事承認の申請が去年の7月に行われました。このように、基礎・臨床研究からベンチャーの設立、更にそれのM&Aから薬事承認申請までできた成功例だったと考えています。
次の12ページを御覧ください。このページと次のページは主な研究エリアにおける年度ごとの推移を表しています。例えば上の、世界規模の国際ネットワークによる各種がんのゲノム解読では、昨年度は国際がんゲノムコンソーシアムに参加して、2,700例近い様々ながん種の全ゲノム解析を行ったことを報告しました。今年は先ほど申しましたように、食道がんの大規模コホートを、全ゲノム解析を行いました。下側では、遺伝子パネル検査の開発とゲノム医療の実装の流れ図を表しています。令和元年にNCCが開発をしたNCCオンコパネルが薬事承認され、日本で保険診療下でのゲノム医療がスタートしました。今年度は後で紹介しますけれども、それを支えるがんゲノム情報管理センター(C-CAT)において順調にデータが蓄積されており、既に4万例近いデータがたまっていることになっています。
次に、13ページの上側は、がんのアキレス腱を標的とした新たな治療法の開発です。2年度までは、例えばADID1Aのがんに対して、新しい治療法の提案、合成致死治療法の提案などを行ってきました。今年度、令和3年度は、先ほども申しましたように、スキルス胃がんの治療標的の同定に成功しています。下半分は、がんの免疫微小環境の機序解明に基づく新たな免疫療法の開発です。昨年度は、免疫チェックポイント阻害薬の治療前から臨床的な予測をする新しいバイオマーカーを同定することに成功しました。本年度は、今度はチェックポイント阻害薬が効かない理由を明らかにすることができ、それを克服する新たな治療法を提案することに成功しています。
次の14ページは当センターの総論文数と被引用数の推移をまとめたものです。一番上の青地に白い文字の所が英語の総論文数ですけれども、2016年に789本だったものが、僅か5年で2021年には1,309本と、目覚ましい増加ぶりです。約1.7倍に数が増えています。特に重要なのは、右下の図で、これは医療分野におけるHighly Cited Paperの数を表したものです。Highly Cited Paperというのは高被引用論文数で、ほかの論文がたくさん引用してくれる論文のことを言います。特に被引用数のトップ1%、全体の上位1%に入るような論文をHighly Cited Paperというのですけれども、2018年以降、医療分野で当センターは日本で全てのアカデミアを抑えて1位の座を維持し続けています。このことからも、論文数も含めて研究・開発は順調に推移していると考えます。次のページからはJHに関することですので、国立国際医療研究センターの方が報告されます。
3ページ進んでいただいて、17ページを御覧ください。ここからは1-2、実用化を目指した研究・開発の推進及び基盤整備です。自己評価をSとさせていただきました。
19ページを御覧ください。左側の1、がんゲノム医療の基盤整備、[1]がんゲノム情報管理センター(C-CAT)の体制整備。2019年から日本は2種類のパネル承認によって、正式に国民皆保険下のがんゲノム医療をスタートしました。そこで、そのがんゲノム医療を支えるセンターとしてC-CATが作られています。C-CATでは、患者さんごとに臨床試験の情報などを付与したC-CAT調査結果を作ってお返しするとともに、そこで得られる患者さんの臨床情報とゲノム情報を集めるデータセンターの役割をしています。またそのデータを公正に利活用して、新しいがん医療をつくっていくことも重要なミッションです。下側に示すように、令和4年3月時点で3万1,000例を超えるデータが集まっています。7月末の最新データでは、3万8,029例の患者さんのデータが集まっていますので、世界有数のがんゲノム医療データベースとなっています。左側の図は、例として女性のがん種別の登録数を表しています。例えば右の青い所にある膵臓がんは1,591例、左側で消化器の食道/胃が487例ですので、膵臓がんがすごく多く登録されていることが分かります。例えば膵臓がんの下のほうにある軟部組織というのは肉腫ですけれども、それも667例、日本のパネル検査の保険適用対象は標準治療が終了した患者さん、標準治療が使えなくなった患者さんを対象にしていますので、自ずと難治がん、希少がんが多くデータとして集められることになります。こういう膵臓がん、希少がん、難治がんが非常に多く集まっているデータが数万件のスケールで存在するので、様々な利活用が予想されます。実際に利活用のシステムも既に稼働しているのですけれども、時間の関係で割愛させていただきます。
20ページを御覧ください。バイオバンク、データベース、コア・ファシリティーの充実です。患者情報を附帯したJ-PDXライブラリー作製・利用体制の促進。PDX、patient-derived xenograftというのは、患者さんのがんの生きた組織をそのまま免疫不全マウスの背中に植えて継代していくものです。これまで抗がん剤の開発には細胞株を用いて有効性を予測していたのですけれども、5%ぐらいしか有効性は予測できないことが明らかになりました。ところが、この生きたがん組織を使ったPDXを用いると、その有効予測率が50%とか80%という論文が出てきています。そこで当センターでは、日本人のPDXを大規模に作って、製薬会社と一緒に新しい薬を作っていこうということで、J-PDXライブラリーと名付けて大規模な事業を行っています。上のほうに書かれていますように、2022年3月までに1,515検体のがん組織がマウスに植えられたと書いてありますが、最新の7月末のデータで、1,650検体のがんがネズミの背中に植えられて、そのうち生着が確認されたのが495例あります。下の円グラフでは、がん種ごとの数がありますけれども、その500近いPDXの数が世界でどの程度の規模かというと、アメリカのNIHが全アメリカでバーチャルライブラリーを作っていますけれども、それが636で、世界一のマウスのCROであるジャクソン・ラボラトリーが400ですので、我がセンターのJ-PDXは世界的な規模、世界有数のPDXライブラリーを作ったことになります。アジア人のPDXが大規模に作られるというのは、アジア人の薬開発の上で極めて重要であり、実際にたくさんの製薬会社が共同研究を今現在しているところです。
21ページ右側を御覧ください。[3]SCRUM-Japanにおける第三期までの成果と第四期の取組です。SCRUM-Japanは大規模なオールジャパンの臨床試験ネットワークです。現在のところ、19社の製薬会社がそれに参加してくださっています。これまでたくさんの臨床試験を行って、既に12薬剤、15診断薬の薬事承認に至っています。第三期のSCRUM-Japanでは、その前までは肺がんと消化器がんがメインだったのですが、それを全固形がんに対象拡大して、昨年度から始まった第四期においては、リキッドバイオプシーを中心とした新しいスクリーニング法を大規模に取り入れて、新しい薬事承認の体制を目指しております。
22ページを御覧ください。[4]肺がんの新しいドライバー遺伝子を発見。これは正に先ほど御説明したSCRUM-Japanのデータを用いて、LTKという酵素、チロシンキナーゼが、肺腺がんの治療において、CLIP1というタンパク質と融合して肺腺がんを起こしていることを発見しました。LTKに対する阻害薬はまだないのですが、ALKに対する阻害薬で既に承認されているロルラチニブという分子標的薬がLTKも阻害することに着目して、このCLIP1-LTK融合遺伝子陽性の患者さんに適応外承認の倫理委員会を通した後、実際にその治療、臨床に使いました。その結果、下のCT画像やPET画像にありますように、著効を示していることを証明しました。この結果は『Nature』に出版されています。
23ページの右側、[2]アジア主導の開発に向けたネットワーク構築と新薬開発です。当センターでは欧米の主たる学術機関との連携を強力に進めておりますが、近年では特にアジアの新しい医療マーケット、医療圏に対して、日本がリーダーとなって薬剤開発を行っていくことを目指しています。特に注目すべきはATLAS Projectという大規模なプロジェクトで、これはAMEDの支援を頂いているのですけれども、経済的にも成長が著しく、かつ人口のすごく多いアジア地域において、治験の枠組みを作って、医師主導治験あるいは企業治験を行って、更にはゲノム医療をそこに導入していくことを行っています。それから、アジアは大きな医療のマーケットになるのは間違いないですから、日本がその主導権を握って、マーケットネットワークを作っていくことが大事だと考えています。特に、右下にありますように、日本を含む9か国のネットワークで医薬品開発を行っていますけれども、そのためにタイのバンコクにNCC初めての海外事務所を通じて活動を行っているところです。ちょっと時間が過ぎましたけれども、以上です。ありがとうございました。
○祖父江部会長
どうもありがとうございました。非常に膨大なデータを、要領よく簡潔に述べていただけたと思います。それでは早速、今の御説明、1-1、1-2ですが、質疑応答、あるいはコメントに入りたいと思いますので、よろしくお願いします。どなたかございますか。土岐先生、どうぞよろしくお願いします。
○土岐部会長代理
