2020年8月27日 第163回労働政策審議会労働条件分科会 議事録

労働基準局労働条件政策課

日時

令和2年8月27日(木) 10:00~12:00

場所

労働委員会会館講堂(労働委員会会館7階)

出席者

公益代表委員
 荒木委員、川田委員、黒田委員、平野委員、藤村委員
労働者代表委員
 川野委員、北野委員、櫻田委員、津村委員、仁平委員、八野委員、森口委員、世永委員
使用者代表委員
 池田委員、早乙女委員、佐久間委員、鈴木委員、鳥澤委員、山内委員
事務局
 石垣総務課長、黒澤労働条件政策課長、尾田監督課長、大塚賃金課長、小宅計画課長

議題

  1. (1)副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方 について
  2. (2)労働基準法に 基づく 届出等における押印原則の見直しについて
  3. (3)その他

議事

議事内容
○荒木分科会長 それでは、定刻になりましたので、ただいまから、第163回「労働政策審議会労働条件分科会」を開催いたします。
本日の委員の出欠状況ですが、御欠席の委員として、安藤至大委員、水島郁子委員、両角道代委員、使用者代表の大橋俊介委員、佐藤晴子委員と承っております。
本日の議題に入る前に、前回、当分科会を開催してから事務局に異動がございました。定足数の報告と併せて、事務局より説明をお願いいたします。
○労働条件政策課長 事務局でございます。
初めに、事務局に異動がございましたので御紹介させていただきます。
新しく労働基準局長として吉永が就任いたしました。恐縮でございますが、本日、国会関係の用務のため、欠席とさせていただいてございます。
そのほか、総務課長、監督課長、賃金課長に異動がございましたので紹介させていただきます。
まず、総務課長の石垣です。
監督課長の尾田です。
賃金課長の大塚です。
続きまして、定足数について御報告いたします。労働政策審議会令第9条第1項により、委員全体の3分の2以上の出席または公労使各側委員の3分の1以上の出席が必要とされておりますが、定足数は満たされておりますことを御報告申し上げます。
続きまして、本日の議事運営について申し上げます。新型コロナウイルス感染症対策といたしまして、本日も傍聴席の間隔を広げるなどの措置を講じた上で運営をさせていただいております。
会場備付けの消毒液の御利用、咳エチケットなど、御配慮いただきますようにお願い申し上げます。
以上でございます。
○荒木分科会長 それでは、カメラ撮りはここまでということでお願いします。
(カメラ退室)
○荒木分科会長 本日の議題に入りたいと思います。お手元の議事次第に沿って進めてまいります。
まず「(1)副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方について」です。本議題につきましては、前回の当分科会で一通り議論を終えたことから、これまでの議論を整理して示すよう事務局にお願いしていたところでございます。
事務局より説明をお願いいたします。
○労働条件政策課長 事務局でございます。
資料No.1-1と資料No.1-2をお手元に御用意いただきたいと存じます。
ただいま分科会長からございましたとおり、前回までにおきまして副業・兼業に関する一通りの御議論をいただきました。その後、この間の御議論を踏まえまして、各側委員と御調整をさせていただきまして、ガイドラインの案という形で整えましたものをお配りさせていただいているところでございます。
お手元の資料No.1-1がガイドラインの全体の案でございますが、1-1の表紙にございますように、平成30年に策定されております現行のガイドラインをこの間の議論を踏まえて改定するという取扱いとなります。したがいまして、本日は資料1-2のほうで現行から改正する部分に関しまして新旧対照表を御用意させていただいておりますので、説明の便宜上、資料No.1-2で御説明をさせていただきたいと存じます。
また、副業・兼業に関しましては、健康管理につきまして、並行して安全衛生分科会のほうで御議論をいただいてまいりました。昨日開催された安全衛生分科会におきまして、健康管理部分についての取りまとめがなされたところでございます。本日のガイドライン案、新旧対照表いずれにおきましても、安全衛生分科会でお取りまとめいただいた内容も含めて反映させていただいておりますので、この後、その点につきましても、事務局のほうから併せて御報告させていただきたいと存じます。
新旧対照表、右側、「旧」という部分が現行のガイドラインでございまして、左側、「新」の部分が本日この場で御確認いただきました後に改定してまいりたいと考えている部分でございまして、アンダーラインを引いている部分が改定の部分でございます。
以下、ポイントを御報告申し上げます。
まず、1ページでございますが、目次ということで、今回特に労働時間の通算管理の部分を含めまして、詳細な内容を付け加えることで分量がかなり増えますので、改めて目次を付すこととさせていただきます。
全体の構成といたしまして、目次を御覧いただきますと分かりますように、1としてまず副業・兼業の現状に関して簡潔に記し、その次に2として副業・兼業の促進の方向性、考え方を記してございます。この1と2がいわば総論のようなものでございます。
続きまして、3の企業の対応として、「(1)基本的な考え方」は、特に前回御議論いただきました安全配慮義務をはじめといたします、基本的、一般的な問題に関して整理をしている部分でございます。
「(2)労働時間管理」が特に中心となる部分でございまして、ここは前々回の当分科会におきまして御議論いただきました、労働時間を通算して管理し、通算した時間によって割増賃金が支払われていく、あるいは簡便な労働時間管理のモデルといったものを記載している部分でございます。
その次の「(3)健康管理」の部分につきまして、昨日の安全衛生分科会のほうでお取りまとめいただいておりますので、この後御報告をさせていただきます。
その次、4として労働者の対応についても記してございます。この3と4がいわば中心となる部分でございます。
その下に5としまして副業・兼業に関わるその他の制度ということで、労災保険や雇用保険などを簡単に記している部分があります。
全体はそのような構成でございます。
2ページでございます。ガイドラインの冒頭に、ガイドラインの目的といたしまして、「副業・兼業を希望する者が年々増加傾向にある中、安心して副業・兼業に取り組むことができるよう、副業・兼業の場合における労働時間管理や健康管理などについて示したものである」としてございます。
「1 副業・兼業の現状」の部分でございます。ここは現在の裁判例の状況やモデル就業規則などを書いてあった部分でございますけれども、記載の内容がこの2年間で変わってございますので、新しい内容にいわば時点修正をさせていただいております。例えば1の(3)にありますように、モデル就業規則におきましても、「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる」とされていると、その後の状況で変えている部分でございます。
続きまして、「2 副業・兼業の促進の方向性」ということで、メリット、留意点あるいは促進に当たっての考え方などが書かれている部分でございます。
4ページでございます。
中ほどの(2)の部分に、現在のガイドラインにおきましては、副業・兼業の意義としまして、オープンイノベーション、起業の手段あるいは地方創生にも資するといったことが書かれてございますが、最近の全体の議論といたしまして、人生100年時代を迎え、若いうちから自ら希望する働き方を選べる環境をつくっていくというような観点を追加させていただいております。
また、5ページの冒頭の部分でございます。現在のガイドラインにおきましても、副業・兼業においても長時間労働にならないようにということが記載されてございますが、この間、当分科会におきましても、1日8時間・週40時間といった法定労働時間の趣旨を踏まえながら、長時間労働にならないようにしていくべきであるというような御指摘がございまして、「労働者の心身の健康の確保、ゆとりある生活の実現の観点から法定労働時間が定められている趣旨にも鑑み、長時間労働にならないよう」と記載させていただいてございます。
その次でございますが、現在のガイドラインにおきましては、労働基準法の規制を潜脱するような形態で行うことは認められないということが書かれてございましたが、今般、健康管理のほうに関してもかなり充実してございますので、同様に安全衛生関係の規制に関しましても、契約の形態などに関わらず実態に応じてそういったものが適用されるということが記載されています。ここは安全衛生分科会の議論を踏まえたものでございます。
続きまして、「3 企業の対応」の部分でございます。
「(1)基本的な考え方」が前回御議論いただきました一般的な考え方を盛り込んでいる部分でございます。下から2番目のパラグラフでございますけれども、「なお、副業・兼業に係る相談、自己申告等を行ったことにより不利益な取扱いをすることはできない」という記載をしてございます。ここは現在労使のコミュニケーションが重要だというところが書かれている部分でございますが、安全衛生分科会のほうにおきまして、必要な配慮がなされるためにも、副業・兼業をしているということを申告しやすい環境が重要であるという御指摘がございましたし、また、同様の御議論はこの分科会でもあったと承知してございます。したがいまして、このような記載を追加するというような案としてございます。
続きまして、5ページの下3行、「また」以下が前回御議論いただきました安全配慮義務その他に関して、前回の御議論を入れている部分でございます。この間の議論を踏まえて直している部分がございまして、6ページを御覧いただきたいと存じます。下から2番目の黒ポツの部分でございます。これは安全配慮義務の関係で考えられることとして、副業・兼業の届出などの際に安全や健康に支障をもたらさないか確認をするという部分でございますが、前回の御議論の中で、始まってからの状況の報告といったことも重要であるという御指摘がございましたので、「副業・兼業の状況の報告等について労働者と話し合っておくこと」と追加させていただいております。
続きまして、7ページの「イ 秘密保持義務」の2つ目の黒ポツでございます。これまでの御議論の中で、漏らしてはいけない秘密の範囲といったものを労働者も理解できるようにしておくことが重要であるという御議論がございましたので、副業・兼業を行う労働者に対して業務上の秘密となる情報の範囲などを注意喚起することというような記載とさせていただいております。
続きまして、8ページでございます。
上から2つ目の黒ポツは競業避止義務について書いてある部分でございますが、前回の御議論におきまして、禁止される競業行為の範囲といったことに関しても注意喚起が必要であるという御議論がございましたので、追加させていただいております。
続きまして、9ページでございますが、下から3行目から「(2)労働時間管理」というところが以下記載されてまいります。ここが前々回御議論いただいた通算管理の部分でございます。
