武見大臣会見概要

(令和6年1月19日(金)11:12~11:33 省内会見室)

広報室

会見の詳細

閣議等について


大臣:
 昨日、石川県を訪問し、馳知事から水道の復旧、そして2次避難の加速化に関して要請を受けました。避難所や福祉施設を訪問し、現場の支援ニーズ等も伺ってまいりました。支援や復旧に当たっている医療、福祉、医薬品卸、水道関係の事業者・団体の皆様と意見交換も行いました。この中で、水道を含むインフラを早期に復旧させる必要があること、災害関連死を防ぐためにも、医療・福祉の職員の応援派遣を強化するなど、2次避難を早急に進める必要があること、そして生活と生業の再建に向けた取組も重要であることなど、改めて認識しました。
 水道については、他府県から応援に来ている日本水道協会の技術職員から、具体的な水道の被害状況や復旧に向けた要望を伺いましたので、水道を含むインフラ復旧などについて、支援に入る方の宿泊施設の確保等と一体的に進める必要性を大変強く認識しました。現地の古賀政府対策本部長とも相談し、速やかに、支援に入る方への宿泊施設の確保等について、財政的な支援を検討していくことを確認しました。
 2次避難の加速化については、2次避難を安定的に受け入れていただけるよう、広域的な受入調整の必要性や、厚生労働省における人的支援の調整体制を強化し、関係団体とも連携して職員の応援派遣を強化する等の対応を進めることをお伝えしました。また、1.5次避難所である「いしかわ総合スポーツセンター」において、現場対応に当たる医師から、避難された方への通常診療ができる特設の拠点を速やかに設けるよう要望いただいたことを踏まえ、馳知事と連携して緊急に対応いたしました。本日、開設される予定と伺っています。
 さらに、生活と生業の再建について、緊急小口資金の受付を22日から開始するとともに、雇用調整助成金について、被災地域の実情を踏まえ、これまでよりきめ細かな対応を行う方向で、本日、労働政策審議会に諮問し、了承が得られれば速やかに実行に移します。引き続き自治体や関係団体、政府現地対策本部と一体となり、被災者の声に寄り添いながら、十分な支援を行っていきたいと思います。

