第62回厚生科学審議会感染症部会 議事録

健康局 結核感染症課

日時

令和4年6月29日(水)10:00~12:00

場所

AP虎ノ門 C会議室(11階)
※東京都港区西新橋1-6-15
 

議題

(1)サル痘対策について
(2)その他

議事

 
○杉原エイズ対策推進室長 それでは、10時になりましたので、ただいまから第62回「感染症部会」を開催いたします。
 委員の皆様方におかれましては、御多忙の中にもかかわらず御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
 本日、議事進行を務めさせていただきます健康局結核感染症課の杉原と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 本日の議事は公開ですけれども、カメラ撮りは議事に入るまでとさせていただきます。プレス関係者の方々におかれましては、御理解、御協力のほど、お願いいたします。
 また、傍聴の方は「傍聴に関しての留意事項」の遵守をお願いいたします。
 なお、会議冒頭の頭撮りを除きまして、写真撮影、ビデオ撮影、録音をすることはできませんので、御留意いただきますようよろしくお願いいたします。
 本日は、新型コロナウイルス感染症における今般の状況を勘案しまして、ウェブ会議で開催することとしております。
 まずは、ウェブ会議を開催するに当たりまして、会議の進め方について御連絡させていただきます。
 御発言される方は、まず挙手機能を用いて挙手いただくか、チャットに発言される旨のコメントを御記載いただき、座長から指名されてから御発言をお願いいたします。なお、ウェブ会議ですので、タイムラグが生じますが、その点、御了承願います。会議の途中で長時間音声が聞こえない等のトラブルが生じた場合は、あらかじめお知らせしております番号までお電話をいただきますようお願いいたします。
 続きまして、委員の方の出欠状況につきまして御報告いたします。御出席の委員につきましては、通信状況も踏まえまして、委員のお名前をこちらから申し上げますので、一言お返事をいただければと思います。
 五十音順で失礼いたします。
 味澤委員。
 今村委員。
 岩本委員。
 大曲委員。
 釜萢委員。
 越田委員。
 白井委員。
 調委員。
 田中委員。
 谷口委員。
 戸部委員。
 中山委員。
 西山委員。
 森田委員。
 山田委員。
 脇田委員。
 なお、賀来委員、菅原委員より御欠席の連絡を受けております。
 また、中野委員より、一部分のみ御出席もしくは状況次第で御欠席と御連絡をいただいているところでございます。
 現在、委員19名のうち16名に御出席いただいておりますので、厚生科学審議会の規定によりまして、本日の会議は成立したことを御報告いたします。
 そうしましたら、申し訳ございませんが、冒頭の頭撮りにつきましてはここまでとさせていただきます。御協力をお願いいたします。
 なお、これ以降は、写真撮影、ビデオ撮影、録音をすることはできませんので、御留意ください。
(カメラ退室)
○杉原エイズ対策推進室長 それでは、議事に入る前に、資料の確認をさせていただきます。
 議事次第及び委員名簿、座席表、資料1、資料2、参考資料につきましては参考資料1と2、3、それと、追加でお送りしました新型コロナウイルス感染症対応に関する有識者会議の中長期的な課題のペーパーと政府の新型コロナウイルス感染症対策本部決定の「新型コロナウイルス感染症に関するこれまでの取組を踏まえた次の感染症危機に備えるための対応の方向性」の資料になります。もし不備がございましたら、事務局までお申し出ください。
 それでは、ここからの進行は脇田座長にお願いいたします。
○脇田座長 それでは、よろしくお願いします。本当に暑い中、御参加いただきましてありがとうございます。
 それでは、議事に入ってまいりたいと思います。
 各委員の皆様には、事務局から事前に資料を説明いただいていると思いますけれども、事務局からは簡潔に必要な部分について、議題1のサル痘対策から御説明をお願いいたします。
○杉原エイズ対策推進室長 ありがとうございます。
 サル痘につきまして事務局より説明いたします。
 資料1を御覧ください。
 こちらはサル痘についての現状の取組等のまとめになっております。
 まず、サル痘の基本的な情報につきまして簡単に説明いたします。
 サル痘は天然痘と同じオルソポックスウイルス属に属するサル痘ウイルスによって引き起こされる感染症で、西アフリカ型とコンゴ盆地型に分類されます。
 1958年に霊長類が集められた施設において猿の天然痘様疾患として初めて報告されまして、1970年にヒトの初の感染事例がコンゴ民主共和国で報告されております。
 平時より西アフリカにおいて地域的な流行が見られておりますが、アフリカ大陸以外ではヒトのサル痘は確認されてなかったのですが、2003年に米国で愛玩用に輸入されたプレーリードッグを介して合計71名の患者が発生しております。この際は死者は発生しませんでした。
 その後、英国等合計15か国で輸入例等を含めた患者が確認されておりますけれども、先進国ではヒト-ヒト感染の大規模な感染事例というのはこれまで確認されておりませんでした。
 本年5月以降、欧州や米国を中心に市中感染の拡大が確認されております。日本ではこれまでのところ発生は確認されておりません。
 感染経路としては、リスなどのげっ歯類が自然宿主として考えられておりまして、感染したヒトや動物の皮膚の病変・体液・血液との接触(性的接触を含む)と患者との接近した対面での飛沫への長時間の曝露、そして、患者が使用した寝具等との接触等により感染することが知られております。
 潜伏期間は1週間から3週間程度で、発熱、発汗、頭痛、悪寒、咽頭痛、リンパ節腫脹などのいわゆるプロドロームと呼ばれる症状に引き続き、発疹が出るという疾患でございます。
 重症例につきましては、臨床的に天然痘と区別ができないということで、これまでのサル痘の流行国であるアフリカでの致死率は数%から10%と報告がございますが、今般の欧米での流行につきましては、これまで発生がなかった国での死亡例についての報告はございません。
 また、予防・診断・治療法につきましては、予防については天然痘ワクチンが曝露後の発症予防と重症化予防に有効とされております。
 また、診断につきましては、PCR法による病変部位からの病原体の検出がなされております。
 治療は基本は対症療法でございますが、欧州においてはTecovirimatという抗ウイルス薬が承認されております。国内においては承認されている特異的な治療はございません。
 次のページを御覧ください。
 次に、サル痘の今般の5月以降の流行の拡大につきまして簡単に御説明させていただきます。
 2022年5月以降、欧州、北米を中心にサル痘の感染例、疑い例が報告されておりまして、6月21日時点のWHOの発表では、アフリカ8か国を含めまして50か国・地域から3,413名の確定例が報告されております。
 6月10日に発表されました英国健康安全保障庁の報告によりますと、確定例のうち、性別の得られた症例の大半は男性で、さらに詳細を得られた男性のうち、その多くは男性と性的接触を持つ男性であったという報告がございました。
 この国際的な拡大を受けまして、WHOは6月23日に国際保健規則に基づく緊急委員会を開催しておりますが、6月25日、WHOの事務局長は研究員会の助言に同意しまして、現時点では、サル痘の国際的な流行につきましては国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態には該当しないということを発表しております。
 次のページを御覧ください。
 こちらはサル痘の発生状況についてのWHOの報告になります。50か国・地域において3,413例が報告されております。そのうちの多くはイギリス、スペイン、オランダ、米国といった国々から報告がされているところです。
 次のページを御覧ください。
 サル痘への具体的な対策としまして、現状、我が国でどのようなことをやっているかということをまとめたスライドになります。
 まず、国内対策としましては、サーベイランス、検査・疫学調査の体制につきまして順次事務連絡を発出しております。
 医師がサル痘を疑う場合、説明不能な急性発疹、発熱、リンパ節腫脹等や発疹の発症の21日以内にサル痘の症例が報告された国に滞在歴があること等、疑い例の症例定義を満たす場合に、発疹といったサル痘を疑う症例を医師が診察した場合には保健所に相談するように依頼をしております。
 なお、サル痘につきましては、確定患者、診断された患者は感染症法の4類感染症として届出義務の対象となっております。
 水際対策としましては、検疫所において入国者に対して海外のサル痘の発生状況に関する情報提供及び注意喚起を実施しております。
 検査体制についてですけれども、国立感染症研究所で検査が実施可能でございます。さらに、地方衛生研究所での検査を可能とするために、病原体検査マニュアルを作成しまして、6月20日の時点で検査試薬を配付しております。
 また、曝露後予防、これはワクチンを用いた曝露後予防についてですけれども、国立国際医療研究センター(NCGM)において患者の接触者に対して天然痘ワクチンを投与する臨床研究体制を構築しております。NCGM以外でこういった患者の接触者が発生した場合には、巡回検診で対応する方向で接種を行う体制をつくっているところでございます。
 治療薬につきましては、NCGMにおいて、これは昨日ですけれども、患者に対してサル痘の治療薬Tecovirimatを投与する臨床研究体制を構築しております。
