官民連携した雇用情報システム(仮称)についての基本的考え方
−木ノ内委員の御意見に関して−

官民連携した雇用情報システム(仮称)(以下「システム」という。)についての基本的考え方は以下のとおりである。
 システムの目的について

 システムの目的は、以下の3点に要約できると考えている。

1 経済団体、民間職業紹介事業者、民間求人情報提供事業者、公共職業安定所等が確保した求人・求職情報(当面は「求人情報」に限る。以下同じ。)から取り出されたインデックス情報を求職者等の利用者がインターネットを利用して一覧、検索し、情報の「ありか」を把握してアクセスできるようにすることにより、雇用情報のワンストップサービスの環境を整備し、失業者の早期再就職、在職者の失業なき労働移動を実現する。

2 昨年12月から施行されている改正職業安定法第5条の2の規定や昨年批准されたILO第181号条約(民間職業仲介事業所条約)に盛り込まれている官民の相互協力の規定に基づき、官民連携して我が国全体の労働力需給調整機能の強化を図る。

3 システムにおけるインデックス情報の一覧、検索の結果、参加機関のホームページにリンクする等の方法により、民間機関の情報にアクセスする機会を増大させ、求職者等の利用者の民間機関の利用を促進し、これによる早期再就職の実現等を図る。

(参考1) 「ワンストップサービス」という言葉は、平成12年3月31日の「行政情報システム各省庁連絡会議」で用いられた意味とは同じでないが、民間機関等の保有する求人情報の「ありか」を示す一つの窓口を設けることによって求職者、求人企業のニーズに合致したサービスを飛躍的に向上させるとともに、民間機関の利用促進を図るという行政改革の理念にも沿った仕組みとして整理できると考え、使用している。

(参考2) 以下の政府の経済計画等において、「雇用情報のワンストップサービス環境の整備」のために、平成13年度(2001年度)からシステムの運用を開始すべきとされている。
○ 経済構造の変革と創造のための行動計画(第3回フォローアップ)
       (平成12年12月1日 閣議決定)
○ 日本新生のための新発展政策
       (平成12年10月19日 経済対策閣僚会議決定)
 システムの運営について

(1) システムは、官民の求人情報を提供する類似の仕組みであるアメリカのAJBについて連邦政府や州の職員のみにより運営方法の決定がなされ、連邦政府により一元的に運営されているのとは異なり、多くの民間機関の代表が参加している官民連携した雇用情報システム運営協議会(以下「運営協議会」という。)が、官民連携の観点から、システムの運営主体として継続的に設置される。

(2) 運営協議会は、官民連携のあり方の検討を行うとともに、参加規約(参加・運営のルール)の制定・改廃、参加機関の認証・情報提供の停止等、インデックス情報の項目・内容の設定・変更等について所掌する。

(3) システムの運営に当たっては、提供情報の信頼性確保が不可欠であり、運営協議会が参加機関についての認証を行い、情報の審査体制や苦情処理体制等に係る参加規約の遵守を求めるとともに、違反があった場合には、運営協議会が情報提供の停止や、認証の取消しを行う。

(参考3)AJBとシステムとの運営の仕組み以外の基本的相違

1 AJBは、ジョブセンターの求人情報の州経由の登録、民間機関からの求人情報の登録だけでなく、個別求人企業から直接求人情報の登録を受け、その情報提供を行う(個別企業の直接登録の比率が高い。)。
 一方、システムは、ハローワークインターネットサービス掲載の求人情報や民間機関の求人情報のインデックス情報の登録を受け、詳細情報は、あくまで民間機関等にアクセスして入手する仕組みである。
2 AJBの個別求人企業からの直接登録求人情報は企業名が公開され、ジョブセンターの州経由登録求人情報は州により企業名公開か否か様々である。
 一方、システムによるハローワークの登録情報はハローワークインターネットサービス掲載の情報の一部を利用することから、企業名は非公開で、求職者にはハローワークへの来所を求めるのが原則である。

(参考4)ハローワークインターネットサービスについて

 ハローワークの窓口が混雑している状況の中で、求職者の求職活動の負担を軽減し、また、求職者に事前の求人の絞り込みを行ってもらうこと等により、ハローワークにおける職業紹介業務の効果的、効率的実施、求職者サービスの向上等を目指すものである。
 求人企業名は提供しておらず、紹介に当たってはハローワークへの来所を求めるのが原則となっている。また、政令指定都市等の情報が掲載されているが、新規学卒求人の情報は掲載されていない。
 システムが求人情報提供事業者に与える影響について

 以下のような理由から、システムによって求人情報提供事業の市場が崩壊し、無料の情報提供事業等に利用が集中するといったようなことにはならないものと考える。

1 市場においては、サービスの内容(情報の内容・信頼性・新しさ、更新のスピード、情報検索の速度、ホームページの美しさ・利用の楽しさ、情報収集力、営業活動等)によって優劣が決まり、必ずしも「無料」のところに求人者の注文が集中することはないと考えられる。