よろしくお願いします。トップに上げていただいたスキルス胃がんの話です。詳細がこれだけでは分かりにくかったのですが、これは、スキルス胃がんの患者さんの半分に治療が効いたということなのでしょうか。今、どういうレベルの研究段階と考えたらよろしいのでしょうか。半数以上は既存の分子標的薬が効くと書いてありますが。
○国立がん研究センター間野研究所長
約半分にドライバー遺伝子が同定されて、その半分、全体の4分の1には既存の分子標的治療薬が奏効することを動物モデルで証明したのです。例えば、調べたところ、スキルス胃がんの約半分において、細胞増殖を誘導する遺伝子の極端な遺伝子増幅が認められたのです。その遺伝子増幅のコピー数は、4とか6ではなくて150とか220とかの異常なものがスキルス胃がんの半分にあって、そのうち更に半分は、FGFR2、MET、EGFR、HER2とか、既に対応する分子標的薬がある遺伝子の極端な増幅が見つかったのです。下のネズミの写真は、例えばEML4-ALK陽性スキルス胃がんとか、MET増幅あるいはFGFR2増幅の胃がんの腹膜播種モデルを作り、それぞれに対応する分子標的薬が有効なことを示したものです。
ですので、これから、がんゲノム医療で患者さんがスキルス胃がんであっても、ある程度早期であれば、FGFR2やMETの増幅を認めれば、現在行われているような受皿試験へ入っていって、METの阻害剤やFGFRの阻害剤で適応外治療することは可能になると思います。現在、いろいろな製薬企業と、それぞれのMETとかFGFRの阻害剤を使った臨床試験をやりませんかということを相談しているところです。
○土岐部会長代理
では、それは遺伝子パネル検査で100倍に及ぶようなチロシンキナーゼのアンプリフィケーションが多くの症例で確認されているということなのでしょうか。
○国立がん研究センター間野研究所長
パネル検査で全例をやるためではなくて、もともとは全ゲノムシーケンスだったので、パネル検査はごく一部の検体でしかやっていませんが、パネル検査でも見つかります。
○土岐部会長代理
既にパネル検査はたくさん胃がんのデータもスキルスのデータもあると思うのですが、そこで100倍に及ぶようなアンプリフィケーションが多数報告されているということでしょうかという確認ですが。
○国立がん研究センター間野研究所長
それはごく僅かです。しかも、コピー数の情報がない検体も多いので。でも、増幅があること自体は何%かで見つかっています。
○土岐部会長代理
大変有望な研究ですので期待しております。よろしくお願いします。
○国立がん研究センター間野研究所長
ありがとうございました。
○祖父江部会長
ありがとうございました。それでは、深見先生、よろしくお願いします。
○深見委員
深見です。非常にインパクトのある成果がたくさんあって、フォローもし切れなかったくらいなのですが。まず1つ目がスキルス胃がんです。今、土岐先生からも御質問がありましたが、検査して、結果としてチロシンキナーゼ、Ras、キナーゼというと、何か新規性というのか、今まで分かってきたこと、どうしてそこまで分からなかったのだろうという、そういう思いも起こってしまうのです。これは通常のミューテーションとかそういうものではなくて、今おっしゃったような、アンプリフィケーションとか、何か今までとはかなり違っていたという、なぜここで分かってきたのかというところについて御説明をしていただけますでしょうか。
○国立がん研究センター間野研究所長
これまで、大体300例ぐらいの胃がんの大規模なエクソームシークエンスというのはアメリカと中国でやられています。でもその中では、増殖系の遺伝子の極端な増幅というのは、実は全然報告されていません。スキルス胃がんの解析がそこでなされていない第一の理由は、スキルス胃がんは見つかった時点で既に外科手術の適応ではないことが多く、エクソームシーケンスというのは、外科手術サンプルを用いてやっているものなのです。ですから、そういったプロジェクトで、あまりスキルス胃がんのサンプルが入っていなかったのではないかということが予想されます。スキルス胃がんはまれですが、それほど極端にまれではなくて、日本では胃がん全体の5~10%の頻度で起きると考えられていますから、それの4分の1だと、数%ぐらいがそこに見つかってもおかしくなかったのですが、やはりそういうインオペ、オペの適応にならない症例が多いということで十分に解析されなかったことが一番の理由ではないかと思います。あとは、スキルス胃がんはすごく浸潤性の高いがんで、腫瘍組織を採っても、その検体中の腫瘍率は低いことが多く、それも高感度に検出ができなかった原因かなと予想しています。以上です。
○深見委員
分かりました。今まで分からなかったのが不思議だなというのをちょっと思ったものですから。もう1点、同じようなことで、22ページです。肺がんの融合遺伝子、これも将来性のあるとても面白いデータだと思うのですが、これは、融合遺伝子を見つけて、患者さんに既にある融合遺伝子の治療薬を投与してという理解でよろしいのでしょうか。これは新しい融合遺伝子ということですよね。
○国立がん研究センター間野研究所長
そうです、新しい融合遺伝子です。LTKは、これまで融合していることは余り報告されてこなかったと思います。肺腺がんでこれまで解析がなされてきたのですが、やはりCLIP1-LTKはかなりまれなので、ALKが5~7%に比べると、多分、CLIP1-LTKは0.5%ぐらいの頻度ではないかと思いますから、それが1つ、これまで使ってこなかった理由ではないかと思います。 今回、新たにそれが発見されて、ALKに対する阻害剤はLTKにも効くので、実際、患者さんにALKの阻害剤を投与したら、すごく効いたというデータになります。
○深見委員
ALKの阻害剤でなぜこのCLIP1-LTKの新しい融合遺伝子が効くのかが理解できなかったのですが。
○国立がん研究センター間野研究所長
チロシンキナーゼの配列類似性の系統樹を作ると、実はLTKとALKとROS1というのは系統樹の同じブランチに属するのです。もともと、すごく近しいキナーゼなのです。ですので、例えば、ALKの阻害剤であるクリゾチニブはROS1にも効きますし、今回、ALKの阻害剤であるロルラチニブが、同じフブランチのLTKにも効いたということだと思います。
○深見委員
分かりました。ありがとうございました。以上です。
○祖父江部会長
どうもありがとうございます。そうしたら、前村先生、よろしくお願いします。
○前村委員
前村です。私はがんのほうは全然専門ではないので教えていただきたいのです。私もスキルス胃がんの結果についてお伺いします。以前、遺伝子異常が見つかって、それに対する分子標的薬がほかのがんで使われている場合であっても、やはり治験をしっかりやって証明されてからでないと臨床応用できないので、時間が結構掛かっていたと思います。スキルス胃がんの場合は手術がなかなかできないので、患者さんとしては早く使いたいということになると思うのですが、今の体制だと、どういうステップを踏んで、どれぐらいの期間で使えるようになると考えていいのでしょうか。
○国立がん研究センター間野研究所長
やはり臨床試験は適応拡大承認のためには必要だと思うのですが、今現在、日本ではがんゲノム医療が行われていて、その中で受皿試験という制度があります。これは、患者申出療養を改変したものです。がんゲノム医療は中核拠点病院の全てにおいて、あらかじめ登録しておいた分子標的薬を、パネル検査で遺伝子変異が見つかったらすぐに適応外使用で使えるという枠組みです。その受皿試験の中にMET阻害剤が入っているのです。ですので、正式な適応拡大の承認はやはり時間が掛かるのですが、取りあえずすぐに患者さんに投与したい場合には、パネル検査で見つかれば、受皿試験に入ることによって、その薬を使うことができます。それは公的な適応外使用の仕組みですので、今、全てのがんゲノム中核拠点病院で使えますし、もしほかで見つかった場合には、申し訳ないのですが、中核拠点病院を受診していただいて、その受皿試験に参加するという形になると思います。
○前村委員
ありがとうございます。
○祖父江部会長
それでは、花井先生、よろしくお願いします。
○花井委員
花井です。よろしくお願いします。がん医療の世界は本当に進みすぎて、素人ではほとんど理解が追い着かないのですが、スライド10で、サイレント変異というのも初めて聞く言葉です。核酸医薬というのもまた新しい領域で、なかなか理解は十分できないところがあるのですが、結局これはエピゲノミックな話とは異なっていて、核酸医薬もメッセンジャーの段階でRNAをちょっと切ってしまうとか、そういうイメージなのですが、これは具体的に新たなデザインの実現性はすごく高くて、割と早く開発できるようなものなのか、まだ機序上の、概念上のものなのかというのはどうなのでしょうか、教えてもらえますでしょうか。
○国立がん研究センター間野研究所長
ありがとうございます。なぜ59番目のアミノ酸をコードしている所のサイレント変異ががん化に関係するかと言うと、先ほどちょっとお話しましたが、そこがスプライシングの調節部位だからです。その配列の所に、実はスプライシングタンパクが結合して、次のエクソンをスプライスするという役割が、その59番目のポジションにたまたまあるのです。61番目のがん化変異が起きるときは必ず59番目にサイレント変異があったのですが、今まで誰もそのようなことに気を遣っていなかったのです。しかし、調べてみると、59番のサイレントがないとがん化しない。なぜかと言うと、そこがスプライシングの場所だから、スプライシングのレギュレーションの場所だからなのです。