質疑

記者:
大臣は昨日、金沢市内の避難所などを視察され、2次避難所の支援を強化するとお話しされました。地元を離れたくない気持ちから2次避難をためらう被災者もいらっしゃると思いますが、厚労省としてどのように呼びかけていくのか、また呼びかけ以外に対応などお考えがあればお願いします。
大臣:
避難生活が長期化し、冬の厳しい環境の中で被災された方々の命を守るためには、2次避難を早急に進めることは非常に重要であると思いました。他方で、住み慣れた地域を離れることに不安を感じていらっしゃる方々もいると伺ってまいりました。石川県や各市町において、普段からこうした住民の方々と接しておられる方々に、被災者に寄り添って、こうした働きかけをしていただくということが現状における対応の仕方としては最も重要だと認識しています。厚生労働省としては、こうした呼びかけにより、ご本人が希望される場合には、1.5次避難所や2次避難所に安心して移っていただけるよう、まず1.5次避難所において、避難された方への通常診療ができるような体制を確保するとともに、介護施設等において2次避難を安定的に受け入れていただくため、石川県だけでなく、広域的な受入調整が円滑に進むよう、厚生労働省における人的支援の調整体制の強化、関係団体とも連携して、介護施設等への職員の応援派遣を強化することなどにより、被災された方々に寄り添いながら2次避難の後押しをしていきたいと考えています。
記者:
国立感染症研究所によると、「人食いバクテリア」とも呼ばれる「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」の患者報告数が去年、過去最多となりました。致死率が3割とも言われており、感染拡大の可能性、過去最大となった要因と対策についてお願いします。
大臣:
劇症型溶血性レンサ球菌感染症、STSSと呼ばれていますが、これは咽頭炎の原因となる溶血性レンサ球菌、いわゆる溶連菌に感染することで、稀に引き起こされることがある重篤な感染症だと受け止めています。STSSの患者数は、近年、高齢者を中心に増加傾向にあることが知られていますが、昨年1年間の全国での届出報告数は、速報値で941人でした。1999年に感染症法による届出が始まって以降、最多であった2019年を上回っております。近年の患者数の増加の理由は必ずしも明らかではありませんが、経年的な増加傾向に加え、新型コロナの5類移行後、様々な呼吸器感染症が増加する中で、夏以降、A群溶連菌による咽頭炎の患者数が増加したことも要因の1つである可能性があると思います。今後の感染動向については、引き続き状況を注視していく必要がありますが、対策については、この溶連菌は飛沫感染及び接触感染になりますので、手指衛生や咳エチケット等の基本的な感染対策が重要であるため、国民の皆様におかれましては、引き続き感染対策の徹底をお願いしたいと思います。なお「人食いバクテリア」との通称があることは承知しておりますが、感染症の実態を適切に表す表現ではなく、差別・偏見等に繋がってくる可能性があるため、報道各社におかれましては、この「人食いバクテリア」という言葉の使用については、慎重にご検討をお願いしたいと思います。
記者:
年金についてお伺いします。昨年の消費者物価の上昇率が公表されたことで、来年度の4月からの年金の改定率が決まりました。2.7%の改定ということで、バブル以来の高水準となった一方で、マクロ経済スライドによる調整もあり、実質では目減りということになりました。高齢者の生活にこの改定がどのような影響を与えると、大臣として認識されているか、また今年は財政検証も予定されていますが、年金制度改革をどのような方針で行っていくお考えかお願いします。
大臣:
令和6年度の年金額は、法律の規定に基づき、名目賃金変動率プラス3.1%から、マクロ経済スライドによる調整分マイナス0.4%を差し引き、プラス2.7%の引上げとなったということはご存じの通りです。このマクロ経済スライドは、世代間の支え合いの仕組みである公的年金制度において、将来世代の負担が過重にならないよう、長期的な給付と負担のバランスを確保するため、法律の規定に基づき行うものであり、公的年金制度を将来にわたって持続可能とする仕組みであると考えます。この役割についてはご理解いただきたいと思います。来年度の改定率、プラス2.7%は、昨今の物価高も反映して、ここ30年間で最も高い水準です。実質的な価値に配慮しながら、高齢者の方々の生活を支えるという役割を果たしているものと考えています。また今後の制度改正の内容については、今年行われる財政検証も踏まえ、社会保障審議会年金部会において関係者とも十分に議論しながら検討を進めていきますが、いずれにしても、将来にわたって持続的で信頼されるものにしていくことが必要と考えます。
記者:
新型コロナワクチン接種後の健康被害、死亡事例について伺います。予防接種健康被害救済制度において、新型コロナワクチン接種後の死亡認定は現在420名です。日本の人口が約1億2,000万人と考えると、人口約30万人の市で1人、あるいは人口約60万人の市で2人認定される、そのような確率です。ところが人口約8,000人の佐賀県太良町という小さな町で、すでに2名が死亡認定されています。このような不可解な事例が出ていますが、厚生労働省としてはどのようにお考えでしょうか。
大臣:
