第21回社会保障審議会統計分科会 生活機能分類専門委員会 議事録

日時

令和3年3月5日(金)13:30~15:00

審議方法

オンライン会議

出席者

<委員(五十音順)>

議題

(1)生活機能分類普及推進検討ワーキンググループの成果報告について
(2)その他

議事

 

○事務局
定刻となりましたので、これより第21回「社会保障審議会統計分科会生活機能分類専門委員会」を開催いたします。
委員の先生方におかれましては、お忙しいところ、ウェブ会議に御出席を賜りまして、誠にありがとうございます。
冒頭進行を務めます、国際分類情報管理室の及川と申します。本日は、どうぞよろしくお願いいたします。
開会に先立ちまして、本日はウェブによる開催ということで、出席状況の確認と御発言の方法の説明をさせていただきます。
スカイプの画面下に、ビデオ、マイクのアイコンがございます。会議中は、ビデオはオンにしてください。万が一、接続が安定しない場合は、オフにしていただくよう、途中で事務局から御案内をさせていただきます。また、マイクは、発言されるとき以外は常時オフ、ミュートの状態にしてください。アイコンをクリックして斜線が出ているとオフになっています。御発言の際は、もう一度マイクをクリックしてオンにしていただいた上で、お名前を名乗っていただき、委員長に御指名いただいてから発言をお願いいたします。発言が終わりましたら「以上です」とおっしゃっていただき、再びマイクをオフにしていただくようお願いいたします。
スカイプには、インスタントメッセージを利用したテキストチャット機能がございますが、御発言の際は、チャットではなく、口頭で御発言いただきますようお願いいたします。なお、インスタントメッセージは、マイクが使用できない場合や不具合を事務局にお知らせいただく場合にのみ御使用いただきますようお願いいたします。
それでは、運営要綱に従い、会の成立状況について御報告いたします。事前に御欠席の連絡をいただいている委員は、七種委員の1名でございます。現時点で委員の3分の1を超える御出席をいただいておりますので、本会議は成立しておりますことを御報告申し上げます。
また、本日は「生活機能分類普及推進検討ワーキンググループ」の成果報告書について御説明いただくため、当ワーキンググループ座長の藤田医科大学・向野先生を参考人として招聘しております。
また、今回、オンラインではありますけれども、久しぶりの、先生方とお顔を会わせる会議となりましたので、前回以降、交代された委員に一言御挨拶をいただこうと思っております。
まず、正立委員、今回初めてのお目見えになります。一言よろしいですか。
 
○正立委員
ありがとうございます。
全国老人クラブ連合会の正立と申します。それぞれの地域には高齢者の自主組織である老人クラブがございますが、本会はその全国組織となっております。
どうぞよろしくお願いいたします。
 
○事務局
ありがとうございます。
それでは、日本医師会・長島委員、よろしくお願いいたします。
 
○長島委員
日本医師会常任理事の長島でございます。情報を担当しております。
私、整形外科医ですけれども、その研修においては、中村耕三先生から御指導いただきました。整形外科というのは、まさに生活機能そのものを扱う分野だと思っております。
それから、今、地域包括ケアシステムというものも極めて重要ですけれども、ここでもまさに生活機能が極めて重要ですけれども、医療本体の効果とか健康医療政策の効果を客観的に、あるいは国際比較してきちんと評価することが重要です。その意味で、このICFというのは極めて重要ではないかと思って、本委員会に極めて期待しております。
よろしくお願い申し上げます。
 
○事務局
ありがとうございました。
次に、本日の会議資料の確認をさせていただきます。事前にお送りしております会議資料を御覧の上、確認をお願いいたします。
まず、議事次第
資料1 生活機能分類普及推進検討ワーキンググループ成果報告書
資料2 2020年WHO-FICネットワーク年次会議(ICF関連)の報告
資料3 第9回厚生労働省ICFシンポジウムの報告
参考資料1 生活機能分類普及推進検討ワーキンググループ活動報告(向野参考人提出資料)
参考資料2 ICFの概念図とコードの概要
参考資料3 ICFに関するこれまでの取り組み
参考資料4 社会保障審議会統計分科会生活機能分類専門委員会運営要綱
参考資料5 生活機能分類普及推進検討ワーキンググループ設置要綱
参考資料6 生活機能分類普及推進検討ワーキンググループ運営要綱
参考資料7 社会保障審議会統計分科会生活機能分類専門委員会委員名簿
参考資料8 生活機能分類普及推進検討ワーキンググループ委員名簿
資料の確認は、以上でございます。
次に、議事に入ります前に、幾つか連絡がございます。
まず、円滑な議事の進行のため、写真撮影等はここまでとさせていただきます。御協力よろしくお願いいたします。
次に、委員会運営について簡単に説明させていただきます。本委員会の運営については、社会保障審議会の運営に準ずること。会議は、原則公開であること。議事録も原則公開されることとなっております。
議事に入らせていただきますので、ここからは中村委員長に議事進行をお願いいたします。
 
○中村委員長
本会の議事に入らせていただきます。今日の議事次第を見ていただきますとお分かりのように、議事は2つでございまして、1つ目は、ワーキンググループの成果報告、これが大部分でありまして、もう一つが、資料2にありますネットワークの年次会議の報告ということになります。
まず、議題1「生活機能分類普及推進検討ワーキンググループ」の令和2年度の活動状況の報告について事務局から説明をお願いします。
 