今度は治療に持っていくにはどうすればいいかというと、その変異している59番目のアミノ酸のサイレント変異と同じ配列のDNAを、短いDNAを細胞内に入れてやれば、そのスプライシングタンパクはそこにくっ付いてしまって、ゲノムの変異を起こしている場所にくっ付けなくなりますから、正常のスプライシングが起きて、がん化タンパクが作れなくなるというストーリーなのです。ですので、核酸医薬としては極めてシンプルな部類に属します。
ただし、核酸医薬の最大の問題は、やはりドラッグデリバリーなのです。ですから、核酸医薬というのは培養細胞核でやると割ときれいにいくのですが、その培養細胞核で細胞内に入る量のDNAを全身投与するというのは、膨大な量になるので、それを新しいドラッグデリバリーで持っていくところは、そこが1つの大きなハードルにはなると思います。しかしこのRASの例は比較的シンプルなアプローチなので、実現性はあるのではないかと考えています。
○花井委員
ありがとうございます。
○祖父江部会長
ありがとうございました。では、土岐先生、もう1回、お願いします。
○土岐部会長代理
すみません、度々。私の質問は、9ページの、アンメットメディカルニーズに応える新規薬剤開発という部分です。こちらは、いわゆるプラセボを使ったランダム化試験をしなくてよくなるという、非常に画期的なことだと思いますが、これはいわゆるレジストリデータを本当に使っていいのか。どういうものであれば、これがPMDAに認められるのか、非常に患者さんにとっては良い話だと思うのですが、やはり、もう数年違えば対照群のデータも変わってくるし、人種が違えば変わってくるし、そのような中で、RCTをしなくてもよいというのはどういう方向なのでしょうか。
○国立がん研究センター大津東病院長
はい、ありがとうございます。リアルワールドデータを対照群に使うというのは、これはもう世界的にいろいろな取組がされています。今までは、米国のヘルスケア会社等でやっている大規模なデータからの完全なレトロスペクティブでありました。しかし、それは参考データにしかならなくて、我々が作っているこのレジストリというのは、完全にもう前向きに既成対応ができる、既成のデータで使えるような前向きな観察研究です。ですから、治験と同じように、評価のCTの画像の間隔を6週から10週に定めて、そこの部分を守っていただく。完全なレトロだと、先生もご存じのように、画像の評価がもうばらばらでデータも使えなくてというのでやっています。既にPMDAの既成のレジストリの構築に関する活用相談というのは2019年から行われていまして、レジストリの作り方、データの質保証、その点に関しては、既に2019年のときに我々が一番最初にPMDA側のいろいろな実地調査を受けて、その上でのレジストリ構築をしたときのデータです。
○土岐部会長代理
それは、ほかの研究者も活用できるようなものなのでしょうか。
○国立がん研究センター大津東病院長
はい、活用できます。これは実際に申請は企業さんからやるわけですから、企業さんにこのデータをお渡しして、それで申請に用いています。多分、これは世界で初めて評価資料で認められたコントロールデータです。米国の場合は、全部やってきたのは、今までは参考データで、実はもう1つの対照群のデータとして、米国のフラットアイアン社という有名な、何百万例のデータのベースを持っている所と共同で、そちらのフラットアイアン社のデータも出しています。ただ、そのデータは質の問題があり、あくまで参考資料として企業側が出したと。ですから、我々が出したのは評価資料として認められて、フラットアイアン社のデータというのは、あくまで参考資料として、評価の補完のデータとして使ったということで承認に至っています。
○土岐部会長代理
本当に大変すばらしい試みだと思いますので、是非、日本中に発展させていただきたいと思います。ありがとうございます。
○国立がん研究センター大津東病院長
ありがとうございます。
○祖父江部会長
どうもありがとうございました。ちょっと時間なのですが、時間になりましたが、1つだけ私からちょっとお聞きしたいと思います。大変すばらしい、毎回、本当にすばらしいプログレスでびっくりしているのですが、これは全ゲノム解析、あるいはゲノムをどんどんダイセクトしていくと、次々に新しい分子標的が見つかって、毎年出てきているのですが、これは今後、どのぐらいのがんがこのゲノム変異で新しい分子標的にたどり着けるのか。その辺の何か、全てのがんが全部というわけにはいかないと思うのですが、その辺の見通しはどの程度あるのかというのが1つ。
それからもう1つは、前に先生にちょっとお伺いした、これも伺ったことがあるのですが、がんになるかどうかの予防的なものを、リキッドバイオプシーなどを使ってソマティックミューテーションを見ていくことによって、がんになるよりも前に予測できるというか、そういう時代がきますよということもおっしゃっていたのですが、その辺の予防のことも、その後どうなのかを教えてください。この2点です。よろしくお願いします。
○国立がん研究センター間野研究所長
ありがとうございます。がん全体のどれぐらいが本当にゲノムで答えが出るのかということは、もちろん正確なことは誰にも分からないのですが、例えば小児がんなどは、全ゲノムを調べてもソマティックミューテーションが2個とか、白血病などで全ゲノムを調べても、ソマティックミューテーションは17個とか、変異が少ないがん種があります。そこには、エピジェネティックミューテーションという概念というか、エピジェネティックな異常が原因となっているものは結構あると思うのです。全体の中で、恐らく2割とか3割ぐらいはエピジェネティックなステイタスの異常が起きていると思うのです。しかし、エピゲノム解析は、まだ網羅的にたくさんの症例を解析するテクノロジーがメチル化解析ぐらいしかないのです。それでまだ分かっていない所が多いので、それは今後、絶対見つかってくると思います。
それから、予防に関しては正に我々としては一番やりたいところで、これからの10年で、恐らく一番大きく変わるところはがんの予防医学だと思っています。当センターの研究所でも、正常細胞の体細胞変異を解析する専門家、去年『Nature』に出版しましたが、そういう若手を新たに雇用して、発がんが何時始まっているのかを解析するプロジェクトが複数走っています。同じ体細胞変異があっても、がんになる人もいるし、多くの人はがんにならないし、それを区別するのは、がんの変異のパターンなのか、先生もおっしゃるエピジェネティックなパターンなのか、あるいは、そこに入ってきている免疫担当細胞の違いなのか、あるいは、その人の持って生まれたジャームライン、生まれつきの遺伝子のバリアントのせいなのかということを全部調べないといけないと思っています。
○祖父江部会長
すばらしいですね。神経変性もがんに非常によく似ていまして、ちょっと似たところがあるので、またコミュニケーションさせていただけると有り難いなと思います。
○国立がん研究センター間野研究所長
ありがとうございました。
○祖父江部会長
どうもありがとうございました。よろしいでしょうか。ちょっと時間が少しだけ超過しましたが、良い議論ができたと思います。
それでは、次のセッションに移りたいと思います。次は、1-3から1-5、医療の提供等その他の業務の質の向上に関する事項ということで、時間を38分頂いておりまして、これも説明が20分で、ディスカッションが18分ということです。まず、法人から御説明をお願いできますでしょうか。
○国立がん研究センター島田中央病院長
では、まず1-3の医療の提供に関する事項です。国立がん研究センター東病院の大津先生と、中央病院の島田から説明いたします。まず、自己評価はSとさせていただきました。
27ページをお願いします。左側のスライドになりますが、コロナウイルスの取組を行っていることを書かせていただきました。中央病院では、専用病棟を作り、行政の要望から特定機能病院として中等症までのコロナウイルス患者さんを診療してまいりました。また、築地が非常に近いものですから、そちらの酸素ステーションに人材提供をして、貢献しております。右側に移りますが、大津先生から御説明をお願いできますか。
○国立がん研究センター大津東病院長
光免疫治療法は、アメリカのNCIで開発された治療法ですが、一緒に開発を進め、日本が世界で一番先に承認を取りました。具体的には、抗体に光感受性の物質を付けて、近赤外線を照射することによって、がんの局所の組織を狙い撃ちしていくということです。基本的には、局所の治療になりますので、頭頚部が最初に承認が取られ、実際に中央病院も含めて非常に著効した事例を経験しております。今、食道がんや胃がんに関しては、東病院を中心に医師主導治験として、この光免疫療法の治療の承認を目指しております。光免疫療法は以上です。
○国立がん研究センター島田中央病院長
