第64回勤労者財産形成審議会 議事録

 日 時 平成11年3月25日(木)
 
 場 所 通産省別館825会議室
 
 出席者 [委員]香西会長、土田委員、新村委員、渡辺委員、菅野委員、河口委員、杉浦委員、町田委員、山口委員、薗部委員、 田中委員、奥村委員、前田委員、岸委員(代理)、平井委員(代理)
[事務局]澤田労政局長、松崎勤労者福祉部長、草野企画課長
 議 題
  確定拠出型年金制度の検討状況について
金融機関等の破綻の場合の預替え制度の拡充について
財形持家融資制度の見直しについて

5 議事
○ 会長(香西)
 ただいまから、「第64回勤労者財産形成審議会」を開催します。本日はお忙しい中をお集まりいただき、ありがとうございます。開催に先立ち、本日の審議会は定足数に達していることをご報告いたします。
 昨年の11月27日付をもって、勤労者代表審議会委員の長谷川委員、弓委員及び若月委員が退任され、新たに山口委員、薗部委員、田中委員が就任されましたのでご紹介いたします。どうぞ、よろしくお願いいたします。
 議事に入ります。まず、確定拠出型年金制度の検討状況について、事務局から説明していただきたいと思います。
 
○ 事務局
 今日の議題は大きく3つ、「確定拠出型年金制度の検討状況」、「金融機関等の破綻の場合の預替え制度の拡充」、それから「財形持家融資制度の見直し」であります。まず最初に「確定拠出型年金制度の検討状況」について説明します。これについては昨年末、土田基本問題懇談会座長より各委員の皆様に対しまして検討状況について書面にて送付いただいたところです。多少、その繰返しになりますが、我が基本懇においては昨年の9月から11月まで、拠出型年金制度をどのようにするかにつきまして6回にわたり議論をいただきました。その議論の主なものをまとめたものを資料No.4としてお配りしています。あとでまた、詳細をご説明しますので、意見の中に入っていない箇所、「こういうところを入れたらどうか」というご意見があれば承れれば幸いかと思います。
 実は昨年来、我々の基本懇と並行して、自民党の「年金制度調査会」の中に「私的年金等小委員会」というものが設けられていて、ここで8回にわたり、確定拠出型年金をどうするかという議論をしてまいりました。その結果が、今日お配りしている資料No.2です。「12月2日自民党税調における長勢小委員会代理説明資料」となっています。
 これを長勢小委員長代理より税調に報告し、それを受けて資料No.3の「税制改正大綱」という形で出ています。その要旨は、確定拠出型年金制度について、年金制度の一環として位置づけることがあれば税制上の検討をしようという形になっています。
 この「税制改正大綱」を受け、資料No.1、実は今年になってから、「確定拠出型年金制度準備会議」というものが1月19日付で設置されています。この準備会議の趣旨ですが、「公的年金制度を補完するシステムの1つとして、確定拠出型年金制度の導入が必要である。こういうことから、確定拠出型年金について、年金制度の一環として制度の具体化を図るため、確定拠出型年金制度準備会議を設置する」ものであります。「税制改正大綱」を受けての準備会議となります。
 準備会議は大蔵省、厚生省、通産省、労働省、それぞれの省の審議官、部長クラスから構成していまして、厚生省が主催するという形です。そのほか、準備会議に加えて幹事を置くという、補助的なシステムも設けています。こういった会議の場ができていて、ここで昨年来検討をいただいた勤労者拠出型年金、あるいは企業拠出型の確定拠出年金も含めた、トータルな確定拠出型年金をどうするかという検討を4省で始めています。そういう経緯もありますので、昨年来検討をいただいた基本懇は一時休止して、当面は準備会議の動向を見守るとした次第です。
 この準備会議ですが、19日に設置されて以来、4回ほど会議を開いています。現在、ヒアリングなどを中心に行っているところであります。一応、6月末までに案を得る予定で進めていますので、当審議会としても、のちに述べる財形年金貯蓄制度との関係をどう考えていったらいいか、という議論の場を準備会議の結論が出たあとで設けてはいかがかと思っております。こういう形でよろしいかどうかは説明のあとで議論いただきたいと思いますが、事務当局の考えとしては、いまのような考え方で進めさせていただけないかと思っています。
 次に資料No.2ですが、いま申しました長勢小委員長代理から自民党税調へ報告した、いわば「私的年金等小委員会」の中間的取りまとめです。これについては資料として各位にお配りしていますが、未だ説明しておりませんので、今日改めてご説明したいと思います。12月2日のものでして、まず確定拠出型年金の必要性を謳っています。急速な少子高齢化が進んでいる中で、老後に対する不安が生じている。もちろん、基本は公的年金が重要であります。これが土台というのは当然ですが、それに加えて自助努力による老後所得保障に対する公的支援の整備・拡充が必要であろうということです。具体的には次のような理由から、確定給付型年金を補完するシステムとして、確定拠出型年金の導入が必要と謳っています。
 まず第1に、確定給付型年金だけではいろいろな問題があります。例えば現行の確定給付型である適格退職年金にしても厚生年金基金にしても、実態的には中小企業雇用者の多くには普及していない。自営業者のほうには国民年金基金というものがあるわけですが、必ずしも十分に普及していない。やはり、確定給付型だけではどうしても公平な私的老後保障の実現が困難ではないか。確定拠出というのは、簡易に設定できるため中小企業雇用者、自営業者にも普及できるのではないか。あるいは、個人拠出型というものを設けることによって、あまねく普及できるのではないかという問題意識です。
