職業安定局雇用開発部建設・港湾対策室

2020年9月28日 第58回労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会建設労働専門委員会議事録

〇日時:令和2年9月28日(月)

〇場所:航空会館貸会議室501号室
      (東京都港区新橋1-18-1)

〇出席者 

  公益代表
     中窪座長、小野委員、勇上委員

  労働者代表
     小倉委員、小林委員、髙島委員、森山委員

  使用者代表
     大木委員、本多委員、最川委員、若鶴委員

  参考人
     一般社団法人 全国建設業協会 高森理事     

  事務局
     達谷窟高齢・障害者雇用開発審議官、福岡建設・港湾対策室長
     大橋建設・港湾対策室長補佐、中田建設・港湾対策室長補佐


〇議題
(1)建設業の現状と課題について
(2)その他

○大橋補佐 それでは、定刻より若干早い時間ではありますが、皆さんおそろいですので、ただいまから、「第58回労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会建設労働専門委員会」を開催させていただきます。私は、厚生労働省建設・港湾対策室長補佐をしております大橋と申します。冒頭は事務局が進行をさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
マスコミの方に留意事項を申し上げます。カメラ等での撮影をされる場合に関しましては、議事が始まる前まででお願いいたします。また、会場の皆様におかれましては、会場の入口に備え付けの消毒液の御利用をはじめとしまして、マスクの御着用、咳エチケットに御配慮いただければと思います。
本日の専門委員会におきまして、公益委員の小野委員、勇上委員につきましては、画面のとおりでございますが、オンラインでの御参加となっております。この関係で、オンラインの操作等について、若干御説明をさせていただきます。オンライン参加の委員の方におかれましては、操作方法のマニュアルをお手元に御準備いただければと思います。
ただいま、画面上の左上のほうに中窪座長を中心とした会議室の画面が映っていると思います。画面の左下に「ミュート解除」「ビデオの停止」のアイコンがあると思います。今は「ミュート解除」に斜線が入っている状況と思います。御発言される際には、カメラに向かって物理的に挙手をしてください。その上で、座長から御指名がありましたら、「ミュート解除」をクリックしていただき、御発言をしていただければと思います。なお、会議の進行中に通信トラブル等で、接続が断絶された場合や音声が聞こえなくなった場合につきましては、操作マニュアルに記載しております事務局の担当者の携帯まで御連絡ください。
また、会場にお集まりの委員及びオブザーバーの皆様方におかれましては、こうした進め方につきまして御理解を頂き、御発言の際はできる限り聞き取りやすい音声と速度でお話いただきますよう、どうぞよろしくお願いいたします。
次に、配布資料の確認をさせていただきます。画面の上のほうにマイプライベートファイルと記載されている資料一覧画面が表示されていると思います。この画面に本日使用する資料が保存されています。資00の議事次第から、資料としまして資01の資料1から資05の資料4までの5種類、そして参考資料として資06の参考資料、合計7つのファイルが用意されております。
なお、オンライン参加の委員の皆様方におかれましては、事前に送付しているファイルが、今申し上げた資料の構成となっておりますので御確認いただければと思います。ここまでで御不明な点がありましたら、個別に御説明をさせていただきますので、お申し出いただければと思います。
続きまして、本日の委員の出欠状況についてですが、大橋委員につきましては都合により御欠席となっております。その他の委員の方々が出席ということになっております。
それでは、以後の進行は中窪座長にお願いいたします。どうぞよろしくお願いいたします。
○中窪座長 皆さんこんにちは、よろしくお願いいたします。本日は、議事次第にありますとおり、議題は2つ。1つ目は「建設業の現状と課題」、2つ目は「その他」となっております。
前回は、第10次建設雇用改善計画の策定に向けて、国土交通省及び労働者3団体からヒアリングを受けたところでありますが、今回も「建設業の現状と課題」と題して、有識者及び団体へのヒアリングを行います。
本日は、使用者団体及び有識者からのヒアリングで、まず初めに、使用者団体として、日本建設業連合会の若鶴委員、全国建設業協会の高森理事、建設産業専門団体連合会を代表して、日本建設躯体工事業団体連合会の大木委員よりヒアリングを行いたいと思います。使用者団体につきましては、3団体の説明を各10分ずつで行っていただき、質問につきましても3団体まとめて進めさせていただきたいと思います。その後、有識者として芝浦工業大学の蟹澤教授よりヒアリングを行いたいと思います。蟹澤教授につきましては30分程度御説明いただいた後、各委員からの質問を30分を目安に行います。
それでは、まず使用者団体のほうから若鶴委員より御説明お願いいたします。説明の方は、自席から御説明をお願いいたします。
○若鶴委員 日本建設業連合会の若鶴でございます。お手元の資料1を御覧ください。それでは、日建連の労働関係の活動を中心に説明をさせていただきます。
2ページを御覧ください。こちらは、日建連が実施しております労働関係の活動を図にしたものでございます。週休2日制の推進と生産性の向上及び、時間外労働の削減と担い手の確保を進めるというものです。具体的には、時間外労働の削減については、時間外労働の適正化に向けた自主規制、担い手の確保については、女性活躍推進、社会保険加入対策、賃金の改正といった施策を実施しております。
ポイントを簡単に説明をさせていただきます。3ページを御覧ください。まず、技能労働者の処遇改善をポイントとしております。賃金については、公共工事の労務単価の向上、労務費見積り尊重宣言等の施策を実施しており、公共工事の労務単価につきましては7年連続で上昇いたしました。また、建設業の担い手確保のためには、他産業に遅れをとっております給料、保険、退職金といった処遇関係が、まず第一と考えております。
次に、4ページを御覧ください。賃金、保険、退職金の次が労働時間となります。これも他産業に比べて大きく遅れをとっている課題でございます。日建連では、建設現場における週休2日を実現し、建設技能士が確実に休暇を取れるようになるためには、現場の閉所が必要と考え、週休2日実現行動計画において土日閉所を限則としております。週休2日につきましては、2019年度末までに4週6閉所、2021年度末までに4週8閉所という目標を掲げております。結果は、次の5ページのとおりでございますが、残念ながら2019年度の4週6閉所実績率は、6割~7割程度にとどまることとなってしまいました。
6ページを御覧ください。建設現場における週休2日を実現するためには、適正な工期での契約が欠かせません。昨年6月、いわゆる、新・担い手3法が成立しました。そして、その流れを受け本年10月より、次のページに掲げております工期に関する基準が本格的に適用されることとなっております。これは建設業界にとりましては、非常に大きな出来事だと考えております。もちろん、制度がただできただけで、現状がいっぺんに変わるということはあり得ませんけれども、制度、そういった器といいますか、システムが、あるのとないのとでは大きな違いがあるのではないかと考えております。
日建連が今、最も危惧しておりますことは、建設市場の急速な収縮でございます。一部の学識者の中には、リーマンショック以上になるというような方もおられます。リーマンのときにどのようなことが起きたかといいますと、それは価格と工期のダンピングでした。結局、発注者も元請も下請もすべてが不幸になってしまって、業界全体が非常にゆがんだ形になってしまったというような気がしております。前回の委員会で国交省の方もおっしゃっておりましたが、このような制度の構築が、価格や工期のダンピングといったことに対する一定の防波堤の役割を果たすことを期待しております。
8ページを御覧ください。これも実は、他産業に比べまして大変遅れている課題です。時間外労働については、上限規制が他産業より5年の猶予があり、2024年度からの適用となります。日建連においては、5年後にソフトランディングできるような段階的な自主目標を設定しました。建設業の実態を考えれば、この5年間の猶予というのは必要だったと思いますが、他産業との格差ということで考えますと、現時点は他産業ではもう既に法改正に対応しており、建設業はこれに対応できていないということなので、格差という面でいいますと、今が最も大きい状態になってるかなと思います。つまり、若者の目から見て、建設業が最も遅れて見えてるわけで、これも業界としてこれからの努力が必要不可欠と考えております。
9ページを御覧ください。これがキャリアアップシステムです。技能者の労働者一人一人が電子カードを携帯し、そのカードに就業履歴、建退共、社会保険等の情報を蓄積していきます。その情報を基に、技能労働者の評価、専門工事業者の評価、社会保険の加入促進、建退共の促進等につなげ、また、専門工事業者や元請が作っている多くの書類を効率化していくという内容でございます。イギリスや韓国では、既に同じような能力システムが展開されています。現在、いろいろな意味で産みの苦しみの中にあるこのキャリアアップシステムでございますが、今、菅政権が掲げておりますデジタル化や生産性の向上といったことに直結するものですので、これが今後の建設業界のべースになるものと、また、ならなければならないと、このように考えております。
なお、次のページのロードマップですが、これは今、国交省が現在検討をしております数値目標に基づいて見直しが予定されております。建設業はどうしてもアナログな部分が多いです。ただ、現在のアナログからデジタルへというこの流れはもう止められないと考えております。日建連としても、これを好機と捉えまして、キャリアアップシステムの普及・促進に努めていきたいと考えております。
11ページを御覧ください。今回のコロナウイルスで分かったことは、コロナ禍の最中であっても、集中豪雨や洪水などの災害が起こるということで、そういったときに誰かがこれを復旧しなければいけないわけですが、復旧やライフライン維持のためには、やはり建設業は不可欠なものだと改めて思っております。それらの認識の下、日建連としましては、建設業としてのコロナウイルス対策を3点まとめました。継続的な感染予防策、セイフティーネットの取りまとめ、事業継続対応の3点でございます。なお、事業継続のモデルについては現在作成中でして、完成次第、公表させていただきます。
