第12回厚生科学審議会臨床研究部会 議事録

医政局研究開発振興課

日時

令和元年5月8日(水) 15:00~17:00

場所

厚生労働省共用第6会議室(中央合同庁舎5号館3階)

議事

○伯野研究開発振興課長 それでは定刻となりましたので、ただいまより第12回厚生科学審議会臨床研究部会を開催させていただきます。本日は部会の定数14名に対しまして、12名の委員に御出席いただいておりますので、定足数に達していることを御報告申し上げます。なお、羽鳥委員におかれましては1時間遅れて御出席されるとの御連絡を頂いております。また、田島委員におかれましては今回は御欠席されるとの御連絡を頂いております。なお、本日は日本小児科学会理事の飯島一誠先生、そしてAMED難病克服プロジェクト・プログラムディレクターの葛原茂樹先生を参考人としてお招きしております。
 続きまして、本日の会議資料について、御確認をお願いいたします。お手元のタブレットを操作して御覧いただくようお願い申し上げます。今回の資料、第12回臨床研究部会資料のホルダーを開けていただきまして、一番上に議事次第がございます。続いて座席表がございまして、03として委員名簿。その下からですが、資料1「臨床研究部会における今後の議論の進め方について」、資料2-1「今後の臨床研究・治験活性化に係る方向性について」。資料2-2、こちらが飯島参考人の提出資料です。資料2-3が葛原参考人の提出資料です。資料3-1「臨床研究法の疾病等報告等に係る臨床研究部会への報告について」という資料。資料3-2「平成30年度の臨床研究法に定める疾病等報告について」。あと、参考資料が1、2、3とあるかと思います。不足等はないかと存じますが、よろしいでしょうか。ありがとうございます。円滑な議事進行のため、撮影がございましたら、ここまでとさせていただきますので、御協力をお願いします。以後の進行については楠岡部会長にお願いいたします。
○楠岡部会長 それでは早速、議事に入らせていただきたいと思います。まず、議題1ですが、「臨床研究部会における今後の議論の進め方について」です。事務局より資料の説明をお願いいたします。
○吉田治験推進室長 それでは説明いたします。タブレット上の上から4つ目、04資料1「臨床研究部会における今後の議論の進め方について」というファイルを開けてください。本年度の臨床研究部会についての当面の進め方について、以下の事項について議論を行うということ。また、臨床研究法において求められる報告事項等について、報告する形で進めることにしたいと考えております。まず、1番目として、今後の臨床研究・治験活性化に係る方向性について。これについては昨年度3月に中間取りまとめを行っておりますが、引き続き議論をすることとされておりました臨床研究の拠点に係る今後の方向性を中心に、本取りまとめに向けた議論を行うことで考えています。
 スケジュール(案)としましては、本日5月8日ですが、中間取りまとめの確認と、拠点に係るヒアリングの実施、そして、6月から8月頃にかけて複数回にわたって議論を行い、最終的には9月めどで本取りまとめを行う予定です。
 2つ目として、臨床研究法附則第2条に係る対応についてです。平成30年4月施行の臨床研究法の附則第2条において、施行後2年に当たる令和2年3月末までに検討することとされている先端的な科学技術を用いる医療行為、その他の必ずしも十分な科学的知見が得られていない医療行為に関する議論を行い、必要な対応の方針を取りまとめたいと思います。スケジュールですが、まず、6月頃に平成30年度実施した調査研究の結果を踏まえて議論を開始します。7月から8月にかけて複数回にわたり議論を行い、最終的には9月めどで必要な対応について議論をまとめ、必要な措置を講じたいと考えております。以上です。
○楠岡部会長 ありがとうございました。この点に関しては、特に御質問はないと思いますが、よろしいでしょうか。それでは続きまして、議題2の「今後の臨床研究・治験活性化に係る方向性について」です。事務局より、まず資料2-1の御説明をお願いいたします。
○吉田治験推進室長 それでは上から5番目、05資料2-1「今後の臨床研究・治験活性化に係る方向性について」というファイルを開けてください。臨床研究・治験の活性化に係る今後の方向性については、昨年度末に行った中間取りまとめを踏まえ、次のようなスケジュールで検討を進めたいと考えております。まず、昨年度の3月に中間取りまとめの公表を行っております。この際に、今後の治験・臨床研究の活性化に向けた方向性について、基本的な考え方を整理したことと、また、その基本的な考え方を踏まえ、国内の臨床研究・治験を推進する拠点の在り方について、分野横断型の拠点と、特定領域型の拠点の整備を進めていく必要があり、その役割については引き続き議論を行うとされています。
 本日ですが、その取りまとめを踏まえた拠点の在り方に係る検討事項の整理に向けた議論の開始ということで、関係者のヒアリングから始めたいと考えております。また、そのヒアリング先については、特定領域に関連する学会等、また、臨床研究の実施に関し、臨床研究中核病院等からの支援を受ける医療機関、そして、医薬品等の産業界を考えております。また、6月においてもヒアリングの継続を行い、そこで拠点の在り方に係る論点提示の方向性の整理をいたします。そして、7月から9月にかけて、複数回の議論を経て、取りまとめを行い、その上で、秋以降、議論の結果を踏まえた制度対応の検討を開始したいと考えております。
 次ページです。本日から開始したいと考えております、拠点の在り方に関する関係者のヒアリングの詳細です。具体的にはまず1番として、特定領域の臨床研究を推進する拠点の整備について、特定領域に関連する学会等からのヒアリングを行いたいと思います。そして次回以降ですが、臨床研究中核病院における支援機能について、臨床研究の実施に際し、臨床研究中核病院等からの支援を受ける医療機関、そして、製薬業界等の産業界からもヒアリングをしたいと考えております。以上です。
○楠岡部会長 ありがとうございました。ただいまの点に関しまして、何か御質問、御意見はございますか。よろしいでしょうか。それでは、この方針に沿って、これから進めていくこととします。本日は拠点の在り方に関する検討事項の整備に向けたヒアリングの1つとして、先ほどの中間取りまとめにおいて、小児疾病・難病等の研究開発が進みにくい領域の取組を5つの柱のうちの1つに挙げておりますが、本日はこの小児疾病、並びに難病に関しまして関係者から御意見を頂きたいと考えております。まず、最初に資料2-2ですが、日本小児科学会から資料の提出を頂いております。参考人の飯島先生から御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○飯島参考人 御紹介ありがとうございました。私、日本小児科学会の薬事担当理事をしております神戸大学小児科の飯島と申します。よろしくお願いいたします。
 それでは資料を見ていただきたいのですが、まず2ページからです。小児で処方される医薬品に関してですが、日本では残念ながら6割から7割が適応外使用の状況でございまして、我々小児科医はこういうことを何とか改善したいということで、20年ほど前からこの適応外使用問題の解決に取り組んできたという事情がございます。1つは2010年から「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」が開設されたのですが、これによって約60の医薬品の小児適応が今取得されている状況です。小児では希少疾病が多いので、企業が積極的にはなってくれないこともあって、医師主導治験を積極的に実施してまいりました。それから、今現在も行っていることですけれども、小児科学会をハブとした小児医薬品開発ネットワーク等の治験ネットワーク、そういうものも形成してきたわけでございます。ただ、それでも残念ながら現状では、小児の用法・用量が添付文書にきちんと記載されているという薬剤は全体の約30%ぐらいにしかございません。ということは、きちんと用法・用量は決められていない状況で多くの子供さんが治療を受けているということで、私は日本の子供は非常に不幸ではないかと思っております。また、小児の剤形のない医薬品が多く存在していることも1つの大きな問題です。
 次の3ページを御覧ください。実際、この赤で書いてあるのが小児の適応ありの薬剤ですが、医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬の検討会議が作られてから、実際やはり小児適応ありの薬剤が増えてはきております。ただ、これは最後は35%になっていますが、それ以降、実は少し下がってきておりまして、今30%を切っているような状況で、この成果は非常に重要な動きではあるので、継続する必要があるとは思いますが、残念ながら、やはり一時的で、ある程度の数が解決した段階で提出される要望の数も少し減ってきているような状況です。根本的には、残念ながらこの検討会議は、海外承認での後追いであることが非常に多いわけでして、ドラッグラグが短くなっても、解消はされないという大きな問題がございます。
 4ページを御覧ください。そういうことがありまして、日本小児科学会の薬事委員会のメンバーが中心となり、小児医薬品開発の推進に向けた提言を論文化しております。これは資料の最後にありますので、後でまた読んでいただけたら大変有難いです。これはどういうことを書いているかと言うと、上の4つは法的な、あるいは体制整備をすることで小児の医薬品開発をよりやりやすくするような方策の提言です。具体的には、欧米では小児の医薬品開発は、小児に使われる薬剤に関しては、成人の開発のときに一緒にやるのが当たり前になっているのですが、日本ではまだそういう状態にはなっていないということは非常に大きな問題でございます。
 4番目です。企業にとってのインセンティブも今、日本で小児の薬剤開発をすると、例えば再審査期間が延びるというようなインセンティブがあるのですが、成人の開発のときに同時にやってしまうと、そういうインセンティブがなくなってしまうというような、非常に製薬メーカーにとっては余りうまみがないというか、そういう制度になっておりまして、今後、是非、改善していただきたいというのが私どもの希望でございます。ただ、そういう改善が起こっても、それだけでいいかというと、残念ながらそれだけではまずいと思っております。と言いますのは、小児科領域はいろいろなたくさんの領域があります。全ての子供の病気に対応するわけですから、いろいろな領域があるのですが、領域によってはそういう薬剤開発が全くここ何十年も進んでいないというような領域もあり、いろいろな領域で小児の薬剤開発が進めることができるような、そういう体制整備も絶対に必要だろうと思っているわけでございます。
 あとは希少疾患が多いので、レジストリーを利用したような、そういう治験も必ず必要になってくる、そういう活用がこれから絶対に必要だと思います。7番目、8番目に書いてあること、これは非常に重要なので後でまとめてお話をしたいと思います。最後の国民への啓発という点でも、子供の薬剤に治験など要るのかという方がまだたくさんいらっしゃると思うのです。そういうことも含めて我々は活動していかなければいけないと思っているわけでございます。
 次の5ページを御覧ください。小児医薬品開発の推進に向けた提言の7番だけを抜粋をしております。現在、小児の治験を進めるためのネットワークがございます。いろいろなネットワークがあるのですが、そういうネットワークを統括をして、製薬企業の様々な治験の要請に対して、窓口を1つにして対応できるような、そういう体制を作る必要があるのではないかと思っております。企業がこういう薬剤を開発したいという意図を確認できれば、学会とか治験ネットワークで治験実施可能な施設を募って、実施体制を企業に提示するということで、効率の良い開発ができるのではないかと思っているわけです。