 また、情報提供に関しましては、厚生労働省が国立感染症研究所のホームページ等で情報発信を行っているところでございます。
 次のページを御覧ください。
 現状、こうした対策を進めておりますけれども、今後、どのような課題があって、どのようなことを検討していく必要があるかということをまとめたスライドでございます。
 2点ございまして、1つ目は治療薬、もう一つが曝露前予防の課題がございます。
 まず治療薬です。先ほどお話ししたとおり、昨日からTecovirimatを使用した臨床研究が開始されておりますけれども、関東周辺の方に関してはNCGMで臨床試験を実施することが可能なのですが、周辺以外で患者が発生した場合に備えまして、関東周辺以外でも投与可能となる研究体制の検討が必要な状況でございます。この点につきましては、人口の多い大都市圏でNCGMや自治体との連携が円滑に行える医療機関を研究参加施設に追加することを現状検討しております。
 また、治療薬の対象ですけれども、治療薬の安全性・有効性を確認する観点からは、当面は軽症例を含めて臨床研究の枠組みで投与できる体制を維持したいと考えております。各国によりプロトコルは異なりますけれども、例えば米国のCDCでサル痘に対する天然痘ワクチンのコンパッショネート・ユースのプロトコルでは、重症例及びハイリスク者等が対象となっているところでございます。
 また、曝露前予防につきましては、WHOや諸外国でサル痘への接触リスクの高い方、特に医療従事者、検査関係者等に対する事前の天然痘ワクチンの接種が推奨されているところでございます。
 我が国で生産されている天然痘ワクチンにつきましては、WHOのサル痘に対するワクチンの接種ガイダンスにおいて接種の推奨対象となっています。
 一方で、国内ではサル痘の予防に対する適応がないことから、サル痘予防で使用した場合には適応外使用となりまして、医薬品副作用被害救済制度の対象とならないことに留意が必要でございます。
 こうしたことがございまして、今後、NCGMの医療従事者等に対しては、臨床研究として曝露前のワクチン接種の実施を準備しているところです。今後、必要に応じましてその他の接触リスクの高い方、特に医療従事者や検査関係者の方々への曝露前のワクチン接種の検討を行いたいと考えているところでございます。
 こういった状況でございまして、企業に対してはサル痘に対する追加適用承認の取得に向けて働きかけを実施しておりまして、諸外国のデータ等に基づく追加適用承認の可能性やサル痘の発生の状況も踏まえまして、必要に応じて、接触リスクの高い方のうち、希望する方に対して曝露前の接種について今後検討したいと考えております。ただ、その前提としまして、あらかじめ接種の対象者の把握等を行っていく必要がございますので、そういった事前準備については着手したいと考えているところでございます。
 接触リスクの高い者についても御意見をいただければと思うのですけれども、現状として、WHOのガイダンスにもございますが、入院の患者を担当することが想定されている特定の医療従事者、また、地方衛生研究所等のサル痘の検査に関わることが想定される検査担当者、そして、患者さんの搬送や疫学調査等で患者に直接接することが見込まれている保健所職員等を想定しているところでございます。
 事務局からサル痘に関しての御説明は以上となります。
○脇田座長 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの事務局の御説明に対しての質疑に移りたいと思います。
 サル痘の概要を説明いただいて、現在の課題といいますか、治療薬とワクチンの臨床研究を今進めつつあるということで、特にワクチンのほうに関しましては対象者についての意見をいただきたいというお話がございました。
 それでは、皆様から御意見をいただきたいと思います。
 岩本先生、よろしくお願いします。
○岩本委員 岩本です。
 御説明ありがとうございました。
 一点は感染経路についてです。呼吸器を通じた感染がどのぐらいの程度かというのはよく分からないようですが、明らかに外国でMSMの間で流行があったということで、日本国内でも厚労省が支援、サポートをしているHIVのための情報発信サイトである新宿のaktaとか、ぷれいす東京といった厚労省と協力をしているようなNPOにも厚労省のほうから情報を流していただく必要があるかなと思います。その辺、既にやっておられればよろしいのですけれども。
 2点目はワクチンのことです。海外と日本で承認に関して状況が違うようなので、厚生科学研究でやるのか、AMEDのほうでやるのかよく分かりませんが、AMEDにもSCARDAができましたので、その辺り、厚労省とよく情報交換をお願いしたいと思います。
 以上です。
○脇田座長 ありがとうございました。
 谷口先生、お願いします。
○谷口委員 包括的に御説明いただきまして、ありがとうございます。
 幾つかお伺いしたいのですが、サーベイランスにつきまして、表現で「保健所に相談」と書いてあるのですけれども、サル痘は多分ヘルペス性のひょう疽みたいなものとも非常によく似ていますので、保健所に相談して分かるかというとなかなか難しい。やはり検査が必要になってくると思いますので、これはもう少し表現を工夫していただくのがいいのではないかなと思います。
 あと、この間『Nature Medicine』にphylogenomic analysisが出ていましたけれども、B1はこれまでの株と少し違ったみたいなのですが、また、先ほど岩本先生のお話にありましたようにMSMを中心に広がっているようですけれども、現状の日本政府としてのリスクアセスメントはどうなっているのか、どういうリスクアセスメントの上でこのような対策を考えているのかというのを明確にしておいたほうがよいと思います。
 なぜかというと、例えば天然痘ワクチン、バイオテロの議論が盛んなときに感染研のスタッフにLC16m8を打ったことがありましたが、局所反応が強い例もありましたので、そのようなワクチンと、現在も非常に軽症でMSMが99%を占めるようなところでどこまでやるのか。Tecovirimatもそんなに臨床経験あるわけではないと思うのです。こういったものを積極的に軽症例も含めて臨床研究をやるべきなのかというのは、リスクアセスメントを含めて明確に出しておいたほうがいいのではないかなと思います。
 以上です。
○脇田座長 ありがとうございます。
 まず皆さんから御意見をいただいておこうと思いますので順番に行きます。田中先生、今村先生の順番でお願いします。
○田中委員 一点は、先ほどの御説明で曝露前接種の考えられる対象者に保健所職員等も想定されるということだったのですが、患者搬送については、4類感染症なので保健所が対応することではないと認識しておりますので、そこについては修正といいますか、御説明をお願いしたいと思います。
 それと、治療薬について、臨床研究でNCGMのほうでは既に体制ができているという御説明だったのですけれども、臨床研究に参加していただいた場合には費用負担が患者さんには発生しないという御説明を以前お聞きしたのですが、その点について、少なくとも保健所に対しては広く周知をしていただいたほうが、患者さんに入院をお勧めするに当たって非常にスムーズな御説明ができるのではないかと思っておりますので、その点もよろしくお願いいたします。
 以上です。
○脇田座長 ありがとうございました。
 今村先生、お願いします。
○今村委員 今村です。
 まず、診断についてなのですけれども、潜伏期間が比較的長いということで、診断が遅れると感染はやはり広がりやすいと思います。発症時の症状も発熱、筋肉痛からスタートということなので、典型的な発疹で疑われるまでのタイムラグというのはそれなりに考えなくてはいけない。発疹も典型的な所見で出現してくるようであればいいが、ごく軽症の所見のような場合には、いかに本人が発疹に気づいて医療機関を受診するかとか、検査を希望するかということにポイントが来るのかなと思うのです。そうすると、ハイリスクの人たちにどれだけ啓発をすすめて情報提供しておくのか、その後のアクセスをどうするのかというような情報提供をしっかりしておくことがポイントで、流行が始まって広がる前に、早めの対応が必要かなと思っています。
 2018年に国内のMSMの中でA型肝炎が大流行したわけですけれども、そのときは、先ほど岩本先生がおっしゃっていた新宿のaktaとか、あるいはぷれいす東京などと密に連携を取って、ホームページの掲載とか冊子を作成したり、アプリで情報を流したり、エイズ対策での経験を活かしながら啓発を進めて、ハイリスク層への感染対策を行った経緯があります。そのときには、短期間に、広範囲に、多くの情報をハイリスク層に提供しました。いろいろなところから短期間に情報が多く流れると、そのハイリスク層のグループの中で「流行感」というものを感じますから、そういう啓発の仕方をしっかり計画を立てないといけないかなと思います。本日は結核感染症課の課長補佐とかも参加されているようなので、エイズ関連でもともと行き来がありますから、情報交換をしつつ、啓発のところは一緒に協力しますので、ぜひ進めていただけたらいいかなと思います。よろしくお願いします。
○脇田座長 ありがとうございました。
 調先生、お願いします。
○調委員 まず、ワクチンのことについて少しお伺いしたいのですけれども、先ほど谷口先生が言われたように、CDCを見ますと強い副反応があって、例えば目に感染するというようなこともあるというようなことが書いてあるのですけれども、WHOによると、第1世代、第2世代、3世代とあって、そして、第3世代のものは鶏の卵でずっと継代されていて、哺乳類では複製しないような安全性の高いものであるというようなことが書かれていて、現状、日本で使うことが想定されているワクチンがどの世代に当たるものかということをお聞きしたいなと思いました。
