平成8年労働環境調査結果概要

I.調査の概要
   この調査は、新技術の導入、危険有害業務の拡大、労働態様の変化等著しく変化する労働者をとりまく環境の実態と、その労働者への影響を把握し、今後の労働安全衛生行政推進のための基礎資料とすることを目的に、平成8年11月に実施したもので、このたびその概要を取りまとめた。
   調査は、事業所調査、労働者調査、ずい道・地下鉄工事現場調査の3調査からなっている。
 調査対象は、事業所調査が日本標準産業分類による、鉱業、製造業、運輸・通信業(道路貨物運送業に限る。)、サービス業(自動車整備業及び機械・家具等修理業に限る。)の常用労働者を10人以上雇用する事業所(管理・事務部門のみの事業所を除く。)から抽出した約11,000事業所、労働者調査が事業所調査対象事業所に雇用されている現場作業労働者(管理・事務・技術労働者以外の労働者)から抽出した約12,000人、ずい道・地下鉄工事現場調査が建設業(ずい道建設工事、地下鉄新設工事に限る。)の工事現場で労働者災害補償保険の概算保険料が 100万円以上又は工事の請負金額が1億2,000万円以上の約1,000現場である。
   有効回答率は、事業所調査85.2%、労働者調査86.0%、ずい道・地下鉄工事現場調査92.0%である。
   調査の内容は、原則として平成8年10月31日現在の状況である。
   前回調査は平成3年に、事業所調査については製造業の常用労働者を10人以上雇用する事業所を対象に、労働者調査については製造業の常用労働者を30人以上雇用する事業所に雇用されている現場作業労働者を対象に実施した。(ずい道・地下鉄工事現場調査は今回と同じ対象で実施している。)




U. 調査結果の概要

 骨  子 

〔事業所調査〕

 快適な職場環境づくりについて −問題点は資金とノウハウ−
(1)  快適な職場環境づくりのために事業所は「レイアウト、作業空間の適正化」(22.8%)、「休憩時間の快適化」(18.8%)、「事業場のイメージの向上」(18.8%)、「作業の性質に係わりなく生じる劣悪環境の改善」(17.7%)、「疲労回復のための施設の創設、改善」(17.2%)などを重視している。
(2)  快適な職場環境づくりを進める上での主な問題は「資金面」であるが、「作業強度、 難度等の労働の質・内容的改善」に関する項目では「技術的に難しい」、「改善のイメージがつかめず具体化しにくい」といったノウハウに関する問題も多くなっている。


 有害業務等について−作業環境測定結果では適切が9割程度−
(1)  有害業務等のある事業所は39.2%となっている。
 有害業務等の種類別にみると、「有機溶剤業務」(22.7%)及び「粉じん作業」(15.1%)の割合が高くなっている。
(2)  作業環境測定の結果では、「作業環境が適切である」とする作業場のある事業所の割合は9割程度と高いが、「粉じん作業」及び「有機溶剤業務」については、「作業環境に改善の余地あり」も、それぞれ20.6%、15.1%となっている。


〔労働者調査〕

  職場環境について −職場環境は「快適ではない」が2割、「快適」は3割にとどまる−
−労働の質・内容の改善などで事業所と労働者で重点に差−
(1)  職場環境に対する個別の評価では「採光又は照明」、「湿度」、「振動」、「気温」で 「適当」または「気にならない」とする労働者が多く、「換気」、「騒音」、「ほこり」で少なくなっている。
(2)  職場環境の総合的な快適度について、「快適である」とする労働者は34.1%、「快適ではない」とする労働者は21.9%、「どちらともいえない」とする労働者は43.5%となっている。比較可能な製造業(30人以上規模)では、「快適である」が前回(平成3年)調査に比べ6.8ポイント上昇している。
(3)  今後改善して欲しい項目としては、「休憩時間の快適化」(31.6%)、「機械等のレイアウトや作業空間の適正化」(28.7%)、「荷物運搬、中腰作業等肉体疲労度の高い作業の軽減」(28.4%)などとなっている。
 事業所調査と比較すると、これらの事項は事業所も同様に重視しているが、この他、事業所では労働者に比べ「事業場のイメージの向上」を重視する割合が高く、一方、労働者は、事業所に比べ「作業強度、難度等の労働の質・内容的改善」に関する事項を望む割合が高くなっている。


 有害業務等について−有害業務等に対する認識は不十分−
(1)  有害業務等従事労働者のうち有害業務等として認識している労働者の割合が最も高いのは「放射線業務」であるが、その割合は73.2%にとどまっている。
(2)  有害業務等従事労働者で有害業務等について教育等を受けた労働者は55.5%であるが、そのうち9割近くの労働者が役立っているとしている。


 労働者の健康状況−有害業務等従事労働者では「健康である」とする割合が少ない−
(1)  労働者の健康状態は、「健康である」とする労働者が37.7%、「まあ健康である」が44.9%となっている。
 これを、有害業務等の従事の有無でみると、有害業務等従事労働者では「健康である」が30.5%と有害業務等に従事しない労働者の41.8%に比べ低くなっている。
(2)  慢性的な持病のある労働者は29.2%である。
 これを、有害業務等の従事の有無でみると、有害業務等従事労働者では33.9%、有害業務等に従事しない労働者では26.6%であり、有害業務等従事労働者で持病のある割合が高い 。


〔ずい道・地下鉄工事現場調査〕

 可燃性ガス発生のおそれのある工事現場の状況−ガス自動警報装置の設置割合は上昇ー
(1)  可燃性ガス発生のおそれのある工事現場の割合は10.7%で、このうち作業開始前に可燃性ガス濃度の測定を実施している工事現場の割合は97.9%である。
(2)  可燃性ガスの異常な上昇を早期に把握するためのガス自動警報装置を設置している工事現場の割合は67.0%であり、前回調査(60.5%)より6.5ポイント増加している。


 粉じん抑制対策等の状況−粉じん濃度は低下−
(1)  粉じん発生のある工事現場の割合は45.8%で、前回調査(45.5%)とほぼ同程度となっている。
(2)  粉じん濃度の測定結果は、最高値が5mg/m3以上である工事現場が36.0%(前回57.9%)となるなど、前回調査と比べて低い値に推移している。


 機械、装置等の状況−自動化・ロボット化された建設機械の導入が進む−
(1)  自動化・ロボット化された建設機械の導入工事現場の割合は30.5%で、前回調査(25.2%)と比べ、掘削用機械、整地・運搬等機械を中心に導入が進んでいる。
(2)  自動化・ロボット化された建設機械に対する安全対策は97.8%の工事現場で実施されている。


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