10ページで、アといたしまして労働時間の通算が必要となる場合について記載してございますけれども、11ページの中ほどを御覧いただきたいと思います。「なお、労働時間を通算して法定労働時間を超える場合には、長時間の時間外労働とならないようにすることが望ましい」と追加させていただいております。これもこの間の当分科会の御議論を踏まえて追加させていただいているものでございます。
続きまして、12ページを御覧いただきたいと存じます。
上のほう、イで副業・兼業の確認について記載をしている部分でございますが、その下の(イ)で労働者から確認する事項を書いてございます。ここに関しましても、前回までの御議論におきまして、始まってから後の状況の確認といったこともあらかじめ話し合っておくことがよいのではないかという御議論がございましたので、12ページの(イ)の確認事項といたしまして、黒ポツ3つの後に「労働時間通算の対象となる場合には、併せて次の事項について確認し、各々の使用者と労働者との間で合意しておくことが望ましい」との一文を入れた上で、13ページでございますけれども、黒ポツの4つ目と5つ目、他の使用者の事業場における実労働時間などの報告の手続、これらの事項について確認を行う頻度といったことに関しましても、あらかじめ確認をし合意をしておくというようなことを追加させていただいております。
続きまして、13ページ、「ウ 労働時間の通算」で通算管理の詳細な記述が盛り込まれております。分量はやや多くなってございますが、以下、新旧対照表でいうと16ページにかけまして通算のやり方に関してこの場の御議論を記載させていただいております。
続きまして、17ページの一番上でありますが、「エ 時間外労働の割増賃金の取扱い」という項目がございます。ここも前々回御議論いただきましたように、労働時間を通算して、通算した時間に基づいて割増賃金が支払われていくということを記載させていただいております。
同じく17ページ下のほう、「オ 簡便な労働時間管理の方法」とございます。これも前々回御議論いただきましたように、申告等、あるいは通算管理の労使双方の負担を軽減する、その一方で労働基準法に定める最低労働条件が遵守されやすくなる簡便な方法、いわゆる管理モデルに関して記載させていただいているところでございます。これまで御議論いただいた内容によりまして、21ページまで管理モデルに関して記述させていただいているところでございます。
続きまして、21ページ下のほう、「(3)健康管理」とございます。昨日の安全衛生分科会におきまして取りまとめられた内容を反映させていただいておりますので、御報告をさせていただきます。
21ページ下のほう、「また、健康確保の観点からも他の事業場における労働時間と通算して適用される労基法の時間外労働の上限規制を遵守すること、また、それを超えない範囲内で自らの事業場及び他の使用者の事業場のそれぞれにおける労働時間の上限を設定する形で副業・兼業を認めている場合においては、自らの事業場における上限を超えて労働させないこと」とされております。すなわち、今般の労働時間の通算、その上限規制、あるいは管理モデルといった設定をきちんと守ってやっていく。これが健康管理の観点からも重要であるということで、まずもってこのことを記載するということとされてございます。
続きまして、22ページの下のほう、「ア 健康確保措置の対象者」ということで、ただし書きで「使用者の指示により当該副業・兼業を開始した場合は」とございますけれども、原則として、副業・兼業先の使用者との情報交換、それが難しい場合は申告により把握し、自らの事業場における労働時間と通算した労働時間に基づき健康確保措置を実施することが適当であるとされてございます。
続きまして、23ページでございます。
「イ 健康確保措置等の円滑な実施についての留意点」ということで、冒頭数行のアンダーライン、使用者が労働者の副業・兼業を認めている場合は、健康保持のため自己管理を行うよう指示し、心身の不調があれば都度相談を受ける。状況も踏まえ、必要に応じ健康確保措置を実施する。そういったことを労使の話合いを通じまして措置を実施することが適当であるということを、安全衛生分科会の御議論を踏まえて追加してございます。
同じページ、真ん中ほどでございます。「さらに」というところでございます。使用者の指示により開始した場合について、実効ある健康確保措置を実施する観点から、労働の状況等の情報交換を行い、健康確保措置の内容に関する協議を行うことが適当であるということが記載されてございます。
引き続きまして、「4 労働者の対応」でございます。労働者の対応に関しましては、現行のガイドラインにおきましては、働く側としても適切な副業先を選んでいく、働くほうとしても、自らの健康等にも注意していくといったような記載をされている部分でございますが、24ページの上のほうでございます。安全衛生分科会の議論を踏まえまして、下線が引いてある部分でございますけれども、例えば副業先等、求職活動、仕事を探す場合につきましては、時間外労働の有無などの情報を集めて、適切な就職先を選択することが重要だというようなこと。その中におきましては、ハローワークなどの求人を用いていくことも有効であるというようなことが追加されてございます。
同じく24ページ、(2)の最後の3行、「また」ということで、労働者の対応といたしまして、「他の事業場の業務量、自らの健康の状況等について報告することは、企業による健康確保措置を実効あるものとする観点から有効である」と追加されてございます。
以上が安全衛生分科会でお取りまとめいただいている変更点でございます。
最後に25ページでございますが、「5 副業・兼業に関わるその他の制度について」というところでございます。(1)で労災保険について書かれてございますけれども、労災保険につきましては、さきの通常国会におきまして、複数就業者のセーフティーネットの整備ということが図られておりますので、そうした内容に関しまして、中ほどのアンダーラインの部分で記載させていただいているというものでございます。
次に、25ページの下から2行目、雇用保険などが書かれている部分でございます。最終26ページの中ほどにございますが、雇用保険に関しましても、先般の法改正によりまして、これは令和4年からということになりますが、65歳以上の方に関しましての新たな制度が開始されますので、そういったことに関しても記載させていただいているところでございます。
以上が今回のガイドラインの改定案でございます。
なお、本日御覧いただきましたように、今回の議論は労働時間の通算管理を中心といたしまして、かなり詳細な内容でございますので文字数が多くなってございますが、本日この場で御確認、御了解いただけました後には、当然のことながら、パンフレットなどを使いまして、一般の労使の方々に分かりやすいめり張りの利いた周知を心がけてまいりたいと考えておりますことを併せて申し添えさせていただきたいと存じます。
私からの説明は以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
ただいまの説明につきまして、御質問、御意見等があればお願いいたします。
仁平委員。
○仁平委員 ありがとうございます。
今し方、課長から御説明いただいた新たなガイドラインについては、当分科会でこれまで議論がなされてきましたが、それがおおむね反映された内容であると受け止めております。
この間も繰り返し申し述べてまいりましたが、副業・兼業は、生活のために必要に迫られて行う人が多く、複数の仕事に就くことで長時間労働になるおそれもあると考えております。本来は、そうした人が1つの仕事で生活できるようにすべきであると思いますが、現実として、賃金水準が決して高いとは言えないパートの掛け持ちなどが広く行われている実態にございます。現下の経済情勢では、こうした働き方がさらに広がる可能性があるということも考えれば、副業・兼業については非雇用も含めた就労者の保護こそ喫緊の課題として優先的に取り組むべきであると考えております。
近年、副業・兼業をめぐって、時間外労働の上限規制や割増賃金に関して、事業主が異なる場合は労働時間の通算を行わないように見直すべきという議論もあった中で、今回、事業主が異なる場合の労働時間の通算を維持することが明確にされたということは、労働者の保護の観点から評価したいと思っております。
なお、新たなガイドラインで長時間労働の抑制を促す記述が補強された点も評価しているものの、副業をしようがしまいが、一人の労働者の労働時間というのは原則として週40時間、1日8時間の法定時間に収めるという考え方が明確に打ち出されなかったことは残念であると思っております。今後の労働政策において、こうした方向で議論を行う必要があることをいま一度強調した上で、本ガイドラインについては了承したいと考えております。
以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。
八野委員。
○八野委員 ありがとうございます。
私のほうからは、今の仁平委員の発言を前提としながら、現場の視点から意見、要望を申し上げたいと思います。
副業・兼業の労働時間の通算というのは、実際、これまでにはあまり明確には行われていなかった、十分知られていなかったということがあったのだと思っています。
今回、労働時間の管理と健康管理について詳細にガイドラインに整理されました。これが現実のものとして実行されなければならないと思っていますので、その辺については労働組合も、使用者とともにしっかりとやっていきたいと思っていますし、厚生労働省にも取組をお願いしたいと思います。
懸念ということで申し上げますと、以前、労働者側の委員が指摘したように、既に他社で働いている労働者を受け入れる形で新たに副業・兼業の労働契約を締結する際に、労働者は、すぐに割増賃金が必要となることが申告できるのか、または、その申告があったときに、企業は、その労働者を忌避せずに雇用するのかといった点については、やはり懸念が残るところがあります。新たなガイドラインの実効性を確保するためには、先ほども申し上げたように、労使とともに厚労省も、周知などの面で一層の取組をお願いしたいと思っています。
また、最近、インターネットの求人サイトの中で、企業の求人情報を見てみました。そうすると、今、こういう記載があるのです。ダブルワーク可能。ただし、通算の労働時間が週40時間、1日8時間を超えないこと。週1回の休日を確保できること。他社での兼業許可を取得していること、というのが明示されているのです。こうした情報があれば、副業・兼業をしようとしている労働者にとっても分かりやすいし、副業・兼業であることも申告しやすいのではないかと思っています。一部の企業ですが、実際にこうしたことをやられているところもありますので、企業がこうした情報を明示することを促す方策についても検討していただきたいと思います。よろしくお願いします。
以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
池田委員。
○池田委員 御説明ありがとうございました。
