6.高齢者雇用対策の展開


 我が国は、平均寿命の伸長、出生率の低下を背景として、現在、世界に例をみないほど急速に高齢化が進展しつつあります。このような急速な高齢化に対応し、21世紀に向け活力ある社会を実現していくうえで、高齢者の高い働く意欲と、長年培ってきた知識・経験が活かされることが喫緊の課題となっています。このため、労働省では高年齢者等職業安定対策基本方針に基づき、総合的な高齢者雇用就業対策を推進しているところです。

(1)65歳現役社会の実現に向けた国民的コンセンサスの形成

 少なくとも65歳までは現役として働くことができる社会(65歳現役社会)を実現するため、国民各層を代表する方々の参集を求めて開催している「65歳現役社会推進会議」等の場を通じ、65歳現役社会実現に向けての基本的方策について幅広く意見交換をしています。

(2)65歳までの継続雇用の推進

 65歳までの継続雇用を推進するため、以下の施策を講じています。

 [1] 平成10年4月に義務化された60歳以上定年を基盤として、65歳までの安定した雇用の確保を図るため、定年到達者を65歳まで雇用する継続雇用制度の普及に向けて、啓発指導を行っています。
 [2] 個別企業における継続雇用推進の前提となる条件整備を促進するための中核的機関として、中央高年齢者雇用安定センターおよび都道府県高年齢者雇用安定センターを指定し、継続雇用に関する相談援助及びそれに関連した給付金の支給等の業務を行わせています。
 [3] 継続雇用制度を導入した事業主に対して継続雇用定着促進助成金を、高齢者のための職場の改善を行う事業主に対して高年齢者雇用環境整備奨励金を支給しています。

(3)多様な形態による雇用就業の促進

 高齢者の就業ニーズの多様化に対応するため次のような施策を講じています。

 [1]  公共職業安定所における高齢者の職業指導・職業紹介を行う専門職員の配置、高年齢者職業相談室における生活相談と密着した形での職業相談、職業紹介の推進等により需給機能の強化を図っています。
 また、公共職業安定所の紹介により、高齢者等の就職困難な者を雇い入れた事業主に対する特定求職者雇用開発助成金の支給を行っています。
 さらに、平成11年度より、公共職業安定所と地域の経済団体との連携の下、高齢者・事業主双方の意識改革を促進する高年齢者マッチング支援事業を実施しています。

特定求職者雇用開発助成金

 高齢者、障害者等就職が特に困難な方を公共職業安定所の紹介により、継続して雇用する労働者として雇い入れた事業主に対して、賃金の一部を助成するもので、このような方々の雇用機会の増大を図ることを目的としています

ポスター

「高年齢者雇用促進月間」ポスター

高齢者雇用対策の体系

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 [2] 短時間雇用を中心として本格的な雇用・就業を希望する高齢者が増加している状況に対応するため、雇用を前提とした技能講習、合同面接会等を一体的に実施するシニアワークプログラムを平成10年度より実施しています。
 [3]  高齢者が自らの選択や裁量の効く形で働けるよう、高年齢者職業経験活用センターの活用により、短期的な雇用による就業機会の提供を促進しています。
 [4] 定年退職後等の高齢者の間で、何らかの就業を通じて自己の労働能力を活用し、それによって自らの生きがいの充実や社会参加を希望する人が増えています。そこで労働省では、市町村単位で日常生活に密着した臨時的、短期的な仕事を高齢者に提供することを目的とするシルバー人材センターの育成・援助を行っています。また、平成8年10月の「高年齢者雇用安定法」の改正により各都道府県下全域において当該サービス等をより効果的に行い、かつ、提供するシルバー人材センター連合の育成・援助を行っています。
 [5] 高齢者の多様な就業機会を確保するため、自営開業を希望する高齢者に対して講座や交流会を開催しています。
 [6] 「活力ある高齢化(アクティブ・エージング)」の観点から、高齢者の社会参加を促進するため、企業退職者のボランティア活動の促進を図っています。

シルバー人材センター連合の概要

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(4)在職者を対象とした、高齢期に備えた雇用・就業の支援

 労働者が、早い段階から高齢期においても希望と能力に応じた働き方を選択し、実現できるよう、主要な公共職業安定所に高齢期雇用就業支援センター・コーナーを設置し、職業生活の設計のための助言、指導を実施しています(平成10年度末で34ヵ所)。

 また、労働者が高齢期における職業生活に向けた準備を行うための有給休暇を与える制度を設けた事業主に、高齢期就業準備奨励金の支給を行っています。

(5)高齢化の進展に対応した職業能力開発の促進

 高齢化が急速に進展する我が国において、働く人々が能力を十分に発揮し、安定、充実した職業生活を送ることができるようにするため、高齢者の能力や適性に応じた職業能力の開発・向上を積極的に進めています。

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