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関係者からのヒアリング概要−ガイドライン(案)について−

                           (平成12年1月12日実施)


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│在宅ワーカーYさん(在宅ワーク歴2年)│
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 (1) 職種

    データ入力、ホームページ作成、Webコンテンツ用原稿作成、テープリライト


 (2) ガイドライン(案)に対する意見、感想

   ・ 契約書を使うことにより、賃金の未払いの防止になるメリットはある。
   ・ 仕事依頼の電話を受けたら、契約内容についてやり取りをする時間はなく
    、この値段でと言われたら受けざるを得ない、断ると仕事が来なくなる、とい
    うのが実態。
   ・ 成果物の評価については、データ入力だと間違えた文字数などで評価は可能
    であるが、ホームページの作成などデザイン的なものは主観が入る部分なので
    、一生懸命時間をかけて作ってもクライアントから駄目と言われればおしまい
    。その評価をどう考えるか迷っている。
   ・ 発注者は報酬の金額から言うとパート・アルバイトを雇う感覚なのに、モデ
    ル契約様式(案)では、成果物の瑕疵の取扱など責任は一事業主として押しつけ
    られるのではないか心配がある。
   ・ トラブルは初心者に多い。モデル契約様式(案)の損害賠償や費用負担の欄を
    みるとそれだけで驚いてしまうが、やはり自分は事業主なのだと認識した。初
    心者に周知徹底してこれを使えるようにできるかが問題である。
   ・ 今は在宅ワーカーが多いので、契約を結ばなくても、安い単価で仕事を発注
    しようとする業者が出てくるのではとの心配がある。
   ・ 年末調整対策として、発注者は年が明けたら、「あなた宛に去年はいくら支
    払いました」という支払調書を出すようにしてほしい。
   ・ 報酬額を決定する際は、最低賃金を考慮するようにしてほしい。また、単価
    相場がどの位か周知するようにしてほしい。
   ・ 後でトラブルにならないよう契約書を交わす趣旨は分かるが、主婦の感覚か
   らすれば、契約や損害賠償などの話になると迷ってしまう。
   ・ 契約書を交付してくれる所は今もある。守秘義務の欄を設けているものは多
    いが、遅延損害について大きな欄を設けているのは見たことがない。モデル契
    約様式のような契約であればちゃんと中身を確認して契約する。
   ・ 従来から付き合いのあるクライアントとは信頼関係があり、支払もきちんと
    されているので、口約束で受けた仕事はそのまま受けていくと思う。



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│在宅ワーカーKさん(在宅ワーク歴2年)│
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 (1) 職種

   ・ 在宅ワーカー登録会社と在宅ワーカーの間で、作業を取りまとめるリーダー
    的仕事
    (主にシステム開発、ホームページ作成、大人数の入力等)
   ・ ライティング、テープ起こし、業務システムの設計


 (2) ガイドライン(案)に対する意見、感想

   ・ 在宅ワークは仕事が納期に間に合えばよいのであって、極端な話24時間いつ
    でも働ける。
   ・ 契約書は登録会社と交わすが、契約書に書かれていない事態が発生した時に
    どうするか問題。
   ・ ビジネススタンスが問題。極論を言えば、何時間かかろうと、どんなに一生
    懸命やろうと、関係なく、成果物さえちゃんと出してくればそれでよい。
   ・ 本筋として、きっちりした契約を結ぶべきと思う。契約は、相手から攻めら
    れる材料であると同時に、在宅ワーカー側も自分を守る材料になる。一方的な
    契約を押しつけてきたとしても、本人の折衝能力によりワーカーに有利にする
    こともできる。
   ・ 現状としては、希望者が多すぎて単価が下がっており、無理しても受ける人
    以外の契約や、正論を言う人は受注を外されてしまうという問題がある。
   ・ 登録会社では契約書は既にあるので、契約を守らなかった時の罰則などいか
    に守らせるかを考えてほしい。
   ・ トラブル防止のためメール、FAXなど必ず紙を証拠として残しておく。



