尾辻大臣記者会見概要

H16.12.15(水)18:20~18:47 省内会見場

広報室

会見の詳細

混合診療について

大臣:
いわゆる混合診療問題につきましては総理から年内に解禁の方向で結論を出すようにという指示を受けておりました。これまで精力的に議論を進めてきたところでございます。そして本日村上大臣との折衝の後、官房長官の下で最終調整を行いまして、基本的合意にいたったところでございます。その内容について先ほど総理にもご報告をいたし、御了解を得ましたのでご報告させていただきます。なお私からは今回のこの合意につきましての基本的な考え方についてお話をさせていただきまして、詳細につきましては後ほど事務方から説明をさせていただきたいと思います。
まず基本的な考え方でございます。大きく基本的な考え方について2点が絶えず私の頭の中にありました。1つは患者の皆さんの立場に立ってどうこの問題について対応すべきかということでした。したがいまして、率直に言いますけれども、私どもがご提案申し上げた文章の中にもこういうくだりがありました。「なぜ今いわゆる混合診療の解禁問題を突きつけられるのか、その原点は何なんだろう」と。まさに患者の皆さんのお立場に立ったときにこの問題は何なんだろうというところから私どもも検討をした、この問題についてどう対応すべきかを考えてみたということを申しました。基本的な考え方のまず一番のところに患者の皆さんの立場からこれがどういう問題を含んでいるのだろう、どう我々が対応することがいいんだろうというふうに考えました。
一方、私どもは医療の安全ということを絶えず念頭に置かなくてはなりません。有効性、安全性という医療に対する私どもの基本的なスタンスがあります。その視点に立ったときに、このいわゆる混合診療という問題に対してどういうふうに対応するのがいいのかという点です。特にこれは医療保険、まさしくお金のことでありますから、その医療保険としてお金を支払うことに対してきっちり私どもの立場というのを守らなくてはならない。そういう視点がございました。それからこの大きく言っている今2点目の私どもの視点の中にもう1つありましたのは、やはりいうところの自由診療と組み合わされる、そこの部分は限定されておりませんからここがどんどんどんどん拡大することによって実質患者の皆さんの負担が増大することになってはまずい。これは再三議論の中で私が申し上げたことであります。病院に行って、お医者さんに「これは保険は利かないんですよね。だけれどもこれやった方がいいんじゃないですか」と言われたときに、藁をもすがる気持ちになっている患者の立場で「いや、それはしていただかなくて結構です」ということにはならないでしょう。やっぱり「それじゃあ先生、もう是非その治療をして下さい」という話になって自由診療という部分が拡大していくというのは我々としては避けなくてはならない。そういう思いがありました。
申し上げた患者の皆さんのお立場、それから医療の有効性、安全性についてどういうふうに考えるか。この大きな2点から今度の問題を考えてみた。そして私どもの答えを出したということでございます。したがいましてまず守るべきは私が私どもの宝だと思っております国民皆保険、これを守らなくてはいけない。そしてその理念も守らなくてはいけない。そうした中で患者さん達の切実な要望に迅速かつ的確に対応できるようにということで改革をした。まず基本的にそういうことで行ったものであります。
次にやや具体的な問題を申し上げておきたいと思います。先ほど申し上げましたように、患者さんの立場からこの問題が生じてきた大きな理由の1つが国内未承認薬の使用、薬の話であります。国内で未承認、しかし海外では使われておる薬の話でございました。これについて私どもが出した答えは、確実な治験の実施に繋げ、制度的に切れ目なく保険診療との併用が可能な体制を確立して対応することにいたしました。ここで言っておりますのは、特に問題とされました新しい、海外で使われている薬。これを日本で患者さんが使おうと思ったときに治験という形では使うことが可能でした。一定期間治験が終わってこれを承認薬として申請をした。申請をした途端に谷間に陥ってしばらく混合診療で使えない。また最終的にこの薬が承認されればその後は当然のこととして使えるんですけれども、この谷間の部分が生じていることに対して大変強いご不満もございました。実はこの議論の中でがん患者の皆さんともお会いいたしました。がん患者の皆さんが強く言っておられたのはここの部分だと私は理解をいたしましたから、これは何とかしなくてはいけないと考え、まず今の答えとして出したとご理解いただければと思います。