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別紙

今後の職業能力開発施策の在り方について 


1 経済社会情勢の変化と職業能力開発 

 (1) 労働力需要(企業)側の状況 

    IT等の技術革新や経済のグローバル化の進展は、産業の融合、既存産業の
   衰退、新規分野の創出等を生じさせ、企業の在り方を大きく変えるとともに、
   高齢化と相まって、職業能力の在り方や職業能力開発にも大きな影響を与えて
   いる。


  (企業内の変化) 

    すなわち、企業内の状況についてみると、 

     <1> 近年の急激な需要構造の変動により、企業の多くが短期的な成果主
       義の観点から即戦力を外部から調達する傾向が強くなっている。内部
       労働力についてみると、労働者の就業意識・就業形態の多様化に伴い、
       一律の能力開発が困難となる中で、若年者や管理者等に能力開発の対
       象を絞り込む傾向がみられる。こうした要因から、全体として企業主
       導の教育訓練が後退し、これまでの人材育成を支えてきた計画的OJ
       T、Off−JT実施率に減少傾向がみられ、今後の能力開発の在り
       方が大きな課題となっている。


     <2> 人員構成の高齢化の影響や急激な需要構造の変化への対応として、
       職務編成の在り方について、指揮命令系統が明確なピラミッド系列の
       ものから、プロジェクト方式等柔軟でフラットな職務編成を採用する
       傾向が強くなっており、職業能力の内容も、特定の職務への習熟から
       幅広い能力や創造的な能力が求められるようになりつつある。 


  (企業外の変化) 

    また、企業外の状況についてみると、 

     <1> 上記のように、需要の急激な変化や高度化に対応する必要から、企業
       は、専門能力の外部調達や効率化を図るために外注化を進めているが、
       このことで労働移動の増加と相まって外部労働市場の拡大が生じてお
       り、労働者の自発的能力開発の必要性が高まっている。 

     <2> また、労働移動の増加や外部労働市場の拡大に伴い、職業能
       力の在り方も企業を超えた雇用され得る能力を念頭に置く必要が強ま
       っている。また、企業の求める職業能力も、こうした労働移動の増加
       等により、企業内の狭いものから、企業を超えた雇用され得る能力と
       の関連性を次第に強めつつある。
 


 (2) 労働力供給(労働者)側の状況 

    労働者側の状況についてみると、高齢化による職業生活の長期化や就業意識
   ・就業形態の変化に伴い、個々の労働者がどのようにキャリア形成を行い、職
   業生涯を送るかという問題が重要となっている。 


  (高齢化と職業生涯の長期化) 

    高齢化の進展に伴い職業生涯の長期化が進む一方、今後とも技術革新の進展
   等に伴う職業生活を取り巻く環境の急激な変化が続くものと予想される。この
   ため、今後、長期の職業生活において雇用の安定を図るためには、需要動向と
   キャリア形成の方向についてのすり合わせを行いつつ、長期的に職業能力の蓄
   積を図っていくことが求められる。 


  (就業意識・就業形態の多様化) 

    若年層を中心として一つの会社に長く勤め続けようとする意識が弱まり、専
   門職志向の強まりがみられる。また、職業選択の際に、自己の能力発揮の可能
   性及び仕事への充実感が重要視されるなど就業意識の変化がみられる。
    また、近年、パートタイム労働、在宅就業等の働き方が増えているが、こう
   した就業形態について、キャリア形成や能力開発が十分なされておらず、その
   対応が求められる。 
    さらに、若年者のうちには、就職後、明確な目標がなく早期離職する者やい
   わゆるフリーターとしての就業行動を取る者が多くみられるが、これらの者の
   うちには、将来の見通しなく就業している者も多く、キャリア形成面でのカウ
   ンセリングや指導が求められる。 



 (3) 雇用情勢と職業能力開発 

    近年、失業率が4%台後半で推移しているが、この要因として需要不足のほ
   か、約4分の3の要因がミスマッチによるものとされており、ミスマッチの解
   消は雇用対策上の喫緊の課題となっている。 
    こうしたミスマッチの内容を分析してみると、求職側、求人側共通の第一の
   要因として、職業能力・経験の違いが挙げられており、ミスマッチの解消のた
   めには、成長分野への人材誘導に係る能力開発やキャリア形成に係るすり合わ
   せ等職業能力開発施策による対応が最も重要なものとなっている。 




2 今後の職業能力開発施策の方向 

  これまで、労働者の職業能力開発については、全体として企業主導のもとに行わ
 れてきており、職業能力開発施策も、こうした企業の行う能力開発を支援する施策
 を中心としつつ、併せて離転職者等に対する職業訓練や技能向上等のための技能検
 定等を実施してきた。 
  しかしながら、上記のように、職業能力開発を取り巻く経済社会情勢の大きな変
 化を背景として、企業主導の能力開発だけでは限界が生じてきており、労働者に求
 められる職業能力も、特定企業における業務上必要な能力から、企業内外を問わず
 雇用され得る能力へと広がりつつある。 
  このため、これまでの施策を次のような点で抜本的に見直し、新たな職業能力開
 発施策の枠組みを組み立てることが不可欠であると考えられる。 