 それから、地方衛生研究所の検査担当者がワクチンを打つことを想定されているわけですけれども、もちろん希望者についてですね。そういった意味でも、ワクチンの安全性ということについて情報提供は非常に重要ではないかと思っています。
 アメリカの場合も、CDCと各州にあるステートラボラトリー、実際に現場で検査をするのはステートラボラトリーのほうなのですけれども、ステートラボラトリーの検査担当者は恐らくテロ対策を想定して天然痘は既に打っているようなのです。
 そういう意味で、医療関係者、それから、検査、保健所の職員を対象としてワクチンを打っていくというのはある意味必要なことかなと考えますけれども、その意味においても、ワクチンの安全性ということについてきちんと周知していただきたいと思います。
 それから、軽症であるということと、感染性について、どういうふうな感染経路なのか。先ほど岩本先生は呼吸器の感染というのも言われておりましたし、肺で増殖するというような論文も出ていると思うのですけれども、そして、『The Lancet』の論文を見ると、確かに水疱のところにウイルスが一番多いわけですが、多分2オーダーぐらい低い濃度で咽頭拭い液からも検出されているということです。
 今回、MSMの間で接触を主にして感染が広がっているわけですけれども、海外では軽症の場合は入院も必要ないというような対応が取られている一方で、日本では恐らく初期の感染の場合は陰圧室などということも想定されているようなので、それをどこまで厳格に求めるべきなのだろうかと思っています。この疾患は、特にMSMということと、それから、見た目は非常に天然痘に近い発疹ができるということで、最近よくスティグマということを言われると思うのですけれども、患者の差別、偏見などに対してどういうふうに対応していくのか。それを、高度な感染防御対策を取るということもあると、やはりマスコミはすごく大きく取り上げられるのではないかと思いますので、そこの対応も必要ではないかと思います。
 大体以上です。よろしくお願いします。
○脇田座長 ありがとうございました。
 釜萢先生、お願いします。
○釜萢委員 ありがとうございます。
 事務局からの御要請として、曝露後の発症予防及び重症化予防を実施する対象をどうするかということについて意見を申し述べたいと思います。
 既に外国においてはここに書かれているような対象者に予防接種が始まっているとも聞いています。一方で、先ほど谷口先生からも御指摘がありましたが、現時点までに得られているサル痘の重症度をしっかり評価した上で、曝露後の接種の対象者をきちんと我が国の方針の中で選んでいくということが必要だろうと思います。
 現時点では今日お示しいただいた対象者に特段反対はないのですけれども、先ほど申し上げたように、疾患の重症度はそれほどないのであれば、ここまでやらなくてもよいという選択肢もあるのかなと感じて発言いたしました。
 以上です。
○脇田座長 ありがとうございました。
 あと、山田先生、中山先生、越田先生と手が挙がっていますので、そこまでで、かなり意見をいただきまして、事務局から後でレスポンスをいただくことにしたいと思います。
 山田先生、お願いします。
○山田委員 もういろいろな意見が出ているのですけれども、結局、種痘を受けている年代ですね。1976年以降で中止ですか。だから、それ以前の50代を超えている方々は終生免疫を持っているわけですので、そういう方に前線で活躍してもらうという方策を取れば、今回、全世界で3,000人ぐらいしか患者が出ていないわけですから、仮に日本に入ってきたとしてもコロナのような大騒ぎになることはなくて、そこらじゅうで検査をしなくてはならない、あるいは治療しなくてはならないということにもならないと思いますので、要するに、種痘を受けていてきちんとした免疫を持っている方たちが最前線でそういった業務を分担する体制を整えれば、いたずらにワクチン接種による曝露前の免疫を付与するなどということを慌ててやる必要はないのではないか。状況によってそういうことができるようにしておくことが重要だと思いますけれども、その辺、リスク評価等とも関連させて考慮していただければと思っています。
 以上です。
○脇田座長 ありがとうございます。
 中山先生、お願いします。
○中山委員 ありがとうございます。
 先ほど調先生がお話しになったことと重なるのですけれども、恐らく今回のサル痘はそれほど新型コロナのような流行は起きないのだろうなと素人なりに思っているのですが、ただ、最初の例が出てきたときなどの公表基準について、新型コロナのときも本当に苦労して、マスコミとのやり取りもいろいろとありましたので、あらかじめ公表基準について、また新型コロナと基準でいくのかもしれませんが、その辺を決定して、要するに、いたずらに感染者の特定ということに躍起になるような状態が繰り返されることのないように、ウオッチしてというかきちんと手当てしていただければなと思っております。
 以上です。
○脇田座長 ありがとうございました。
 越田先生、お願いします。
○越田委員 これまでの皆様方の御意見はとほとんど同じです。今、中山先生がおっしゃったことは、まさに私も発言しようと思っていました。公表基準を明らかにしておくこと、どうぞよろしくお願いします。
 もう一点は、サル痘は皮疹が目で見えますし、しかも、必ずしも入院が必要ではない、軽症が多いとお聞きしているので、学校や保育所現場で混乱が起きないかなという懸念があります。ですから、感染症法の位置づけだけではなく、同時に学校保健法の中で出場停止期間をきちんと規定しておかないと保育・教育現場で混乱するかなと考えております。併せて御検討をお願いしたいと思っております。
 以上です。
○脇田座長 ありがとうございました。
 森田先生、どうぞ。
○森田委員 森田です。
 2~3週間前に2日間ぐらいにわたってWHOのウェビナーがあって、2017年から西アフリカで各国1,000人単位ぐらいの流行があるところもあって、確かに大人の場合は、今、皆さん言われたように比較的軽症の事例なのですけれども、子供の症例はスモールポックスのような重症例というか、区別がつかないような写真をいっぱい見せられて、やはりあまり甘く考えてはいけないのではないかなと感じたのです。
 それで、少なくともNCGMで計画されているワクチンとか薬の治験の準備、あるいは実施というのは、僕はサポートしたいな、賛成したいなと思っています。特に、我が国で今備蓄している種痘ワクチンというのは、日本で開発されて世界一安全だと聞いていたのですけれども、今、谷口先生のお話を聞くと副作用も結構あるよということなので、その辺も含めて、やはり今から準備しておく必要があるのではないかなと感じました。
 以上です。
○脇田座長 森田先生、ありがとうございました。
 様々御意見がございました。まさに森田さんと最後に言われたことが、西アフリカにおける致死率が数%から10%程度あるということですけれども、現在、ヨーロッパ、欧米では死亡者はいないというところだったと思います。そういったところ、リスク評価はどうなっているかというところ、それから、感染経路の問題がありました。リスク評価に基づいて今計画しているような曝露前接種の臨床研修であったり、対象者をどうするかというようなところ、説明を再度お願いしたいということだったと思います。
 それから、中山先生、あるいは多くの先生からは、差別偏見の問題があるので、中山先生から公表基準はどう決めていくのかというところがありました。
 大体そんなところかと思うのですけれども、事務局からレスポンスがあればお願いしたいと思います。
○杉原エイズ対策推進室長 どうもありがとうございます。
 まず、皆様、御意見をいただきましてありがとうございます。
 1つ目の件ですけれども、岩本委員から御指摘がございましたMSMでの流行ということで、aktaやAPI-Net、ぷれいす東京といった既存のチャネルを活用しての情報提供ということですけれども、既にこういった特定のグループとのやり取りは行っており、情報提供を行っているところでございまして、今後、どのような形で啓発等を協力して行っていけるかというところに関しまして、一緒に考えていきたいと考えているところでございます。
 また、今回、研究に関しましては迅速に実施するということで、厚生労働科学研究によって実施しておりますけれども、AMEDとも本件につきましては情報共有、連携等を行っておりますので、引き続き実施していきたいと考えているところでございます。
 また、リスクアセスメントにつきまして御指摘いただきました。感染症研究所のほうから第1報のリスクアセスメントというものは発出しておりまして、今回の研究や、御指摘いただいたとおり、ワクチン接種等につきましても情報をまとめて、更新していく方向で検討したいと考えております。
 また、差別、偏見ということにつきまして皆様御指摘していただいたところでございますけれども、まさにこの点は我々も非常に懸念をするところでございまして、情報発信という意味では、特に丁寧で適切な正確な情報発信に心がけていきたいと考えているところでございます。
 接種の対象者ということにつきましては、御意見を様々いただきましてありがとうございます。こちらに関しましては、いただいた御意見を踏まえまして、方向性、特にリスクアセスメントを踏まえてどうするかということについても検討を進めたいと思います。
 ありがとうございます。