ありがとうございます。次は右下のBNCTですが、2019年から治験として、メラノーマあるいは血管肉腫に対して10例行ってまいりました。そこで著効例も出まして、スライドに書かれているように完全に治癒しているような症例も認められていますので、報告いたします。これで治験が終了しましたので、今、第Ⅱ相試験を準備しているところです。
[2]8K内視鏡による治療の実施です。これは8K内視鏡というものを用いて、遠隔支援を行う実証の実験をしておりました。今度、NTTあるいは外科学会といろいろ協調して、8K内視鏡を用いて遠隔支援の実証あるいは臨床試験を行っていく予定になっております。これは、後で大津先生から説明する遠隔診療の一環の1つです。
○国立がん研究センター大津東病院長
[3]iPS細胞由来のナチュラルキラー細胞を用いたCAR-NK細胞の治療の卵巣がんでの医師主導治験です。これは、京都大学のiPS研究所と共同で進めております。具体的には、活性の高い免疫細胞のストックを用いて、例えば若くて活きのいいCAR-NK細胞を構築して、HLAのタイピングとか日本人の特徴に合わせたiPS細胞での、がんに非常に効きやすい細胞を選んできて投与するという治験です。現時点では、まだ自己細胞からの採取で、腹腔内への投与で行っております。標的としているのはグリピカン3といって、これは当院の先端医療開発センターの中面先生が見つけているターゲットを標的にしています。現在治験中で、次のステップとしてIVかつストックを用いたoff-the-shelfでの治療を目指すことになります。世界的にも非常に早い段階の治療開発になっていると思います。以上です。
次は遠隔医療です。先ほど中央病院でもありましたが、東病院でも山形県の鶴岡市立荘内病院と遠隔医療連携を結んでおり、2年間、いろいろな人の行き来をしています。その中で、内視鏡手術の画像を両院でオンタイムに見られるようなシステムがほぼできており、荘内病院の電子カルテも見られる状況になっています。今、両病院での医師の交流をしており、まずは鶴岡の荘内病院で行う手術を当院の外科医が支援するということでスタートして、将来的には遠隔ロボット手術です。東病院に外科医がいながら、遠隔地の手術を行うといったつなぎのところを今やっております。以上です。
○国立がん研究センター島田中央病院長
次は29ページの右側になります。低侵襲治療の開発提供です。中央病院、東病院ともに、ロボット支援技術を利用した手術を非常に多く試みております。特に中央病院では、ロボット手術支援下の直腸がん手術、あるいは食道がんの手術に力を入れております。一方、東病院のほうは泌尿器科領域における前立腺がんのロボット手術の件数が、全国で2位に及ぶほどに実績を出しております。
30ページは、引き続き低侵襲治療ですが、特に内視鏡治療、腹腔鏡下の手術、放射線治療の中央病院、東病院の実績をここに示しております。さらに、中央病院にはIVRセンターがあり、そこでは非常に多くの高度なIVRによる低侵襲な治療を世界的なレベルでやっているということです。次に右側を見ていただきますと、中央病院でのプロジェクトなのですが、低侵襲の技術を開発するために、内視鏡、放射線治療、腹腔鏡下手術など若手を中心に開発を牽引できるような環境をつくり、将来の医療機器の開発に努めているところです。また、高精度の放射線治療、メリディアンなどもMIRAIprojectで支援を行い臨床研究に結び付け、実績、エビデンスの創出に向けて力を入れているところです。
次に、希少がん・難治がん治療開発に関する項目です。希少がん研究の開発に関しては、MASTER KEYプロジェクトを平成30年度から力を入れているところで、特に患者団体と連携協定を結んでおります。今まで国内のレジストリは固形がんで2,191例、血液がんで214例行っており、中段に書いてあるようなアカデミアとの連携を行い、実際に承認を受けた治験の数が24に及ぶところです。今後、これを国内ばかりではなく、先ほどATLAS Projectというものをお話させていただきましたが、MASTER KEY Asiaということで、ATLAS Projectと共に発展させていきたいと考えております。右側には、希少がん中央機関としての役割、これは継続して希少がん診療ワーキンググループ、病理診断、患者の支援に関して力を入れています。希少がん患者の支援ですが、ホットラインの設置等は引き続きやっておりますし、Rare Cancers Libraryという患者さんに向けた動画、あるいは講演などを行っています。今はコロナでWeb上になっておりますが、こういうことに関しても力を入れています。
[4]小児がんの医師主導治験、国内の小児がんに対する薬剤開発を牽引ということで、ここに書かれているような取組を行っている次第です。
32ページです。最後の項目は、患者の視点に立った良質かつ安心な医療を提供することも非常に重要なものだと考えています。がんとの共生を支援、がん治療に伴う身体的・心理的な問題や、就学あるいは就労に関する問題などに取り組むために、患者をサポートする体制を整えてまいりました。ここに書かれておりますように、中央病院では令和3年度に相談件数が1万7,048件と非常に多くの件数をこなしておりますし、東病院でも3万1,877件と、非常に多くの相談支援に関して業績を上げているところです。右側を見ていただきますと、医療の質を向上するためには、やはり地道な努力が必要ですので、がん医療に関わる臨床試験の指標を用いた医療の質の評価、あるいはTQMセンターを設置し、きめの細かい医療を提供することに力を入れております。東病院では、図に書かれているように、色々なことが実施されております。
最後の右側の下になりますが、アピアランス支援室が中央病院にあります。要するに抗がん剤の副作用で外から見た外観の影響をよくするという取組が非常に重要なもので、ガイドラインを当院のアピアランス室が中心となって作成しました。患者の視点に立った医療を提供している次第です。
○国立がん研究センター平子人材育成事務局長
続いて1-4、人材育成に関する事項について、人材育成事務局長の平子から説明いたします。33ページを御覧ください。今回自己評価としては、Aということでお願いいたします。指標の達成状況については御覧のとおりです。
34ページです。今回、やはりコロナの影響が非常に大きくて、対面データの蓄積や海外からの受入れはかなり少ない状況です。一方で、そういったことを補うために、e-learningによるものを大幅に増やしております。また、他施設で受入れができない研究者について積極的に受け入れたということで、こちらは増えている状況です。また、学位の取得については、連携大学院制度を活用して、20施設、NCC職員としては126名が現在在籍をしている状況です。専門資格の取得についても、積極的な推進を行ったということです。
次のページで、令和3年度の取組としては、ATLAS Projectにおけるグローバルな人材育成への取組があります。これはASEAN諸国の主要ながん研究拠点での治験基盤を整備し、薬事承認を目指した国際共同試験のプラットフォームです。ICRwebはがんセンターが行っているe-learningのシステムですが、ここに英語表記のサイトを新設して全世界に向けて公開し、がん臨床試験におけるトピックの4コースを令和3年度から開始しております。また、アジア地域をはじめとした海外の規制当局の担当者を対象として、国際共同治験セミナーをPMDAと協力して実施しております。これがアジアを中心に、14か国40名が参加し、大変盛況でした。
また、その下にありますが、6NCの横断的な生物統計家の人材育成に対する貢献ということで、先ほどNCGMからも説明がありましたが、若手の指導者、研究員の方をNCCで受け入れて、OJTを行っている状況です。
次のページは、専門職種の育成の推進です。令和2年度には医学物理士レジデント制度、これは従来の医師、薬剤師などにおいてレジデントを行っており、それを創設いたしましたが、更に令和3年度においては診療放射線技師のレジデントコースを新設いたしました。御案内のように、放射線治療はがん治療に大変重要なところですが、専門性の高い技師の必要性が近年特に高まっております。国立がん研究センターにおいては、リニアック治療装置や陽子線の治療装置、メリディアン、あるいはホウ素中性子捕捉療法など、多様な放射線治療の機器による豊富な治療件数を有しております。こういった専門性の高い診療放射線技師を育成するという最適な環境がありますので、こういった育成の制度を新たに立ち上げたものです。
右側になりますが、全国の臨床研究者等を育成するためのICRwebを運営しておりますが、令和3年度から6NCの共通教育プラットフォームとなりました。それに伴い、各NCから46件の新規コンテンツを公開していただいております。また、それとは別に、がんセンターも新規としては89件登録をし、こういったe-learningでの研究環境を整えているということです。以上です。
○国立がん研究センター若尾がん対策研究所事業統括
続いて、評価項目1-5、医療政策の推進等に関する事項について、がん対策研究所事業統括の若尾から説明いたします。まず、中期目標の内容としては、科学的知見に基づいた専門的提言を行う、更にがん登録データなど、がん対策の企画立案・実施に必要なデータを整理して公表していく。更には、科学的根拠に基づく情報を国民・医療機関向けに発信していく。また、がん診療連携拠点病院等の支援を行うことを目的にしております。指標については下の2点で、病理診断コンサルテーションは134%、ホームページのアクセスについては、年間8,000万ページビューを若干欠けているのですが、目標の達成度が低いことについては後ほど説明いたします。