それから2番目に大きくこの問題の解決策として私どもが出しました答え、これは欧米で新たに承認された薬については、自動的に検証の対象とし、おおむねすべての事例について、確実な治験の実施に繋げるということです。欧米で使われている承認された薬、これは自動的に日本でまず検証の対象とし治験に繋がっていく。ほとんどの薬がそうなるということを改めて言ったわけでございます。こういう薬の未承認薬の取扱いについては急いでくれと。先ほども申し上げたがん患者の皆さんにお会いしたときも「もう我々の命は後何ヶ月と言われているんです。そんなに悠長に薬の検証なんかやられたら、その前に私たちの命がつきてしまいます」というようなお話もございました。そこで未承認薬の取扱いについては、最長でも3か月以内に結論を出すことにしたわけでございます。
次に、医療技術の対応についていろんな議論がございました。ここのところは一番最後の最後まで合意できなかった、双方の意見の溝が埋まらなかった部分でございます。まず規制改革・民間開放推進会議からは、一定水準以上の医療機関には包括的に混合診療を解禁すべきだと。要するに一定水準以上という病院に対しては、すべて無条件に混合診療を解禁すればいい、自由診療と組み合わせてやって下さいというのが規制改革・民間開放推進会議からのご意見でありました。しかし、そういう仕組みにするとどうしても医療行為を事前にチェックできません。医療というのはやはり事前にチェックをしておかないと終わった後で「あっ、しまった」なんていう話をするわけにはいきません。どうしても命に関わる医療というのは事前の確認ができる仕組みを作っておかなくてはいけませんと我々は言いました。ここのところが本当に最後まで意見の違っておったところでございます。そこで私どもがご提案いたしましたのは、技術ごとに一定水準の医療機関を設けましょうと。そして事前に一定水準の要件というのを医療技術ごとに設定をして、該当する医療機関は届出により実施可能な仕組みを新たに設けることにいたしたわけでございます。ですから医療技術ごとに一定水準の医療機関というのを決めるという仕組みにしましょうということで合意に達したわけでございます。
これは今申し上げたことでご理解いただけると思いますけれども、どんな病院でもすべての技術でその水準を満たしているというわけにはなかなかいかない。やっぱりこの分野は得意とするけれども、この分野はどうしても不得意という面があるというようなことが医療技術ごとにどうしても出てきますから、そうしたものを事前にちゃんとチェックしておきましょうと言ったわけであります。そして事前のチェックの下に仕組みを作るということでございます。その際に医療現場のニーズに迅速に対応するという観点から、医療機関から要件該当の届出がなされたら原則3か月以内に当該医療技術が実施可能とする仕組みにしたところでございます。
大きく薬の点が1点ありましたし、もう1つ医療技術の点がありましたから、その一番大きな問題については今ご説明を申し上げたところでございます。
そしてこの改革の手順をどう進めるかということがございます。これはまずやれることはどんどんやろう、出来るものから順次実施する。それで平成17年夏までを目途にして実現するということをまず言いました。それから更に現行制度を抜本的に見直すということでございますから、将来的な保険導入を前提としているものかどうかといったような観点から、名称も含めまして法制度上の整備を行うこととし、平成18年の通常国会に、かねて申しておりますけれども、私どもは医療保険制度全般にわたる改革法案を出させていただく、これはまたかねて申し上げておりますけれども、医療提供体制まで含めてしっかりしたものを改革法案として出したいと思っておりますから、そうした大きな流れの中、改革の中の一つと位置付けてこの問題の改革も致すことにしたわけでございます。
最後に申し上げますけれども、いろいろご指摘いただきましたことに対して抜本的な改革をした、画期的な改革をしたと私どもは自負をいたしております。そして総理のご指示にもしっかり応えた、まさにそういう改革であると考えているところでございます。お手元の資料の中にかねてご指摘いただいておりました15項目、こんなことをやるべしとご指摘いただいた15項目、最後の一つの三角を除いて全部丸になっている。すなわち、こんなことをやるべしと具体的に示されたものを全部やりますという答えになっているのだというのがご覧いただけると思います。私が申し上げた意味をご理解いただきたく最後にこのページをご覧いただいたところでございます。以上私からの説明にさせていただきます。