 次に6ページを御覧ください。現在、AMEDに支援をしていただきまして、平成29年度から日本小児科学会が中心になり、小児医薬品開発ネットワークの形成という課題が動いております。これは日本小児科学会に事務局を置き、国立成育医療研究センターの支援を受け、そこに製薬企業から小児への医薬品開発の要請・要望を出していただいています。それについて次の7ページを見ていただきますと、小児科学会の分科会や関連学会が17個ほど挙げられています。こういう学会を中心にして、その薬剤についての対象になるような学会のメンバーでワーキンググループを作っていただいて、本当にその薬剤開発が必要なのかどうかというようなことから含めて、あとは実際に治験をする場合の参加施設の設定とか、治験の実施の支援なども含めて、研究として事業を進めているわけです。こういう事業がもっとどんどんどんどん広がっていくというのが一番いいのではないかと、私は個人的に思っております。
 8ページに飛びます。この事業では、成育医療研究センターの臨床研究センターがいろいろな支援をしております。内容に関しては時間がございませんので、ざっと見ていただいたらいいのですが、要は小児治験のノウハウを、彼らは非常に立派なものを持っていますので、そういうものを利用して、小児治験を進めていこうという、そういう状況でございます。
 9ページを御覧ください。特殊集団、特に新生児における治験適応拡大についてということで、新生児領域はやはりなかなか今は薬剤開発ができておりません。そういう新生児をやっていらっしゃる先生方にどのようにしたらいいでしょうというようなアンケートを取られたのですが、かいつまんで言いますと、要は支援体制の整備であるとか、人材の育成であるとか、そういうことがやはり非常に重要であろうという、そういう結論でした。小児科領域は、新生児のみならず希少な疾病が非常に多くあります。そういうこともありまして、単施設を拠点化することだけではインフラ強化としては、私は不十分ではないかと考えております。あとは、拠点での人材育成も極めて重要なことであろうと今思っているわけでございます。
 最後の2ページは、小児科領域という特定領域の拠点に期待することをまとめたものです。現状の横断的な臨床研究中核病院ですら小児の希少疾病の開発の経験は必ずしも多くございません。やはりそういうことを考えると、特定領域拠点へのノウハウの集中とそれを全国へ提供していくというような、そういう体制整備が必要だろうと思います。それから専門領域によっては治験の経験がほとんどない領域や過去に治験の進捗が思わしくなかったような領域もございますので、特定領域拠点等、特に医師主導治験の経験があるような医師がノウハウを提供することによって、治験の成功の可能性が上がってくるのではないかということも考えているわけでございます。実際なかなか症例登録が進まないということも起こり得るわけです。そういう場合には、その解決に向けて助言と協力を行えるような支援体制が必須であろうと考えます。
 11ページを御覧ください。では、このノウハウと経験のある医療機関の更なる体制強化としてどういうことが考えられるかですが、1つはやはり、対象疾患の多くは希少疾患でして、各領域の治験ネットワークとの連携による全国多施設の治験とならざるを得ないと思います。そのように考えると、1つの拠点で治験に参加する患者さんは決して多くございませんので、現在ある既存の臨床研究中核病院と同様の施設要件を求める必要はないのではないかと思っております。
 一方で、こういう特定領域の拠点に関しては、開発薬事とか、プロジェクト管理、プロトコル作成、研究支援などにおいても小児領域特有の知識や経験を持つ人材が必要であると思います。更に各疾病領域の治験ネットワークの強化、取りまとめの機能、疾患レジストリーやバイオバンク等を統合的に活用できるような、そういう体制が必要になりますので、そういう課題を考慮した付加的な要件が必要ではないかと考えております。
 それから、多施設での共同研究が必須ですので、中核となる施設以外に数施設の連携拠点が要るのではないかと思っております。それから、これが非常に重要ですが、そういう拠点において小児に特化した開発薬事、プロジェクト管理、プロトコル作成等の支援能力を有する人材や、医師主導治験に精通した人材を育成することが非常に大切ではないかと思っておる次第です。以上でございます。御静聴ありがとうございました。
○楠岡部会長 どうもありがとうございました。御質問、御意見につきましては、次の難病に関する御発表のあとでまとめてしていただきたいと思っておりますので、まず先に資料2-3で日本医療研究開発機構難病克服プロジェクトから資料を提出していただいています。参考人の葛原先生から御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○葛原参考人 只今、御紹介いただきましたAMEDの難病克服プロジェクトの、プログラムディレクターとスーパーバイザーをしております葛原と申します。今日は、このような機会を頂きまして、どうもありがとうございます。今、飯島先生からもありましたが、5年目に入っていると思いますけれども、AMEDの難治性疾患実用化研究事業というのはこの数年間で非常に整備されてきましたし、その中から新たな課題が起こっておりますので、私からは事業がどういうものかということを最初に御説明いたします。ここの下側のページにありますが、前半ではAMEDの難治性疾患実用化研究事業の概要と、数年たって具体的な成果が上がっておりますので、その中でどういうものがあるかを御紹介した上で、特に研発課が担当していらっしゃる臨床研究拠点にどういうことが期待されるかということを、希少難病研究の観点から述べてみたいと思います。
 次のページを見ていただきたいのですが、AMEDが扱う連携分野と現在私が担当しております難病克服プロジェクト、一番下に赤で囲っているのが難病克服プロジェクトです。AMEDの末松理事長がよくおっしゃるように、縦の串と横の串、これは横の串で、縦の串というのはAMEDの中にある常置的ないろいろな組織です。例えば知財相談、国際協力、財務や職員の管理とかです。そういうのに対して横の串というのは、具体的な病気に対する研究開発なのですが、その中の9番目にあるのが難病克服プロジェクトです。
 その目的は、2015年に施行された難病に対する医療等に関する法律に対応しています。難病法というのは、難病の患者さんの支援ということで、生活の支援、医療の支援、社会活動-就業等の支援と一緒に、難病の原因解明と治療法の研究開発を行うというのも法律に書いてあり、その一部を担っているのがこのAMEDの難病克服プロジェクトです。それがミッションになるわけです。
 次のページは、難病の定義と説明です。これは難病法に書いてある定義ですが、希少性、原因不明、有効な治療法が未確立なために、非常に長期にわたる療養が必要である病気です。障害には医学的、健康的な問題だけではなくて、精神的なもの、社会的なもの、経済的なものといろいろなものが含まれていますが、これをどう克服していくかということです。研究対象疾患は、この定義に当てはまる全ての難病です。希少性とは全国で大体5万人から10万人を超えないぐらいの患者数の疾患と、ちょっと曖昧なところがあるのですが、そういう疾患全部を研究対象とするということです。難病法には、指定難病という旧難病克服事業での特定疾患に当たる医療費の補助が出る疾患がありますけれども、これとは関係なしに、この定義に当たるもの全ての病気を扱うことになっております。そして、一番のミッションは、病因と病態の解明と一緒に、画期的な診断法や治療法を研究開発し実用化していくことです。
 次のページに、現在どういう研究課題が走っているかということを示しました。平成30年度の予算規模は約82億円です。この事業のきっかけは、2009年だったと思いますが、舛添さんが厚生大臣のときに、それまで20億円ぐらいだった難病の研究費を一挙に100億円に増やして、80億円ぐらいが研究開発に使えるようになり、厚労省の実用化研究事業が発足しました。2010年からだと思います。私は、そのときからずっとこの事業のお手伝いをしていた関係で、またAMEDでも続けてくれということでかれこれ10年近くここに携わっております。厚労省管轄のときには事業担当者の数が少なかったために、研究計画の評価やパイプライン管理に限界がありましたが、AMEDができて専任の職員数が増えて薬事行政機関や企業からの出向者も加わったので、従来の研究者と厚労省担当者だけの時に比べると、非常にシステマティックに進捗管理ができるようになったと思っています。
 この82億円ぐらいの予算の中身ですが、基礎となる病態解明研究が41課題、これは特に若手研究者が中心で、予算からいえば数千万円規模の余り高額ではないものが多いです。次の赤で囲んだ課題、これが研究開発の一番の目的である薬品の研究開発課題です。この中でステップ0のシーズを探す探索的研究が63課題、これだけのものの中から次のステップ1に上がっていっているものが12課題、ステップ2で実際にヒトを対象とした臨床治験、全部これは医師主導治験ですが、それが今27課題走っています。それ以外に、調整費という名目で毎年数億円ぐらいの予算が追加され、特に平成30年度は重点的に遺伝子治療をやろうということで、現在ステップ0の段階なのですが、5課題が付け加わっています。これが今、実用化研究として具体的に走っているものです。
 それ以外に、オミックス解析拠点ということで、遺伝子を中心とした解析サービスが9課題、これは1億円とか2億円とかなり高いお金になります。診療に直結するエビデンス創出研究というのは、ガイドライン作成とか現在の実際の医療に役に立つ形での具体的な成果を出していく研究で、これは1,000万円前後でそんなに高い研究費ではないのですが、65課題あり、ほとんどの指定難病に対応した課題が走っていて、現在のガイドラインの見直し等に役立つ成果を出していく研究をやっています。
 一番高い研究費がついているのは難病プラットフォーム(主任研究者は京都大学の松田先生)で、後で話しますが毎年5億円以上のお金を付けて、あらゆる難病のデータをそこに集約する活動をやっています。
 今、飯島先生がお話になった成育医療センター等が非常に大きく関わっているものが、次のページに示したInitiative on Rare and Undiagnosed Diseases(IRUD)で、末松理事長の肝いりで始まった事業です。非常に数の少ない珍しい病気のために未診断となっている患者さんを対象に、診断を臨床情報と遺伝子から付けていくというアメリカで実際に行われているプロジェクトに倣って、日本でも始めようということで、短期間で体制が確立されました。IRUDと略しますが、もともとはIRUD-P、PはPidiatricsで小児から始まったのですが、今は大人も加わってこういう形で8課題が走っています。これは後で説明いたします。一番下の課題は、難病とは直接関係はないので省きます。
 次を見ていただくと、これがIRUDの体制です。これは、希少で未診断の疾患の患者さんを臨床的特徴と遺伝子解析によって診断していくというもので、社会還元型のプロジェクトです。3本柱は、1包括的な診断体制の全国整備、2次世代シークエンサーを含めた革新的検査、主に遺伝子検査のです。そして、3国際共同研究は、日本に1、2例しかない疾患が多いので、外国のケースとマッチングさせて診断を付けていくということで、これらを3本の柱としてやっています。