○脇田座長 今、御説明いただきましたけれども、あと、出荷ワクチンの承認について今どうなっているのかと岩本先生からあったのと、谷口先生から保健所に相談してもらうという形になっているところをもうちょっと表現に工夫をしてほしいというところ。それから、ワクチン接種の対象者になる方々はいるかもしれませんが、安全性・有効性について十分に情報提供をしてほしいといったお話があったので、その点についてもお願いをしたい。ワクチンの承認については、何か情報があれば、事務局から今言えることがあればお願いしたいと思います。
○杉原エイズ対策推進室長 承認につきましては先ほどの5ページ目で記載しておりますけれども、企業に対して追加適応承認取得に向けて働きかけを実施しているところです。
 それと、「保健所に相談」という記載ですけれども、具体的にどのような相談をして、どのように動けばよいかということに関しては、実は事務連絡のところにかなり詳しく記載をしておりまして、事務連絡は今回参考資料としてつけておりませんでして、大変恐縮なのですけれども、そちらには医療機関、保健所、地方衛生研究所がどのように何をするのかということを詳しく記載しているところでございます。
 あとは、安全性・有効性に関しての情報提供ということでございますけれども、これは非常に重要な観点でございますので進めるようにいたします。
○脇田座長 よろしくお願いします。
 白井先生、お待たせしました。どうぞ。
○白井委員 白井です。
 質問と感想ということなのですけれども、治療薬のところで、人口の多い大都市でNCGMと自治体との連携が円滑に行えるということなのですけれども、地方都市においても相談というか、事例がもし出たときに、その医療機関とNGCMがどのように研究機関に追加するかを検討されているのだと思いますけれども、これは手挙げなのか、例えば国公立のような病院であるかとか、4類ですから特に指定する必要はないと思うのですが、その辺の想定がどうなっているのかなと思いました。というのは、その医療機関と、場合によってはその管轄の保健所との連携ということが必要になってくるかなと思いましたので、そのことを御説明いただきたいと思います。
 また、疫学調査とか患者搬送というところで保健所職員の曝露前ワクチンの想定をしていただいているのですけれども、これについても、具体的に対象になった場合にどのように医薬品というかワクチンを保健所職員が手に入れるのかとか、どこで打つのかとかということも、実際は連携医療機関になると思いますので、その辺の想定があれば教えていただきたいと思いました。
 以上です。
○脇田座長 ありがとうございます。
 今、御質問があったところで、先ほど田中先生からもコメントがあったところで、搬送は保健所ではないのではないかみたいなことがあったわけですけれども、そこのところ、今はNCGMだけですけれども、医療機関をある程度限定して、患者さんが発生したらそこへ搬送するのかというところ、あるいはある程度の医療機関で地方都市も診るのかというような話がありました。その場合にも、いずれにしても保健所との連携、それから、搬送をどうするかといった問題は出てくると思いますから、現在の想定で分かることがあれば事務局から御説明をお願いできますか。
○杉原エイズ対策推進室長 ありがとうございます。
まず、地方で発生した場合にどのように連携医療機関のほうにつなげるかということでございますけれども、こちらに関しましては、今は大都市圏を中心に選定するということを考えております。そういったところに関して、研究も広く数を増やすこと、あるいは実施というのは困難になってきますので、その辺は大都市圏にまずは研究参画医療機関を追加していくような形で調整を行いたいと考えているところでございます。
 また、疫学調査、患者搬送をどのように行えばよいかということですけれども、Tecovirimatを介した治療自体も昨日承認されてまだ開始されたばかりですが、まさに臨床研究が始まってどのようにそこに実際に搬送していくかということに関しましては、まだ事務連絡にお示ししておりませんので、こちらに関しましてもある程度検討、整備が進んできましたら、また順次情報提供させていただければと思います。
 患者搬送に関しては、様々な方々の御協力の下で、これまでも感染症の方、感染症法上、搬送の規定があるのは2類感染症以上になりますけれども、それ以外の感染症であっても様々御協力をいただいて、それによって実施なされてきているところでございますので、今後も様々な方々との話合いの下で検討を進めてまいりたいと考えております。感染症患者の搬送に関しては画一的に方法論というものを決めることはなかなか難しい領域ではございますので、皆様の御協力をいただきながら検討を進めていければと考えているところでございます。
○脇田座長 ありがとうございます。
 なかなかまだ十分に全てを決められる、直ちに決められるというところでもないので、そこは検討を進めていただくということだろうとは思います。
 大体レスポンスはしていただいたかなと思いますけれども、そのほか、御意見はいかがでしょうか。
 谷口先生、お願いします。
○谷口委員 ありがとうございます。
 たしか米国のプレーリードッグからのモンキーポックスの際には子供にも感染していましたけれども、手指のひょう疽程度でそんなに重症にはなっていなかったと思うのですが、先ほどの『Nature Medicine』ではhuman adaptationという記載もあって、つまり、軽症化してhuman-to-human transmissionがよりしやすくなっているというのであれば、また考えは異なってきますので、ここは今、脇田先生がおっしゃいましたように、きちんとバイオロジカルにもエピデミオロジカルにもクリニカルにも明確にアセスメントを行いつつ進めていっていただくのがいいかなと思います。これは曖昧なままで進めるというのは感染症部会としてはいかがなものかなと感じます。
 以上です。
○脇田座長 ありがとうございます。
 情報収集を引き続きしてもらうということにはなるわけですけれども、ただ、今、先進国でかなりエンデミックといいますか、流行がありますけれども、非常に多くは男性の方で、しかも、MSMのグループ内での感染拡大が大きいというところで、そこがさらに家族内であったり、それから、コミュニティーの中に入っていくことがあれば、また状況は変わってくる可能性もあるということなので、そこは引き続きしっかりと見ていきながら、リスク評価を進めていく。それに基づいた対策を考えていくといった御意見だったと思います。ありがとうございます。
 今村先生、どうぞ。
○今村委員 今村です。
 病床についてなのですけれども、今は新型コロナウイルス感染症の流行が続いている中で、感染症指定医療機関における多くの感染症病床が新型コロナ用に転換されていると思います。その中で、4類とはいえ、初期のスタート時期における発生においては陰圧個室だ、なおかつ偏見、差別にも気をつけなくてはいけない。そのようなサポートまでしっかりとできるところというと、最初は1類感染症を診療する専用病床などを利用することも想定されると思います。当院においても、通常の感染症病床は全て新型コロナ専用になっています。、したがって、4類でありながら対応のスタート時期にはかなり厳格に対応せざるを得ないという現実的な乖離が起こってしまいます。本人は発疹が出ている期間、なかなか退院は難しいとすると、長期間の入院を迫られる。診断がつく前も、診断までの時間というのはある程度待たざるを得ないということになってくると、入院の強制力がない中で、現場での患者対応に困る例が出てきそうだなと思っています。その辺、整理をしておいたほうがいいかなというような意見です。
○脇田座長 ありがとうございます。
 白井先生、どうぞ。
○白井委員 白井です。
 今のお話もお聞きして、患者さんの搬送よりも先に検体の搬送が始まるのではないかなと思うのですけれども、重症ではないということになったら必ずしも入院を必要としないということであったり、病棟についても指定医療機関であるとかそういうところ、特に先ほど私が申し上げましたけれども、都市部ではない場合に、国公立の病院であるとか、4類ですからどこでも診ていただいて構わないわけですけれども、できるだけ個室対応がいいと思いますから、その程度で搬送というか、検体を採取して搬送するというところが最初だと思います。その際に、検体の搬送を保健所が地方衛生研究所にということが役割になってくるのかと思いますけれども、その場合は行政検査になると思いますし、それが法律の中で保健所の仕事としてどこまで対応するのかということで、やはり御協力という範囲なのかもしれませんけれども、そういう想定をしておかなければいけないのかなと思いました。
 以上です。
○脇田座長 ありがとうございます。
 調先生、お願いします。
○調委員 非常に細かい話で恐縮なのですけれども、感染指定医療機関で仮にサル痘の患者さんを受け入れるとなったときに、同じ病棟の中に別の部屋であってもコロナの患者さんが混在してもいいのかどうかというような議論があって、そこがもし分かっていたらお願いしたいと思います。
○脇田座長 ありがとうございます。
 今、谷口先生、今村先生、白井先生、調先生と御意見をいただきました。
 それで、病床です。これは4類だけれども、当初はかなり厳格な対応が必要ではないかというところで、そこの準備。
 それから、白井先生は検体の搬送ですね。
 それから、調先生はサル痘とコロナ、あるいはほかの疾患の患者が混在することをどのように考えるかというか、そこを制御するかみたいな話ですかね。
 そこは事務局からレスポンスはございますでしょうか。
○杉原エイズ対策推進室長 ありがとうございます。
 検体搬送につきましては事務連絡等でもお願いさせていただいておりますけれども、地方衛生研究所で順次検査ができるようになりつつある状況です。国立感染症研究所まで送付が必要な自治体もまだあるかとは存じますけれども、その場合についてはぜひ保健所の方々に御協力いただければと存じます。
