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別添

 調査概要


1 調査方法


(1)調査対象施設

   調査対象施設は、平成9年9月末現在の厚生省への報告値を参考に、煤煙中に高
  濃度のダイオキシン類が検出された施設のうち処理能力50トン/日程度以上のも
  のとした。なお、煤煙中に低濃度のダイオキシン類が検出された施設も併せて調
  査した。


(2)調査対象者

   平成10年度の報告書でIII群及びIV群に該当する者(表1及び表2参照)及び
  対照群として一部事務作業従事者を含め、一施設当たり20名程度を上限として調
  査対象者を募った。


(3)調査内容

  1)医師による問診等

    医師による問診(既往歴、現病歴、自覚症状等)を行い、身長、体重、体脂
   肪率、血圧、脈拍等を調査した。

  2)作業歴調査

    採血を行う際に作業歴聞き取り調査票により、過去の職歴、焼却施設におけ
   る作業歴、勤務形態、保護具の使用実態、作業衣交換、作業衣洗濯、作業後入
   浴等の項目に関して聴取した。

  3)アンケートによる健康調査

    生活環境や食生活、生活習慣等について調べるもので、健康調査票により、
   アンケート調査を行った。アンケート用紙は事前に渡して自己記入とし、採血
   時に回収した。その際、未記入部分については、調査員が聞き取り補充した。

  4)皮膚科医師による皮膚視診

    皮膚科医師により皮膚視診を行った。また予め、調査研究委員会の皮膚視診
   担当の委員と、診察に当たる医師とが打ち合わせを行い、診断の標準化を図っ
   た。

  5)血液検査

    血液中のダイオキシン類濃度の測定を行うとともに、血液生化学検査を行っ
   た。

  6)作業歴に基づく調査対象者の分類

    対象者が主として作業等に従事していた場所等を基準にした表1により分類
   を行った。


表1 作業場所別分類による対象者の分類
A 管理棟内で作業に従事する者
 0 破砕施設棟または焼却施設棟内に立ち入らない者
 1 時に焼却施設棟内作業に従事するが焼却炉関連設備*内作業の支援は行
  わない者
 2 時に焼却炉関連設備内作業の支援を行う者
B プラットホームに立ち入りごみ搬入作業に従事する者
C バンカや集積場で灰固化物または鉄分・不燃物の積載作業に従事する者
D 破砕施設棟または焼却施設棟内で作業に従事する者
 0 破砕施設棟またはクレーン操作室内作業のみに従事する者
 1 焼却施設棟内作業に従事するが焼却炉関連設備内作業には従事しない者
 2 焼却炉関連設備内作業に従事する者**
 *. 焼却炉、電気集じん機、排ガス洗浄装置等を示す。
 **.D2以外で焼却炉関連設備内の作業に従事した者はない。


  次に、表1を基に、清掃作業従事者を表2の4群に分類した。
  今回、調査対象とした焼却従事者はIII群及びIV群の受診希望者であるが、一部
 の焼却施設ではI群の受診希望者も対象とした。


表2 焼却施設関連度分類別による分類
対応する作業場所別分類カテゴリー
I群 A0, B, C, D0
II群 A1
III群 A2, D1
IV群 D2
 


2 調査結果のまとめ

(1)各施設の調査対象者

   アンケート、健康調査を終了した調査対象者数は197名、作業歴調査を終了し
  た者は196名、ダイオキシン類の測定可能であった者は194名であった。調査対象
  12施設の対象者のうち作業歴調査に参加した者(調査対象者)を焼却施設関連度
  で分類すると表3のとおりであった。


表3 調査対象者の分類
施設No. 分 類(人)
I II III IV その他 全体
1101
1102
1103
1104
1105
1106
1107
1108
1109
1110
1111
1112
0   
4(2)
0   
1   
2(1)
2(1)
0   
0   
1   
1   
2   
1(1)
0   
0   
1   
3[1]
0   
0   
0   
0   
0   
0   
0   
0   
3   
0   
1   
5   
5   
1   
0   
0   
2   
4[2]
1   
0   
17
16
18
9
12
11
19
19
11
13
3
8
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
20       
20       
20       
18       
19       
14       
19       
20       
14       
18       
6       
9       
全体 14(5) 4[1] 22[2] 156 1 197(5) [3]
( )内は女性で内数
[ ]内は血液中ダイオキシン類濃度分析ができなかった者で内数

   なお、各施設の調査対象者の合計人数は197名、(男性192名、女性5名)で、
  平均年齢は45.1歳(男性45.3歳、女性40.0歳)であった。


(2)血液中ダイオキシン類の異性体別濃度

   表4に血液中ダイオキシン類の異性体濃度を示した。TEQ値に未換算での各異性
  体濃度はOCDDが極めて高値を示した。一方、OCDDを除いた血液中ダイオキシン類
  の異性体濃度はD123678、D1234678が比較的高値を示す傾向がある。