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│在宅ワーカーKさん(在宅ワーク歴7年)│
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 (1) 職種

   ・  ホームページ作成


 (2)  ガイドライン(案)に対する意見、感想

   ・ 在宅ワーカーも打ち合わせ等で外に行くことも多いので、一時保育制度が望
    まれる。
   ・ 発注者側の企業と在宅ワーカー間で、調整する能力がある仲介者が存在する
    とありがたい。
   ・ 仕事をするに当たって、発注者側の管理者は誰か、トラブルが生じた時の窓
    口が明確になるようにしてほしい。
   ・ 過去の契約書をみても、納期が遅れた場合の費用負担や補償が書かれたもの
    はなかった。アルバイト雇用に似ている。



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│仲介業者  有限会社O│  
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 (1) 会社の概要等

   ・ 企画制作会社。子育て中の女性向けに在宅ワークを中心とした人材バンク事
    業を実施(労働者4名、登録在宅ワーカー721名)
   ・ 在宅ワーカーに発注する仕事:ホームページコンテンツ制作、管理、DTP、
    ライティング、データベース制作、テープ起こし、翻訳等

 (2) ガイドライン(案)に対する意見、感想
   ・ 外注スタッフを使っているので、トラブル回避のため契約書が一番必要。
   ・ 報酬は振込手数料を差し引いた額で振り込む。
   ・ 諸経費の取扱では、宅配等通信でまかなえないものの料金や、最低限必要な
    書籍等の資料購入費は当社負担。バージョンアップ費用はケースバイケース。
    在宅ワーカーを選ぶ段階でアプリケーションを指定するので、そのときに最低
    限のインフラを整えていない在宅ワーカーは発注の見送りとなる。
   ・ 元クライアントと当社との間の契約書が必要であり、契約内容が明確でない
    と、在宅ワーカーとの契約を明確に示すことはできない。
   ・ 報酬の支払期日については、当社では月末締めの翌月払。出版社は、発行月
    の翌々月払いが多いが、発行月というのは実際の発行は発行月の前月になるの
    で、4〜5か月待たされる。信用対信用のルーズな世界で、会社に余力があれ
    ばよいが、ないと 「60日以内」の支払はきつく、書籍関係、特に雑誌や週刊
    誌では難しいのではないか。
   ・ 元発注者と仲介者の最低限の業務契約書は必要であり、外注スタッフを使う
    場合は元発注者との契約に外注スタッフを使うことを書いておけば良いと思う。



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│仲介業者  有限会社U│  
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 (1) 会社の概要等

   ・ 各種Windowsドキュメント、DTP、初期入力から組版、フィルム出力、印刷
    (労働者2名、登録在宅ワーカー約150名)
   ・ 在宅ワーカーに発注する仕事:初期入力、テープ起こし、組版


 (2) ガイドライン(案)に対する意見、感想
   ・ 自分が在宅ワーカーならばこの契約書がほしいが、発注する側となると自分
    の首が絞まる気がする。
   ・ 損害遅延金を入れる契約書は多いだろうが、実際に請求されることは企業間
    でも少ない。当社は項目に入れていない。納期までにちゃんと成果物があがっ
    てくる方が珍しいから、損害遅延金の項目を契約書の内容に入れると、ワーカ
    ーは膨大な債務を背負うことになる。当社は、不完全な成果物をフォローする
    ことを前提に仕事を出す。
   ・ 報酬は、発注者からの支払いを待ってから払う。外資系は現金払いで、月末
    締めの翌月払いだが、日本は手形を現金と考える商習慣があり、手形は現金化
    できるのは6か月後であるため、在宅ワーカーに60日以内で報酬を払うのは困
    難なことがある。仲介に立つ者として苦しいので、手形決済の所とは仕事をし
    たくない。
   ・ 報酬額は、不完全な成果物のフォローのために、在宅ワーカーに対する教育
    費を差し引くので下がる。
   ・ 打切りの事前予告については、仕事を受ける側としても発注者から事前予告
    をしてもらったことがない。発注企業に聞いても無理。予告がなくていいとは
    いわないが、社員でないのだからやむを得ない面もあると思う。
   ・ 振込手数料は、振込手数料を差し引いた金額を振り込むのが大半で、振込手
    数料を負担する会社はほとんどない。手数料を会社が負担するというのは、手
    数料を報酬からさっ引いているというごまかしがあるのかもしれない。振込手
    数料について書くと、振込手数料を負担している会社が良心的だと誤解される
    恐れがある。
   ・ 諸経費は、発注する側はまず持たない、中間業者が持たざる得ない状況は困
    る。明文化されることは良いことなのではないか。
   ・ ガイドラインは在宅ワークを始めようとする人のために作るのであれば、契
    約よりも知識を付与するようなガイドをしていくほうが有効なのではないか。