○事務局
資料1「生活機能分類普及推進検討ワーキンググループ成果報告書」を御覧ください。資料1の7ページを御覧いただきながら、本ワーキンググループの概略を御説明いたします。なお、資料1は誤植がございましたので、後日、修正して差替えをさせていただきます。
7ページ、生活機能分類普及推進検討ワーキンググループについてです。生活機能分類普及推進検討ワーキンググループですけれども、WHOが公表したICD-11において、新たに生活機能評価に関する補助セクション(第V章)を設けたため、平成31年3月に開催されました第19回「社会保障審議会統計分科会生活機能分類専門委員会」において、生活機能のレベルの定量化等の必要な検討について実務者レベルでの具体的な対応が求められたということで設置されたものでございます。
2番、このワーキンググループについてです。初回が令和元年6月で、2年弱活動していただきました。
ワーキングの具体的な審議事項としましては、(1)WHOが刊行するICF資料に関する翻訳案の作成。(2)ICD-11 第V章を国内適用するに当たって、具体的な活用案(フィールドテスト等を含む)の検討。(3)WHOから提案されるICF年次改正案に対する日本からの意見提出案の検討。その他、ということで活動していただきました。
会議は、全部で5回開催をしております。
構成員ですけれども、次の8ページにございます。こちらの先生方に活動していただきまして、今回報告書をまとめていただいたというところです。座長は向野先生で、本日参考人として御参加いただいております。
報告書の構成としましては、表紙の次のページに目次がございます。ワーキンググループの目的、活動内容について、今後の方向性という構成でございます。具体的な内容につきましては、本日出席いただいているワーキングの向野座長より説明をお願いしたいと思っておりますので、向野座長、よろしくお願いいたします。
 