そして、最後になります。第10次計画策定に向けての提言をさせていただきます。この第10次計画におけます次の5年間の最大のトピックといいますと、やはりこの期間に時間外労働の上限規制が適用されることだと思っております。ですので、まず何よりも、建設業が法令違反のない状態をつくり出すということ、まずこれがベースであり大命題だと考えております。既にもう、他産業では5年前に当たり前になっている状態が、その5年後の建設業で達成できない、このようになってしまえば、この業界は若者から完全に見捨てられてしまうと正直思っております。そして、そのためには、適切な労働日数、工期の確保、それと処遇改善が必須であり、それを実現するためのツールとして、建設キャリアアップシステムの普及が必要不可欠であろうと、このように考えております。簡単ですが、以上で説明を終わらせていただきます。ありがとうございました。
○中窪座長 ありがとうございました。それでは、次に全建の高森理事より御説明をお願いいたします。
○高森理事 全国建設業協会の高森と申します。よろしくお願いいたします。それでは、資料2-1をお開きください。若干古くて恐縮ですが、平成30年5月に地域建設業の将来展望といった70周年記念の展望を発表しております。その中から、全建の取組を御紹介いたします。
まず、この大転換期の地域建設業の役割ですが、御案内のように急激な人口減少という問題を抱え、生産年齢人口の減少と高齢化が一層進展していくという、その中で、どうやって担い手確保を図っていくかという点、第4次産業革命という大転換期にあり、技術革新の進展に伴って、新しい対応が求められている状況の下で、地域建設業の強みをいかした取組をどう担っていくのかということで、これからの地域建設業の役割としては、国土形成産業として良質な住宅、社会資本の形成、あるいは地域の危機管理産業として安全・安心の確保、災害の復旧対応等があります。
それから、地域活性化、地方創生の主体である事業の提案、創造産業、それから人財育成産業、これは「人‘財’」と書きますが、人財育成産業として若者に生涯を託せる職場の提供を果たしていかなくてはいけない点、地域基幹産業として、経済・社会活動による地域社会への貢献を果たしていかなくてはならないといった問題意識の下にまとめられております。
資料2-1を御覧ください。今、少し申し上げた地域建設業の強みということで、4の中段の所に「地域建設企業力」といったことが書かれております。地域に暮らして、地域の実情を熟知している優れた技術者・技能者を確保できる企業としての強み、あるいは生まれ育った地元の地域においても誇りを持って働ける強みといった、地元ならではの地域に密着した建設企業力といったものを発揮していかなくてはいけないというところです。
その中で、(2)確固たる経営基盤を構築するためにということで、働く人たちに報い、大事にすることのできる企業であることを挙げております。技術者・技能者等、建設産業全体の担い手確保に向けた取組が必要ですし、そのためには元請のみならず、協力会社、専門工事業が一体となって成長していくことが不可欠であると。そうした認識に立ちまして、処遇、安全、休暇など、建設産業全体の労働環境をしっかり整備し、土木・建築現場等々様々な現場で共に働く人たちを大事にすることが重要であるということでございます。
こうした認識の下に、2017年9月、全建では「働き方改革行動憲章」といったものを取りまとめております。このページの一番下の黒ポツからです。後ほど詳しく説明しますが、生産性向上に向けた課題と目標の共有、女性をはじめ多様な人材と働ける環境の整備、建設現場における労働安全・衛生環境の整備、長時間労働の抑制と年次有給休暇の取得促進(週休2日の獲得等を含む)、人材育成の推進、適切な処遇の確保といったことに取り組んでいって、担い手確保につなげていくことが重要であるということです。
また、そのページの一番下ですが、そのほかの重要な取組として幾つかまとめております。ワークライフバランスの重視、将来に向けたキャリアパスの明示、若手従業員の定着と女性、高齢者の活躍の場を作り出す工夫・環境整備(育児・介護休業の制度整備や短時間勤務など)、従業員のモチベーション向上への様々な取組、従業員の健康を強く意識した企業の健康経営(生産性向上にもつながる)、従業員に対する必要な技術・技能習得のための確固たる社内教育システムの構築、技術者を含め多様なニーズに柔軟に対応できる従業員の「多能工化」、外国人建設就労者の能力に見合った適性な賃金の支払い、現場で働く協力会社の職員の処遇に対する元請としての責任ある対応(社会保険・安全経費等の確実な支払い)といったものにしっかり取り組んでいく必要があるということです。
資料2-2を御覧ください。平成29年に取りまとめた働き方改革行動憲章です。まずは、生産性向上に向けた課題の目標と共有です。生産性を向上させる上で自社が取り組むべき課題と目標を従業員と共有して、一人一人がやりがいや充実感を感じながら働き、効率的にその職責を果たせるよう改善を図るといったことです。
3番、女性をはじめ、多様な人材がいきいきと働ける環境整備です。働く意欲のある女性や高齢者の活躍など、誰もが自らの可能性・能力を最大限に発揮し、多様で柔軟な働き方が選択できるような職場環境の整備を推進するということです。
4番、建設現場における労働安全・衛生環境の整備です。地域建設業の生産の場である建設現場の安全で快適な職場環境の整備に取り組むというものです。
5番、長時間労働の抑制と年次有給休暇の取得促進です。労働時間関係法令の遵守とともに、週休2日の確保等による所定外労働時間の削減や、年次有給休暇を取得しやすい環境の整備を進め、従業員の健康づくりを通じた健康経営に取り組むというものです。
6番、人材育成の推進です。能力開発への動機付けや、インセンティブの付与に努めるとともに、積極的に能力開発機会の確保に取り組み、従業員のキャリア形成を促進するというものです。
7番、適切な処遇の確保です。個々の従業員の職務内容、職務の成果・能力・経験等に対する適性な評価の下、適切な水準の賃金の支払いや福利厚生の充実に努めるということです。この横に細かい字で書いてありますが、制度が本格的にスタートいたしました建設キャリアアップシステムに関しまして、技能者の能力の評価が賃金等の処遇に結び付いていくという、技能者の担い手確保という点からも非常に重要なシステムですので、是非、次期計画には盛り込んでいただきたいというように考えます。
もう1点は、お願いでございます。労働安全衛生法に基づく技能講習修了証明書といったような多数の証明がありまして、今はカード形式で、一昔前はまとまる君というような形で呼ばれていたと思いますが、カードを携帯して現場に入っていただくようなシステムが労働基準局のほうで進められていると思います。是非これも、建設キャリアアップシステムのほうに統合していただき、キャリアアップシステムのカードがあれば、保有資格等をそこで一覧できるといったことにお取り組みいただきたいと思います。私からは以上でございます。
○中窪座長 ありがとうございます。最後に、日本躯体の大木委員より御説明をお願いいたします。
○大木委員 建専連の日本躯体の大木です。専門工事業の現況についてお話いたします。人口減少とともに、少子高齢化の進展以上に業界内の高齢化が進んでおりますが、担い手確保が課題となっていることは数年来変わりがなく、専門工事業者にとっては、なお一層深刻であります。就職を控える若者にとって、建設業は災害復旧等や社会資本を支える重要な仕事との認識があるものの、総合建設業、ゼネコンがイメージされていると考えられ、専門工事業種への新卒入職者の確保は非常に困難な状況となっております。加えて、雇用条件において、給与や有給休暇等、若者に魅力のある提示ができていない現状があり、業界を挙げて建設技能者を含めた職人の処遇の改善に向けた取組を行っているところです。
建設業許可業者(47.2万者)を資本金階層別に見て、資本金3億円以上の会社(大企業)は0.3%しかなく、83.3%に当たる39.4万者は資本金2千万円未満の中小零細企業であり、専門工事業の多くがこの層に存在しています。この規模の会社にとっての処遇改善や雇用の確保は経営的に厳しいため、この規模の層の会社に響く施策として計画をしていただくことで、業界全体の雇用改善につながるものと考えます。
我々の団体の取組としては、平成30年に決議をし、将来を担う若者が希望を持って入職できる環境整備、健全な建設産業を目指すための5項目を決議して取り組んでおります。1つ目として、適性な価格、工期で受注し、正しい社会保険に加入、安全経費の確保をするための技能労働者の直用化、月給制などの取組。2つ目として、適正利潤を確保し、技能・経験に見合った給与の引上げ、技能労働者の処遇改善。3つ目として、安値受注、指値企業との決別。4つ目として、建設技能労働者の技能の見える化と専門工事企業の適性評価。5つ目として、働き方改革における週休2日制への取組と、若手技能労働者の確保・育成です。
また、建設キャリアアップ制度の推進として、決議の4つ目である建設技能労働者の技能の見える化をするために、建設キャリアアップ制度が平成31年4月から登録開始となりました。本制度に登録し、現場の就業履歴を重ねる等により、技能レベルに応じた処遇の実現に結び付けて行うという制度であり、これの加入促進を急務として実施しております。技能レベルごとの処遇として、給与額、月給制や週休2日制の導入などもその内容と考えられ、これを実現するためには、第一に適正な請負金額の確保が不可欠であるため、本制度による技能者のレベル評価が業界内の共通認識となるように活動していかなければならないと考えております。
その他、専門工事業関連団体等の取組として、技能継承、入職促進、女性活躍等です。若年者の入職促進として、富士教育訓練センターを利用した技能訓練等において、専門学校等の学生(男女)及び専門高校の教諭に対しての職業体験学習を実施し、業界への入職の動機付けを実施しております。また、各種専門工事団体でも、出前講座等により建設業に触れられる場を提供するなど啓発活動を行っております。
女性技能労働者については、建設現場における女性労働者に対する配慮(休憩所、トイレ等)は以前に比べて進んでおりますが、女性が現場に劇的に増加している状況でもなく、元請の配慮の下、必要な分の対応をしております。専門工事業でも、女性の採用を男性同様に考える企業も増えてきたと感じておりますが、建築・設計士などの技術分野が多いと考えられ、技能工への入職者は限られております。
課題と要望です。働き方改革推進のためには、経営者の頭の切り替えが必要であります。休暇についてですが、入職前の若者及び既入職者の若い層は休暇と給与への意識があります。日給制が多い現役職人は、週休2日のゆとりより、給与額の確保を優先する傾向にあります。一方、就学児童の親は、家族との時間の確保を希望しております。
改正労働時間法制の雇用主としての対応が必要です。残業時間の上限規制などの勤退管理が雇用主の義務でありますが、下請各社の立場では元請の現場管理(作業時間・工期)と密接に関連する中で、適正な管理に向けた対応が必要となります。
