(1) | 雇用の安定を図るための機動的な対策の実施 |
雇用失業情勢は、完全失業率が高水準で推移し、有効求人倍率も過去最低を更新するなど、依然として厳しい状況が続いています。 このような深刻な雇用状況を改善するため、政府として100万人規模の雇用創出・安定を目指し、平成10年11月に緊急経済対策を策定しました。労働省では、その大きな柱の一つとして「雇用活性化総合プラン」(総事業費1兆円程度)を策定し、[1]総量としての雇用の場の拡大、[2]労働者の就職支援対策(エンプロイアビリティの向上)、[3]労働力需給のミスマッチの解消、[4]失業中のセイフティネットの確保、[5]「緊急雇用開発プログラム」の更なる推進等の施策を平成11年1月より実施しています。 これにより、雇用の安定を図り、国民の雇用に対する不安を払拭し、再び希望と活力にあふれた経済社会をつくりだすことを目指しています。 |
(2) | 中小企業の活力を活かした雇用の創出 |
産業構造の転換が進む中で、雇用失業情勢は厳しい状況にあり、今後、労働者の雇用の安定を図っていくためには、中小企業の活力を活かした新たな雇用機会の創出が重要な課題です。 このため、労働省では、中小企業労働力確保法に基づき、ベンチャー企業等新分野展開を目指す中小企業(以下「ベンチャー企業等」といいます。)が行う人材の確保・育成、魅力ある職場づくりの活動を支援しています。 また、ベンチャー企業等の経営者及びベンチャー企業等への就業に関心のある求職者等を対象として、職業紹介・職業相談、人材情報や各種支援制度の情報提供や相談等を行う情報提供イベント(「ベンチャー出会いの場」)を全国で開催しているほか、ベンチャー企業等への支援を実施している官民の各機関、団体等による連携の場(「ベンチャー企業等支援ネットワーク」)の形成等、ベンチャー企業等の成長・発展を支援するための各種施策を実施しています。 |
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(3) | 産業構造変化に対応した失業なき労働移動の支援 |
国際化の進展等による産業構造の変化により、雇用の回復が見込めない業種の労働者の失業の予防等を図ることが重要な課題となっています。 このような状況を踏まえ、業種雇用安定法に基づき、産業間・企業間の労働移動による雇用機会の確保、移動の際の能力開発等雇用の安定を図るための措置を講ずる事業主に対して助成金の支給等の支援を行うとともに、雇用創出に向けたフォーラムや労働移動に関する情報提供等を目的とするセミナー等を開催しています。 また、景気の長期低迷の中で、雇用失業情勢は厳しい状況にあり、雇用の維持が困難になってきている企業が増加している状況にあります。特に中高年齢労働者については一旦失業すると再就職が極めて困難となっています。 このため、臨時・緊急措置として、平成11年1月より9月までの間、特に雇用失業情勢の厳しい45歳以上60歳未満の中高年齢労働者を失業を経ることなく受け入れた事業主に対して、賃金及び教育訓練に係る費用の一部を助成しています。 なお、本助成金は、人材移動の円滑化に対する支援を強化するため、中高年労働移動特別助成金を抜本的に拡充し、発展的に人材移動特別助成金(仮称)を創設することとしています。 |
中高年労働移動雇用安定奨励金
対象事業主から45歳以上60歳未満の中高年齢労働者を、出向・再就職あっせんにより受け入れた事業主が負担した額の1/3(中小企業は1/2)を助成するものです。 |
中高年労働移動能力開発給付金
中高年労働移動雇用安定奨励金の支給対象となる中高年齢労働者に対して、新たな職務に従事させるために必要な知識、技能又は技術を習得させるため、教育訓練を受けさせた事業主に対して、その教育訓練の期間において負担した賃金及び教育訓練に要した額の2/3(中小企業は3/4)を助成するものです。 |
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(4) | 魅力ある地域づくりのために(地域雇用開発の推進) |
我が国経済社会の望ましい発展を図るうえで、東京一極集中の是正と地域活性化による国土の均衡ある形成は不可欠です。 こうした中、地域の雇用失業情勢をみると、総量的に雇用機会が不足している地域が存在する一方、魅力的な雇用機会が乏しい等の理由から若年者を中心とした労働力が流出している地域も存在する等地域間に格差がみられるところであり、これらの地域の活性化を図っていくためには、それぞれの地域ごとの実態を的確にとらえた、きめ細やかな対応が求められています。 また、製造業関係の事業所が集積している地域の中には、生産拠点の海外移転等の影響により、雇用状況の悪化等がみられるところも存在していますが、こうした地域は、我が国「ものづくり」を支える高度な熟練技能者が多数就業しており、これらの技能を将来に向かって継承、発展させていくことも重要な課題となっています。 そこで、労働省では、こうした課題に雇用面から対処していくため「地域雇用開発等促進法」に基づき労働者にとって魅力ある地域づくりを支援し、地域の発展を担うべき人材の確保・育成・定住を促進するための施策を総合的に推進していきます。 |
1)雇用機会が不足している地域における地域雇用開発の促進
