武見大臣会見概要
(令和5年12月1日(金)9:36~9:49 省内会見室)
広報室
会見の詳細
閣議等について
- 大臣:
- 令和5年10月の有効求人倍率は1.30倍と、前月から0.01ポイント上昇、また完全失業率は2.5%と、前月から0.1ポイント低下となりました。求人・求職の動向や労働力調査の結果を見ますと、現在の雇用情勢は求人が底堅く推移しており、緩やかに持ち直しています。物価上昇等が雇用に与える影響に留意する必要があると考えています。私からは以上です。
質疑
- 記者:
- 国が生活保護基準額を2013年から2015年に引き下げた決定の是非が問われた訴訟の控訴審判決で、名古屋高裁が30日、減額決定は違法との判断を示し、国にも賠償を命じました。一連の訴訟では、半数以上で国側が敗訴しており、今回、控訴審判決でも初めて決定の違法性が示されました。今回の判決の受け止めと、上告するかどうかを含めた今後の対応について教えてください。
- 大臣:
- 平成25年から3年間かけて実施した生活扶助基準の改定に関して、昨日、ご指摘の通り名古屋高裁で判決があり、当時の生活扶助基準の改定について適法であると認められなかったと承知しています。今回の判決内容の詳細を精査し、関係省庁や被告自治体と協議した上で、今後適切に対応したいと考えています。なお厚生労働省としては、今後とも自治体との連携を図りつつ、生活保護行政の適正な実施に努めてまいりたいと思います。
- 記者:
- 薬価調査について伺います。本日の中医協で2023年の薬価調査結果が公表されました。平均乖離率は約6.0%ということですが、背景はどのように分析されておりますでしょうか。また数字の受け止めと、診療報酬改定にどのように臨むか、方針をお聞かせください。
- 大臣:
- 令和6年度の薬価改定に向けて、薬価収載されている医薬品の販売価格等を調査する「薬価調査」の結果速報が、本日開催の中医協において報告・公表されました。薬価調査の結果は、平均乖離率が「6.0%」であり、昨年の調査結果である「7.0%」から約1ポイントの縮小となっています。この変化の要因について、一概にお答えすることは難しいですが、例えば、国から卸や医療機関等に対して、医薬品を適正な価格で流通するよう働きかけてきたことや、物価高騰等の影響により、原材料等の調達コストが高騰していることといった様々な要因が影響を与えた可能性があるのではないかと考えています。令和6年度の診療報酬改定・薬価改定に向けては、今回の結果や先日公表した医療経済実態調査の結果も踏まえながら、引き続き検討してまいります。なお、この薬価の平均乖離率の推移を見てみますと、今年は6.0%で昨年が7.0%、その前は7.6%でした。したがって徐々にこうした調査の結果が、実勢価格との乖離が徐々に縮小してきているということが現状だと理解しています。
- 記者:
- 明日から規制が始まる大麻類似成分HHCHについて伺います。2日から大麻類似成分HHCHを規制する省令が施行されますが、いわゆる「大麻グミ」を販売していた店舗では一連の報道以降HHCHを含有する商品の売れ行きが伸びていたところもあります。商品が手元に残っている購入者や店舗への働きかけなどする予定はありますでしょうか。また、HHCHに代わる成分がすでに準備されているとの声もあります。先日大臣が会見で仰った「包括的な規制」について、制度の準備状況・発表の時期などを教えてください。
- 大臣:
- ご指摘の「HHCH」については、22日の指定薬物への指定後も、更なる健康被害の拡大を防止するため、引き続き、全国の関連店舗に対する立入検査を継続しています。29日時点で、17都道府県66か所の販売店や製造関連事業所に対して立入検査を行い、製品が確認されたのは43、この43の店舗や事業所に、これは製品が確認されましたので、検査命令と販売等停止命令を実施いたしました。SNS等を通じて、広く国民に対して、危険性を伝えるとともに、購入・使用等をしないよう、臨時の発信を行うなど、注意喚起しているところです。また、既に主要なインターネット・モールに対しても、HHCHが指定されたことを周知し、そして販売中止への協力を要請しています。HHCHの類似化合物に対する包括指定については、類似化合物の出現傾向を踏まえて予測した上で、必要な科学的知見の収集も進めているところであり、早ければ年明け以降にもこれに関わる措置できるのではないかと思います。なおこれは法改正を必要としません。省令でできるものですから、私どもとしてはできるだけ迅速に、こうした手続きを進めたいと思います。
- 記者:
- 先ほどの名古屋高裁判決の件ですが、大臣のご所感を伺いたいのですが、判決としては、政治的なプレッシャーで行政の公正性がゆがめられたということが大きなエッセンスとしてあるかと思いますが、大臣は自民党の一員として、こうした裁判所の判断についてどのように受け止めていらっしゃいますか。