 ということで、IRUDというのは図の左側に書いておきましたが、全国の大学病院、国立病院機構で特定の疾患分野に特化した病院など、417施設を、拠点病院、連携病院に指定して、全国的な難病ネットワークを作っています。解析センターというのは、成育医療センターとか慶應大学とか、先ほどのオミックス解析拠点も含めて数億円の予算を出して、全部の患者さんの遺伝子解析をホールエクソームとかホールゲノムを解析します。
 実際やってみると、未診断患者のうち30~40%の診断ができたというのが一番大きな成果で、子供だけではなくて大人でもそうだということでした。オールジャパンで500ぐらいの施設の患者さんの情報を集めて、更に数が少ない疾患の場合は国際連携でやっていくと、こういうことができるという1つの模範事例です。
 それを世界共通のHPO(Human Phenotype Ontologyの略語:ヒト症状名用語体系)という、ヒトの臨床病型の症状用語に基づいて未診断患者の診断確定をやるということです。その具体的な成果が右側の括弧内に書いたもので、短期間に成果が上がっていますので、IRUD Beyondという形で次の事業が去年から始まっております。今まで「診断」だったのを「治療」に持っていく。それから、遺伝子の「解析」だったのを、革新的な検査方法の導入により「診断改善」にしていく。そして、データのネットワークの活用で、これはまず日本国内で作ったものをグローバルな世界的なものに繋げていくものです。AMEDは、IRDiRC(国際希少疾患研究コンソーシアム)に加入しており、北米、ヨーロッパも含めた全世界の希少疾患のネットワークの中で臨床情報と遺伝子を共有することによって、日本に1例しかない病気であっても、2番目、3番目がヨーロッパとかアメリカにあるということで、遺伝子解析によって診断できたという事例が実際に報告されています。
 ここまでは、主にヒトを対象に進んでいた研究ですが、昨年から今度はBeyond Genotypingが始まりました。Beyond Genotypingは国立遺伝学研究所を巻き込んで、ヒトの遺伝子の解析の成果を活用して「ヒトの病気のモデルで作ろう」というプロジェクトです。アドバイザリー委員会でヒトの病気の研究者と遺伝研の研究者の間でマッチングをして、ヒトの病気を呈示して、遺伝研のほうで研究対象疾患があれば手を挙げていただくという方式です。これもやってみると実際にいろいろなことが分かってきています。ヒトではなかなか解析できなかったものが、ショウジョウバエとかゼブラフィッシュやメダカ、それから線虫を使うと解析可能となっています。しかも私はびっくりしたのですが、国立遺伝研は創設以来、初めてヒトの病気に取り組んだ、ということでした。それまでは動物しか見てなかったので、ヒトの病気ってすごいのだなと皆さんびっくりしていらっしゃったので、それを見て私もびっくりしました。そういう具合で、皆さん非常に熱い思いを持って取り組んでいただいています。
 この図は情報プラットフォームプロジェクトを示したものです。ここに書きましたように、全国で今いろいろな希少難病のレジストリーを作っております。それをこのプラットフォームに全部上げていって、研究班だけではなくて外部の人にも使っていただけるようにする、それから、右下のほうにあるゲノム遺伝子、これをいろいろな情報として集めてプラットフォームに上げて、一種の陳列棚のようなものを作って見える化し、そこで保管して活用するという、そういう方向に現在進んでいるのですが、研究費がなかなか間に合わないので、全部の要望に応えられていないという問題があります。
 その次のページからは、この2、3年で具体的に何が出てきた成果です。簡単に事例紹介だけにします。ステップ2で進んでいた川崎医大の砂田先生の課題です。難病の1つであるミトコンドリア病に、タウリンという既によく使われているアミノ酸ですが、それを大量に使うと脳の障害の発症が防げるというものです。2つ目は、小児の神経難病のAADCという脳に働く酵素の欠損症に対して、ベクターで遺伝子を入れると、寝たきりで知能障害や運動障害が出ていたような子供が歩いて学校に行かれるようになったというものです。これはビデオの紹介で、私も非常に感動いたしました。
 3つ目は、ちょっと新しいタイプの内容なので御紹介いたします。私は文科省のライフサイエンス課でやっていた疾患特異的iPS細胞を活用した難病研究に、プログラムスーパーバイザーとしてタッチしていたのですが、その中で、動物実験の代わりに患者のiPS細胞を使って実際に多数の薬の効果と毒性を調べて、その中から有効な薬を選別して、モデル動物実験を飛び越してヒトを対象に臨床治験をするという、恐らく世界でも最初の事例ではないかと思いますが、実現しました。パーキンソン病とか筋萎縮性側索硬化症のように有名な神経難病は、遺伝性のものはごく一部で、9割以上が孤発性で原因不明なので、モデル動物が作れないのです。それが患者さんの細胞から作製した疾患特異的iPS細胞から分化させた神経細胞をモデル動物の代用にして、ドパミンの産生能とか、あるいは運動ニューロンの成長とか変性を見ることで、薬の作用を調べる方式です。これはリポジショニングで見付けた薬で、パーキンソン病に使っていた薬の中に1つだけ運動ニューロンを非常に元気にする薬があるということで、PMDA相談で承認されて、去年10月から既にヒトに対する臨床治験に入っております。ヒトの治療薬の研究開発にこういうやり方もあるのだという画期的事例です。
 一番最後に示したのはオミックス解析プロジェクトの成果です。日本で数十例しかないてんかんの患者さんをオミックス拠点で解析したら、これは一種の良性てんかんなのですが、イントロンが非常に長く伸びる遺伝子異常が見付かったということで、また新しい治療法研究にも応用できるものです。そういう形で、いろいろな所から具体的成果が出ています。これまでは、研究費を出しているのはAMEDであるにもかかわらず、研究者の方ではもらった後はほとんど考慮してくれなかったので、プレスリリースのときには必ずAMEDの研究費でやったことを示して、一緒に名前を付けていただくということで、最近ではこういう事例が集まるようになっています。
 最後の数枚の図は、私の意見と提言です。研発課が関係している事業について幾つか質問をいただきましたので、それについて私から3つの点を回答いたします。1つは、希少難病の研究開発に係るどのような問題点があるかという、先ほど飯島先生もおっしゃいましたがその話と、もう1つは提言です。実は実際に難病の治療薬が出てきたらとても高額であるという問題が出たので、これをどうするかを今後は是非考えていただきたいということで、1枚図を作ってきました。羅列しておりますので、順番に読み上げながら説明いたします。
 まず1番は、先ほどから出ております希少疾病の特殊性です。これは、疾患の種類が極めて多く、それこそ遺伝子で分ければ何千とありますために、1つの表現型であっても遺伝子や原因が異なるので、同じ特徴があるものだけを集めてみると数例しかいないという病気がいっぱいあるのです。それらは、自然歴や機能、あるいは生命予後が明らかではなく、特に免疫異常とか炎症性の疾患、特に子供に多いのですが、自然に良くなったり悪くなったりするので、自然経過が分からないために非常に臨床治験がやりにくい。それから、個々の疾患の症例数が極めて少なくて、実際に臨床治験をやろうとすると、余り高齢の方とか重症の方は使えませんので、該当例は国内では数例とか数十例しかいないということがよくあります。
 これをどうやって薬の開発に結び付けるかということで、現在やっているのはレジストリーはオールジャパン体制で、しかも超希少疾患に関しては国際共同研究をやっています。例えば、筋ジス等がこれでやっているわけです。もう1つは、研究者数も少なくてばらばらに散らばっているので、飯島先生がおっしゃっていたので私も強調しておきたいのですが、1~2か所の拠点を作ったのでは難病研究は解決しないわけです。全国に散らばっている患者と研究者をどうまとめるかということが大事だろうと思います。
 治療薬開発の難点としては、病態解明が治療開発には不可欠なのですが、基礎研究にお金と時間が非常に掛かるということと、しかも病気が数年以上、大人の場合は数十年の慢性進行性疾患ですから、治療効果を1~2年という短期間に見るのは難しいということです。ですから、ここは矢印を書いておきましたが、新しい法律で決まったような、例えば「条件及び期限付きの承認」の形で走らせた上で、7年ぐらいあるいは10年たって最終的に有効性を判定する方式が必要です。そうしないと、短期間では何も変わらなかったということしか分からないだろうと思います。
 第2の問題点は、今言ったように効果を見るのに大体5~10年掛かると思うのですが、研究費は大体3年単位なのです。だから、とても矛盾していて、効果が見られない期間しか研究費は出さないというのが今の仕組みになっているので、この解決も必要だと思います。
 3番目は、製薬企業に依頼しなければいけないことなのですが、研究開発への参加に極めて消極的で及び腰だという問題です。委員の方に企業関係者がいらっしゃったらちょっと申し上げにくいことですが、まず、希少難病は病態が複雑で開発に時間が掛かることで、お金も掛かります。しかも、対象患者が少ないので、たとえ候補薬が決まってもPMDA基準の企業治験は実施が困難です。そのため、今はほとんどがアカデミア発の医師主導治験になっていますが、これはやむを得ないところです。
 さらに問題なのは、アカデミアでやった研究開発が首尾よく終了して、あとはヒトでやる、あるいは保険収載して市販までもっていくという時に、企業が乗ってくれないという問題です。ヒトで効果があったといっても、市販後のマーケットが小さいです。全国で10名とか100名、これでは採算が合わないということです。たまに幾つか乗ってくれた企業があるのですが、引き受けた場合には会社の成果ということで、アカデミアやAMEDに対しては何も代償を払わないという問題もあります。利益が出れば研究者に基金として寄付してもらうとか、市販後の薬価を安くするとかということも考えてほしいと思っています。
 4番目に書いたのは、今の臨床治験以外に、数名しかいないような患者さんへの医薬品開発の方策がないかという御質問がありました。これは、全国で数例、世界で10例とかというような患者さんには、薬を届けたくても今のPMDA基準の治験は不可能です。ということで、1つの方策として、きちんとした施設でエビデンスに依拠した個別臨床研究の形で、次のエビデンスを作ってやっていくということを考える必要があると感じています、早く患者さんに新薬を届けるためには、(この方式には批判的意見もあるのですが)取りあえずこういうことで始めたらどうかなというのが私の考えです。疾患モデル動物がない病気に対して、患者さんから作製した疾患特異的iPS細胞は、先ほど申し上げたように1つの解決法になり得ると思います。
 あと、行政で行っている様々な取組とのギャップと課題というご質問です。これはちょっと思い付くのがなかったのですが、私が常々考えていることを2つだけ挙げておきました。指定難病のときには、臨床調査個人票という書類を医師が記入して提出します。最近はとても膨大な書類になって、記入というか入力が大変なのですが、これの問題点は研究用に使用できる文書になっていないということです。目的が補助金の申請書なので、お金がもらえるようにしか書かないわけです。だから、記載の医学的科学的な信頼性信憑性に疑問符が付きます。名前と生年月日だけは信用できるわけですが・・・。ということで、現実の書類は患者さんのレジストリーとか疾患調査には使用できないのが現状ですけれども、内容を見直して、軽症例から重症例の全例を登録して、患者さんの転帰がわかるようなシステムをきちんと作るべきです。今のままでは、保険病名が治療を対象としていて、原病名は関係ないのと一緒だと思います。
