- ホーム >
- 政策について >
- 審議会・研究会等 >
- 労働政策審議会(労働政策基本部会) >
- 第9回労働政策審議会労働政策基本部会 議事録
第9回労働政策審議会労働政策基本部会 議事録
政策統括官付労働政策担当参事官室
日時
平成30年6月27日(水) 15:00 ~ 17:00
場所
厚生労働省 省議室(9階)
出席者
委員(五十音順)
岩村氏、大橋氏、古賀氏、後藤氏、佐々木氏、武田氏、長谷川氏、守島部会長、山川氏
事務局
藤澤政策統括官(総合政策担当)、本多総合政策・政策評価審議官、大隈労働基準局労働関係法課長、弓職業安定局雇用政策課長、岸本雇用環境・均等局総務課長、元木雇用環境・均等局在宅労働課長、相本参事官(人材開発政策担当参事官室長併任)、奈尾労働政策担当参事官、岡雇用環境・均等企画官、大竹企画官(政策統括官付労働政策担当参事官室併任)
岩村氏、大橋氏、古賀氏、後藤氏、佐々木氏、武田氏、長谷川氏、守島部会長、山川氏
事務局
藤澤政策統括官(総合政策担当)、本多総合政策・政策評価審議官、大隈労働基準局労働関係法課長、弓職業安定局雇用政策課長、岸本雇用環境・均等局総務課長、元木雇用環境・均等局在宅労働課長、相本参事官(人材開発政策担当参事官室長併任)、奈尾労働政策担当参事官、岡雇用環境・均等企画官、大竹企画官(政策統括官付労働政策担当参事官室併任)
議題
(1)報告書(案)骨子について
(2)その他
(2)その他
議事
- ○守島部会長 それでは、ちょっと時間よりも早いですけれども、皆さんお集まりのようなので、ただいまから、第9回「労働政策審議会労働政策基本部会」を開催いたします。皆さん方におかれましては、お忙しい中、御出席をいただき、大変ありがとうございます。
それでは、カメラ撮りはこのぐらいで終わりにさせていただければと思います。
(カメラ退出)
○守島部会長 本日は、所用により石山委員、入山委員、大竹委員、川﨑委員、冨山委員、御手洗委員が御欠席でございます。
それでは、議事に入りたいと思います。本日の議題は、「報告書(案)骨子について」となっております。本日の進め方について御説明させていただきたいと思います。
最初に、事務局より第8回、前回のヒアリング概要について簡単に御説明いただいた後、報告書(案)骨子についての御説明をいただきたいと思います。その後、報告書(案)骨子の内容について自由な討議をしていただきたいと思います。
それでは、長くなりましたけれども、議題1に移りたいと思います。最初に事務局より、第8回のヒアリング概要について説明をお願いします。
○元木雇用環境・均等局在宅労働課長 それでは、前回のヒアリングの結果について御説明させていただきたいと思います。資料1をお開きいただければと思います。
前回はお二人からヒアリングさせていただきましたが、お一人は一般社団法人クラウドソーシング協議会事務局長、湯田様からお話を聞きました。
お話では、まずクラウドソーシングというのは、日本では業務委託の形式で業務を発注・受注するプラットフォームということで定義をしているということでした。
それから、クラウドソーシングのタイプを整理すると、総合型とか特化型と呼ばれるものがあるとおっしゃっておりました。
それから、真ん中辺にありますが、クラウドソーシングの特徴的なことをおっしゃっていましたが、報酬の支払いに関しては、業務開始時に一旦クラウドソーシング事業者が支払う予定額の確保をクレジットカード等で行い、承認・検収されるとワーカーにかわり請求決済を実行し、ワーカーに支払うという、一旦クラウドソーシング事業者がお金を預かってからワーカーに支払うという収納代行契約をされているということとか、それから7つ目のポツで、総合評価を相互にするという非常に特徴的なところがあるというお話も聞きました。受注者が発注者を、発注者が受注者を総合的に評価するというようなシステムだそうです。
それから、8つ目のポツに、クラウドソーシングの市場規模が、2018年予測では1,820億程度、2020年には2,950億程度になるし、それから、フリーランスの人口についても増加しているということをおっしゃっていました。
それから、10ポツ目に、ワーカーによりましては、自分の業務実績を重ねるためにクラウドソーシングを利用しているという、キャリア形成目的の人がいらっしゃるというようなお話をされていたところです。
次に、2人目には、一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会代表理事の平田様からお話を聞いたところです。
主には、4ポツ目にありますけれども、この協会でつくられましたフリーランス協会の調査の結果を中心にお話をいただいたかなと思います。
5つ目のポツで、専門性があって、もともと企業側もB to Bの取引で発注リテラシーがあるような分野の仕事は比較的年収は高いのだけれども、専門性が低く、人手として抱えられているような職種は年収が低いというような傾向があったということ。それから、フリーランスの方で独立する前後で変化があったかどうかについては、働く時間が減ったという方は多かったのだけれども、収入がふえたとか減ったという方はそれぞれ半々だったということです。
それから、課題というものもありまして、真ん中に、フリーランスの方の要望をおっしゃっていたのですけれども、政府・行政に対して産休、病気等のライフリスクに対するリスクヘッジや、国保、年金が会社員に比べて高いこと、企業に勤める前提の制度設計に関することや、高齢のフリーランスに関することへのサポートが要望として挙がっていたということ。
それから、9つ目のポツで、キャリア・スキルアップの開発支援について、専門スキル以外の間接スキルで契約や経営に関する知識等を身につける環境が必要。それから、フリーランス同士のネットワークであるとか相談場所、それから、自分に対するスキル開発を要望されているというようなお話がございました。
それで、下から2ポツ目に、その白書のまとめとして、企業の中での人材の活用促進とリテラシーの向上、キャリア開発の部分のサポート、多様な働き方に中立な社会保障の再編、副業解禁による自律的キャリアの形成の促進といったことが提言として出されているというようなお話を聞いたところでございます。
簡単ではございますが、ヒアリングについての概要は以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございました。
それでは、続きまして事務局から、報告書(案)骨子について御説明いただきたいと思います。よろしくお願いします。
○奈尾労働政策担当参事官 資料2をご覧ください。「労働政策審議会労働政策基本部会 報告書(案)骨子」ということでまとめさせていただいております。この資料2でございますけれども、これまでの本部会の御議論を踏まえまして、また2回にわたるたたき台を含めた資料やこれまでのヒアリング、そういうものも参考にしながら、御意見、御議論のうちで大方のコンセンサスが得られていると思われるものを中心に、事務局で適宜補足しながら文章にしているというものでございます。
これは1ページから始まって、第1章、第2章、第3章ということで、これまでの御議論の順番でまとめているものでございます。
まず1ページ、「第1章 技術革新の動向と雇用・労働への影響について」ということでございます。1から3まで大きく分けておりますけれども、まず1番が「技術革新(AI等)の動向と雇用・労働への影響に関する主な議論」ということです。御案内のとおり、技術革新による雇用・労働への影響につきましては、野村総研、オズボーン報告のような、半分近くの仕事は代替されるというものから、アーンツらの分析によります、OECD諸国でも10%まで代替はいかないのではないかといった議論までいろいろ幅広くあるわけでございます。また、人の行う業務の多くが新技術に代替されるという説もある一方で、それが新たな雇用を生み出すという説もございます。
2つ目の○ですけれども、留意点といたしましては、AI等の労働分野への導入はさまざまな不確定要素があり、それに左右されるということも加味しなければならないということを書いてございます。
2ですが、「技術革新の雇用・労働への影響に関する予測」ということでございます。先ほど申しましたとおり、全体像の予測は非常に難しいわけですが、労働市場全体、企業、労働者と便宜上3つに分けて考えております。
まず2つ目の○、労働市場全体に与える影響ですけれども、いわゆる技術代替が予想される一方で、AI等の新技術を開発・活用できる人材など、新技術補完的な労働者への需要の増加があるのではないかという予測があります。また一方で、人手不足と相殺される面があるのではないかという議論も御紹介したところでございます。
3つ目の○ですが、企業への影響です。技術革新に対応できる企業とできない企業で格差が生じる可能性がある。一方で、一般的には新技術が導入されると生産性の向上が見込まれる面があるので、生産の増加でありますとか労働力不足の緩和につながる可能性があるということでございます。
4つ目、5つ目の○は労働者への影響ですけれども、まず、業務代替といっても職業全体というよりは職業を構成するタスク単位で生ずることが予想される。そういうことで、タスクとか必要な能力や業務の遂行方法にも変化が生ずるのではないかというのが4つ目でございます。