 また、入院に関しましては、今村先生のおっしゃった点というのは非常に重要な観点でございまして、入院の強制力がない中でどのように担保していくかということにつきましては、既存の研究のスキーム等も踏まえまして、どんなことができるか検討していく必要があると考えているところでございます。
 また、コロナと同室が可能かという観点につきましては、基本的にはこちらも事務連絡でお示ししているところですけれども、個別の個室での対応をお願いしたいということをお願いしているところでございます。特にベッド、リネン等を介した感染であったり、またはエアロゾルを発生するような措置が発生する場合にはリスクが伴うということもございますので、そういった観点を踏まえましても、入院する際には原則個室でお願いしたいというところをお願いしております。
 あと、調先生のほうから御指摘があって、一言お答えしてなかったのですけれども、日本で利用可能な、日本で生産されているワクチンとしてLC16ワクチンとがございますが、WHOの分類で最新の第3世代のワクチンに位置付けられているものになっております。ワクチンの種類としては3種類推奨のものがございまして、アメリカで生産されているACAM-2000が第2世代と言われるものになります。こちらは一定の頻度で心筋炎等の重篤な副反応を起こし得るものでございますけれども、第3世代はこうしたリスクが極めて低いことが特徴です。世界中で2種類ございますけれども、一つは日本のLC16と呼ばれるワクチンで、もう一つはMVAと呼ばれるワクチンでございますが、海外においてはMVAが承認されています。日本においてはLC16が承認されているというところです。
 また、先ほどリスクアセスメントについてご指摘がございましたけれども、その点についても追加なのですが、参考資料の一番最後のページを御覧いただければと思いますけれども、資料の8ページ目になりますが、国際保健規則緊急委員会を受けたWHO事務局長の声明についてというところで、結論の概要の下の一番下の●のところで、現時点においてはPHEICに該当しないというコンセンサスを得ておりますが、流行状況に関する以下の状況が見られた場合には再評価すべき、また、緊急委員会自体も再度時間を分けて評価をすべきという意見が出ておりますので、こういった点については特に注視が必要と考えているところでございます。
 事務局からは以上です。
○脇田座長 ありがとうございました。
 そうしましたら、今回、様々な御意見をいただきましたので、事務局では引き続き検討を進めていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
 委員の皆様も御意見ありがとうございました。
 それでは、次の議題に進みたいと思います。
 議題2が「その他」となっていますけれども、その他というよりもHTLV-1の感染症法上での取扱いについてということですので、資料2の御説明を事務局からお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
○長江結核感染症課長補佐 よろしくお願いします。結核感染症課の長江と申します。
 資料2の説明をさせていただきます。
 まず、1枚目は「HTLV-1の感染法上の取り扱いについて」ということで、現状の説明となります。
 HTLV-1といわゆる言われているものはヒトT細胞白血病ウイルスI型です。感染経路としては基本的には母乳感染。ほとんどの方がいわゆるキャリアで、95%が特に症状も疾患も発症せずに終わります。一方で、数%の割合で、いわゆる血液のがんと呼ばれるATLといったものや神経難病のHAMといったものを発症することがあると言われているウイルスでございます。
 推計の感染者数は、献血のデータになりますが、2014年のときには108万人と推定されていまして、2016年のデータでは71.6万人といった数となっております。
 2ポツ目になりますが、そういったウイルスにつきまして、平成22年にHTLV-1の総合対策というものを取りまとめて、母子感染予防を中心とした重点施策につきまして対策を進めているところでございます。総合対策の進捗というのは、HTLV-1対策推進協議会というものを開催しまして、対策の推進をさらに図っているところであります。
 3ポツ目になりますが、第14回のHTLV-1対策推進協議会におきまして、このHTLV-1の感染症法上の取扱いにつきまして、HTLV-1学会と患者会のほうから5類感染症に位置づけることについての要望書が提出されました。
 主な賛成の理由としましては、HTLV-1の感染者数は、現在、献血の抗体スクーリング推定値で全体の数を把握しているところでございますが、妊婦健診のHTLV-1の検査の抗体結果の結果を公的に把握する仕組みがないということや、また、献血のデータで、水平感染に伴って4,000人ほど新たな感染者数が出ているのではないかといったデータ、また5類感染症に位置づけることで、都道府県等の行政の認識が変わり、HTLV-1検査を希望する方への相談体制や啓発活動がより進むのではないか等の理由から、5類に位置づけることの要望書が提出されました。
 このため、4ポツ目になりますが、HTLV-1の感染症法上の取扱いを検討する目的で、HTLV-1の感染症法上の取扱いを検討する小委員会というものを設置しまして、今まで2回ほど議論を行ってきました。メンバーとしましては参考資料につけておりますが、HTLV-1の専門家を中心に御議論をいただきました。
 第1回の小委員会では、事前に各委員からいただきました主な御意見に基づきまして、疫学、届出、差別・偏見や相談体制、研究・開発の観点から議論を実施、第2回では事務局のほうから論点を提示し、御意見をいただいたところであります。
 感染症部会におきましては、次のページになりますが、論点ごとに小委員会での意見を事務局のほうで整理させていただきましたので、部会の先生方にも御意見をいただきたいと思っております。
 次のページになります。
 この主な論点というのは第2回のHTLV-1の小委員会でも出させてもらった論点になっておりますが、この4点に沿って先生方から今日は御意見をいただきたいと思っています。
 1点目が、こういった感染症法上で位置づけられているものは疾病として規定されているところであります。例えばエイズでありますと、エイズというふうに疾病を届け出て、HIVというのは無症候性のキャリアとして届出をされているところであります。こういったもののように、HTLV-1につきましても、どのような疾病が届出対象と考えられるかということで、HTLV-1の関連脊髄症や成人T細胞白血病(ATL)といったものを感染症法上の疾病とするかどうか。
 2つ目が、感染症法におきましても、5類感染症というのは既に知られている感染症と同等におそれがあるというものを省令で規定するとなっておりまして、既に知られている感染性の疾病というのは下の※で書いてありますが、こういったインフルエンザやウイルス性肝炎といったものと同等に影響があるかと考えられるか。
 3点目の論点としまして、HTLV-1を5類感染症に位置づけた場合、社会やキャリア本人にどのような影響があるかと考えられるか。
 4点目としましては、HTLV-1に完成していること医師が判断した場合に、感染症法に基づき、どのような届出が行われることが妥当か。全数把握で個人を特定か、定点か。また、こういった感染症法に基づき届け出られることによって、感染症対策としてどのような進展が考えられるかといったものとなっております。
 次のページは御参考に小委員会での主な意見を整理したものになっておりますが、論点1につきましては、小委員会では、疾病としましてはHAMやATLだけ登録するのではなく、HTLV-1につきましても登録していく必要があるのではないかといったものや、HTLV-1は無症状なので、無症状をどうやってつかまえていくのかというのは難しいのではないかといったものや、ATLやHAMは入れるべきだというものや、あとはぶどう膜炎もHTLV-1の関連疾患に入るのではないかと御意見があったところです。
 続きまして、論点2につきましては、小委員会では、論文のほうでATLやHAMというのは、ある程度のインパクトがありまして、健康への影響があるのではないかといった御意見があったところです。
 次のページになりますが、論点3の主な御意見としましては、5類感染症にすることによって、将来的に相談窓口の体制整備のメリットがあるのではないか。単に届け出るだけでは不要ではないかといった御意見や、4ポツ目になりますが、HTLV-1を位置づけるだけではキャリアに対して不安が増強するのではないか。キャリアのガイドラインやHTLV-1学会の診療施設を増やしていくことが同時に必要ではないかといったものや、全ての医師が無症候者を正確に届け出ることが困難ではないかといったものや、最後のポツになりますが、献血結果を通知する場合に、HTLV-1をまだ知らない方がおり、もっと周知が必要ではないかという意見がありました。
 論点4の主な御意見としましては、1ポツ目にありますように、5類感染症にすることによって、保健所を含めた行政の対応が違うのではないか。直接的なメリットはないが、そういった副次的な効果があるのではないか。2点目になりますが、5類感染症に位置づけることで社会に認知され、正しい知識が広がるということが考えられるのではないかといったことがあります。最後のところになりますが、HTLV-1の感染実態をより把握できるのではないかといったことが御意見としてありました。