○向野参考人
生活機能分類普及推進検討ワーキンググループの座長を務めました向野でございます。
資料1の報告書の内容について、私のほうで、御覧いただきやすいようにスライドを作成いたしましたので、これを用いまして説明いたします。スライドの内容は、参考資料1として参考資料のほうに掲載していただいております。それでは、よろしくお願いいたします。
本日は、本ワーキンググループの2年間の活動について御報告させていただきます。
生活機能分類普及推進検討ワーキンググループは、ICF、そしてICD-11 第V章の国内適用を推進するための基礎をつくるというミッションをもちまして、2019年4月から2年間のワーキンググループとしてつくられました。そして、この2年間、ICFのアップデート対応、それから翻訳といった仕事に加えまして、ICD-11 第V章の国内適用のための仕組みをつくっていくという仕事に取り組んでまいりました。
具体的には、WHOが公表するICF関係資料の翻訳案の作成、ICD-11 第V章やICF2020年の翻訳案、そしてICD-11 第V章の具体的な活用案を作成するということをテーマとして掲げまして、ICD-11 第V章の項目一つ一つにきちんと評価ツールを準備していく。そして、既存のスケールと情報の互換性を確保するための仕組みをつくっていくということを中心に取り組んでまいりました。
まず、WHOが公表するICF関係資料の翻訳案作成について、最初に御紹介いたします。
ICD-11に生活機能評価に関する補助セクションの第V章がつくられました。これは、ICFをベースとしておりまして、生活機能評価に関する情報を記載できるコードがつくられたものですけれども、この項目群に対し、日本語の仮訳を作成いたしました。こちらについては、先日、ICF専門委員会において御承認をいただいたものでございます。
また、ICF本体については、2001年の公表以降、毎年のようにアップデートが行われてきましたけれども、ICF2020として改訂版が出されることとなりまして、WHO協力センター会議のほうでは、この2年間、かなり集中的にアップデート対応が行われております。このアップデート対応に構成員が協力するとともに、ICF2020としてまとまった日本語版を作成するために、仮訳案作成の対応も行ってまいりました。こちらについては、WHOのほうで翻訳と公表に関する指針が出次第のことになりますけれども、公表に向けた専門委員会での御検討のプロセスなどに進めていただく予定となっております。
翻訳の仕事も、ボリュームとしてかなり大きな割合を占めておりましたけれども、我々の大きな課題としては、ICD-11 第V章の具体的な活用案を作成するということも1つ大きなテーマでございました。第V章というのは、2018年に公表されたICD-11で新設されたものですけれども、生活機能評価に関する補助セクションでして、基本的にはICFに準じておりまして、ICDを使って、疾病の情報だけでなく、生活機能の情報をコードできるものであります。我々は、この第V章を足がかりにして、生活機能分類の普及を推進する基礎をつくるというところを目標に取り組んでまいりました。
この第V章ですけれども、全体が3つの部分から構成されております。WHODAS2.0に基づく項目、それからモデル障害調査(MDS)に基づく項目、それから一般的機能の構成要素と、3つございます。
それぞれ簡単に御説明しますと、WHODAS2.0と言いますのは、WHOがつくった生活機能の質問紙でございまして、日本語ではWHO障害評価面接基準と訳されております。WHOにより開発された、健康と障害を測定する標準化スケールでございます。36項目の質問紙で、面接版、自己記入版、代理人記入版というバージョンがあります。
それから、モデル障害調査というのはMDSとも訳されておりますけれども、WHOと世界銀行により開発された、障害データ収集のための質問紙であります。もともとは200項目以上のかなり大きな質問紙ですけれども、そこから8項目が抜粋されております。
そして、一般的機能の構成要素は、ちょっと耳慣れない言葉ですけれども、ICF本体に基づく項目群であります。これは、ICFの主要な領域をカバーするように採用された項目群でありまして、ICFの本に付録9として、ICFデータの要件というものが載っているのですけれども、それを基本にした項目群ということになっております。
このようにICD-11 第V章というものがあるわけですけれども、この3つの部分の中で、WHODAS2.0とモデル障害調査(MDS)に基づくものについては、質問紙に基づくものですので、当然、項目に質問文がひもづいております。そのため、WHODAS2.0及びMDSに関連する項目につきましては、ICD-11が掲載されているICD-11ブラウザというものがありますけれども、そのウェブサイトに説明として質問文が既に記載してあります。この質問群について日本語訳をワーキンググループで作成いたしました。それによりまして、WHODAS2.0及びMDSに関連する項目については、全ての項目に日本語の質問文が作成されました。
また、ICD-11 第V章のうち、一般的機能の構成要素の項目群につきましては、ICFに基づいておりますので、ICFの評価点という仕組みを使えば、医療者による評価の仕組みとして活用が可能な形となっています。しかし、このICFの評価点というのは、これまでも具体的なガイドがなく、つけにくい。あるいは、評価者間の信頼性が低いといったことが指摘されてきました。そこで、実際に臨床に適用していくためには、特にこの一般的機能の構成要素の項目群のために、臨床使用に適した信頼性の高い採点ツールを用意することも必要であろうということで、ワーキンググループでは、この点についても採点ツールの準備を進めてまいりました。
この評価点の問題は、ICFが臨床に普及していない原因とも関連しますけれども、要因として幾つかの問題が指摘されております。主なものとしては、分類項目のタイトルや定義が分かりにくい。先ほどお話ししたような信頼性が低いという問題。そして、競合する既存のスケールの存在、教育環境の不足といったことがございます。ワーキンググループとしては、これらの解決のために幾つかの取組を行ってきましたので、御紹介いたします。
まず、ICFは、項目のタイトルや定義の言い回しが分かりにくく、直感的でないという指摘が公表のときからございました。それに対して、簡潔で直感的な説明文の作成というものを実施いたしました。この簡潔で直感的な説明文といいますのは、国際リハビリテーション医学会などにおいて、ICFの項目や定義に分かりにくいものが多々あるという状況から、臨床家に分かりやすい説明文を言語ごとにつくっていこうという取組がございまして、その中で作成されてきたものであります。ICFの一般セット(30項目版)というICFのコアセット、つまりICFの抜粋版がありまして、これに対して説明文をつくるということが様々な国で行われてきたのですけれども、日本においても2016年にこれが作成されました。
このコアセットの項目、一般セットの項目は、ほとんどICD-11 第V章の一般的機能の構成要素に含まれておりますので、ワーキンググループにおいて、さらに18項目の説明文を追加することで、一般的機能の構成要素の項目全てに説明文を作成するということで取り組みまして、これは2020年1月8日にコンセンサスミーティングを開催いたしまして、全ての項目について説明文を作成いたしました。
また、ICFの評価点には、しっかりした基準やガイドがなくて信頼性が低いという問題が指摘されております。これに対しては、ワーキンググループで採点用リファレンスガイドを作成いたしました。先ほどの簡潔で直感的な説明文と同様に、厚生労働科学研究の研究班において、ICF一般セット(30項目版)に対して採点用リファレンスガイドを作成した仕事がございましたので、それに追加する形で作成いたしました。
作成プロセスとしては、複数の評価者が採点を行った際の施行プロセスについて詳細なインタビューを行い、その結果を分析してディスカッションしていくということで、このディスカッションのフェーズについてワーキンググループのほうで実施いたしましてガイドを作成していくというプロセスをとりました。
このガイドを使いまして、検者間信頼性、つまり異なる評価者が採点した場合に評価が一致するかどうかという検証をフィールドテストとして行っておりまして、ほとんどの項目で重み付けκ(カッパ)係数が0.6以上という結果だったのですけれども、これは、現在臨床で使われている評価スケールとおおむね同等の結果となっておりまして、臨床の使用に堪え得るものと判断しております。
また、教育環境が不足している問題につきましては、ICF/ICD-11 第V章の基礎知識についての教育資料などの作成を行ってまいりました。また、簡単に採点可能となるように、アプリケーションの作成にも取り組みました。
WHO-FIC協力センター会議の教育委員会が作成しておりますICF e-learning toolというものがありますけれども、こちらについても翻訳の準備に取り組みました。まだ翻訳権の整理がされていないということで、正式な翻訳プロセスの柱は固まっていたのですけれども、仮訳までは、日本診療情報管理学会の御協力も得て進めておりまして、日本語訳を作成していく準備まで実施しております。今後、このような資料を充実させ、さらに実際の評価点の使用に役立つ教育資料作成に向けた取組を行っていくことも重要であるという考えで、ワーキンググループ内でも一致しております。
このようなツールの作成を実施した上で、実際に病院における調査にどのように使用できるのかということを検討する目的で、フィールドテストを実施いたしました。フィールドテストには、20病院927名の患者さんが参加してくださいましたけれども、入院でリハビリテーションを実施している患者さんを対象として実施しております。
今回作成したICD-11 第V章の採点リファレンスガイドと翻訳した質問文を使用して、評価を実施いたしております。比較のために、生活機能の評価スケールとしてよく使われているFunctional Independence Measure(FIM)ですけれども、こちらのデータも収集いたしました。全体の疾患の構成としては、リハビリテーションの対象患者ですので、神経疾患と外傷が大きな役割を占めるという構成でありました。また、全体の8割程度は回復期リハビリテーション病棟の患者さんでございました。
入院患者の生活機能プロファイルの全体をお示しいたします。左側、今回翻訳した質問紙を用いた評価、右が今回採点リファレンスガイドを用いて実施した評価の結果となります。1本1本のグラフの一番左の濃い青の部分が、問題なしと評価された患者の割合になりますけれども、問題なしの評価が多数を占めるような項目はほとんどございませんで、ICD-11 第V章の項目は多岐にわたる生活機能の項目を含んでおりますけれども、我々がふだん評価している歩行や着替えといった項目だけでなくて、多くの患者が生活機能に関して多様な問題を抱えているということが、ここから分かります。
例えば「活力及び欲動の機能」、いわゆるモチベーションの項目や「基礎的学習」、対人関係やレクリエーションなど、様々な項目で問題があるということが分かります。
また、入院中の評価では欠損値が多い項目も幾つかございまして、例えば仕事や家事に関する項目があるのですけれども、これらの項目の入院中の評価をどうするかということに関しては、またさらに検討が必要ではないかと判断しております。評価表としても、既存の生活機能評価のスケールとの比較において高い相関を認めておりまして、生活機能の評価表としての妥当性を有していることは確認されております。
ちなみに、今回、質問文にひもづいている項目と、一般的機能の構成要素のICFに基づく項目では、項目のオーバーラップはございます。こちらを比較いたしますと、採点リファレンスガイドに従って評価した場合には、「問題なし」としている割合が、質問紙による患者の主観的な評価よりも多い傾向がありました。もちろん、評価内容が少し違うのですけれども、客観評価で患者の問題を拾い切れていないということも言える可能性がありますので、主観的な評価を取り入れることも含めて、今後普及の上で考慮すべきポイントの一つであろうと考えております。
それから、ICD-11 第V章は、疾患分類とともに使うことが想定されているものですので、参考として疾患による生活機能プロファイルの違いについても、少しお示ししております。例えば、くも膜下出血と大腿骨頚部骨折の2つの病気の患者のプロファイルの違いを見てみますと「注意機能」や「記憶機能」といった項目がくも膜下出血では問題になっていることが非常に多いのに対しまして、大腿骨頚部骨折では、痛みや筋力などで問題が起こっていることが多いというのが見て取れます。
一方で、「活動と参加」については、くも膜下出血のほうでより問題が深刻である傾向があります。特に、問題解決や学習といった認知機能に関連する項目や対人関係などで多くの問題があるという傾向が見られております。さらに、「完全な問題」というカテゴリーに分類される非常に重度の問題の割合は、くも膜下出血で非常に多いということが分かります。
このように疾患の特性を生活機能のプロファイルから見るというのは、ある疾患が患者さんにとってどういう疾患であるのかということを、より深く理解するのにつながりますので、疾病統計においても今後重要な要素となってくるのではないかと考えております。
ワーキンググループの仕事としては、このように評価の仕組みを一旦つくり上げ、疾患ごとに生活機能のプロファイルの違いを見ることができるというところまでたどり着きました。
さらに、評価の仕組みをつくるだけではなくて、既存のスケールの情報をICFに集約していくための仕組みづくりについても取り組みました。既存のスケールをICFの項目にひもづけするためのlinking ruleというものが既に作成されております。これは、現在臨床で使われている臨床スケールの項目ごとに、それがICFのどの項目に相当するのかというのをひもづけするのがリンキングと言っているわけですけれども、そのためのlinking ruleというものが発表されているわけです。
内容を見てみますと、例えばスライドに挙げておりますけれども、1番目の項目は、十分な知識を身につけておかなければならない。2番目は、最も正確なICFの項目にひもづけされていなければならないといったように、かなり基本的な原則を述べるにとどまっているものでございまして、さらに我々としては、もう少し具体的なルールが必要だろうと考えまして、より情報の互換性を考えたときに、既存のスケールがどの項目に対応するかを決めるにはどうしていくべきかという議論をいたしまして、具体的なルール案と実例を作成いたしました。これは、今後、点数換算の手法を併せて開発することでデータを統合することに役立てられると期待されます。
今後の展開ですけれども、一旦全ての項目についてツールをつくりましたけれども、ICD-11 第V章はまだ項目がかなり多いです。全体で60項目以上ありますので、今後はこの評価ツールが実際に臨床現場で広く使用されていくために、実用的な簡易な項目セットの準備や、実際の活用に対しての既存の評価スケールとの互換的な仕組みの構築など、より具体的な活用に向けた取組が必要になると考えられます。
また、実際に活用するときに利用できる教育ツールの充実や、専門職の教育プログラムへの導入、ICD-11の他章との併用による疾病統計への応用方法の検討なども必要となるかと思います。その上で、ICD-11 第V章の臨床現場での活用方法を参考に、ICFが統計のための分類ツールとして多方面で活用される手法を検討していく必要があると、報告書のほうで結論いたしております。
2年間のワーキンググループの活動では、ICD-11 第V章の活用に向けた具体的な仕組みをつくっていくということで、短期間に多くの課題に取り組んでまいりましたけれども、ワーキンググループの委員の先生方が積極的に取り組んでくださった結果、ICD-11 第V章の実際の活用が見える段階まで何とかたどり着くことができました。ワーキンググループは終了いたしますけれども、ぜひこの仕事を次のステップに役立てていただきたいと考えております。
御清聴ありがとうございました。
 
