ずい道等建設工事における粉じん対策に関するガイドライン(案)

1 趣旨

 本ガイドラインは、ずい道等建設工事における粉じん対策に関し、粉じん障害防止規則(昭和54年労働省令第18号)に規定された事項及び第5次粉じん障害防止総合対策において推進することとしている事項等について、その具体的実施事項を一体的に示すことにより、ずい道等建設工事における粉じん対策のより一層の充実を図ることを目的とする。
2 適用

 本ガイドラインは、ずい道等(ずい道及びたて坑以外の坑(採石法(昭和25年法律第291号)第2条に規定する岩石の採取のためのものを除く。)をいう。以下同じ。)を建設する工事(以下「ずい道等建設工事」という。)であって、掘削、ずり積み、ロックボルトの取付け、コンクリート等の吹付け等、その作業の実施に伴い粉じんが発生する作業を有するずい道等建設工事に適用する。
 ただし、作業の自動化等により、労働者がずい道等の坑内に入らないずい道等建設工事には、適用しない。
3 事業者の実施すべき事項

 粉じん対策に係る計画の策定
 事業者は、ずい道等建設工事を実施しようとするときは、事前に、粉じんの発散を抑制するための粉じん発生源に係る措置、換気装置等による換気の実施等、換気の実施等の効果を確認するための粉じん濃度等の測定、防じんマスク等有効な呼吸用保護具の使用、労働衛生教育の実施、その他必要な事項を内容とする粉じん対策に係る計画を策定すること。
 粉じん発生源に係る措置
 事業者は、坑内の次の作業において、それぞれの定めるところにより、粉じんの発散を防止するための措置を講じること。ただし、湿潤な土石又は岩石を掘削する作業、湿潤な土石の積込み又は運搬を行う作業及び水の中で土石又は岩石の破砕、粉砕等を行う作業にあっては、この限りでないこと。
(1) 掘削作業

 発破による掘削作業


(イ) せん孔作業
 くり粉を圧力水により孔から排出する湿式型の削岩機(発泡によりくり粉の発散を防止するものを含む。)を使用すること又はこれと同等以上の措置を講じること。


(ロ) 発破作業
 発破後は、安全が確認されたのち、粉じん濃度が低減するまで、立ち入らないこと。

 機械による掘削作業(シールド工法及び推進工法による掘削作業を除く。)


 次に掲げるいずれかの措置又はこれと同等以上の措置を講じること。


(イ) 湿式型の機械装置を設置すること。


(ロ) 土石又は岩石を湿潤な状態に保つための設備を設置すること。

 シールド工法及び推進工法による掘削作業


 次に掲げるいずれかの措置又はこれと同等以上の措置を講じること。


(イ) 湿式型の機械装置を設置すること。


(ロ) 密閉型のシールド掘削機等切羽の部分が密閉されている機械装置を設置すること。


(ハ) 土石又は岩石を湿潤な状態に保つための設備を設置すること。
(2) ずり積み等作業

 破砕・粉砕・ふるいわけ作業


 次に掲げるいずれかの措置又はこれと同等以上の措置を講じること。


(イ) 密閉する設備を設置すること。


(ロ) 土石又は岩石を湿潤な状態に保つための設備を設置すること。

 ずり積み及びずり運搬作業
 土石を湿潤な状態に保つための設備を設置すること又はこれと同等以上の措置を講じること。
(3) ロックボルトの取付け等のせん孔作業及びコンクリート等の吹付け作業

