第5章 ものづくり基盤技術に係る学習の振興に関する事項 第1節 学校教育におけるものづくり教育の充実 1 初等中等教育におけるものづくり教育の充実 (1)小・中・高等学校等におけるものづくりに関する体験的な学習等の充実 自ら学び、自ら考え、自ら行動し、問題を解決する力などの「生きる力」 を育成することを基本的なねらいとした新しい学習指導要領に基づき、関係 教科の中にものづくりなどの体験的な学習を積極的に取り入れるとともに、 新たに創設された「総合的な学習の時間」において、各学校の創意工夫を生 かした教育活動の中で、ものづくりなどの体験的な学習の推進を図る。 また、ものづくりを実際に体験することや、産業や地域社会に関する学習 を通じて、我が国の産業を支えているものづくり基盤技術や、これを支える 技術者や技能者の社会的な役割の重要性を理解させ、これらを尊重する態度 の育成を図る。 こうした学習の実施に当たっては、学校と地域や産業界との連携を図り、 地域の熟練ものづくり労働者などの教育力を積極的に活用するとともに、地 域の製造現場等における職場見学の実施などの取組を図る。 (2)高等学校における専門教育の充実 工業高校を始めとする専門高校は、我が国のものづくり基盤産業の担い手 となる技術者を養成するという大きな役割を担っている。 専門高校における工業教育等の充実を図るため、電子技術による生産の自 動化や情報通信技術の高度化などの技術革新の進展等に対応した教育内容の 改善及び充実を図るとともに、産業教育担当の教員に対する各種の研修機会 の充実、優れた技能及び知識を有する熟練ものづくり労働者等の積極的な活 用等を進めるほか、産業教育に係る実験・実習の施設・設備について、製造 現場における技術の進展等に対応した実習が可能となるよう整備を図る。 また、産業の現場における実際的な知識や技術に触れることにより学習意 欲を喚起し、主体的な職業選択の能力や職業意識の育成などを図ることがで きる高校生のインターンシップの積極的な推進を図る。 さらに、専門高校卒業生の継続教育の場を確保するため、大学等高等教育 機関への受入れの円滑化を図るとともに、催しもの等の開催により、広く国 民の産業教育及びものづくり教育への理解促進に努める。 2 高等教育におけるものづくり教育の充実 (1)ものづくりを中心に据えた実践的な教育の充実 大学や高等専門学校などの高等教育機関において、ものづくりを教育の中 に取り入れるなどにより、より実践的な教育を行っていく必要が高まってい る。このため、学生が自らテーマを選んで、講師として現場のものづくりに 係わる技術者等の指導を受けながら、実践的なものづくりに関する調査研究 を行う「創造教育プログラム」の開発・実施を行う。また、企業と大学の学 部や大学院が共同で教育内容や方法を開発することなどを通じて、実践的な 人材の養成を行っていくため、「産学共同教育プログラム」の開発・実施を 行うほか、ロボット制作などの課題に取り組むことにより、学生の主体的な 学習を促す問題解決型学習の推進を図る。 さらに、ものづくりを中心に実践的な教育を行う高等専門学校等について、 今後の時代の変化等を踏まえ、その在り方を検討していく。 そのほか、学生が在学中に製造業メーカー等において自らの専攻、キャリ アに関連した就業体験を行うインターンシップの推進を図る。 (2)大学等における理工系教育充実のための環境整備 技術の高度化に対応して教育内容の高度化を図っていくためには、最先端 の教育設備を整備していく必要がある。このため、学生が自らの考えと発想 により、ものづくりを通じて問題解決の道筋を模索し、能力を高めていける よう、実験・実習工場等の利活用の推進を図るとともに、学生が自主的に企 画、設計し、試作・実証・評価するための実験基盤施設設備を整備していく など、大学等における理工系教育充実のための環境整備を図っていく必要が ある。 (3)ものづくり労働者に対する技術のリフレッシュ教育の推進 技術の複雑化・高度化に伴い、今後は、現場のものづくり労働者が必要に 応じ、高等教育機関において学習を行い、その成果を活用して更に活躍する という高等教育機関と産業界等との往復型社会に転換していくことが予想さ れる。 このため、現場のものづくり労働者にとって、利用しやすいよう高等教育 システムの弾力化を図ることとし、社会人特別選抜の導入を進めるほか、夜 間大学院、昼夜開講制大学院の充実に努めるとともに、学生のニーズも踏ま えつつ、大学院のいわゆるサテライト教室(職業人を対象とした本校キャン パス以外の教育の場)などの環境整備を図っていく必要がある。 (4)技術者教育の外部認定制度(アクレディテーションシステム)の導入 大学等高等教育機関における技術者教育の内容を審査し、一定水準以上の プログラムを認定する制度(アクレディテーションシステム)を導入するこ とにより、大学等の技術者教育の充実向上を目指していく。さらに、この技 術者教育の認定制度を国際的な共通標準に準拠させることにより、我が国の 技術者教育の国際的な通用性の担保を図る。また、本制度と技術士資格との 整合性、一貫性を確保し、質の高い技術者の育成を図る。 第2節 ものづくりに係る生涯学習の振興 1 専修学校教育を通じたものづくり教育・学習の振興 社会の要請に即応した実践的な職業教育や専門的な技術教育が望まれる専修 学校については、ものづくり基盤技術に係る教育水準の維持向上を図るため、 その特性を生かした着実な発展が望まれるとともに、産業界との連携を図る必 要がある。また、専修学校が有する教育機能を生かした体験的な学習機会の提 供等により、子どもたちのものづくりに対する興味・関心やものづくりに関わ る職業に対する意識の向上を図る。 さらに、ものづくりに関してより高い能力や起業家精神・経営マインドを有 し、社会が求める高度職業人の育成を図るため、産学連携による専修学校教育 の高度化及び起業家育成事業等、先導的な教育を展開する。 2 一般市民や若年層に対する普及啓発 ものづくりの楽しさや重要性については、一般市民や若年層に対して普及啓 発を図ることが必要である。このため、地域において、様々な企業、国立試験 研究機関等の協力を得て、工場や事業所、研究所等の見学や体験学習の機会の 積極的な提供や、ものづくりの現場におけるこうした取組について、子どもた ちやその家族等への広報・周知を図るための環境整備を図る。 また、ものづくり教育・学習の振興に当たっては、専門高校や大学等が有す る教育・研究機能を活用することも重要である。このため、専門高校等の開放 日を設け、様々な体験活動やものづくり教室等の多様な学習機会を提供すると ともに、大学公開講座や大学等地域開放特別事業(大学子ども開放プラン)等 の活用を図る。さらに、テレビ等の活用によって広く大学教育の機会を提供し ている放送大学の活用等によって、広く国民に対し体系的かつ継続的に高度な ものづくり教育・学習の機会の提供を図る。 3 公民館、博物館等における多様な事業の展開 博物館・科学館・美術館における参加体験型の展示の開発やハンズ・オン活 動(見て、触って、試して、考える)、公民館や科学館、教室開放における科 学実験教室、遊びを通じて先端科学技術に親しむロボット技術を競うイベント 等の体験型イベントの積極的な開催・支援の推進に努める。また、地域の商店 街や地場産業等における子どもたちの商業活動体験の充実のための環境整備に 努める。 4 ものづくり学習の成果の評価 青少年・成人が習得した知識や技能の水準を審査・証明することは、その水 準を高める上で有効である。 このため、引き続き技能審査認定制度等を通じてものづくり学習を奨励し、 ものづくり学習を始めとする生涯学習の成果の多元的な評価の拡充に努める。 5 文化活動の機会の提供 子どもたちを心豊かに育む環境を醸成していく観点から、将来の文化立国を 担う子どもたちに対し、美術品や文化財に親しむとともにものづくりの楽しさ、 素晴らしさ等を学ぶことのできる機会の提供に努める。