 (1) 労働者の自発性を重視した職業能力開発の推進 

    企業内において、労働者の就業意識・就業形態が多様化しつつあり、一律の
   能力開発はなじまなくなっている。また、労働移動の増加に伴い、労働者の能
   力開発を行うためには、企業主導の能力開発だけでは限界がある。 
    このため、今後、労働者の選択による研修の実施や労働者の自発的能力開発
   等労働者の自発性を重視した能力開発を推進していくことが不可欠となってい
   る。
    さらに、最近、企業内において、需要構造の激しい変化に伴い、長期の明確
   なキャリア・パスを描きにくくなるとともに、短期の即戦力志向が高まり、全
   体として長期的視点からの人材育成に対する取組が弱まりつつある。外部調達
   に頼ることは、個々の企業にとって短期的には成り立ち得ても、長期的には社
   会全体としての人的投資の減少による生産力・国際競争力の低下ひいては雇用
   の減少につながりかねない。 
    今後とも、企業が目標をもって人材投資を行うことができるよう積極的に援
   助を行っていく必要があるが、技術革新等の進展により、企業を取り巻く環境
   は引き続き急激な変化をし続けることが予想される中で、もはや、企業に長期
   的視点からの人材投資を期待するだけでは、十分な能力開発の機会を確保する
   ことは困難である。 
    したがって、選択型訓練、自発的能力開発、有給教育訓練休暇等の付与など
   の労働者の自発性を重視した能力開発を推進し、支援できる体制をつくりあげ
   ることにより、企業と労働者それぞれの取組による能力開発が最適に組み合わ
   されるよう、全体として職業能力開発を推進することが必要である。 


 (2) 実践的職業能力の向上 

    技術革新等経済社会の変化は、企業の在り方を変えるとともに、職業能力の
   在り方についても変化をもたらし、企業内外を問わず雇用され得る能力が求め
   られるようになっている。こうした雇用され得る能力の具体的内容は必ずしも
   明確ではないが、少なくとも単なる技能・知識のみでなく、仕事に対する姿勢
   等を含む総合的なものであり、経験により培われた実践的な職業能力を重視す
   るものといえよう。 
    今後、1で述べた企業内外の職業能力の在り方の変化を踏まえ、特定の知識
   及び技能の向上だけではなく、総合的な能力、実践的職業能力の向上を目標と
   して施策体系を組み立てていくことが求められる。 


 (3) キャリア形成の推進 

    今後の経済社会において必要とされる上記のような実践的な職業能力は、技
   能・知識のほか、仕事に対する姿勢、人脈等を含む総合的な能力と考えると、
   これを高めるに当たっては、単に職業訓練を実施するだけではなく、こうした
   能力が蓄積されるように、仮に企業を超えても、一定の方針に従って職務経験
   を積み重ねていくこと、すなわちキャリア形成が不可欠である。また、特定の
   技能・知識等の習得は教育訓練を受けることによって可能であるとしても、こ
   れを実践的な職業能力として定着させるためには、その技能・知識を実際の職
   務において活用していくことが必要である。 
    このような観点から、職業能力開発施策においても、労働者がその職務目標
   に向け、実践的な職業能力が蓄積されるような職務経験を適切に積み重ねるこ
   と、すなわちキャリア形成を施策の柱として位置付けることが必要である。 
    また、従来から、我が国の企業内において、技能・知識等の能力蓄積を図る
   観点から、職務ローテーションについて配慮するキャリア形成意識が他国に比
   べ強いとされてきたが、特に実践的職業能力については、長期的観点から養成
   することが不可欠と考えられる。したがって、今後ともこうした我が国の風土
   を発展させ、労働力移動が増加する中でも長期的観点から実践的な職業能力の
   蓄積を促進するよう継続的にキャリア形成が可能となる方策を講ずることが重
   要であると考えられる。 
    なお、パートタイム労働者等については今まで十分にキャリア形成が図られ
   ていないところであるが、今後就業形態の多様化の進展が見込まれる中で、パ
   ートタイム労働者等についてもキャリア形成が可能な就業形態とするとともに
   積極的に能力開発を行っていくことが求められる。 


 (4) ミスマッチ解消とキャリア形成 

    ミスマッチの中でも能力に関するミスマッチの解消が強く求められている中
   で、能力開発施策を強化していくことが現下の最重要課題であることはいうま
   でもない。このため、緊急雇用対策等において、新規成長分野であるIT関連
   や介護関連分野における離転職者等に対する訓練を抜本的に強化して実施して
   いるところである。しかしながら、職業能力・経験面でのミスマッチは、こう
   した訓練の実施だけでは解消することは困難であり、労働市場の変化を踏まえ
   たより構造的な対応が不可欠となってきている。 
    すなわち、上記のようなIT化の進展等に伴い産業構造や企業の在り方が急
   激に変化する中で、キャリア形成の目標が明確に定め難くなっていること、成
   長分野において必要な職業能力と自己の有する職業能力とのすり合わせや必要
   な情報の提供が十分にはなされていないこと、更には若年者の就業意識が未成
   熟であること等から、個別労働者のキャリア形成の在り方に踏み込んだ施策の
   展開が必要となっている。 
    したがって、キャリア形成を軸とした施策の展開は、ミスマッチを解消する
   ための極めて重要な構造的な対策でもあり、早急に現行の能力開発体系を組み
   換え、対応していくことが求められる。 