新型コロナ感染症対策の影響により、技能継承等の教育訓練が実施しにくい環境となり、富士教育訓練センター等の訓練施設の運営が厳しい状況にあるため、経営支援をお願いしたいと思います。
雇用の確保や職人の処遇改善のためには、下請専門工事業が適正な請負金額で契約できる環境が不可欠であり、適性見積の提示により、見積金額の尊重を元請企業にお願いしているところです。対等な立場で契約することは、建設業法等各法規においても担保されているところでありますが、建設業における重層下請構造下では、元請-下請の力関係はどうしても存在するため、これを改善させ、適正な請負金額が確保できるよう、新改善計画の中で表現をお願いしたいと思います。
前述したキャリアアップ制度と連携したメリットを、労働行政側からも提案していただきたいと思います。建設キャリアアップ制度は、建設現場で働く労働者の職歴、経験年数、資格等をカードの色によって熟練度としてレベルを見える化して、レベルに見合った給与等の処遇改善を目指すものであり、業界が一丸となって普及・促進しているところです。現状は、熟練度は見えるが、目標としているレベルごとの処遇に結び付いていないため、メリット感が乏しく、カード取得意欲が盛り上がっておりません。業界全体及び建設行政とも「官民施策パック」として、これを柱に職人の処遇改善に結び付けていくものとしているので、労働行政側からも本カードのメリットによる提案を検討していただきたいと思います。
先ほど、全建さんからも話がありましたが、種々の資格証明書類をこのカードに一元化して、カードを提示することで、証明書類の提出を省略できるよう措置するなどもお願いしているところです。
偽装一人親方、偽装請負の排除について、労働行政の側面からも強力な指導をお願いしたいと思います。建設業は経済情勢によって仕事量が大きく左右されるため、需給バランスが崩れると請負金額のダンピングが発生しやすく、ダンピング分のしわ寄せが下請各層に押し付けられる歴史が繰り返されております。処遇の改善をして、若年者を入職させなければならない業界において、大きな障害となってしまうことになります。ダンピングの対処策として、本来社員であるはずの職人を自社の健康保険等から外し、社員それぞれが個人事業者であるかのように偽装して、事業主負担を軽減する会社が存在してきました。こういった脱法行為の中で、安値で受注し価格競争で有利にすることは、公平性に欠け、何よりも社員の処遇を考えられない不良不適格業者として、職人の処遇改善に向け反対のベクトルにあるので、これら業者及び偽装一人親方の排除に資する施策を実施していただきたいと思います。一方で、従来からの商習慣に人工出し、応援というものがあり、仕事量の繁閑をこの方法によって行ってきました。これが応援の出し方、現場の指揮命令系統によって違法状態であることを認知しないまま、請負として契約している曖昧な状況にあるため、呼び込まれた会社の配下で作業しているような状態について、適切な契約状態となるように検討をお願いしたいと思います。
特定技能外国人等について、建設業界、とりわけ専門工事業界においては、国内新卒者の採用が困難となっている中、担い手として特定技能外国人を求める需要が出ています。新型コロナ感染症拡大防止により、国間の移動が控えられているなどにより、求められる人材が集められないことはありますが、その確保に当たって、手続の煩雑さや外国人育成の難儀な面があるので、円滑な外国人の導入ができるよう、費用面を含めた支援策をお願いしたいと思います。
専門工事業の雇用改善は、第9次計画の課題である若者が展望を持って安心していきいきと働ける魅力ある職場づくりの推進はいまだ達成できておりません。業界内に女性の活躍の場としての環境整備のほかには、明るい変化はないと思われ、引き続き若年層の入職促進、定着、魅力ある労働環境づくり、技能継承等の強力な推進が必要であり、そのためにも現役職人の年収のアップを柱とした処遇改善策を提唱し取り組まないと、専門工事業を継ぐ者の確保が困難になります。以上です。
○中窪座長 ありがとうございました。それでは、以上3名の方から頂きました御説明について、何か御質問、御意見等がありましたら御自由にお願いいたします。
○小林委員 よろしいでしょうか。全建総連の小林です。御説明ありがとうございます。日建連さんの御説明について、1点お伺いをしたいと思います。一番後ろのページで、第10次計画の策定に向けて非常に重要な提起をしていただいています。「上記を実現するためのポイント」ということで、適正な労働日数、それから賃金をはじめとする処遇改善、このためにキャリアアップシステムをしっかり使っていこうという御提言でした。
先ほどの御説明の中で、現役の技能者にとっては休みよりも収入のほうを優先する傾向がある、こういうお話もありました。やはり技能労働者にとって、これを実現していくためには、実際に休みを取っても収入が増えるといったことを、技能労働者自身が実感できることが重要なのではないかと思っています。
ですので、建設キャリアアップシステムで賃金が増えたということを、いわゆる技能労働者、一人親方といわれる人たち、日額いくらでやっている人たちがいて、直用化という議論をしっかり進めていかなければいけないという一方で、直ちに下請構造がなくなるという状況にはありませんので、いわゆる適法な一人親方、1日いくら、また、それぞれの単価でやっていく人たちが実感するためには、月収や年収ベースで、しっかりと休みを取っても賃金が上がったということが重要だと思っていますが、この点について、何か講じられている方策、もしくは方向性としての議論でお考え等があったら、御紹介いただければと思います。以上です。
○若鶴委員 私どもは、やはり賃金の確保が一番大きな課題だと思っています。先程もちょっと説明の中に入れましたが、まず公共事業の労務単価の上昇が1つあるかなと思っています。これは今、7年連続で上がっている状況です。ただ、やはり建設業というのは公共工事だけではありませんので、他でもいろいろやらなくてはいけない。一応キャリアアップシステムの中で技能のレベルに応じた、ある程度モデル的な賃金レベルのようなものを今、掲示させていまして、大体このレベルの人だったらこれぐらいの賃金を稼がなくてはいけない、あるいは稼いでしかるべきだという議論を進めているところです。以上です。
○中窪座長 よろしいでしょうか。そのほかにいかがでしょうか。小野委員、どうぞ。
○小野委員 ありがとうございます。いろいろ興味深く聞かせていただきました。建設キャリアアップシステムの話になりましたので、処遇改善のやり方について、意見と質問なのですが、公共工事の際のいわゆる入札のときに、このキャリアアップシステムというのは、入札条件のような形で何らか入ってくるようなシステムになるようにするということになっているのか、その辺で何かやり方があるのかということを、まず教えていただきたいということが1点です。
2つ目が一人親方についてです。個人事業主の方が、このキャリアアップシステムにどのように参加していくのかということが、私のシステムについての知識が足りないものですから、そこについて教えていただきたいということです。この建設キャリアアップシステムが、全体的な処遇改善につながるというのは、恐らく価格や工期のダンピングの話がありましたが、その工事価格をうまく交渉していく材料になるかもしれないと私は考えています。といいますのも、派遣労働の派遣法の方でキャリアアップ形成支援というものができまして、体系的なキャリアをつくるためにキャリアラダーを導入しましょうという取組が、派遣労働にもあるのですが、それを取り組んだ派遣元が派遣先企業に対しての交渉力が高まったというのです。
ですから、ある意味、1つのキャリアのシステム的なものを作った場合に、例えばその会社で熟練の技能工が何人いて、その人が何人要るような工事だったら、このぐらいの価格は適正ではないかというような、そういった交渉が表面化するといいますか、そういうことによって価格が安定していくと私は考えているのです。ですので、こういった工事の価格の安定のために、まず公共工事のところで、どのようにこのキャリアアップシステムを交渉材料として使っていくかということに非常に興味があります。その辺について、どなたでも結構なのですが、事務局ですかね、方針といいますか、その辺の御意見というか、回答があればお聞かせいただきたいと思っています。
○中窪座長 ありがとうございます。最初は、入札についての御質問。それと、今のキャリアアップとこの2点ということでよろしいですか。
○小野委員 そうですね。入札のときにキャリアアップシステムがどのように要件に入ってくるように考えられているのか、その辺まで遠望があるのであれば教えていただきたいと思います。
○中窪座長 分かりました。両方の関係ということですね。
○若鶴委員 貴重な御意見ありがとうございました。小野委員がおっしゃっておられた、これが1つ1つの価格を作り上げていく力になるというのは、正にこのキャリアアップシステムの1つの狙いです。こういったレベルの熟練工がどれぐらいいて、どれぐらいいるからプロジェクトの価値があるというものにつなげていくためのキャリアアップシステム。これを1つの狙いとして、我々は考えているところです。
それと、入札の話ですが、先ほど申し上げたように国交省のほうで今、目標を作り上げているところです。ですから、まず国交省のWTO対象の工事などいろいろある中で、そこから始めていくのでしょうが、その次は例えば都道府県や市町村の公共工事が入ってきますので、こういったものをどう取り扱っていくのかという目標を国交省さんで作っているところだと伺っています。
○中窪座長 ありがとうございます。ほかに使用者側から補足などありますか。高森理事、お願いします。
○高森理事 全建ですが、キャリアアップシステムの入札に関しては、日建連さんの御意見に加えて、都道府県でも入札に際してキャリアアップシステムの事業者登録をしているといった事業者については、総合評価で加点をするといった動きも徐々に広がってきています。
今、公共事業では、本年3月23日に赤羽国交大臣と建設4団体の会談で、官民施策パッケージといったものが国交省から示されています。その中で、モデル工事について、これはキャリアアップシステムを使うことが前提の工事ですが、それも総合評価で加点をして、次回の入札に反映させていこうという動きがあります。それから、Cランク、Dランクのもっと小さな工事でも、推奨モデル事業として、今後、各地方整備局で3、4工事発注をかけていくといった方向性が打ち出されています。以上です。
○中窪座長 ありがとうございます。小野委員、よろしいでしょうか。
○小野委員 ありがとうございます。あと、一人親方の方のキャリアアップシステムとの関わりについて、教えていただきたいのですが。
○中窪座長 一人親方とキャリアアップシステムで、大木委員、お願いいたします。