 もう1つの問題は、補助金支給の対象とならない軽症例と、補助金が要らなくなった例、例えば、生活保護とか高齢者医療に移行すると、指定難病登録をしなくなるのです。だから、生きているのか死んでいるのかさえも分からないのが、今の厚労省の指定難病の登録システムです。膨大な労力を要するデータ入力が、医学的には全くのゼロ価値の資料になっているという問題があります。私は前から、これだけの労力とこれだけの患者さんが協力してくださっている資料は、医学的データとして活用できるようにするべきで、しかもこれは軽症例から重症例まで含めて、お金を払う人だけではなくて、もっと広い範囲の人を集めるべきだと考えています。
 最後に、もう1つ今いろいろな研究者から問題として指摘されている問題を申し上げます。それは膨大な臨床情報や生体試料の保管と管理の問題です。3年とか6年あるいは5年の研究期間が終了して、研究費が途絶えた後、集めた膨大なレジストリーとか遺伝子とかの試料が宙に浮いてしまっているのです。取りあえず今は、大学の共同利用施設などで預かってもらっているのですが、フリーザーとか試料とかコンピューターとか、この膨大な試料をどうやって次世代に残して活用してもらうか。これは是非、国立の機関でやっていただかないと駄目です。AMEDは3~5年で成果を出す実用化研究にしか研究費を出せませんので、やはり国として取り組んでいただきたい課題だと思います。
 次は、臨床研究中核拠点の在り方です。まず、大学病院についてですが、継続的な取組が難しいのは、慢性疾患です。診断と治療方針が決まった後は、大学病院でずっと診ることはできませんので、全国に診療拠点が分散します。それから、患者の状況等による制限で、例えば希少難病には人工呼吸器や透析が必要な病気がたくさんあるのですが、急性疾患対象の総合病院だけではなかなか対応できない点があります。それから、研究の状況が疾病ごとに異なっています。先ほどから申し上げているように、いろいろなレベルでの研究をやらなければいけないということがあります。
 新しい薬ができて、特に炎症性の疾患に関しては、今は治療できる病気が増えてきました。遺伝子異常に関しては、現在、核酸創薬とか遺伝子注入により、実際に治る病気が出てきて、寝たきりの人が歩けるようになるというこ成果が現実に出ています。そういう点では非常にすばらしい成果です。このような新しい治療をどこでやるかということなのですが、図の矢印の下にそのことを書いておきました。拠点というのは、どういうのが必要かということで、大学病院や総合病院での診療が適した病気やステージ、そこでの継続的な治療が行えない病気に関しては、やはり慢性的な難病を扱う拠点も必要であろうということです。特定領域ということで申しますと、難病患者は数が少なくて、しかも研究者が拠点にいるとは限らないわけです。全国に散らばっていますから、やはり拠点は1か所ではなくて、幾つか決めてそこに枝葉がぶら下がるという方式です。全国の患者を網羅したレジストリーを作って、症例を増やすネットワークのほうが、1つ、2つの拠点だけを作るよりは大事なことではないかと思います。また、全国に点在する研究者とか施設の中は、これまで臨床治験を行った経験がない所があります。臨床研究中核拠点では、是非そういう施設に対して支援をしていただきたいと思っています。
 次の図は、私が最近心配していることで、難病の高額医療費を今後どのように持続可能にするかということも、研究開発と一緒に考える必要があると思います。というのは、去年、神経治療学会で、企業が配布していた大体ここ1年で保険収載された薬のパンフレットを調べて痛感したことです。最近は毎年、5件を上回る数の神経難病の新薬が出ています。例えば、全身型重症筋無力症の補体に作用する薬(エクリズマブ)は、1年間で薬代だけで1人について6,000万円です。先ほど飯島先生がおっしゃった脊髄性筋萎縮症の髄腔内に注入するヌシネルセン、これは寝たきりとか人工呼吸器を付けた患者さんが実際に歩いて学校に行けるようになった事例もあって、私もとてもびっくりした薬なのですが、一瓶が932万円で、2歳の子供に対して1年目が3,728万円、毎年2,000万円ぐらいずつ掛かります。これは現在、大人も2歳の子供と同じ量を使っていますが、大人に使うとなると、体重当たりでいえば1回に数千万円使わなければいけないような薬になってしまうわけです。
 アメリカの神経学雑誌に、ユタ州等では、幼稚園に上がるぐらいまでに大体5億円ぐらい必要で資金が枯渇したので、将来は州の補助を打ち切るという記事が出ていました。こういう薬しか使えない患者さんにどのように医療費補助を持続可能(sustainable)なものにしていくかということも、考えておかねばなりません。今、指定難病の医療費は国と地方自治体の折半になっていますが、そこは今後長期的には、一生使っていく薬ですから考えていただかないといけないと思います。
 最後に、希少疾病や難病の臨床研究中核拠点病院へ、どういうことをやっていただきたいかということをここにまとめておきました。まず、患者さんの数が少なくて、専門家も北海道から沖縄まで分散していますので、1つの拠点ではやれません。ですから、拠点を中心にネットワークづくりが大事だと思いますし、もちろん臨床研究中核拠点がその中に入っていればよいのですが、そうでない場合はそういう小さな所に是非支援をしていただきたいということです。
 1番、2番と大体似たようなことを書いていますが、3番目は、やはり病気そのものが5年、10年、20年単位のものですから、それだけの研究の人材とか資金を保証する拠点を作っていただきたいと思います。もう1つ、拠点には2種類あると思っています。1つは、慢性の難病とか希少難病の領域に特化したもので、これはナショナルセンターが割合に得意とするところではないかと思います。ところが、ナショナルセンターというのは総合病院ではないので、高度先進医療には向かないのです。私も精神・神経センターの病院長をやっていて、全身の病気になったら総合病院に搬送する事例がありました。恐らく高度専門医療ができるナショナルセンターは、総合病院機能を備えた成育医療センター以外は少数だと思います。2番目は総合病院機能と全科を備えた大学病院などが適した拠点です。ですから、難病研究と診療は、病気によってあるいは治療方針によって、最も適した施設を考える必要があるということです。
 5番目は、臨床研究中核拠点病院に期待される役割として、難病拠点病院には分野横断型とか領域特化型とかの病院がありますから、いろいろなノウハウをそういう病院に提供して支援をしていただきたいし、もしも研究グループに入った場合は、その中心となってやっていただきたいということです。2番目に書きましたのは、現在AMEDでは、研究費の申請時に記入していただくチェック項目リストです。特許とか知財の有無、あるいは全国を網羅したレジストリーの作成、企業との連携、関連学会とか患者会との連携などがあります。ステップ1とステップ2に関しては、PMDA相談をしているかどうか。こういうことを全部チェックするようになっているのですが、これが書ける施設と書けない施設があります。これは是非、臨床研究中核拠点で積極的に介入していただきたいと思います。そういうことをやっていただければ、今、四苦八苦して取り組んでいる施設が多い難病研究が、飛躍的に発展するのではないかと期待しております。ちょっと長くなりましたが、以上です。
○楠岡部会長 どうもありがとうございました。それでは、お二人の先生方の御発表に関しまして御議論いただきたいと思いますが、16時15分頃を目途に参考人の先生方が退室される予定でございます。まず今までの御説明に関します御質問等がありましたら先に行いまして、その後に部会での議論を進めたいと思います。御質問、御意見はございますでしょうか。
○山口委員 御説明ありがとうございました。まず、飯島参考人に小児のことでお聞きしたいと思います。私も小児では適用外が本当に多いということは問題だという認識がございます。ただ、今の御説明の中で、欧米では成人の薬が開発されたときに同時に小児の剤形も作られるとお聞きしたわけですが、日本でそれが行われていないというのは、何か日本特有の歴史的な理由があったのかどうかをもし分かれば教えていただきたいと思います。それが1つです。
 もう1つは、治験をしている治験をしていないということの判断基準がどこにあるのか。この場合は治験をする、この場合は治験をしなくていいという判断基準が実際にあるのか。これが2つ目です。
 もう1つは、参考人に御質問するのがいいのか分からないのですが、先ほどの難病の高額医療費のショッキングな数字を拝見して、最近とても高い薬価の薬がどんどん出てきている中で、日本は皆保険だけではなくて高額療養費制度ということで守られていて、ましてや、今は上限額までしか請求されなくなっています。そうすると誰が負担するのだという問題があって、こういうものがたくさん出てきたときに本当に財政破綻するのではないかということを非常に懸念しています。先ほどの御説明は、ほとんど最近薬価収載されたものが書かれているのですが、これは大体どれぐらいの年数で下がってくるのか、実際にどれぐらいまで下がるものなのかということを、参考人になるのかどなたになるのか分からないのですが、もし見通しのようなものがあるのであれば教えていただきたいと思います。以上です。
○楠岡部会長 3番目のものは事務局でお答えできる範囲でお願いすることにしまして、最初の2つについてお願いいたします。
○飯島参考人 1番目について、なぜ小児の治験が余り行われていないかということですが、私はこれはむしろ厚労省に聞きたいと思うぐらいです。欧米でどういう薬剤に対して小児の治験をするかしないか。小児に使われるという薬剤に関しては基本的には治験をするという方向性だと欧米では考えていると思います。
○山口委員 そうではなくて、欧米で成人の薬が開発されたときに小児の剤形も同じように作られるというお話だったのですが、日本でそうなっていない理由、何で日本では成人の薬ができたときに同時に小児の剤形が欧米と違って作られないのかということについて、何か歴史的な背景があるのでしょうか。
○飯島参考人 要は、日本は法律として義務化されていないのです。その大きな違いがありますので、私も法制化してほしいということを申し上げているのです。
○楠岡部会長 今の点に関しまして、国忠委員のほうからと、藤原先生から、FDAの規制に関してもし御存じのことがあればお教え願えますでしょうか。
○国忠委員 今の御説明で間違いないと思います。義務化されていないから製薬会社がやらないという状況にあるのです。いろいろな場面で出てきますが、やはり小児で治験をやり直すということがものすごく会社にとっても負担なわけなのです。欧米の場合は、それに見合うインセンティブというのが必ず付いていて、「餌を出してくれないからやらない」という言い方はすごく業界としては言いにくい話なのですが、そういう状況があるという中で、うまく回っている。
 ここ数年、成育医療センター、小児科学会といろいろな協議をさせていただく中で、海外で開発が進んでいるものについては日本で開発できそうなものについて、あるいは先生方からの要望が強いものについてはお互いに出し合って進めていきましょうという動きは現実に起こっているわけで、少しは改善しているというのが今の現状だろうと思っているのですが、これについてはそのぐらいのことを御説明したいと思います。