5つ目の○ですが、技術革新に対応できるかどうかで格差が出てくる。変化に対応できない労働者については失業の可能性がある一方で、労働者の心身の負荷というのは軽減される可能性があるということを書いております。
これら1、2を前提として3番ですけれども、今後の課題ということをまとめております。
まず(1)の「実態把握」、2ページの1つ目でありますけれども、雇用・労働への影響につきましては、技術革新が生産工程や製品への実装可能性、それから費用対効果の問題がある。そういった問題があることに加えまして、グローバル化という局面と第4次産業革命という局面が同時に生じているといったことが予測を困難にしているという御意見があったところでございます。
2つ目の○ですが、技術革新のスピードが速い。ただ、その中で雇用・労働にどのような影響をもたらしたのかというのは、現時点では実態が把握できていないということであります。
3つ目でありますけれども、それを前提にすると、今後、影響については、業種、職種等ごとに速やかに具体的に実態を把握する。その上で今後の動向を予測していく取組が必要であるということでございます。その取組を前提にしつつ、引き続き情報の収集・分析、それから雇用、労働への影響については不断の検証・検討を行っていくことが必要であると考えております。
最後の4つ目でありますけれども、ドイツでは「労働4.0」という議論がございますので、情報収集の対象として諸外国の議論も参照すべきであるということであります。
(2)でありますが、生産性向上について、AIについてつなげて書いております。1つ目、2つ目が全体的な話でございます。まず1つ目でありますけれども、新技術の活用によってストレスの大きな仕事や危険な仕事などは新技術が処理して、人は人にしかできない、例えばコミュニケーション能力を求められる仕事、そういったことに特化していくべきではないか、いわゆるディーセント・ワークに特化していくことを目指すべきではないかというのが1つ目です。
2つ目として、AIは心身の負担を軽減していく面もありますので、働く人全ての活躍を促していく、また生産性の向上を図るということも求められるのではないかということであります。
3つ目は格差の話を書いてありまして、新技術を利用できる機会が増加していく中で、技術革新に対応できるスキルを持つ労働者と持たない労働者、それから企業のほうでいっても、業種とか企業規模間で格差が広がっていくおそれがある。それから、特に中小企業については、新技術の活用といったことをビジネスに取り込んでいけるかどうかが死活問題にもなり得るという話がございました。
一番下の2つでありますけれども、今後の対応でありますが、中小企業の生産性を大きく向上させていくために、AIという新技術は一つの手段になり得るわけでありますけれども、活用するための人材育成でありますとか、それから新技術の導入自体の支援について、中小企業に対して行っていくことを検討すべきではないかというのが1つ目です。
それから、一番下の○は過去の議論の尊重ということでございます。かつてのOA化、ME化、そういった技術革新への対応についても、社会全体や労使で議論を重ねてきて対応したという経緯がありますので、そういう過去の経緯については十分に尊重した上で、今回も同様に、社会全体、労使で検討を重ねていくことが必要ではないかということでございます。
続きまして3ページ、第2章、生産性向上、能力開発等の話でございます。まず1番といたしまして現状をまとめております。(1)が生産性向上でありますが、2つ目の○で、労働生産性を上げるためには、TFP、それから資本装備率、この上昇の寄与が大きいとされているわけでありますけれども、90年代以後、日本では特にTFPの上昇寄与が低下しているということです。
3つ目の○ですが、イノベーションの実現や無形資産への投資、これがTFPの上昇と相関関係があります。日本は諸外国に比べてイノベーションの実現割合が低い。それから、研究開発、先進的な機械等の取得や能力のある従業員の確保等が必要になっている。また、ソフトウェア等の情報化資産の投資やOFF-JT、そういった人的資本への投資の上昇率も低いのでそこは今後上昇させる余地があるのではないか、というのが3つ目の○でございます。
続きまして、(2)は能力開発の話を中心に書いてございます。1つ目の○でありますけれども、人的資本への投資、これは企業の支出について見ると、1991年から2016年までの25年ほどで約3割減少しているということでございます。それから、個人についても、典型的には、忙しくて自己啓発の余裕がないといった何らかの問題があると認識している方が8割ぐらいいらっしゃるという調査結果がございます。
2つ目の○でありますけれども、生産性の向上とか環境変化の中で企業における人材育成のさらなる促進、それから個人の側から見ても、キャリアアップとかスキルアップについては主体的に取り組むことが重要になっているということであります。
(3)の労働移動ですけれども、1つ目の○でありますが、人生100年と言われているように、職業人生の長期化、それから新技術導入等いろんな環境変化がある中で、労働移動が一層活発化する可能性がございます。そういった中で、誰もが働きやすく、転職が不利にならない柔軟な労働市場を形成することが重要だということです。
2つ目の○でありますが、現状を諸外国と比較すると、日本の産業間の労働移動は主要先進国と大体同様の水準になっているということであります。これを企業規模別に見た場合は、中小企業は総じて転職入職率は高い。大企業は中小企業に比べて低い水準にあるものの、長期的には上昇傾向であるということは言えるかと思います。
4ページの上のほうの○でありますが、産業別に見た場合は、入職率と転職入職率、こちらが高い産業、例えば宿泊業のような高い産業では離職率も高い、入職率等が低ければ離職率も低いという傾向がございます。
次の○でありますけれども、労働生産性の高い産業への労働移動については、年代ごとに差はございますけれども、一貫して労働生産性の高い産業への移動が生じている傾向があるということであります。
それから、年齢別に見た場合でありますが、次の○でありまして、年齢層が高くなるにつれて中途採用の積極性が弱まる。中高年については、一回でも中高年を採用した経験があるかどうかで企業の採用意欲は異なっているという傾向がございます。ただ、賃金を見ると、年齢が上がるにつれて賃金は上がりにくいという傾向が出てくる。
それから、最後の○でありますけれども、長期安定雇用については、労使ともにメリットが大きいという方が多いのですが、なぜそうかという理由、典型的には人材育成とか能力の継承がしやすいという理由かと思いますが、その評価の理由には留意が必要かと思います。
次に4ページの2番の今後の課題でございます。まず生産性向上でありますけれども、1つ目の○、IT等の利活用の促進が必要であると書いております。
2つ目でありますけれども、ITの利活用とかイノベーション促進等については、技術革新の果実の社会への均霑、それから、組織の活性化や個々人のキャリア充実に資するものになっているか。それを技術革新による雇用・労働への影響も踏まえながら、検証、検討を行っていく必要があるのではないかということであります。
3つ目でありますが、生産性向上については支援策はあり得ると思いますけれども、これは事業とか企業規模別に中身は異なるのではないかということであります。
4つ目でありますが、今の事業規模に関連いたしまして、中小企業については、雇用のウエートが大企業より大きいという中で、人手不足の状況をどう改善していくべきかといった課題もあり得るかなと思います。
下から2つ目でありますけれども、IT等の利活用については、組織、経営改革も重要であるということで、IT等をより利活用できる組織、働き方に変えていく。
それから、次の○でありますけれども、良質な労働・職場環境等について、企業のマネジメント力を引き上げることが重要ではないかということをまとめております。
次に5ページでありますけれども、(2)人材育成等について書いております。
まず一番上でありますけれども、一人ひとりのキャリアの充実ということで、キャリアプランの再設計、学び直しを促すということで、キャリアコンサルティングを受けられる仕組み、受けやすい仕組みの普及に取り組むことが重要である。それから、キャリアコンサルティング、これは一人ひとりのキャリア形成で終わらせずに、組織の活性化につなげる仕組みをつくっていくことが重要ではないかという話がありました。
2つ目でありますけれども、企業による人材育成が促進されるような環境整備を行うことが必要であるということです。
3つ目ですけれども、人生100年と言われるように、職業人生が長期化する中で、リカレント教育が大事である。それから、4行目以降ですけれども、大学を初めとする高等教育機関が労働者や産業界のニーズに対応した教育プログラムを開発・充実していくことも大事であると思われます。
4つ目の○ですけれども、今後の技術革新の進展の中でどういう能力が必要になるのかということを的確に把握した上で、その能力を生涯にわたって高めていけるような仕組みが大事である。これはリカレント教育とも絡むかと思います。
