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家内労働法の概要等


 1 家内労働法制定の経緯

   家内労働法は、家内労働における契約の不明確性、低賃金、長時間労働、劣悪・
  非衛生的な作業環境等を背景に、形式的には自営業者である家内労働者が経済実態
  上は委託者に従属しており、これが使用者・労働者間の関係に類似している実情を
  捉え、これを労働者に準じて保護すべく、昭和45年に制定されたものである。ま
  た、同法の制定に際しては、労働基準法適用事業との間の競争条件の不平等が発生
  し、法による条件維持が困難となっていることも念頭に置かれていたところである。


 2 家内労働法の概要

  @ 対象(第2条)

   ・ 委託者から物品の提供を受け、これを原材料とする物品の製造、加工等の作
    業を行うものが対象。

  A 家内労働手帳(委託条件の文書明示)(第3条)

   ・ 委託者は、家内労働者に家内労働手帳を交付し、委託等のつど、所定の委託
    条件を記入すること。

  B 就業時間(第4条)

   ・ 委託者は、周辺地域の同種・類似の労働者の通常労働時間(注.実際の平均
    的な労働時間)を超えて、家内労働者が業務に従事することとなるような委託
    をしないこと(努力義務)。

   ・ 家内労働者は、このような委託を受けることがないようにすること(努力義
    務)。

  C 委託の打ち切りの予告(第5条)

   ・ 6月を超えて継続的に同一の家内労働者に委託している委託者は、委託を打
    ち切ろうとするときは、遅滞なく当該家内労働者に予告すること(努力義務)。

  D 工賃の支払い(第6条)

   ・ 工賃は、通貨で、その全額を、物品を受領した日から起算して1月以内に支
    払うこと。

  E 工賃の支払い場所(第7条)

   ・ 委託者は、原則として、工賃の支払及び物品の受け渡しを、家内労働者が業
    務に従事する場所において行うこと(努力義務)。

  F 最低工賃(第8条等)

   ・ 労働大臣又は都道府県労働基準局長は、一定の地域内(注.全国でも可)に
    おいて一定の業務に従事する工賃の低廉な家内労働者の労働条件を改善するた
    め必要があると認めるときは、最低工賃を決定することができること。
   ・ 最低工賃額は、同一地域の同種・類似の労働者に適用される最低賃金(決定
    されていない場合には賃金)との均衡を考慮して定められなければならないこ
    と。
   ・ 委託者は、最低工賃の適用を受ける家内労働者に対し、最低工賃額以上の工
    賃を支払わなければならないこと。

   ・ D〜Fに違反する工賃の支払いを定める契約は、その部分について無効とし、
    家内労働法の定める基準によること。

  G 安全及び衛生(第17条等)

   ・ 委託者は、設備、原材料等を家内労働者に譲渡、貸与、提供するときは、省
    令で定めるところにより必要な措置を講じなければならないこと。
   ・ 家内労働者は、省令で定めるところにより、必要な措置を講じなければなら
    ないこと。
   ・ 労働基準監督署長等は、委託者又は家内労働者が上記の措置を講じないとき
    は、委託・受託を禁止し、設備、原材料等の使用の停止その他必要な措置をと
    ることができる。

  H 届出(第26条)

   ・ 委託者は、家内労働者の氏名、業務の内容その他必要な事項を都道府県労働
    基準局長に届け出なければならない。(省令において、委託状況届、家内労働
    死傷病届を規定)

  I 帳簿の備付け(第27条)

   ・ 委託者は、家内労働者の氏名、工賃の額その他の事項を記入した帳簿を備え
    付けておかなければならない。(省令において、3年間保存を規定。)

  J 報告等(第28条)

   ・ 労働大臣等は、委託者又は家内労働者に、工賃に関する事項その他必要な報
    告をさせ、又は出頭を命ずることができる。

  K 申告(第32条)

   ・ 委託者に法律・命令に違反する事実がある場合には、家内労働者等は、その
    事実を労働基準監督官等に申告することができる。

  L 罰則(第33条等)

   ・ 上記のA、D、F、G、H、I、J の違反についての罰則。
   ・ 代理人や使用人を行為者として罰するほか、法人又は個人も処罰。


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