質疑

記者:
推進会議の方は、来年度以降もいわゆる混合診療の解禁について、改めて議論をするというふうなスタンスと聞いていますが、この点について総理から何か指示はございましたか。
大臣:
最後に総理のところに行きました時に、総理からのご指示がそこまであったかどうか私もきちんと記憶は致しておりません。ただ私の方から、昨日の経済財政諮問会議でのお話もありましたから、引き続き、当然これで終わりなどということはありませんから「検討はします」ということは申し上げました。村上大臣からも、とにかくここまで改革を進めてきたものであるから、まずきっちりやってみよう、きっちりやってみてどういうことになるかというのが大事なことだというご発言、これは総理の前でもご発言がありまして、私もその通りに思います、とにかくまずしっかりやりましょうと言ったところであります。ただ当然それはそれとして、これでもう未来永劫変えませんなんていう話は当然ないわけでありますから、いろいろな検討はしていくというのも当然のことだと思っております。
記者:
確認なのですけれども、先ほどご説明があった部分というのは、現行の特定療養費制度の中でまずやれることはやるということでよろしいのですか。新制度を作らなくても出来ることばかりという解釈でよろしいのでしょうか。
大臣:
そこはまさに解釈の仕様なのですが、事務的に言ったらどうなるかな。
保険局長:
やはり出来ないこともあります。例えば高度先進医療について様々な資格が法律で定まっているわけでありますので、これはやはりきちんと法律改正しないと出来ないことはあります。したがいまして、仕分けをして、法律改正をしないでも出来ることはしますが、しなければ出来ないことも当然あるということです。それは18年に法改正でやっていこうということです。
記者:
ここに書かれていることが全部実現するのは、新しい仕組みが出来てからということになるのですね、やれるものはやるにしても。
保険局長:
きれいに、法律的な位置付けも含めて完全に完成するのは18年度です。出来るものはそれまでにやっていく。
記者:
そうすると15個のうち、14個に丸がついているこの丸はいつからというのは、いつからというメドは。
保険局長:
今の時点で言えるのは、やはり来年の夏をメドにこなしていきたいということです。
記者:
来年の夏から、この赤い丸がついているのは実現になると。
保険局長:
出来るようになるというか。要するに有効性、安全性の確認をまずするわけでありますので、そのプロセスにみんな入れるということです。
大臣:
薬で一部年度内にやるといっていたのがあるよね。それをちょっと説明して下さい。
保険局長:
後ほどまた詳しいことを説明致しますけれども、未承認薬の扱いで検討会議というのは来年早々にも立ち上げてやります。それで技術の方も始めて、最終的には来年の夏までには全体として実現出来るものは実現するということです。
大臣:
今ご説明申し上げているのは、先ほどのがん患者の皆さん方の薬に対する要望というのは、これは切実なことでありますから、もう1日も早くやらなければいけないという我々の認識であります。したがってその部分などは急ぎます。
記者:
今回の案全体に対する大臣の自己評価というのはどういうふうにお考えでしょうか。
大臣:
自分で点数を付ける、何点というのはちょっとですが、申し上げたように画期的な改革をしたと思っております。
記者:
専門家からなる検討会というものなんですが、具体的にはどのようなイメージを持っておられるのでしょうか。まずこれはどこに位置付けられるのかということは。
大臣:
これは薬と技術とのそれぞれの会議をつくります。そしてそれは私の下に置きます。
記者:
確認なのですが、先ほど大臣が総理の方に引き続き検討はしますということをご報告になられたということは、混合診療の解禁についてということでよろしいのですか。
大臣:
昨日経済財政諮問会議から特区ということを検討してみたらどうかというお話もございましたので、そうしたことについてまた検討しますということを言ったところであります。その部分については私の方から総理に申し上げた。私も正直に言いましてかなり総理の前で感極まっていたという感じがあったので総理からのご指示というのが正確に思い出せなくて申し訳ないのですけれども、そんなことでありました。そこの部分は私から総理に申し上げたということであります。
記者:
大臣の印象として、総理は何かおっしゃったのか、受け止めとしては何か、喜んでおられたのか、どういう印象を大臣はお持ちになられましたか。
大臣:
総理としては、これでご納得いただけたというふうに思います。
記者:
発言、お言葉というのは。
大臣:
あまり総理、そんなに言われませんでした、言葉に出しては。
記者:
この改革は誰のための改革だというふうにお考えですか。国民のため。
大臣:
はい、国民のため、患者さんのためだと。最初に申し上げたように、その視点で私どもは考えました。そしてそのことを念頭に置いて答えをつくったつもりであります。
記者:
新制度の検討というのは、18年の国会の直前までのスケジュールで決めていくということになるのですか。もしくはもっと早く、特定療養費制度を変えるわけですよね、新しい制度に。これの検討のスケジュールというのはどれくらいにイメージされているのですか。
大臣:
検討をどう進めるかは別として、最終的には18年度の法改正に全部盛り込むつもりでありますから、そこまでにずっと作業は進めていきます。
記者:
それは厚生労働省だけでやっていくということになるのですか。
保険局長:
それはまさにこの合意事項に則して、私どもの法律ですので私どもが考えていくということです。

(了)