○中村委員長
どうもありがとうございました。
ただいま向野ワーキンググループ座長から御説明がありましたとおりですが、この2年間のワーキンググループの大変な活動は本当にすばらしいと思います。皆さんもそう思われたと思います。
ICD-11 第V章の具体的な活用案や、ICFのアップデート対応、それからICF2020の仮訳案の作成など、項目としてはそれぞれあるわけですが、具体的な作業の実施から、信頼性の検証、そして実用に向けて、例えば客観的な尺度の限界と主観的尺度の必要性や、疾患によるプロファイルの違いなど、説明をいただきました。具体的な検証まで実施されており、次の段階が少し見えたという印象を私は強く持ちました。
この御報告を受けて、御質問、御意見がありましたら、ぜひお願いしたいと思います。
出江先生が専門委員でもあられ、このワーキンググループの一員としても御活躍いただきました。出江先生、口火を切っていただけますか。
 
○出江委員
向野先生、本当にお疲れさまでした。これについては、言うことはないです。本当にありがとうございました。今後の展望というところで、最後に1枚書いてくださいましたように、いよいよこれを臨床の場で使う段階なのだと思っています。
私が担当したのは、ワーキンググループの中でも教育ツール班でございまして、これも向野先生の直感的で分かりやすい説明文ですとか、評価項目の整理、信頼性・妥当性の検討などを経て、いよいよエビデンスを持って教えられるものになったというところに来ました。教育ということになりますと、いかにこれを実際の人たちに教えるかということになりますので、教え方も含めたシステムがつくられていくことになるのだと思います。それを経て、今度は臨床でということになっていきますけれども、その辺りの時間的なスケジュール感とか進め方、段取りについての先生のお考えがあれば教えてください。
 
○中村委員長
向野先生、お願いします。
 
○向野参考人
実際にこれを実用していく上においては、教育のプロセスが必要不可欠でありますので、この教育の仕組みについては、早急に、できるだけ早くつくっていく必要があると考えています。今回、報告書や今日の発表では載せられませんでしたけれども、これまでの私が関わってきた厚生労働科学研究の取組も含めまして、教育ツール、例えば採点の練習方法であるとか、そういったところについても、基礎的な検討というか、練習の学習ツールの作成などに少し取り組んできた仕事もございます。
今後はそういったものも活用しながら、また様々な国内・海外の取組を含めた検討もしながら、教育ツールをつくって、それと一緒に普及していくというのは、この1年2年、やっていくべきだと考えておりますので、引き続き、これは関係する先生方と一緒に取り組んでいきたい課題だと考えております。
 
○出江委員
どうもありがとうございます。
2年後、私が日本リハビリテーション医学会を主催しますときには、ぜひこの話題を成果という形で出せればと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
 