次は、国への政策提言に関する事項です。がん対策推進協議会をはじめ、国のがん政策の中心的協議会などに、多くの構成員を派遣しております。そこで参画している状況です。2つ目に政策提言の実施としては、昨年度から今年度にかけて、がん診療連携拠点病院の指定要件の見直しが行われておりました。そこに対して、がん診療連携拠点病院のアンケートあるいはフォーラム、更には戦略協議会での議論等を踏まえて、緩和ケア及び相談支援、情報提供事業の充実に関する提案書を、厚生労働省に提出させていただきました。提出した提案については、全てではありませんが、ちょうど今週の月曜日に新しい指針が出まして、多くの部分が反映された状況でした。また、前年度に提出した診療報酬改定の提案では、外来腫瘍化学療法診療という新たな項目が新設されたことにつながりました。
医療の均てん化です。地方公共団体等については、先ほどからありますが、オンラインあるいはe-learningなどで研修を行っています。拠点病院の支援に関しては、拠点病院に直接支援するとともに、都道府県の拠点病院というのは都道府県内の医療機関に対して健診などを提供する役割がありますので、そちらを支援するためにオンラインでのピアレビューの手引書、あるいはオンラインでの手引書のマニュアルなどを提供させていただいております。
情報の発信です。がん情報サービスについて、国民の方、医療関係者の方に約2万ページのWebサイトを提供しております。昨年7月、このWebサイトをリニューアルいたしました。今ですと、70%を超える方がスマートフォンで閲覧していただいていますので、スマホメインの形にデザインを変えて、内容等も更新しております。ただ、この更新作業のために一部の古い情報を削除や、更新作業を停止したことが当初の予定より若干減った要因と考えています。
2番目に、がん登録についてです。2016年からの全国がん登録は、2018年のデータを登録させていただきました。さらに、システムを更新し、クラウド移行あるいは院内がん登録、全国がん登録の届出一本化のシステムを構築しております。それから、院内がん登録においては、先ほど全国がん登録が2018年のものとお話しましたが、こちらが少し早く集計ができ、2020年のデータについて通常よりも少し早いスピードで集計・公表し、コロナの影響を863という多くの医療機関のデータとして公表させていただいております。
[3]患者・市民参画です。患者・市民パネルを平成20年から運用しておりますが、昨年度はコロナのために検討会をWebで1回だけでしたが、昨年度からはWebで2回行っております。特に秋の検討会では、公共図書館の方にも参加していただき、まだがんになる前の方にがんになることを知っていただく、そのために図書館の利用などについて意見交換を行っております。
[4]たばこについては、これもコロナの影響で在宅勤務が増えていることによって、受動喫煙が増えていることをアンケートで確認し、世界禁煙デーのイベントで公表させていただいております。
最後に、がん患者さんの人生最終段階における療養生活の実態調査については、2019年、2020年の調査の結果を合体した形で、5万人の御遺族の方のデータから、亡くなる前の主治医と患者さんの間での話合いの状況であったり、痛みや苦痛の緩和の状況について公表しております。こちらについては、第3期のがん対策推進基本計画の中間評価の指標としても取り上げていただき、報告書にも採用していただいたところです。以上です。
○祖父江部会長
ありがとうございました。多岐にわたる内容を要領よく御説明いただきました。それでは、質疑応答の時間に入りたいと思います。いかがでしょうか。では、中野先生からお願いします。
○中野委員
中野です。素晴らしい御報告をありがとうございます。2点、細かいことかもしれませんがお教えください。1つは27ページのコロナウイルスへの取組です。感染症の領域にもしっかりといろいろなことをコミットしていただき、大変嬉しく思います。お尋ねしたいのは、中央区の新型コロナワクチン接種会場に医療者を派遣されたり、令和3年9月から築地の酸素医療提供ステーションに医師を派遣されたことは、がん研究センターの業務の中でやられたのか、それとも、休みを取るなり、何かほかのシステムを構築されたのか、簡単でいいのでお教えいただければと思います。
もう1点は31ページです。小児がんの医師主導治験や薬剤開発等も、大変頼りにしておりますので、よろしくお願いしたいと思っているのですが、例えば、1つは大学の附属病院や成育医療研究センター等、他のがん治療を行う、小児のがん診療を行う施設とのすみ分けや疾患のすみ分けみたいなものが、もしあるようなら御教示ください。以上です。
○国立がん研究センター島田中央病院長
中央病院の島田からお答えいたします。まず、一番最初の御質問に関しては、これはボランティアといいますか、やはり社会貢献と考えておりますが、兼業として派遣しております。酸素ステーションの場所は、当院から歩いて100mぐらいの所にあるものですから、当初、がん研の先生や東大病院等いろいろ依頼はありましたが、近くてアクセスが良いということで、都と相談して中央病院がある程度負担することとしました。ですので、兼業届を出してそこに社会的な貢献を行うというシステムです。
○中野委員
ありがとうございます。理解できました。
○国立がん研究センター島田中央病院長
2番目の小児がんのお話ですが、当院の小児がん診療というのは、主に標準治療を終えて、要するに、次の治療がなかなか難しい治験の業務を非常にメインとしております。ですので、そのように、ほかのアカデミアあるいは成育でもう治療がなく、治験を行うという方が来られるのが1つの特徴です。もちろん、成育ともコラボしているわけですが、年齢的に5歳未満の方は成育で診ていただき、5歳以上の方々はがんセンターで診るなど、これははっきりした分かれがあるわけではありませんが、大体、年齢的に分けている傾向があります。そんなところです。
○中野委員
ありがとうございます。こちらもよく理解できました。
○祖父江部会長
どうもありがとうございます。それでは、根岸先生、よろしくお願いします。
○根岸委員
根岸です。よろしくお願いいたします。大変質の高いがん医療を実施されていると思いました。御発表をありがとうございます。2点、御質問いたします。まず、32ページのがんとの共生についてです。企業における両立支援は、ここのところ大変進んでまいりました。もっと推進していかなければいけないと思いますが、特に大企業における両立支援は、このところ本当に取組が充実してきている一方で、大企業と中小企業の格差が広がりつつあるのが実感です。ここで様々な相談に対応されていると、その中で就労相談が非常に多いという記載がありますが、この中身を整理していくことにより、企業における両立支援の課題がある程度見えてくると思います。どのような就労相談があったのか、もしお分かりであれば、教えていただきたいというのが1つ目です。
もう1点は40ページです。こちらの実態調査をされたという御発表が先ほどありましたが、これについて、患者と主治医の間で最後の話合いがあったかどうかというのが36%、これは非常に低いと思います。その次の、死亡前の1か月、体の苦痛が少なく過ごせたというのも42%で、これももっと苦痛なく過ごせるようにしていかなければいけないという、非常に重要な課題を感じています。まず、話合いがあったかどうかの中身を見ますと、施設もそうですが、病院が低い。それから、苦痛についても病院はもっと高いのかなと推測したのですが、案外、ここに出ているデータの中では病院の率が最も低いと思います。ここはやはり、これから取組を充実させていかなければいけないと思いますが、そこのところの何かお考えがあれば、教えていただきたいと思います。それと、今後、在宅の緩和ケアが進んでいくと思いますが、在宅緩和ケアで重要なことはどのようなことがありますでしょうか。お考えがあれば教えてください。よろしくお願いいたします。
○国立がん研究センター島田中央病院長
ではまず、中央病院の島田からお答えします。就労支援のお話と在宅のお話は、私もお答えできるかなと思います。就労支援に関しては非常に増えていると、グラフで見ると全体の中で増えてきているということで、御指摘のように、就労支援の御相談に対してのアクセスがまだ十分ではないので、ホームページを立ち上げて、十分相談していただけるように力を入れている段階です。
もう1つは、中小企業の方の相談というのは非常に難しいと感じており、大企業ですと産業医を介して非常に十分な情報を頂き、休みに対して非常に寛容な手当をしていただけるようなので、やはり大企業からのアクセスは非常に多くなってきている印象があります。ですので、問題点は中小企業の方々、患者さんがどのようにして相談いただける機会を増やしていけるかが今後の課題ではないかと私は理解しております。
○根岸委員
ありがとうございます。
○国立がん研究センター大津東病院長