3 職業能力開発制度の改正 

  我が国において「知恵」、「知識」の重要性が高まる知識経済の時代を迎え、創
 造性や成果を生み出す実践的職業能力開発の充実の必要性が高まっており、企業主
 導の能力開発に加え労働者の自発性を重視しつつ実践的職業能力の向上を図ること
 ができるよう社会的なシステムを作っていくことが必要になっている。 
  特に、その場合、労働移動が増加しても、短期的な能力主義、即戦力主義に陥ら
 ず、長期的観点から能力の蓄積を図ることができるようなシステムとしていくこと
 が重要である。 
  こうした観点から、実践的職業能力を涵養するための今後の職業能力開発施策の
 柱として、個別労働者の職業生涯にわたるキャリア形成を位置付け、キャリア形成
 が、社会のニーズや環境変化に適応してなされるよう支援を行うとともに、労働移
 動が生じても引き続きキャリア形成が継続され、不利益とならないよう職業能力を
 的確に評価する仕組みを築くことが必要である。 
  こうした仕組みを設けていくことは、これまで技能・知識の能力蓄積を図る観点
 から、キャリア形成に配慮してきた我が国の風土に合致するものであり、このよう
 な考え方を前提として、具体的に次のような方向で職業能力開発施策を進めること
 とし、そのための制度改正を行うことが適当である。 


 (1) キャリア形成への支援 

  イ キャリア形成支援に係る施策の位置付けについて 

   (キャリア形成の意味) 

     キャリア形成とは、単に職務を経験することを意味するのではなく、労働
    者が一定の職業に関する目標に沿って、職務を経験することにより実践的職
    業能力の形成を図ることと考えられる。 


   (キャリア形成の位置付け) 

     現行法は、職業訓練と技能検定を二大施策として、それを中心とした体系
    として構成されているが、今後は個別労働者の自発的な能力開発、とりわけ
    実践的職業能力の開発及び向上を図る観点から、労働者のキャリア形成への
    支援を、これらの施策と並ぶ柱となる施策として法律上位置付け、こうした
    キャリア形成が可能となるような仕組みを法律に基づき推進することが適当
    である。 


   (職業訓練との関係) 

     職業訓練等で習得した知識及び技能を実践的職業能力として定着させるた
    めには、その知識及び技能を実際の職務において活用していくことが重要で
    ある。また、体系的な知識及び技能を身に付けるためには、キャリア形成の
    みによっては困難であり、職業訓練によることが不可欠である。このため、
    労働者の職業能力の開発及び向上を図るためには、職業訓練とキャリア形成
    とが相互に密接な関連をもって実施されることが必要である。 


   (職業能力評価との関係) 

     また、キャリア形成によって習得された職業能力については、職業能力評
    価の仕組みによる評価によって確認するとともに、それをベースとして更な
    る職業能力開発及び向上に向けてキャリア形成を行っていくこととなる。こ
    のような意味において、キャリア形成と職業能力評価は、相互に密接な関連
    をもって実施されることが必要である。 


  ロ キャリア形成への支援について 

     事業主及び国等は労働者のキャリア形成への援助に努めるとともに、労働
    者は自ら進んで職業に関する教育訓練を受けること、キャリア形成を適確に
    行うこと等によりその職業能力の開発及び向上に努めることとすることが適
    当である。 
     全体として、未だ、事業主によるキャリア形成への支援が必ずしも十分で
    ない中で、今後、事業主の取組を促進していく必要がある。このため、厚生
    労働大臣は、事業主の行うキャリア形成を促進するための措置に関しその適
    切かつ有効な実施を図るために必要な指針を策定、公表することが適当であ
    る。指針に盛り込む事項は、具体的には次のような事項が考えられる。 

    ・ 企業内の職務の遂行に必要な職業能力の明示に関する事項 
    ・ 職務経験について書面に記述する方法に関する助言等労働者が職業能力
     を把握するために必要な方法に関する事項 
    ・ キャリア形成に関する相談その他の援助に関する事項 
    ・ キャリア形成を促進するための人事管理上の配慮に関する事項 


   (事業内職業能力開発計画) 

     事業内職業能力開発計画に定めるべき事項に、キャリア形成に関する援助
    の措置を追加するとともに計画の労働者への周知を推進することが必要であ
    る。


   (能力開発推進体制) 