それから、次の○ですけれども、IT人材力が重要だという話を書いておりまして、各産業の中核的なIT人材を育成できる仕組みが大事であるということと、基礎的なITリテラシー、これは労働者全体にとって広く身につけていただく必要があるのではないか。それを支援するスキームが必要ではないかということを書いております。
次の○が経営者の話でございまして、経営者については人材育成のための知識等、いろんな場を活用して身につけていくことが大事である。それから、高度経営人材の育成に当たっては、今後の話でありますけれども、専門職大学院等を活用して養成を図っていくべきではないかということでございます。
最後の○にありますけれども、いろんな就業形態の働き方が選択できるようにする。あわせてワークルール教育といいますか、学齢期から高齢期まで各段階に応じた労働教育についても検討していく必要があるということであります。
(3)の労働移動です。1つ目でありますけれども、今後、中高年の方とか、あるいは産業構造の変化の中で離職を余儀なくされる人、そういったあらゆる方について必要な職場情報等を取得できて、転職が不利にならない柔軟な労働市場を確立していくことが大事であろうと思われます。
それから、次ですけれども、労働者がキャリアチェンジ、キャリアアップを実現する中で、自発的、自律的にキャリアを設計できるように、質の高いキャリアコンサルティングとかマッチング支援が効果的であると思われます。
その際には、労働市場で自分の職業能力についての評価というのを一人ひとりが客観的に認識できることも大事だろうと思われます。
6ページでございますが、上のほうの○で、年金ポータビリティの話を書いております。柔軟な労働市場ということで、これは働き方のみの話ではなくて、転職等があっても継続的に所得確保が図られることが大事であるということで、2016年に年金関係法については整備したわけでありますけれども、年金ポータビリティの活用を一層促進すべきであるという御議論もあったということです。
最後の○ですけれども、単に転職が不利にならない柔軟な労働市場とするというだけでなくて、社会全体で質の高い雇用機会を増やしていく。その上で、成長分野への労働移動を促進させていくことも重要ではないかと思われます。
最後、第3章、時間・空間・企業に縛られない働き方ということです。まず、現状を1番で書いております。
「(1)雇用類似の働き方」でございますけれども、労働基準法上の労働者でないと基本的には労働関係法令等の保護対象にはならないわけですが、雇用類似の働き方も広がっているという中で、昨年3月の働き方改革実行計画におきましては、1つ目の○に書いておりますように、雇用類似の働き方について、2017年度以降、順次実態把握した上で、その保護のあり方等について、有識者会議で法的保護の必要性を含めて中長期的に検討すると記載されております。
2つ目の○でありますが、この記載を受けまして、今年3月まで、雇用類似の働き方に関する検討会が開催されておったわけでありますけれども、3月に報告書がまとめられておりまして、2つ目の○の2行目で書いておりますけれども、雇用類似の働き方については、専ら事業者間取引として経済法のルールに委ねるのかどうか、あるいは労働関係法令の労働者に準じたものとして現行の労働関係法令における労働者保護ルールを参考とした保護等を考えるのかどうかといった点について、さらに議論を深めていくべきとの問題提起がございました。
「(2)テレワーク」ですけれども、2つ目、3つ目の○であります。雇用型テレワークについては、引き続きその推進を図っていくことが必要です。雇用型テレワークについては、導入企業の割合を平成32年で24年度比3倍というふうにKPIが政府目標でございますので、そういったことも踏まえてこういう記載になっています。
自営型テレワーク、3つ目ですけれども、良好な就業形態となるよう、環境整備を図っていくことが大事であるということであります。
「(3)副業・兼業」ですが、これを希望される方は年々増加しています。理由はいろいろあるわけでありますけれども、7ページの2行目でございますが、特に副業を持っている方の本業の所得を見ると、100万未満と1,000万円以上ということで、その2つの階層、低い階層、高い階層がほかの所得階層より高くなっているという状況がございます。この低い階層が少なくないということについては留意が必要かと思われます。
現状ですが、上のほうの○でありますが、多くの企業で」は、副業、兼業を認めていない状況でございます。その企業の側の懸念といたしましては、自社の業務がおろそかになるとか情報漏えいのリスクがある、そういったことが挙げられているというものであります。
2番でありますが、今後の課題をまとめております。まず、(1)雇用類似です。1つ目の○でありますが、従来の基準法上の労働者だけでなくて、より幅広く多様な働く人を労働行政でも対象にしていって施策を考えるべきではないかという問題意識であります。
2つ目の○でありますが、雇用類似の働き方、多種多様でありますけれども、どこに行政が介入すべき問題があって、問題の原因は何なのか、どういう人を具体的に保護の対象にし得るのか。それから、業種や職種によって違いがあるのか、どういう違いがあるのか、こういったことについて、なぜこういった働き方がふえているかということを含めて検討を進めていくべきではないかということであります。
3つ目であります。仮に保護する必要があるとすると、1つは、発注者と雇用類似の働き方の者について、ガイドラインを策定して対応するというのがありますけれども、いろんなバリエーションがあると。個別のケースに対し労働者性の範囲を解釈により積極的に拡大して保護を及ぼす方法。それから、労働基準法上の労働者概念を再定義、拡大する方法。それから、雇用類似の働き方の者に対し、労働関係法令等の保護を拡張して与える制度を用意する方法など、いろいろな方法があり得るわけであります。
ただ、いずれにしても、誰を保護の対象にして、どういう保護の中身にするかといった内容の検討なしには結論が得られないということがございますので、保護の必要性について検討する中で議論すべきだろうと思われます。
この議論に当たりましては、4つ目の○ですけれども、さまざまな課題につきまして、法律、経済学等の専門家による検討に速やかに着手することが必要であると思われます。検討に当たっては、保護の対象者たる雇用類似の働き方の者、契約条件の明示、契約内容の決定・変更・終了のルールの明確化、スキルアップやキャリアアップ、出産、育児、介護等の両立、集団的労使関係等の保護の内容等について、実態把握と並行して検討を進めることが必要であると思います。
その際には、先ほどの検討会の報告書で把握した実態や課題、また、今後さらに把握すべきと指摘された事項をもとに、当事者である雇用類似の働き方の者、それから雇用労働者双方を含めて関係者が納得感を得られるように議論を進めていくことが必要であると思われます。
「(2)テレワーク」でありますが、8ページをご覧ください。まず1つ目、雇用型テレワークでありますけれども、雇用型テレワークの導入・実施については、労務管理、これは労働時間管理等でありますが、労務管理を適正に行うとともに、業務内容とか業務遂行方法を労働者に明確にして行うといった、実施に当たって留意すべき点も周知していくことが必要であると思います。ガイドライン、今年2月に改定いたしましたので、そのガイドラインについて、対象者を念頭にわかりやすく書き方を工夫するなどして周知・普及をしていくべきだというのが1つです。
それから2つ目の○でありますが、このガイドラインの長時間労働対策というのがあるのですけれども、それについてはテレワーク以外の就業についても取り入れることが可能ではないかと思われます。
3つ目の○でありますが、自営型テレワークについては、雇用類似の働き方の一種でもあり得るので、雇用類似の働き方に関する保護等のあり方の検討を進める中で、契約ベースで同じ業務でも、交渉力の違いというのは従属性の有無に違いがあり得ると、そういった点も留意しつつ、保護すべき対象等とあわせて検討していくべきではないかと思われます。
最後、「(3)副業・兼業」ですけれども、まず前提といたしまして、1つ目の○でありますが、副業・兼業を希望する労働者が主体的に自分のキャリア形成ができるような環境整備が大事である。
それから、今年1月に「副業・兼業の促進に関するガイドライン」、それからモデル就業規則を改正いたしましたので、これらについては効果的な周知を行うべきということであります。
3つ目ですけれども、労働時間管理のあり方、それから、労災補償のあり方等の副業・兼業に関する制度的課題につきましては、健康確保とか企業の予見可能性にも配慮しながら十分な検討を進めていくべきと思われます。
最後ですけれども、副業・兼業の今後の社会的な広がり等を踏まえて、ガイドラインについては必要な見直しを行っていくべきと思われます。
私どもから提示した骨子案は以上ですけれども、これが今後の報告書の内容につながるものと考えてございますので、御意見等あればいただきたいと思います。
