第166回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会 議事録

日時

令和4年1月7日(金) 11:00~12:00
 

場所

 オンラインによる開催
 厚生労働省 仮設第3会議室
 

議事

議事内容
○伏木補佐 おはようございます。本日も御参集いただきましてありがとうございます。定刻少し前ですけれども、まず、開催に先立ちまして事務局からの御案内を差し上げます。
本日も、こちらの会場とオンラインと併用して開催しております。部会進行中、オンラインで参加されている方はマイクをオフとさせていただいておりますが、発言なさる際は、会場の方は挙手をしていただいて、オンラインの方はZoomの「手を挙げる」機能で挙手いただければと思います。部会長から指名があった後に御発言いただくようにお願いいたします。
会議進行中に通信トラブルで接続が途切れた、音声が聞こえなくなったなど、トラブルがございましたら、チャットないし御案内しております電話番号まで御連絡をお願いします。
また、通信遮断が大きい場合には、会議を一時中断する場合もございますので、あらかじめ御容赦くださいますようお願いします。
なお、傍聴につきましても、本日も蔓延防止の観点から、別会場でオンラインで行わせていただいております。傍聴の皆様におかれましても、御理解いただきますよう、重ねてお願いいたします。
進行に係る説明は以上となりますので、以後、部会長で進行をお願いいたします。
○守島部会長 皆さん方、おはようございます。ただいまより、第166回「雇用保険部会」を開催いたしたいと思います。
本日の出席状況ですけれども、公益委員の水島委員が御欠席でございます。
それでは、議事に入りたいと思います。マスコミの方の頭撮りはありませんね。
本日の議題は、雇用保険制度についてでございます。
当部会の報告書案について、前回部会でお示ししたものから皆様方の御意見を踏まえて事務局にて修正したものがここに出されております。前回からの変更点については参考資料に示されております。
事務局から資料について御説明いただき、その後、委員の皆様に御意見・御議論をいただきたいと思います。
それでは、事務局の方、御説明をお願いいたします。
○山口調査官 それでは、資料について御説明を差し上げます。
雇用保険部会報告(案)全体、見え消しを溶け込ませたものが資料となっておりますが、前回の部会からの修正点を御説明させていただきますので、参考資料1を御覧いただければと思います。修正した箇所を重点的に御説明させていただきます。
まず、1ページ目でございます。2つ目の○のところを修正してございます。今回、コロナの影響で、緊急事態措置など国の感染症対策として実施された施策が雇用に与える影響への対応は、主として雇用保険二事業を含めた雇用保険制度における措置の拡充等によることとなったということで、背景を少し詳細に記述したものでございます。
その後、雇調金や休業支援金による支援策の記述が続いておりますけれども、2ページを御覧いただきまして、赤字の部分でございますが、こうした支出に関して、労働者代表委員及び使用者代表委員から御意見をいただいているところを追記してございます。「国の緊急事態措置などに伴う休業要請によるものであることから、雇用調整助成金等に要した費用は、国の感染症対策に係る経費として一般会計により負担することが適当ではないかとの意見があった」としております。
2ページの下から2つ目の○のところでございますが、雇用保険財政が厳しい状況にあって、また、財政運営上の特例措置が今年度末で終了するということで、令和4年度以降の検討をする必要があるという部分でありますが、検討の考え方といたしまして、国による雇用政策への責任がしっかりと果たされる形で検討する必要があるというふうに言葉を補ってございます。
3ページ目でございます。中ほどの「検討が必要ではないか」という部分は表現の修正で「検討が必要である」としております。
それから、下から2つ目の○のところですけれども「65歳以上のマルチジョブホルダーに対する試行的な適用」という部分が今月から施行されておりますので、その部分、修正をしてございます。
一番下の○のところで、離職をされた後に起業された方がやむを得ず廃業された場合に、就職活動を始めた方が再び雇用労働者に戻るかどうか、きちんと確認すべきであるという御意見がございましたので、失業認定ですとか受給資格決定で運用がしっかり担保されるようにという趣旨を書き込んだものでございます。
4ページを御覧ください。上からから3つ目の○で、コロナ延長給付の支給実績のところですが、こちらは「多くの受給者に適用」ということで用語を適正化したものでございます。
その下の○で、こちらはコロナ延長給付で、緊急事態措置が終了してから1年経過後にはコロナ延長給付を行わないこととするという部分でありますけれども、さらに緊急事態措置が出るごとに起算点が変わるという部分が分かりやすくなるように表現を厳密にしたもので使えます。