 あとは参考資料になりますが、参考資料1は、HTLV-1の病気の概要と献血の推計値と水平感染のデータの参考事例を載せております。
 参考資料2につきましては、HTLV-1の総合対策の骨子や過去の協議会の開催のテーマ、小委員会の意見の整理を載せております。
 参考資料3が、5類感染症を中心に考え方やどのような疾病があるか。あと、ほかの疾患の届出表を参考に掲載しております。
 事務局からの説明は以上でございます。
○脇田座長 ありがとうございました。
 HTLV-1を感染症法上、5類感染症と取り扱ってほしいという要望があったということです。私がやっている肝炎とか、それから、エイズというのも5類感染症になっているのですけれども、多くは発症して届け出られるというものですけれども、HTLV-1の場合は多くはキャリアということで、診断というか検査で陽性になるというところで、そこをどう考えるかという難しさみたいなものはあるということですが、意味づけとしては、僕の理解では、これまで母子感染というところが非常に大きいところだったわけですけれども、実は水平感染がかなりある。その対策が必要ということで、実態把握も含めて5類というところにという要望かなと思っていますが、皆様の御意見をいただきたいと思います。
 味澤先生、お願いします。
○味澤委員 HTLV-1は、先ほどから言われているようにまとまった国内のデータというのは献血以外にはほとんどないので、私が診療していたときも、患者さんがHTLV-1だということが分かっても、95%は何もなくて一生終わってしまうということで、フォローもあまりうまくできていなかったという記憶があるのです。病気についてよく理解するためには、やはり全体像の把握というのは必要だと思いますので、大変なのですけれども、5類にするというのはいいことではないかなと思います。
 ただ、逆にキャリアで95%は大丈夫だよと言っても、やはりキャリアさん自身のストレスは非常に高まるので、そういったものに対するカウンセリングとかということも考える必要があるのではないかと思います。
 以上です。
○脇田座長 ありがとうございます。
 確かに病気の全体像の把握が必要だという御意見はごもっともだと思うのですけれども、本当に5類にするということがベストなやり方なのかというところがあるのだろうと。
 私の意見を言ってしまいますけれども、これまでHTLV-1の活動をやってきた感染研の浜口先生にも意見を聞いたのですけれども、やはり賛成だというお話でした。
 一方で、肝炎B型、C型をやっていると、全体像の把握というのが、必ずしも感染症法上で届け出られたものというよりHAMしろ様々な検診であったり、スクリーニングであったりというところでされてきているし、それから、もう少し研究的なところで疾患の生涯経過像というものが慢性疾患のものは解明されてくるというところなので、これだけではなくていろいろな工夫が必要なのだろうなというのが僕の感想です。
 それでは、続けて意見を伺っていきたいと思います。
 谷口先生、お願いします。
○谷口委員 ありがとうございます。
 この感染症の対策を進めていかねばならないというのは、誰も何ら反対するようなものではないと思います。ただ、その対策を進めるに当たって、必要な情報を集める、つまり、サーベイランスなのですが、感染症法には届出とサーベイランスは非常に混乱してごっちゃに使われているのですよね。届出というのはあくまで個に対して何らかの対応を行う場合にそれぞれの個人情報を持って届けるわけですけれども、対策のために全体の状況を把握する、あるいは感染伝播を見る、予後を見るといったものは別に個人情報は必要ないわけです。それがサーベイランスなわけで、5類に位置づけていただいて対策を進めていただくことは非常に重要なことだと思うのですが、それで個人の届出をする必要があるかというと、僕はする必要はないのではないかなと思っています。
 ただ、もちろん個人を届け出ることによって、その個人に対して効果的なインターベーションあるいはアドバイス、カウンセリングといったことができるのであれば、これは届出という点もあると思いますが、そうではなくて、先ほども味澤先生のお話にもありましたように、95%はそのまま大きなイベントが起こらずに生活されるわけですから、そういった方に対して全て届出を義務づけるか。
 ただ、特に無症候ですから、たまたま見つかった人だけを届け出るということになります。そういった方を記名式で届け出る。個人情報がどうのこうの言うつもりはないのですが、何でもかんでも届ければいいというものではないので、5類に位置づけていただく。ただ、日本におけるHTLV-1対策の戦略というものをきちんと定めていただいて、それに必要なサーベイランスを行っていただく。その中で、個人の届出が必要であれば、それは考えていただくという形でいいのではないかと思います。
 以上です。
○脇田座長 ありがとうございます。
 次に、岩本先生、お願いします。
○岩本委員 どうもありがとうございます。岩本です。
 先ほど来出ていますけれども、肝炎は今の感染症法で急性のときだけ届け出る。HIVに関しては無症候の段階で届けるわけですが、治療の進歩とともに治療をどんどん早くやるようになって、診断がついたら即治療しましょうという時代に入っているわけです。従って、治療の進歩と診療が非常にマッチしてきたのだと思いますけれども、HTLV-1の場合には診断から発症までが非常に長くて、しかも、小児科あるいは産婦人科で診た患者さんも発症するときには随分時間がたってからだということで、これをどういうふうに診療として継続して診ていくのか、そこがとても大事だと思います。。
 僕は、谷口先生のおっしゃった公衆衛生の立場もよく分かりますが、臨床の側から見ると、陽性であることが分かった患者さんについては、その患者さんがどういう経過を取るかをずっと見ていく必要があると思います。今まで5%ぐらいしか発症しないということを言われてきたのはよく知っています。ただ、いろいろな研究が進んできて、HAMであるとか、ATLを発症する前にほとんどのウイルスのいる細胞が例えばCCR4というマーカーを持った細胞の中にいるとか、そういう細胞に対して抗体治療を行う、あるいは陽性細胞数が増えてきているかどうかフォローしていって、発症を予測するということがだんだん可能になりつつあると理解しています。もし治療法を開発しようとしたら、登録がなければ臨床試験ができないという事態になります。日本はHTLV-1キャリアが多い唯一の先進国だと思いますので、届出自体も大変だけれども、どういうふうに診療を継いでいくのかということを含めて考えれば、5類に入れていくということが必要ではないかと僕は考えます。
 以上です。
○脇田座長 ありがとうございます。
 今村先生、お願いします。
○今村委員 今村です。
 5類にするということの利点として、より正確な把握をして、先ほど岩本先生もおっしゃったように、長い目で見て臨床にどうつなげるかという戦略も必要だとは思います。
 さらに、正しい情報を伝える機会につながってくれれば、それもまたプラスになることも期待されます。注意点として考えておくべきところが、途中から急に5類にするということになると、何で5類になったのかという理由が当然問われるわけで、そこで注目を浴びる可能性があります。そのときに、水平感染が指摘されているという部分はどうしても誤解や偏見、差別につながりやすい部分でもありますので、そのような点も含めて包括的なサポートをする必要があるでしょう。これまでHTLV-1を抱えてきた多くの人たちがいますので、その人たちもしっかりサポートされるようなフォローをしてあげたらいいのかなと思います。
 以上です。
○脇田座長 ありがとうございます。
 越田先生、お願いします。
○越田委員 実は、金沢市は年間約4,000弱のお産がありまして、当市では、妊娠届から出産をへて、妊婦さんの情報はほとんど全てクリップしています。過去3年ほど調べてみましたが、令和2年度はHTLY-1はお一人だけ陽性、令和3年は陽性者はいませんでした。令和4年もお一人陽性でした。ということで、九州とは違って陽性者の数は、そう多くないのが現状です。
 加えまして、どの様にして母子保健の領域からお母さん方にアプローチをするかということも確認をしてみました。手元に母子手帳を持参しました。近年の母子手帳は検査を行ったか否かの記載欄だけが掲載されています。検査の結果は母子手帳に記載されていないのです。つまり、検査結果を知っているのはお母さんと、産婦人科医だけで、お母さんのカミングアウトがない限り、母子手帳を見て保健指導をする医療者からは、疾患に対する注意点や情報提供はできません。まだウイルス性肝炎なら、一般の方にも将来肝臓がんになるかもしれない、肝炎を起こすかもしれないというイメージが湧くのですけれども、HTLV-1が将来どうなるかということはほとんどの方はなかなか理解が難しいと思われます。HTLV-1陽性の方々にご説明しようにも母子手帳の記載だけでは、陽性か否かがわからないのが現状です。すなわち、検査を行った産婦人科の先生から何らかの形で情報を頂かない限りは、母子保健を切り口としてのそれ以降のアプローチができないというような現状にあります。
 産婦人科の先生方には初回の妊婦健診で風疹や肝炎などの感染症に関わる検査をしていただいています。そしてそれらの検査費用を請求していただく際に、検査結果が書いてある健診票を送って頂きますので、間接的に結果を知ることはできるのです。ただ、結果を知ったからといって、次に赤ちゃん訪問なり妊婦健診に行ったときに、お母さんにあなたは陽性ですとなかなか切り出すことができないのです。もし陽性ならこの時点で、母子感染の予防についてのご説明をしたいところですが・・・。陽性だと分かった一般の方にどんなふうにこの病気のことを御説明して、母子感染を回避するか、現時点では治療が確立されていませんから、感染が判明した時点でのアプローチの仕組みをしっかりする必要があるのではないかなという気がいたします。