○大木委員 基本的に、事業主は社会保険負担をしないで働かせているということもあります。キャリアアップに入ることは、社会保険に入っていることが前提となっていますので、キャリアアップカードを持っている人はもう既にきちんとした労働者であるということが証明されています。その人たちが現場に入るということが徹底されれば、一人親方もだんだん少なくなっていくとは思っています。ただ、今までのように習慣上、どうしても応援や人間だけ借りるということが、もっと我々自身も頭を切り替えないといけないのは、書面によって雇用契約をするという、例えば労働者として扱うということを徹底させていかなければいけませんし、そのためにキャリアアップカードを普及させることが大前提だと思っています。
○中窪座長 よろしいでしょうか。
○小野委員 一人親方は事業主なので、このキャリアアップカードは持てないと考えてよろしいのですか。
○大木委員 一人親方は、経営者で労働者ではないという考え方をしていますので、本当は実際は労働者なのですが、社会保険に入りたくないなど、そういうことで経営者になってしまっている人たちをあぶり出すためにも、このキャリアアップに入ることによって、本当は労働者ですよということを徹底させればいいなと思っています。
○小野委員 分かりました。ありがとうございます。
○中窪座長 ありがとうございました。他にはいかがでしょうか。小倉委員、お願いします。
○小倉委員 3団体からの御説明、誠にありがとうございました。正に、技能者の処遇改善に向けて様々な取組がされているということで、方向性とすると、労使ともに一致をしているのではないかと認識しているところです。10年前とは隔世の感があると思っているところですが、実際に今後、実効性を担保できる、そういったことがきちんとやっていけるのかということは、恐らく元請あるいは上位下請団体として問われてくるのだろうと思っています。今回の建設雇用改善計画の中では、担い手確保、育成ということが最重要課題であると私どもとしては認識しています。その中で、技能者の処遇改善、具体的には賃金の引上げや週休2日、4週8休、こういうものを徹底をさせていくことで、若年入職者を増やしていくということにつながるのではないかと思っています。
そこで、各3団体にお聞きしたいのですが、今、国交省において設計労務単価が大幅に引上げをされる、あるいは補正係数が掛けられる、団体によっては優良職長手当が支給されることが行われているわけですが、基本的にベースになっているものは公共工事であると思っています。
日本の建設投資の中では、公共投資が4割、民間投資が6割という形になっています。どうしても先行して公共工事を担っている事業者に一定の処遇改善を図るような施策をやっていくというのは、当然あり得るとは思いますが、今後、産業全体を考えた場合、この民間投資部分をどうやって広げていくのか、好循環を波及させていくのかということが重要なポイントになってくるのだろうと思っています。それぞれの団体の中で、民間投資部分、民間工事において、どのように技能者の処遇改善を図っていくお考えか具体的に教えていただければと思っています。
○中窪座長 3団体全部にということですが。
○若鶴委員 ありがとうございました。今、おっしゃっていただいたところは、正直言いまして本当に頭の痛いところです。まず、公共事業でというところから入ってということしか、今のところないのですが、強いて言えば、この間、工期に関する基準などが設定されていて、やはり何よりも業界としてダンピングありきというような風土を取り除いていくことから始めるしかないのではないかなという気がちょっとしています。要は、誰かが始めてしまうと、みんながやってしまうというようなことが、リーマンのときに起きたわけですから、まずそういったものをなくしていくようなことです。個人的な考えですが、正に10年前と比べると、そういった意味ではかなり健全な業界にはなってきているような気がしますので、あとは誰かがトリガーを引くようなことだけをしないようにすることが大事かなと思っています。
○大木委員 正に、民間工事のほうが工事量も金額もウエイトが高いわけです。そのときには、キャリアアップカードのゴールドカードからホワイトカードまで、それぞれゴールドカードだったら年収がいくらというのは、各職種によってきちんと計算し、目標を定めようとしています。また、作っていない所には作るようにお願いしているところです。その辺のゴールドカードの年収は幾らということを決めて、発注者である元請に、我々ゴールドカードの作業員はこれだけと見積書に反映させるような方向付けをしていけば、おのずと賃金ベースも上がっていくのかなという考え方をしています。
○高森理事 全建です。今の御質問の中で、民間発注者との交渉力といいますか、どのように上げていくかというところでして、私どももやはり将来的にはキャリアアップシステムで能力評価基準をしっかり作っていただいて、協力会社さん、あるいは下請事業者さんの能力水準の見える化、優秀な職人さんをたくさん抱えている事業者を協力企業あるいは下請に多く持っているということで、民間の発注者さんと価格交渉を、技術力が高い、質の高い商品をお届けできるといった交渉力を強めていくことによって、民間事業者の発注単価、普及を図っていければと考えています。
○中窪座長 よろしいでしょうか。その他いかがでしょうか。勇上委員、どうぞ。
○勇上委員 ありがとうございます。私も大変興味深く拝聴しました。2点あるのですが、2点とも3人の御報告者の方にお伺いしたい質問になります。
1つは、私も建設キャリアアップシステムというものは非常に大きな可能性を秘めていると、過去にお話を伺って以来感じているのですが、本日、大木委員のお話でもありましたが、熟練度の見える化という点で非常にメリットがある一方で、このレベルごとの処遇に現時点ではまだ結び付いていないということもあり、普及が緩やかだというようなお話があったと思います。そういう意味で、見える化という大筋の方向性というのは有意義だというのは、全く異論がないところだと思うのですが、結局その市場の中でこれが機能するかというのは、実際にこのぐらいの経験あるいはこのぐらいできる人であれば、このぐらいの相場であるというようなことについて、能力評価というものが1つの礎になると思うのです。そういう意味で、能力評価に各業界団体様がどのように関わられているのかということを、質問としてお伺いしたいと思います。これは重要ではないかというのが、私の意見です。
もう1つは、本日第10次に向けての話を伺って、多くの業界が直面している問題への対応というところと、それから建設業特有の課題への対応というところに分けられるような印象を受けました。例えば、女性の活躍や若年者の確保ということは、これは建設業に限らず、大なり小なり多くの業界が取り組むべき課題、生産性の向上ももちろんそうですが、そういう特徴付けがあると思います。そういう意味で、共通の課題としてしばしば挙げられる技術革新への対応というものが、特に見られなかったように思いました。技術革新への対応というのは経営の話のように見えますが、実際には労働者、我々働く人々にとってみると、仕事内容が変わるというようなこと、例えば仕事内容が良い意味でコアな業務に特化できるように変わるということもありますし、あるいは全く機械に取って代わられてしまうということも、それは悪い意味だと思いますが、あると思います。
本日の資料を拝見すると、社内教育システムの充実という言葉が少しあったと思いますが、これは社内で対応できるものと考えられるのか、あるいは国の公共職業訓練などとの連携などを通じた広い再訓練といいますか、技能の適用といいますか、そういうもの等を考えるべきなのかというところを、これも3つの団体の方々にお伺いできればと思います。以上です。
○中窪座長 能力評価の問題と技術革新への対応という、2点あったかと思います。大変な問題ですが、お願いいたします。
○若鶴委員 まず、今の能力評価の問題について、業界ごとにどれぐらいの能力の人がどれぐらいのものをもらうべきだということを、多分いろいろ模索しているというところではないかなと思っています。今、幾つか数字が上がってきていますが、なかなかそれが世間一般にオーソライズされるかというと、なかなかそこまではきていません。ただ、正直に言いまして、日建連としてはまずこのキャリアアップシステムというものを、とにかく1社でも1人でも多くの方に利用してもらうというところを、そのベースとなる下地づくりというところに取り組んでいるところではないかなと思っています。
技術革新といいますと、正直まだそれほど大きなものというのは、施工というよりは、設計の部分など、そういったところではいろいろ確かにBIMやCIMなどが入ってきたりしていますが、直接施工ということに関しては余り大きな、少しずつですがICTが入ってきて、運送や運搬などは取り入れたりしてきていますが、正直に言うと、なかなかそこまでは今は結び付いていってないと思っているところです。以上です。
○大木委員 能力評価によって処遇改善していこうということですが、先程言ったゴールドカードからホワイトカードまで持っているその会社を、そうした雇用する会社も評価しようということで、レストランではないですが星4つや星1つというようにランク付けをして、見える化を業界として進めています。ゴールドカードをいっぱい持っている会社や経験年数、財務内容などを評価して星4つとかいったように、会社ごとのランク付けを進めているところです。それによって、発注者から星4つの会社に優先発注させるなど、そういった動機付けができれば、ゴールドカードを持っている人をいっぱい増やそうという方向付けにもなっていくと思いますので、最終的には処遇改善につながると思います。
また、技術革新ですが、大きなロボット化などは我々専門工事業者というよりも、各ゼネコンさんの問題ではあるかもしれません。我々レベルとしては、現場での改善活動、工夫をしたり、今まで100人掛かったものを80人で済むというようなこと、そういった改善活動をすることによって省力化していこう、生産性を上げようという方向付けを、各ゼネコンさんの会社によっては、そういうことをきちんと評価してくれる会社もあります。それによって、トータルとしてコストダウンができればいい。労務単価を下げるのではなくて、生産性を上げることによってコストダウンができればいいなと、我々としても各発注者に対して、元請に対して訴えていこうと思っています。
○高森理事 まず処遇と評価の関係ですが、大木会長からもお話がありましたが、現在、国交省で検討会を立ち上げて検討しようということになっています。35業種で能力評価基準が作られていますが、うち7業種についてはモデル賃金、いわゆるゴールド、シルバー、ブルーの標準の年間の報酬額をオープンにして、それに基づいて賃金が支払われて、その賃金が請求労務単価に反映されていく好循環を狙っていくということです。今後、検討会を立ち上げてマネジメントフィーをどのくらいの価格設定にしていくのかといった検討も進められます。また、モデル賃金を設定していない他の28業種についても、逐次モデル年間給与といったものをオープンにしていこうという動きになっています。