○楠岡部会長 FDAでは、このガイドラインというのは小児に使われる可能性のある薬に関しては、開発時に小児の治験も義務付けられているというようなことを聞いた覚えがあるのですが、その辺りについては藤原先生はお分かりになりますでしょうか。
○藤原部会長代理 そうなっていると思いますが、それも何十年も前からの話ではなくて最近の話ですし、たとえ日本で法制化したとしても、最近のいい薬は大体外資系の企業が作成していますから、日本の法律で幾ら義務付けても外資の本社が「それは開発しません」と言ったら多分やらないと思うので、永遠にこの課題は続くのではないかと思いますけれども。
○楠岡部会長 よろしいでしょうか。
○山口委員 はい。
○楠岡部会長 保険の件に関してはいかがでしょうか。
○吉田治験推進室長 保険の件ですが、所管外ではあるのですが知っている知識でお答えしますと、日本の場合は当然、医薬品等が承認されると薬価基準というものに収載されます。その場合に、例えばこれまでに類似薬等がない、特にこういった難病等の場合にはこれまでに薬がない場合が多いですから、そういう場合には例えば原価計算という形で価格が設定されます。さらに、こういった市場性が非常に低いような場合には幾つかの加算も用意されていて、ものによっては非常に高額の価格が付く可能性もあります。収載されると、今度は実勢価に基づいて、定期的な薬価改正によって、実勢価が低ければ下がるということになりますし、あるいは後発品が出て、そのタイミングで先発品の価格が下がるということもあります。
 ただ、そのタームがどれぐらいかと言われてしまうと、それはものによってかなり幅が広いかと思うのですが、大体医薬品の寿命で言えば、10年、20年ぐらいはあると思いますので、その間に実勢価がどれぐらい下がるかというのは品目の市場規模等、いろいろな条件によって変わるのだろうと思います。
 あと、先ほど欧米のほうで法律で小児薬開発が義務付けられているというお話がありましたが、正確に言うと、例えば成人効能で開発したときに、第Ⅰ相の終わり若しくは第Ⅱ相の開始時、あるいは第Ⅲ相の開始時等において、小児用の開発計画を出させるというのが正確なお答えになります。
 小児用の開発計画を出させて、その場合に一定の理由によって、もしそれが開発できない、あるいは開発しなくてもいいという妥当性が認められる場合には、いわゆる免除みたいなものも認められていると。開発する場合には、例えば特許期間の延長であるとか、いろいろなインセンティブが幾つか用意されているという現状です。
 日本の場合には、2004年に遡るのですが、こういった適応外使用の問題というのはその当時も問題になっていて、当時の関係大臣の合意で、未承認薬の使用については確実な治験の実施につなげると。そして、制度的に途切れなく保険診療と併用できるような体制を作るということが合意されて、それによって先ほどの飯島先生のプレゼンにも出てきましたが、いわゆる未承認薬等検討会議、その前身に当たる会議等が設置されて、また小児に関しては、いわゆる適応外使用が問題になっていたので別の会議体ができて、そこで集中的に優先的に開発すべき品目はリスト化されて、それが承認に至っているのです。その枠組みが、現在の未承認薬・適応外薬等の検討会議というものに引き継がれて、その仕組みは続いております。まず、そういう流れがあります。
 その際に、日本の場合に海外と違うのは、海外の場合には、いわゆる医薬品が承認されたかどうかというものが、同時にそれが市場で入手可能になるかどうかという考え方になるのですが、日本の場合には皆保険の国ですので、承認されてそれが薬価基準に乗って、いわゆる保険収載されて初めて使えるという形になります。そうした関係で、薬価収載のタイミングにおいて何らかのインセンティブを従来から掛けてきた経緯があって、海外とアプローチが違っているという背景がございます。御参考までにということです。
○楠岡部会長 ほかにいかがでしょうか。
○清水委員 葛原先生の御発表で、私ども京大もレプチンをはじめとして希少疾患の開発には力を入れてきておりますし、FOPを対象としたiPS創薬の研究も進んで治験もやっているところですので、御苦労の様子は手に取るように分かります。
 特に、慢性的な疾患で進行が遅い、FOPなどもそうなのですが、かなり長時間を掛けないと本来の薬効が検証できないようなものをどうするかというところは非常に重要な問題だとは思うのですが、薬効が出ないうちに承認を受けるということは、なかなかロジカルに難しい話だと思いますので、メカニズム研究などが非常にされているので、直接的な症状の軽減を見るのには時間が掛かるけれども、メカニズム的にいってこういうことが押さえられていれば、あるいはこういうことが起こっていれば、それは効果につながるはずだというエビデンスは比較的容易に取れるように設計できるのではないかと。
 あとは、そういったもので、いわゆるハードなエンドポイントではなくて、ある意味ではサロゲートなエンドポイントになると思うのですが、そういったもので仮承認を求めるというのが、方策として非常に有用ではないかと思って伺っていました。そのような、直接的なメカニズムから薬効につながるであろう現象というか効果というか、PDマーカーのようなものになると思うのですが、そういったものを探すというような研究は当然されていると思うのですが、その辺はいかがでしょうか。
○葛原参考人 動物実験ないしは難病の疾患特異的iPS細胞を使って、今、先生がおっしゃったような骨関節疾患なども含めて、これはもう既に細胞レベルでは効くということが分かっているので、ヒトにやろうとしたときにいろいろな問題が今起こっているということなのです。ですから、PMDA相談などに行ったときに、こんなに経過の長い病気でこんなに変動するのは、一体どこで使ってどういう具合に効果を見るのですかと言われると、非常に弱いところはあるわけです。
 ですから、現在再生医療でしょうか、例えば今度の脊髄損傷への骨髄幹細胞投与治療では確か、「条件付き、制限付き承認」ということで、7年以内にもう一度結果を評価して最終的な結論を出すということになっていると思うのですが、難病とか希少疾患にもそういう評価方式を取り入れれば、メカニズムあるいは動物実験やiPS細胞実験などで安全性と有効性が確立されているものには、適用できるのではないかと思うのですが。
○清水委員 先生、それは誤解があるのではないかと思うのですが、再生の条件付き承認も、いわゆるハードなエビデンスになるところまでは求めていないけれども、効果についてはヒトで実証できないと、条件付き承認すら出ないのです。
 あれの場合も、比較的短期間で結果が出るような、効果が直接的かどうかは別として、効果があるということを示すような何らかのデータを出さないといけないはずなので、そのFOPのときにもかなり議論したのですが、結局これまでの経過データから、このぐらいの期間を見ればいいだろうというところで見ざるを得なかったので、そういうところではなくて動物実験でこういう効果がきちんと出るメカニズムは分かっていると。そうだとすれば、ヒトで同じことをやったときに直接的な症状の改善というところまでいかなくても、これは効果につながるインディケーションが出るというところを出さないと、私は条件付き承認も難しいのではないかと思います。
 そういった研究は当然されているはずだと。要するに動物実験なりiPS実験なりがあって、こういうことがメカニスティックに起こると。それが直接的、例えばiPSのALSの研究のときもそうですが、一定のものの蓄積があれば神経細胞の寿命が延びるだろうということがエビデンスとして出ているわけなのです。だから、それに相当するような、ALSの場合だと症状を直接よくするというところまで見るのには相当時間が掛かると思うのですが、それにつながるであろう兆候を探し出すような、ヒトで見られるようにするということは、より短期間でできると。それをもって条件付き承認のような形に持っていけないかというのが、一番ストレートフォワードではないかと思って伺ったのですけれども。
○葛原参考人 慶應大学の岡野先生が去年の10月から始められたのは、動物実験抜きで、孤発例のALS患者から作製したiPS細胞から分化させた運動ニューロンを用いた薬のスクリーニングです。リポジショニングで既に市販されている薬を投与し、生存期間を延ばしたり、ニューロンの突起を伸ばす作用を持ち、しかも副作用がない薬だけを選別しました。それが一種のサリゲートマーカーとしても使用できるということをPMDAが承認した上でやっているのです。たまたまそれは既存薬のリポジショニングなので、安全性のことは余り問題にならなかったというのも1つの幸運だったと思います。ですから、サロゲートマーカーなどがある病気はあるのですが、やはり短期間で効果を見るにはなかなか難しいというのが常に引っ掛かっている問題です。
○花井委員 2つほどお伺いしたいのですが、レジストリーの悉皆性というのは悩ましい問題で、私どもは先天性凝固異常で、大体6,000~7,000人しかいないのだけれども、日本の医療機関の500か所で見ているのです。結構ばらばらで、登録しようと思っても難しいというところがあります。普通は悉皆性を担保しようと思うと公費負担で、先ほど「科学性がない」と言われたのですが、結局これを使わないと悉皆性が保てなくて、欧米を見ると大体センター化していて、センターに一定期間に1回行くと。そこのセンターで登録するという形になっています。
 まず、難病全体で330もあるので一概に言えないと思うのですが、難病がゆえに診てもらえないというので均てん化が必要な難病と、今言ったようにある程度集約化してそこで集めないとどうしようもないというものと両方あると思うのですが、少なくともレジストリーを作る公費負担の部分について、それを申請するためには2年に1回は何とかセンターに行かなければいけないというような立て付けがあれば、私たちも。たかだか5,000~6,000でも、何十年たってもできないです。苦労してやろうとしてもできないので、そういうことが考え得るのかというのが1つです。
 もう1つは、先ほど少しおっしゃったのですが、研究費が3年で、研究班が持っているデータの所有者は誰かという話を聞くと研究班だと言うわけです。それは移管先があって、それを継続的にサステーナブルなものがあれば、その受け皿があればいいのだけれども、それがないので、国の科研なのだから国が引き取れと言っても、国は引き取ってもどうしようもありませんというような話がよくある話です。AMEDなどは、AMEDのファンドについて研究期間が終わったものについて、そのデータについてはAMEDが引き取るというような立て付けはあるのでしょうか、若しくは可能なものなのでしょうか。以上の2点についていかがでしょうか。
○葛原参考人 後のほうからお答えしますと、研究期間が終わった後は野放しと言うか、AMEDが引き取るお金はないのです。ですから、今のところは、ヒト材料のほとんどが大学や研究所の研究センターが持っている冷凍庫や試料センターというような所で保管してもらっています。紙ベースの資料やIT化されたリスト、情報や資料は、研究代表者の施設のコンピューターの中に残っているという形です。それらを難病のプラットフォームに上げようと思っているのですが、とてもその全部を引き取るだけの研究費がないということです。これは博物館のような教育研究用の開かれた保管所が必要ということで、難病の疾患特異的iPS細胞樹立課題に関しては、理研のバイオリソースセンターが、文科省が研究費を出して、寄託したiPS細胞を保管しています。難病研究に関してはAMEDの研究費でやったものは現在のところは各施設の好意に甘えて、管理してもらっています。ですから、ほとんどの患者さんから提供された試料は、大学ごとにパソコンと共通施設のフリーザーの中に預かってもらっているという状態です。