 また、水平感染の可能性も最近言われていますし、皆様の御指摘のとおり、差別、偏見の病気につながってしまうということは非常に不幸なことですので、私は緩やかに5類に位置づけておくというのもいいのではないかなという気がするのです。
 以上です。
○脇田座長 ありがとうございます。
 調先生、どうぞ。
○調委員 なかなか難しい判断かなと思っておりました。事務局の資料の中で、2番の主な論点の4に、届出を位置づけるとしても、全数把握、全数把握で個人を特定、定点把握という3つの選択肢が残されたままになっていると思うのです。全数把握ということになると、例えば麻疹は最初定点把握であって、それが全数把握になって、それから、さらに全数把握で個人特定と位置づけがどんどん変わっていったわけです。それは、個人を特定することによって初めて感染拡大を防ぐことができるという判断でそういう経過をたどったと思うのですけれども、HTLV-1の場合、感染症対策として個人を特定して、行政がそういうことを行っていくことによって、果たして拡大防止が出来るのかどうかというと、なかなかそれは難しいのではないかなと思います。
 選択肢としては定点把握でトレンドを把握していくということになろうかと思うのですけれども、そうなると、献血とかお産のときも現状行われている検査等で十分なのではないかなというような気がいたします。
 水平感染を減らしていくというのは対策が非常に難しいのではないかなと思うのです。やはり母子感染を防いでいくということが一番重要で、そこに重点を置く。そういった意味で、ATLに5%ぐらいしか発症していかないHTLV-1の感染症を5類に入れていくというのは、必要性は乏しいような気がいたします。
 以上です。
○脇田座長 ありがとうございます。
 白井先生、お待たせしました。
○白井委員 ありがとうございます。
 保健所の立場でということで、今回、コロナで保健所の認知度がかなり高まったということで、5類になると保健所を含めた行政の対応が違うということの期待が大きいのではないかなと思っておるのですが、実際は保健所であっても相談されてどのような対応ができるかというと、現状でもちろん母子感染の場合の個別の判断というのはある程度啓発しながら市町村ごとにやっていると思うのです。そこから考えますと、今、保健所でもHIV検査と同時に入れたらいいのではとか、水平感染の部分もあるのではないかという御意見もあったりするのですけれども、検査だけ増やしてもやはり専門的な相談や医療への受皿がないことには、期待に応えられないし、今、本当に受皿と考えると限られていると思うのです。ですから、スクリーニングをしてという段階で、またそれが全数把握につながるかというと、それはサーベイランスとしてもやり方としてはちょっと違うのではないかなと思っています。
 先ほど谷口先生がおっしゃったサーベイランスと届出を分けてということについてはもっともだと思いますし、この団体の方々の御意見として、やはり疾患を認知してほしい、もう少し啓発してほしいということが主だと思えば、相談窓口がないわけではありませんし、母子保健のほうでもありましたし、あとはATLまたはHAMにつながるようなということについては、指定難病にも含まれておりますので、場合によってATLも難病のほうに含めるとか治療困難についてはそういう対応で個別支援ができるのではないかなと思います。
 実際に全数登録とか保健所に届けられても、その届出の管理をどうするかというと、それは息の長い病気だと考えた場合には、保健所でずっとキャリアの方を登録しておくということは考えにくいのです。今は感染症法の中にそういう病気はありませんし、HIVについてはキャリアの方についても適切な治療につなげるという方法がありますので、それを丁寧にやっているわけなのですが、届出とサーベイランスの期待ということについては少し分けて考えていただくことと、いろいろな研究班もありますし、また、水平感染については、献血のデータがあり、そういうような既存のデータから疫学的に統計学的解析ができるのではと思いますので、まずそういうことをやっていただいて、それでもって5類ということが感染症として必要なのかどうかということを改めて検討していただきたいなと思います。
 小委員会の中では、いろいろな患者さんに近いような方々の御意見だったと思うのですけれども、行政の立場としての方々が少ないような気がしましたし、議論をそのまま私たちというか行政の立場、保健所の立場で受け入れるには時期尚早だなと思っておりますので、今の段階で5類にということについては、私は必要ないと思っています。
 以上です。
○脇田座長 ありがとうございます。
 大曲先生、お願いします。
○大曲委員 ありがとうございます。
 全体としてHTLV-1による感染症を減らしていくべきだというのはもちろん賛成ですし、僕自身、出身は南のほうですし、関連するHAMもATLの患者さんもたくさん診てきましたので、その必要性というものは人一倍分かっていると思っています。
 それを前提になのですが、谷口先生のお話は大変頭が整理されて、すごくよく分かりました。なるほどと思いました。そういう観点では、俗な言い方ですみません。感染を減らしていくという観点で、そこに行政的なリソースを投入するということが合理的、効果的ということであれば、5類に指定して、特定の方だけを対象にして登録をしていくということはあると思いました。例えばそれは母子感染対策等が対象なのかもしれませんが、ただ、既にある行政的な対策でそれがカバーされていて十分なのであれば、そこは相当慎重にならなければいけないのだろうと思っています。
 一方で、すごく悩ましいと思っていたのは、それこそ最終的に起こるであろうATLやHAMの方まで入れるのかどうかということになると、感染の防止の観点からはどうなのか、僕もよく分かりません。むしろ、これは神経疾患あるいは腫瘍的な疾患ということで、それぞれの領域の疾病対策で、しっかりカバーされるのがまず前提としてくるのかなと思います。そういう観点から言いますと、個々の患者さんあるいは無症状の方への行政的なアプローチ自体がなかなか難しいとか、あるいは手段がないとかというものに関しては、やはり届け出る、疾病にするというのはなかなか難しいのかなと思いました。
 例えば水平感染の話はすごく大事だけれども、難しいなと思って考えていたのは、肝炎であれば、例えば僕も知り合いとか職員から相談を受けて、自分がキャリアである。今度結婚する。配偶者等、あるいは生まれてくる子供への対応をどうしようかという相談を受けて、すぐに対応はできます。要はワクチンを打って備えて、家族全員フォローしたりしてということはしていましたが、現状、HTLV-1ですとなかなかそういう手段は少なくて、僕はなかなか思いつかないところがあって、その中でどう対応していこうか悩ましいところであります。そこを行政的な仕組みにするというとなおさら難しいと思いますので、そこのところは考える必要があるかと思いました。
 以上です。
○脇田座長 ありがとうございます。
 味澤先生、越田先生の順番でお願いします。
○味澤委員 先ほど出たように、HIVは今、治療薬があるので、届出はよろしいのではないかという御意見があったのですけれども、HIVも最初は治療法がなくて、最初はエイズ予防法というような法律でしたけれども、そのときは、こういう予防法みたいなものをつくるとかえって患者が隠れてよろしくないのではないかという意見も多数あり、駒込病院でも反対しました。HIVに関してはエイズ予防法から感染症法になり、全体像を把握して、途中で有効な治療も出てきたというような経過を考えますと。HTLV-1に関しても5類感染症にするという方策はあるのではないかなと個人的には思います。
 以上です。
○脇田座長 ありがとうございます。
 越田先生、お願いします。
○越田委員 さっき少し言葉が足りなかったので補足させてください。、HTLV-1については、自治体レベルでは大したことをできるわけではなくて、生まれた赤ちゃんに対して母乳育児をどう考えるかといレベルなのです。
 確かに厚生労働省が出したガイドラインにも記載があります。Q&Aにも、初乳は飲ませてもいいとか、あるいは1か月まではいいとか、凍結はいいとか、書き方も曖昧になっているところがあって、HTLV-1陽性の母親とその子供に対してどうしてさしあげたらいいのかということをきちんとお伝えする必要があり、まず母子感染を起こさないという意味で何とかそういった対応が必要ではないかなと整理が必要かと思った次第です。
 谷口先生等がおっしゃるように、5類に登録したところでこの懸念が減るわけではないので、まずは母子感染を予防するきちんとした仕組みをつくり上げることを私は母子保健の立場からぜひお願いしたいなと。平成28年にできたガイドラインもそうですし、平成21年のQ&Aもそうなのですけれども、母乳の与え方ひとつにとってもきちんとしたガイドラインがないこと自体に、やはり患者会の方々もいろいろな思いを持っていらっしゃるのではないかなと思いますので、そういったことを今後も進めていただきたいと思っています。
 言葉が少し足りなかったので、訂正、追加をさせていただきました。
 以上です。
○脇田座長 越田先生、ありがとうございます。
 さらに御意見があればと思いますが、皆さん、いかがですか。
 大体皆様の意見を伺いまして、まずは現状の対策としての母子感染予防対策をしっかりやっていただいて、明らかな感染ルートとしての母子感染をしっかりと押さえていくというところはしっかりやっていく必要があるというところ。