- 大臣:
- 前提をもう一度説明してください。
- 記者:
- 当時生活保護バッシングというものが非常に強く向けられていて、自民党も2012年の衆議院選挙公約で、生活保護を1割削減するということを公約して、政権を手にしたと。その直後に政治的な力もあり、役所がこれまでにない試算の方法をもって生活保護の基準の削減を決めたという流れがあるかと思います。
- 大臣:
- その前提条件に係る認識が違います。
- 記者:
- 大臣の認識を教えてください。
- 大臣:
- あの当時においては、特に九州の一部の地域などで、こうした生活保護制度というものが極めて好ましくないかたちで悪用されているケースなどが多々あり、かつまた窓口で大変大きく問題となり、窓口の職員などが大変深刻な脅威の下に晒されるということが実は多々起きておりました。したがって、こうしたことに対してしっかり対処すべきであるという考え方がまず前提にあり、こうした生活保護制度に関わる様々な見直しを行ったということが私どもの考え方です。
- 記者:
- 悪用をなくすということは当然のことだと思うのですが、それはそうした改正が行われたということは承知していますが、裁判所の指摘はそうではなく、基準そのものが、決め方がおかしいのではないかという指摘な訳ですが、そこについてのご認識はいかがでしょうか。
- 大臣:
- 基準設定についての判断は、厚生労働大臣の権限の下で、合目的的な裁量に委ねられているとの最高裁の判例もあります。したがって、その手順も含めて、私どもは、これは適切なものであったと考えています。
- 記者:
- 新型コロナワクチンの副反応疑い報告について、過去に起きた副反応について、遡って情報収集されるかどうかについて伺います。ワクチン接種との関係によらず報告が必要である「心筋炎・心膜炎」を例に挙げますと、私は全国の11の地方自治体の予防接種健康被害救済制度のデータを確認・集計しました。接種後の「心筋炎・心膜炎」が105件ありました。そのうち副反応疑い報告に挙がっていないものが93件もありました。報告義務のある心筋炎ですら9割近く報告されていない現状です。接種の副反応の実態を正確に把握するためにはかなり遡って情報を集める必要があるかと思いますが、武見大臣は過去に報告されていなかった膨大な事例があることについて、どのようにお考えになり、どう対処されますでしょうか。
- 大臣:
- まずコロナワクチン接種後の心筋炎・心膜炎については、一昨年2021年12月6日に心筋炎・心膜炎に関する副反応疑い報告基準が設定されて以降に、適切に報告がなされているかについて調査を行い、そして報告がなされていない疑いのある事例については、必要に応じ報告を実施して頂くよう、全国の自治体に依頼したところです。さらに、心筋炎・心膜炎以外に副反応疑い報告基準として設定された症状についても、適切に報告がなされているか調査を行う方向で検討を進めています。これまでも、医療機関や企業等からの追加報告や調査などにより新たな情報が得られた場合には、その情報を踏まえて再度、安全性の評価を行っており、引き続き、個々の事例に係る情報収集と丁寧な評価に努めていきたいと思います。
- 記者:
- 11月28日に承認された「レプリコンワクチン」について伺います。分子生物学者・免疫学者の荒川央氏は次のように述べています。「これまでのmRNAワクチンはスパイクタンパク生産にブレーキのないワクチンでしたが、自己増殖するmRNAワクチン、つまりレプリコンは更に遺伝子の増殖にすらブレーキがありません。それどころかむしろ加速するアクセルが付いているようなものです。ワクチン接種者から他者にワクチンを感染させる事態が発生すると、社会の中でワクチン感染が蔓延し、ワクチン変異株が周囲に拡散されるバイオハザードのような状況すら理論的には起こり得るのです」PMDA、および薬事・食品衛生審議会が、このたびのレプリコンワクチンの承認を認めたということは、荒川氏が言うようなリスクを超えるベネフィットがあるからだと推測します。レプリコンワクチン接種のベネフィットについて、また荒川氏が懸念するバイオハザードが実現した場合の対処法と責任の所在についてご教示願います。
- 大臣:
- 今般承認したレプリコンワクチンは、国内外の臨床試験において、一定の発症予防効果や中和抗体価の上昇が確認されたこと、また有害事象の種類や発現割合等にファイザー社ワクチンと比べて明確な差は認められず、安全性は許容可能と判断できたことから、薬事承認を行いました。レプリコンワクチンは、接種後に抗原タンパクをコードするmRNAが細胞内で複製され、持続的に抗原タンパクが作られるワクチンであることから、ご指摘のようなワクチンの被接種者から当該ワクチンに含まれる物質等が他の者に伝播するような事象は今のところ確認されておりません。
(了)