 最初のほうのご質問の悉皆性ということに関しては、基本的には厚労省の政策研究班が全部の難病をカバーしている形になっています。疾患ごとに悉皆性に差がありますが、そこでは軽症例から重症例までの患者を把握していますので、AMEDの課題ごとの実用化研究班も政策研究班と協力して、そこのレジストリーを利用して、オールジャパンの協力体制でやっていただくことを研究費を出すときの条件にしています。もう1つのポイントは患者会との連携です。
 ただし、レジストリーを作るための研究費は政策研究班は持っていませんので、これはAMEDの研究費で作っていただくということでやっています。悉皆性に関しては、ある程度のところは確保されていますし、特に数の少ない超希少難病で、日本中で20人とか200人というレベルのものは、ほとんどの患者が登録されてレジストリーとしては完成しています。以上です。
○花井委員 ということは、AMEDがファンディングした分については、一定程度は大学に好意で引き取ってもらいました、同じような所をほかの大学と合わせて、オールジャパンのものを作りましょうというときに、それを大学が抱え込んだりはしないという形にはなっているという理解でよろしいですか。厚生科研の場合はそういうことが起きていています。その大学がデータを持っていて、それをオールジャパンで皆で使うとなっても、ライバルの大学とは協力しませんというような形になって、せっかくの税金の研究費のデータがそこで私蔵されるという状況が生まれていると思うのですが、AMEDの場合はそうでもないですか。
○葛原参考人 抱え込みと私蔵はしないという条件でお金を出しているということで皆さんに納得していただいています。疾患特異的難病iPS細胞樹立課題に関しては、理研寄託を義務付け、理研のほうでカタログを作って、たくさん預けたものは世界中の研究者に、製薬企業を含めて、条件を満たしていれば誰にでも提供するということの同意書を、患者さんから頂いています。
 AMEDの全部がそうはなっていないのですが、基本的には難病プラットフォームのほうで情報とデータを管理して、実物の、試料とか遺伝子とかは、大体は研究代表者あるいは研究チームの中で遺伝子解析をした所とか、あるいはMRIのデータを持っている所で保管してもらっています。これが現在の対応ですが、代表者が退職したりした後はどうなるかというのは、我々にも全く分からないので、それまでに何とかして欲しいということをいろいろな形でいろいろな所に要望していて、今日も是非これだけは申し上げようと思って来たということです。
○楠岡部会長 データの問題は昔からで、20年前、30年前から、研究班がある特定の疾患に関して非常に苦労して集めたデータも、研究期間が終わると散逸してしまうという問題が残っています。今回の中間取りまとめにもリアルワールドデータという話があるわけで、そういうようなものを構築するためには、研究期間が終わるとデータが散逸してしまうというのはやはり問題で、どこかでそれをちゃんと登録していかないと、また同じようなことをもう一回やり直さなければならず、非常に無駄になるということです。
 ただ、私は関係があったので調べたのですが、かつては研究費が補助金だったので、データの所有権は研究者にあったために、逆に研究者がいなくなるとデータがどこかに行ってしまった。現在は研究が全部委託研究の形になっているので、最終的にはAMEDなり国なりが所有権を持っているので、先ほど葛原先生がおっしゃったように、研究者が抱え込みをするというのは本来はあり得ないことなのですが、それを保持していただく所がないために、今はそういうような形でお願いしている。ですから、将来的にはレジストリーを含めて、こういういろいろな研究で出てきたデータをどこかで1か所アーカイブを作らないことには、リアルワールドデータというように議論してきたのですが、一体それはどこで誰が持っているのだという話になってしまう。そこは今後の検討事項の1つとして、リアルワールドデータのところにも絡めて必要なところではないかと思います。
○葛原参考人 あと、補助金のときと違うのは、今はAMEDの契約の対象者は学長、病院長、理事長、会社の社長なのです。だから、本来なら学長とか社長が管理しているという建前ですから、もし何か問題が起これば学長の責任、社長の責任、理事長の責任という形であって、研究者個人ではありません。
○楠岡部会長 余り時間もありませんので今日のお話を整理させていただきますと、1つはレジストリーが非常に大事であるということで、いろいろな研究を進める上においても、あるいは薬等の開発を行うためにも、まずどこに患者がいるのかということが分からないことにはスタートできないので、レジストリーをいかにしっかりとやっていくのか。そのやり方として、新たにレジストリーを作るという話もあれば、先ほど葛原先生からあったように、難病の公費制度などをうまく使うような形でレジストリーを進めていくというような形が1つではないか。
 2番目には、実際に薬なりの候補があって、それを治験なり臨床試験を進めていくに当たっては、まずは非常に少数の患者、あるいは多施設にまたがっている患者において研究を進める場合には、どこかそれをサポートする拠点が必要になる。それぞれのサイトが人を抱えるというのが非常に困難であり、たまたま大きなサイトに患者がいれば、そこにもともと臨床研究をサポートするチームがいるかもしれないのですが、必ずしもそうではないので、どこか拠点がそれをサポートする。それから、その中には単に実施のみではなく、プロトコルの作成とか全体のマネジメントも含まれます。正に臨床研究中核病院に期待されているようなことを疾患ごとに行うのか、あるいは別な形で行うのかは考えなければいけませんが、そういう体制が必要であるということです。
 もう1つは、承認の話で、例えば10人しか患者がいないような薬の承認をどのようにするのかというような話で、これは承認制度としてどうやっていくかというまた別の話にはなってくるかと思います。あとは、先ほどのデータの話等が出てくるかと。
 最終的にネットワークをどう形成するかということで、小児にしろ難病にしろ、研究班という形で、ある程度今ネットワークができつつある、あるいは既に出来上がっているところがあるので、それをいかにオーガナイズして、こういう研究開発あるいは全体の新薬等の開発に、どうつなげていくかというのが非常に大きな問題点ではないか。
 ただ、そのときに既存の薬、小児ではかつてほとんどの薬が適応外だったのですが、保険でみんな通っているので、結果的に誰も治験をしようとしない。あえて承認を取ろうと思って治験をしようと思うと、プラセボが割り付けられるかもしれないということで誰も志願者がおらず、それで結局治験が進まなかったという事態があり、それで公知申請というような形でかなりのものが認められたわけです。既存のものを新たに小児で治験をしようとするときに、既に保険などで適応外が認められてしまっているとなかなか難しいので、そういう意味では開発段階からやっていかないと、ちぐはぐになったらなかなか製薬会社にもインセンティブもないですし、患者もわざわざ治験に参加しようという意思が働かないというようなことで、かつて問題がありましたが、その辺は今後は考えておかなければならないことではないかと思っています。
 時間が過ぎましたが、まだいらっしゃっていただけるのでしたら、もうちょっといていただけたらと思いますが、ほかに参考人の方にお伺いしたいということはございますでしょうか。よろしいでしょうか。では、本日はありがとうございました。
 そうしましたら、本日お話をしていただいた以外のところでも、小児あるいは難病等、研究が進みにくい分野に関しての御意見などがありましたら是非お願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
○国忠委員 最後に楠岡先生がまとめられたことに少し関連するのですが、小児の治験に関して、小児の開発に関して、2つに分けて考える必要があると思うのです。
 1つは、全くまだ適応が取れていない現在開発中の薬剤で、もう1つは既に成人効能がある薬剤です。全くまだ適応が取れていないものについては、飯島先生が紹介されたネットワークを使って、細々とかもしれませんが、製薬会社と学会とがいろいろと話合いをしながら、既に10品目の支援依頼があると書いてありますから、この2年間でやっと10品目が動くようになったというわけで、新たに開発しなくてはいけないのはこのスキームに乗っけるように我々も努力したいと思います。
 もう1つ、成人効能が既にあるものに関しては、もう少しいろいろなやり方があるのではないでしょうか。以前から言っていますように、臨床研究部会ですので臨床研究法を使って一変、小児にも使えるような研究ができるでしょう。それはひょっとしたら、PK/PDと安全性の確認をすれば、小児にも使えるということができるかもしれません。
 もっと言えば、既に存在するレジストリーあるいは具体的にはMID-NETを使って、適応外で小児に使われてしまった例を引っ張り出して、そこで安全性が確認され、あるいは有効性が認められたら、それでも認められないかという、ここの部会ではよく「レジストリーを使って何とか早く薬を開発しましょう」という話をしているのですが、既に成人効能のある薬剤については、ちょっと異例なやり方かもしれませんが、MID-NETなどのレジストリーを使った小児での経験例をたくさん集めて、それを束ねて持っていくということは可能ではないかと思うのです。
 ですから、「2つに分ける」と言った意味は、これからやっていかなければいけない開発と、既に大人の効能があるものについて分けて考えるべきだろうと思っております。
○楠岡部会長 事務局からよろしいですか。
○吉田治験推進室長 治験ネットワークを使うという方法については、今AMEDの研究班を使って、ただいま発表がありましたとおり鋭意進めているところでございます。
 後半の、成人効能は既にあるのだけれども小児適応が適応外の扱いになって使われているケースについては、今、臨床研究法を使って行う、いわゆる一変のためのデータを集めるという御提案と、あとMID-NETのようなデータベースを使って経験例を解析して、それを使うという御提案があったと思うのですが、具体的にどのようにそれができるかということに関しては、中身を詰めてみないと、ここでは事務局としても判断しかねますので、そういう提案を頂いたということで、こちらでもどのように反映させていくかということは検討したいと思います。
○楠岡部会長 ほかにいかがでしょうか。
○川上委員 先ほど山口委員がおっしゃった難病の高額薬剤費に関してです。中医協で薬価算定組織の仕事もしている関係で自分なりの意見を申し上げると、先ほど葛原参考人が出された資料の19ページに、最近保険承認された高額新薬が載っています。ソリリス、スピンラザ、ガラフォルド、ビンダケル、レオドパですが、これらは原価計算方式で算定されている薬剤かと思います。