質問になりますが、簡便な労働時間管理の方法、管理モデルで、副業開始前に設定する使用者Bの労働時間のうちに、通算しても法定労働時間を超えないことが明らかな部分がある場合には、その部分について使用者Bで割増賃金が支払われないこととしてよいかということを教えてください。
例示をしますが、使用者Aが月曜日から金曜日まで週5日間7時間勤務で週35時間働く。そういう働き方を管理モデルとして提示した場合で、使用者Bは土曜日のみ週1日8時間勤務する。そういう勤務だった場合に、使用者Aでは割増賃金の発生がなく、使用者Bでは週40時間を超過する3時間が割増の対象、5時間は通常の賃金でよいかと。そういう事例だとどうなるかということを確認させてください。お願いします。
○荒木分科会長 それでは、御質問ですので、事務局からお願いします。
○労働条件政策課長 ありがとうございます。
池田委員の御質問でございます管理モデルにつきましては、ガイドラインのほうにも記載をさせていただいておりますが、副業が始まる前の段階で、使用者Aの法定外労働時間と使用者Bの労働時間につきまして上限規制の範囲内でそれぞれ上限を設定すること。そして、それぞれについて割増賃金を支払うこととするものでございます。その効果といたしまして、副業開始後におきましては他の使用者の下での実労働時間の逐一の把握が不要、それでも法が遵守できるという枠組みでございます。
今、御質問がありましたように、これも一つの例ということであると思いますけれども、あらかじめ設定するBの時間のうちに、どう考えても明らかに法定労働時間を超えようがないという部分が仮に事前に特定が可能なのであれば、そこの部分は当然ながら割増賃金が払われなくても法違反となるものではございませんので、さらなる一つの工夫、一手間かけていただいて、入り口でそこを特定していただければ、そこの部分は割増賃金を払われないということにしても法律上問題はないというものでございます。
そういった意味では、池田委員の御指摘の趣旨のとおりであると思います。
○池田委員 ありがとうございます。
先ほど黒澤課長のご説明の最後にもありましたが、働き方は多様な実態があるかと思いますので、パンフレットなどにおいては、様々なパターンの例示を取り入れるなど、くれぐれも分かりやすい周知をお願いできればと思います。
どうもありがとうございました。
○荒木分科会長 ほかにはいかがでしょうか。
早乙女委員。
○早乙女委員 ありがとうございます。
私からは、ガイドラインの7ページから8ページにございます秘密保持義務、競業避止義務について意見を述べたいと思います。
副業・兼業に当たりましては、労働者の方が秘密の保持、競業の禁止について意識することが重要であるとともに、企業としても、業務上の秘密の範囲や禁止する競業の範囲を明確に示すことが必要であると思います。
しかしながら、依然として正当な業務上の秘密の範囲、競業禁止の範囲がどこまでなのかが明確でなく、企業担当者としては判断に不安を感じるところでございます。
前回の分科会でも申し上げたのですが、事務局におかれましては、参考となるような裁判例や、そのポイントを解説するといったような分かりやすい周知をぜひお願いできればと思います。先ほど黒澤課長からも分かりやすく周知していくということをおっしゃっていただきましたので、ぜひお願いしたいと思います。
以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
鈴木委員、お願いします。
○鈴木委員 ありがとうございます。
ガイドラインの内容につきましては、おおむね賛成です。これまで副業・兼業者の労働時間の通算方法は、必ずしも明確ではありませんでした。各社からは、どこまでの対応をとれば労働基準法上の義務を履行したことになるかがわからない、といった声があったところでございます。
今般、簡便な労働時間管理の方法が示されたことの意味は大きいと考えております。副業・兼業の解禁に躊躇していた企業は、こうした新しい仕組みが示されることで、解禁の方向に向かうことが期待できるのではないかと思っております。
経団連といたしましても、健康確保に十分留意した上で、各社の実態に合った実効性のある仕組みとなるよう、ガイドライン等の周知に努めてまいりたいと思っている次第でございます。
1点だけ質問をさせていただきたいと思います。
管理モデルを利用する場合、上限規制の枠内で、A社で何時間にするか、あるいはB社で何時間にするかということにつきまして、個別契約あるいは事前に大枠を就業規則で定めるということになれば、通常は集団的な労使の中で話し合いをして決めていくことになろうかと思います。その際、上限をどう設定するかにつきましては、例えば時間外労働が合算して上限近傍の80時間にならないよう、適切な労働時間になるように決めていくことが大切だと思っております。
その意味で、上限規制の枠内の設定につきましては、基本的には本業企業のイニシアチブが大きく働くということを認めていただくことが重要だと思っております。労働者の自由意思だけで決められるものではないという理解でよいかという点について、改めて事務局に確認をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○荒木分科会長 それでは、事務局よりお願いします。
○労働条件政策課長 鈴木委員の御指摘の点でございます。今回、管理モデルに関しましても、このガイドラインの中において導入の手順といったものも示させていただいておりまして、例えばそういった中におきましても、一般的には副業・兼業を行おうとする労働者に対して使用者Aが管理モデルにより副業・兼業を行うことを求めまして、労働者、それから労働者を通じて使用者Bがこれに応じることによって導入されることが想定されるというところでございます。
当然、この働き方に関しましては、労使の契約において決まるものでもございますし、さらにそれが法定の枠の中でございましても、本業に支障がない、さらには御本人の健康に問題がないということで納得のある働き方が決められていくものでございますので、そこはきちんと労使の話合いの中で適切な形で導入をされていくものであると考えてございます。
○荒木分科会長 よろしいでしょうか。
ほかにはいかがでしょうか。
佐久間委員、どうぞ。
○佐久間委員 ありがとうございます。
私ども中小企業のほうも、このガイドラインは皆様方と議論をして煮詰めてきた成果でありますので、おおむね了解という立場を取らせていただきたいと思います。
新旧対照表の12ページで、副業・兼業の確認とあります。そこの中で、今回、新たな文言が入ったのがイの(ア)の下から2行目に、「副業・兼業の有無・内容を確認するための仕組みを設けておくことが望ましい」とあります。この仕組みというのが、どこまで入るかというのが少し分かりにくいと私は感じます。
労働者から「何らかの確認する事項」を確認すれば仕組みの一つになるのか。また、就業規則も、従業員10人未満の事業所では、作成していないところもありますから、副業・兼業についての規程をつくればいいのか。この後に書かれている項目がどれだけ入ればいいのか。規定上、作成しておかなければいけない文書、書類があるのではないかと思います。また、管理モデルというものを導入していけば、それも一つの仕組みになるのか、どういう項目を入れていけば仕組みになるのかということを、やはり明確に周知していくことが必要なのではないかなと思います。
先ほど、八野委員がハローワークのほうで言われたことは、本当によい点ではないかなと思います。ですから、周知、周知と言いますけれども、仕組みというのはどういうものがあるかということを、ガイドラインとは別にパンフレットの中でも明示していただければ幸いと存じます。
以上でございます。
○荒木分科会長 鳥澤委員、お願いします。
○鳥澤委員 ありがとうございます。
副業・兼業を希望している人が増えているとガイドラインに書いてありますとおり、現在、市場が先行している中で、このガイドラインが作成されたことは、非常に意味が大きいと思います。
特に新旧対照表の17ページにありますように、簡便な労働時間の管理の方法が記載されたことは、企業の実態に照らしておおむね妥当であると思います。
ただ、副業・兼業の促進に当たっては、事務局の説明にもありましたように、このガイドラインのみとなりますとなかなかの分量がありますので、図やQ&A方式などを取り入れたパンフレット等を使って、企業だけでなく労使ともに分かりやすく周知していくということが非常に大事だと思います。また、簡便な労働時間管理の方法を実際に導入し、運用していく際の書類のひな形を示していただくことが重要だと思います。
加えて、ガイドラインの4ページにも「都市部の人材を地方でも活かす」という記載があります。これは大企業の人材を中小企業にという意味もあるのかもしれませんが、地方創生につながるような具体的な成果も今後講じていただきたいと思います。
以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。
公益委員からは特によろしゅうございますか。
特にほかには御意見がないようですので、本議題につきましては、事務局の案で委員の皆様の御了解を得ることができたのではないかと受け止めたところでございます。
それでは、そういうことで、事務局におかれましては、ガイドラインの改定について作業を進めていただきたいと存じます。
どうもありがとうございました。
では、ここで事務局より御挨拶いただくということでよろしいでしょうか。
○労働条件政策課長 恐縮でございます。局長が席を外してございますので、私が代わらせていただきます。
ただいま御議論いただきました、副業・兼業の場合の労働時間の管理の在り方につきましては、昨年の秋より当分科会で議論を開始していただきまして、本日までの間、委員の皆様におかれましては大変熱心な御審議を頂戴したところでございまして、改めて感謝申し上げます。
本日お示しさせていただきました副業・兼業の促進に関するガイドラインの改定案につきましては、委員の皆様に御了解をいただいたところでございまして、この内容に沿ってガイドラインの改定を早期に実施してまいりたいと考えてございます。
また、分かりやすい周知などに関しましても御指摘を頂戴いたしました。今後ともこの副業・兼業を労使ともに安心して納得した形で進めていくことができますように、分かりやすい周知に努めてまいりたいと存じます。
引き続き、各委員の御指導を賜りますようにお願いを申し上げる次第でございます。
本日は誠にありがとうございました。
○荒木分科会長 非常に技術的に込み入った部分もありますので、分かりやすい形での説明、周知をぜひお願いしたいと存じます。ありがとうございました。
続いて、次の議題に移りたいと思います。
「(2)労働基準法に基づく届出等における押印原則の見直しについて」であります。本議題につきましては、前回の当分科会の議論を踏まえて、事務局において対応を検討し、報告していただくようお願いしたところでございます。
では、事務局より説明をお願いいたします。
○監督課長 監督課長の尾田でございます。私のほうから御説明いたします。
資料No.2を御覧いただければと思います。