私からは以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございました。
それでは、ただいま説明のありました報告書(案)骨子について、御議論いただきたいと思います。御意見、御質問等がある方は挙手をお願いしたいと思います。
では後藤委員。
○後藤委員 御説明ありがとうございました。どこからでもよろしいですか。
○守島部会長 はい。
○後藤委員 5ページの(2)の「企業による人材育成と個人の自己啓発」の下から2つ目の○に、経営者の人材育成に当たっては、「専門職大学院等を活用して」とあるのですけれども、こういった議論を部会でした記憶が余りなく、専門職大学院を活用していくのだというようなことまで触れてお話をした覚えがないのです。むしろここは、経営者の方も、ワークルールをきちんと理解すべきだという文脈の中で議論していたのではなかったかなと思います。たしか何回か前の部会で佐々木委員からの御指摘というか、事例のアイデアも示されていたかと思います。具体的には、経営者が起業するときには、会社法や、関連する事業法等は理解するかもしれないけれども、労働関係法令、ワークルールについて理解をしていない人が起業することが少なくなく、だからこそブラック企業等が増えているということです。その際は、たしか学校の先生の事例を出していただいて、教員については免許取得後、10年、15年が経過したら研修等を受けて免許更新します。こうした例も参考に、働き方に関するルールについても、経営者がきちんと身につけるべきではないかというような御示唆をいただいたと理解しています。
下の○で「労働教育について検討を進めることも必要」と書いてあるのですが、これは職業人生の長期化という面から見て、学齢期から高齢期までと書いてあるのですけれども、その視点だけではなくて、働いている人だけではなくて、経営者、これから会社を興す者、あるいは今会社を運営している者についても、ワークルールをきちんと身につける、あるいはフォローアップするという視点も必要である、という流れでまとめていただいたほうがいいのではないかと思います。もちろん、ここに書かれているように、全体の底上げとして労働教育についての比重というのも、どこの教育体系の中でやるかというのはあるかもしれませんが、高めていくということは必要だろうと思います。
それからもう1点、これは大学の先生方から御意見いただいたほうがいいのかもしれませんが、同じところの上から3つ目で「大学をはじめとする高等教育機関が労働者個人や産業界のニーズに対応した教育プログラムの開発・充実を行う」という記述があります。大学をどのように定義づけするかということにもよると思いますが、総合大学、単科大学などがある中で、産業界のニーズに対応した教育プログラムをつくるということ自体が本当に総合大学としてすべきことなのかということも検討課題であると思います。この辺は今後さらに議論が必要だろうと思います。
以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。ほかにどなたか。
今の点、お答えになりますか。
○奈尾労働政策担当参事官 今、後藤委員から御指摘いただいた、まず最初のほうのお答えですけれども、5ページの(2)の下から2つ目ですが、経営者の方について4行ほど書いているわけであります。この趣旨でありますけれども、第5回、第6回の議論で、人材育成、能力開発を議論した際に、労働者のキャリアコンサルタントや自発的なキャリア形成の話も確かに多かったわけでありますが、同時に経営者についても、労働法についての理解、知識はもちろんですが、経営的な面でどのように生産性を上げていくかという話が全体である中で若干の御意見があったことを踏まえて、事務局でも少し、こういう趣旨かなと補足して書いたということであります。
今、後藤委員からお話ありましたとおり、佐々木委員のほうからも、例えば起業しようとする方について、もう少し労働法の理解があったほうがいいのではないかという御指摘があったかなというのが1つございました。そういうのを踏まえて、あるいは冨山委員のほうからも、生産性に関して特に中小企業と大企業の間で格差がついてしまうというのは、これは労働者の訓練というよりは経営者の訓練の問題かもしれないという御発言もあったことを踏まえて、それを私どもなりに補足してこのような書き方になっているというものであります。もちろん、今日御提案でございますので、何か御意見があれば、こうしたほうがいいとかそういうのがあればおっしゃっていただければと思っております。
○後藤委員 そういう意味であればわかりました。ただ、今、これだけでは何となく理解しがたかったところもありますので、今後、報告書にまとめていくときに工夫していただけるとありがたいなと思います。
○守島部会長 ありがとうございました。ほかにどなたか。
では、山川委員、お願いします。
○山川委員 全体的な話ですが、これは一応骨子ということだから、この順番でということだろうと思いますけれども、個別の各論を見ていけばまあそうだろうなという感じで特段違和感はないのだけれども、全体的に読むと、小さな論点がぽこぽこぽことあって、一体何が言いたいのというところが、余り一貫したメッセージが見えないからちょっとよくわからないのですけれども、先に総論があるべきなのか、あるいは、私のイメージだと、例えばAIなんかは各論というか、AIもあるし、さまざまな働き方もあるから、こういうことを考えなきゃなというイメージだったので、いきなりAIが来て、しかも結論が、検証と検討を行うことが必要というのだと、うまく表現できないのですが、ぽっぽっぽっといろんな論点があるだけで、一貫したメッセージとかがないので、そこら辺は整理が必要なのかなと。あと、この順番で正しいのかなと。話した順番だというのはわかるのですけれども、報告書としてだと、読んだ人が何が言いたかったのかがわかるような報告書にすべきではないかなというのが大きな感想です。
○守島部会長 ありがとうございました。では、今の点お答えになりますか。
○奈尾労働政策担当参事官 今回提示いたしましたのは骨子でありますので、これは第2回の基本部会の議論とも絡むわけですが、何故そもそもAI等から始まって、生産性、能力開発、それから多様な働き方を議題にしたのかという話かと思います。その辺は、報告書にする段階で、こういったトピックを今回取り上げた趣旨をちょっと書き下すといいますか、書いた上で、特に日本の今の生産年齢人口の減少でありますとか、社会経済を取り巻く環境の中でこういうことを取り上げたというのがわかるように少し書いてみたいと思っております。
○守島部会長 この前に総論というか、序論みたいなものが入るというイメージ。
○奈尾労働政策担当参事官 今後の話でありますけれども、報告書の構成としては恐らくそうなるかなと考えております。
○守島部会長 ありがとうございます。ほかに。
では佐々木委員。
○佐々木委員 今の話ですけれども、そうすると、これは最終的にはいつぐらいまでに報告書というものができて、それがどこに提出されて、誰が読んで何に使われるのか、それによって多分書き方が違うのかなということが1点目の質問です。
それから、きょうの議論の中で、先ほど来御指摘があるようなさまざま、今までの議論に出ていなかったかもしれない固有名詞というか、大学を活用すべしみたいなところがいろいろと入っているのですけれども、それをきょうの時点でどこまで指摘しないといけないのかというような点が2点目。
小さいところですけれども、3ページ目の(2)に「自己啓発を行う上で問題があると認識している労働者が約8割」と書かれているのですけれども、今どきの議論の中でこの8割はどこの調査のどんなことかなと。何となく、私、労働者の8割が、自分は自己研鑚が必要だなんて思っている国だったらすごいいい労働者ばかりだと思いますが、このデータは一体どこから出てきているのかということが3つ目の質問です。
○守島部会長 ありがとうございます。ではお答えになりますか。
○奈尾労働政策担当参事官 まず1点目でありますけれども、これは恐らく、次回、この基本部会を開いて、次回はできれば報告書の案で御議論いただければと思っておりますけれども、仮に報告書がまとまれば、その後は労政審の本審に報告するということを考えています。そこで労政審本審として了承されれば、これは第2回のこの基本部会でも申し上げたとおりでありますが、それが労政審としての決定になるというプロセスになるというものであります。労政審で決定されれば、内容に応じて引き続きこの基本部会でやるものもあるし、各分科会、各部会等で具体的に議論していくものも、両方あり得るかなと思っています。言ってみればそういうイメージであります。
○佐々木委員 2つ目は、今のにちょっと含まれていると思いますけれども、誰が何に使うのか、例えば法改正に使われるとか。
○奈尾労働政策担当参事官 それは、労政審本審で仮に了承いただけた後ですけれども、各分科会とか部会とかの議論で法改正すべきだというものがあれば、法改正につながり得ると思います。ただ、それはどういう結論になるかという結論の後で、法形式とか、どのレベルの改正かというのは決まってくるかと思われます。