     企業内において労働者のキャリア形成を効果的に支援していくために、企
    業内のキャリア形成を含む能力開発を推進する体制を明確にするとともに、
    情報提供、相談・援助、講習の実施、助成金の支給等により、こうした体制
    等によるキャリア形成の促進について国が援助を行うことが必要である。 



 (2) 職業能力評価システムの整備 

  イ 職業能力評価システムの整備の考え方について 

     キャリア形成を促進するとともに、労働力の需給調整を円滑化し、ミスマ
    ッチを解消するためには、労働市場の機能が有効に発揮されるよう基盤整備
    を行う必要があり、職業能力評価システムを整備することが重要である。そ
    の際、特に、知識、技能にとどまらない労働者の実践的職業能力を評価する
    ことが必要である。
     労働者の有する実践的職業能力を適正に評価するために、また、労働移動
    が増加する中で、随時に職業能力を評価するために、検定による評価制度だ
    けではなく、民間の能力評価制度を認定する仕組みや職務経歴等を基礎とし
    て実践的職業能力を評価することができる仕組み等を推進する必要がある。
     以上から、現行法の職業能力検定の仕組みに加え、実践的な職業能力の評
    価に係る仕組みを新たに法令上位置付け、労働者が多様な職業能力評価を受
    ける機会を確保するための施策を推進していくことが適当である。 


  ロ 職業能力評価システムの具体的な整備について 

   (民間の評価制度) 

     「公益法人に対する検査等の委託等に関する基準」(平成8年9月20日
    閣議決定)及び「規制行政に関する調査結果に基づく勧告−資格制度等−」
    (平成12年9月総務庁)を踏まえ、少なくとも現行の認定技能審査制度に
    ついて、法令に基づく制度として位置付ける必要がある。 
     併せて、民間の諸団体等が評価を行う仕組みのうち、実践的職業能力の開
    発に資するものであり、かつ、その適切な実施が確保されるものについて認
    定を行う仕組みを整備し、そのための認定の基準等を明確にする必要がある。
     なお、労働市場の基盤整備という観点から、上記認定の対象は幅広く考え
    ることが適当である。 


   (国の評価制度−技能検定) 

     技能検定制度については、閣議決定及び総務庁勧告を踏まえ、技能検定試
    験の業務の一部を事業主団体等に行わせる際の基準等について法令で明確に
    する必要がある。 


   (その他) 

     労働者の職務経歴等を基礎として実践的な職業能力を評価する仕組みを定
    立するために、能力評価技法の開発や評価を行う人材の育成を行う必要があ
    る。 



 (3) 職業能力開発関係の給付金等の見直し 

  イ 給付金等の見直しの必要性 

     現在の職業能力開発局関係の給付金等は、「人材高度化の推進」、「生涯
    能力開発の推進」、「認定職業訓練の振興」等を主な目的とする制度となっ
    ているが、職業能力開発施策の体系を踏まえ、給付金制度についても見直し
    が必要である。
     すなわち、産業構造の急速な変化、労働力の流動化の下、職業能力開発施
    策の在り方を個々人のキャリア形成支援に重点を置いたものへと見直してい
    く中で、事業主の行う職業能力開発を支援する助成金制度についても、より
    労働者の自発性を重視した能力開発の取組の促進に助成の重点化を図った上
    で、新たなわかりやすい助成体系を構築することが必要である。 
     また、地域ごとの企業及び労働者の能力開発ニーズに対応した職業能力開
    発を促進するため、各都道府県の独自の職業能力開発施策とも十分に連携す
    る必要がある。 
     さらに、給付金等の簡素合理化の観点から、支給事務等を見直す必要があ
    る。

  ロ 給付金等の見直しの視点 

     (イ) 重点化及び体系化 

      a 労働者のキャリア形成に対する支援 

        労働者のキャリア形成を支援するため、能力開発関係の給付金制度
       については、訓練目標等が明確化された教育訓練の実施、有給教育訓
       練休暇等の付与、職業能力評価、キャリア・コンサルティング等が効
       果的に組み合わされた職業能力開発を促進、支援するという新たな視
       点から見直す必要がある。 
        さらに、各個別の事項については、次のような考え方により措置す
       ることが適当である。 


      (事業主の行う教育訓練における訓練内容や訓練目標の明確化) 

        事業主の行う教育訓練に対し助成措置を行う場合には、個々の労働
       者の主体的な能力開発を促進する観点から、当該教育訓練の内容及び
       当該教育訓練を受けることによって得られる職業能力や遂行可能とな
       る業務が明確化されているものを助成対象とすること。 
        現行の助成要件である「事業内職業能力開発計画の作成、提出」に
       ついては、その内容の適正化を図るとともに、労働者に対しわかりや
       すい形で周知させるための措置を講ずること。 
        事業転換等に対応した適切な教育訓練が可能となるよう十分に配慮
       すること。


      (有給教育訓練休暇等の付与) 