○向野参考人
ありがとうございます。
 
○中村委員長
ありがとうございます。
この既存の評価スケールとの互換性などは、委員長代理の才藤先生のリハビリテーション医学会との提携も含めまして、リハビリテーションはこういうふうにやるのだということを言われたとき、私も大変感動したことを今でも覚えておりますが、才藤先生、2年間のこのワーキンググループの今日の報告を聞かれて、いかがでしょうか。
 
○才藤委員
中村先生、ありがとうございます。お褒めいただき光栄です。
向野先生達が非常にすばらしい仕事をしたのは、誰もが認めることだと思います。
もう一つ、時期がよかった。というのはなぜかというと、ICDにICFを組み込む時期がもうちょっと後ですと、その後がわからないので動きにくかった。もっと前であれば他のことで間に合ってしまったかもしれないという意味です。ちょうど旬な時期にこの素晴らしい組み込み作業が始まったという意味で、ICFに関する一番いい時期に向野先生達の仕事が動き出したのだと思います。
今後のテーマとしては、例えばDPC病院などにはICDがひもづいているわけで、同じようなICFの仕組みをどうやって入れ込み、しかも、医療現場から余り非難されないものができるか、つまり、記録する人の多大な努力を犠牲に、見る研究者の楽しみが生まれるというものではなく、評価の手間という一番のコストを払う現場の人たちにとって喜びになるものを生み出すからくりをどうやって作るかが課題です。ただ、幸いなことに、本件は厚生労働省が主宰している話ですし、さらに言えば、WHOの後押ししている話なので、非常におもしろいところに来たと思います。具体的にそこまで見通せるようにしてくれた向野先生達の仕事に感謝します。
これからは、DPCの中でICFをどううまく組み込むかというからくり作りが重要になります。その際、さっき話のあったlinking ruleは良い考え方です。具体的に言えば、DPC病院では看護必要度をつけています。ICFとこれとのlinking ruleを作る。あるいは、回復期リハビリテーション病棟はDPC対象ではないですけれども、この施設基準に、ICF項目を直接入れ込む。加えて既存項目とのlinkageも眺める。そして、そこで得られた実際のデータ(疾患、ICF項目、ICF linkage項目)を元に、各項目と原疾患との関係性を振り返って、ICDとICFの関係の概略が見えてくれば、今度はその考え方を基に、DPC病院でのICF項目選択(あるいはlinkage-calculated ICF)を具体化できます。そこまで来たら世界に冠たる日本のICFになるでしょう。
皆さん、思い出してほしいのですけれども、なぜICFができたかというと、まず、国際比較のためです。例えば、ある国の障害者はすごく多いけれども、ある国は非常に少ない。しかし、それは実態とは思えず、用語の定義やスケールの問題だ、というところから始まったはずです。ですから、日本で大きなボリュームを占める病院群で、疾患と生活機能の分布やその関係性はこの程度ですよと言えれば、その基準を用いて、ほかの国でも同じことが言える。そうすると、国を超えて、あるいは国の特徴として、疾患と生活機能の包括的な理解が進み、健康生活への対処が精緻化できる。その大きな一歩が始まったのであり、また、この時期しかないよいタイミングだったのではないかと思います。
そういう意味で、もちろん向野先生達が優秀でよく働いたのですけれども、この時期にこの仕事が厚生労働省の主導で始まったというのは、非常にありがたかった。これが率直な感想でございます。
 
○中村委員長
才藤先生、どうもありがとうございます。今後の方向についても語っていただきました。
本当にそうですね。この専門委員会で互換性という話が出ているときに、ICD-11 第V章という話がほぼ同時に出たというのはすごいですね。世の中が動くときというのは、こういうものかなという気がします。本当にありがとうございます。
 
○才藤委員
本当にそう思います。ありがとうございます。
 
○中村委員長
それで、これをやっていくときに、今、才藤先生が言われましたけれども、点数をつける側から見てどうかという話が、日本医師会の委員の先生からも盛んに言われておりました。長島先生、いきなり出られて大変恐縮ではありますけれども、何か御感想だけでもございましたら、お話いただいてもよろしいでしょうか。
 
○長島委員
まず、この大きな意義としては、国際比較が可能になるということと、今後医療・介護のビッグデータとして集積したときに、特にAIにとって使いものになる、質の高い客観的なデータが集められるというのは、極めて意義が大きいと思います。一方、今後普及のために最も重要になるのは、既存の評価スケールとの互換性がきちんと担保されているということと、現実的に可能になるということかと思います。既存のものが、例えば診療報酬とか介護報酬の評価の中に組み込まれているということもありますし、いろいろな行政上の過去のデータの中に蓄積されているということがあるので、これと互換性があるということがしっかり担保されないと、これを使ってくれないだろうと思います。
そういう意味では、過渡期において両方をしっかりやって、それできちんと互換性があるということを証明していくということが極めて重要になるだろうと思います。そういう意味では、今後ますます御負担が増えるかと思いますが、ぜひよろしくお願い申し上げます。
 
○中村委員長
長島先生、急に振りまして申し訳ありません。前の石川先生も、そのことはしっかりお話しになっておられましたので、引き続き日本医師会の常任理事として、また御協力、御意見等を賜れれば大変ありがたいと思っております。

○中村委員長
国立社会保障・人口問題研究所の副所長でいらっしゃいます林先生、どうぞよろしくお願いします。
 
○林委員
向野先生、お疲れさまでした。いろいろな話が進んだなと思います。
まず、細かい点からの確認ですけれども、ワーキンググループのこの資料の中に名簿が2つ、最初と最後にあるのですけれども、これは何か違うのかどうか、事務局のほうにお伺いしたいということが1点と。
あと、本日、委員以外の参加というのがあるのかどうか、こちらからは見えませんので、そのことについて確認を。
 
○事務局
傍聴は、この部屋の中で、報道関係者で登録された方が入っております。
それから、資料1は、報告書の中についている名簿ということでして、参考資料8のほうは、この会議の資料としてつけているものでございます。
 