表4 血液中ダイオキシン類の異性体別濃度(pg/g脂肪)(n=194)
  平均値 中央値 標準偏差 最小値 最大値
PCDD類          
D2378 1.0 0.8 0.7 0.2 4.7
D12378 5.8 5.1 3.9 0.5 24.9
D123478 2.2 1.9 2.0 0.2 23.1
D123678 28.1 23.1 17.0 6.3 98.0
D123789 3.7 2.9 2.8 0.3 15.2
D1234678 18.6 16.1 12.9 2.7 92.2
OCDD 300.2 196.4 345.8 5.0 2852.7
PCDF類          
F2378 0.8 0.6 0.5 0.1 5.0
F12378 0.8 0.5 0.6 0.1 5.0
F23478 11.4 10.0 5.5 0.5 29.3
F123478 5.5 4.8 3.3 0.5 18.9
F123678 6.6 5.5 4.1 0.8 26.8
F123789 0.6 0.5 0.3 0.0 2.4
F234678 3.9 3.0 3.6 0.0 29.8
F1234678 7.9 5.5 8.1 0.5 60.7
F1234789 0.8 0.5 0.7 0.2 7.0
OCDF 3.4 5.0 2.0 0.3 8.6
コプラナーPCB          
PCB77 11.4 7.9 11.5 1.1 103.5
PCB126 69.0 51.6 56.5 2.7 351.8
PCB169 61.7 51.2 42.7 6.2 390.4
           
DTEQ 10.4 9.4 5.6 3.2 30.7
FTEQ 7.6 6.9 3.5 1.4 19.2
DFTEQ 18.0 16.1 8.3 4.8 48.2
PCBTEQ 7.5 5.6 5.9 0.4 36.3
TOTALTEQ 25.5 22.7 12.6 5.2 71.3
 


(3)ダイオキシン類濃度


   対象となった12施設の労働者の血液中ダイオキシン類濃度をみると、全体のダ
  イオキシン類血中濃度は25.5±12.6pg−TEQ/g脂肪(最小5.2〜最大71.3)であ
  った。これは日本人のバックグラウンド値とほぼ同じであり、従来の報告による
  と何らかの健康影響が生じるレベルにはないものである。また、焼却施設内作業
  のI群、II群、III群及びIV群の血液中ダイオキシン類濃度は表5のとおりであり、
  IV群が他の3群よりも高いという傾向は認められなかった。


表5 焼却施設関連度分類群別血液中ダイオキシン類濃度
人 数 平均値
(pg−TEQ/g脂肪)
標準偏差
I 14 19.99 7.88
II 3 26.72 9.92
III 20 25.51 14.04
IV 156 25.99 12.74
合計 193 25.51 12.58
 


(4)血液中ダイオキシン類濃度と健康影響との関係

   対象となった労働者の血液中ダイオキシン類濃度は、日本人のバックグラウン
  ド値とほぼ同じであり、何らかの健康影響が生じるレベルにはないと思われるが、
  統計解析を行ったところ、次のような結果が得られた。

  1)血液中ダイオキシン類濃度と血中鉛及び水銀濃度間に有意な相関(P<0.05)
   が認められた。

  2)年齢と血液中ダイオキシン類濃度、血液中DF濃度及び血液中Co−PCB濃度は
   すべて正の相関(P<0.01)が認められた。体脂肪率との間では有意な相関は
   認められない。

  3)生化学検査と血液中ダイオキシン類濃度の相関をみると、血液中ダイオキシ
   ン類濃度とグリコHbA1C(P<0.01)の間で有意な相関、及び血液中Co−PCB濃度
   とγ−GTP(P<0.01)、ロイシンアミノペプチターゼ(P<0.05)、アミラー
   ゼ(P<0.05)との間で弱いながら有意な相関が認められた。

  4)生活習慣との関係では、現在喫煙している者に有意な相関が認められず、ま
   た飲酒者と血中ダイオキシン類濃度の間にも一定の傾向は認められなかった。


(5)皮膚所見結果

   調査対象者の皮膚視診の結果は、通常の同年齢の一般人対照群でも見られるよ
  うな疾患は認められたが、ダイオキシン類へのばく露によると疑われる所見は認
  められなかった。



3 まとめ

  平成11年度調査調査対象施設は、平成9年9月末現在の厚生省への報告値を参考に、
 煤煙中に高濃度のダイオキシン類が検出された施設のうち処理能力50トン/日程度
 以上のものとしたが、対象となった12施設作業者の血液中ダイオキシン類濃度と健
 康状態に関する調査結果をみると、全体のダイオキシン類血中濃度は25.5±12.6pg
 −TEQ/g脂肪(最小5.2〜最大71.3)であった。これは日本人のバックグラウンド
 値とほぼ同じであり、従来の報告によると何らかの健康影響が生じるレベルにはな
 いものである。


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