平成12年11月15日

民間労働力需給調整事業者の立場からの「官民協力」のご提案


木ノ内 博道
■民間から発想する官民協力のあり方  (別紙 図 参照)

 今後の労働需給政策においては、民として官に何を協力するかではなく、民間の労働需給調整機能を活用して、課題解決を図る方向で構想すべきであると考えます。
 求人情報誌、新聞、折込広告の求人広告は、民間の労働需給調整機能として長年にわたって雇用の開発や新産業への労働力移動に取組んできており、その結果、就職者の入職経路シェアにおいてナンバーワンの位置を占めるに至っています。その立場から言えば、労働市場政策においては、官の仕組みに依存しない、すなわち税金や雇用保険特別会計などの国民負担を伴わない民間主導の労働力需給調整機能を如何に活用するかが第一義的に検討されるべきであると考えます。
 今回の官民連携した雇用情報システム(仮称)はあくまで多くの選択肢の中の一つでしかありません。方策の選択にあたっては、政策目的の達成見通し、公共の職業紹介サービスに対する民間部門の代替供給能力、国民負担の問題、民業への影響等を客観的に事前評価していくことが重要と考えます。

 民間労働力需給調整事業者の立場からの官民協力のあり方については、(社)全国求人情報誌協会を通じ、下記の方策などを提言してきたところです。

【これまでに行ってきた提案】

 公共職業安定所の保有する未充足求人情報を民間労働力需給調整事業者に開示する。公共職業安定所で受理した求人を、職種・資格・給与・勤務地・採用人数・求人者名(所在地・連絡先)・資本金・従業員数など項目別に検索・抽出が可能となるデータベースとし、民間労働力需給調整事業者が利用できるようにする。
 利用できる民間労働力需給調整事業者の選別に当たっては、自主規制や苦情処理体制など事業の適性化に一定の実績が認められる事業者とし、データベースはインターネットからダウンロードできるようにする。そのため、あらかじめ利用できる事業者にID付与を行って管理する。充足の有無など毎日の状況変化に応じて情報の更新が行われることが望ましい。
 求人受理時に求人者が民間への情報提供の可否を選択できる仕組みを設ける。

 公共職業安定所の窓口業務を通じた民間労働力需給調整事業者についての継続的な周知および情報提供・登録等のコーナーを設置する。
 各公共職業安定所や求人情報プラザ内に民間労働力需給調整事業者の情報提供コーナー(見本誌コーナー、Web検索コーナー、民間事業者紹介パンフレットの配布)及び登録コーナー(人材紹介、人材派遣登録等)を常設し、公共職業安定所の情報では希望に叶うものが無い場合、即時に民間労働力需給調整事業者の情報を入手し利用できる仕組みを作ること。
 求人・求職者を対象に民間労働力需給調整事業者の理解を深めるリーフレット等の資料を作成し、求人受理・求職受付の際に配付すること(特に求人・求職を初めて行う者への資料配付、オリエンテーションは必須)。労働省や公共職業安定所等の求人関連サイトやホームページにおいても同様の周知を行うこと。

 求人を受理する際、これまでの充足決定実績データに基づいた基準により、公共職業安定所では難しいと判断した場合、民間労働力需給調整事業者の利用を勧奨すること。
 オーストラリアでは、公共職業安定所の民営化以前においては、連邦雇用サービス局の指導により、「連邦雇用サービス(CES=公共職業安定所)は、事業主から求人を受理し、それを午後中に充足できなかったならば、事業主に電話連絡を行う。その時点までに充足できないとしたら、それは連邦雇用サービスが適切な紹介を行えないことを意味する。我々がふさわしい候補者を持っていない場合には、求人広告を行うことを事業主に助言する。」ことを励行していた。 1998年の民営化以降では、民営化された公共職業安定所(=Employment National社。株主は大蔵大臣であり、公共性を有している。)においては、所長の判断で、マッチングに成功しなかった職種について、求人広告を出稿しているという事実がある。

募集活動費用の補助金としてのバウチャー券を発行し、求人者に支給する

【新たな提案】
 労働省は、公共職業安定所の保有する求人データを、民間の各求人ポータルサイトに「提供する」、「リンクを申し出る」、「バナー広告を出す」等の方策の実行に向けて、個別に各社と合意形成を図るべく交渉を行う。
 米国のAJBの求人情報は、民間(EX : careerbuilder)のサイトからも検索できるようになっている。

 投資勧誘目的の求人、詐欺的商法の求人などによる被害が発生しており、当協会会員社にも相談が寄せられている。官民で悪質商法や苦情関連についての意見交換や情報のデータベース化などに取り組む必要がある。求職者に危害を与えることがないように、スクリーニングされた求人情報を提供することは、官民の労働力需給調整機関に求められる最低限の責務である。
 また、労働省は、就職後のトラブルを防止する上でも、求人者に最低限の社会保障体制整備を促進するためにも、法定社会保険に未加入であるなど、最低限の体制が不備な事業者に関する情報も開示する必要がある。
 開示が難しいなら、問い合わせに回答するなどの方法がある。
 米国では、連邦取引委員会(FTC)や民間の広告自主規制機関(CBBB=Council of Better Business Bureau)などの団体が「コンシューマー・センチネル(消費者のための番人)」ネットを形成し、米国とカナダの240以上の行政機関の苦情データとCBBBの100以上の地方BBBの苦情データをデータベース化し、消費者保護を実現している。
以上
民間から発想する官民協力のあり方図


ホームページへ