 せん孔作業


 くり粉を圧力水により孔から排出する湿式型の削岩機(発泡によりくり粉の発散を防止するものを含む。)を使用すること又はこれと同等以上の措置を講じること。

 コンクリート等の吹付け作業


 次に掲げる措置を講じること。


(イ) 湿式型の吹付け機械装置を使用すること又はこれと同等以上の措置を講じること。


(ロ) 必要に応じ、コンクリートの原材料に粉じん抑制剤等を入れること。


(ハ) 吹付けノズルと吹付け面との距離、吹付け角度、吹付け圧等に関する作業標準を定め、労働者に当該作業標準に従って作業させること。
(4) その他

 たい積粉じんの発散を防止するため、坑内に設置した機械設備、電気設備等にたい積した粉じんを定期的に清掃すること。

 建設機械等の走行によるたい積粉じんの発散を少なくするため、次の事項の実施に努めること。


(イ) 走行路に散水すること、走行路を仮舗装すること等粉じんの発散を防止すること。


(ロ) 走行速度を抑制すること


(ハ) 過積載をしないこと。

 必要に応じ、エアカーテン等、切羽等の粉じん発生源において発散した粉じんが坑内に拡散しないようにするための方法の採用に努めること。

 坑内で常時使用する建設機械については、排出ガスの黒煙を浄化する装置を装着した機械を使用することに努めること。
 なお、レディミキストコンクリート車等外部から坑内に入ってくる車両については、排気ガスの排出を抑制する運転方法に努めること。
 換気装置等(換気装置及び集じん装置をいう。以下同じ。)による換気の実施等

(1) 換気装置による換気の実施

 事業者は、坑内の粉じん濃度を減少させるため、次に掲げる事項に留意し、換気装置による換気を行うこと。

 換気装置(風管及び換気ファンをいう。以下同じ。)は、ずい道等の規模、施工方法、施工条件等を考慮した上で、坑内の空気を強制的に換気するのに最も適した換気方式のものを選定すること。
 なお、換気方式の選定に当たっては、発生した粉じんの効果的な排出・希釈及び坑内全域における粉じん濃度の低減に配慮することが必要であり、送気式換気装置、局所換気ファンを有する排気式換気装置、送・排気併用式換気装置、送・排気組合せ式換気装置等の換気装置が望ましいこと。

 送気口(換気装置の送気管又は局所換気ファンによって清浄な空気を坑内に送り込む口のことをいう。以下同じ。)及び吸気口(換気装置の排気管によって坑内の汚染された空気を吸い込む口のことをいう。以下同じ。)は、有効な換気を行うのに適正な位置に設けること。
  また、ずい道等建設工事の進捗に応じて速やかに風管を延長すること。

 換気ファンは、風管の長さ、風管の断面積等を考慮した上で、十分な換気能力を有しているものであること。
 なお、風量の調整が可能なものが望ましいこと。

 送気量及び排気量のバランスが適正であること。

 粉じんを含む空気が坑内で循環又は滞留しないこと。

 坑外に排気された粉じんを含む空気が再び坑内に逆流しないこと。

 風管の曲線部は、圧力損失を小さくするため、できるだけ緩やかな曲がりとすること。
(2) 集じん装置による集じんの実施

 事業者は、必要に応じ、次に掲げる事項に留意し、集じん装置による集じんを行うこと。

 集じん装置は、ずい道等の規模等を考慮した上、十分な処理容量を有しているもので、粉じんを効率よく捕集し、かつ、吸入性粉じんを含めた粉じんを清浄化する処理能力を有しているものであること。

 集じん装置は、粉じんの発生源、換気装置の送気口及び吸気口の位置等を考慮し、発散した粉じんを速やかに集じんすることができる位置に設けること。
  なお、集じん装置への有効な吸込み気流を作るため、局所換気ファン、隔壁、エアカーテン等を設置することが望ましいこと。

 集じん装置にたい積した粉じんを廃棄する場合には、粉じんを発散させないようにすること。
(3)換気装置等の管理

 換気装置等の点検及び補修等
 事業者は、換気装置等については、半月以内ごとに1回、定期に、次に掲げる事項について点検を行い、異常を認めたときは、直ちに補修その他の措置を講じること。