○林委員
時点が違うとか、そういうことではないということですね。
 
○事務局
報告書としてあるものと、会議資料としてあるものということでございます。
 
○林委員
分かりました。
ということは事前の話で、資料の報告、ワーキンググループの成果ということなのですけれども、プロファイルという言葉がまさにぴったりと来るような、単純に障害か、そうじゃないかを分けるという形では、もうICFは使わないのかなということ、今回プロファイルとして使うことで非常に価値があるなと思わされました。
と申しますのは、2年前の年度に内閣府のほうで障害統計というものを定義して、基幹統計に入れようということで、ワシントングループと欧州統計局とWHODASと日本の手帳の保持ということで調査して、どれにしようかということをいろいろ検討した結果、結局、今後の基幹統計にワシントングループなりユーロスタット型のものが入っていくということがだんだん決まりつつあるようです。そのときにWHODASを使うと、ここが障害か、そうでないかの切り口はない、ということで、質問数が限られる世帯調査とかだとなかなか使うことが難しいねという話にはなったところです。
ただ、そういうところで、今のプロファイルの結果、プロファイルの総合得点何点以上とか、障害の定義にもしつながるのであれば、今のところの見通しとか知見とか御意見みたいなものがあればお伺いしたいということが1点。
それから、診療報酬にどのようにつなげていくかという質問をしたかったのですが、それは才藤先生のほうで、特にリハビリテーション病院の評価などにこれはすぐに使えるのかなという形で、これも非常に楽しみだなと思いました。
それから、向野先生の最後のスライドにありました、疾病統計へ応用していくということは非常に興味深いなと思います。例えば、どういう疾病統計に使っていくかということですけれども、今ですと、患者調査とか国民生活基礎調査の診断された病名とか、それを項目から選ぶようになっているところを、もっと違う統計の枠組みで、例えばブラウザで選んでいってとか、そうしたシステムの開発を、このICFを取り込んだ上でできていけたらおもしろいと思います。
これは、まだまだふわっとしたアイデアだと思いますけれども、そういう方向に進んでいけたらいいなと思うと、このICF、もしくは文章のブラウザ、これは英語版と6か国版はできていますけれども、せっかくつくられたものをぜひ日本語版、日本国内のということでやってもいいし、WHOのウェブページにつなぐという形で入れていったらどうかなと思いました。
 
○中村委員長
どうもありがとうございました。
向野先生、何かコメント、あるいは才藤先生、今の林先生のほうからの御発言に何か御意見等ありましたら、お願いします。
 
○向野参考人
特に生活のプロファイルが重要ということは、私も今回、非常に実感したところでございまして、こういったものがあれば、それぞれの疾患とか属性、セグメントにおいて、どういうことが実際上の問題になってきているのかということがきれいに見えてきますので、それを見えるようにしていくことが非常に大事だと思いました。ただ、恐らく林先生が参加されたところでも議論になった話で、できるだけシンプルに情報を集めていかないといけないというところもあるかと思いますので、それを両立させるようなシンプルな仕組みをつくっていくというのが次の大きな課題ではないかと考えております。
今、その点については幾つか検討しているところですけれども、セグメントごとに簡単なそのプロファイルの特徴を捉えた項目セットをつくっていくとか、共通のものとして非常にシンプルなものを置くとか、階層のある仕組みをつくっていく必要があるのではないかなと考えているところでございます。それを総合得点として相互比較可能にしていくというところも大事だと思いますけれども、それに関しては、今、点数化できるところまで来ましたので、ここからそこに進んでいけるのではないかと考えております。
 
○中村委員長
ありがとうございます。
才藤先生、お願いします。
 
○才藤委員
今、向野先生が言ったことと近いのですけれども、林委員のコメントは非常にポイントを突いていると思いました。要は、統計というのは基本的には外挿の科学ですね。小を見て大を説明するというか、そういう話になるので、細かいデータをある程度のグループで取っておけば、そして、それを基準にして相関が高い項目を選ぶことができれば、因果関係は別として、全体像が見えてくる。今回、この行ったり来たりの過程が始まったと認識しています。その意味では、明瞭な前進の起こる1日前ぐらいの感じが今だと感じています。林先生が知りたい情報はこれからどんどん出てくると思います。ぜひ期待してください。
 
○中村委員長
ありがとうございます。
リハビリテーションセンターの研究をしておられます井上先生、コメントをいただけませんか。よろしくお願いします。
 
○井上委員
すばらしい成果を見せていただきまして、本当にありがとうございました。
私は、福祉用具を専門でやっていますので、福祉用具の効果とか有効性というものをはかろうとしたときに、FIMとか既存のものだと粗過ぎて、全体に反映するような評価がなかなか出てこなかったというのは常々思っているところであります。かといって、ICFを全部取るのは大変だということで、今回のV章は、非常に重要なポイントが集められて、障害のある方々の生活機能の評価がしっかりできるというところは、すごく理解できました。
福祉用具の中で、今度、向野先生にも御協力いただこうと思っているところでありますし、その中で活用していくというところを私としてもぜひ進めていきたいと思いますし、またいろいろ御助力いただければというところがあります。
もう一つ、福祉用具でこういった評価をやろうと思ったときに、利用者の方の生活場面が変わっていくと思うのですね。病院から、例えば施設に行って、在宅に変わっていく。そうなったときに、今度、これをつける人、評価する人というのも、それに伴って変わっていくのではないかということが想像できるのですけれども、その辺り、どういう形でこれを実装していこうと思っているところでの課題とは思いますが、何か向野先生のほうからコメントありましたら、お願いできればと思います。
 