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│仲介業者  株式会社O│(注.当日出席の都合つかずFAXによる意見)
└───────────┘  

   ・ 例えば返却すべき資料を返さない、期限になったら電話にも出ないで無視す
    るなど、一部ではあるが、そういう在宅ワーカーもみられる。その際に、発注
    側が失う信用や代替者も用意する費用など全額とは言わないが、負担すべきで
    はと思う。
   ・ 秘密漏洩に関しては、在宅ワーカー側にもその概念がない人もいるので、改
    めて記載してはどうか。
   ・ 全体的な感想としては、随分在宅ワーカーにやさしい案と思われるが、弱者
    保護の立場から見れば仕方がないのかもしれないと思う。



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│発注者  株式会社J│  
└──────────┘
  
 (1) 会社の概要等

   ・  教材ソフト製作、販売(労働者6名)
   ・ 在宅ワーカーに発注する仕事:MS−Wordによる大学入試問題などの編集、校
    正

 (2) ガイドライン(案)に対する意見、感想

   ・ 発注者側からすると、在宅ワーカーからの社内的な機密の漏洩が心配。
   ・ ガイドラインについて、内容的には発注者としても強制的な部分は感じられ
    ない。
   ・ VDT作業の連続作業時間については、在宅ワーカーがどのように作業する
    かによるので、予め発注者が決めることは難しい。
   ・ 報酬の支払期日は、月末締め、翌16日払いなので問題ない。
   ・ 報酬額は1文字いくら、1件いくらの固定した額では払えない。どの教科が
    どの難易度の問題でいくらかの一覧表は、一応作ってあるが、試験問題の教科
    や方式によって報酬額が変わるので、予めすべての額を在宅ワーカーに伝える
    ことはできない。校正の作業については教科ごとに予め金額設定をしておいて、
    その条件で、本人が納得した上で作業を受けてもらっている。
   ・ 納期は発注後1〜2週間程度みており、その中で余裕をもって作業時間を決
    めてもらうしかなく、発注者が在宅ワーカーの作業時間を把握し、確認するこ
    とはできない。
   ・ 継続的な契約であるが、大学入試問題を扱う関係上、季節的な仕事の発注と
    なる。作業の期間が提示されているので在宅ワーカーには問題ないと思う。
   ・ ホームページで求人募集をしているが、在宅ワーカーの能力に差があるため、
    成果物にも差が出てくる。成果物が不完全な場合の取扱は必要である。



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│発注者  株式会社K│  
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 (1) 会社の概要等