それから3点目は、第5回の基本部会の資料で「自己啓発を行う上での問題点」という資料を提出させていただきまして、これは28年度能力開発基本調査という調査でありますが、自己啓発を行う上で問題があるとした労働者が、正社員で78.4%、正社員以外で70.3%、正社員は8割近く、問題があると答えていらっしゃるところです。その内訳はいろいろあるわけですけれども、内訳で一番多いのが、忙しくてそういう余裕がないというのが正社員の6割近くあるわけでありますが、第5回の資料で出しているというものでございます。
○佐々木委員 何人ぐらいが対象でしょうか。
○奈尾労働政策担当参事官 能力開発基本調査という調査ですので、それなりに母数はあるかなとは思いますが、後でまた調べてみます。
いずれにしても、どういう問題があるかというその問題の中身を提示するために出したという位置づけかと思っております。
○守島部会長 佐々木委員、よろしいでしょうか。
今の問題、多分、自己啓発をやるとすればという前提が入っていて、それがある意味で与えられている話になっているような気もします。ほかにどなたか。
では、大橋委員、お願いします。
○大橋委員 ありがとうございます。
きょう初めて骨子が出たと。ちょっと感じるところですけれども、1つ大きな点として、最初の1ページ目から始まっている、AI等の新技術とか、AI等の技術革新という言葉があるのですけれども、これがどういうものをイメージするのかというのが人によって随分違うのかなあという感じがしていて、もしかすると類型があるのではないかという気もするのですけれども、ここのあたり、読み手の側からすると、どういうものを言っているのかというのがちょっとイメージがつくといいのかなと。
例えば企業側で言うと、就活の面接なんか、AIでやりますというところは出てきてもおかしくないと思いますが、そういうものもあるでしょうし、あるいは雇用管理みたいなものもあるだろうと思うのですね。そういうものというのはAI等の新技術だとは思うのですけれども、そういうものを想像していいのだろうかと。仮にそうだとすると、ここの文言が若干違和感があるのは、データについては余り触れられてないのがどうなのかなと思っていて、結局、労働者であれ、あるいはデータをとって、AI自体のアルゴリズムを磨き上げるみたいなところが多分1つあるのだと思います。ただ、そのデータをどう使うのかとか、あるいは労働者にとってデータってどういうものなのかとか、そのような議論は結構重要な話ではないのかと思いますけれども、そういう論点というのはあるのかどうかよくわからないのですけれども、まあそういうことです。
もしそうだとすると、AIの導入支援とかいう話があるのですけれども、恐らくこういうのはプラットフォームの事業者が提供するものだと思われますが、ほとんどただではないかと思うのです。つまり、事実上、彼らはデータを抜いて、それをマネタイズするためのツールとして使ってもらったほうがいいという感じのことかなあと思うと、投資と言ったときに、私は、AI等の新技術って旧来型の技術のお話と混同をすごいしがちだと思いますけれども、今回ここで扱っているイノベーションの話は、特にデータに結びつく話というのはかなり違った様相を実は持っているので、そこのアナロジーというのは、もちろん通じるものもあるかもしれませんけれども、通じないものもすごくたくさんあるので、そういう意味でいうと、先ほど冒頭に申し上げたのはそこですけれども、何か念頭に置かれているものの類型化があるのではないかなあと。
きょう初めて出たところなので、若干大き目のところから発言させていただきましたけれども、まずは以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。お答えになりますか。
○奈尾労働政策担当参事官 まずAI等の技術革新とかAI等の新技術と書いてありますが、これまで第3回、第4回の議論の中心はAIだったかなとは理解しています。ただ、AI等の新技術と言った場合に、IoTでありますとかビッグデータというものもあり、それらも含めて議論していることが多いところです。ただ、3回、4回の議論の中心はAI等の新技術ということでやっておったかなと思っております。
その際のデータ等の扱いについて、にわかに今お答えできるものはないですが、これまでの御議論としては、AI等を導入した場合に、一般的に雇用・労働に代替を含めてどういう影響があるかという議論をしておったかと思っておりますので、そういった議論を中心に、今回、骨子をまとめるというところです。また、足らざるものがあるということでありましたら、そこは御指摘いただければと思います。
○守島部会長 どなたか、多分、石山委員が御説明いただいたときに、労務管理のデータを使って人をマネジメントするというお話をされて、大橋委員が言われているのは、そういうところまで含めた上でAIとか新技術と言っていかないと多分見落とすところがあるのではないかという話だと思いますので、この委員会に出た話ですから、そういうところもぜひできればピックアップしていただきたいと感じます。ほかにどなたか。
では長谷川委員。
○長谷川委員 7ページに「雇用類似の働き方」について書かれていますが、雇用形態や就労形態が多様化している中、現在は労基法上の労働者に該当すれば労働法の保護を全て受けることができる一方、該当しなければ労働法の保護が受けられません。労働法の保護が受けられない就労者は、結局民法で対応をせざるを得ないわけですが、これでいいのかということを部会の中でも発言してきました。これだけ雇用・就労形態が多様化している中、今回、雇用類似の働き方の保護の検討を進めるという姿勢を厚労省の検討会で打ち出したことは非常に意義があると私は思います。また、労働政策基本部会の報告書でもそのように書かれたことは非常に重要なことだと思っています。むしろちょっと遅いので、ぜひ、報告書骨子案にも書いてございますけれども、法律や経済学などの専門家による検討を速やかにやってほしいと思います。ずっと置くのではなくて、速やかに着手してほしいというのが要望です。
2点目は、報告書骨子案の中に、「雇用類似の働き方」に関し、「契約条件の明示、契約内容の決定・変更・終了のルールの明確化、出産、育児、介護等との両立、集団的労使関係等の保護の内容及び保護の方法について、実態把握と並行して検討を進めていくことが必要」と書いてありますが、能力開発の視点も必要ではないかと思います。雇用労働者であれば、企業のOJTだとか、公共職業訓練なども用意されているわけでありますけれども、「雇用類似の働き方」のワーカーについては、多くの場合、発注元による職業訓練の仕組みは整備されていません。派遣労働者の教育訓練などは整備もされてきましたけれども、「雇用類似の働き方」は整備されていません。非常にハイスペックな労働者はいいですが、データ入力などをやるような単純なワーカーは、能力開発の機会もなくそのまま横滑りでずっといってしまうので、そういうワーカーが能力開発をしてスキルアップして、賃金も上げるというか、処遇改善をするということが必要です。「雇用類似の働き方」のワーカーに対しても、何らかの形で国の責任で能力開発の場を私は整備すべきではないのかと思います。
その場合、注意しなければいけないのは、財源を雇用保険で賄うというのは問題があると思います。雇用保険というのは、雇用されている労働者と企業が保険料を拠出しているものですから、「雇用類似の働き方」のワーカーへの支援に対しては、雇用保険を財源とするのではなく、中小企業庁予算から一般財源で確保すべきではないかと思います。他省庁のことだから言えないと言うかもしれませんけれども、そのぐらい言わないと、このワーカーの能力開発はうまくいかないのではないかと思います。
3点目は、この部会で何回も議論になって、特に女性の委員がよく発言していたのですけれども、「雇用類似の働き方」の保護という問題を考えた場合に、労働法の保護は無論でありますけれども、やはり年金や健康保険といった社会保障制度や税制なども大きな論点です。労働分野ではないからといってこれら課題を排除するのではなく、やはりトータル施策として検討する姿勢を私はこの部会としては打ち出してほしいと思います。
7ページの書き方を評価しつつも、私が言ったような部分を補強していただければと思います。
○守島部会長 ありがとうございます。
では、古賀委員、お願いします。
○古賀委員 2、3点御要望申し上げます。
第1点は、冒頭に山川委員から発言のあった報告書全体のイメージについてです。確かに、AIについて議論しました、問題はここですということを個別に列記するだけでは、基本部会としての報告書としてはふさわしくないと思います。加えて、これにただ情勢の序文、前文をつけただけでもインパクトがないのではないかと思うのです。もちろん、議論はこのようにやってきたのですけれども、それらのことプラス、今の社会情勢、あるいは働く現場の実態を含めてどこに特徴があって、あるいは何をこれからまずやらなければならないかといったことが浮かびあがるような報告書にしないと、基本部会の報告書としてのインパクトはないのではないかという気がします。頭をひねる必要はありますが、一度その辺はぜひ考えていただく必要があるのではないかと思います。