それから、i-Construction、いわゆるICTですとか、ドローンの活用といったところですが、なかなか地域建設業としては、この先端にすべての会員企業が積極的に取り組んでいるかというと、まだまだそこにはいっていません。今、普及に向けて、取り組んでいる企業の事例等を会員企業に御紹介申し上げまして、普及拡大を図っているところです。以上です。
○中窪座長 ありがとうございました。勇上委員、よろしいでしょうか。
○勇上委員 ありがとうございました。
○中窪座長 まだまだあるかもしれませんが、そろそろ時間もまいりましたので、次の蟹澤教授のヒアリングに移りたいと思います。蟹澤教授には、スライド資料を用いての御説明となりますので、事務局は所定の位置まで御案内をお願いいたします。
○蟹澤教授 御紹介いただきました芝浦工業大学の蟹澤と申します。お手元の資料でもいいかと思うのですが、アニメーションで動いたほうが見やすいのではないかと思って、このような形にさせてもらいました。是非、画面のほうを御覧いただいて、聞いていただきたいと思います。
タイトルは雇用改善ということですが、雇用改善の意味についてということを説明させていただいて、今日は具体的な中身については各団体からのお話もありましたので、それに代わってという部分もあるのではないかと思っております。
私は、この会議は2015年にも呼んでいただいて、その前も呼んでいただいたような記憶があるのですが、これは2015年に発表させていただいたパワーポイントの資料です。2015年というのは、資料に「社会保険の未加入対策が進み」とありますが、これは2012年ぐらいから未加入対策が始まっていますので、ぼちぼち浸透しはじめたかなと、ようやく業界の疑心暗鬼が取れたかなというぐらいの段階だと思うのですが、そういう状況でした。
前回も申し上げたのですが、これは雇用改善ということを検討する会なのですが、建設業で雇用改善といった場合に、該当しない人がたくさんいる問題をどうするのだということを申し上げた記憶がございます。これは今も変わっておりません。どれぐらいの数かという話は後ほどさせていただきたいと思います。この頃、行政のほうは「偽装」という言葉を使うのは嫌がったようなのですが、このときに偽装の一人親方がたくさんいるということを、この段階で申し上げていたということです。派遣の問題で、この偽装の一人親方などが、多くの場合、指揮命令を受けているのではないかといったこと、この頃はまだ、厚生年金に入れと言われても、10年掛けられないのだから、もらえないではないかという話がたくさんあったのですが、その一方で、そういう方々が引退された後に生活保護にいってしまうという問題についてはどうするのだということを申し上げました。
それから、これは最後の結論で申し上げたのですが、雇用を推進するというのは当然のことです。かといって、全員を雇用という関係に持ってこられるかというと、それは今でも変わらないと思いますが、100%の技能者を雇用という制度下に置くというのは非常に難しいということは、この産業の特徴上で変わらないことだと。そこは随分長い間、グレーゾーンだといって手付かずで来た部分がありますが、私は最近は文章を書いても、「グレー」という言葉は使わないようにしています。今まで、この産業でグレーと言ってきたことの大多数は、白黒をはっきり付けるとすると、ほとんどが黒であって、ほとんどが完全な法令違反の状態にあるということ。特に、学者が「グレー」という言葉を使ってはいけないのではないかと思って、最近は使うのをやめました。もう1つは、働く人間、労働者としての適正な処遇ということを、雇用改善という枠組みの中ではしっかりと考える必要があるのではないかと思っています。このようなことを申し上げさせていただきました。
今日はかなり資料を絞ってきたのですが、2015年のときにはこのほかに、イギリスや韓国にキャリアアップのようなものがあるけれども、こういうのを導入したらいいのではないかということも申し上げて、それはもう実現されています。これは時代が変わったなということです。それから、能力評価も、当時これは国交省の住宅局で、大工の能力評価の試行というのをやっていたのですが、このようなものが始まったので、全職種的に展開できると変わるのではないかということを申し上げて、これについても実現してきたというのは、かなり時代背景が違うなというように感じております。
そういった意味で、今日はいろいろとお話をさせていただくわけですが、この5年間で変わったことというのは、まず当時は、建設業はまだまだ社会保険というようものは合わないのだというような話とか、国土交通省に言われて入ると梯子を外されるのではないかというような話とか、そのようなことがたくさんありましたが、これについては業界全体として、もうこれは当たり前になりつつあります。だけれども、まだまだ入っていない人はたくさんいるという状況もあります。それから、専門工事会社のほうでは、技能者の社員化は当時よりは進んできたと思います。
何よりも2015年当時の前提と違うのは、建設キャリアアップシステムが導入されたということです。普及はまだまだといっても、30数万人の人が入っているという状況ですから、これは2015年のゼロだったときと比べると、雲泥の違いがある前提ではないかと思います。
それから、派遣とか、そういう問題についてグレーだというような話があったのですが、この5年間で大きく変わったのは、ネットで実質的にマッチングをするようなものがたくさん出てきてしまったということです。これは逆戻りはできないし、若い新しい職人ほど、そういうものを活用している実態があります。これは、先程どなたかから、生産性向上とかIT化という話もありましたが、これは2015年にはほとんどなかったものが、今ではたくさんあるということです。
次に、今でも変わらないことですが、応援とか常用精算するということ、昔ながらの言葉で言うと、人夫出し、人工出しというのが、まだあります。やはり困ったときには、まず仲間からの応援を募集して、それでも足りない場合には、こういう人夫出しの方に頼む。そうすると、そこから人が派遣されてくる。それを常用で精算する。だけれども、契約上は請負にする。こういうようなことが、今でも行われているという部分です。
雇用の制度外の一人親方についてですが、これは後程データをお見せしますが、すごく増えています。これは2つの意味があるのですが、これについても後程お話をします。今日ここにいらっしゃる日建連、全建といった、この辺の世界は大分改善されたのだと思いますが、まだまだ無保険者、無年金者というのは、もっと末端の方とか、いわゆる町場、厚労省の言うところの木建のほうには、たくさんいることが考えられます。
それから、不作為体質、これも資料が公表されるということなので、これぐらいの書き方にしておいたのですが、この業界で、特にコロナ禍の中で皆さんがおっしゃるようになったのは非常にいいことだと思うのですが、要するに、今までは正直者が馬鹿を見る産業だったと。これはリーマンショック、バブル崩壊、事あるたびに潰れた会社というのは、潰れてほしくない会社が潰れて、そうではない所がむしろ残っていると。私は具体的な社名までイメージして考えられますが、何かがあるたびに、職人のことを考えて、一生懸命雇用化を進めて、訓練校を作るだの何だのとやっていた会社が、たくさん潰れました。その後再生して残っている会社もありますが、この今回の厚労省で言うところの雇用改善計画の中で、またこのようなことが起こったら、私は産業自体が立ち直ることができなくなるのではないかと、非常に強い危機感を持っています。ただ、その前兆はありまして、業界の声を聞いていると、コロナ禍の後の受注減が予想されて、もうかなりダンピングが起こってきていると。そうすると、そのようなところに保険なんか関係ないというような方がたくさん働いているのだということを、よく耳にするようになってきました。これは非常に危ない実態なのではないかと思います。
次に、社会保険の加入率ですが、これは国交省の調査の中で、3保険に全部入っている割合で、これは労働者の全国です。これが企業の全国です。これは関東地方の労働者です。これは関東地方の企業です。前回説明させていただいたのは2015年ですから、2014年のデータだったと思いますが、ここと比べると、本当に関東地方の技能者の加入率というのは、倍ぐらいまで増えてきております。当時は、このようなことになるとは信じられなかった時代だと思います。ただし、これは公共工事ですし、皆さん御存じのように、データに不備があるとかというのは棄却された後の、割と真面目な方々のデータですので、業界としてはかなりそういう層のデータではありますが、だけれども、調査の基準などは変わっていないわけですから、それがこれだけ良くなってきたということは、非常に大きな成果でありますし、この雇用改善計画を考えていく中でも、こういう前提なのだということを考える上では、非常に大事な前提ではないかと思います。
次です。一人親方についてですが、これは厚労省の特別加入者数の推移というデータを使っていますが、2014年から急増しています。おおよそ、2014年から20万人ぐらい増えています。ですから、この第9次の間に、一人親方がものすごく増えたという問題があるわけです。
あと、もう1つは生活保護の問題を言いました。このグラフは生活保護世帯数の推移、青いのが1,000世帯当たりの保護率、赤いのが建設業の就労者数の推移です。偶然かもしれませんが、これは数学的に見ると、明らかに建設業の就業者数と生活保護世帯数というのは、何らかの相関があると。建設業の減った分が生活保護が増えているという実態があるということです。
ただし、それを説明するための資料として作っただけで、業界の方々は、昔でいうところの関東でしたら山谷とか、労働者のもともとドヤ街と言われるような地域がありますが、ああいう所というのが、今や生活保護者の町になっているということは、業界関係者は皆知っていることです。それをたまたまデータで表現してみると、このように関係があるのだというわけです。年金などは入らなくてもいいのだというようなことを言っていた時代もあったわけですが、結果はこうなってきて、これは特定財源ではありませんので、一般的な財源から、この辺が出されていくと。私は、この辺は大きな問題ではないかなというのは、随分前から申し上げているのですが、なかなかこの実態については取り上げていただけなかったということもあります。
何で、こんなに一人親方が増えているかということですが、1つは国による社会保険加入対策の強化で、今日ここにお集まりの日建連、全建や公共工事の現場では、かなり入場規制の強化も進んできたと。その結果として、一人親方労災に入っていないと現場に入れないから、一人親方労災に入ろうという人が増えてきたということです。それから、特に大木さんがいらっしゃるような大手の専門工事会社の世界では、はっきりと社員にすることと、一人親方ということでグレーにしないで、一人親方として請負契約をするのだというのが二極分化してきたという傾向があるのではないかと思います。