予防接種健康被害救済制度は、予防接種法に基づく予防接種を受けた方に健康被害が生じた場合に救済を行う制度であり、新型コロナワクチンについては令和5年12月25日時点で、国に進達されている死亡事例は1,094件です。このうち490件が審査され、420件が認定されています。ご指摘の「偏り」については、地域毎に認定件数に一定の差が生じ得るものと考えます。厚生労働省としては、引き続き迅速な救済に取り組むとともに、健康被害を受けられた方が本制度に基づく救済の申請をしていただけるよう、自治体や医療機関と緊密に連携しながら、引き続き制度の周知に取り組んでまいりたいと考えております。なおワクチンの安全性については、審議会において、ワクチン接種後の死亡として報告のあった事例も評価し、現時点において、新型コロナワクチン接種を見合わせる等の意見はいただいておりません。
記者:
こういった異常事例が出たときはやはり調査をした方がいいと思いますが、私が調べたことをお伝えしますと、太良町で死亡認定された2人には共通点があることがわかりました。2人とも同じロット番号のワクチン、具体的にはファイザーのFL7646というロット番号のワクチンを接種していました。今回のmRNAワクチンは、ロットによってかなり成分に偏りがあるのではないかと心配される専門家もいらっしゃいます。そうなると今回の事例と同じロットを接種した他の方の健康被害が心配されます。ファイザーのFL7646、約370万人分が出荷されていますが、接種した方のその後の追跡調査など、何か対応するお考えはありますか。
大臣:
新型コロナワクチンの安全性については、審議会において、ロット別の副反応疑い報告数および死亡数、またそれらの頻度も含めて資料をお示ししていますが、現時点で特段の懸念があるとの専門家のご意見はいただいておりません。引き続き、副反応に関する十分な情報の収集には常に努めるとともに、様々な観点から安全性の評価も行っていきます。
記者:
厚生労働省としてはロット差はないという見解でよろしいでしょうか。
大臣:
これについての報告数及び死亡数について、その頻度も含めて資料はお示ししていると申し上げております。
記者:
岸田首相は昨日、自民党岸田派の解散を検討すると述べました。この発言について大臣の評価と、他派閥も含めた派閥解散の実現可能性についての見解をお聞かせください。
大臣:
今現在、私は閣僚としての立場で、自民党の政策集団に関する在り方にそれぞれコメントするという立場ではないと思いますが、現在自民党の政治刷新本部において、今回の政治資金を巡る問題の原因を踏まえた再発防止を検討するとともに、政治資金の透明性の拡大や政策集団の在り方に関するルール作りなどについて活発な議論が行われているものと承知しております。引き続き国民の信頼回復に向けて、この方針に沿って議論が深められていくものと承知しております。
記者:
災害に関連してお伺いします。水道の復旧状況ですが、昨日大臣は石川県の災害対策本部に出席され、そこで各地区の復旧状況について見通しを示されたということを仰いましたが、詳細は結構ですが、長くかかるところでどれくらい復旧に時間がかかるのか教えていただけますか。
大臣:
長くかかるところがどのくらいかということが、その見通しがまだ立っていません。ただ、実際に現場の事業者の方と直接意見交換させていただき、進捗状況というものについて相当理解を深められました。浄水場の上流方面における水道管の復旧については、あえて地中に埋められている水道管だけでなく、その上に仮の水道管をとにかく先に通し、それによって断水をとにかく1日でも早く復旧させるというやり方を取りたいと。そのためにも必要な現場の事業者の数の確保が必要なだけでなく、実は宿泊施設というものと一体的に考えた動員の仕方によって、こうした事業の加速化が図られると。それがないために現状において、例えば金沢市から輪島市まで移動するために4、5時間もかかってしまう。そうすると実際現場における稼働時間というものが極めて限られたものになってしまい、非常に非効率であると。したがって宿泊施設と一体的に考え、動員の体制を強化していくことがいかに重要であるかという点については非常に詳細に説明を受けましたので、国土交通省などと連携しながら、こうした宿泊施設の確保を早急に進めながら、この水道復旧事業の加速化を進めなければならない。それによってとにかく1日でも早く、断水している地域を縮小させていくということが基本的な認識として、今回の視察でよくわかりました。
記者:
期間はお示しいただくことは難しいということですが、過去の災害と比較して、今回の水道被害どのくらいのものなのか、何か大臣が感じられているところを教えていただけますか。
大臣:
地域性、地理的な条件というものは相当影響しているということはわかりました。例えば熊本の地震の時には3方からアクセスでき、それによって実際に交通の不便さというものについては、今回の能登半島、半島という特殊な地形によって、こうしたアクセスの仕方というものが、工事現場についても非常に難しくなっている。したがって、その分事業の復旧に支障が生じてきているという実態は、相当よくわかってまいりました。したがってやはり優先度をどう設定し、復旧を円滑に進めていくのかという、そのような考え方が地理的条件から、相当精査して決められていくことが、今後の復旧事業を進める上においても非常に重要だと思いました。
記者:
財政的支援と仰いましたが、それは水道事業に関わる人の宿泊先の確保に関する財政支援という理解でよろしいでしょうか。
大臣:
それだけではありません。その他に必要なものが出てくるとすれば、当然それに対する財政支援も検討していくことになるだろうと思います。
記者:
それは宿泊施設に関する財政支援ですか。
大臣:
宿泊施設と同時に、その事業を加速化させるために国がより深く関わり、それによって実施体制が強化するということになれば、それに伴う国の支援というものの在り方も、そこでまた改めて考えることになるだろうと思います。

(了)