まずおめくりいただきまして1ページ目でございますが、前回7月30日の分科会におきまして、委員の皆様から様々な御意見をいただきました。
1つ目の御意見につきましては、押印原則の見直しに向けた検討に着手したことを歓迎したい。押印欄の廃止は適切という御意見をいただいております。
2つ目の御意見でございますが、法改正の際の議論でも労働側から過半数代表者も含めて押印するべきではないかという議論もあったところ、そうした過去の議論の経過、実態も踏まえて、過半数代表者の適正な選出の徹底に資するような方向での議論が必要ではないかという御意見。
3つ目でございますが、中小企業の実態として、36協定を結ばなければいけないということがまだ遅れている状況である。まず労使協定があって、双方の合意があったものを届け出るということの周知をしっかりしていくいい機会であるという御意見。
4つ目でございますが、協定書と協定届の違いについて十分な理解が進んでおらず、今回の見直しを契機として、誤った理解が広まっていくという懸念がある。協定届が使用者の一存で作成されたものではないということが何らかの形で担保できる仕組みが必要。現場の実態、影響を考慮して慎重に検討を進めることが必要という御意見でございます。
最後の御意見が、中小企業にとっても押印の原則見直しというのは非常にありがたいことである。業務の効率化に寄与する。一方、電子申請について、なぜ利用率が少ないのかということをしっかり分析して、電子メールも含めた電子申請の促進を同時に実現していただきたい。
このように、様々な御意見をいただきました。こうした御意見を踏まえて、今回の御議論に向けた御提案をさせていただきます。
まず、次のページとその次のページは、前回も御質問等ございました実態のデータでございます。まず過半数代表者の選出状況につきましては、前回、村山安全衛生部長から口頭で御説明させていただきましたが、JILPTの調査によりますと、上段が2007年10月でございますが、過半数代表者の選出方法として、色がついているところは、明らかに不適切な方法といえる、社員会・親睦会などの代表者が自動的になった、あるいは会社側が指名した、といったもの。こういったものが合わせて39.4%ございます。無回答も合わせますと、半分が不適切な代表の選出方法という実態でございます。
下が2018年の直近のデータでございますが、不適切な方法が、無回答も合わせて申しますと約3割ということで、一定程度改善していることが見受けられますが、それでもまだ3割が不適切ということが見てとれるところでございます。
次のページは、36協定届の届出の件数、あるいは36協定の締結状況のデータでございます。上段が私どもの業務報告でございますが、毎年の36協定届の届出件数、年々増加はしておりますが、直近のデータで178万件。全国の事業場数が私どもの推計で412万ほど、400万余りと推計しておりますので、まだまだ半分弱の届出ということでございます。
下のデータは、少し古いですが平成25年の労働時間等総合実態調査におきまして、協定の締結について実態を把握したものでございます。そもそも協定を締結しているかいないかというところで、締結している事業場が51%、約半分、締結していないところが49%。この締結していない事業場の中で、そもそも時間外・休日労働がないというところが45%の回答がございます。ですから、その裏返しで55%近くの事業場が労使協定の締結の必要があるけれども締結していない。よって、雑駁に申しますと、全体の4分の1の事業場が労使協定の締結の必要があるけれども締結できていないということです。ですから、4分の3の事業場が時間外・休日労働の労使協定の締結の必要があり、上段の届出件数との対比で申しますと、約半分近くが今提出されているということですので、下の実態が正しいとしますと、まだ4分の1の事業場に提出していただいていないということかと思います。
そうした実態を踏まえまして、今回の御提案でございますが、4ページ目でございます。
上段の方針案でございますが、現在押印を求めている法令様式等につきまして、押印原則を見直し、使用者、労働者の押印欄の削除。そして、法令上押印または署名を求めないこととする。これと併せまして、電子申請における電子署名の添付も不要としたいと考えております。
あわせまして、押印を求めている法令様式のうち、過半数代表者の記載のある様式につきましては、様式上にチェックボックスを設けることにしたいと思っております。
このチェックボックスにつきまして、下のところでございますが、具体的に申しますと、まず過半数労働組合がある場合につきましては、過半数労働組合が労働者の過半数で組織されているものであることについてチェックしていただく。過半数代表者と労使協定を締結する場合につきましては、その代表者が労働者の過半数を代表していること、管理監督者ではないこと、選出方法が適正であることといったことについてチェックをしていただく。これらのチェックがない場合には、形式要件を満たさないとして届出が受け付けられないという扱いにしたいと思っております。
こうしたことにつきまして、私どもとしてしっかり周知・指導を徹底していきたいという方針でございます。
次の5ページ目が具体的な様式の改定案、こちらは時間外・休日労働協定届でございます。一番下、今、使用者のところが「印」となっておりますが、ここの欄を廃止したいと思います。その上で、上の黄色でマーカーをしているところでございますが、上段が労働者の過半数を代表しているということのチェック。下段が過半数代表者である場合に、その選出が適正であることに関するチェック。この2つのチェックボックス欄を設けるということを併せて講じたいと思っております。
様式の改正としてはそのような方針を考えているところでございますが、次の6ページ目でございます。前回の御議論の中でも、実態として協定書と協定届を一体で届け出ている例が多いという中で、今回の見直しを契機に誤った理解が広まる、すなわち協定書を労使で締結しなくても、一方的に事業主が協定届を書きさえすればいいのだという理解が進むということについての懸念がお示しされたところでございます。
私どもといたしましては、現在、中ほどに書かせていただいておりますが、働き方改革関連法に基づきます時間外労働の上限規制の解説のリーフレットを例に出しておりますが、この中で、協定書と協定届を兼ねる場合、労働者代表につきましては署名または記名・押印が必要ですという注釈を書いております。また、電子申請の場合でも、きちんと協定には過半数代表者、組合の署名・押印が必要ですといった注釈を付した上で周知啓発をしているところでございます。
私どもといたしましては、今回の見直しと併せまして、現在も行っております周知の方向性に沿った形で、さらに適正な労使協定の締結が進むよう、周知・指導を徹底したいと考えているところでございます。
7ページ以降でございます。今回、36協定届、時間外・休日労働の協定届で代表させていただいておりますが、労働基準法令におきましてはその他多数の届出申請等がございます。これらについても今回の見直しの方向性に沿った形での見直しをさせていただきたいと思っております。一番右の欄に「過半数代表者の記載のあるもの」とございますが、これに丸のある様式につきましては、36協定届と同様にチェックボックス欄を設けるという改正も併せて講じたいと思っております。7、8、9ページがそういった様式でございます。
10ページ目は省令様式がないもの、省令で署名または記名押印が必要という記載のみがあるものが幾つかございます。これらにつきましても、法令上は署名、押印を不要とするような形での省令の改正をしたいと考えております。
11ページ以降は参照条文となっております。
事務局からの説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
それでは、ただいまの説明につきまして、御質問、御意見等があればお願いいたします。
山内委員。
○山内委員 山内でございます。
御説明ありがとうございました。
前回の分科会の労使双方の議論を踏まえて、36協定を含む労働基準法の手続における押印の原則見直しに取り組んでいただけるということを伺って、これは一定の評価を差し上げたいと考えております。
政府全体の方針であるデジタルガバメントの断行に向けて、厚生労働省においては率先して押印、書面、そして対面、この辺りの見直しをぜひ進めていただければと考えております。
我々使用者側の企業が今どういうような状況にあるかと申し上げますと、3つの変化を乗り越えていこうと取り組んでいます。
まず1つが事業の変化です。これは皆さん御承知のとおり、AIやIoTなどデジタルの進展に伴って、様々な事業の取組を変えていかなければいけないというような状況に追い込まれています。
もう一つは、従業員個人の価値観も大きく変わってきております。ワーク・ライフ・バランス、いわゆる家庭との両立というようなものを、企業としてもサポートする形を考えていく必要があるということ。
最後、3つ目は日本の課題です。少子高齢化に伴う人手不足などに対してどのように対応していかなければいけないのかということを考えております。
そういう中で、36協定の締結という長い歴史の中で、押印業務は非常に貴重な価値があるということを我々も理解しております。それを今回廃止するという英断に至った経緯については非常に評価したいという一方で、5ページの様式も恐らく従前から大事にされてきた届出内容かとは思います。
電子申請が既に行われているということで、私も実際に画面を操作してみました。私のパソコンの環境がよくなかったのかもしれないのですけれども、途端に凍りつきまして動かなくなってしまいました。
いわゆる電子申請というのは、いろいろな課題もありますし、届出項目をきちんと整理していく必要もございます。もし先ほど御説明いただいたような数々の労働基準法の届出をこういう形で電子申請を含めて考えていくというようなことを検討いただくのであれば、簡便な方法にすることによって解釈の誤解を招いてはいけません。ただ、先ほどからお話しいただいたように、届出率がまだまだ十分でないということを考えると、例えば事業場名とか、既に届けているものについては、基本的に統一ナンバーでプルダウンで自動的に出てくるなど、届け出る側にも少し負荷を軽減するような検討も併せて進めていただければありがたいかなと考えております。
私どもも、この届出については労使間で様々な議論を重ねて、きちんと届出をする、ということを考えておりますが、やはり届出をするにあたって労使で議論をすることが非常に重要であり、それを明確にお届けすることでそれを表すという手続を、デジタル化の進展に伴って、できるだけスムーズに進むような形に考えていただければありがたいなと考えております。ぜひよろしくお願いします。
○荒木分科会長 ほかにはいかがでしょうか。
池田委員。
○池田委員 どうもありがとうございます。
このたびの厚生労働省の取組は大変評価しておりまして、この資料にあります4ページのとおりに進めることに賛成しています。