千葉県の東病院長の大津です。千葉県の就労支援の部会をやっておりましたので、全体の傾向は分かります。一番多いのは休業補償、休みと補償期間、補償制度の理解が十分届いていない。それから、島田先生がおっしゃったように、大企業と中小企業でかなりの格差があり、千葉県内の企業でアンケートを取りますと、やはり中小企業は、がん患者さんに対するケアというか手当はほとんど考えられていないことが歴然としていました。その辺は、各企業に直接パンフレット等でやっておりますが、なかなか難しいのが現実です。社労士の方が中小企業にも行ったりしますが、中小企業だとそこをサポートする者がいないです。
それから、在宅ケアに関して、柏市は非常に在宅ケアが発達しており、ネットワークができております。今、診療カルテの共有をスタートする話が動いており、要は、医療情報をすぐ共有できる形にすることを作りつつあるところではあります。現実には、ソーシャルワーカー、連携室がかなり機能して地道に人の連携が一番大事だということです。我々の所は緩和ケア病棟がありますので、そのような在宅の先生方の手に負えない場合には、こちらで緊急入院して疼痛管理をしてまたお返しすると。できるだけ、そういった連携を進めている状況です。
○国立がん研究センター島田中央病院長
中央病院からも簡単に在宅に関してコメントいたします。中央病院も東病院もそうなのですが、やはり、地域連携というのは非常に重要で、地域の先生方あるいは在宅の先生方と2か月に1回ぐらい交流し、何が問題となるのか、どのような問題があるのかという議論はしております。その中で一番よく言われるのは、やはり疼痛が酷くなった場合、在宅での疼痛コントロールは非常に難しいところがあり、その時期になったときに、どうしても専門家による疼痛コントロールが必要な症例がよくあると、そのときの連携をどうするかということが、今、非常に重要な課題です。そのような場合は、入院していただいて痛みをコントロールするような方向で対応していくことを考えているところです。在宅の問題は痛みではないかと私は考えております。
○国立がん研究センター若尾がん対策研究所事業統括
がん対策研究所の若尾です。この医療調査についてお話いたします。まず、主治医と患者さんの最期の療養場所についての話合いが36%、これは本当に御指摘のとおり、まだまだ非常に低い値だと思います。ただ、このような全国規模の大規模な調査が行われたのは、これが初めてなのです。これをベースラインとして、今後、この改善状況をフォローしていく、そのベースのデータだと思っていただければと思います。
それと、2つ目の苦痛なく過ごせた方が42%、これも十分な数値ではありません。もう1つ、病院が低いというのは、私どもの当初の想定とは違う結果でした。やはり、病院のコントロールが良いだろうと予測していたのですが、データを集計すると病院が低いことが分かりました。これは、ある程度の推測でもありますが、やはり状態の悪い方が病院に集まっているということで、逆に、それほど痛み・苦痛が少ない方は施設等で過ごされている方が多いのではないかと考えております。
一方、今、島田院長がおっしゃったように、在宅あるいは施設等では痛みが出たときの不安が強い中、緩和ケアの専門家のリソースが一番多いのは拠点病院ですので、拠点病院からそのような在宅、あるいは施設への支援をもっと強化すべきというのが、先ほど御紹介した新しい整備指針でも組まれたところです。今後、こちらについても、調査でその時点の状況をフォローアップしていくことが大事だと考えます。
それともう1点、在宅については、都市部はリソースがあるのですが、地方は本当に在宅専門のお医者さんはほとんどいらっしゃらなくて、通常のクリニックの先生方が在宅も診ている中で、どのような医療を提供できるかというのは、やはり都市と地方では大きく差があるような状況です。そこも今後、適切な対応を考えていく必要があると考えております。以上です。
○根岸委員
ありがとうございます。診断時からの緩和ケアがよく言われております。もっと緩和ケアが進めばいいなと思います。そして、中小企業における両立支援については、引き続き、またお導きいただければと思います。よろしくお願いいたします。
○祖父江部会長
どうもありがとうございました。それでは、深見先生、よろしくお願いします。
○深見委員
30ページのMIRAIプロジェクトですが、革新的医療機器の開発のところで、非常に将来的なものを含めて重要だと思います。この目的というのは、どの程度のことを描いているのか。例えば、今ある医療機器の改良を目指しているのか、それとも、こんな機器があったらいいよねというような夢のようなところを目指しているのか、そのような意味でどのようなレベルを目指しているのかということ。あとは、規模ですね。がんセンターで何人ぐらいで、どういった人がリーダーになっているのかということを教えていただけたらと思います。以上です。
○国立がん研究センター島田中央病院長
中央病院の島田です。非常に重要な御指摘だと思います。中央病院では内視鏡による早期がんの治療があり、放射線ではAIを用いた診断と高精度放射線による低侵襲治療、腹腔鏡手術、ロボット手術など様々な診療科で医療機器の開発を行っています。
問題なのは、従来は各診療科単位で、診療科長の下に開発をするということで、支援も少なく効率的な開発が難しいことがありましたが、このように一つのプロジェクトとして立ち上げることで、様々な診療科が協力し、機器開発に係る臨床研究の相談、企業との提携のノウハウなど病院全体で支援を行うことが可能となり、現在は若手の医師を中心に育成することが一番の課題です。
今、チーフになっているのは、内視鏡で非常に実績を上げている内視鏡センター長がプロジェクトリーダーになっており、サブリーダーにはIVRを専門としている女性の先生が担当しています。色々な領域の部門の人たちが知恵を合わせ、1つの診療科ではできないことを多くの診療科が一緒になって力を合わせています。まだオンゴーイングで、課題が山積していますが温かい目で見ていただきたいと思っているところです。
○深見委員
オープンなのですか。オープンというのは、そういった議論に入ってみたいなという人を拒まないという、そのような。
○国立がん研究センター島田中央病院長
拒まないです。若い医師にアイデアシートを作らせて、応募は、医師ばかりでなく多職種の職員誰もが参加できるような体制です。薬剤治療も入ってきますので、新薬の開発に関してもアイデアを出していただくことも可能で、最初は全診療科の若手職員が対象となりますが、継続していく中で、モチベーションの高い興味のある人たちが限られてきますので、そのような人たちをコアメンバーとして推進していければと思っているところです。
○深見委員
ありがとうございました。とても面白いと思います。
○国立がん研究センター島田中央病院長
ありがとうございます。
○祖父江部会長
どうもありがとうございました。それでは、庄司先生、お願いします。
○庄司委員
庄司です。2つあったのですが、1つは先ほど根岸委員が言われたのとほとんど同じです。就労支援のところで、患者さんだけではなく、企業への支援というのはどうなっていますかとお聞きしようと思ったのです。そこは同じなので良いとして、この中に出張相談とあるのですが、これはどのような所に出向いて行われている相談なのか教えてくださいというのが1つ目です。
それから、40ページの「患者・市民パネル」です。これは前からすごく面白いなと思っており、聞き漏らしたのかもしれませんが、確かながん情報を図書館から広げるというテーマで秋の検討会をされたということで、がん以外の目的で訪れた人を含む図書館利用者へのがん情報サービスやがん相談支援センターを知ってもらうためのアイデアを出し合ったということで、これは具体的にどのようなアイデアや案が出てきたのでしょうか。それを教えていただきたいです。あとは、この図書館以外の所で同じようなことをやろうという計画はあるのか、それを教えていただければと思います。よろしくお願いします。
○国立がん研究センター大津東病院長
出張相談は東病院です。我々は柏市にありますが、出張相談をやっているのは松戸市という隣の市の市役所を借りて、当院通院の方が中心に、そちらで実際に市と協議をしながら相談を受け付けているという、そのような状況です。このところ、一昨年はコロナの影響で市もてんてこ舞いでできなかったので、1年ほど空白期間がありましたが、今また復活して一緒にやっています。
○国立がん研究センター若尾がん対策研究所事業統括
図書館についてがん対策研究所からお答えします。まず、そのとき出たアイデアとしては、やはり、まだがんに罹患する前の方ですので、余り多くの情報を出しても伝わらないだろうということで、もしものときに備えて、がんを相談できる場所、それが拠点病院の相談センターであったり、あるいは信頼できる情報、ホームページにありますがん情報サービス、このようなものがあることを絞って伝えようということで、がんの本等をまとめた展示、がんの展示を広げていけばいいのではないかというお話が出ました。
それから、図書館以外についても、今やっているのは、どうしても拠点病院か図書館がハブとなるのですが、そのときに作りました「もしも、がんになったら」というチラシを置いていただける、例えばショッピングセンターであったり、銀行であったり、役場であったり、そのような所に冊子を置いて、必要であれば相談支援センターあるいは、図書館で本を見ていただいたり、がん情報サービスを見ていただくという広がりを作っていこうという取組を全国に声掛けして、少しずつ広げているところです。以上です。