「地域雇用開発等促進法」に基づき指定された雇用機会増大促進地域と特定雇用機会増大促進地域において、地域雇用開発助成金や大規模雇用開発促進助成金の有効活用などにより、地域に根ざした良質な雇用機会の創出を図っていきます。 また、過疎地域等において魅力ある雇用機会の開発を図るための措置としては、「地域雇用開発プロジェクト」を実施し、地域による「地域雇用開発プラン」の策定に対する援助等を行っています。 |
地域雇用開発助成金
政令等で指定された地域内に事業所を設置又は整備して、その地域に居住する人などを雇い入れる事業主に対し、新規に雇い入れた労働者に関する賃金助成及び機械、設備購入等雇用機会拡大に要した費用と雇入れ人数に応じた特別助成などを行います。 |
大規模雇用開発促進助成金 大規模雇用開発プロジェクト計画に基づいて事業所を設置し、50人以上の雇用の場の開発を行った事業主に対して、大規模雇用開発モデルプロジェクト推進事業等の一環として1事業主当たり2〜10億円を支給するものです。また、本社機能を有する等により、魅力ある雇用開発を行う場合には助成額が上乗せされます。 |
2)地域雇用環境整備事業
「地域雇用開発等促進法」に基づく雇用環境整備地域に対しては、地域雇用環境整備事業として地域雇用環境整備助成金の支給や地域関係者の取組に対するソフト面での支援等を行っています。 |
地域雇用環境整備助成金
労働大臣の認定を受けた雇用構造改善プロジェクト計画に基づいて事業所を設置・整備し、良質で魅力ある雇用の場を開発する事業主に対して、雇用構造改善モデルプロジェクト推進事業の一環として1事業主当たり1〜2億円を支給するものです。 |
3)地域における労働者の技能等を活用した雇用開発の促進
「地域雇用開発等促進法」に基づき指定された高度技能活用雇用安定地域において、地域高度技能活用雇用安定助成金の有効活用などにより、地域における労働者の高度の技能等を活用した新事業展開による雇用創出等を支援しています。 |
地域高度技能活用雇用安定助成金
[1]新事業展開による雇用開発を図るための、調査研究を行った事業主団体、[2]新事業展開を担う人材(高度技能人材)を受け入れ、併せて他の労働者を雇い入れた事業主、[3]労働環境改善設備又は福祉施設の設置・整備を行い、併せて労働者を雇い入れた事業主、[4]人材高度化に資する職業能力開発を実施する事業主に対して助成を行います。 |
4)人材の地方還流の促進
首都圏に流出している技術・知識を有する人材等で、地元へUターンを希望する者の円滑な地方還流を図るため、Uターンセンター(東京都)において、企業・人材に関する情報の相互提供サービスを実施しています。 また、首都圏在住のUターン希望者を対象とした地方企業との合同面接会「Uターンフェア」を開催しています。 |
![]() 「Uターンフェア・フレッシュマン Uターンフェア」ポスター |
![]() Uターンフェア |
5)地域の雇用の安定の確保
特定雇用機会増大促進地域及び緊急雇用安定地域では、雇用調整助成金の活用による失業の予防、特定求職者雇用開発助成金の活用による離職者の再就職の促進、雇用保険の延長給付の実施による求職中の生活の安定などを図ります。 |
6)地域における雇用安定・創出対策
産業構造の変化に対して地域における雇用維持、労働移動の円滑化及び雇用創出の取組の推進を図るため、雇用安定・創出対策協議会等を開催しています。 |
7)農山村雇用対策の推進
人口の流出や高齢化が進む農山村地域において、地域資源を活用して自発的に雇用開発を行う取組に対して支援を行う農山村雇用開発推進事業や、各都道府県の林業労働力確保支援センター等を通じ、林業における雇用管理改善のための取組を行う林業雇用改善促進事業の実施等を通じて、農山村地域における雇用の確保を進めています。 また、農山村地域からの出稼労働者に対して、地元における就労機会を確保するほか、送出・受入体制の整備等の出稼労働者対策を実施しています。 |
農山村雇用開発推進事業
農山村地域において地域資源を活用した雇用開発のモデルとなる事業所を設置する取組に対し、[1]地域関係者で構成される農山村雇用開発推進委員会が行う活動への支援、[2]事業主に対する農山村雇用開発助成金の支給を行うこととしています。 |
(5) | 就業形態の多様化などに対応した職業紹介機能等の強化 |
民間の労働力需給調整事業
我が国の労働力需給調整は、国が組織する公共職業安定所を中心にすえ、国の行う需給調整を補完するものとして、労働者保護の観点から一定の規制の下に民間にも行わせる体系となっています。労働力需給双方の変化が急速に進む中で、民間の労働力需給調整事業についても機能をさらに有効適切に発揮させる方向で制度の改善が行われてきたところであり、公共及び民間の両者が相まって我が国全体として円滑な労働力需給の調整が図られるよう努めています。 民間の需給調整事業としては次のものがあります。 |