ただ、一方でテレワークやデジタルガバメント推進の観点からは、政府全体としてまだ一層の取組が求められるのかなと感じております。労働基準法や労働安全衛生法をはじめとする厚労省所管の手続の電子化だけではなくて、例えば6月頃に会社などを通じて配布される個人住民税の特別徴収税額の決定通知書の電子化や、保育所に入所するときに必要な就労証明書の様式統一、並びにその押印の見直し、法人設立手続におけるオンライン、ワンストップの実現などについても、企業の実務面など、現場サイドの強いニーズがございます。官民双方の働き方改革にも資するものであると思いますので、厚労省から他所管府省にぜひ働きかけいただいて、さらなる進展をするように期待しております。どうぞよろしくお願いいたします。
以上です。
○荒木分科会長 ほかにはいかがでしょうか。
川野委員。
○川野委員 ありがとうございます。
36協定届の押印を廃止することによって、その趣旨が正しく理解されず、不適切な事案が増えるのではないかというのは、この間再三発言してきたとおりでございます。
先ほどの説明のとおり、現在の行政監督における運用では、資料の6ページに記載されているように、協定届が協定書を兼ねる場合には、労使双方の代表者の署名または記名・押印が必要とされています。この場合の労使の押印は、労使の合意に関する押印であって、行政手続上の押印でないということです。
政府の押印見直し議論の対象ではなく、省令様式第9号の使用者の押印が廃止されたとしても、引き続きこの運用は維持されるものと理解していますが、先ほどの説明どおり、そうした理解でいいのか、まずは確認をさせてください。
○荒木分科会長 それでは、事務局よりお願いします。
○監督課長 ありがとうございます。
私も先ほど御説明し、川野委員も御指摘のとおり、今回の協定届というのはあくまでも行政への届出書における押印の廃止でございまして、労使の慣行としてこれまで築き上げてこられた合意書の適正性に関する在り方についてまで私どもとして何か仕組みを変えるということでは決してございません。
ですから、そうしたことのないように、6ページ目でも書いておりますが、従前の周知啓発の中でも、協定届が協定書を兼ねる場合にはきちんと労使として適正に合意したことが確認できるようなやり方、今ですとまだ署名、記名・押印等が必要と我々も認識しておりますので、そうしたことでやりましょうということを私どものリーフレットでも書いております。ですから、この方向性は引き続き維持した上で、しっかり誤解のないような周知啓発をしていこうと私どもとしても考えております。
○川野委員 ありがとうございます。
その上で、今後、省令様式第9号の使用者の押印が廃止されることで、協定届が協定書を兼ねる場合における労使の署名、押印が廃止されたと誤解されないように、説明のとおり、周知徹底が大変重要になってくるのだと思います。
そのため、リーフレット等にある記載例の中に吹き出しで注釈を入れていただいていますとおり、協定届が協定書を兼ねる場合には労使双方の代表者の署名または記名・押印が必要であるという記載は引き続き残していただくということ、いずれのリーフレット、パンフレット等についても現状どおり残していただくということを徹底していただきたいと思います。
また、協定届に記載する人全てが記載例を見るということではないかと思います。届出用紙の裏に、記載心得ということで詳細に留意事項が書かれています。この間、罰則つき上限規制の議論のときに様々な留意点を記載したものですから、字が大変小さくなってしまっておりますが、ぜひともそちらのほうにも、留意事項の一つとして、協定届が協定書を兼ねる場合は労使双方の記名・押印が必要であるということを記載していただくよう要請いたします。
○荒木分科会長 事務局からいかがでしょうか。
○監督課長 今、川野委員から御指摘いただいたとおり、特に36協定届、時間外・休日労働に関する届が一番記述が多いのですが、裏面に記載心得という形で留意事項を書いております。ここに記載されている内容は、基本的に法令にのっとった記入がなされるように留意事項を書いているということでございますので、書かれている内容は法令でこのようにしなければいけないとされていることに改めて留意していただくような内容でございます。
御指摘の内容で、私どもとしても協定届が協定書を兼ねる場合には適正な労使協定となるようなやり方できちんと締結しましょうということは確かに重要だと思っておりますので、ちょっと表現上の工夫が必要になりますし、署名・押印という具体的なところまで書けるかどうかということはございますけれども、私どもとしてもこの記載心得の中でそういった趣旨が伝わるような文章を記載する方向で考えさせていただきたいと思っております。
○荒木分科会長 ほかにはいかがでしょうか。
北野委員。
○北野委員 ありがとうございます。
川野委員とも少しかぶるところもございますが、前回の分科会において、荒木会長のほうからも、これは方向性は十分皆さんで理解されている、その上で、法定基準を引き下げる36協定が適正に締結されることの確認は重要であり、特に協定届が協定書を兼ねる場合の問題については、当分科会で論議されてきた件を踏まえて論議を続ける、という締めくくりの御発言があったと私は認識させていただいております。
その上で、今後の論議の焦点は、荒木会長が整理してくださったとおり、36協定届の押印廃止の方向性を前提とした上で、36協定を締結する労働者代表の選出、さらには協定の周知も含めて、先ほどの川野委員の発言に対して、事務局からお答えいただいたことも含めて、36協定の適正な締結をいかに担保するかということを重視した検討が必要だと思っております。
ただ、現状では協定届が協定書を兼ねていることが多いという実態もございますし、協定届と協定書の違いさえ理解されていないという当事者も多いという現状も認識しております。これらの状況を踏まえますと、省令で決められた届出の押印を廃止するということであるならば、協定締結時に求められる手続などをよほど丁寧に周知し、理解してもらわないと、川野委員も強調されておりましたが、協定締結の過程自体が廃止、あるいは簡略化されたかのような誤解が広まると思っておりますので、不適切な事案が増加してしまうおそれがあることを、これまでどおり、やはり私のほうからも指摘させていただきたいと思っています。
その上で、資料の6ページに、今回の見直しと併せまして、適正な労使協定の締結に向けた周知、さらには指導を徹底すると赤字で太く囲んでございますが、これまで以上の取組として具体的に何をするのか、お考えをお聞かせいただければと思います。
以上でございます。
○荒木分科会長 それでは、事務局よりお願いします。
○監督課長 ありがとうございます。
重ねてですが、私どもといたしましても、今回の押印見直しが、皆様御懸念のような届出書を事業主が作れば協定をしたことになるという誤った理解が広まることは決してないような形で、周知啓発をしっかりしていきたいということでございます。
その上でどういった取組がというところでございますが、資料6ページで示しておりますような形で、今回の押印見直しを契機とした適正な労使協定の締結について、しっかりとリーフレット等を作成して周知を図るということが基本でございますが、もちろん窓口でも丁寧にリーフレット等を活用して周知は行います。
その上で、今回の資料では3ページ目にお示しさせていただきましたが、届出の実態が、年々増えているとはいえ、推計で400万余りの事業場の中でまだまだ178万件しか届出書の提出がないという実態は事実でございます。私どもとしても、未届事業場対策を今後強化していきたいと思っておりまして、そうした中で、協定書と協定届を兼ねている場合の労使協定の適正な締結といったことも併せて未届事業場に対して働きかけを強めていきたいと考えております。
また、徹底という形では、もちろん労働者等から御相談があった場合には、私どもとして中小企業等への配慮、あるいは新型コロナ対策の対応への配慮は当然した上で、しっかりと事業場に御理解いただいて適正な締結を進めていく。こういったことも併せてしっかりやっていきたいと思っております。
○荒木分科会長 よろしいでしょうか。
ほかにはいかがでしょうか。
鳥澤委員。
○鳥澤委員 ありがとうございます。
前回も発言いたしましたが、労使の合意、また、法律の遵守というのは、押印あるなしに関わらず、まずそれはしっかりと行うということは大前提として、行政届として、また、提出書類としての押印の原則の見直しや行政書類の電子申請については、人手不足が続く中小企業にとっては非常に大事なことですので、行政コスト削減の観点からもぜひ推進していっていただきたいと思います。
また、本日の資料には様式改正後の36協定届の案が提出されていますが、先ほど申し上げたように、前提は前提としてこの様式等を早期に導入していただきたいと思います。
以上でございます。
○荒木分科会長 佐久間委員、どうぞ。
○佐久間委員 ありがとうございます。
今、課長から御説明賜りました周知方法等については、一番心配な点ですから、御説明を伺い、安心したところでございます。
私も川野委員が言われたことは懸念しておりました。押印廃止については、私も賛成なのですけれども、チェックボックスが増えたことによって、チェックをするだけですけれども、これは逆に、チェックをするという項目が増え、簡素化には逆行しているともいえます。
ここの中で、やはり労使の合意が非常に大切だということには変わりはありません。昨年改訂された36協定の様式の裏面の記載項目等は、今まで議論してきたわけですけれども、非常に細かい文字で記載されています。昨年ようやく変わったのを、また今年変わることになる。そこにまた、項目を追加されるとなると、さらに細かい字になってきていますから、内容を十分理解できるよう、行政側の方も事業者に対して働きかけて、周知、説明をお願いしたいと考えております。
以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
仁平委員。
○仁平委員 ありがとうございます。
現状がどうなっているのか、議論に当たって、実態が分かるデータを示してほしいということを前回お願いしまして、具体的には、過半数代表の選出の状況などを示していただいております。このほかに、我が国全体の36協定の締結の状況なども示していただいておりますが、さらに36協定の周知がどう行われているのかと分かるようなデータや、36協定の締結の届出が時間外、休日労働の実態に見合う形できちんと行われているのかなど、実態が分かる資料をお願いしたいと思っていたわけでございますが、本日提示された資料というのはその一部であって、相当前のデータも示されていると思っているところであります。
例えば事業場における36協定の周知ということは、協定の内容や手続が適正であるかということを実際に多くの労働者の視点で再度チェックしていくという上では、どういうふうに周知されているのかということは非常に大事なことだと考えております。連合で2019年に調査をしたのですが、このときにはインターネットで閲覧できるようにしている、社内に掲示をしているという回答がそれぞれ30%ぐらいで、そのほかは周知をされていないというのが16%、そもそもどうなっているのか分からないというのが18%ということで、現状も問題があるのだろうと思っております。