5ページで、上から2つ目の○でございます。教育訓練給付の制度見直しという点で「この点に関して、労働者代表委員及び使用者代表委員から、指定講座の見直しに当たっては具体的な指標に基づき検討されるべきである旨の意見があった」と追記してございます。
その下の○で、教育訓練給付の効果検証に当たっては「再就職後の定着率などの」ということで具体的に中身を書き込んだものでございます。
6ページを御覧いただきますと、こちらは専門実践教育訓練を受けられる方の45歳未満の若年離職者の方に対する失業等給付に相当する給付であります教育訓練支援給付金についての記述の部分なのですが、効果検証の中身といたしまして「受講後の労働条件」という部分を追記いたしますとともに「指定講座の偏りを含め、しかるべき制度改善につなげるべきである」ということで文言を補強しております。
6ページの下から2つ目の○ですけれども、求職者支援制度につきまして、制度の周知の方法を具体的に記述しております。「これまで以上に多様な周知媒体を活用する等により」とするとともに「不断に調査・検証する」ということで言葉を補ってございます。
7ページで、こちらは1~3の給付関係の共通事項の見直しの部分ですが、労働者代表委員からの御意見といたしまして「不断に制度の見直しと充実を図っていくことが重要との意見があった」と追記してございます。
7ページ目の「4 雇用調整助成金の特例・休業支援金等について」の最初の○で、こちらも背景を詳細に記述したものでありますけれども、感染症の拡大を受け、緊急事態措置などに伴う国・地方公共団体からの休業要請や外出自粛要請といった感染症対策が経済に与えた影響ということで丁寧に記述してございます。
7ページの一番下の○のところで、雇調金等の直近の支給実績の数字を入れてございます。雇調金は累計4兆7644億円、休業支援金が累計792億円となっております。
8ページ目で、一番下の○のところでございます。在籍型出向を通じた産業雇用安定助成金の活用促進という部分で、記載場所を少し前に移してございます。こちらは産雇金で、労働移動よりは雇用維持がメインの施策であります観点から記載の場所を移動したものでございます。
9ページで「5 財政運営について」で、こちらは少し修正箇所が多くなってございますので、中身も含めて御説明を再度差し上げたいと思います。
最初の○では国庫負担のところで言葉を補っておりますが「国の雇用政策への責任を示す」ということをこちらでも記載しております。
まず「(1)保険料率について」ですけれども、保険料率は現行、原則の1,000分の8から1,000分の2まで引き下げられておりますが、法律による引下げと弾力条項による引下げという2種類の引下げがございますので、それが分かりやすくなるように明確化したものでございます。
10ページを御覧いただければと思います。料率につきましては、令和4年度においては4月から9月まで1,000分の2、10月から3月まで1,000分の6とすることが記載されておりますが、この点に関しまして「使用者代表委員から、年度途中での料率の変動に事業主が円滑に対応できるよう、丁寧な周知をはじめとしたきめ細かな方策を行うべきとの意見があった」と追記してございます。
次の○で、育児休業給付に係る保険料率につきましては1,000分の4のままとすべきであるとしておりますけれども、育児休業給付の在り方等につきましては令和6年度までをめどに検討するということにしてございますが、その期限を待つことなく、令和4年度から検討を開始するという御意見をいただいておりましたので、盛り込んでおるものでございます。
11ページの一番上の部分ですけれども「雇用保険料全般について、労働者代表委員及び使用者代表委員からは、特にコロナ禍において、労使の負担が過大とならないよう配慮すべきである旨の意見があった」ということで追記してございます。
次に「(2)国庫負担について」でございます。雇用保険の失業等給付、育児休業給付、求職者支援制度に係る国庫負担で「今般、これまで一体的に国庫負担割合の引下げをしてきた失業等給付、育児休業給付、求職者支援制度について、個別に整理を行った」ということで事実関係を追記してございます。
失業等給付についてで、最初の○で、まず、失業等給付についての国庫負担の考え方を改めて記載してございます。雇用保険の保険事故である失業は、政府の経済政策・雇用政策とも関係が深く、政府もその責任を担うべきという考え方によって、これまで負担が行われてきたものでございます。
次の○では、機動的な国庫繰入規定の常設化の必要性について述べたものでございます。少し初見の方でも意味が通りやすくなるように、読みやすくなるようにという観点から文章を修正しているものでございます。
12ページにつきましては「失業等給付に係る国庫負担については、本来、現行制度の原則的な負担割合である1/4に戻すべきであるが、国の厳しい財政状況下において、雇用情勢等に応じて機動的な財政運営ができる枠組みを強化することで、これまでと同様に国の雇用政策に係る責任を果たし、雇用保険財政の安定を図ることができるよう、以下のような新たな国庫負担の仕組みとすることもやむを得ない状況であると認識する」と修正してございます。
