タイトル:労働者の個人情報保護に関する研究会報告書


発  表:平成12年12月20日(水)
担  当:労働省官房政策調査部総合政策課
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                     03-3502-6726(夜間直通)




1.報告書取りまとめの経緯等

(1) 近年における情報通信技術の急速な発達は、情報の大量・迅速な処理を可能とすることを通じて、社会・経済活動の発展に大きく貢献している反面、本人の知らないところで個人情報が流出し個人に思わぬ不利益がもたらされる等、個人の権利利益が侵害されるおそれを増大させている。
 これまでのところは、企業等が保有する個人情報の中でも主として顧客情報が問題となっているが、今後は、雇用形態の多様化に伴う労働者の意識の変化や国際的な動向等により、人事・労務管理に伴う個人情報、すなわち労働者の個人情報についても、その適正な取扱いが重要な課題になると考えられる。

(2) こうした観点から、「労働者の個人情報保護に関する研究会」(座長:諏訪康雄法政大学社会学部教授)においては、平成9年度以降、労働者の個人情報の保護をめぐる国内外の状況及びその保護のあり方について検討を行ってきており、平成10年6月には、「各企業を含めた関係者がこの問題について認識を高め、幅広く議論・検討がなされることが重要である。」とともに、「国としては当面、企業等が具体的な対策を講ずることを支援するため、基本的な原則を示していくことが重要である。」ことを提言している。

(3) 今回の報告書は、この提言を踏まえ、研究会において、平成10年10月以降、引き続き、企業等が労働者の個人情報保護に具体的に取り組む上で参考となる基本的考え方について検討を行ってきたところ、今般、その成果がおおむね取りまとまったので、「労働者の個人情報保護に関する行動指針」(以下「行動指針」という。)として公表することとしたものである。

(4) 今回の報告書が、企業等が労働者の個人情報に関して具体的な取組みを進める上で必要となる社内規程を整備する際のよりどころの一つとして活用され、ひいては企業等における労働者の個人情報保護に関する自主的な取組みが促進されることが期待される。
 また、労使をはじめとする関係者間において、労働者の個人情報の保護のあり方に関する理解と認識が深まり、労働者の個人情報の保護を推進していくための方策について、幅広い議論が行われることが望まれる。


2.労働者の個人情報保護に関する行動指針の概要

(1) 行動指針の目的等
 労働者の個人情報の適正処理に関し必要な事項を定めることにより、企業等が自ら労働者の個人情報保護に関する社内規程を整備することを支援、促進し、ひいては労働者の個人情報の保護の一層の推進を図ることを目的とする。
 行動指針においては、労働者の個人情報の処理に関する一般原則とともに、収集、保管、利用・提供の形態別に処理原則を定めるほか、個人情報の開示等のあり方、適正な管理体制の整備のあり方等について基本的考え方を示すこととした。
 なお、この指針では労働者とは現に雇用されている者をいい、保護の対象とする個人情報の範囲としては、コンピュータ等の自動的手段により処理されたものに加え、手作業により処理されたものも一部対象とすることとした。

(2) 個人情報の処理の原則
イ. 処理の一般原則
 処理の一般原則としては、雇用に直接関連する範囲内における適法かつ公正な処理、個人情報の収集目的の範囲内における処理、個人情報の処理従事者による個人情報の漏えい等の禁止などを掲げた。

ロ. 収集の原則
 個人情報の収集については、本人からの直接収集を原則とすること、第三者から収集する場合には事前に本人に収集目的等を通知した上で同意を得ること等を定めたほか、人種、民族、社会的身分等の社会的差別の原因となるおそれのある事項に関わる個人情報等、特に機微に触れる個人情報については、収集を厳に制限すること等を掲げた。

ハ. 保管の原則
 個人情報の保管については、収集目的の範囲内での保管、不要となった場合の破棄・削除、保管情報の正確性、最新性の確保等を掲げた。

ニ. 利用・提供の原則
 利用・提供については、収集目的の範囲内において行うこととし、収集目的以外の利用又は提供を行う場合には、事前に本人に新たな目的等を通知した上で同意を得ること等を掲げた。

ホ. 処理の委託のあり方
 近年、情報化の進展等に伴い、情報処理業務等の外部委託が進んでいることから、適正な委託先の選定、委託契約における個人情報の適正処理への配慮を掲げた。

ヘ. 諸検査、モニタリング等のあり方
 また、特に機微に触れる個人情報の収集方法に当たると考えられる職場での諸検査、あるいは、ビデオカメラ、コンピュータ等によるモニタリング等について、個人情報の保護の観点からそのあり方を示すこととした。


(3) 開示等のあり方
 コンピュータ及びそのネットワークが急速に普及した社会においては、自己に関する個人情報が知らないところで一人歩きし、思わぬ不利益を被ることがないよう、自己に関する個人情報が正確であること等を確認できることが重要であるため、労働者は、原則として使用者が保管する自己に関する個人情報について開示を求めることができること、開示の結果、個人情報に誤りがあった場合にはその訂正を求めることができること等を掲げた。

(4) 労働組合等の役割等
 また、使用者が個人情報の保護に関する施策を策定するに当たって労働組合等に対し理解と協力を求める必要性が高いと思われる場合があることから労働組合等の役割等についても言及することとした。

(5) 適正な管理体制の整備
 適正な管理体制の整備に当たっては、個人情報への不正アクセス、あるいはその紛失、破壊、改ざん等を防止する安全措置等を講ずること、個人情報の管理責任者の選任等による責任の明確化を図ること、労働者自身、あるいは、個人情報の管理及び処理に関わる者に対する教育・研修の実施、さらには、窓口の明確化等により個人情報の処理に関する苦情・相談に適切に対応することを掲げた。




労働者の個人情報保護に関する行動指針及び行動指針の解説
「労働者の個人情報保護に関する研究会」名簿


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