そうした現状と課題を踏まえて初めて、押印を廃止しても36協定の適切な締結が後退することなく進められるものだと思っております。そういう意味で、適正化を図るために何が必要なのかを議論するためにも、今後、36協定の締結に関する状況を調査して、当分科会に報告していただき、押印廃止に伴う問題が生じていないのかということを定期的に検証できるようにしてほしいと考えています。これは要望でございます。
労働者側として、届出の押印見直しということは了解するものでございますが、他の委員からも申し上げたとおり、問題は、届出の押印の話にとどまらず、36協定の適切な締結ができていないというところにあるということを改めて申し上げておきたいと思っております。
それとの関係で、将来的には、今回の見直しの趣旨や内容を行政から周知することになるのだと思いますが、周知をする際にも、押印が廃止になりましたということだけ強調されると職場が混乱しかねないと思っておりますので、どういう周知をするか、その中身やタイミングなどについても、労使に事前にしっかりと相談をして進めていただきたいと思っております。
以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
それでは、事務局よりお願いします。
○監督課長 今、仁平委員から御指摘のあった点についてですが、私ども、現状のデータについては、確かに前回御指摘のあった社内での周知の状況については、当方として把握しているデータがございませんでした。連合様のほうで実態調査をされているデータというのは、私どもとしても認知はしておりますが、当方として実態把握はしておりませんでした。
今回の見直しを契機として、皆様御指摘のように、36協定が適正に締結されるかどうか、あるいはそれに影響がないかどうかというところは、私どもとしてもしっかり把握していかなければいけないと思っておりますので、今後、そういった実態の把握にしっかり努めまして、その結果につきましては、当分科会の皆様にも御議論いただきたいと考えておりますので、そのように取り組んでいきたいと思っております。
また、周知に当たりましても、その手法等、しっかりと労使の皆様の御意見を踏まえたものになりますように、皆様の御意見もいただきながらしっかりやっていきたいと思っております。
○荒木分科会長 ほかにはいかがでしょうか。
黒田委員、どうぞ。
○黒田委員 ありがとうございます。
事務局におかれましては、非常に短期間の間に様々な資料を用意していただき、御提案もいただきまして、深く御礼を申し上げます。紙文化に伴う煩雑な手続をできるだけ省略化していくという全体の方向性については、私自身も非常に賛同するところなのですが、今回の4ページ目の方針案の3つの○のうち、真ん中の電子申請における電子署名の添付も不要とするという御提案について、その理由について少し御説明いただければと思います。
○監督課長 これは、実は政府の会議のほうでも御提案をいただいている話ではあるのですが、今回書面におけます押印あるいは署名を求めないこととするということとの関係で申しますと、電子申請の場合でそれに押印や署名ができないので電子署名を求めているという関係にございますので、紙のほうで署名、押印を求めないのであれば、電子申請においても論理的帰結として電子署名を求めないということになるのではないかということで、今回併せて電子署名のほうも求めないということでやらせていただきたいと思っているところでございます。
○黒田委員 御説明ありがとうございました。
今回の政府のデジタルガバメントのそもそもの構想からしますと、できるだけ紙の申請をなくして電子署名つきの電子申請をしていくといったことを後押ししていくべきだという全体の方向性があるのではないかと理解しております。もちろん、労働者側、使用者側が協定さえきちんと結べば、届出に関しては何も署名や承認は必要ではないという御意見でしたら、公益委員の私から何か申し上げることもないと思うのですが、皆様方の御意見をお伺いしていると、やはりいつ誰が何を確認して届出をしたかということのきちんとしたエビデンスができればあったほうがいいのではないかという点は、労使ともに共通した見解なのではないかという印象を私自身は持っております。
そうしたことを考えますと、コロナ禍でわざわざ印鑑を押すために出社しなければいけないという現状に対する感染予防対策としての押印省略という方向性と、中長期的にデジタルガバメントを実現していくという方向性とを混同して、紙文化に平仄を合わせるために、電子申請のほうには電子署名があるにもかかわらず、わざわざそれも廃止してしまうという提案は果たして本当によいのだろうか、と疑問に思います。今回の御提案に完全に反対するわけではないのですけれども、中長期的には、労使の円滑な合意形成やそれを踏まえた届出制度の整備を考えますと、今回の紙の押印省略に合わせて、電子署名をきちんと担保した形での届出というものまで果たして廃止していいものかどうかということは御検討いただければと思います。
以上になります。
○監督課長 御指摘ありがとうございます。
一方で、電子申請を進めるということは、黒田先生の御指摘のとおり、今回のコロナ禍で書面の押印・署名を見直す一方で、電子申請も推進していくということが政府の方針でございます。私ども、実態としてまだ電子申請が全体の2%余り、これでも上がっているのですけれども、直近でも2%余りということでございますので、ここを強化していかなければいけないと思っております。
先ほど山内委員からも御指摘がございましたが、いろいろ課題がございます。システムの使いにくさ、そして、様式が36協定届の省令様式と実際に入力する様式が少し違うなど、いろいろな問題点がございます。そうした問題点を、いろいろな有識者の方々にヒアリングをしながら、そちらの使いやすさの向上ということも併せてやっていきたいと思っております。
その一環としても、電子署名を求めていることが電子申請が進まない要因になっているのではないかという御指摘もございまして、これ自体は、先ほども申しましたとおり、紙の署名、押印を求めないこととする論理的帰結として電子申請においても電子署名を求めないということではあるのですが、私どもとしても、電子申請を進めるための一環としてこういったことを考えております。ただ一方で、先生も御懸念のような労使協定の適正性というところについては、別途私どもとしてもしっかり周知啓発というところでやっていきたいと思っております。
○荒木分科会長 いかがですか。
○黒田委員 ありがとうございます。
先ほど山内委員からも届出の項目や使い勝手の見直しという御意見がありまして、私も非常に賛同いたしましたし、前回鳥澤委員から利用率がなぜ低いのかをきちんと分析してほしいという御意見もありました。
今は過渡期ということもあり、電子申請が煩雑なので利用率が低いということももちろんあろうかと思いますけれども、それがネックとなっていつまでも電子化が進まないというようなことになってしまいますと本末転倒だと思います。今、御回答でもいただいたように、分析を行い、利用者の御意見も広く伺ってシステムの見直しをしていただいた上で、中長期的にはやはり電子署名を中心とした方向に進んでいくことが望ましいのではないかと考えます。
御回答ありがとうございました。以上です。
○荒木分科会長 ほかにはいかがでしょうか。
押印原則の見直しについて、方向性については大筋皆様御同意いただいたということかと思います。36協定については、今日の資料の3ページにもありますとおり、実は日本の事業場の4分の1程度は不適法にも36協定をそもそも締結していないという状況でありますので、まずは36協定を締結し、それを適切に届け出ていただくことが必要であります。
今日も参照されましたが、6ページのように、初めて36協定を結び、届け出るという事業場は、両者を兼ねた形での36協定の締結・届出となる比率も相当高くなる可能性もあると思いますので、この点について適正な協定の締結、そして、その届出についての周知・指導は非常に重要だと考えております。今日、各委員からその点について指摘があったように、今回の押印廃止が、使用者が一方的に届け出れば36条の要件を満たしたというような誤解が生じないようにぜひ周知徹底をしていただきたいと考えております。
それでは、方向性としてはおおむね御賛同いただいたと考えますので、事務局におかれては対応案に沿って省令改正に向けた準備を進めていただくようにお願いいたします。
それでは、最後の議題は「(3)その他」です。
事務局より説明をお願いします。
○賃金課長 賃金課長の大塚でございます。
私からは、議題「(3)その他」について御説明申し上げます。
近年、現金を用いずに決済を行うキャッシュレス化が進んでいるかと思います。キャッシュレス決済の中では、従来よりクレジットカードが中心でございましたけれども、最近ではスマートフォンのアプリを利用した決済方法というのも増えてきております。これには、例えば利用者がスマートフォンにアプリを導入して、アカウントを開設し、そして、御自身の銀行口座やクレジットカードと連携したり、あるいは事前に一定の金額をチャージするなどした上で、買い物をした際の支払い手段としてバーコードをかざす、あるいはQRコードをかざすなどして、現金を用いることなく決済を行うものなどがございます。
こうしたいわゆるコード決済方法を提供する事業者には、銀行によるものとノンバンクによるものとがありますけれども、ノンバンクによるもののうち、資金決済に関する法律に基づく資金移動業者に該当する事業者が提供するアカウントないしは口座に対しまして賃金の支払いを行うことについて、どう考えるのかというのが議題(3)のテーマであります。
まず初めに、資金移動業者の法的位置づけがどうなっているのかについて簡単に御紹介いたしたいと思います。お手元の資料No.3の7ページ以降が参考資料になっているのですけれども、8ページをお開きいただければと思います。
こちらのページの一番上に書いてございますように、資金移動業者は資金決済法に基づきまして、内閣総理大臣の登録を受けた上で為替取引を業として営む者でありまして、銀行その他の金融機関以外の者とされております。現行法では、1回当たりの送金額上限は100万円以下とされておりますけれども、実はこの資金決済法はさきの国会で改正法が成立しておりまして、今後は100万円を超える高額類型や数万円未満のごく少額の類型も設けられると承知しております。
改正法の概要につきましては11ページに記載いたしましたので、必要に応じて御参照いただければと思います。
資金移動業者としての登録を受けるためには、8ページの真ん中の欄にございますように、例えば③の財産的基礎があることなど、一定の要件が必要になってまいります。そして、登録を受けた資金移動業者に関しましては一定の規制がかかることになっておりまして、8ページの下のほうの(1)にありますように、履行保証金の供託等による資産保全の規制、あるいは次の9ページの(2)にありますような情報の安全管理、少し飛びまして、(5)にありますようにマネーロンダリング対策としての取引時確認などの各種規制がかかることになります。そして、9ページの下に記載しておりますように、金融庁、財務局による監督などを受けることになります。