新たな国庫負担というものが以下に書いております3つの仕組みとしておりまして、項の番号でございますけれども、ほかのものと紛れがないように少し表記を変えているものでございます。中身の修正はございません。
その後に「この点に関し」ということで労使の皆様からの御意見を追記してございます。「この点に関し、労働者代表委員及び使用者代表委員から、失業等給付に係る国庫負担については、労働者の雇用に大きな影響を及ぼす雇用政策に係る国の責任を示すものであって、令和元年の当部会報告及び令和2年改正時の衆参厚生労働委員会の附帯決議等を踏まえれば、本来、国の財政の状況等に左右されることなく、現行制度の原則的な負担割合である1/4に戻すべきであるとの意見があった」としております。
「また、労働者代表委員からは、雇用情勢及び雇用保険の財政状況が悪化している場合以外の国庫負担割合を1/40とすることに関して、合理的かつ十分な説明が求められるとの意見があった」。その旨、追記してございます。
それから、その下は削除しておりますが、これはほかの場所へ記述を移動させたということで、ここからは消しているものでございます。
13ページを御覧いただければと思います。新たな国庫負担の仕組みを導入するに際して、雇用情勢及び雇用保険財政の状況が悪化しているということの具体的な判断基準を記載した部分でございます。
こちらにつきまして、新たな国庫繰入を行うことによって、保険料率の弾力条項による引上げを発動させないこととの間のつながりが分かりにくいので、その間の言葉を補っております。このパートを読み上げますと「この判断基準に基づくと、受給者実人員が70万人以上であり、かつ弾力倍率が1を下回る場合、国庫負担割合は1/4となるが、新たな国庫繰入制度による繰入を行うことによって事後的に弾力計算が再計算される仕組みを導入することにより、同制度の実効性を担保するとともに、当該繰入により雇用保険財政の安定化を図る観点から失業等給付の積立金の規模が一定程度回復する結果、保険料率の弾力条項による引上げを発動させないことも可能とすることが適当である」という流れになっております。
14ページを御覧いただければと思います。こちらにつきましては、今般の新しい国庫負担の仕組みを制度趣旨に沿って運用するためには、新たな国庫繰入制度の実効性を可能な限り担保することが必要という御意見をいただいておりまして、具体的には、どの程度、財政状況が悪化したときに、どのように国庫は繰り入れるかということを具体的に示すべきであるといった御意見をいただいておったところでございます。それを踏まえて追記した部分となっております。
具体的にはi)~iv)というケースに整理しておりますけれども「以下のような状況下において、それぞれに記載のように制度が運用されるべきである」としております。
i)が、受給者実人員の平均が70万人を下回るが、弾力倍率が1未満であって、かつ積立金の残高が不足しているなどにより、こういう場合は収支が崩れてしまって、失業等給付の支払いに支障が生ずるおそれがあるような場合には、機動的な対応として、当面必要な国庫繰入が行われるべきであるとしております。
ii)といたしまして、受給者実人員の平均が70万人以上、かつ弾力倍率が1未満に該当する場合。このようなケースは、国庫負担割合が4分の1になるようなケースですけれども、特に安定的な財政運営の確保が求められるため、弾力倍率が1を超えるように国庫繰入が行われるべきであるとしております。
iii)のケースですが、コロナ禍において雇用調整助成金等の支出額が増加し、積立金から二事業への貸出額を増加しなければ雇用調整助成金等の支払いに支障が生ずるおそれがあり、かつ積立金の残高が不足している場合には、機動的な対応として、当面必要な国庫繰入が行われるべきであるとしております。
iv)といたしまして、i)~iii)に該当しない場合、雇用情勢の急激な悪化など、早期に財政の安定化を図る必要があると認められる場合には、機動的な対応として、当面必要な国庫繰入が行われるべきであるとしております。
したがって、厚生労働省におきましては、i)~iv)に該当し、または該当するおそれがある場合は、決算確定後などの時点を問わずに、まず、雇用保険部会に余裕を持った適切な時期に財政状況の報告をして、その上で、部会で必要な財源の内容やその確保策も含めて議論を行っていただき、その意見を踏まえて、必要な対応を取るべきであるというふうにしております。
次の○は前のほうから持ってきた記述であります。「この新しい国庫負担の仕組みにより、雇用情勢が急激に悪化して財政悪化した局面においても、保険料率を引き上げるよりも迅速に、必要に応じた金額を繰り入れられることにより、雇用保険財政の安定を図ることが可能となる」。
15ページに続いておりまして「このことによって、雇用保険の保険事故である失業は政府の経済政策・雇用政策とも関係が深く、政府もその責任を担うべきとする国庫負担の考え方が変わるものではない。今後の財政運営に当たっては、この点を十分認識する必要がある」と記載してございます。
