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9 後天性免疫不全症候群
感染症法に基づく医師及び獣医師の届出について
(1)定義
レトロウイルスの一種であるヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus;HIV)の感染によって免疫不全が生じ、日和見感染症や悪性腫瘍が合併した状態。
(2)臨床的特徴
HIVに感染した後、CD4陽性リンパ球数が減少し、無症候性の時期(無治療で数年から10年程度)を経て、生体が高度の免疫不全症に陥り、日和見感染症や悪性腫瘍が生じてくる。
(3)届出基準
- ア 患者(確定例)
医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から後天性免疫不全症候群が疑われ、かつ、(4)イの届出に必要な要件を満たすと診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を7日以内に行わなければならない。 - イ 無症状病原体保有者
医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、(4)アの届出に必要な要件を満たすと診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を7日以内に行わなければならない。 - ウ 感染症死亡者の死体
医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、後天性免疫不全症候群が疑われ、かつ、(4)イの届出に必要な要件により、後天性免疫不全症候群により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を7日以内に行わなければならない。
(4)届出に必要な要件
- ア HIV感染症の診断 (無症候期)
- (ア)HIVの抗体スクリーニング検査法(酵素抗体法(ELISA)、粒子凝集法(PA)、免疫クロマトグラフィー法(IC)等)の結果が陽性であって、以下のいずれかが陽性の場合にHIV感染症と診断する。
- [1]抗体確認検査(Western Blot法等)
- [2]HIV抗原検査、ウイルス分離及び核酸診断法(PCR等)等の病原体に関する検査(以下「HIV病原検査」という。)
- (イ)ただし、周産期に母親がHIVに感染していたと考えられる生後18か月未満の児の場合は少なくともHIVの抗体スクリーニング法が陽性であり、以下のいずれかを満たす場合にHIV感染症と診断する。
- [1]HIV病原検査が陽性
- [2]血清免疫グロブリンの高値に加え、リンパ球数の減少、CD4陽性Tリンパ球数の減少、CD4陽性Tリンパ球数/CD8陽性Tリンパ球数比の減少という免疫学的検査所見のいずれかを有する。
- (ア)HIVの抗体スクリーニング検査法(酵素抗体法(ELISA)、粒子凝集法(PA)、免疫クロマトグラフィー法(IC)等)の結果が陽性であって、以下のいずれかが陽性の場合にHIV感染症と診断する。
- イ AIDSの診断
アの基準を満たし、下記の指標疾患(Indicator Disease)の1つ以上が明らかに認められる場合にAIDSと診断する。ただし、(ア)の基準を満たし、下記の指標疾患以外の何らかの症状を認める場合には、その他とする。
指標疾患(Indicator Disease)
- A.真菌症
- 1.カンジダ症(食道、気管、気管支、肺)
- 2.クリプトコッカス症(肺以外)
- 3.コクシジオイデス症
- (1)全身に播種したもの
- (2)肺、頚部、肺門リンパ節以外の部位に起こったもの
- 4.ヒストプラズマ症
- (1)全身に播種したもの
- (2)肺、頚部、肺門リンパ節以外の部位に起こったもの
- 5.ニューモシスティス肺炎
(注)P. cariniiの分類名がP. jiroveciに変更になった
- B.原虫症
- 6.トキソプラズマ脳症(生後1か月以後)
- 7.クリプトスポリジウム症(1か月以上続く下痢を伴ったもの)
- 8.イソスポラ症(1か月以上続く下痢を伴ったもの)
- C.細菌感染症
- 9.化膿性細菌感染症(13歳未満で、ヘモフィルス、連鎖球菌等の化膿性細菌により以下のいずれかが2年以内に、2つ以上多発あるいは繰り返して起こったもの)
- (1)敗血症
- (2)肺炎
- (3)髄膜炎
- (4)骨関節炎
- (5)中耳・皮膚粘膜以外の部位や深在臓器の膿瘍
- 10.サルモネラ菌血症(再発を繰り返すもので、チフス菌によるものを除く)
- 11.活動性結核(肺結核又は肺外結核)(※)
- 12.非結核性抗酸菌症
- (1)全身に播種したもの
- (2)肺、皮膚、頚部、肺門リンパ節以外の部位に起こったもの
- 9.化膿性細菌感染症(13歳未満で、ヘモフィルス、連鎖球菌等の化膿性細菌により以下のいずれかが2年以内に、2つ以上多発あるいは繰り返して起こったもの)
- D.ウイルス感染症
- 13.サイトメガロウイルス感染症(生後1か月以後で、肝、脾、リンパ節以外)
- 14.単純ヘルペスウイルス感染症
- (1)1か月以上持続する粘膜、皮膚の潰瘍を呈するもの
- (2)生後1か月以後で気管支炎、肺炎、食道炎を併発するもの
- 15.進行性多巣性白質脳症
- E.腫瘍
- 16.カポジ肉腫
- 17.原発性脳リンパ腫
- 18.非ホジキンリンパ腫
- 19.浸潤性子宮頚癌(※)
- F.その他
- 20.反復性肺炎
- 21.リンパ性間質性肺炎/肺リンパ過形成:LIP/PLH complex(13歳未満)
- 22.HIV脳症(認知症又は亜急性脳炎)
- 23.HIV消耗性症候群(全身衰弱又はスリム病)
(※)C11活動性結核のうち肺結核及びE19浸潤性子宮頚癌については、HIVによる免疫不全を示唆する所見がみられる者に限る。
- A.真菌症
届出票
- 届出票 [639KB]
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