次の10ページは、資金移動業の実態についてであります。最初の表にありますように、年間取扱額及び年間送金件数というのは近年増加傾向を続けております。また、中段には送金額と利用者資金残高の分布を表示しておりますけれども、左側の金額を見ますと、送金額については1万円未満が69.6%、右側の利用者資金残高、これは要するに使われずに利用者のアカウントに残っている金額のことですが、5万円未満が94.6%となっておりまして、少額の送金事業等が多いというのが現状となっております。
以上御紹介いたしました資金移動業者につきまして、そういった事業者が開設する口座への賃金支払いについてどうするかについてですけれども、2ページに記載しておりましたように、今年7月の閣議決定であります成長戦略フォローアップで記載がなされております。こちら、下線を引いてございますけれども、賃金の資金移動業者の口座への支払いにつきまして、賃金の確実な支払い等の労働者保護が図られるよう、資金移動業者が破綻した場合に十分な額が早期に労働者に支払われる保証制度等のスキームを構築しつつ、労使団体と協議の上、2020年度、できるだけ早期の制度化を図るとされております。また、同じページの下段ですけれども、外国人材受入れの文脈で同じ内容の関係閣僚会議決定もなされているところでございます。
次に、3ページをお開きください。
こちらは、今年4月に公正取引委員会が取りまとめました実態調査報告書から本件テーマに関します調査を抜き出して紹介したものであります。この調査は、上段の最後の2行に書いてございますように、キャッシュレス決済分野における競争政策上の課題把握のために行ったものであります。そして、中段の右側の※に書いてありますように、コード決済を利用している消費者4,000名に対しまして、ウェブアンケート方式で調査したものでございます。ノンバンクコード決済事業者のアカウントに対して賃金の支払いが行われるようになった場合、自身が利用するコード決済のアカウントに賃金の一部を振り込むことを検討するかということを尋ねています。その結果ですけれども、「検討する」が約4割、「検討しない」が約6割となっています。この調査は、現時点でアカウントへの賃金払いという仕組みの詳細がどうなるのか分からない中で調査を行ったものでございますけれども、公正取引委員会の調査結果といたしましては、ここに書いてございますように、一定のニーズがあると考えられると記載されております。
では、この資金移動業者の口座への賃金支払いが現行法との兼ね合いでどういう関係にあるのか、簡単に触れておきたいと思います。
4ページですけれども、労働基準法第24条などを掲載しております。労働基準法第24条は、賃金の支払いに関しまして各種原則を規定したものであります。
まず原則として、第24条第1項に、賃金は通貨で直接労働者にその全額を支払わなければならないと規定されております。本件テーマが主に関係するのは、この原則のうち、通貨払いの原則に関してだろうと考えております。
この通貨払いの原則につきましては、第1項ただし書き前段に例外が規定されておりまして、法令もしくは労働協約に別段の定めがある場合、または厚生労働省令で定める賃金について、確実な支払いの方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払うことできるとされております。
ここでいう厚生労働省令で定める例外につきましては、具体的にはこのページの下段に掲載しております労働基準法施行規則第7条の2で2つ例外が規定されておりまして、第1号の銀行口座振込と第2号の一定の要件を満たした証券総合口座への振込であります。資金移動業者の口座につきましては、現行の労基則に例外としての規定は当然ありませんので、仮に本件を制度化するとなれば、こちらの省令に新たな例外を設けるということになろうかと思います。
なお、現行の2つの例外につきましては、第7条の2の本文に記載されておりますように、労働者の同意が要件になっていまして、通貨ではなく口座振込にしようとまず使用者側が判断した上で、労働者の個別の同意を得た上で、初めて通貨払いの原則の例外として振込が認められるという建付けになってございます。ですので、仮に本件に関しまして新たな例外を設けるとした場合には、こうした現行の建付けとの兼ね合いも勘案することになるのではないかと考えております。
次に、2ページでも紹介いたしました成長戦略フォローアップに記載されておりました、資金移動業者が破綻した場合の保証制度に関して、現行の資金保全スキームがどうなっているのかということを5ページに記載しております。
まず、5ページの1つ目の○にありますように、資金移動業者には各営業日ごとに要履行保証額を把握することが求められております。要履行保証額とは何なのかということなのですけれども、例えばある利用者の方のアカウントに1,000円チャージされて、そのまま決済も送金もされず使われなかった場合には、その1,000円が未達債務ということになるわけです。利用者はたくさんいますけれども、その利用者全ての未達債務を足し上げた上で、さらに還付手続費用を加えたものが要履行保証額となると理解しております。
営業日によって要履行保証額には当然増減が生じ得ますけれども、1週間の基準期間内で見まして、その中で最高額がどこなのかを見た上で、その最高額以上の金額を基準期間の末日から1週間以内に供託所に供託するということが求められております。
その供託された金は何なのかということですけれども、万が一資金移動業者が破綻した場合に利用者に対して弁済する際の原資となる。それが供託金となります。この現行の資金保全スキームに関しましては、2つ目の○にありますように、取扱額が週ごとに大きく変動しているような場合には、供託額が必ずしも十分なものではなくなる可能性があるという課題が考えられる。そして、3つ目の○にございますように、供託金の還付には半年程度の時間がかかるという課題。そういったことが考えられるところでございます。
最後の6ページを御覧いただければと思います。
以上述べましたような制度や現状を踏まえた上でなのですけれども、資金移動業者の口座への賃金支払いにつきまして、賃金の通貨払いの原則や労働者保護の観点から、主に以下の点が課題と考えられるということで、3つ記載させていただいております。
1つ目は、資金保全についてです。資金移動業者が破綻した場合に十分な額が早期に労働者に支払われる保証制度等のスキームの構築について。
2つ目は、換金性についてですけれども、賃金の通貨払いの原則を踏まえた資金移動業者の口座に労働者の賃金が支払われる場合の現金化(出金)の在り方について。
3つ目は、その他の課題ということで、賃金の通貨払い原則や労働者保護の観点から考慮すべきその他の課題として何かあるかどうか。
これらにつきまして、本日、まず委員の皆様方の御意見を承りたいと考えております。
事務局からの説明は以上であります。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
ただいまの説明について、御質問、御意見等があればお願いいたします。
鈴木委員。
○鈴木委員 御説明ありがとうございました。
経団連は、昨年2月に本件に関する規制改革要望を内閣府の規制改革ホットラインに提出したところでございます。事務局からの説明にございましたように、キャッシュレス化の促進という観点や、外国人労働者を含めた多様な給与受け取りニーズに対応するという観点から必要な施策だと考えており、制度化に向けた議論が始まることを歓迎したいと思います。
議論にあたりましては、賃金の確実な支払いなどといった労働者保護が図られることが大前提だと思っております。6ページに課題として挙げられている、資金移動業者が破綻した場合の資金保全スキームという点は、労働者保護の最大のポイントになるのではないかと考えておりまして、実効性のある仕組みとなるよう、今後議論を深めていきたいと思います。
また、企業側としては、他方で多様な給与受け取りニーズの全てに対応することが現実的には難しい面もございますので、そうしたバランスを図るという観点の議論もさせていただきたいと思っているところでございます。
以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。
津村委員。
○津村委員 ありがとうございます。
まず、本日の御説明の位置づけは、政府の成長戦略フォローアップにおいて提起された内容につきまして、労政審に対する報告ということで御説明いただいたという認識であります。御説明の中でも課題なりということで御認識をされている点を数点御紹介いただきましたが、今時点でお聞きした内容につきまして、懸念点ということで労働側の立場から少し申し上げたいと思います。
まず、資金移動業者の関係でありますが、御説明にあったとおり許可制ということではなく登録制というのが現状でありまして、そういった意味では、まだ銀行のように専業業務は課されておりません。様々な業者がキャッシュレス決済に参入してくるといった状況にある中で、本業で稼いだ資金をキャッシュレス決済事業として維持しているといったところがほとんどではないかという認識もあります。現在までは破綻した事例はないということでありますけれども、やはりそういった位置づけからは、破綻、統廃合といったことの懸念がぬぐえないのではないか、というのが1つ目であります。
次に、資金移動業者について規定をしております、御説明いただきました賃金決済法は、決済のための法律でありまして、チャージされた金額は口座に滞留せずにそのまま使用することを前提としていると理解しています。しかし、これが、賃金が支払われるといったことになるのであれば、基本的には当然その全額が使われるというわけではなく、必然的に資金が滞留していくといったことになると思っておりますが、滞留を前提としていない資金決済法におきまして、滞留した資金の保全という意味での安全性がどこまで担保できるのか懸念が残ります。先ほど課題でも御認識されているようでありますけれども、そういったことを改めて申し上げておきたいと思います。
次には、万が一破綻した場合ということで、これも少し触れていただきましたが、供託金の払戻しまでに相当な時間を要するということになれば、そもそも労働者の日々の生活に対しても多大な影響が及ぶことになると理解します。そういう意味では、保全されているだけでは十分ではなくて、スムーズに払戻しが行われることも非常に重要な内容ではないかと認識しております。
次に、参考資料の11ページの中で、資金決済法の改正概要ということで示していただいておりますが、高額類型については認可制となるわけでありますが、一方では少額決済ということでは規制を緩和する方向で改正されたと理解しているわけでありますが、数万円のアルバイトであっても、パート代であっても、基本的には賃金ということに変わりはございません。そういう意味では、労働者にとっては非常に重要なものでありまして、いわゆる少額だからといって保護がおろそかになってはいけないわけでありますが、この分別預金で本当に確実の資金の保全ができるのかということについては懸念しております。