それから、次が育児休業給付及び介護休業給付の国庫負担についてという部分で、こちらも速やかに原則的な負担割合である8分の1に戻すべきということでありますけれども、国の厳しい財政状況下において、一定程度、財政運営が見込めることを前提に、令和6年度まで、原則的な負担割合の10%とすることもやむを得ないという結論を記載しているところでございます。
16ページで、求職者支援制度についてで、こちらにつきましても、速やかに原則的な負担割合である2分の1に戻すべきであるが、国の厳しい財政状況にも鑑みて、原則的な負担割合の55%水準に引き上げることが適当とした上で「この点に関して、労働者代表委員及び使用者代表委員からは、制度の対象者を踏まえれば、本来であれば全額国庫負担とすべきであるとの意見があった」という部分を追記してございます。
17ページで、こちらはコロナ禍における財政運営についてということで、1つ目の○の「また」以下のところですけれども、マル3についてもとございます。これは積立金から育児休業給付の資金のほうにお金を貸し出す仕組みについてで、こちらについても令和6年度まで延長した上で、借入れが生じる事態となった際には、その返済の在り方について検討することとすべきであるとしております。
この点に関しまして「労働者代表委員及び使用者代表委員から、本来、借入が生ずる事態となる前に、返済の在り方について検討すべきとの意見があった」ということで追記してございます。
それから、一番下の○のところで、累積債務の返済について記載した部分で「この点」という段落につきまして、返済猶予と返済免除について記載がされているところで、一番下の返済免除の部分でございます。「雇用保険財政の状況や雇用保険二事業の実施の状況等を勘案して、返済必要額から控除することができるようにすべきである」という記載の部分ですが、無限定に控除できるものではないという趣旨が分かりますように「二事業への貸出原資である積立金に労使が拠出した保険料が含まれていることも踏まえた上で」と追記しております。
18ページでございます。こちらは「この点に関し」というところの項が労使の皆様からいただいた御意見を記述した部分でございます。使用者代表委員の御意見の中で、累積債務の部分ですけれども、全額使用者のみ負担するのは不適当というふうにもともと書いてございましたが、制度を知らない方が御覧になると、二事業の負担が全額使用者の負担のみということを知らない方もいらっしゃいますので、そこが分かりますように言葉を補ったものでございます。もう一つ追記いたしましたのが、雇用保険二事業に対する一般会計からの直接的な繰入れ等の対応も必要という御意見がございましたので、その旨、記載してございます。
また、労働者代表委員からは、累積債務の返済の在り方に端を発して雇用保険二事業が縮小されるべきではない、労働者が拠出した保険料が含まれる積立金からの貸出額が保全されるべきである、雇用保険二事業に対する一般会計からの直接的な繰入れ等により対応されるべきであるとの意見があったということで追記してございます。
19ページの部分で、これは弾力条項の計算の取扱いの変更という部分で、これまで貸借額について全額が返済された状態を前提として弾力計算を行っておりましたが、実勢に即した計算方法に変更するという部分でございます。
この点に関して、労働者代表委員からは、雇用保険二事業に剰余が発生する見通しが立たない状況に変わりはなく、返済されていない貸借額も引き続き考慮に入れるべきであるとの意見があったというふうに記載してございます。
それから《(3)(4)共通事項》とありますけれども(3)がコロナ禍における財政運営、(4)が弾力条項の取扱いの部分でございます。「コロナ禍の財政運営に関して、労働者代表委員からは、本来、失業等給付及び雇用保険二事業に係る財政運営に関する仕組みを複雑化させるべきではないとの意見があった」ということで追記してございます。
資料の御説明は以上です。
○守島部会長 ありがとうございました。
それでは、ただいまの御説明に関しまして、御質問・御意見等がありましたらお受けしたいと思います。
では、冨高冨髙委員、お願いいたします。
○冨髙委員 ありがとうございます。労働側として意見を申し上げたいと思います。
今回、雇用保険財政運営に関する極めて重要な議論が時間的余裕のない中で進められたこと、また、当部会で合意する前に2022年度の当初予算の閣議決定がなされたことについては遺憾であることを改めて申し上げたいと思っております。
また、今後も育児休業給付の財源問題などに関する大きな課題もありますので、こうした事態に陥らないように、令和4年度から議論を開始するなど、早々の御対応をお願いしたいと思っております。
雇用保険の財源などに関する議論につきましては、当然のことながら、これで終わりではなく、雇用情勢や経済情勢、さらには今後の感染拡大などの状況を踏まえて、さらに議論が継続されるものと考えておりますので、今後はより丁寧な部会運営に努めていただきたいということを冒頭で申し上げたいと思います。