それから、若い人に関しては、これはいわゆる本物の一人親方です。要するに、下請のように使われるよりは、自分で仕事を取るのだという方も一方で増えています。これはリフォームとかリニューアルとか店舗工事などという業界に行くと、こういう方々も増えています。どこで違いが分かるかというと、こういう方々は、このコロナ禍で持続化給付金をちゃんと受けていたり、いろいろな融資も積極的に受けてという方というのがいるのですが、それがこういう方です。
逆に言うと、このコロナ禍の持続化給付金など、何ももらえなかったという方が偽装一人親方の方です。そのような分け方もできるのではないかと思います。そういう意味で、規制逃れの偽装一人親方というのも増えていて、取りあえず現場に入るために労災保険だけは特別加入してくれということで、数字として表れている人がかなりいます。
それから、不作為の存在というのは、ここまで言われても、まだまだ何もしない、一人親方のままという人もたくさんいるということです。
次です。偽装一人親方の具体例ということですが、これは私は研究者ですので、いろいろな所でヒアリング調査をして、見聞きしてきた一人親方です。偽装一人親方で一番典型的なのは、全建総連などがよく言っていますが、10代とか20代前半の特別加入者というのが非常に増えているという実態があります。一人親方というのは、請負契約で働くというのが前提ですから、それなりに自律的に動けなければいけないはずなのに、それが10代の人が可能かどうかということは、常識的に考えたらあり得ないわけですから、これを偽装と言わずしてどうするのだということです。
それから、特定の会社に明らかに帰属していて、その会社の作業着を着ていると。ヘルメットをかぶっているというのはよくあるのですが、作業着まで着ている。私は、名刺まで持っている人を見たことはありますが、だけれども契約上は請負契約というような方、こういう方がまだまだいます。明らかに建設会社に働く場所などを指揮命令されて、ある会社の加工場で機械を使って加工したり、車両を使ったりしているけれども、それに対して使用料などを払っていればいいのでしょうけれども、そうではないような人もたくさんいらっしゃいます。
最近の問題としては、特に厚生年金保険逃れのために、組織を小さくして適用除外というように形式上しているというような例です。それから、これは最近は大分減ったという話ですが、建設業許可がないと500万円以上の仕事ができないので、しょうがないからどこかの2次とか3次の作業員名簿に載せておくような偽装社員という例です。または、説得しても、どうしても年金に入らないというので、作業員名簿には載せておくけれども、一部の社会保険に未加入があるという人というのも、いまだにいます。
こういう人がどれぐらいいるかということですが、消費税を払っていないとか、免税という感じで、要するに一人親方としての手続ができていない人、特別加入もしていないし、恐らくは請負的な働き方をしているのだけれども、よく分からない無自覚な人というのは、例えば今回のコロナ禍でいうと、初めて自分は何ももらえないということが分かった人とか、こういう方というのはたくさんいます。恐らく、先ほどの表に出ているのが60万人だとすると、こういう方々がそれに近いぐらいはまだいるのではないかと、合わせて100万人を下らないぐらいいるのではないかと、私は予想しております。
「雇用改善」に関する諸制度の今後ということですが、これは皆さんからお話がたくさん出ましたが、労基法の改正については、建設業が2024年の4月に施行の対象となります。こうなったときに、労働時間規制というのは大丈夫かということです。これは、いわゆる職人、職人でも分譲住宅で、皆さんの御近所にも土曜日でも日曜日でもずっと動いているような現場があると思いますが、あれは請負だからといって逃げられるのですが、労働時間ということでいったらどうなるかということです。
それから、今年の10月から改正建設業法が施行されますので、建設業許可のための社会保険加入が要件化されます。それから、作業員名簿の作成義務化ということで、これは省令ですが、こういうものも同時にできます。ですので、国交省は施工体制台帳を見て、請負かどうかということをまず見ます。それが雇用であるということになっていれば、雇用保険に入っているかどうかを見ます。この2つをチェックすると、偽装というのはかなり見破られるのではないかということになっていますが、これも作業員名簿と施工台帳がどこまで浸透するかというところにかかっていると思います。
先ほどの御質問にもありましたが、国土交通省では、先ほどの官民施策パッケージで、令和5年以降の公共工事はCCUSの加入は原則化という言い方をしています。義務化とか、発注要件化という言い方はしていませんが、一応原則化という言い方を今のところはされているということです。
それから、皆さんから言及がなかったのですが、令和5年の10月に消費税のインボイスが導入されます。そうなると、何が関係あるかということですが、免税とか納税の実態がない一人親方に対しては、消費税を控除できなくなります。要するに、そこで偽装一人親方的なものが明確になってしまうのです。すごく悪い言い方をする人は、今度から引けばいいのかというのですが、要するに1割手取りが減ってしまうということで、ついてきてくれるのかどうかとか、これを機に大量の高齢の一人親方がやめてしまうのではないかとか、いろいろな危機が言われています。何よりも、ここのところでかなり偽装性というのが明らかになってしまうということです。
それから、国土交通省は下請指導ガイドラインというのを改正しようとしていますので、かなり雇用保険未加入に対する元請履行責任の強化というのは図られるということになっています。これらが2024年の4月にはすべて施行されて、そのときには建設業がどう変わっているか。逆に言えば、ここまでにどう変わらなければいけないかというのが、かなりお尻が切られているというようなことです。
最後に、今回の第10次雇用改善計画の期待ということです。まず、この雇用改善という対象の恩恵を受ける人を拡大しなければいけないのかということです。先ほどからも申し上げているように、表に出ている一人親方、未加入だからよく分からないような人も含めて、建設技能労働者が約350万人ぐらいだといわれている中で、それが100万人ぐらいいるとなると、3分の1近くが網から漏れてしまうということですから、そこはもっと効果的にする必要があるのではないかということです。
それから、これは皆さんは触れられなかったのですが、CCUSのメリットとか普及方策でもあると思うのですが、前回は私は「グレー」という言い方をしましたが、せっかくある就業機会確保事業というのが、実態としてはほとんど使われていません。これは業界からいうと、いろいろな手続のハードルが高すぎるとか、財産的要件が高すぎるとか、いろいろな問題があるのですが、これは5年前との大きな違いは、CCUSがあるという前提で制度設計なり運用を見直していただくということ、そんなに心配しなくても、CCUSを持っていれば、従来のタコ部屋とか不法派遣のようなことにはならないのではないかということ、何よりも、みんなが不法だということを知っている状態よりも、合法はこうだということをもっと厚生労働行政としても表に出されたほうがいいのではないかということです。
もう1つは、一人親方の労働者性の確立方策です。私は労災保険法というのはすばらしい制度だと思うのです。というのは、建設業というのは、雇用関係とか中での指揮命令関係がよく分からないから、元請が一括で労災を現場で掛けなさいという制度設計になっています。なのに、なぜかその中にいる一人親方は除外だということなのです。せっかくすばらしい制度があるのに、しかも、今はそれがあるがゆえにいろいろな矛盾が出てきているという実態があります。
それから、これは安衛法では、元請がちゃんと安全の責任を見るとか、上位請負者、2次、3次がいる場合には1次下請の専門工事会社が、ちゃんと安全上の面倒を見なければいけないということになっているのに、これは建前上、その下に一人親方がいたら指揮命令してはいけないということになるので、私は安衛法との矛盾があるのではないかというように思っています。それは最近のアスベスト訴訟の判決を見ても、同じようなことが言われていて、安衛法から見ると明らかに労働者性が高いだろうということが言われていますし、かつてのいろいろな労災事件のときにも、後で労働者性が追認されたというのはたくさんあるのですが、この辺は過去の判例等を鑑みて、一人親方の労働者性というのを、この辺でしっかりと考えなければいけないのではないか。それによって、形骸化による不利益というのはどういうことかというと、例えば労災に入るには入っているのですが、最低額の3,500円というものに、ものすごくたくさんの人が入っているという実態があります。それから、先ほどから申し上げているように、コロナ禍のいろいろな給付金が、こういうグレーと言われている人には何も届かないという問題があります。この辺を解決する必要があるのではないかと思います。
それから、これが大変なのですが、不法な労働者供給問題です。人夫出しの辺りをどうするのかということです。たまに厚労省が取り締まって逮捕されたということも聞きますが、これはもっともっとたくさんあります。
このCCUSに関連してですが、先ほどいくつかの団体からもありましたが、私は是非、このCCUSの有用性をこの中でもお認めいただくのだとすると、CCUSに登録された安全衛生関係資格証の原本認定というのは、この普及のためにも大きなものになると思いますので、是非ここのところをお考えいただくといいと思います。それで、このCCUSが普及していけば、この就業機会確保事業なども安心して動かせるようになるし、何よりもしっかりとした雇用が進んでいくということになりますので、是非ここのところは今回御検討いただければと思います。すべてが難しくても、そのような文言を入れていただければ、非常にいいのではないかと考えております。以上、冒頭の説明とさせていただきます。ありがとうございました。
○中窪座長 ありがとうございました。ただいま頂きました御説明について、御質問等がありましたら、御自由にお願いいたします。小倉委員、どうぞ。
○小倉委員 蟹澤先生、大変ありがとうございました。たくさんの講演を聞いておりますが、毎回非常に勉強になっております。私からは3、4点質問させていただきます。
1点目は、蟹澤先生のほかに、日建連さん、全建さん、建専連さんにも、是非見解をお伺いしたいと思っています。
CCUSですが、本日の蟹澤先生の資料の中でも、建設雇用改善に向けてCCUSというのは非常に重要なインフラとして機能させていかないといけない、そのように考えられているとは理解しているところです。一方で、既に御案内のとおり、CCUSの技能者登録あるいは事業者登録については、目標を下回っているという状況にあります。これは様々な施策は講じられているわけですが、任意制度であることが大きな要因として考えられるのではないかと思っておりますし、とりわけ事業主、事業者が、CCUSに対して十分に理解が行き届いていないということも大きな要因だと思っています。