        事業主が、教育訓練の受講を目的とした休暇を付与し、賃金の支払
       その他休暇期間について経済的支援を行う場合に、これを支援する措
       置を引き続き講ずること。 
        事業主が、長期にわたる教育訓練の受講を目的とする休暇を付与す
       る制度を創設することを、引き続き奨励すること。 


      (職業能力評価等の推進) 

        労働者の職業能力が適正に評価されることを促進するため、事業主
       が個々人のキャリア形成を支援するに当たり、適正な職業能力評価制
       度の活用を促進するための支援の仕組みを設けること。
        労働者が自らその職業能力開発等の方針を定め、効果的な教育訓練
       の受講等を促進するため、事業主がその雇用する労働者にキャリア・
       コンサルティングを受けさせることを促進するための支援の仕組みを
       設けること。 


      b 地域における職業能力開発の基盤形成の推進 

        地域における人材ニーズ等に即した職業能力開発の基盤形成を促進
       するため、都道府県の意見等も聴きつつ、都道府県と連携した職業能
       力開発施策の推進が可能となる新たな枠組みを検討することが適当で
       ある。 


     (ロ) 簡素合理化 

        給付金については次により簡素合理化を図る必要がある。 


      (給付金の整理統合) 

        現在、事業主の行う職業訓練等に対する助成制度は、その創設の経
       緯等により、各助成金に細分化されているが、助成対象が重複し、併
       給調整の問題が生じやすい等、制度として複雑化、非効率化し、支給
       申請に当たっても分かりにくい制度となっているため、これらの整理
       統合を図ること。 


      (支給手続の簡素合理化) 

        支給手続の複雑さをはじめ支給手続上の問題により給付金の利用が
       抑制されることのないよう、支給窓口の統合など、支給事務の簡素合
       理化を図ること。 
 


4 今後の職業能力開発施策の内容 

  今後の職業能力開発施策については、以上の制度改正を踏まえつつ、次により推
 進していくことが適当であるが、各施策を推進するに際しては、関係行政機関との
 連携を密にするとともに、施策の効果については、新たに実施される政策評価制度
 等により適切に評価を行っていくことが重要である。 
  なお、第7次職業能力開発基本計画の策定に当たっては、この内容を踏まえて検
 討を行うことが適当である。 


 (1) 労働者のキャリア形成を支援するシステムの整備について 

  イ 労働者の個別的なキャリア形成を支援するシステムの整備について 

     経済社会の変化の中で、キャリア形成を柱として職業能力開発施策を推進
    していく必要があるが、労働者のキャリア形成を促進するため、次のような
    仕組みを整備することが必要である。 


    (イ) 労働者のキャリア形成への支援について 

     <1> 労働者の実践的職業能力を「知る」仕組み(キャリアシートの記述) 

        労働者が希望・適性に沿ったキャリア形成を行うために、労働者が
       どのような能力を有しているかを知ることが重要である。 
        そのために、労働者自身が経験してきた職務や教育訓練等によりど
       のような能力を身につけてきたかを、職業生活の節目ごとに、いわば
       棚卸しできるよう、労働者が遂行してきた仕事の具体的内容と成果、
       また、仕事を通じてどのような能力を獲得してきたかを客観的に記述
       すること及びそのような記述について労働者に助言を行うこと。 
        この記述を効果的に行うためには、共通の用語を使うことが合理的
       である。このため、こうした共通の用語の基盤をつくるために仕事や
       職業能力についての体系化を図っていくことが望まれる。 

     <2> キャリア・コンサルティング 

        労働者と十分な話し合いの上、労働者の職業経験を把握し、それを
       的確に記述するとともに、その能力を正確に評価した上で、企業のニ
       ーズと労働者の適性・希望・能力を照合し、労働者のキャリア形成の
       方向と能力開発の方針を確定していくこと(キャリア・コンサルティ
       ング)ができるようにするため、その機会を労働者に確保すること。
       その際、人材ニーズや能力開発に関する情報等が労働者に適切に提供
       されるよう、国として情報収集等を行うこと。 


    (ロ) キャリア形成を支援する企業の取組の推進方策について 

     <1> 職務、職階ごとに必要とされる能力の労働者への明示 

        労働者がキャリア形成を考える前提として、企業側がどのような人
       材を求めているか、どのような人材に成長することが期待されている
       かについて知ることができるようにするため、事業主は、職務、職階
       ごとに必要とされる能力を労働者に明示すること。 

     <2> 企業内におけるキャリア形成支援 

        労働者が適性・希望・能力に合った職務で十分に能力を発揮するこ
       とは事業主にとっても望ましいことであるため、事業主はキャリア・
       コンサルティングを実施する等企業内においてキャリア形成支援を行
       うこと。また、行政としても、そのためにキャリア・コンサルティン
       グを行う専門家を養成する等の環境整備や企業に対する情報提供等の
       支援を行うこと。 

     <3> その他のキャリア形成支援 

        主として離転職希望者、中小企業労働者等企業内においてキャリア
       ・コンサルティングを受けることが困難な労働者に対しては、国がキ
       ャリア形成支援を行うことが必要であるが、企業横断的なキャリア形
       成支援については国に加え業界団体等の取組が進展していくことが重
       要である。 