報告の中身でございますけれども、見直しの方向性についてというところで、まず、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、これまで実施されてきた雇用調整助成金の特例措置、また、産業雇用安定助成金などによる雇用維持の効果というところにつきましては報告書に記載のとおりであると考えておりまして、評価しているところでございます。
ただ、失業等給付に係る国庫負担につきまして、十分な合意形成ができていない中で事務局の見直し案が部会報告案として決定されることにつきましては今後に禍根を残しかねないと考えているところでございますし、12ページで先ほど御説明いただきましたが、事務局案の記載に続きまして、1)2)に対する労使の意見として事務局案に相反するような内容が意見として付されていることがこの間の議論と部会運営の状況の全てを物語っているのではないかと考えております。このことについては重く受け止めていただきたいと思っております。
国の雇用政策への責任を示す国庫負担の本則を40分の1とする根拠が示されることなく報告書が決定されることについては大変遺憾に考えておりまして、雇用政策の担い手としての政府の責任を果たしたものと言えないのではないかということについては労働者側委員として改めて言及しておきたいと思います。
一方、今回、雇用保険の安定的な財政運営について、国の雇用政策に関する責任を果たすためということで新たな国庫繰入制度が規定されるわけでございますけれども、これについては実効性と効果性が求められると考えておりますし、さらに決算確定後などの時点を問わず、労使の保険料率の引上げを実施するより前に機動的な運用がなされることが不可欠であると考えております。
そのためには、その運用について規定した上で、判断材料となる雇用情勢や財政状況、また、今後の見通しなど、当部会に対する報告が適切な時期に適切な内容で示されることが必須であると考えております。そうした報告が不十分である場合には、当部会の委員が求めた際には厚生労働省としても部会を開催していただき、改めて適切な内容の報告が必要であると考えているところでございます。
最後に、今後の検討ということで、育児休業給付及び介護休業給付も含めて雇用保険会計が安定的に運用されることにつきましては労使にとっても大変重要なことでありまして、特に育児休業の積極的活用につきましては国の少子化対策として雇用保険会計以外で実施されるべきであり、このことについては今後改めて検討するべきであると考えているところでございます。また、雇用保険二事業が縮小されず適切な内容で実施されるよう見直しをしつつ、その累積債務の返済の在り方についても十分な検討が必要と考えております。
今、様々申し述べてまいりましたが、令和4年度以降につきましても、一般会計及び雇用保険会計の財政状況に関わりなく、国の雇用政策への責任が適切に果たされるよう、改めて審議会等を通じて我々としても求めていきたいと考えているところでございます。
以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございました。
菱沼委員、手を挙げていらっしゃいます。
○菱沼委員 ありがとうございます。私から2点ほど御意見を申し上げたいと思っています。
まずは報告書案全体ということで申し上げます。先ほど冨高冨髙委員からもお話がありましたけれども、少しかぶる部分があるかと思いますが、御容赦いただけたらと思います。
この報告書案につきましては、9月ぐらいから審議会が始まりまして、まず、現状認識を共有しまして、厚労省が知恵を絞って事務局が取りまとめいただいたものであると理解しているところでございます。何回か私も雇用保険部会報告の場面に参画させていただいているのですけれども、過去の例を見てもこれだけ労使意見が付される報告は例がないのではないかと思っております。
また、年末に守島部会長がコメントしていたように、積立金残高がないのは異常事態であるのはまさにそのとおりであって、危機意識を持って皆さんで議論してきたものかなと思っています。先ほど冨高冨髙委員からもこれがゴールではないということでありますので、令和4年度に入ってからも雇用保険制度全体がしっかり機能しているかどうか、年末に若干、意見を申し上げましたが、審議会の進め方等を含めて見ていく必要があるのではないかと思っています。
もう一点は国庫負担の関係でございます。失業等給付に係る国庫負担については、労使委員がこれまで申し上げているとおり、平時有事関係なく国の責任は変わらないかなと思っています。4分の1の流れが残っていますが、繰り返しになりますが、現実的には厳しいのかなというところです。雇用保険制度を不安なく維持していくためには、やはり部会報告案にあるように、新しい国庫負担が機能するような実効性の確保が必要であることを繰り返し申し上げたいと思います。
以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございました。
ほかにどなたかございますでしょうか。
では、佐藤委員、お願いいたします。