そこでお尋ねしたいのは、社保加入が建設業許可の要件に10月からなりますが、許可の要件において、段階的に義務化をすることができないかと思っております。例えば、まずは特定建設業許可を義務化する、次に一般建設業許可の資本金が1,000万円以上を要件とする、最後は全許可業者ということで、新規と更新といったことをすることで、そこで雇用されている技能者も併せて技能者登録の義務化につながるという形になります。そうすると事業者、技能者が相当数増加するという形になりますので、CCUSを活用した適正な就労環境の整備につながるのではないかと思っておりまして、その辺の見解を是非教えていただきたいということであります。
2つ目は、技能者の社員化ですが、正社員化するということは、当然雇用安定に資することになっていくわけですが、公共事業主体の事業者、あるいは一定規模以上の事業者においては、正社員化がこの間に進んできたという実態があるわけですが、中小、小規模事業者においては、財務基盤が脆弱ですので、十分な雇用経費を確保することができないのではないかといった懸念をしているところです。先程申し上げましたとおり、中小、小規模事業者が正社員化をしっかりと推進していく、そういったことをするために、必要な課題を解決しなければいけないというように思っているのですが、どのような方策が考えられるか。その点について教えていただきたいと思っております。
3点目は一人親方問題です。本日の資料の中でも、一人親方の労働者性の確立をどうしていくかということで、説明を頂いたところです。現在、国交省において、一人親方の検討会で、規制逃れを目的とした偽装一人親方の抑制に向けて議論が進められているところですが、問題の根本は、労働者性あるいは事業者性をどのように判断していくのかということに尽きるのではないかと承知をしています。厚労省としては、基準局で労基研報告というものがありますし、恐らくそれをベースにしつつ、さらに踏み込んだ方向性が示されるのか非常に注視しているところですが、蟹澤先生は、この判断基準の中でどういった課題を重視されているのかというのを、是非教えていただきたいと思っています。
4点目は、一人親方に関連するところですが、要は偽装一人親方をしっかりあぶり出していくという中で、施工体系図をしっかりと活用していこうということが明記されております。施工体系図については建築一式の場合は6,000万、下請の場合は4,000万というようになっておりますが、この金額ですと、この金額以下のところについては、現状では作成義務がないという形になっておりますので、例えばこういった基準を引き下げることも偽装一人親方を抑制する1つの方策として考えられるのではないかと思っているのですが、その点も蟹澤先生はどのように考えられているか、教えていただきたいと思います。
○蟹澤教授 たくさん質問いただきました。あと、すべてが厚労省の案件ではないような気もしますが。
1つ目のCCUSの普及のための、例えば建設業許可の要件化という話ですが、ここは国交省の政策の場ではありませんが、これは社会保険の加入は10月から義務化されるわけですし、例えばこの許可をもらうときに、少なくとも事業者として登録していることを要件化していくというようなことというのは、そんなにハードルが高いことではないし、非常に効果的な方策になるのではないかと考えております。基本的には、特定技能外国人の制度を日本人も含めて運用するような形にすると、かなり解決するところもあるのではないかと感じております。
2番目の技能者の社員化で、これは中小零細の所にはまだまだ届かないという話ですが、本来は、他産業のことを考えれば、零細、町工場でも何でも、社員は社員で、年金は年金で入るというのが原則ですので、まずはそういう経費を適正に見込んだコスト構造にしていくということだと思います。これは日建連などはいいと思うのですが、まだまだ町場や何かがそうではない、無保険者等を前提としたような賃金体系になっているところがありますので、そこは徐々に直していく必要があるのではないかと思います。
そういった中では、逆に小倉さんたちにお願いがあるのですが、これは建設労働組合だけに認められている労働者供給事業というのをもっともっと使ったらいいのではないかと思われますが、だけれども、現場で聞くと、無料紹介が前提なので、組合の皆さんがなかなかそれをやるのは尻込みするというような話も聞いております。ですから、組合側で労供の中で、ある相場性というのができてくると、これは設計労務単価を遵守するということだと思いますが、そういったところができてくると、要するに現行制度をもっと活用するということでありますと、そういったところから割と労務単価の波及効果もあると思います。ただ、現状の、労働組合とはいえ無償が前提という制度設計上、そういうことも難しいのですが、そこは御検討いただける余地があるのだったら、御検討いただく価値があるのではないかと思います。
偽装一人親方の話ですが、これはもう労働者性かどうかということでいうと、今までいろいろな労災事故とか、今回のアスベストの問題などでも、やはり一人一人は労働者性が高いということは前々から言われていることです。かつ、職安法の請負か派遣労供かというような基準を見ても、特に重層下請の中で働いている一人親方というのは、請負に該当しない方が多いと思わざるを得ないので、この辺は、厚労省の中のいろいろな法律の狭間になってしまう問題なので難しいのだと思いますが、そういった意味で、私は少なくとも元請でなくて下請の中に、下請に位置付いている一人親方は労働者として運用するとかという考え方が適用できれば、かなり実態に近くなるし、これは例えば元請から見れば、現場の安全管理からいっても、しっかりと指揮命令ができるようになった方がいいのではないかと私は考えております。
4番目の施工体系図のハードルを下げるという話ですが、これも私はそれはいいのではないかと思いますが、これも中小零細の方の負担が大きくなるということで、かなりその辺のハードルはあるのだと思います。
だけれども、もう1つは、なかなか今日は問題にならなかったのは、発注者問題というのがあると思いまして、もっともっと民間の発注者が、要するに安ければ何でもいいというものではなくて、ちゃんと自分のところの発注の工事に関しては、こういうCCUSみたいな制度があるのだったら、それを持っている人にやってくださいとか、そういう働き掛けができるようになる。この場のメインの話題ではなくなりますが、例えば、今回のコロナ禍でもゼネコンが労働者のことを考えて現場を閉めるといった場合に、外国であれば発注者とゼネコンが協議をして、どちらがどれだけ持つという話になるのですが、日本は専ら請負側が負担をし、工期も延ばさないということになってしまうのです。私は、この辺の建設産業の、よく元下関係の片務性と言われますが、もともと発注者と元請の間にも、こういう大きな片務性があって、これに対しては公共が手本を示していくということだと思います。今回のコロナでも、公共は発注者持ちだということがはっきりしていましたので、そういったところまで考えないと、こういった問題は簡単に解決しないのではないかと思います。
○中窪座長 ありがとうございました。第1点目については、使用者側の方にもということがありましたが、いかがでしょうか。
○若鶴委員 こういったキャリアアップシステムを許可要件にするということですが、正にそういったことになれば、本当にいいかなと思っておりますし、そうすることでこれが普及していきますし、ただ、鶏が先か卵が先かというような話になってしまうかもしれませんが、今でも正直に言いまして、事業者登録は何千円から何万円まであるのですが、それをためらう会社もいくつかおりまして、なかなかそれに見合うメリットがないと言うのです。ですから、それが普及していけば、当然このメリットが出てくることになりますし、そういったことになれば、先程おっしゃいましたが、施工体系図などは自動でできるようになりますから、皆さんが使うようになれば、いちいち手書きで作ったりしなくていいようになりますので、そういったことを含めまして、普及させるという意味では、こうしたことをまず検討していただければいいかなと思っています。
○大木委員 キャリアアップシステムを義務化するというのは賛成なのですが、現実には350万人いる中で、今は35万人までしか登録されていない。そうすると、持っている人だけ仕事をしていいですということになると、持っていない人の方がはるかに多くて、仕事が止まってしまうということがありますので、その辺は徐々に、先ほど鶏と卵の話がありましたが、もう少し普及率が高くなってから厳しい許可ということもしていったらいいのかなと思います。
また、一人親方ですが、建設業は個々の現場ですと、忙しいときと暇なときの格差が非常にあります。それを吸収するために重層下請になってしまうのですが、末端、3次、4次下請にいくと、だんだん雇用をしなくて、いい加減なことをやっているというような、重層下請をなくすことが、まず一人親方の雇用改善のための一歩だなと思っています。また、大手ゼネコンに至っても、2次下請までしか認めないというようなゼネコンもありますし、その辺をもっと徹底して、重層下請をなくすということが大事だと思います。
さらに、発注者においては、年度末に忙しくなるとか、夏場に暇になるとか、そういう年間を通して平均した発注量をしていただければありがたいなとも思っています。
また、雇用の流動化というのを先ほど蟹澤先生がおっしゃいましたが、SNS、ネットアプリによって、働く作業員が、うちの現場が忙しそうだとか暇そうだとか、我々は鳶の会社ですが、職人レベルで結構流動化している部分があります。全員ではありませんが。そういったところで、自分たちで忙しい現場を見付けていく、暇な現場はやめていくという、そういった流動化も、ネットワークによって少しずつですが、特に若い職人にとってはそういう傾向があると実感しています。
○高森理事 キャリアアップの許可要件への参入ですが、大木会長のお話にあったように、技能者登録が35万で、事業者は確か6万数千だったと記憶しております。目標に届いていない、非常に低調な数値でありまして、この状況の中で許可要件にこれを取り込むというのは、時期尚早といいますか、私どもの会員企業は全国で1万9,000社おりまして、公共事業に携わっている企業が多いという中で、許可要件ということに一方的に義務化になると大混乱ということになりますので、やはり、ある程度の普及を図った上で、次のステップへ移るという手順が必要だと思いますし、普及を図るための具体的なメリット、元請、下請、専門工事業者の皆さんが実感できるシステムをまず作っていただく方が先決であろうと考えております。
