トップページ
留意すべき事項等の内容の概要
<コース等で区分した雇用管理とは>
1 コース等で区分した雇用管理とは
雇用管理の方法として、いわゆる「コース別雇用管理」を導入している事業場がみ
られる。「コース別雇用管理」とは、企画的業務や定型的業務等の業務内容や、転居
を伴う転勤の有無等によって幾つかのコースを設定して、コースごとに異なる配置・
昇進、教育訓練等の雇用管理を行うシステムをいう。典型的には、基幹的業務等の総
合的な判断を要する業務に従事し転居を伴う転勤のある「総合職」や、主に定型的業
務に従事し転居を伴う転勤のない「一般職」等のコースを設定した上で行う雇用管理
が挙げられる。
最近では、一般職群や専門職群等一定の業務内容や専門性等によってコース類似の
複数の雇用管理グループを形成し、そのグループごとに賃金、配置、昇進等の面で異
なった雇用管理を行うもの等、典型的な「コース別雇用管理」に類似したものも見受
けられるところである。このため、留意事項においては、典型的な「コース別雇用管
理」と併せ、これに類似した雇用管理を含め、「コース等で区分した雇用管理」とし
て広く対象としている。
2 コース別雇用管理をめぐる動き
「コース別雇用管理」は、均等法施行前後に金融機関等の大企業を中心に導入され
たものである。「コース別雇用管理」については、その後も大企業を中心に導入が進
み、最近においては中堅企業へも拡大がみられるところである。
コース別雇用管理は、企業における女性登用の一つの契機となったと評価できる一
方、その運用において男女異なる取扱いがなされたり、例えば、総合職のほとんどを
男性が占め、一般職を女性のみとするなど、事実上の男女別の雇用管理として機能し
ている事例も多くみられるところである。また、コースごとの職務内容とそれに対す
る評価や処遇の在り方等が必ずしも実態にそぐわなくなっていることから現に必要な
見直しを行っている企業もみられるところである。
3 均等法等の趣旨を踏まえた雇用管理の在り方
均等法は、募集・採用から退職に至るすべての段階において、男女均等な取扱いを
求めており、コース等で区分した雇用管理を行う場合においては、その趣旨に沿った
雇用管理を徹底することが求められる。
また、平成9年の均等法の改正により、男女労働者の間に事実上生じている格差に
着目し、このような格差の解消を目指して事業主が行う積極的な取組(ポジティブ・
アクション)について国が援助を行う旨の規定が新たに均等法上に設けられ、平成1
1年4月1日から施行されているところであり、コース等で区分した雇用管理を行う
場合においても、女性労働者の能力の積極的な活用に向けポジティブ・アクションに
取り組むこと等が望まれる。
今回の留意事項は、こうした観点から、コース等で区分した雇用管理を行う場合に
おいて、事業主が留意すべき事項についてまとめたものである。
<留意事項の概要>
1 均等法に違反しないために留意すべき事項
次に掲げる事項については、それを行うと明らかに均等法に違反することとなる。
・ 一方の性の労働者のみを一定のコース等に分けるといった制度運営を行うこと。
・ 形式的には男女双方に開かれた制度となっているが、実際の運用において男女
異なる取扱いを行うこと。
・ コース等の各区分における募集、採用について、男女別で選考基準や採用基準
に差を設けた上で行うこと。
・ コース等の各区分における配置、昇進、教育訓練等の雇用管理について、男女
別で運用基準に差を設けた上で行うこと。
・ コース等で区分した雇用管理の導入、変更又は廃止に当たって既存の労働者を
コース等の各区分に分ける際に、性別を理由に一律に分けたり、一定のコース等
に分ける場合に女性に対してのみ特別な要件を課す等、男女で異なる取扱いをす
ること。
2 コース等で区分した雇用管理が実質的な男女別の雇用管理とならず適正かつ円
滑に行われるようにするために留意すべき事項
(1) コース等で区分した雇用管理による人事制度の適正化、明確化のために留意す
べき事項
実際の運用において、コース等で区分した雇用管理が実質的に性別による雇用
管理とならないよう、あらかじめコース等で区分して雇用管理を行う必要性や処
遇の違いの合理性等について十分に検討するなどして、労働者の意欲、能力、適
性や成果等に基づいて処遇するという本来の趣旨に沿った雇用管理とすることが
必要であること。
(2) コース等の区分の新設、変更又は廃止に当たって留意すべき事項
コース等で区分した雇用管理の導入、変更又は廃止に当たっては、男女ともに
労働者の能力や成果等を十分評価し、それに見合った賃金等の処遇をすることが
必要であり、例えば、処遇を変更する場合においては、その変更内容や必要性を
十分に検討するとともに、労働組合及び対象となる労働者本人に対しても十分に
説明した上で慎重に行うといったこと等が考えられること。
3 均等法等に照らし女性の能力発揮のために行うことが望ましい事項
(1) コース等で区分した雇用管理による人事制度の適正化、明確化のために行う
ことが望ましい事項
イ コース等により区分する基準において、例えば全国転勤を必要とする等、
家事・育児の負担等を考慮すると女性が事実上満たしにくいものについては
、その必要性等について十分検討することが望ましいこと。
ロ 制度の運用に際しては、例えば、一般職についても相応の経験や能力等を
要する業務に従事させる場合には、適切に職業訓練等を行うことにより円滑
に業務が遂行されるよう努めることや、労働者の意欲、能力、適性等に応じ
総合職への転換を積極的に進める等により経験、能力を十分に評価した処遇
が行われるよう配慮することなど、各コース等の区分について、労働者の就
業意欲を失わせず適正な処遇を維持するよう努めることが望ましいこと。
(2) 労働者をコース等に分ける際に行うことが望ましい事項
コース等で区分した雇用管理を導入、変更又は廃止する際に既存の労働者を
コース等の区分に分けるに当たっては、従来の職種のみにとらわれることなく
、その時点での労働者の能力を再度評価し、その意思を確認した上で行うこと
が望ましいこと。
(3) 女性の積極的な活用のための取組を行うこと
例えば、「総合職」の女性が相当程度少ない状況である場合に、「総合職」
の採用に当たって女性を積極的に選考すること等により女性の活用を図ること
や、研修等を通じて採用担当者に性別にとらわれず意欲、能力や適性等に応じ
た採用を行うという方針の徹底を図る等の対策を講ずることが望ましいこと。
(4) コース等の区分間の転換を認める制度を柔軟に設定すること
転換制度を設けるなど、適当な時点で労働者が自らの所属するコース等の区
分の見直しをすることができるようにすることも一つの選択肢であること。
(5) 女性の能力発揮に向けての環境の整備を図ること
育児・介護休業法に基づいた職業生活と家庭生活の両立支援制度を充実させ
ることなど、女性の能力発揮に向けての環境の整備を図ることが望ましいこと。
TOP
トップページ