○佐藤委員 ありがとうございます。労働側の佐藤でございます。
まずもって、前回の部会開催以降、加筆修正等をいただきました事務局には感謝申し上げておきたいと思います。
私からは、調査官が御説明されました参考資料見え消し版ですと14ページ、部会報告案ですと13ページにございます雇用情勢、財政状況のケースごとの運用の整理について申し上げたいと思います。
前回も申し上げましたけれども「弾力倍率が1を超えるように国庫繰入が行われるべきである」とされているのはii)のケースのみでありまして、他のケースでは当面必要な国庫繰入とされており、これは赤字補充にとどまる国庫繰入しかなされないことが想定されます。
その下の「したがって」以降には、「当部会において財政安定化のために必要な財源の内容やその確保策も含めて議論を行い」とありますが、財政措置の規模も含め、当部会において議論する必要があることを改めて申し上げておきたいと思っております。
また、同じ箇所には「決算確定後などの時点を問わず、まずは当部会に余裕をもった適切な時期に雇用保険財政等の状況を報告し」とございます。前回の部会では、当該年度の決算が翌年度の夏頃に確定した後、国庫繰入を行うこととしても機動性に欠けるという趣旨の発言を労働側より申し上げましたが、そういった内容が反映いただいたものと考えております。
質問でございますが、この記載は部会での議論を早期に行うということにとどまらず、必要な対応を取ることも含めて早期に行うという趣旨で理解してよいのか、事務局からのコメントがあればいただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○守島部会長 では、お願いいたします。
○長良雇用保険課長 ただいま、参考資料1の14ページの「したがって」のくだりの御質問でございました。
文章としては「決算確定後などの時点を問わず」以降を一文で表記しております。したがいまして「必要な対応をとるべき」までのところが係ってくるというまとめを文章として表現したつもりでございます。
以上です。
○守島部会長 ありがとうございました。
ほかに御意見・御質問等はございますでしょうか。
では、千葉委員、お願いいたします。
○千葉委員 ありがとうございます。
この雇用保険部会報告案に関連して、最近の状況に関する意見ということで申し上げたいと思うのですが、今、報道等でも取り上げられておりますが、新型コロナウイルスの感染拡大がかなり広がってきて、全国に波及する懸念が広がっている状況の中で、雇調金や休業支援金については、4月以降の措置内容を2月末までにプレスリリースを行うことになっていますけれども、今後の状況に応じて雇用情勢も十分に踏まえた対応が必要なのではないかと考えてございます。
それと同様に、次年度の雇用保険料率に関しましても、労働者の負担に配慮した柔軟な対応が必要ではないかと考えておりまして、意見として申し上げておきたいと思っております。
以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございました。
ほかに御意見・御質問はございますでしょうか。
では、中窪委員、手を挙げていらっしゃいます。
○中窪委員 ありがとうございます。
報告書案は、いろいろなところで労働者側委員、使用者側委員の意見がありまして、公益委員は全て異論がないように見えますけれども、特に国庫負担については、前に申しましたが、私はちょっと違和感があり、特に4分の1でないときの数字が40分の1というのは、なぜそうなのかということについて、まだ疑問が残っています。
ここの中にそういう意見を書き入れることを求めているわけではないのですけれども、一応、公益委員の中にもいろいろな意見があることは言っておきたいということを申し上げさせていただきます。
その上で、新しい国庫繰入の仕組みができるのは非常によいことでありますので、それを踏まえながら安定的な制度の運営に今後も努めていただきたいと思います。
以上です。
○守島部会長 ありがとうございました。
ほかに御意見・御質問はございますでしょうか。
では、杉崎委員、お願いいたします。
○杉崎委員 ありがとうございます。本日提示された報告書案は最終形に近い内容であるかと思いますので、報告書案に対する評価、受け止めを申し上げます。
まず、失業等給付をはじめとした国庫負担割合については、現行制度における原則的な負担割合、すなわち本則に少なくとも戻すべきであるとの主張がかなわなかったことは残念です。
一方で、失業等給付に係る保険料率については、来年度の前半は現在の料率である1,000分の2が据え置かれ、後半は年度途中で1,000分の4引き上がりますが、厳しい財政状況の中で本則から1,000分の2が引き下げられ、1,000分の6に設定されることは労使の負担軽減へ一定の配慮がなされており、ありがたく思いますし、評価しています。