  ロ 若年者のキャリア形成への支援について 

     いわゆるフリーターや早期離転職者が増加しているが、キャリア形成の目
    標が不明確であったり、計画性に欠けたまま離転職を繰り返すことは、本人
    の職業能力の形成に悪影響を及ぼすのみならず、若年労働力が減少する中で
    将来の良質な人材の確保にも影響をもたらすものであるため、若年者のキャ
    リア形成への支援を充実させる必要がある。 


 (2) キャリア形成を促進するための能力開発の推進について 


  イ 職業能力評価制度の拡充整備について 

     これまでの職業能力評価制度としては、国による技能検定制度のほか、民
    間の行う技能審査、社内検定等があるが、これらの制度は、特定の技能・知
    識等を評価するものであった。今後、労働者のキャリア形成を促進するため
    には、特定の技能・知識等の評価制度に加え、労働者がそれまで経験してき
    た職務等を基礎として実践的な職業能力を評価するシステムや、労働者の雇
    用され得る能力の評価を可能とする基準を労使で定立するなど新たな評価制
    度の整備が必要である。 
     その際英米における資格制度をみると、実践的職業能力を評価しようとし
    ていること、評価基準の策定は業種別の労使の参画により決定されること、
    全国統一的な資格制度がほぼ全部の職域を対象として設けられていること等
    の特徴があり、我が国でも参考になる。 
     また、こうした評価制度については、個別企業で整備することは困難であ
    り、業種別労使団体等において企業横断的な評価システムの整備が図られる
    ことが重要である。 
     近年コンピテンシー(ある状況又は職務において高い業績をもたらす類型
    化された行動様式)という概念が注目されているが、コンピテンシーについ
    ても能力評価の中でどのように位置付けられるか検討することが必要である。
     また、民間で行われている特定の技能・知識等を評価する制度についても、
    公正、適正に行われる等労働者、事業主が活用しやすいよう整備を進めてい
    くことが必要である。 


  ロ 自発的能力開発の推進について 

     労働者の希望・適性に沿った個別的なキャリア形成を促進するためには、
    労働者が自ら進んで教育訓練を受ける等の自発的な能力開発が重要となると
    考えられるが、自発的な能力開発が適切に行われるために、能力開発の目的
    や内容・方法についての的確な情報提供や相談等を行っていくことが必要で
    ある。 
     また、自発的な能力開発を推進するために、そのために必要な時間を労働
    者に確保するための教育訓練休暇制度の普及等の環境整備を図る必要がある。
    さらに、平成10年12月に発足した教育訓練給付制度については、幅広い
    労働者のニーズに応えるため指定講座の充実を図ってきており、今後とも自
    発的能力開発に対する費用面の支援制度として効果的な活用を推進する必要
    がある。 


  ハ 事業主等が行う能力開発の推進について 

     これまで、能力開発の実施については、事業主が職階別や専門別の教育訓
    練、更にはOJTを通じて主導してきたが、今後は、こうしたものに加えて
    労働者の個別のキャリア形成を促進する観点から、そのために必要な能力開
    発の機会を確保することが重要であり、例えば事業主の行う職業訓練の中で
    は、労働者の個別のキャリア形成に対応するために選択型の研修や自発的能
    力開発の促進が重要になる。 
     また、事業主に対し、長期的な視点からの能力開発の重要性を訴えるとと
    もに、その実施について効果的な支援を行うことが重要である。 
     さらに、業界団体等における能力開発の取組を促進していくことは、適切
    な教育訓練機会の確保を図る上で効果的である。 


 (3) 多様な教育訓練機会の確保・提供(労働者の態様別の能力開発)について 

  イ ホワイトカラーの職業能力開発の推進について 

     <1> ホワイトカラー労働者については、特に、実践的職業能力が重要で
       あり、キャリア形成を柱とした施策を展開すべきであるが、ホワイト
       カラーのキャリア形成に当たっては、その特性を踏まえた職業能力評
       価システムを整備していくことが重要である。このような観点から、
       ビジネス・キャリア制度の在り方を見直し、更には民間教育訓練機関
       や企業等が実施している多様な試験制度の活用について検討すること
       が必要である。 

     <2> 当面、ビジネス・キャリア制度について、ホワイトカラーの特性を
       踏まえた効果的な活用を図るため、次のような点を念頭に置いて見直
       しを検討することが必要である。 

     ・ 現行制度のレベル、位置付けの明確化 
     ・ 試験問題の作成等に際し、民間教育訓練機関、企業との連携を強化す
      ること 
     ・ 学習単位の大括り化 
     ・ 企業におけるビジネス・キャリア制度の活用を促進すること 