以上、今申し上げましたように、全体としては資金の保全という観点から多くの懸念があるのではないかといったことが労働者側としての認識でありますので、この場で御披露させていただきたいと思います。
以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。
世永委員。
○世永委員 私のほうからは、6ページの2番にあります換金性について発言をさせていただきます。
換金性につきましては、現在、キャッシュレス決済も様々なものが乱立しているということがあります。事業者によって使用できる場所が一律ではないという状況だと認識しています。また、小さな個人商店等ではキャッシュレス決済自体が利用できないということで、現金払いのために換金が必要となることもあります。そもそも課題として挙げられているように、賃金は通貨による直接払いが原則ということで、必要があればいつでも容易に労働者の負担なく現金化できなければいけないと考えておりますので、意見として申し上げさせていただきます。
以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。
森口委員。
○森口委員 ありがとうございます。
私からも、6ページの部分にある3ポツのその他の課題について意見を述べたいと思います。観点はデータのセキュリティーやデータ管理体制についての部分になります。
今回、資金移動業者のアカウント開設ということですが、現状では本人確認が厳格でない場合もあって、携帯電話等で簡単に行えるものであるものと認識しております。簡便な手続で利便性を高めていくということは大事だとは思いますが、一方で、資金の不正利用や不正な引き出しなどがあってはならないと考えておりまして、本人確認の厳格性、また、セキュリティーの観点で賃金支払い口座として本当に適切なのかという懸念を持っております。
また、個人の判断で口座から必要な金額をチャージして決済するのではなくて、賃金が直接口座に振り込まれて、日々の支払いに利用されると、膨大なデータが積み上がっていくことになります。賃金データや購買データなどの個人データは保護する必要があると思っておりますし、本人同意のない利活用や流出がないように厳格な管理を行う体制が構築されなければならないのではないかということも懸念として持っておりますので、意見として申し上げたいと思います。
以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
櫻田委員からも手が挙がっておりましたか。
○櫻田委員 ありがとうございます。
私からは、少々細かいお話になると思うのですけれども、現在、キャッシュレス決済のアカウントというのはスマートフォンのアプリで管理するものが多いと思いますけれども、スマートフォンを紛失ということが出てくると思いますので、そういった場合のことも考えておかなくてはいけないのではないかと思っています。
例えばお財布を落としたとして、銀行のキャッシュカード等を紛失した場合には、キャッシュカードの利用を止めたとしても、銀行の窓口に行って本人確認が取れれば必要な金額を下ろすことができると思うのですけれども、決済アプリをインストールしたスマホ自体を落としてしまった、紛失してしまったという場合に、必要な金額を口座から下ろしたいと思ったとしても、どこに行ってどう手続をすればいいのかということになると思います。新しいスマートフォンを手に入れて、そのアプリをまたインストールするまで口座を利用できないというようなことも考えられますし、利用者としては非常に分かりづらいのではないかと思います。
そもそも銀行のように人が常駐した窓口も少ないと思いますし、メールでの問合せのみという場合もあると思いますので、アプリで全て完結するということは、利便性は高いとは思いますけれども、紛失した際のリスクはとても大きいと思いますので、そういった点も課題ではないかと思います。
以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
仁平委員。
○仁平委員 ありがとうございます。
既に何人かの委員からも申し上げておりますが、先ほど御説明いただいた内容については、政府の成長戦略等において提起された内容について、労政審に対する報告として受け止めたいと思っております。
労働者側としては、労働者への確実な賃金の支払いの確保という観点から、労基法24条が規定する全額通貨払いという賃金支払いの原則を維持すべきだと考えております。資金移動業者が開設する口座への賃金支払いについては、これも種々労働者側の各委員から発言させていただきましたが、労働者保護及び安全性担保の観点から多くの懸念を有しております。賃金は労働者の生活の基盤となる非常に重要なものであって、その支払いにおいて確実性と安全性が担保されることは大前提だと考えています。
賃金支払いについて労政審において検討すると記載されておりますが、まずはその検討以前に、労働者保護の観点からさらなる課題の整理がまずもって必要ではないかと考えております。
以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
佐久間委員。
○佐久間委員 ありがとうございます。
資金移動業者の関係ですけれども、6ページに書かれているように、資金の保全関係の仕組みがしっかりして、そして、資金の担保がされるという前提のもと、利便性が高まっていくという方式が取れるのであれば、また、労働側のほうの合意もあれば、こういうものは進めていくべきだと思います。
中小企業は、資金移動業者を利用させていただく、要は利用者になる事業者がたくさんいることになるわけです。例えば外国人の技能実習生、また、特定技能で労働をされる方など、そういう方たちの要請に応じて、ここのアカウントに振り込んでください、そちらのほうに払い込んでくださいということが要請されてくると思います。
ホームページなどで見ますと、今、資金移動業者は75社の指定があるということですけれども、銀行系が多いのではないかと考えておりましたところ、どちらかというとクレジットカード、証券系、通信系、あと、海外の外国企業の資本からの参入企業が多いのではないかなと思っております。
事業者としては、どういう資金移動業者を選択していいのか、わからない中小企業の人たちは多数いるのではないかと思っています。そこの中から資金移動業者を選択し、労働者が指定したアカウントに振り込むとき、今、銀行等にも給与を振り込むときに手数料があるわけですから、そういう資金移動業者にお支払いする手数料もなるべく安価にしていただいて、事業者の皆様に負担がかからないようにしていただく措置を取っていただければいいかなと考えております。
ありがとうございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
鈴木委員。
○鈴木委員 ありがとうございます。
先ほど労側の委員から、様々な角度から懸念が示されましたが、重要な指摘を多く含んでいると感じましたし、改めて労働者保護の観点での対応が十分になされているかどうか、整理して議論を深めていかなければならないと思いました。
他方、一部労働者保護と関連性の低い指摘もあったように感じましたので、今後、労働者保護という観点から、課題を整理していくということが大切だと思いました。
引き続きよろしくお願いいたします。
○荒木分科会長 ほかにはいかがでしょうか。
川田委員、どうぞ。
○川田委員 ありがとうございます。
この後も資金移動業者の口座への賃金支払いについての検討がこの場で続いていく可能性があるという前提で、その場合についての要望というか意見を述べたいと思います。
前提として、ここでの議論は、恐らく現在の労基則の7条の2等で定められている口座振込の場合の通貨払いの原則に対する例外の基準を大きく緩和しようというような性質の話ではなく、フィンテックが進展してきているというような状況を踏まえた上で、基本的には従来と同じような考え方で対応していく中で、新しい手段があり得ると考えることになるのではないかと思いますが、そのようなものだとしますと、まず、今回の資料No.3の6ページに挙がっているような課題、つまり、今検討されている資金移動業者の口座への振込について、まず1つは通貨と遜色のないような財産的な価値が確保できるのかどうか。
それから、関連して、恐らく直接払いの例外とは位置づけられていないということとの関係で、直接通貨を払う場合とこれも遜色ないような利用可能性が確保できるかどうかというようなことが中心的な課題になるのではないか。そういう観点からすると、6ページに挙がっている資金保全、換金性といった辺りが特に重要になるということで、そこはいいのかなと考えております。
若干細かいところを申しますと、先ほども議論になったところですが、資金保全については、破綻の場合のほか、例えば不正への対応がしっかりできるのかというようなことがあるかもしれません。
それから、その他の課題については、例えば労働者の同意の取り方といったことなどが考えられるかなと思いますし、若干話が広がると、例えばマネーロンダリング対策みたいな話も関わってくるのかもしれませんが、いずれにしても主要な論点は6ページに挙げられているところだと思います。
ちょっと長くなってしまいましたが、ここまでが前置きで、今のような前提、基本的にはこれまでの労基則の7条の2で挙げられているような考え方に沿った形で新しい問題について考えていくということであるとしますと、現在の労基則7条の2で挙げられている銀行その他の金融機関、あるいは金融証券取引業者の口座振込の場合に、6ページに挙げた資金保全とか換金性、同意の確認の仕方等についてどうなっているんだというところを確認しながら検討していくということが重要になってくるのではないかと思いますので、今後、もし次回以降議論が続いていくということであれば、要望として、そういったところについてどうなっているのかということを事務局において資料としてまとめてお示しいただきながら考えていくことができればと考えております。
以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
種々御意見をいただいたところでございます。この労基法24条が規定しております賃金に関する労働者の保護の観点から、どのような課題があるのかをまず整理してほしいという御意見もございました。もっともだと思いますので、課題を整理した上で、労働者保護の観点からどういう検討を進めるべきかについて事務局で議論を整理していただき、引き続きこの分科会において議論していきたいと考えております。
本日予定していた議題は以上で全てとなります。
最後に、次回の日程等について事務局よりお願いいたします。
○労働条件政策課長 次回の労働条件分科会の日程、場所につきましては、調整の上、追ってお知らせいたします。
○荒木分科会長 それでは、以上で本日の分科会は終了といたします。
なお、議事録の署名につきましては、労働者代表の津村委員、使用者代表の佐久間委員にお願いいたします。
以上といたします。どうもありがとうございました。