また、国庫繰入制度を中核とした「新たな国庫負担の仕組み」については、根幹となる「実効性」を報告書に具体的に記載すべき旨を主張してまいりました。この点については、資料1報告書案の13ページに、国庫繰入が行われるべき状況について4類型が示され、かつ厚生労働省は、4類型のいずれかに該当するおそれがある場合には、部会への報告と議論を、余裕を持った適切な時期に行い、必要な対応を取る旨が明記されました。このことは「実効性」の確保はもとより、財政運営の持続可能性の確保や財政の安定化に向けた予見可能性を高めることにも寄与することから、評価いたします。
報告書案の総合的な評価としては、使用者側の主張が取り入れられていない項目もありますが、今、申し上げた点に加え、国の一般会計や雇用保険の厳しい財政状況、経済・雇用情勢がコロナ禍からの回復途上であることを踏まえると、現実的な内容であると受け止めています。
なお、仮に改正法が成立すれば報告書案の内容に沿った対応がなされるかと思いますが、雇用保険財政の立て直しには今般の制度変更に係る効果検証も踏まえ、継続的な議論が必要になると思います。
次に、中小企業への周知、きめ細やかな支援の必要性について申し上げます。
経済・雇用情勢は全体的には回復傾向にありますが、宿泊・飲食業等ではいまだに厳しい状況が続いており、さらに、新たな変異株による先行き不安もより顕在化していることから、今般の制度変更に伴う中小企業への対応には万全を期していただきたいと思います。特に年度途中での雇用保険料率の引上げについては、労使に対する幅広い周知はもとより、今後の経済・雇用情勢には不確実性があることから、夏から秋の状況いかんでは1,000分の6からさらに引き下げられる余地を残していただきたいと思っております。
また、10月は例年、新たな最低賃金が発効される時期であり、事業主にとっては雇用保険料率の引上げと最低賃金の引上げが重なることから、特に中小企業の負担感を考慮し、各種支援策をきめ細やかに講じていただくなど、配慮をぜひともお願いしたいと思います。
なお、雇用調整助成金の特例措置については、段階的に縮減していく方向性の下で、感染拡大地域や業績の厳しい企業への支援には引き続き万全を期していただきたいと思います。
最後に、お礼を一言申し上げます。
昨年の秋に始まった法改正に向けた議論は、取り扱う項目が非常に幅広く、かつコロナ禍における経済・雇用情勢、労使の負担、国の一般会計や雇用保険財政の厳しい状況など、多岐にわたる要素を考慮しながら慎重に進めていく必要があったかと思います。部会長におかれては、非常に難しいかじ取りであったかと思いますが、報告書案を取りまとめていただいたことに一委員として感謝を申し上げます。
また、公益委員の先生方、労側委員の先生方におかれましても、使用者側の意見に真摯に耳を傾けていただいたことに御礼を申し上げます。
最後に、事務局の皆様におかれましては、幹部職員の皆様はもとより、とりわけ資料作成や各種の調整業務等を担われたスタッフの皆様の御尽力に心からの敬意を表する次第です。
日商としても、今般の制度変更に伴う中小企業等への対応にしっかりと取り組んでまいりますので、引き続きよろしくお願いいたします。
以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございました。
ほかに御意見・御質問はございますか。
では、平田委員、お願いいたします。
○平田委員 ありがとうございます。
まず、この取りまとめに御尽力いただいた部会長、それから、事務局の皆様に感謝申し上げたいと思います。
その上で幾つか意見を申し上げておきたいと思います。繰り返しになりますが、国の責任は国家財政や積立金の多寡にかかわらず不変という考え方には変わりはありません。ただ、今回提案されている新しい制度において、国庫の任意繰入規定の実効性を担保するために発動条件のようなものを具体的に報告書で場合分けをしていることは適切であると考えておりますい。それぞれに該当する場合、あるいは該当するおそれがある場合、記載にあるとおり、早急に部会に御報告いただいて任意繰入についての議論を行うべきです。
他方、足元では新型株の感染が拡大している中で、2年前には誰もが想定していなかった状況が続いていると理解しております。こうした中、今回は結論が出ませんでしたが、雇用安定資金の累積債務の返済の在り方について、今後の検討課題として取り上げていただいたことには感謝申し上げます。
また、部会長から以前御指摘があったかと思いますけれども、積立金及び雇用安定資金、それから、保険料率の弾力条項の2つによって中期的に収支を均衡させているのが現行の仕組みと理解しておりますいが、それが十分に機能しなくなっているかもしれない可能性を懸念しています。
企業経営を取り巻く環境が急激に変化している中で、制度の持続可能性の担保には国と労使が応分の負担をすることが不可欠であると考えております。費用の負担者を含む3者で構成する、この労政審において今後も現実的な議論を続けていくことは極めて重要ですので、そういったことを皆で共有すべきであると考えておりますい。
以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございました。
ほかに御意見・御質問等はございますでしょうか。大丈夫ですか。
