第1章 ものづくり基盤技術の振興に関する基本的な方針 ものづくり基盤産業は、我が国の生命線とも言うべき経済力の源泉であり、それを 支えているのは「人」である。また、勤労を尊ぶ精神など、ものづくりに係る社会全 体の意識は、日本のものづくりを支えていると考えられることから、こうしたものを 大切に育てていく必要がある。さらに、ものづくりを支えている人材が有する技能を 適切に継承するためのシステム作り、従来の日本のものづくりの強みに情報技術の活 用を取り入れた新しい経営モデルの創出、長期的な発展を目指した企業行動の形成、 基礎研究分野における独創力の強化、規制緩和等の構造改革等によるものづくり基盤 産業の事業環境の整備などを促すべきとの指摘もされているところである。 上記を踏まえ、我が国の国民経済が国の基幹的な産業である製造業の発展を通じて 今後とも健全に発展していくためには、ものづくり基盤技術に関する能力を尊重する 社会的気運を醸成しつつ、ものづくり基盤技術の積極的な振興を図ることが不可欠で ある。 このため、ものづくりに係る技能の尊重気運の醸成、ものづくり労働者の職業能力 の開発及び向上、ものづくりに関する能力の適正な評価等により、ものづくり基盤技 術の継承を図るとともに、空洞化が懸念されている産業集積については、ものづくり 事業者の技術の高度化や新分野への進出の支援等により、その維持活性化を図ってい くことが必要である。また、新しいものづくり基盤産業を積極的に創出するため、研 究開発の推進や新規創業の支援等を行うことが必要である。さらに、ものづくり基盤 技術の振興のためには、ものづくり事業者の大部分を占める中小企業の育成が重要で ある。廃業率が開業率を上回っていること、中小企業の多様性の増大等といった近年 の中小企業を巡る状況を踏まえ、経営革新及び創業の促進、経営基盤の強化等に重点 をおいた中小企業支援を行うことが必要である。その他、青少年のものづくり基盤技 術に対する関心と理解を深め、ものづくり基盤技術を支える創造性に富んだ人材の育 成を図るため、ものづくりに関する学校教育の充実を図るとともにものづくりに関す る生涯学習の振興を行う必要がある。 従って、今後、ものづくり基盤技術の振興に関して、後述のようなものづくり基盤 技術に関する研究開発の推進等、ものづくり事業者と大学等の連携、失業の予防その 他雇用の安定、職業能力の開発及び向上、ものづくりに関する能力の適正な評価、職 場環境の整備改善等、産業集積の推進等、中小企業の育成、学校教育におけるものづ くり教育の充実、ものづくりに係る生涯学習の振興等の施策を総合的かつ計画的に推 進する。