○庄司委員
分かりました。ありがとうございます。
○祖父江部会長
どうもありがとうございました。よろしいですか。そろそろ時間になりましたという表示が出ました。今の一連の議論に関連して1つだけ確認といいますか、お伺いしておきたかったのは、以前はそのような考え方の均てん化、がん治療の均てん化とも関わってくると思いますが、様々なトレーニングコースの見学、全国の人たちがある一定期間、勉強に来ることが結構出ていた時期があったのですが、今日の資料を見ると、そのようなものが余りないのですが、今の終末期医療や遠隔医療等、ゲノムもそうですし、治験等もそうですが、そのようなことは引き続き何かやっておられますでしょうか。
○国立がん研究センター平子人材育成事務局長
今、お話いただいた各種研修について出ているもの、例えば、がん相談支援センターの相談員であるとか、がん登録における研修、あるいは、がんの化学療法の研修等についてはe-learningに切り替えてやっております。一方で、直接、受け入れができる場合やできない場合というのは、コロナの流行状況によって異なっておりますが、なるべく他施設で受け入れられない方を積極的に受け入れたというのが、令和3年度の状況です。
○祖父江部会長
分かりました。コロナの影響があるかもしれませんね。私も以前、このような評価者の中で、1日だけですが、国がんを実地で見せていただき、大変勉強になった覚えがあります。現場を見せてもらうのは非常に良い経験になると思いました。私は、均てん化というのは、どの病院でもそうですが非常に重要だと思っており、またお考えいただけると有り難いと思いました。
それでは、時間になりました。どうもありがとうございました。とても良い議論ができたと思っております。それでは、今のところは終わりました。次は、2-1から4-1です。業務運営の効率化、財政内容の改善及び業務運営に関する事項です。これは時間が14分で、説明に8分、質疑応答6分という形でやりたいと思います。時間が短いですので簡潔にお願いできると有り難いです。まず、法人から御説明をお願いします。
○国立がん研究センター尾崎企画経営部長
それでは、説明させていただきます。企画経営部長をしております尾崎です。よろしくお願いします。私から、資料2-1と3-1について、時間も迫っていますので、簡潔にポイントを絞って御説明をさせていただきます。
41ページです。自己評価Bという形で、Ⅱで指標がまとめられており、4つの項目共に目標を上回って達成している状況です。具体的な内容については、42ページになります。[2]経常収支率の改善と安定化ということで、表になっています。令和3年度については、ここにありますとおり、経常収支12億円、経常収支率は101.3%ということで、7年連続でこの黒字を達成しています。右側をご覧いただき、未収金の改善です。令和3年度は未収金の比率が0.04%ということで、昨年度と比較して更に削減されておりますので、こうした努力をして対応している状況です。下の一般管理費も、令和3年度は3億2,800万円ということで、昨年度でも300万円、1%ほど減らして目標を達成している状況です。
43ページ、財務内容について、自己評価はAとさせていただいております。その根拠は、下のほうに表があります。後ほど簡単に触れますが、外部資金の獲得額の割合、増加が前年度比115%、過去最大の183億円になります。知的財産戦略に関しての収入も2億円を突破。こちらも過去最高ですし、寄付件数も過去最高といった状況で、過去最高が続いていることを踏まえ、Aとさせていただきました。
44ページです。これを簡単に分かりやすく資料として見やすくしております。外部資金の獲得については、令和2年度、3年度、[1]にありますが、外部資金獲得が大きく伸びており、115%増。公的競争的資金、治験・受託資金、いずれも大きく伸びている状況です。大学あるいは企業などと産学連携の推進に努めた結果によるものではないかと思います。
44ページの右側、知的財産の推進についても、知財収入が2億円を超え、件数も含めて大きく伸びている状況です。企業との連携を進め、早期連携をすることにより、特許支出を抑えて利益率も高いということで、引き続きこのような対応を進めていきます。
45ページです。[3]センター発認定ベンチャーについて、平成27年度から認定制度を始めて、令和3年度末で5社が認定されております。これについても、しっかりと連携を進めて、更に拡大に向けてまいります。また、寄付金についても、御案内のとおりです。2018年度は、特殊な事情で増加しておりますが、長い目で見て安定的に増えており、昨年度を含めて件数、金額共に伸びています。寄付金がより集まるように、しっかり周知を進めていきたいと考えております。
最後に、46ページです。4-1、その他の業務運営です。自己評価はBです。47ページを見てください。法令遵守等内部統制、こちらの様々な内部監査等によってしっかりと内部統制、ガバナンスの確保を図っています。また、人事に関しても、タスク・シフティングの推進などにより、対応や障害者雇用の推進をしっかり進めていく。それから、がん対策研究所を新たに昨年9月に設置し、ここで研究、治療、政策提言に至るまで、一貫して対応していくという組織で、2つの研究所を統合しました。まだできたばかりですので、成果等はこれからだと思いますが、できた成果等を今後しっかりと周知していきたいと思います。広報についても御案内のとおりでして、様々な情報発信等に引き続き努めていきたいと考えております。簡単ではありますが、説明としては以上です。よろしくお願いいたします。
○祖父江部会長
どうもありがとうございました。それでは、質疑は結構短い時間ですが、御発言はありますか。藤川先生、よろしくお願いします。
○藤川委員
御説明ありがとうございました。研究が非常に画期的で、ユニークなものがどんどん増えていることに伴って、お金も入ってきているし、良い人材が入ってきて、非常に組織がうまく回っている、組織風土が良い感じになっていることを、全般に感じることができました。そのような中で2点質問します。まず寄付について質問したいのですが、寄付も順調に伸びており、45ページですが、421件で3億6,700万円。この内容ですが、非常に大口の人が多くて集まってきているのか、どういう分析をされているのか、どういう所に宣伝というか働き掛けて、うまく効果が上がってきているのか、教えていただきたいと思います。
もう1つはベンチャーの話、これも45ページで、これは最初の11ページの間野先生の御説明にもあったものが1つ含まれていると思います。平成27年から始められたということですが、かなりユニークな効果が出ているのかと思います。こういうところで新しい発想が小回りの利く人たちと一緒に組んでうまくいくことは、とても組織にとっても良い影響があるのかとは思います。
他方、ベンチャーは正直、ポンコツも多く、いかに目利きをうまくやるかということは、本当に大事かとも思います。ガバナンスもかなりもろいですし、資金・財務基盤もぜい弱な所が多いので、そういう所とどのように、安全にだけれども先駆的なものを取り入れることに関して、どういう工夫をされているのかをお聞かせいただきたいと思います。以上です。
○国立がん研究センター尾崎企画経営部長
まず、私から寄付について回答させていただきます。45ページの右側ですが、以前は患者さんあるいは家族の方で是非自分の資金を使っていただきたいということでいただくものが多数でしたが、45ページの右上にありますとおり、現在、様々な方に関心を持っていただき、平成27年度当初に医療関係以外の方の寄付は1割未満であったものが、令和元年度は4割に増加しております。これは、社会的にも寄付への関心が広がっている傾向にあると考えており、引き続き、一般の方への周知、パンフレットやリーフレット、あるいはホームページなど、様々な資料を多くの関係の所に配布するといったことでしっかりと周知をいたしまして、寄付についての更なる増大を進めていきたいと思います。
○国立がん研究センター大津東病院長
ベンチャーの件に関して、東病院の大津からお答えさせていただきます。御指摘のように、いわゆるデューデリと言いまして、ベンチャーの審査・評価は非常に重要になります。資料の22ページで、ベンチャー育成プログラムを作りましたが、これは昨年から東病院でスタートしています。日本の中の2つの大きなベンチャーキャピタル、資金を出す所が2社、日本のトップ2が入って、そこと共同で育成をしています。育成をするということは、要するにその中で、ベンチャーキャピタルが全部出すわけではなくて、ちゃんとしたものなら投資をしますという形です。ですから、その育成のステップを見ることによって、サポートされる部分はあります。