○中村委員長
向野先生、お願いします。
 
○向野参考人
ICFの概念図には環境因子が入っておりますけれども、特にこの生活機能というのは環境によって非常に影響を大きく受けるというところは大事なところでございますので、それを組合せで評価していくということは、1つ重要な点かなと考えています。実際に環境因子ありきでできることとできないことというのも決まってきますし、それが環境にミスマッチがあると、そこで生活はできないけれども、きちんとマッチした環境があれば生活できるということで、1つは、環境因子ありなしでやっているかどうかという情報を集めるということと、それがマッチしているかどうかという評価も併せて取っていくというのが大事になるのではないかなと考えております。
今までも少しそういう取組はトライアルとして、点数に依存している環境因子の情報をくっつけるというのを考えておりますけれども、そういったことと併せて検討していく必要があるかなと考えています。
あとは、場所が変わっていくと評価する人も変わっていきます。今回、リハビリテーションをやっている患者さんということで、ふだんの生活機能をかなり間近で見ている理学療法士とか作業療法士が中心に評価を行っておりますので、細かい評価ができた面もあると思うのですけれども、これが、評価者が例えば介護をされている方でたくさんの利用者さんを見ているみたいな話になってきますと、どうしてもそれはシンプルに評価していかないといけないというところもあると思いますので、シンプルにはするけれども、下位互換のような形になっていて情報の移行ができるような仕組みをつくっていくということが大事になっていくのではないかと考えております。
 
○井上委員
福祉用具の評価のところは、以前、この委員会でも発言させていただいたかと思うのですけれども、環境因子の関係というものを評価点の中に入れてしまうと非常に分かりにくくなるので、福祉用具が介入したときに生活機能がどうなっているのか、介入していないときにどうなっているのかという、そういう形で、今回のものも、移動のところだけ、たしか用具が項目で入っています。
むしろそこは除外した上で生活機能ということを点数化できると、介入によってどう変わったかということが客観的に見られるかなと思っていますので、その辺も向野先生、いろいろ御協力いただいて進めていければと思っておりますので、ぜひよろしくお願いいたします。
 
○中村委員長
井上先生、どうもありがとうございました。
藤田先生、よろしくお願いします。
 
○藤田委員
診療情報管理学会から来ているので、ICFを広めるときに、それをコーディングしていくのはどういう職が担うのかというのは非常に興味深いです。理学療法士の方が中心にやるとすごく精度がよくて、きれいなデータになるのですけれども、一般的に広めるためには、病院ならナースの方々がやるのですが、介護の方々も参加されて、活動と参加で自身のことをやるのだったら、患者さんや患者になる前の在宅の状態の介護保険を受けられる御本人自体が評価者になっていくのかなと考えました。
先ほどのICFもしくはICD-11 第V章が活用されるインセンティブとかからくりについては、ICDはDPCがかなり成功しているのですけれども、ICFは地域包括というところが鍵になるかなと思います。
ICFは国際比較のための共通言語ですけれども、病院から出て、病院・施設・在宅をつなぐための共通言語にも成り得ます。私の所属する施設は神経難病の方が多くて、転院とか在宅に行くときに生活機能についてどういうことが問題になるかというのを、主に文章でいろいろ表しているのですけれども、施設によって表現の仕方がすごく違うので、そちらに普遍的な評価があると非常に助かると思います。ICFをぜひ広めていただきたいので、とても期待しているところです。
あと、評価項目の中で、活動と参加など、認知症の進展にも関係しているような項目で、積極性などを評価する項目と内容が似ているところがあるので、疾病を発症して病院にかかる前に、介護保険の更新の際にこういう評価の項目があると、こういう数値が低い人は認知症の危険があるので改善しようとか、そういうところも介入できるようになっていくと思い、今後もすごく活躍が期待できるツールだと思いました。ICFの今後の可能性について本日のご報告を拝聴できてとても感動しています。今後もよろしくお願いします。
 
○橋本委員
向野先生をはじめ、ワーキンググループの先生、本当にお疲れさまです。すばらしいお仕事で、本当にありがとうございます。
向野先生、教えてください。回復期では、本当にすぐにでも使用を始めてもいいかなという思いもあるのですけれども、今、現実には診療報酬対応でFIMとかバーセルインデックスが使われると思いますけれども、これに代わる指標として何か具体的にお考えがあるのかどうかというのが1点と。
あと、私は今、小児に主に関わっていますので、子供から高齢者までの評価は相当異なると思うので、その辺り、ライフステージにとって連続性に関してどうお考えか、この2点、ぜひ教えていただければ幸いです。
 
○向野参考人
まず、診療報酬に関わるところですけれども、目標としてはFIMやバーセルに代わるものをつくっていけるということが重要かなとは考えております。ただ、今、FIM、バーセルが広く使われている現状ですので、まずはFIMやバーセルから、介護間のような形で情報が集められる仕組みをつくりつつ、簡単なデータセットをつくりつつ、それに追加して、今、ICF一般セット(30項目版)といったものもございますけれども、そういったものを見ながら、日本での臨床に適した項目のセットというものを改めて用意していくということ。ですので、簡易なものと、少しバリエーションのあるものと二段構えで用意していくことがいいのではないかと考えています。その上で、診療報酬の中にも何とか入れていけるようになるといいなというのが現在の私の考えです。
それから、ライフステージに関してですけれども、今は対象が成人・高齢者に偏っておりますけれども、小児の患者さんの、ここをどういうふうに評価していくかというところは、まだ我々が見られていないところですので、今後、それについてもきちんと評価して方法を考えていかないといけないと思っております。その際に、先生のアドバイスもいただけたらと思っております。
 
○橋本委員
承知しました。どうもありがとうございます。
 
○中村委員長
ここではワーキンググループの御報告を受けて、大変活発な御意見をいただきまして、ありがとうございました。今後に生かせるようにと切に願っているところでございます。
それでは、議題2「その他」に移りたいと思います。事務局のほうから御説明をお願いします。
 