(イ) 換気装置


a 風管及び換気ファンの摩耗、腐食、破損その他損傷の有無及びその程度


b 風管及び換気ファンにおける粉じんのたい積状態


c 送気及び排気の能力


d その他、換気装置の性能を保持するために必要な事項

(ロ) 集じん装置


a 構造部分の摩耗、腐食、破損その他損傷の有無及びその程度


b 内部における粉じんのたい積状態


c ろ過装置にあっては、ろ材の破損又はろ材取付け部分等のゆるみの有無


d 処理能力


e その他、集じん装置の性能を保持するために必要な事項

 換気装置等の点検及び補修等の記録
 事業者は、換気装置等の点検を行ったときは、次に掲げる事項を記録し、これを3年間保存すること。

(イ) 点検年月日

(ロ) 点検方法

(ハ) 点検箇所

(ニ)  点検の結果

(ホ) 点検を実施した者の氏名

(ヘ) 点検の結果に基づいて補修等の措置を講じたときは、その内容
 換気の実施等の効果を確認するための粉じん濃度等の測定

(1) 粉じん濃度等の測定

 事業者は、換気の実施等の効果を確認するため、半月以内ごとに1回、定期に次の事項について測定を行うこと。
 なお、測定は、別紙「換気の実施等の効果を確認するための空気中の粉じん濃度、風速等の測定方法」に従って実施すること。
 また、事業者は、換気装置を初めて使用する場合、又は施設、設備、作業工程若しくは作業方法について大幅な変更を行った場合にも、測定を行う必要があること。
イ 空気中の粉じん濃度
ロ 風速
ハ 換気装置等の風量
ニ 気流の方向
(2) 空気中の粉じん濃度の測定結果の評価

 事業者は、空気中の粉じん濃度の測定を行ったときは、その都度、速やかに、次により当該測定の結果の評価を行うこと。

 粉じん濃度目標レベル

粉じん濃度目標レベルは3mg/m3以下とすること。
 ただし、中小断面のずい道等のうち、3mg/m3を達成することが困難と考えられるものについては、できるだけ低い値を粉じん濃度目標レベルとすること。
 評価値の計算

 空気中の粉じん濃度の測定結果の評価値は、各測定点における測定値を算術平均して求めること。
 測定結果の評価

 空気中の粉じん濃度の測定結果の評価は、評価値と粉じん濃度目標レベルとを比較して、評価値が粉じん濃度目標レベルを超えるか否かにより行うこと。
(3) 空気中の粉じん濃度の測定結果に基づく措置

 事業者は、評価値が粉じん濃度目標レベルを超える場合には、設備、作業工程又は作業方法の点検を行い、その結果に基づき換気装置の風量の増加、作業工程又は作業方法の改善等作業環境を改善するための必要な措置を講じること。
 また、事業者は、当該措置を講じたときは、その効果を確認するため、(1)の粉じん濃度等の測定を行うこと。
(4) 粉じん濃度等の測定等の記録

 事業者は、粉じん濃度等の測定及び空気中の粉じん濃度の測定結果の評価を行ったときは、その都度、次の事項を記録して、これを7年間保存すること。
 なお、粉じん濃度等の測定結果については、関係労働者が閲覧できるようにしておくことが望ましいこと。
イ 測定日時
ロ 測定方法
ハ 測定箇所
ニ 測定条件
ホ 測定結果
ヘ 測定結果の評価
ト 測定及び評価を実施した者の氏名
チ 評価に基づいて改善措置を実施したときは、当該措置の概要
 防じんマスク等有効な呼吸用保護具の使用

 事業者は、坑内の作業に労働者を従事させる場合には、坑内において、常時、防じんマスク、電動ファン付き呼吸用保護具等有効な呼吸用保護具を使用させるとともに、次に掲げる措置を講じること。
 なお、作業の内容及び強度を考慮し、呼吸用保護具の重量、吸排気抵抗等が当該作業に適したものを選択すること。

(1) 保護具着用管理責任者の選任

 保護具着用管理責任者を次の者から選任し、呼吸用保護具の適正な選択、使用、顔面への密着性の確認等に関する指導、呼吸用保護具の保守管理及び廃棄を行わせること。
イ 衛生管理者の資格を有する者
ロ その他労働衛生に関する知識、経験等を有する者
(2) 呼吸用保護具の適正な選択、使用及び保守管理の徹底

 呼吸用保護具の選択、使用及び保守管理に関する方法並びに呼吸用保護具のフィルタの交換の基準を定めること。
 また、フィルタの交換日等を記録する台帳を整備すること。
 なお、当該台帳については、3年間保存することが望ましいこと。
(3) 呼吸用保護具の顔面への密着性の確認

 呼吸用保護具を使用する際には、労働者に顔面への密着性について確認させること。
(4) 呼吸用保護具の備え付け等

 呼吸用保護具については、同時に就業する労働者の人数と同数以上を備え、常時有効かつ清潔に保持すること。
 労働衛生教育の実施

 事業者は、坑内の作業に労働者を従事させる場合には、次に掲げる労働衛生教育を実施すること。また、これら労働衛生教育を行ったときは、受講者の記録を作成し、3年間保存すること。