もう1つは、既に最初に出しました手術支援ロボットです。これは既にベンチャーとして立ち上げて、作って、それが大手の医療機器メーカーにM&Aされました。M&Aされたというのは、ベンチャーの終わり方としては成功例です。今月中に新しく承認が取れる予定です。ですから、この5社ですが、我々の所は規制に非常に精通していますので、成功の確率はかなり高いと思います。一般的な比率は10%を切るというレベルから見ると、かなり高いだろうと思います。規制対応や市場マーケットということをかなり意識して作っています。5社のうち2社が医薬品です。1社が、新しいタイプの抗体薬が、ベンチャー資金を集めて、間もなく治験をスタートします。これはがんセンターオリジナルの抗体薬です。企業治験としてスタートしますが、こちらもいろいろな所をサポートしながら、ベンチャー資金を集めて、AMEDも一部取れているのですが、そういった資金を集めた上で企業治験としてスタートさせる。そのベンチャー企業の治験としてスタートさせる。ですから、そうそう出ないような成功例というのは、5つのうち2つできていまして、かなり確率的に高いと思っています。
○祖父江部会長
どうもありがとうございます。よろしいですか。藤川先生。
○藤川委員
ありがとうございます。寄付金は一般の方からなかなか集まらなくて、どこも苦労しているので、是非、そういうノウハウをこっそり教えていただけたらと思います。よろしくお願いします。
○祖父江部会長
ほかにいかがでしょうか、よろしいでしょうか。私も毎年外部資金獲得のグラフを見て、いつもびっくりしておりますが、受託共同研究、あるいは治験も一部入っていると思いますが、公的な協働、企業との連携が非常にうまく毎年回転していて、これは今日のお話を聞いていても、ゲノムとか治療標的とか、SCRUM-Japanとか、いろいろな企業が何とか一緒にやりたいと思うようなシーズが非常にたくさんあるという感じを受けましたし、それが非常に良い形で回っているというのが、毎年受ける感覚です。
ですから、このがんセンターは非常に良い形で全体をリードしているという感じはするのですが、なかなかほかのナショナルセンターではそういう形が取れなくて、苦しんでいる所が非常に多いのです。これはテーマによるし、ちょうど今、活性化して、そういうものを呼び込める状況にあるのではないかという感じを非常に強く持ちました。ほかの所は、まだこれからという所もあるでしょうし、なかなかそういう所に乗せられない施設の領域があるような気がしていて、そこら辺はまた横のつながりが今後できてきますので、ノウハウなどをシェアしていただけると有り難いと思っています。よろしくお願いします。
大西先生、手が挙がっていますね。少し時間が過ぎております。簡単にできたらお願いしたいのですが。
○大西委員
1点だけですが、コロナの補助金は幾らですか。
○国立がん研究センター尾崎企画経営部長
お答えします。当院もコロナ患者さんの受け入れを行っているため補助金をいただいております。昨年度は6.8億円で、約7億円ほどでございました。ただ、これは昨年度も御質問をいただきましたが、本年度も補助金を除いても経常収支率は100を超えておりますので、経営の収支の安定化には引き続き努めていきたいと思います。
○大西委員
よろしくお願いします。
○祖父江部会長
少し時間が超過していますので、この辺でこのセッションは終わりたいと思います。それでは、何か前のところで言い足りなかった、あるいは質問したいことがもしあれば、御発言いただけたらと思いますが、よろしいでしょうか。どうもありがとうございました。
それでは、少し時間が遅れていますので、次へ進めさせていただきます。最後に法人の理事長先生、中釜先生からの御挨拶を頂くことになっておりますが、その前に監事の先生からの監査報告を頂けたらと思っていますので、よろしくお願いします。今の議論を踏まえた、あるいは今後の課題や改善方針なども少し受けながらというのでも結構だと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
○国立がん研究センター近藤監事
監事の近藤と申します。よろしくお願いします。資料としては、監査報告を資料2-4で出させていただいております。令和3年度の監事の監査結果に関しては、センターが適切に運営されており、財務諸表等については、適切な開示が行われているものと認めております。
先ほどからずっと議論になっていますが、がんセンターのミッションは、がんの研究、医療、先端的な研究開発、国内基盤の構築、国際競争というところで、非常に良い状態にあると思います。特に顕著な成果が上がってきており、研究収入も非常に増加している。知財収入も増加しているということで、非常に好調です。そういった観点からも、がんセンターの御努力と成果について、監事としても高く評価をしています。特に今、拡大をしておりますので、ガバナンス面、コンプライアンス面、内部統制面に関して、いろいろな意見をさせていきながら、適切な運営をしていただいているというところです。以上が報告事項です。
○祖父江部会長
何か御質問等がありましたら、御発言いただけたらと思いますが、よろしいでしょうか。どうもありがとうございました。それでは、最後になりましたが、理事長先生から最後の御挨拶を頂けたらと思います。中釜先生、よろしくお願いします。
○国立がん研究センター中釜理事長
各担当、部門から、昨年度の成果について発表させていただきました。先ほど監事から説明がありましたように、研究開発法人として、がん領域で最高の医療を届けると同時に、開発研究を推進するためには、今日説明させていただきましたように、基礎から臨床をつなぐ開発研究までをシームレスにつなぐと同時に、その基盤は非常に重要であります。バイオバンクしかり、人材、その支援体制もしかりです。それを強化することが可能となっているのは、やはり外部資金を獲得できていることが、しっかりとした基盤構築に繋がり、よりよい研究成果が出せているものと思います。
ベンチャー育成に関しても、当センター発のベンチャーを育成すると同時に、その間に蓄積した経験やナレッジ、我々の支援体制、そういうものをいかしながら、企業、ベンチャーの育成をすべきところがあります。ベンチャー育成プログラムを通して、我々が持っているノウハウを更に多くのアカデミアのシーズに広げていき、当センターだけではなく、センター外のシーズに関しても、同じようなスキームの中でベンチャーを育成することが日本全体として非常に重要と考えています。その辺りは今後とも評価していただければと思います。
2点目は、今日の最後に少し申し上げましたが、がん対策研究所です。これは昨年9月に組織を統合して新しくつくったものでありますが、これまでも公衆衛生研究や社会医学的な研究、更にはがん対策の柱の1つであるがんとの共生、サバイバーシップの充実、こういうものを課題として複雑化し、高度化していく社会において、これまでの社会と健康研究センターやがん対策情報センターという旧組織で行ってきたことだけでは対応しきれなくなってきた側面もあり、がん対策を効果的に推進するため、がん対策上の課題についてよりセンター全体として取り組むために、がん対策研究所をつくり上げました。
今日問題になっている就労支援、サバイバーシップ、緩和医療、在宅医療など、そういう問題全てに我々が手を付けられるわけではないと思いますが、我々ががん対策上の公衆衛生の研究基盤を作ることによって、多くのアカデミアにも参画いただいて、がん対策上の課題について、これからより良い方向を目指していくことが1つの今後の方向性と考えています。来年度以降はその成果として、今年度以上の成果を御紹介できればと感じたところです。私からは追加で以上です。本日はどうもありがとうございました。
○祖父江部会長
ありがとうございました。今後の非常に重要な方向性というか、展望を最後に述べていただき、ますます活性化、御発展されることをお祈りしている次第です。今日は、長時間にわたって本当にどうもありがとうございました。大変良い議論ができたと思っています。もう1つありました。武藤さん、いいですか。
○大臣官房厚生科学課国立高度専門医療研究センター支援室武藤室長補佐
事務局です。今後の流れについて、若干補足させていただきます。本日御議論いただきました令和3年度業務実績評価については、今後、本部会における御意見や法人の監事及び理事長のコメント等を踏まえ、厚生労働大臣による評価を行わせていただきます。その評価結果について、法人に通知いたしまして、公表いたします。委員の皆様におかれましては、事前に電子媒体でお配りしている評定記入用紙に必要事項を御記入いただき、前回8月2日、前々回7月26日と合わせ、8月12日(金)までに事務局宛てにメールで御送付いただければと思います。決定した内容については、後日、委員の皆様にはお送りいたします。事務局からは以上となりますが、閉会に当たり、厚生科学課長の伯野より御挨拶申し上げます。
○大臣官房厚生科学課伯野課長
厚生科学課長の伯野です。委員の皆様方におかれましては、本日まで3回にわたり大変長い時間御議論いただきまして、誠にありがとうございました。大変貴重な御意見、御指摘を頂いたと思っております。先ほどお話があったとおり、今後、厚生労働大臣による評価を、皆様から頂いた御意見、御指摘を踏まえて検討させていただきたいと思っております。また、その結果も、法人としっかり認識を共有してまいりたいと考えております。委員の皆様方におかれましては、引き続き本部会に御協力いただきますようお願い申し上げまして、簡単ではございますが、私のお礼の挨拶に代えさせていただきます。誠にありがとうございました。
○祖父江部会長
長時間にわたり、国立がん研究センターの皆様にも改めてお礼を申し上げます。どうもありがとうございました。