その件と関連して2つ目は、特に部会の議論を振り返ってみますと、ITと生産性向上のときには、中小企業に対する政策が非常に重要だという課題がたくさん出てきたと思うのです。確かに2ページ目には、AIの活用などは中小企業にとって死活問題になるとか、あるいは中小企業が生産性を向上させていくための一つの手段であるといったことは書いてありますが、中小企業政策、中小で働く者に焦点を当てた労働政策として各種インフラを整備するような姿勢を打ち出すべきではないかと思います。
3点目は、先ほど長谷川委員から「雇用類似の働き方」に対する能力開発の件で意見提起がありました。私は、言うまでもなく、「雇用類似の働き方」のみならず、技術革新の進展とか、あるいはビジネスモデルがどんどん変わっていく中では、まさに人がどう生きるかということについての施策が非常に重要だと思います。その中では、能力開発や職業訓練、教育訓練が極めて重要で、これを自助努力や自己責任に押し込めるべきではない。いつも能力開発、職業訓練というフレーズは出てくるのですけれども、具体的にどうするのだということがなかなか出てこない。まずは何といっても、世界的に見ても低い、国による教育に対する公共支出を増やすべきです。それから、バブル崩壊以降、企業による教育訓練投資もかなり減っているのですね。ここにも書いてあるように、そういう教育訓練に対する。そういう現状と問題意識をきちっと報告書に書いて、手当すべきだということを基本部会の報告書では提示すべきです。
教育ということですから、例えば文科省とのつながりなども出てくるのです。そうなると、さっき最後に長谷川委員も発言していましたが、労働政策も単独で議論できなくなっているのです。さまざまな政策とかみ合わせるとかいうことからすれば、社会保障や税制や、それらのトータルとして、労働政策もその一部として考えなければならない。この点は、私はこの部会の報告の中で絶対に必要な内容ではないかと思います。
以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
○奈尾労働政策担当参事官 今の古賀委員の御指摘でございますが、当然、報告書にしていく段階では、全体を通じた趣旨なり考え方を書かせていただきたいと思っておりますけれども、例えば技術革新の動向と労働への影響、それから生産性向上、この辺は中身としてもそれぞれ関連が深いのではないかと思っています。
それから、雇用類似の働き方等についても、AI等が普及・進展していくと雇用類似の働き方の方は恐らく増えるのではないかと予測される方も多いので、そういった関連性については少し明確にして、今日は骨子という形で提示したわけでありますが、全体として趣旨がわかるようにしていきたいと思います。
○岸本雇用環境・均等局総務課長 雇用類似の働き方のパートについて御指摘をいただきました。長谷川先生、古賀先生から、この雇用類似の働き方の世界における能力開発について、御意見を頂戴しましたが、この雇用類似のパートは、第7回のこの部会のときに、検討会の座長である鎌田耕一先生にお越しいただいて報告書の御説明もいただきましたが、その報告書の中でも、この雇用類似の働き方をする方に対するスキルアップ、キャリアアップのあり方は一つの論点として挙げられていたところでございます。
必要性を指摘する声がある一方で、この難しさとして、1つは、長谷川委員からも御指摘のあった、現実的な問題として財源をどこから持ってくるか、また、そもそもこの雇用類似の働き方をする人のいわば教育訓練投資を誰の費用負担で賄うべき性格のものと考えるかといったこと、それから、発注者が自社で調達できない、あるいは世の中で広く標準化されていないようなすき間的なスキルを求めてこういった雇用類似の働き方の方、ワーカーには発注していることを考えると、なかなか公的な能力開発の仕組みは難しいのではないかなどの問題点も挙げられてはおります。
挙げられてはおりますが、この点をどう考えるかは、その必要性も含めて検討することが考えられるとされているところでありますので、本日の骨子に対して、今いただいた御指摘をどう生かしていけるか検討いたしたいと思います。またあわせて、雇用類似の働き方をする方々に対する社会保障や税制についても御指摘ありましたので、この点もあわせて、どのような形で組んでいけるか考えさせていただきたいと思います。
○守島部会長 では佐々木委員。
○佐々木委員 再度ありがとうございます。
1つ目はちょっと細かいところで、6ページ目のテレワークのところですけれども、「テレワークは子育て、介護と仕事の両立手段となるとともに」という定義になっているのですけれども、テレワークは多様なスキルや働き方の人材を時間や場所にかかわらず雇用することができる、あるいはその人たちも働くことができるという定義で、子育て、介護両立という説明は、ここではもう書かないようにしていただくのがいいのではないかというのが1点。
それから、報告書の全体像、今まで皆さんの御意見もありますが、私なりに整理をすると、やはりはじめに全体の方向性みたいなものが前章であって、私たちがつまりはどういうことを考えて何を議論したのかということがまとめられている何行かがあって、今回、第1から第3章まで出していただいているのですが、第1章がAIならAIでいいと思いますが、第2章と第3章は逆転させたらどうかと思いまして、第2章が時間と空間と企業にとらわれない、縛られない働き方についてということになって、第3章の最後のところに、今、第2章になっている働く人全ての活躍を通じた生産向上みたいなものになるとおさまりがいいのではないかと勝手に今思いました。
そして最後にまとめのところで、他省庁とも関係するような少し全体的な、ここで語り切れなかったのだけれども実はこういう課題があると思っていて、これからはこのような横の連携でもやって解決していったらいいのではないかみたいなまとめがあると、少しきょうのものを骨子としてまとめていただけるのではないかと。それぞれのAIとか時間と場所のというような章の中は、今いろんなところにばらけてそれぞれが書かれていると思うので、例えばそれぞれの現状と今の課題と、それから将来への提案と、将来想像できる可能性みたいなものと、何か分かれて書かれているといいのかなと、読みやすいかなと思いました。
○守島部会長 ありがとうございます。
○奈尾労働政策担当参事官 全体の構成についてお答えいたします。
今日、骨子という段階ですので、トピック別にそれぞれの御意見とか御議論を紹介したほうが、恐らく報告書にまとめていくときは整理がしやすいかなという趣旨でこういう形にしておりますけれども、全体のストーリーをどう立てるかにもこれはよるかと思います。明らかに言えるのが、今後、生産年齢人口は減少していくであろうということです。その中で、働きたい、また働き方についていろんな希望がおありの方については多様な労働参加を促すべきであるといった問題意識がありますので、そのストーリーから言うと、AIの普及やAIの導入等については、今後の労働市場とか雇用・労働を取り巻く大きな環境であると見ていくと、恐らく最初に置くのがいいのかという気はいたしますが、その後の構成については、全体のストーリーを考える中でちょっと検討してみたいと思います。
○守島部会長 ありがとうございます。ほかに。
では、岸本さん。
○岸本雇用環境・均等局総務課長 今、テレワークの箇所についての御指摘をいただきました。これもちょっとまた次回までに考えさせていただきたいと思いますが、テレワークというと、イコール育児・介護みたいに打ち出し過ぎると短絡的に過ぎるというか、そうではない理由でテレワークを利用して、それが自分の働き方にも合っているという方もたくさんいらっしゃると思いますので、そこはちょっと短絡的に見えたかもしれないなと思いますが、一方で、まさに育児や介護期間中の働き方として切実に必要とされている方もいらっしゃるように思いまして、育児・介護との両立ということも残しながら、でも、それだけでなくて、時間にとらわれない働き方ができる働き方みたいな位置づけというわけではなくて、消したほうがいいですか。
○佐々木委員 私の意見としては、育児や介護と言っただけで多くの人が女性を想定していると思いますけれども、出産という行為だけが女性のもので、育児も介護も男女のものですから、育児や介護と書くということは、ある一般の働き方の人と違う人を想定するということになってしまって、前提の中で読んでいる人がある一定の女の人を想定してしまうのではないかと私は感じているのですね。
なので、今回の、さまざまな将来への日本の強さ、だとか自由度とか、労働の仕方、ということを提案する中に、育児や介護という表現は必要ないのではないかという考え方です。あるいはその単語をもしもどうしても入れなければならないのであれば、何かもっと全体にかかる、つまり、今までであれば、ある会社に就職して、その会社に出勤して、そしてそこで雇用されて何十年働くというものだったというものを、今これからどれだけフレキシブルに働けるようにするかという考えですから、実は別に育児や介護と関係ない理由でのテレワークも促進しなければならないわけです。読み手の、読んでいる人たちの前提、暗黙のというか、知らないうちにその人が無意識のレベルで思い込んでしまうかもしれない言語を排除していかないと、新しい政策提言につながらない可能性はないかなという視点でございます。