2 システムは、インデックス情報を提供し、本体情報の「ありか」がわかった後は、民間のサイト等にアクセスし内容を確認する仕組みである。このため、アクセスの段階で、情報が新しく、信頼できる等サービス内容に優れたサイトに利用が集まることから、本体情報を見る段階での競争が行われると考えられる。この場合、ハローワークの情報内容については、企業名が非公開となる等の制約がある。
 さらに、サービス内容に優れたサイトについては、このシステムを経ずに、直接アクセスすることも多く見込まれる。
 このため、本体情報を有する民間のサイトの利用が無くなるといったことは生じないと考えられる。

3 システムへの参加は、参加機関の自由であり、具体的には、参加の自由、システムで提供する情報範囲の自由、情報項目・内容の自由、詳細情報へのアクセス方法の自由(ホームページへのリンク、ホームページアドレス、メールアドレス、住所、電話番号、FAX番号、詳細情報が掲載されている情報誌名等の記載を選択)がある。
 このため、各参加機関は自らの事業運営にメリットが生まれる方法、範囲で参加することになる。

4 システムは雇用情報のワンストップサービスの環境を整備するものではあるが、民間機関については、それぞれの判断により参加いただくという考え方をとっており、情報の入口を必ずしも一つに絞るものではない。このため、システムに参加せず、独自のサイトで対応する民間機関は当然に存在すると想定している。

5 米には、連邦政府が一元的に運営しているAJBがあり、民間の職業紹介事業者、求人情報提供事業者の中には、これに情報を掲載し、求職者のアクセスを確保する等自らの事業運営に役立てている者が多くいる一方で、民間独自のサイトも伸びている状況にある。
 行政改革との関係について

(1) 基本的考え方

 昨年の職業安定法の改正、ILO第181号条約の批准により、労働力需給調整の分野では、民間機関の果たすべき役割が増大し、その創意、工夫を活かした活動がますます期待されている。
 このような中で、民間、公共の各機関がそれぞれの有する特性、創意工夫を活かした活動を行うための前提条件として、国は、官民共通の労働者保護、労働力需給調整の円滑化のための労働市場のルールづくりとその履行確保を図る責務がある。
 さらに、憲法上の勤労権の保障、職業選択の自由の保障のためにセーフティーネットとしてハローワークが無料の職業紹介を行っている。

(2) システムと行政改革との関係について

 システムは、ハローワークの利用促進を目的としている訳ではなく、行政改革の理念に基づき、求職者にできる限り民間機関を利用してもらおうとするものであり、まさに行政改革の考え方と軌を一にしている。
 この場合、システムへの民間機関の参加を促すためには、利便性とビジネス性の両立が不可欠であることは当然であり、運営協議会で出された様々な具体的指摘を踏まえ、システムの具体的内容、運営方法について調整を図っていきたい。
 なお、行政の政策評価は非常に重要であると認識しており、運営協議会にシステムの運営状況を報告する等により、可能な限り情報を公開する考えである。

(3) 官民連携に係るその他の対応について

 システムは、官民連携の選択肢の一つであり、今後、官民連携については、幅広に検討を行っていくことが必要であると考えている。
 ハローワークの窓口における民間機関の周知等については、このシステムのインターネット端末をハローワークに設置し、来所者に利用してもらう予定であり、民間機関の平等な取扱いを実現する観点からも、システムがこの目的達成に最も効果があるものと考えているが、それ以外のメニューについても今後実務ベースの検討を早急に行った上で、運営協議会の場に報告してもらい、調整していきたい。
 併せて、苦情に関連した官民での情報交換、社会・労働保険の適用状況の情報交換の問題についても、この実務ベースの検討にのせていきたい。
 ハローワークの情報の民間機関による活用等について

(1) ハローワークインターネットサービスやシステムにおいて提供されるハローワークの求人情報については、一般に公開される以上、現在でも、公共財として、ハローワークの求人情報であることを前提にその信頼性等を損なわない範囲で、幅広い活用が許されるものと考えている。
 なお、ハローワークインターネットサービスの求人情報の民間機関における活用については、そのようなニーズがあることを見極めた上で、検討していくべき課題であると考えている。

(2) また、参加民間機関のホームページからシステムのホームページにリンクすることについて希望があった場合に、これに応ずることは可能である。

(3) 現在ハローワークインターネットサービスでは提供していないハローワークの求人企業名の情報の取扱いについては、その利用に対するニーズが最も高いのが求職者である以上、仮に提供する場合でも個別の民間機関に提供することは難しく、広く求職者に対して提供する方法しかないものと考えている。
 このハローワークインターネットサービスにおける求人企業名の提供については、今後様々な角度から慎重に検討していくべき課題であると考えている。
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