     <3> ホワイトカラーの職業能力開発に当たっては、教育訓練を実施する
       ための受け皿を整備するとともに、産業界のニーズに的確に対応した
       先導的な教育訓練コースを開発・実施していく必要があるが、その際、
       生涯職業能力開発促進センター(アビリティガーデン)で開発した先
       導的な教育訓練コースを、全国の公共職業能力開発施設や民間教育訓
       練機関に、より効果的に伝達する方法について検討することが必要で
       ある。 

     <4> 職業訓練指導員の養成、能力向上等に当たっても、ホワイトカラー
       向けの職業訓練の充実やキャリア・コンサルティングに対応できるよ
       うな体制整備を図ることが必要である。 

     <5> ホワイトカラーの教育訓練手法について、現状では、通学や通信講
       座によるものがその大半を占めているが、今後は、インターネットや
       衛星通信(アビリティガーデンの遠隔教育訓練システムの活用を含む)
       等のIT化の技術的成果を効果的に活用した新たな訓練手法の検討を
       進めることが必要である。 

     <6> 管理職層や専門職層といった、職務遂行に当たり高度な企画力や折
       衝力等を必要とするホワイトカラー層に対する教育訓練、評価につい
       て、ビジネス・キャリア制度の在り方も含め、検討することが必要で
       ある。


  ロ 就業形態の多様化に応じた能力開発について 

     <1> パートタイム労働、在宅就業等、就業形態の多様化が進んでいるが、
       こうした働き方を選好する労働者に対応するため、訓練期間・時間等
       に配慮した特別な訓練コースの設置、インターネットを使用した訓練
       機会の提供等多様な教育訓練機会を整備していくことが必要である。

     <2> 特に、パートタイム労働については、労働時間が短いだけで、能力
       が有効に発揮できる選択が可能な良好な就業形態として位置付けてい
       くよう、企業内労使の取組を支援していくことが重要である。 

     <3> <2> のような企業内労使の取組を支援するため、パートタイム労働
       者について、企業内における通常の労働者との均衡を考慮した処遇に
       係る好事例も参考としながら、キャリア形成の促進や能力開発が推進
       されることが必要である。 



  ハ 障害者等特別な配慮を必要とする人たちに対する能力開発について 

     <1> 障害者に対しては、就職前の職業準備訓練から就職後の職場適応ま
       で一貫した支援が重要であり、職業能力開発施策も関係機関や事業主
       等と連携を密にして進めていくことが重要である。 

     <2> 障害者が他の一般市民と同様に社会の一員として種々の分野で活動
       することができるようにするというノーマライゼーションの観点から、
       一般の公共職業能力開発施設における障害者の受入を一層促進してい
       くことが重要である。また、障害の重度・重複化、高齢化や障害者の
       ニーズの多様化に対応して、障害者職業能力開発校等において障害者
       の特性に応じた訓練の設定を進めるとともに、IT化の技術的成果を
       効果的に活用した新たな訓練手法を検討することが必要である。 

     <3> 障害者が離職せずに技術革新の進展等に対応した必要な技術・技能
       を身に付けられるよう、また、中途障害者の職業転換等に的確に対応
       できるよう在職者訓練を積極的に実施することが必要である。また、
       離転職者の就職促進のための委託訓練の一層の拡充を図ることが必要
       である。 


 (4) 産業に必要な人材の育成について 

    産業のサービス化が進展するとともに、情報通信、医療・福祉、環境等の分
   野の成長が見込まれており、これに対応した人材を育成することが必要になっ
   ている。 

    急速なIT化の進展に伴い、IT分野の職業能力開発については、以下の
    ような推進を図る。 

    (イ) IT分野の職業能力習得支援 

       あらゆる産業分野においてIT化が急速に進展する中で、IT対応能
      力は、あらゆる職種の職業能力の前提となりつつあり、これに対応でき
      ない労働者について雇用不安が惹起されるといったデジタル・ディバイ
      ド(情報格差)が発生しつつあり、こうした雇用不安やデジタル・ディ
      バイドの解消に努めることが必要である。 
       このため、すべての労働者のIT化対応を目指し、公共部門が主体と
      なって、職業能力習得機会の確保を中心として、能力水準に応じた能力
      開発等の支援を行うことが必要である。 
       また、公共職業安定機関とのより緊密な連携を図ることとし、平日日
      中以外を含めた訓練機会を提供する等により、離職者、在職者を含めた
      幅広い労働者のITに係る職業能力習得機会の確保を図ることが必要で
      ある。 

    (ロ) 訓練コースの開発 

       情報通信技術者に求められる知識・技術の高度化や、企業活動への
      ITの浸透に伴いホワイトカラー労働者の業務遂行上のIT活用(例:
      eコマース事業運営)能力が求められるようになっている。このため、
      高度・先端的な教育訓練コースの開発に積極的に取り組むとともに、人
      材不足が高度化対応を図る上での支障とならないよう人材養成を行う。

    (ハ) 訓練方法の開発 

       教育訓練の手法についても、ITを活用した、インターネットによる
      教育訓練ソフトの配信、衛星通信システム、公共職業能力開発施設間の
      仮想ネットワークによる訓練システムといった、新たな訓練システムの
      開発を検討することが必要である。 