 原価計算では、製造に掛かるコストだけではなく、例えば研究開発に掛かる経費や市販後の販売管理に掛かる経費とかも全て含め、マーケットサイズで割り戻す形で計算されます。こちらの臨床研究部会の議論と結び付けて言うなら、例えばこういった難病や希少疾病などに関しては、研究開発拠点を整備して治験や臨床研究に掛かる期間やコストを下げたり、市販後も調査や安全対策に掛かるようなコストを下げることによって、結果的には製造に掛かるコストでは製薬企業が損をしないように薬剤費を抑えることもできるので、患者にとっても、また公費負担になっている場合は支払者にとってもメリットのあることにはつながるのではと思います。
○清水委員 2点あります。1つは、小児領域の考え方で、国忠委員がおっしゃった点は非常に重要だと思うのです。新たな開発をするべきものと既存で成人効能があるもので、成人効能があるものは正に部会長がおっしゃったように、治験をしようと思っても使える薬があって、わざわざプラセボに当たるかもしれないので「やってください」という人はほとんどいないという状況を考えると、新たに治験を組むということはほぼ不可能なので、そこは少なくとも欧米で承認のあるようなものについては、極力少ないデータで、それこそ日本人とどの程度違うかというPK/PDのデータぐらいで承認していただくような形が取れないかというところは大事だと思います。
 もう1つ小児領域に関して言うと、いわゆる乳幼児の部分と、小児の中でも学童期以降の薬の場合で大分やり方も手間も違うのだろうと。特に、飯島先生からのお話にもあったのですが、周産期医療センターのような所で協力したいけれどもなかなか大変だというお話があって、CRCもいないしということでした。特にそういう領域だと、通常の医療の現場で働いているCRCとは違うような、特殊なスキルも必要だろうと思いますし、患者から直接にデータはなかなか取れないので、親御さんとか、場合によっては周産期の場合だと母子ともに入院しているというケースもあろうかと思いますので、なかなか難しいのではないかと。
 特に周産期医療センターのような所は、NICUをどういつも患者を受け入れられるようにキープするかというところだけでも非常に大変な思いをしているという現状なので、そういった所には拠点外であっても何らかのそういうサポート的な措置を取って、ネットワークの中でそういうことを担当できるような準拠点的な所には、何らかの措置をしないと進まないだろうなと思いました。
 それから、最後に川上先生から御指摘のあった原価方式で薬価が決まっている以上、開発コストを下げればそれは当然薬価も下がってくるだろうということは私も賛成なのですが、今度は欧米と違って、欧米の場合は超希少疾患などですと、滅茶苦茶高い薬価を掛けて、ペイするような薬価を払えない人には売らないというのが横行してしまっているわけです。日本では、逆に皆保険の制度の前提からいうとないので、そういう形でコストが下がって薬価が安くなるのはウェルカムなのだろうけれども、これは国忠先生にも御意見を伺いたいのですが、そうすると結局マーケットは小さいから、安い薬だと経済的な意味でメリットがないと。そういう疾患がたくさんあるがゆえに、マスとしては相当大きな対象者がいるのだけれども、個々のそういう疾患に関しては、それぞれの薬の部分がどうしてもコストがペイできないとか、あるいはコストとしてはペイするぐらいだけれども、結局それに人を使ってどうのこうのとしていくと、企業としてのメリットが出てこないので、なるべくならやりたくないという話になってしまうのではないかと。そこのところの構造を何とか考えていかないと、トータルとして開発を、アカデミアはそういうものを全て商業ベースでは難しいので、開発のところをできる限り国の資金なども調戴して、お手伝いをさせていただいて、患者様に届けたいというところなので、そうやって出てきたものをうまく企業のほうが製品にして、製品にしていただくのは企業なので、そこのところがスムーズにいくようなメカニズムも考えてあげられないかなと。
 例えばある一定の領域について、幾つかのそういう品目をパッケージで開発していただいて、トータルで見ればそこそこ経済的なメリットも出るような形の開発というのはできないのかなと。そういうことも考えてみているのですが、その辺をまた議論させていただければと思います。
○楠岡部会長 ほかに御意見はいかがでしょうか。渡部委員。
○渡部委員 特に難病の治験の場合は、特定の研究者にかなり依存して進められることが多いのですが、開発期間が長くなると、研究者も退職になったりですとか、あと、大学病院の場合は異動が大変多くて、研究者と二人三脚で、いざ医師主導治験までようやく持って来たところで他施設に異動になってしまわれて、中核の要件で言うと、自施設の医師主導治験1件が他施設支援1件になってしまうことも実際あります。他施設に異動したとしても、継続して中核病院として医師の研究開発支援ができるような道筋を、きちっと責任を持って最後までお付き合いができるような工夫も必要なのかと思いましたので、ちょっと一言。
○楠岡部会長 ありがとうございます。ほかにございますか。
○花井委員 ちょっと、薬代の話が出たので、黙っておこうかなと思ったのですが、我慢できなくて発言します。こういった希少な疾病の薬が高いだどうだという議論は余り意味がなくて、やはり財政影響を常に考えてやらなければいけないわけです。安くても患者が多ければ高いわけですから。どうしても患者数10例とかで高くなるのは仕方なくて、それはコストダウンすればいいのですが、余り単価自体で議論をすると。むしろここでは推進するのだと。例えば、小児では小児適応加算というのが多分あると思うのです。ですから、むしろここでは、これは中医協マターで踏み込むことはできないかもしれませんが、小児加算はもう少し高くてもいいのではないのとか、それから、オーファンドラッグの助成があるわけですが、あれについても、ファンドをもう少し増やしたほうがいいのではないかという議論ではないかと思うのです。
 ですからここでの議論は、小児の希少の所にやはりコストを厚く配分しないと無理ではないのという議論であって、そもそも高いからという話をしてしまうと、HTAの議論全体の話の中でされるべき問題なので、ちょっと議論の筋が変わってしまうなと思う。もちろん、自分らも高いのを使って、多分、私だと年間1千何百万円、2千万円ぐらい使っているのですか、患者1人当たり。だから言っているのだろうとか思われるかもしれませんが、その話と、それから、希少な所はある程度厚くしないと当然無理なわけで、そこのところは押さえておかないと。ですから、コストを投入、薬価を高くすることがいいとは思わないのですが、やはり手厚くしないと、難病や小児の開発は難しいのではないかと思いました。以上です。
○楠岡部会長 ありがとうございます。難病ですごく患者さんが少ない場合、それも本当に一桁とか100名以下のような場合においては、薬として本当に成立するのかどうか。グローバルで見ると、ある程度患者さんがいて、薬として成立する可能性があるかもしれないのですが、本当に少ない場合は、薬というよりも、ある意味、コンパッショネートユース的なもので、もちろん当然ヒトに投与するわけですから、GMPレベルは保証され、また、ある一定の前臨床のデータは必要だとは思うのですが、そこから先は治験を行うというよりも、臨床研究法におけるそういう未承認薬の使用という形で、どちらかというと観察研究的に希望する方に投与して、それを長期的にフォローすることによる観察データを集めた上で、何らかのまとめをしていくというアプローチの仕方もあります。
 ただそれは、作ってくれる所があるかどうかというのが1つ大きな問題なので、これは、やはり製薬業界等の支援を頂かないといけないとは思うのですが、そういう違ったアプローチというのを難病の世界では考える必要があるかもしれません。薬にならないので、候補物質はたくさんあるけれども、一向に治療は進まないという可能性も出てくることもあり得ます。別の視点からになりますが、そういう開発と言いますか、患者さんを救う方法としてどういう方法があるかというのは、この部会のマターになるのかどうか、議論が必要になるかと思いますが、それも考えておいたほうがいいのかもしれません。臨床研究法はそういうところで、活用というとおかしいですが、使うことで1つの切り口が出るかもしれない。先ほど国忠委員や清水委員がおっしゃったようなところがあるかと思います。ほか、この点に関してよろしいでしょうか。
 それでしたら、次、議題3「その他」とありますが、それに関して事務局からありましたらお願いします。
○吉田治験推進室長 それでは議題3です。08資料3-1「臨床研究法の疾病等報告等に係る臨床研究部会への報告について」というタイトルの資料を開けてください。資料3-1です。臨床研究法の規定により、特定臨床研究を実施する研究責任医師は、当該特定臨床研究の実施によるものと疑われる疾病等の中で、死亡又は死亡につながるおそれのある疾病等の発生のうち、未承認又は適応外の医薬品等を用いる特定臨床研究の実施によるものと疑われるものであって予測できない場合、こういったものが生じた場合には、厚生労働大臣に報告を行うとなっています。また、それらの疾病等の報告状況については、毎年度、厚生科学審議会に報告を行うこととされています。したがって、毎年度1回以上の報告が必要であることから、報告の件数の状況を確認しつつ、当面の間は、半期ごとに報告を取りまとめ、翌半期の最初の開催の本部会において報告することで、結果として年2回、厚生科学審議会に対する報告を行うことにしてはどうかと考えております。
 一方で、この上記に限らず、臨床研究法におきましては、厚生科学審議会は、特定臨床研究の実施による保健衛生上の危害の発生又は拡大を防止するために必要な措置について、調査審議し、必要があると認めるときには、厚生労働大臣に意見を述べることができるとされております。したがって、次に示す事象に関する情報を得た場合には、個別に本部会に対して速やかに報告をして、必要な措置等について御意見を頂くことにしたいと考えております。
 まず、研究責任医師が厚生労働大臣に対して行う疾病等報告のうち、特に保健衛生上の危害の発生又は拡大の防止の観点から対応が必要と思われるもの。そして、認定臨床研究審査委員会が特定臨床研究の実施に係る定期報告や疾病等報告、重大な不適合の是正措置に関して意見を述べたもののうち、保健衛生上の危害の発生又は拡大の防止の観点から対応が必要と思われるものです。なお、研究責任医師や認定臨床研究審査委員会からの報告に係る臨床研究部会への速やかな報告の要否については、臨床研究部会長及び部会長代理の御意見を聞いて判断したいと考えております。
 続いて、09資料3-2「平成30年度の臨床研究法に定める疾病等報告について」というタイトルの資料を開けてください。資料3-2です。ただいま説明しましたとおり、臨床研究法の規定により、厚生労働大臣は、研究責任医師から報告を受けた疾病等の報告の状況について、毎年度、厚生科学審議会に報告を行うこととされております。今般、平成30年度の疾病等の報告の状況について別紙のとおり報告いたします。なお、今回、当該報告の要否に関し、認定委員会から臨床研究の対象者の安全性に大きな影響を及ぼす疾病等や不適合への措置として、臨床研究を中止すべき等の特記すべき意見を述べたものとして厚生労働大臣に報告が行われたものはなかったことを申し添えます。2枚目は、PMDAからの疾病等報告整理結果通知書です。3枚目、別添資料1は、未承認の医薬品等で起きた疾病等報告です。別添資料2は、いわゆる適応外の医薬品等で起きた疾病等報告です。以上です。
○楠岡部会長 ありがとうございました。資料3-1のスキームに関して、並びに資料3-2の報告に関して、御質問等ございましたらお願いしたいと思います。
○花井委員 よろしいですか。
○楠岡部会長 どうぞ。