(1) 粉じん作業特別教育

 坑内の特定粉じん作業(粉じん障害防止規則第2条第1項第3号に規定する特定粉じん作業をいう。以下同じ。)に従事する労働者に対し、粉じん障害防止規則第22条に基づく特別教育を行うこと。
 また、特定粉じん作業以外の粉じん作業に従事する労働者についても、特別教育に準じた教育を実施すること。
(2) 防じんマスクの適正な使用に関する教育

 事業者は、坑内の作業に従事する労働者に対し、次に掲げる事項について教育を行うこと。
イ 粉じんによる疾病と健康管理
ロ 粉じんによる疾病の防止
ハ 防じんマスクの選択及び使用方法
 その他の粉じん対策

 事業者は、労働者が、休憩の際、容易に坑外に出ることが困難な場合において、次に掲げる措置を講じた休憩室を設置することが望ましいこと。
イ 清浄な空気が室内に送気され、粉じんから労働者が隔離されていること。
ロ 労働者が作業衣等に付着した粉じんを除去することのできる用具が備えられていること。
4 元方事業者が配慮する事項

 粉じん対策に係る計画の調整

 元方事業者は、上記第3の1の粉じん対策に係る計画の策定について、上記第3により事業者の実施すべき事項に関し、関係請負人と調整を行うこと。
 教育に対する指導及び援助

 元方事業者は、関係請負人が上記第3の6により実施する労働衛生教育について、当該教育を行う場所の提供、当該教育に使用する資料の提供等の措置を講じること。
 清掃作業日の統一

 元方事業者は、関係請負人が上記第3の2の(4)のイにより実施する清掃について、清掃日を統一的に定め、これを当該関係請負人に周知すること。
 関係請負人に対する技術上の指導等

 元方事業者は、関係請負人が講ずべき措置が適切に実施されるように、技術上の指導その他必要な措置を講じること。

別紙

換気の実施等の効果を確認するための空気中の粉じん濃度、風速等の測定方法


 測定位置


 空気中の粉じん濃度及び風速の測定点は、切羽から坑口に向かって50メートル程度離れた位置における断面において、床上50センチメートル以上150センチメートル以下の同じ高さで、それぞれの側壁から1メートル以上離れた点及び中央の点の3点とすること。
 ただし、設備等があって測定が著しく困難な場合又はずい道等の掘削の断面積が小さい場合にあっては、測定点を3点とすることを除き、この限りでないこと。
 なお、換気装置等の風量の測定における風速の測定点は、風管等の送気口又は吸気口の中心の位置とすること。

 測定時間帯


 粉じん濃度等の測定は、空気中の粉じん濃度が最も高くなる粉じん作業について、当該作業が行われている時間に行うこと。

 測定時間


 空気中の粉じん濃度の一の測定点における測定時間は、10分以上の継続した時間とすること。ただし、測定対象作業の作業時間が短いことにより、一の測定点について10分以上測定できない場合にあっては、この限りでないが、測定時間は同じ長さとする必要があること。

 測定方法


(1) 空気中の粉じん濃度の測定

 空気中の粉じん濃度の測定は、相対濃度指示方法によることとし、次に定めるところにより行うこと。

 測定機器は、光散乱方式によるものとし、作業環境測定基準(昭和51年労働省告示第46号)第2条第3項第1号の労働省労働基準局長が指定する者によって1年以内ごとに1回、定期に較正されたものを使用すること。

 光散乱方式による測定機器による質量濃度変換係数は、当該測定機器の種類に応じ、次の表にそれぞれ掲げる数値とすること。
  なお、次の表に掲げる測定機器以外の機器については、併行測定の実施あるいは過去に得られたデータの活用等により当該粉じんに対する質量濃度変換係数をあらかじめ定め、その数値を使用すること。


測定機器質量濃度変換係数
(mg/m3/cpm)
P-5L、P-5L2、P-5L3、 34110.04
LD-1L0.03
P-5H、P-5H2、P-5H30.004
LD-1H、LD-1H2、LD-3K、34230.003

 粉じん濃度は、次式により計算すること。
 粉じん濃度(mg/m3)=質量濃度変換係数(mg/m3/cpm)×相対濃度(cpm)
(2) 風速の測定

 風速の測定は、熱線風速計を用いて行うこと。
(3) 換気装置等の風量の測定

 換気装置等の風量は、次式により計算すること。
 換気装置等の風量(m3/min)=風速(m/sec)×0.8×60×送気口又は吸気口の断面積(m2)
(4) 気流の方向の測定

 スモークテスター等により気流の方向の確認を行うこと。


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