 それから、もう一つは感染症全体の対策をどのように考えていくかというところで、母子感染以外に水平感染があるのではないかということで、この感染症の全体像を捉えるためにどのようなアプローチが必要なのかというところで、これは5類にして届出をしてもらうということが適切なのか、それとも様々なアプローチがあると思うのです。肝炎でやっているような検診といったものも取り入れて、谷口先生がよく言われる複合的な、重層的なサーベイランスというものをやることが必要ではないかというようなこともありますので、今日は何か感染症部会として意見を統一するということではないので、皆様の御意見を伺って、さらにまた事務局で検討していただくということになるのだと思いますので、その前に、事務局から今の皆様からの御意見に対するレスポンスをいただきたいと思います。事務局、お願いします。
○長江結核感染症課長補佐 事務局でございます。
 先生方、本日はいろいろな御意見をいただきありがとうございます。
 事務局としましても、小委員会でも様々な御意見があり、整理をさせていただきました。今回、感染症部会の先生方にさらにまた幅広い御知見から御意見をいただいたということもありますので、また整理をさせていただいて、検討を進めさせていただきたいなと思っております。本日の意見は非常に参考になりますので、こういったことを含めてやっていきたいと思います。
 以上でございます。
○脇田座長 ありがとうございます。
 今、様々な意見をいただいたと思うのですけれども、特に委員の皆様でここのところだけは事務局に確認しておきたいということはありますか。今、事務局からは包括的に今後しっかりやっていくという話でした。
 谷口先生、どうぞ。
○谷口委員 ありがとうございます。
 感染症法自体の理念なのかもしれませんが、インディビジュアルヘルスに介入することが感染症法の理念なのか、パブリックヘルスに介入することが感染症法の理念なのか、一人一人の個人に関する医療的な対応というのは多分また別なのではないのかな。当然スクリーニングで陽性と分かったら医療的な対応をするに決まっていますから、それができないから行政がやるのだというのとまた違うと思うのです。そこを御整理いただければいいのではないかなと思いました。
 以上です。
○脇田座長 ありがとうございます。
 どうぞ。
○白井委員 白井です。
 サーベイランスのことで、日本でどうかは分からないのですけれども、この疾患に限らずですが、いろいろな感染症の検査については、医療機関から届けるだけではなくて、海外では検査機関から陽性者を届け出るという仕組みもあると思うのです。そういった形のサーベイランスとして、HTLV-1の全体把握ができないかとかいうことも検討していただいてもいいのかなと思います。
 以上です。
○脇田座長 ありがとうございます。
 調先生、岩本先生の順番でお願いします。
○調委員 水平感染があるということで、例えば性的にアクティブな人たちというのは、HIVであったり、梅毒の検査にアクセスするわけですけれども、HTLV-1の感染について例えばそういう人たちの検査メニューに加えるメリットといいますか、サーベイランスといいますか、そういう意味で見つけることができるほど感染リスクが高いものなのかどうかということをお聞きしたいと思いました。
○脇田座長 岩本先生、お願いします。
○岩本委員 谷口先生と白井先生のおっしゃったことは非常によく分かるのですけれども、この2年半でコロナ感染症が我々に突きつけたのは、まさにそういう問題を別に扱うのか、一緒に扱うのか。医療と公衆衛生をどう扱っていくのかというのがいまだに解決されていない問題だと思いますので、この問題はそれぞれ別の立場から考える問題と、サーベイランスの下に感染症をやって、一人一人の命も大事にしていくというような考え方もあると思いますので、日本がどういう立ち位置を取っていくのかについては、やはり厚生労働省が事務局としての考え方をぜひ見せていただきたいと思っております。まさに今、コロナの流行への対応を通じて問われている非常に大事なところだと思います。
 以上です。
○脇田座長 ありがとうございます。
 谷口先生と岩本先生から、非常に根本的な感染症法の理念といいますか、厚労省だけではなくて、我々もこの感染症部会に関わっているものとしての立ち位置についてどうなのかというところ、すぐに答えられないかもしれませんけれども、そこで何かコメントがあればというところ。
 それから、調先生からは、HTLV-1は水平感染と言われているのだけれども、性感染症の検診的なものに入れるほどのリスクは既に分かっているのかというような御質問。
 あと、白井先生からは御意見として、サーベイランスとして医療機関だけではなくて検査機関からの届出みたいなものも今後考えられるのではないかといった御提案がございました。
 事務局から何かレスポンスがあればお願いできますか。
○長江結核感染症課長補佐 事務局でございます。
 調先生の御質問にお答えさせていただきます。
 検査につきましては、保健所のほうではHIVとかと同等にHTLV-1も検査できるようにはなっております。
 あと、性感染症のリスクにつきましてはまだAMEDなどの研究班で検証中でございまして、現時点で少し分かってきていることとしましては、精液に、男性のほうのリンパ球にHTLV-1が少し多く含まれているのではないかということや、今、猿で実験をしているのですが、猿でやっていたときに膣にHTLV-1のウイルスがある程度残っていることが分かっているというような状態で、はっきり性感染症がどうかというのは、これからまた動物実験をしながらしっかり解明をしていくというところになっております。
○脇田座長 ありがとうございました。
 どうぞ。
○岩本委員 1点だけ忘れましたので、すみません。
 先ほど言おうと思って忘れてしまいました。白井先生のポイントですが、検査陽性と診断というものをどう考えるのかというのもコロナが我々に突きつけた問題です。新型コロナの場合、無症状感染者の増加とともに、症状のある人にだけ対応したサーベイランス対策では対応できないということが分かったわけです。診断という行為の中で、検査そのものが非常に重要な位置をだんだん占めるようになったのが現実です。要するに、医師が診断するということと検査結果が陽性だったということをどう扱っていくのかということも非常に重要な問題だと思いますので、事務局としての考え方を整理してもらいたいと思います。
○脇田座長 ありがとうございます。
 だんだん話が広がってきましたけれども、調先生、御発言をどうぞ。
○調委員 御回答ありがとうございました。
 保健所の検査のメニューに入っているということなのですけれども、そこから見つかってきたHTLV-1陽性の方というのはどれぐらいいらっしゃるのでしょうか。
○長江結核感染症課長補佐 事務局でございます。
 今、正確な数字は手元に持ち合わせていないのですが、結果は収集していないところで、検査数のほうは何件かは分かると思いますので、また後でメールでお答えさせていただきます。
○脇田座長 それでは、ほかにございますか。
 どうぞ、お願いします。
○江浪結核感染症課長 事務局です。
 岩本先生から感染症法の関係のことで課題の提起といいますか、事務局のほうでもしっかり整理をという視点をいただきました。
 新型コロナウイルス感染症におきましては、もともと感染拡大防止対策という観点で規定として設けられていたと思われます、自宅療養される患者さんに対する健康状態の報告の義務みたいな話が、今回の対策の中ではどちらかというと患者さんを自宅でしっかりとフォローアップする、患者さんが自宅療養されている間にもしっかり医療につなげるような取組をするという話になってきているというところもございますし、感染症法そのものが感染症の感染拡大防止対策ということだけではなくて適切な医療の提供という観点もある中で、どういう対策を進めていくかということであろうと思っております。
 本日も御参考で新型コロナウイルス感染症に関する有識者会議のまとめでありますとか、それを受けた行政のほうでの対応の考え方を示しておりますけれども、感染症部会におきましても、今後、特に制度面での対応に関しまして、新型コロナウイルス感染症対策を受けてどういうふうに進めていくかということを御議論いただくことになろうかと考えてございますので、そのときにもしっかりと事務局の考え方を整理した上で御議論できるように進めていきたいと思っております。
 私からは以上です。
○脇田座長 ありがとうございます。
 そうしましたら、HTLV-1に関する議論は大体よろしいですか。ここは事務局でまた検討を進めていただくということに今日はさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
 最後に、今、江浪課長からは、今後、感染症法の改正というようなところでの議論をこの感染症部会でしっかりやっていく必要があるといったお話がございましたので、またそのときに谷口先生、岩本先生からいただいたような御意見も含めて議論できればと考えます。
 ありがとうございました。
 そうしましたら、準備した議題は以上になりますので、事務局のほうにお返ししたいと思います。
○杉原エイズ対策推進室長 どうもありがとうございました。
 今回、たくさんの闊達な御意見をいただきまして、ありがとうございます。委員の皆様の御意見を踏まえまして進めさせていただきたいと考えております。
 次回につきましては、また事務局より改めて御連絡させていただきます。
 本日はお忙しい中、御出席いただきましてありがとうございました。
○脇田座長 どうもありがとうございました。