○中窪座長 では、蟹澤教授のお話について、他に御質問、御意見等はございますでしょうか。
私からですが、前回以降、社会保険の加入率がすごく上がったというですが、これは、それだけ意識が変わったということなのか、それとも現場でこれを可能にするような実態の変化があったのでしょうか。
○蟹澤教授 これは国土交通省の重点的な政策として、今回の10月の法律施行で、完全に建設業許可のために要件化されるわけですが、徐々に労働当局との連携による指導の強化とか、指導から取締りになりというように、徐々にハードルを上げてくる中、それから、経審で評価するとか、総合評価で評価するとか、いろいろな政策の中で徐々に上がってきたという経緯があります。
特に、今日ここにいらっしゃるような市場では、かなり加入率というのは高まってきましたし、5年前ですと、建設業に社会保険なんて無理だという話がまだまだあったのが、さすがに最近はそういう話はほとんどないぐらいに意識改革も進みました。何よりも、保険ぐらいには入っていないと担い手確保は無理だという考え方も、それぐらいの担い手に対する危機感の共有が進んだというように、いろいろな背景があるのではないかと思います。
○中窪座長 会社にとって、その分は費用負担になっても、それは当然負担するし、労働者にとってもそこは払って当然だという、そういう意識が広がっているということなのでしょうかね。
○蟹澤教授 そうです。それも法定福利費を明示した見積を作りましょうというところから始まって、例えば日建連側はそれを尊重しましょうという宣言があったりとか、これもかなり定着してきたということです。
これも最初の頃は、法定福利費を切り出して見積なんかできないという声も大きかったのですが、かなりこの辺も普及して、かつ請求されたらちゃんと払うというようなことについても、かなりこの5年間で進んできたということがあると思います。
○中窪座長 ありがとうございます。その他にいかがでしょうか。
○勇上委員 せっかくの機会ですので、質問をさせていただきたいと思います。大変分かりやすい講演で非常に勉強になりました。
1つお伺いしたいのですが、一人親方という存在が、今回の雇用改善計画に当たっても、その対象外という点で依然として大きな焦点であるということは理解したのですが、人材確保という点で、一人親方ではなくて社員化というのが重要であるということももちろん分かるのですが、もう1つ、能力開発といいますか、日本の建設業の持続可能性という話をされたときに、人手という面もそうですが、技術の継承であったり、技能の継承であるという点から見ても、そういった面で見た場合に、通常は一人親方というと、本来は一人前と客観的には建前上は言えるわけです。
ですけれども、今日の先生のお話をお伺いすると、20代から一人親方というのは偽装ではないかというのは、逆説的でそのようになるのだと思うのですが、ですから、ある程度結論は出ているのかもしれないのですが、一人親方という存在が、現在は高技能労働者というような形にはなっていなくて、制度上の隙間を突くようなことになっているのではないかということをおっしゃっているのだと思ったのですが、逆に言いますと、社員化をするとなると、企業が企業の中で訓練するということ、他の業界であれば社員化の最大のポイントというのは、労働者にとっては雇用の安全ですが、企業にとっては企業内のキャリアであったり、技能の向上だと思うのですが、そのように、一人親方が多いという現状が、能力開発とか人材育成の面から見て、どのように評価できるのかということと、社員化というのが、それを解決することにつながるのかどうかということについてお伺いしたいと思いました。
○蟹澤教授 まず、この問題を掘り出すと余計問題がややこしくなるかもしれませんが、日本の能力開発制度というのは雇用保険財源を前提にしておりますので、要するに、雇用されないと職業教育訓練の対象にならないという問題がそもそもあります。そういった意味では、この5年間使われてきた建設業の緊急支援事業というのは就業前教育というのができたので、これは非常に画期的な制度で、これが恒久化したらいいなと思っていまして、今は延長されている最中ですが、もしここの議題にも入るのだったら、是非就業前の訓練が可能になるような、ああいう制度の運用というのが可能であれば、是非続けていただけると、これはいわゆるミスマッチの解消にもなるのです。入る前にいくつか、鳶と型枠と鉄筋をやってみたら、どれが合ったかというようなことも体験できますし、これは非常に大きいと思います。
もっと先の話をすると、見習い制度、英語でapprenticeship(アプレンティスシップ)というのがありますが、この制度を持っていないのは、私は先進国で日本しか知りません。要するに、いきなり雇用か10代の一人親方かという仕組みではなくて、産業として見習い入職制度のようなものを作っていくということです。
これは、この間イギリスに行ってびっくりしたのが、levy(レビィ)といって、そのための財源、イギリスでいう人頭税みたいなものですが、これは従来は建設業だけだったのが、今般全産業に展開されて、すべての産業から雇用している人件費の0.5%を集めて、それをapprenticeshipに充てるということで、それは当然就業前訓練にも使えるわけですが、これは日本に欠けている目指すべき政策だと思います。
短期的には、緊急支援事業のような、就労前教育などをできるような仕組みを定着させることができるのであれば、これは是非やっていただくと、人材確保、それから女性の就業にもかなりいいと思います。特にシングルマザーとか、そういう方々の教育機会としても役立ったという成果を聞いていますので、私はいろいろな意味で波及効果があるのではないかと思っています。もし、これが検討対象だったら、是非御検討いただけるといいと思います。
〇中窪座長 小林委員、どうぞ。
○小林委員 蟹澤先生、ありがとうございました。今日の御説明の中で、この中の論点では出てきていないようだけれどもということで、インボイスの件の御指摘を頂きました。一人親方はここ数年にわたって増加している、社会保険への加入対策だけではなくて様々な理由で増えているということなのですが、2023年10月にインボイスが導入されて、免税事業者の多くが一人親方だろうと推測されます。この一人親方と直接BtoB取引をしている比較的規模の小さな事業者が、第一に直接的に影響を受けるわけなのですが、今、一人親方が様々な事情で増えている中で、更にインボイスが導入され、これによって、一人親方が増加している傾向に何らかの影響が出るのか、増加に更に拍車が掛かるのか、それとも抑制傾向になるのか、インボイスの観点からこの問題にどのような影響が出そうかということについて、何かお考えがあればお願いします。
○蟹澤教授 偽装一人親方の問題で、一番動機付けとして大きいのは、年金保険料の事業主負担分、特に厚生年金の事業主負担分が非常に重いということで、それなので切り離すというのがあったわけです。それと消費税10%を取られてしまうということの択一を迫られたときに、今は厚生年金保険料の事業主負担のほうが少し高いのですが、私はそこのときに、実態として社員の人はこの際に社員にするという選択肢も出るのではないかと思います。特に、これは木建の世界で非常に多いのですが。今まで余り考えていなかったことを、初めてここで、どちらかにしなければいけないのだなということを考える機会には少なくともなるのではないかと思います。
それから、今まで取っていなかった分を引いて渡せばいいのだろうということになると、ある程度の年齢で一生懸命働いている方々などは、もう明らかに辞めることの動機付けになると思いますので、ここは非常に大きな問題だと思います。
偽装一人親方のかなりの部分を占めている保険逃れのためのというところが、ここでは本当に真剣に考えなければいけないという分岐点になるだろうなという気がしています。それはどちらにも来るし、どちらかというと、だったら社員化しようとなってくれるといいのではないかと考えています。
○中窪座長 ありがとうございました。他にもあるかもしれませんが、そろそろ時間となりました。よろしいでしょうか。では、蟹澤先生、貴重なお話をありがとうございました。
それでは、第1議題は以上としまして、2つ目のその他に移ります。各委員から御意見、御質問など、これに関しての御発言はございますでしょうか。よろしいでしょうか。他に何か特にございますか。なければ、本日の審議はこの辺りにしたいと思います。
最後に、今後の日程等について、事務局からお願いいたします。
○福岡室長 建設・港湾対策室長の福岡でございます。本日は、委員の皆様、また御説明いただいた皆様、大変ありがとうございました。今後の進め方について御説明させていただきます。
次回は、10月20日に既にセットされている委員会、本年度は4回目ですが、論点整理を開始させていただきます。本来でありましたら、委員の皆様に論点は何かということを事前にお伺いして、それを踏まえて議論ということになるのでしょうが、時間的な余裕もございませんので、この間、事業主団体あるいは労働者団体、そして今日は蟹澤教授からもいろいろな御提言、御意見等を頂戴いたしましたので、これを踏まえまして、論点整理の案を事務局でたたき台を作らせていただきます。できる限り、事前の御説明であるとか資料提供はさせていただきますが、次回の10月20日については、その事務局が作成したたたき台を踏まえて、御議論をお願いいたしたいと思います。この点を、まず御了承いただきたいと思います。
現時点での事務局の認識としましては、本日、小倉委員から担い手確保が最重要だろうと、そのためには処遇改善をする、これは労使が一致しているというお話がありましたが、私どもも、では、それをどうするのだということを、5年前から新しい論点などもたくさん出てきましたので、できる限り論点整理案の資料としてまとめたいと思います。それが計画にどのように反映するかについては、まだ日程はセットされておりませんが、第5回目で御議論いただきまして、これについては年内に開催したいと考えています。
最終的には、第6回目の最終会、年明けのどこかでセットさせていただきますが、そこになったら、具体的に計画の中身について御議論いただきたいと思います。恐らく、最終会でも細かい表現ぶりの宿題等は頂戴するかもしれませんが、それについては座長に御一任という形で、座長と私ども事務局で相談させていただいて、最終的に計画を策定させていただきたいと思います。
○大橋補佐 私からは、次回の日程についてお知らせいたします。次回は10月20日火曜日の13時から15時の間で、TKP新橋カンファレンスセンターにて開催を予定しております。どうぞよろしくお願いいたします。事務局からは以上でございます。
○中窪座長 それでは、以上で本日の委員会を終了いたします。最後に、本日の会議の議事録の署名委員については、労働者代表は小林委員、使用者代表は大木委員とさせていただきますので、よろしくお願いいたします。本日はお忙しいところ、ありがとうございました。
 
(了)