○岸本雇用環境・均等局総務課長 わかりました。御指摘も踏まえてちょっと考えます。
○守島部会長 ありがとうございます。ほかに。
今のところは多様な人材を活用できるという視点をまず強調なさって、その一つの例というか、それが顕在化する場面として子育てとか介護という話を、書きたいのであればというか、書かれるのであれば入れたほうが私もいいような感じがします。ほかにどなたか。
武田委員。
○武田委員 まず、とりまとめをどうもありがとうございました。皆様と同じで、コンテンツ一つ一つは非常に同意できますし、議論していた点が多く述べられていると思うのですが、最初の全体像のまとめをもう少し包括的にまとめられるという視点は私も同じように思いました。佐々木委員から先ほど、最初にどういう方向性になるか書かれるといいのではないかという御意見がありましたけれども、私も賛成です。さらに、その前段として、今後どのような環境変化がおきそうか、つまり、労働市場が変わるのはなぜかということがもう少しわかりやすく書かれているとよいと思いました。
その点では4点ございます。先ほど古賀委員がおっしゃられたように、今後世界の潮流が変わる中で、ビジネスモデルががらっと変わる可能性があるという点。また、日本では、人口が減少していき、労働力人口も不足していくという話。3つ目として、人生100年時代では、職業人生も長くなるのではないかという話。4つ目としては、技術が急速に社会実装されていく中で、それが雇用に与える変化も考えられる点です。このように少し包括的なまとめがあり、では我々は何を目指していくのかというのが次に書かれているともう少しクリアーになると考えました。
2点目は、私も、先ほど長谷川委員がおっしゃられた点、つまり、他省庁も含めた少し包括的な提案をしてはどうかという意見には賛成でございます。税制、社会保障制度もそうですし、企業の退職金など、転職に不利にならない労働市場の確立には税制も実は重要になってくるわけで、そうした論点も今回書いてみてはどうかという点は、私も賛成いたします。
それから、何より重要なのが、これは古賀委員もおっしゃいましたが、教育の部分です。文科省とも関係してくると思いますけれども、少しその点も踏み込んでもいいのではないかと感じました。
そして3点目。職業情報などを見える化していく話が書かれており、それは大賛成ですが、日本版オーネットという言葉が具体的には使われてないのですけれども、その活用も想定された記述なのかどうか。もしそうであるならば、具体的に骨子の中の最後、本文にしていく段階では言及されてもいいのではないかと思います。
その点ですごく重要なのは、政府としてはプラットフォームを提供し、そのプラットフォームを使ってキャリアコンサルやマッチングの機能などを拡充していくには民間の力が必要です。全て政府がやるというよりは、民間の活力も生かしつつ、そういった切れ目のないサービスにつなげていくというような視点も盛り込まれたらどうかと思います。
以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。
○奈尾労働政策担当参事官 まず、全体のお話、これは先ほど来各委員の方から同じような御議論がされているところと認識しておりますので、ちょっと全体の状況から入って、日本の雇用・労働を取り巻く状況から入った上で、ではどういう課題が考えられるかということかと思います。課題があった上で、第3回以後の議論をしてきたはずですので、それを浮かび上がらせるということが大事かと思っております。そういう中で、また再整理をしてみたいと思います。その中で、今具体的におっしゃられた点、何点かございましたけれども、例えば人生100年と、先ほど私も、もしかしたら触れさせていただいたかもしれませんが、今日の骨子上は入っていなかったかもしれませんので、盛り込めるものはもちろん盛り込んでいきたいと思います。
それから、他省庁、税制でありますとか、社会保険、社会保障は省内の議論になりますが、あと教育の話等もありましたので、これはこれまでの議論で具体的に書けるかなと思った部分は今日骨子という形で入れさせていただいていまして、先ほど武田委員がおっしゃったような退職金についての税制のあり方というのは御議論はなかったかなと思って骨子に入れてなかったものですけれども、そういう議論があり得るということであれば、そこは報告書に入れることは可能かなとは思います。
それから最後に、日本版O-NET、これは職場情報の見える化の例として挙げておりますけれども、まさに念頭に置いているのはそういった話かなと思います。このあたりのプラットフォームの提供については、政府として責任を持ってやらなければいけないのですが、当然、これがうまくいくためには民間の方の力を借りるということは私どもも異存ありませんので、そういった方針で臨んでいきたいとは思っております。
○守島部会長 ほかにどなたか。
○岩村委員 きょう、骨子案、こういう形でまとめていただいて、ありがとうございます。大体皆様御指摘いただいたので、私のほうで特につけ加えるようなことがそれほどあるわけではないのですが、一番最初のころに佐々木委員からお尋ねがあった、この報告書ができたときの使われ方の話ですけれども、私の記憶では、多分、労政審の本審が9月ぐらいにあるということになると、今後のスケジュール感では、その本審に間に合うようにとにかく報告書はまとめて、本審に出して御報告して承認していただくと。それが、この報告書の中身で使えるものは、今度は概算要求に結びついていくし、それ以外で、もしその他法律事項等があれば法改正等を考えるというようなスケジューリングかなと理解していたのですが、そういう感じでよろしいですよね。
○奈尾労働政策担当参事官 まずスケジュール案でありますけれども、労政審本審は、今のところ9月ということで内々にはスケジュール調整をしているところでありまして、当然ながら、それに間に合うように、報告書をまとめるのがベストかなとは思っております。概算要求で、にわかに31年度要求に結びつくものがあるかどうか、ちょっと精査が必要かなと思っておりますけれども、全体スケジュールは、今、岩村先生がおっしゃったような感じかなと思います。
○岩村委員 ありがとうございます。そういう観点で1~2点ですが、AIのところは、今回ヒアリングなどもして勉強させていただいて、きょうの骨子でも書いてありますけれども、将来予測が現状では非常に難しいということがあって、そういう観点からすると、具体的にどういうことをやろうというのを書き込むのはなかなか難しいかなあとは思います。そういう点では、2ページ目の上から3番目の○の情報の収集とか分析というのをとにかくきちっとやるのが重要だというのは確かなので、そこのところはきちっと書いておいていただきたいなというのと、他方で、AIなどの進み方、非常に急速なので、余り仕様書の収集だ、分析だと言っていると間に合わない可能性があるという気がします。
そういう観点からすると、これはそれほど深めて考えているわけではないですが、何かパイロット的な事業というものを考えるというのはあるのかなあと先ほどちょっと思っていました。対象としては、当然のことながら、企業、例えば中小企業を対象とするもの、それから、働く側の人たちを対象とするものがあるように思いますけれども、何かそういうパイロット的な事業というのを考える余地はあるのかなと。
例えば、今回の御報告の中でも、介護の現場におけるAIの使い方というのもありましたが、あれだと同じ省内なので、そういったものを少しパイロット的に展開して、そこからどういう影響が出てくるかもあわせて分析するとかいうのもあり得るかもしれないという気がしていました。
それからもう一つ、先ほどちょっと後藤委員からもお話がありました、ちょっと話が飛んで申しわけありませんけれども、人材育成とか自己啓発との関係で5ページの上から3番目の○のところの、大学というのがあり得るのかというお話でありました。御承知のように、大学というのは、少子高齢化の進んでいく中で、教育機関でもありますので、どちらかというと衰退産業の分野にあり、そういう点では新しいクライアントをどうやって開発するかというのが大学経営上は非常に重要な課題であるというのは総じてそうだろうと思います。そういう中で、実際には今、このリカレント教育というのは、各大学、大手の総合大学、それから単科大学を含め非常に重要なものだということで、かなり力を入れていると理解しています。そういう点で、大学がこういう分野に積極的にかかわっていくということは今後かなり展開していくだろうと個人的には思っております。