a 労働者派遣事業 労働者派遣法(昭和61年7月施行)に基づき制度化された事業で、労働者派遣事業を行うためには、一般労働者派遣事業(注1)の場合は許可、特定労働者派遣事業(注2)の場合は届出が必要です。また、行うことのできる業務は情報処理関係、財務処理関係等専門的又は特別の雇用管理が必要な26の業務に限られています。また、派遣労働者の雇用の安定その他福祉の増進のため、派遣元事業主や派遣先の講ずべき措置が種々決められています。 b 民営職業紹介事業 有料の職業紹介事業と無料の職業紹介事業とに区分されており、いずれも許可を受けた場合(学校等の行う無料職業紹介事業は届出)に限って行うことができます。 有料職業紹介事業においては、平成9年4月1日の制度改正により取扱職業の範囲を次に掲げる職業以外のものを取り扱うことができるものとしました。
[1] サービスの職業 ただし、事務的職業及び販売の職業については、新規学校卒業後1年未満の者は除きます。 なお、従前の家政婦等の29の職業は取扱職業とされています。 無料職業紹介事業は職種の限定はありませんが、高齢者や看護婦等の医療関係者が主な取扱範囲となっています。c 労働者供給事業 同事業は、労働組合等が労働大臣の許可を受けて無料で行う場合を除いて全面的に禁止されています。 d 労働者募集 労働者募集は文書募集、直接募集及び委託募集に区分されます。文書募集は自由ですが、労働者の保護を図る観点から通勤圏外で行う直接募集は届出が必要とされ、また、委託募集については、法律に基づいて設立された団体に所属する中小企業の事業主が、その所属する団体を通じて労働者の募集を行う場合に限り許可しています。 |
(注1)特定労働者派遣事業以外の労働者派遣事業 |
人と仕事を結ぶハローワーク
(イ)公共職業安定所の職業紹介
全国各地域に約600ヵ所(出張所を含む)ある公共職業安定所(愛称:ハローワーク)は、仕事を探している人(求職者)にはその希望と能力に最も適合した職業を、人材を求めている事業主(求人者)には最もふさわしい人材を紹介することによって、労働力需給の円滑な結合を図ることを基本的業務としています。 全国の公共職業安定所はオンラインで結ばれ、求人・求職に関する情報等をコンピュータで即時に提供する「総合的雇用情報システム」を活用したサービスを実施しています。身近な安定所で全国各地の求人・求職情報が手に入るこのシステムを、 地域間のミスマッチの解消に役立てています。今後も職業紹介機能、雇用情報提供機能の強化に努め「地域における雇用、職業問題に関する総合的サービス機関」として、利用者に対するサービスを一層充実しながら職業の安定を図ります。 さらに、最近における利用者の多様なニーズに的確に応えられるよう、次のような各種の職業紹介を行っています。 |
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(ロ)新規学卒者等の就職促進対策
新規学卒者の就職は、人生の転機として重要な意味を持つばかりでなく、人材確保という観点からも極めて重要であり、中学・高校の卒業予定者については職業安定機関が学校の協力を得て、また、大学等の卒業予定者については大学等が、職業指導、職業紹介を行っています。 新規学卒者の就職に当たっては、最近の厳しい雇用情勢に対応した次のような支援策を実施しています。
なお、新規学卒者の採用に当たって、早期選考による学校教育への悪影響を防止し、適正な求人・求職秩序を確保するため、中学・高校については、選考開始日等を設定しています。また、大学等については、平成9年度から就職協定が締結されていませんが、企業側の倫理憲章及び大学側の申合せを踏まえた公共職業安定機関における取扱いを定め、求人・求職の秩序維持等に努めています。 また、未就職卒業者に対してもきめ細かな職業相談や求人情報の提供を行うことにより、その就職促進に努めています。 |
(6) | 雇用保険制度 |
雇用保険は、[1]労働者が失業した場合、労働者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合及び労働者が自ら職業に関する教育訓練を受けた場合に、生活及び雇用の安定と就職の促進のために失業等給付を行うとともに、あわせて、[2]失業の予防、雇用状態の是正及び雇用機会の増大、労働者の能力の開発及び向上その他労働者の福祉の増進を図るための3事業を行う雇用に関する総合的機能を有する制度です。 |
1)失業等給付制度の概要図
基本手当の給付率と日額
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基本手当の年齢別上限額
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基本手当の給付日数 (短時間労働被保険者以外の一般被保険者)
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2)雇用保険3事業
雇用保険3事業は、次の事業を行っており、さまざまな助成金等を給付等する制度です。
a 雇用安定事業 b 能力開発事業 c 雇用福祉事業 |
3)費用の負担
失業等給付に要する費用は、労使が折半して負担する保険料と国庫負担により賄い、3事業に要する費用は、全額事業主のみが負担する保険料により賄われます。 平成9年度の雇用保険の保険料は、賃金総額の1,000分の11.5(農林水産業等では1,000分の13.5、建設業では1,000分の14.5)です。 |
![]() 「労働保険適用促進月間」 ポスター |
![]() 「労働保険の年度更新」 ポスター |