○花井委員 臨床研究法のこの報告は、ここ以外、どこか専門的な所、部会か何かに報告されているのですか。大臣に報告されたのがここに来ているという意味なのですか。
○吉田治験推進室長 法律の規定にのっとりまして、厚生科学審議会に定期的に報告するということで、この部会に報告することになっております。ただその間に、一定のものについては、PMDAで情報の整理を行うとなっております。
○花井委員 そうですか。何となく政策策定っぽい部会の立て付けに、割と専門的なものがきているので、ちょっと立て付けとしては違和感を感じたので質問しました。ということは、一定程度この部会は、この報告に対して何らかの反応をしなければいけないかどうかというデシジョンメークの責任を負っているということなのでしょうか。
○吉田治験推進室長 該当するようなものが出てきた場合にはそういうことになると思います。
○花井委員 分かりました。
○楠岡部会長 それでは、資料3-2で今、3件報告が来ておりますが、これは、PMDAに報告があって、そちらで見ていただいて、いわゆる緊急性とか重大性において、直ちに部会に、というか、厚生科学審議会に上げて判断を仰がなければならないというものではないということで、年次報告というまとめで報告されている、そういう理解でよろしいわけですか。
○吉田治験推進室長 そのとおりです。
○楠岡部会長 よろしいでしょうか。
○掛江委員 1点だけ教えていただきたいのです。この部会への報告は、資料3-1の最初の○の定義だと、「ただし、死亡又は死亡につながるおそれのある疾病等の発生のうち」なのですよね。今回報告していただいている3例は、それに該当するものになるのでしょうか。
○吉田治験推進室長 いわゆる重篤なもので、因果関係を否定できないものということで対象となっております。
○掛江委員 では、この3例は重篤なものという規定になっているということですか。
○吉田治験推進室長 ここに上がる前には、通常、認定臨床研究審査委員会にも報告がされて、そこでも一定の判断がされるのですが、研究者がまずそういう判断をして報告をして、その判断に対してその判断でよいということになっております。
○楠岡部会長 よろしいですか。花井委員。
○花井委員 要するに、ここでこの臨床研究はこのまま継続することはまかりならんと大臣が言えるという立て付けですね、法律上。そのときに、大臣が言うための諮問機関がここということになると、一つ一つ、一応、この臨床研究は継続して構わないとここで言わなければいけないことになってしまわないかと思うのですが。ちょっとそこが、つまり、自分たちの責任がどのぐらい重いかが今のお話だけでは分からなくて。つまり、最終的に、最悪の場合はすぐにこの臨床研究をやめるべきで。もちろん、認定倫理委員会がそれを見ているのだからそこで止まるでしょうが、そこから最後の安全弁として大臣というのが、法律の立て付けではそうなっていて、それが諮問がここしかないとなると、継続して差し支えないという判断をしましたという内容を一応見ておかないと、何となく責任が取れない感が出てしまうので、その辺の整理はどう、もう一回教えてもらえますか。
○吉田治験推進室長 そのようなケースの場合には、定期的な報告という形ではなくて、その都度緊急にこの会議を開いて、今日お示しする資料は簡単な1枚紙ですが、もう少し詳細なものをお示しした形で、この部会の判断という形でそれをまとめることになると思います。ただ、今回はこういうケースではありませんので。
○清水委員 ですから、緊急にやらなくてはいけないというのは、そのまま続けた場合に何かもっと重大なことが起きそうだとか、あるいは、感染性のエージェントなどを使っているようなワクチンなどの緊急で、このまま放置しておくと一般の人にも広がってしまうかもしれないとか、そのような公衆衛生上の危険を伴うかもしれないとかという判断が要るものだと思うのですが、現状では、この報告では、この3例については、いずれも中止しなければいけないようなものではないという認定倫理委員会の判断が出ているものということですよね。そこで中止をしなければいけないという判断が出たものについては中止されるわけなので、ある意味、ゆっくり考えていても問題ないと思うのですが、逆に言うと、中止しなくてもいいという判断が出ているものの中に、本当に中止しなくてよかったのだろうかというのが出るといけないから、結局、報告が来るというパターンだろうと思うのです。今、花井委員がおっしゃったところは非常に重要だと思うのです。一応、部会長及び部会長代理の先生方が判断して、緊急性があるかどうかを判断するという立て付けだったと思うので、これについては出てきた段階で大丈夫だろうと、この判断でよかろうということで定期報告に回っているという理解ですよね。
 その場合にちょっと気になったのは、3例のうち2例は回復ないしは軽快という転帰なので問題ないと思うのですが、3例目は未回復になっていて、死ぬかもしれない状態が続いているという状態にも取れるのです。ただ、これはかなり進行しているがんの患者さんに対する治療なので、原病の悪化ということも十分考えられ、原病の問題もあるので、これがどうなっているのかというのは、ちょっと気になるところなので、この未回復の事例については、もう少し詳しい情報を頂いたほうがよいのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
○吉田治験推進室長 これにつきましては、今こちらで得ている情報は転帰未回復ではあるのですが、もともとこの治療法の場合に高血糖が起こることはよく知られているのですが、いわゆる1型糖尿病が起こることは散見はされているのですが余り例がないので、そこで、まず研究者からは、これは重篤な疾病等に当たるということでCRBに報告があって、CRBもその判断を尊重したわけなのです。その際に、こういった有害事象、こういった疾病等が起きたことに関して、速やかに研究班、そして実際の患者さん等にIC文書等を通じて通知をする、周知をするといういろいろな行動も見た上で、研究に関しては継続して差し支えないという判断がされているところです。
○清水委員 要するに、これは起こっていることが1型糖尿病なので、インシュリン等で一応コントロールできる状態で、1型糖尿病の状態は回復していないけれども、生命の危険に関しては問題がないという判断でよろしいですね。そういう意味ですね。
○伯野研究開発振興課長 今、申し上げたとおりなのですが、少しこちらも、今の状況を再度確認した上で、また座長、座長代理とも御相談させていただいて、取扱いについては、再度検討させていただくという扱いにさせていただければと思います。
○楠岡部会長 よろしいですか。今回、この報告に関する検討は初めてですので、いろいろ疑問の点とかあるかと思います。もう一度、今の課長からのお話のように確認はさせていただきますが、これを前例とすると全部また一からやって、何のためにPMDAにチェックいただいているのかということになってしまいますので、まず初回ということでプロセスを確認することであって、決してこれを前例として今後全部そのようなことでやるという話ではないことだけは御了解いただきたいと思います。
○清水委員 毎回確認してほしいと言っているのではなくて、未回復の状態で、一応、OKが出ている理由について何らか説明がないと、形式的に、はい、見ましたで終わってしまうので、そういうことを申し上げたかったのです。
○楠岡部会長 特に未回復というと、どこまで未回復で、どの部分まではある程度回復しているのかという目鼻が付かないとなかなか難しいと思います。よろしいでしょうか。
○掛江委員 もう一度確認なのです。花井委員が御質問された件なのです。結局、ここの部会は、報告をされた事項について、もちろん報告なので承認事項ではないと思うのですが、報告のとおりで問題がないのだというところまでを確認する役割があるのか、若しくは、この場を通して社会に公開するための手続として、ここでの報告を拝聴させていただくだけなのかというのが、ちょっと手続上どちらなのかがよく分からなかったのです。
○吉田治験推進室長 いわゆる進捗を把握するという位置付けになるかと思います。これは公開でやっておりますので、ここに出た情報は当然公開されて資料としても出ているということです。
○掛江委員 そうすると、進捗を確認する。ですから、評価とかの内容を確認するというか進捗を確認するということですか。
○吉田治験推進室長 内容、進捗両方になるかと思うのです。もし、非常に危険なものに関しては、もう少し詳細な情報を示した上で判断を頂くこともあるということです。
○掛江委員 ありがとうございます。
○楠岡部会長 後ほど、臨床研究法の説明のときに報告のスキームを作っていただいていたと思うのですが、それを参考資料で委員の方々に、もう一度、念のため確認の意味でお送りいただけますでしょうか。お願いします。
○吉田治験推進室長 そのようにいたします。
○楠岡部会長 よろしいでしょうか。あと、「その他」に関して、ほかにございますか。
○吉田治験推進室長 もう一点、御議論いただくものではありませんが、特定臨床研究の保険診療上の取扱いについて、今般、保険局から疑義解釈資料の送付がありましたので、御参考までに配布しております。11参考資料2「特定臨床研究の保険診療上の取扱いについて」というタイトルのファイルを開けてください。いわゆる、特定臨床研究に該当する臨床研究の保険診療上の取扱いについてということで、特定臨床研究への該当の有無によって保険診療上の取扱いに変更が生じることはないと、このような疑義解釈がなされているところです。御参考までに共有いたします。
○楠岡部会長 よろしいでしょうか。保険診療上適応外として認められているものでも、適応外となっている以上、臨床研究法では、その分野に関しては特定臨床研究の範疇に入る。ただ、特定臨床研究になったからといって、今度、診療報酬上、支払われなくなるという話ではないということだと。よろしゅうございますか。
○吉田治験推進室長 あと、すみません、もう一点です。12参考資料3「臨床研究法の施行状況について」というファイルを開けてください。いつも部会ごとに更新している資料ですが、jRCTでの公表状況ということで、合計1,209件、また、認定臨床研究審査委員会の数ということで、今、91件という状況です。以上です。
○楠岡部会長 ありがとうございます。参考のため、ちょっと事務局で調べていただいた数字です。特定臨床研究の今の登録数ですが、前回、第11回部会、3月11日の時点では、指針に基づいて実施している研究を特定臨床研究に該当するものは移行しなければいけないという締切りの3月18日の直前だったわけですが、そのときに486件の登録でした。締切りの3月31日を過ぎた時点の4月1日の時点では1,096件ということです。もちろんこの中には新規のものもあるかと思いますが、指針から特定臨床研究に移行したものが約1,000件ぐらいと思われます。今回、1,140件という報告を頂きましたので、この1か月の間に50件弱が新たに登録されているということで、今後、新規登録ばかりになると思われますが、この50を少ないと思うか多いと思うかは、これから進捗状況を見ながら考えていく必要があるかと思っております。事務局で調べていただきましたデータに関して報告をさせていただきました。ほかに何か御質問、全体に関して御質問ございますか。よろしいでしょうか。そうしたら、最後に、事務局から連絡事項がありましたらお願いします。
○吉田治験推進室長 次回の開催ですが、また改めて委員の先生方に御連絡を申し上げたいと思います。事務局からは以上です。
○楠岡部会長 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。