ありがとうございました。
今後の国の責任であるとか、財政運営であるとか、この部会自身の運営の在り方であるとか、そういう様々な御意見をいただいたところでありますけれども、御意見につきましては議事録にしっかりと残させていただきますので、基本的にはこの案で了解をいただけたと認識しております。
それでは、この報告書案について、私と事務局で最終的な内容の確認をした上で取りまとめることとし、後日開催される職業安定分科会へ報告したいと思いますが、それでよろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○守島部会長 ありがとうございます。
非常に長い間取りまとめていただいたわけですけれども、公益委員も含めて、皆様方の精力的な御議論に感謝したいと思います。
今般の制度見直しの方向性は、コロナ禍という状況であるとか、あとは厳しい財政状況の中で当面の雇用のセーフティーネットを守る観点からは評価いたしたいと思います。特に国庫負担につきましても、短期間ではありますが、密度の高い議論を経て、一定の意義のある取りまとめができたのではないかと考えております。
ただし、財政運営の面であるとか、あとは先ほど申し上げたのですけれども、この部会の議論の進め方であるとか、そういう点が拙速であった、もしくは説明が不十分であった等の指摘があったことは事実でございます。事務局は、この点に関して重く受け止めていただきたいと思います。
また、私としては、前回、この場でも申し上げたのですが、例えば雇用面の有事対応の在り方の議論であるとか、雇用保険財政の立て直しの議論など、これから様々な課題が残されていると認識しております。今回の制度改正で終わりではもちろんありませんで、給付と負担の両面から継続的にこの議論を続けていく必要があると認識しております。
以上、申し上げた上で、私としても本報告書を了とさせていただきたいと思います。
皆様方、御協力、非常にありがとうございました。
それでは、事務局は職業安定分科会への報告書案の配付をお願いしたいと思います。
(報告文案表示、配付)
○守島部会長 ただいまお配りいただいた報告文案で職業安定分科会へ報告いたしたいと思いますけれども、それでよろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○守島部会長 ありがとうございます。それでは、そのように報告いたしたいと思います。
ここで田中安定局長より一言御発言があるようですので、よろしくお願いいたします。
○田中安定局長 本日、雇用保険部会報告を取りまとめいただきまして大変ありがとうございました。一言、御礼の御挨拶を申し上げたいと思います。
部会長をはじめ、委員の皆様におかれましては、9月8日から本日まで計13回にわたりまして雇用保険制度について精力的に御議論をいただきました。特に11月、12月は各4回ずつ開催ということで、報告書の取りまとめがさらに越年することになりましたが、例年にない頻度・密度で御議論いただきましたことを深く感謝申し上げます。
この間、部会としての御審議を進めていただくに当たり、事務局として行き届かなかった部分が多々あったと考えております。こうした点に関する、部会長をはじめ、委員の皆様方からの御指摘につきましては事務局として特に重く受け止めていきたいと思いますし、今後の対応にあってしっかりと努力してまいりたいと考えております。
さて、本日、部会報告を取りまとめいただいたわけでございますので、今後、厚生労働省といたしましては、いただいた御報告を基に法案要綱を作成して、改めて労働政策審議会にお諮りをさせていただきたいと考えております。その際には当部会での御審議をよろしくお願いいたします。
また、法案要綱を御了解いただきました際には、各方面の関係者の皆様に法案の内容、趣旨など、その中には保険料負担など、新たに負担をお願いする部分もございますので、きちんと御説明させていただきながら、法案の提出・成立に向けたプロセスを丁寧に進めてまいりたいと考えております。
オミクロン株の感染拡大など、コロナの感染拡大の状況についてはまだまだ不透明で、その経済・雇用に対する影響についても予測し難い状況がある中で、今般御議論いただきました雇用保険制度が雇用のセーフティーネットとして引き続き的確に機能していくことは極めて重要でございます。今後におきましては、雇用保険部会に、財政状況を含めまして、雇用保険の運営状況について適時適切に御報告を行い、御意見を賜り、その御意見を踏まえて効果的な制度運営に努めてまいりたいと考えております。
さらに、今回の議論を通じて様々な課題が御指摘をされております。残された課題についても真摯に取り組んでまいります。
引き続き、御指導をお願い申し上げまして御礼の御挨拶とさせていただきます。誠にありがとうございました。
○守島部会長 ありがとうございました。
それでは、予定されている議題は以上ですので、本日の部会はこれで終了いたしたいと思います。委員の皆様におかれましては、足元の悪い中、お忙しい中、お集まりいただき、どうもありがとうございました。