    介護分野、環境分野等その他の成長分野においても、公共職業訓練の拡充、
    事業主等の行う教育訓練への支援などにより、必要な人材育成のための職業
    能力開発を推進することが必要である。特に、今後、循環型の経済社会シス
    テムへの円滑な転換に必要な、資源の再利用・再生等を担うリサイクルの分
    野等の人材育成を重視することが必要である。 

    職業訓練コースについては、従来の職種ごとに必要とされる職業能力に加
    え、今後重視される能力、例えば自ら問題を発見し、課題を形成した上で、
    これを解決する能力の開発・向上に資するものを開発し、推進することや、
    体験学習、ボランティア活動等を組み込むなどの多様化を図ることが必要で
    ある。 


 (5) 技能の振興、ものづくり労働者の能力開発について 

  イ ものづくり振興に係る環境整備について 

     今後のものづくりに係る技能を担う人材を育成し、また、技能の振興を図
    るため、次のような施策を推進することが必要である。 
     なお、技能労働者の社会的地位の向上等に資するため、職業能力評価シス
    テムの整備を図るとともに、技能労働者の企業内での処遇改善に向けて労使
    が取り組んでいくことが重要である。 

     <1> 技能競技大会・表彰制度の充実、熟練技能者の社会的活用等、国民各
       層がものづくりや熟練技能の重要性に対する理解を深めるために、こ
       れらの制度を効果的に活用することが必要である。 

     <2> 将来のものづくりを担う若年者を育成するために、基盤的技能を習
       得できるような教育訓練機会を確保することが重要である。 


     <3> 技能労働者の職業生涯にわたる技能形成の促進という観点から、そ
       のキャリアに応じた段階ごとの努力目標を設ける等により、技能振興
       施策の充実を図ることが必要である。 


  ロ 高度熟練技能の維持継承について 

     産業の発展を担う優れた技能の維持・継承を促進するために、次のような
    施策を推進することが必要である。 

     <1> 高度熟練技能者の技能やその習得過程の分析(デジタル化等)を行
       い、その成果を公共職業訓練の基準、カリキュラム等に反映すること
       で、人材の効率的な養成に資することが必要である。 

     <2> 高度熟練技能活用促進事業の選定対象、業種・職種の拡大を図ると
       ともに、高度熟練技能者の社会的な活用を推進することが必要である。

     <3> 高度熟練技能の継承に係る、企業又は地域の事業主団体の自主的な
       取組に対する支援充実を図ることが必要である。 


 (6) 能力開発施策推進の役割分担について 


  イ 公共部門と民間との役割分担について 

     公共部門の役割としては、<1> 民間における教育訓練の振興、<2> ニーズ
    がありながら民間では実施が期待し難い又は実施していない分野等において
    直接職業訓練を実施すること、がある。 
     具体的には、民間における教育訓練の振興として、<1> 民間でニーズに対
    応した教育訓練が実施されるように、情報提供、相談、訓練施設の貸与や指
    導員の派遣等の援助を行うこと、<2> 教育訓練を奨励するための助成金の支
    給、<3> 教育訓練コースの開発や調整、<4> 教育訓練給付制度の活用により
    民間の教育訓練機関における教育訓練機会の確保を図ることが重要であり、
    今後こうした民間教育訓練振興の役割がますます重要になってこよう。
     また、公共部門は、民間では実施が期待し難い分野として、多額の設備投
    資を要する先端的な分野のほか、セーフティネットとして最低限の教育訓練
    機会を確保するため、失業者等に対する無料の訓練や中小企業の在職者が受
    講できる低料金の訓練に係る分野、その他ニーズがありながらも民間で実施
    し難い又はしていない分野等について、直接職業訓練を実施していく必要が
    あると考えられる。 
     そうした役割を果たしていく上で、職業能力開発に関する情報・ニーズを
    的確に把握することが大前提となる。ニーズの把握の方法としては、求人動
    向や各種調査を通じて把握するとともに、産学官の連携による情報交換を活
    かしていくこと等が必要である。 
     また、事業主団体等による企業横断的な能力開発の取組を活かしていくこ
    とも必要である。 


  ロ 国と都道府県の役割分担について 

     国と都道府県はそれぞれの性格に応じて職業訓練を実施していくことが必
    要である。例えば、国は、離転職者等に対して、雇用対策として一定の水準
    の教育訓練機会を提供する役割や高度・先導的な教育訓練機会を開発し普及
    させる役割が重要であり、都道府県は、例えば、地域のコミュニティ・カレ
    ッジを志向することや、産業政策と一体となって、雇用創出に係る職業能力
    開発を行う等地域のニーズに応じて職業能力開発を実施することが基本とな
    ろう。 
     また、両者の役割分担を図りつつも、他方で国の職業能力開発施策と都道
    府県の職業能力開発施策との連携を図り、全体として公共部門としての役割
    を果たせるよう調整していくことが今後とも重要である。 

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