他方で、リカレント教育との関係で、非常に限られた範囲の情報なので一般化できないということはあらかじめお断りしますけれども、例えば私どもの東大の大学院の法学政治学研究科では、2003年度末まで修士課程に専修コースというのを持っていまして、そこで実は社会人の方々というのを受け入れていました。当時は、大体、大手の企業さんなども2年間、その専修コースに社員さんを派遣してくれるということをやってくれていた。これは夜ではなくて昼間のコースですので、したがって、会社にはいわば出てこなくていいという扱いで、専ら大学院のほうの学業に専念するという形でやっていたのです。ところが、今回、私たちもそういう専修コースをやっていたというのをもう一回、それとは違う形だけれどもやってみようかという話をちょっとしていて、それで、かつて専修コースに派遣してくださっていたような企業さんに当たってみたのですが、どこもだめなのですね。結局、人手をぎりぎりまで絞ってしまっているので、2年間派遣するというのはとてもできないと、せいぜい1年であるというような状況に我々としては直面したということがございます。
ですので、リカレントに力を入れるといったときに、もちろん、個々の働く方のイニシアティブで、それを促進するような体制を整えるということも大事ですが、他方で、現状に鑑みると、もしかすると、企業の側がそもそも、リカレントに従業員などを出す、そういう余裕がないかもしれない。その辺はもうちょっと実証的な調査が必要だろうと思いますが、もしそういう状況にあるとすると、一生懸命旗を振っても企業のほうはついてこないということになってしまうかなという気がいたします。その辺もう少し実証的なデータを集めた上で、そこのところでもしそういう問題があるのであれば、有効な施策というのを考えるという余地があるかもしれないという気がいたします。
諸外国の例では、例えば職業訓練休暇とかそういったものを労働者側に認めるというのはあるので、他方で企業側はどうなのかということを考えるというのもあるかもしれない。そこに何か手を打つということもあるだろうという気がちょっとしていますので、いずれにしろ、少しそこはデータなどの実証的な精査が必要だろうと。その上での話かなと思います。
最後に、すみません、長くなって申しわけありませんが、7ページの雇用類似の働き方等については、もう既に先生方御指摘にあったとおりでありますが、ただ、これに対してどういう対応をとるかということについては、いろいろなやり方があるだろうと個人的には思っています。法律を制定して、ハードローでいくんだというやり方もあるでしょうし、あるいはもう既にあるような、ガイドラインを策定するというようなやり方とか、いろんな手法があり得るので、その最適組み合わせが何かというのを検討していくことが恐らく必要だろうと思います。これは多分、分野によっても違うでしょうし、同じように、雇用類似の働き方の場合であっても、業種によっても違うだろうしという気がしますので、その辺のある程度のきめの細かい施策を考えるということが必要なのかなと思います。
とりわけ、ヒアリングのときに、プラットフォームの事業者側の方と、それからフリーランスの方の両方のお話を聞いていて非常に印象的だったのは、雇用類似の働き方というのは、労働法上もかつてからあった、非常に古くて新しい問題ですが、かつてと非常に違うなというのは、発注者側と、それから雇用類似で働く例えばフリーランスの方との間で、直接に面と向かって会って何か交渉をして契約するというのがもうない。つまり、ネット上でだけしか、結びついていない。当該のフリーランスの人は、別に東京とは限らず日本中どこにでも分散しているというのは、今まで私たちが考えてきた、雇用類似の働き方と言われていたような労働者なのかそうでないのかというのを議論してきたものとはかなり違う、新しい類型の働き方なのかなと思うので、そういったものをどのように捉えてアプローチしていって、どういう施策をとるのか。そのときに一体どういう施策が適切なのか、ハードローなのか、それともソフトローなのか、その他なのかというような思考が求められているのかなとちょっと思いました。
長くなって申しわけありませんが、以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございます。ではどうぞ。
○奈尾労働政策担当参事官 何点か御指摘いただきましたが、まず最初のAI等の新技術について、例えばパイロット的な事業が考えられないかという御指摘でございます。今日の骨子の一番最初にも、AI等の技術革新による雇用・労働への影響については、複数の先行研究があるが、これには色々な説があるという話を書いてありますが、これはまさに実態がまだそんなに明らかになっていない、特に数字的な実態が明らかになっていないので、複数の説があるという面もあろうかと思っています。
そういう意味では、今日の骨子の2ページの上から3つ目に、今後の予測、その場合には、情報の収集分析とか不断の検証・検討と書いているのですが、これもできるだけ実態に即してやったほうがいいというのも御指摘のとおりでございますので、例えば既に民間部門でAI等を取り入れられて、その結果、こういう影響が出ているというのがあれば、それは分析したり御紹介するのは非常に望ましいことかなと思います。それはパイロット的な事業と呼ぶかどうかというのはありますが、そういった具体的取組を前提として、当部会も含めて情報の分析とか検証をしていくべきではないかという考えでございます。
それから、大学との話でございましたけれども、5ページで各種書いておりますが、高等教育機関が今後の人材育成について果たす役割は大きいのではないかという全体問題意識で書いているものでございます。リカレント教育というのは、どちらかというと個々人の側から見たものでありますけれども、技術者とか、技術者の学びの支援、そういった面からも大学の果たす役割というのは一定あり得るのかなということで、そういう問題意識も含めて、5ページの3つ目の○、書いているところでございます。
ただ、その場合に、実際に企業の対応ができるのかということはもちろん御指摘のとおりございますので、そのあたりはできれば実証的にやった上で、これが有効でない政策にならないようにしっかりやっていきたいと思ってございます。
○守島部会長 ありがとうございます。ほかにどなたか、お答えになる方いらっしゃいますか。
私が今の岩村さんのお話を聞いていて思ったのは、石山委員の介護の事例なんかは、雇用の量に関するものというよりは雇用の質に関する部分の議論をされていて、ある意味で、それは政策的な介入なしで、自分たちの範囲内で雇用の質を高めているという事例ですから、そういうお話も、ぜひ加えていただけるといいかなあという感じがします。
○奈尾労働政策担当参事官 そのお話はもちろん了解いたしました。
○岩村委員 いいですか。
○守島部会長 どうぞ。
○岩村委員 その介護の点は、今、部会長おっしゃったとおりで、介護の質の話なので、しかし、これは介護の政策としては非常に重要なところなので、それをどうやって横展開していくかという視点というのが当然あり得るように思うのですね。それは労働政策だけでなくて、介護の政策としてもあり得るので、そういったところをどこかパイロット的に考えて、厚労省としてプッシュしてみる。それでどういう影響が出てくるかというのを考えて観察してみるというのがあるのではないかという、そういう趣旨で先ほど申し上げたということです。
○奈尾労働政策担当参事官 そういった点も踏まえて少し検討してみたいと思います。
○守島部会長 ほかにどなたか。
よろしいですかね。皆さん方、大体もう御発言、1ラウンド、2ラウンド終わられて。
ではどうぞ。
○相本参事官(人材開発政策担当参事官室長併任) 先ほど、3ページのところで、「自己啓発を行う上で問題がある」と認識している労働者が約8割という数字の調査の対象者数のお尋ねがございました。これは平成28年度の能力開発基本調査のデータにございまして、調査対象者数としては約2万4,000人を対象としております。
補足させていただきます。
○守島部会長 ありがとうございます。ほかにどなたか。
大丈夫ですかね。
それでは、今回は骨子案ということで、案の比較的初歩的な話でしたので御意見が大分出たのですけれども、大体時間も過ぎてまいりましたので、今回の議論はこれで終わりにさせていただきたいと思います。活発な御議論をどうもありがとうございました。
本日もさまざまな御意見をいただきましたけれども、事務局においては、いただいた御意見を踏まえて改めて全体を見直した上で、追加できる要素は追加していきたいと考えております。したがって、これからまた報告書案を検討してまいりますので、よろしくお願いいたしたいと思います。
また、今回の皆さん方のインプットを踏まえた上で、次回改めて報告書のとりまとめに向けての議論をしたいと思いますので、また次回もよろしくお願いいたします。
それでは、事務局から次回日程についてお話をいただきたいと思います。
○奈尾労働政策担当参事官 次回の当部会の日程でございますけれども、7月30日の開催を予定しております。詳細につきましては、調整の上改めて御連絡申し上げます。よろしくお願いいたします。
○守島部会長 それでは、本日はこのあたりで閉会とさせていただきたいと思います。
本日の会議の議事録につきましては、本審議会の運営規程により、部会長である私のほかに2人の委員に御署名をいただくことになっております。つきましては、大橋委員、岩村委員に署名人になっていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
それでは、本日の会議はこれで終了といたしたいと思います。どうもありがとうございました。