○事務局
それでは、資料2を御覧ください。「2020年WHO-FICネットワーク年次会議(ICF関連)の報告」でございます。
開催期間といたしましては、2020年10月19日から23日、オンラインの開催となりました。いつもは対面ですが、今回はオンラインで行いました。
主な議論でございます。CSAC、ICFに関する分類の項目を決議する委員会で、12項目の改正提案が出されておりまして、あらかじめ投票を行うのですけれども、その時点で、全員一致で2項目が採択、3項目が否決、そして2項目は継続審議となりまして、この1週間の会議では、以下に書いております3項目の議論がされました。
例えば、ID357は、b810「皮膚の保護機能について」ということで、impairment(機能障害)の記載をInclusion(含まれるもの)から削除して注記とする提案です。これは、経緯といたしましては、ICFは生活機能全般を見るもので、障害の状態をあえて残さないようにしようということから、全体としまして、impairmentの表現を取り除く作業をしているようでございます。
次に、e110「個人消費用の製品や物質」、これは英語のニュアンスの問題で、ingestionの記述について、“摂取する”というニュアンスとしてconsumptionに修正されました。併せて、DrugsがMedicationsに修正されました。
ID427、分類項目のタイトルに動名詞を使用するという提案がなされておりまして、修正されました。
次に、FDRG(生活機能分類グループ)の議長選挙が行われて、次期議長にデンマークの方とイタリアの方が選出されています。
WHO-FICのアップデートということですけれども、先ほどから向野先生の説明にもありましたけれども、ICD-11は、ICDだけではなく、ICF、ICHIといったものも共通して使用しようということでWHOは改訂作業をしております。ICFも意見の提案をICDと同じようなプラットフォームでやっていく、翻訳も同じプラットフォームで入れていこうということで、作業が進められているところであります。
3.ICF Use Case。各国が、どのようなことでICFを使っているかということが、FDRGでは最大の関心事でありまして、WHODASを資格認定に利用している国として、台湾とセネガルの事例が紹介されておりました。
ICFのアップデートに関しましては、現在、ICF-CYの項目をICF本体に統合する作業を行っておりました。そして、先ほども申し上げましたけれども、項目名の動名詞化、例えばplayをplayingにするという話。Impairmentの例示をどんどん削除していこうという動きになっております。
次回の会議は、WHO-FICになると思いますけれども、2021年10月18日から23日を予定しているということでございました。
続きまして、資料3を御覧ください。第9回厚生労働省ICFシンポジウムの報告をさせていただきます。
例年開催しておりまして、今回、第9回になりました。今まで対面で行っておりましたけれども、コロナ感染防止の観点からオンラインの開催といたしました。事前登録で約240名の登録をいただきまして、当日、ほぼ200名の定員に近い方に御視聴いただきました。
プログラムですが、才藤委員に基調講演をお願いしました。本日御出席いただいている向野参考人、そして山田先生に御講演をいただきました。出江委員には、モデレーターとしてシンポジウムの進行をしていただきました。
ポスター紹介ですけれども、今年は5題のテーマを募集いたしました。(1)「ICFの統計的活用事例」(2)「ICFを用いた評価」(3)「ICFの教育への活用」(4)「ICFの概念を用いた研究」(5)「ICFに関わる実践紹介」。これに対しまして、合計6題の応募がございました。井上委員も御発表いただきました。今回は、例年の1枚紙ではなく、パワーポイントを使用しまして事前に録画していただいたものを配信いたしました。
別紙のアンケート結果を御覧ください。
事前アンケートは、事前登録の際に伺った内容を示しており、所属につきましては、前回同様、病院勤務の方、また大学の教育機関勤務の方がそれぞれ3割を占めております。職種としては、前回、医療職が約4割、今回は少し増えまして5割、約半数が医療職の方でございました。
事後アンケートは、今回、中間報告となっていますけれども、これは2月20日のシンポジウム当日に視聴していただいた方の御意見を取りまとめたものでございます。現在、3月3日から3月11日までの期間限定で、事前登録いただいた方々に事後配信を行っております。事後配信を御覧になった方にもアンケートをいただくことにしております。
進行時間につきましては、講演は8割、総合討論、質疑応答については7割、ポスター紹介については6割、いずれもちょうど良いということでございました。
内容につきましては、大変よく理解できた、理解できましたということを合わせますと9割となっております。
個別の感想の中では、シンポジウムそのものに対する要望などもございましたけれども、今後、実際の活用の事例を知りたい。各論に触れた内容をもっと知りたいという、今後に期待するという御意見がありました。
 
○中村委員長
事務局、どうもありがとうございました。
今の2つの御報告につきまして、何か御感想、御意見、御質問のおありになります委員の方、ございますでしょうか。
 
○事務局
特にチャットはいただいておりません。
 
○中村委員長
それでは、事務局のほうから今後の予定等々の説明をお願いします。
 
○事務局
委員会の次回開催ですけれども、現在のところは未定です。
委員の皆様には、今回、現任期中での最後の委員会となりますが、御多忙の中、熱心に御議論、御参加いただきまして、大変ありがとうございました。感謝申し上げたいと思います。
 
○中村委員長
これで第7期の委員会の2年間の任期が終了するわけであります。私はここで個人的なことで恐縮ですが、ここまで皆さんにお世話になって大変ありがたいと思っており、今回まで御協力いただいたことに大変感謝を申し上げたいと思います。
5期から担当させていただいたのですけれども、最初は概念の周知ということが主体だったわけですが、それをさらにすすめてICFを、社会に実装する、どのように社会に使ってもらえるようにするかという点が第5期からの大きなテーマでございました。ふりかえりますと、才藤先生からリハビリテーション医学会にいろいろ働きかけをしていただいて、研究としても立ち上げていただいて、その活動が進んでいるところにこのワーキンググループができることになり、まさしく向野先生が言われたように、将来、本当に使えるのではないかということが、見えてきたところを今日聞かせていただいたわけです。こんなにうれしいことはありません。
人生でフェーズが変わる現場に居合わせるというのは、なかなか実際はないことだろうと思います。その意味でも、大変意義深い報告をしていただいたと思います。これらは専門委員の先生方のおかげでありますし、ワーキンググループの皆様のおかげだと思います。本当に感謝を申し上げます。
そしてまた、事務局とはこれまでいろいろな打合せをさせていただきました。そこで、社会への実装化ということを強く意識された運営をしたいということをしきりに言っておられたことを、ここで皆様へお話ししておきたいと思います。
本当にどうもありがとうございました。
それでは、今日出た意見を、ぜひ次の専門委員会に生かして進めていただきたいと願っております。よろしくお願いします。
以上です。事務局、お願いします。
 
○事務局
こちらで専門委員会を閉会します。委員の先生方、本当にお忙しい中、お時間いただき、ありがとうございました。

照会先

政策統括官付参事官付国際分類情報管理室 渡、鈴木

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