   ・ 石油・石油化学製品の販売、各種データ入力(労働者11名)
   ・ 在宅ワーカーに発注する仕事:データ入力


 (2)  ガイドライン(案)に対する意見、感想

   ・ 大半が役所からの入札受注によるデータ入力作業。データ入力作業に付随す
    る業務も多種多様なので、一定の人が継続的に仕事を行うことはほとんど不可
    能。
   ・ 入札時には、データ入力の文字数、量がわからないので、1件につきいくら
    の契約になる。その1件が文字数ではなく全体の作業としてカウントされるた
    め、結果として安い報酬契約で膨大な量の作業となっても、もとの契約がそう
    いう決め方なのでそのリスクは在宅ワーカーが負うことになってしまう。
   ・ 発注者の役所と交わした契約とほぼ同じもので、在宅ワーカーとの契約を結
    んでいる。
   ・ 在宅ワーカーには、契約を守るという意識がなく、いやになったら簡単にや
    めてしまう者もいる。役所との契約では遅延損害金が記載されているが、在宅
    ワーカーには遅延金の存在などの契約に関する知識がないため会社が迷惑を被
    る。
   ・ 報酬決定手続上の問題としては、在宅ワーカーが不利になるような発注者と
    の契約ならば、契約をしなければいいだけのこと。契約を受けたのであれば約
    束は守っていただきたい。
   ・ 定期的な仕事ではないので、仕事があるときだけ在宅ワーカーに発注してい
    る。もしも恒常的に仕事があれば、正社員を雇用して作業させる。
   ・ モデル契約様式(案)の支払方法について、通常、報酬は支払われる側、請求
    する側が集金に来るもので、小さい金額は振込み、大きい金額は手形か小切手
    である。振込は、集金に来ない人への発注者側からのサービスのようなもので、
    集金の手間、領収書の印紙代を使わないのだから、振込手数料を差し引いた金
    額になっている。振込手数料について分けて書くことは意味がない。
   ・ 諸経費の取扱について書いてあるが、在宅ワーカーとは雇用関係にないので
    意味がない。打ち合わせ時の交通費等営業の経費は在宅ワーカーが持つのが当
    然。通信費等を全部、相手に請求したら次から仕事がこなくなる。また、在宅
    ワーカーが何ができるのか示して仕事を受注するのだから、仕事に必要な機器、
    バージョンアップ費用等設備投資費も在宅ワーカーが持つのが当然。設備のあ
    るほうに発注するに決まっているのだから、これらを明文化すると、仕事がこ
    なくなる人が増えるだけ。諸経費の取扱いを、モデル契約様式のように書くと、
    民法上契約は対等な立場という原則が崩れる。諸経費の取扱いは、契約書の中
    にきちっと書くか、または細かいことは書かず諸経費は全部B負担というよう
    な書き方がいい。



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│発注者  株式会社B│  
└──────────┘  

 (1) 会社の概要等

   ・ 実用書を中心とする出版(労働者10名)
   ・ 在宅ワーカーに発注する仕事:テープ起こし、校正


 (2) ガイドライン(案)に対する意見、感想
   ・ 概ね契約とはこのようなもので、ガイドラインは必要と思う。
   ・ 出版業界は一般的に口約束が多く、出版契約を結んでも守られたためしがな
    い、という業界。
   ・ テープ起こしといっても単純な入力作業ではなく、ある程度の文章力がない
    とできない。非常に専門性が高いところがある。
   ・ 能力開発機会の付与とあるが、発注者がやらなければいけないのか、その余
    裕がないから外注で在宅ワーカーに頼んでいるのであり、そこまで発注者がや
    るのは難しい。
   ・ 報酬額は、個々のワーカーと交渉して決めている。
   ・ 報酬の支払期日は、筆者に対する印税は月末締めの翌々月の10日払なので発
    行後60日以内には支払えるが、テープ起こし等の作業はその前に終わっている
    ので作業後60日以内で払えない場合もある。
   ・ 成果物については、在宅ワーカーの出来不出来が大きく影響するため、教育
    が必要である。これなくして契約のことをいっても無駄。
   ・ 諸経費の取扱を明文化すると、発注者側は経費削減を考えているので、経費
    のかからない、必要な機器等を揃えているワーカーに発注を限るようになるの
    ではないか。


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