10.よりよい労使関係のために


 健全かつ安定した労使関係の維持は、我が国の経済社会の発展の基礎となるものであり、一層の安定促進に努めなければなりません。

 特に近年は、少子・高齢化社会の急速な到来、経済のグローバル化、規制緩和の進展等労使を取り巻く環境が大きく変化しつつあります。こうした社会経済情勢の変化に適切に対応するためには、まず労使が社会的責任を自覚し、相互理解と協力の精神を基調として広い視野から自主的に話し合うことによって問題の合理的、平和的解決を図ることが必要です。

 労働省では、このような見地から、特に、産業、企業等各種レベルにおける労使及び労使と政府の対話の促進が重要であると考え、産業労働懇話会等を通じてよりよき労使関係づくりに努めています。

我が国の労働組合の特色

 我が国の労働組合に組織されている労働者の数は、約1,209万人であり、これは全雇用者の約22%に当たります。

 一般に、我が国の労働組合は、企業単位を基本に組織されており(企業別組合)、これらの企業別組合が集まって産業別組織を形成し、さらに産業別組織が集まって連合等の全国的中央組織を形成しています。

 また、[1]賃金その他の労働条件をめぐる労使交渉を、連合等の指導の下に、「春季生活闘争」という形で毎年一定時期に行っていること、[2]近年は労使の相互理解が深まり、各個別企業内における労使関係が比較的安定していること、等の特徴があげられます。

 この他、連合等は、総理大臣、官房長官、労働大臣等に対する政労会見等の政策制度要請活動や、政策制度実現のための国民運動等、政策面での行動にも力を入れています。

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第70回メ−デ−

主要団体別労働組合員数

主要団体別 労働組合員数
全労働組合員数 12,090(千人)
連合 7,476
全労連 837
全労協 270
金属労協 2,356
化学エネルギー労協 750
交運労協 796

(1)産業労働懇話会等の開催

 我が国の経済の発展に占める産業労働問題の重要性にかんがみ、政府、労使首脳及び学識経験者を含むいわば最高ワイズ・メンによる懇談の場をつくり、産業労働政策に関する意見を広く求め、かつ、その協力を得るとともに、関係者相互の理解を深めることを目的として、産業労働懇話会を月1回程度開催しています。

 そのほか、都道府県レベル、産業レベル、企業・事業所レベルにおける労使の協議その他のコミュニケーションを促進するため、必要な援助を行っています。

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第220回産業労働懇話会
(平成11年5月27日)

(2)労使紛争の解決

 労働争議は、労使当事者はもとより、社会一般にも大きな損失をもたらすものですので、その発生をできるだけ避けて、平和のうちに早期に紛争を解決することが望ましいといえます。

 労働省では、労使間で日頃から十分話し合いが行われ、相互の信頼関係が確立されるように、労使関係法の周知徹底その他必要な助言等を行っています。

 いったん争議が発生した場合、労使当事者が自主的に解決することが望ましいのですが、実際には労使当事者だけでは解決しないことがあります。そこで、公平な第三者機関として労働委員会が設けられており、当事者の申請等に基づき、あっせん、調停及び仲裁の3種の調整を行っています。

 また、労働組合法では労働組合の結成・運営に対する使用者の妨害・干渉(不当労働行為)を禁止していますが、労働委員会は、労働組合などから不当労働行為の救済申立てを受けたとき、これを審査し、不当労働行為があると認められる場合には、救済命令を出すことができます。

争議発生状況
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資料出所:労働争議統計調査年報告(平成9年)
 
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(3)多国籍企業における労働問題への対応

 我が国企業の海外進出及び外資系企業の日本への進出が活発に行われており、今後も企業の多国籍化は一層進展するとみられています。これらの多国籍企業においては、雇用、労使関係等をめぐり、国内企業と異なった角度からの労働問題が発生するケースがしばしばみられます。

 このような労働問題を解決し、企業の国際化に伴う摩擦を防ぐため、次のような施策を講じています。

 1)海外進出企業労働問題対策

 政・労・使三者構成による多国籍企業労働問題連絡会議を開催し、情報・意見交換を行っています。

 また、日本労働研究機構を通じて、[1]海外の委託調査員による海外労働事情のレポート、[2]調査団の海外派遣、[3]各種調査研究の実施などにより海外労働情報を収集し、月刊誌『海外労働時報』の発行等により情報提供を行っています。

 さらに、急増している海外派遣労働者の労働・生活条件の改善に資するため、海外勤務者向け労働問題に関するマニュアルを作成しているほか、海外進出企業を対象とした各種セミナーの開催等を行っています。

 2)外資系企業労働問題対策

 外資系企業の抱える労働問題を行政として正確に把握し、意見交換を行うため、在日外国商工会議所トップ等との間で外資系企業労働問題懇談会を開催しています。

 また、外国人経営・管理者の日本の労働事情に関する理解を促進し、労使関係の改善に資するため、広報、啓発活動を行っています。