 2つ目として産業就業構造の変化、あるいは雇用者の就業意識の変化が急激に進んでいます。また、労働移動の動きも加速しています。現在の確定給付型には積立ての持ち分がないので、拠出にかかるポータブル化は非常に困難な問題であります。これが確定拠出型ですと、比較的容易にポータブル化ができるという利点があるわけです。
 3番目に、現在、確定給付型については、予定利回りを運用実績が下回っている現状です。現行制度では、予定された給付の履行が困難になるケースも出てきています。それから、よく言われているように、2000年度から新たな企業会計基準が導入されます。そうすると時価評価ということになり、また積立不足もバランスシートに乗せるということになります。積立不足がバランスシートに乗せられ、それが大幅な赤字であるとすれば企業評価に影響してくる。そのことによって経済混乱が生じかねないという指摘もあるわけです。
 企業の雇用管理のあり方も、長期雇用を前提としたものから能力主義的なもの、流動的なものに変化しつつあります。現実に、退職金を現金給与の上乗せに切り替える動きも見られるわけです。こうした動きに対する受け皿として確定拠出型、この場合は個人拠出となりますが、そういったものが必要ではないかということです。
 それから、労働者の意識やライフスタイルの多様化が非常に進んでいますが、個人のライフスタイル、意識の多様化、あるいは家族の状況等に応じて積立て、運用のできる確定拠出型、個人拠出というものも必要ではないかという理由から、確定拠出を導入しようではないかということであります。
 基本的な考え方ですが、現行の確定給付型年金とは別に確定拠出型年金制度を導入するということでして、確定給付型にとって代わるものではありません。新たな選択肢として、別個に確定拠出型年金を導入するということであります。
 確定拠出型年金の特徴ですが、「企業又は個人が将来の年金のために拠出、積立てし、自己責任において運用を行い、一定年齢以後、積立分を年金として受給する仕組み」ということであります。基本をからまで書いています。まず、自助努力に対する公的支援として「税制上の措置を講ずる」ということであります。税制の基本は拠出時、運用時非課税、言わば課税繰延べ、給付時にまとめて課税するという仕組みです。「当然、一般的な貯蓄とは区分するため、所要の措置を講ずる」というところは中途引出し、あるいは一時金か年金払いかというところがポイントです。
 2番目として、公平の確保を図るため、「国民すべてに公平な拠出限度枠を設ける」という考えです。それから、高額所得者優遇になってはいけないという観点から限度額を設ける。
 3番目に、「離転職に際し、個人の積立て分を次の確定拠出型年金に移管できるようにする」、言わばポータビリティの確保ということであります。
 4番目、これは重要なことですが、「自己責任原則により、円滑に実施されるよう、投資教育、情報開示等をきちんと整備していく」といった4つの柱を基本としつつ、新たな確定拠出型年金に関する法律を制定する。また、で述べたように、税制上必要な法的措置を講ずることが基本的考え方であります。
 具体的内容ですが、確定拠出型年金については企業拠出型と個人拠出型の2つに分けようという形になっています。自民党の考え方では、究極的には国民すべてに制度の公平を期する上で、個人拠出型に一本化することも考えられるということを謳っています。ただ、そのためには、現実に行われている企業拠出について、年金拠出のための給与の支払いとするなど、労使関係の変更を要する。現実には、すぐには難しいであろう。このため、導入に当たっては、当面の措置として企業拠出型と個人拠出型を設けるとしています。
 個人拠出型、企業拠出型、それぞれの内容ですが、企業拠出型については(1)、「1人以上の雇用者を雇用する企業が任意に加入する」。当該企業の一定の資格を満たした雇用者は全員が対象になるというのが1つの特徴です。
 拠出契約ですが、「企業は雇用者ごとに、一定のルールで定めた額を定期に拠出する」。また、企業は雇用者ごとの持ち分勘定を設定して、それについて金融機関との間で資産の管理、運用に関する契約を締結する。運用ですが、1つは確定拠出は雇用者が運用を指示するのが特徴ですが、この案では企業も一括運用できるという形になっています。老後の給付ですが、60歳以降、労使協定で定めた時期に年金給付とする内容です。
 個人拠出型ですが、これは(2)に書いてあります。「すべての個人が任意に加入できることが望ましい」、つまり国民全部が加入できることが望ましいわけですが、制度導入に当たっては限度額管理等、税務事務上の理由から、対象者を管理可能な範囲に限らざるを得ないのではないか。このため、当面、対象者は「雇用者及び自営業者」とし、これらの者にかかる年金事務はすべて、雇用者については企業、自営業者については一定の要件を満たすものとして、「法律に基づいて指定された団体を通じて行うものとする」とされています。この段階では、指定団体は商工会議所なども想定されておりました。これをどういった機関にするかというのは、今後の大きな課題であります。
 具体的内容ですが、各雇用者については制度の加入契約、これは個人が任意に加入ということになります。その場合、雇用者は企業を通じて金融機関と資産運用契約を締結し、個人勘定を開設する。当然、拠出については、雇用者は任意に拠出額を決定、変更できる。
 企業のほうは、雇用者の拠出分について給与天引、取りまとめて金融機関に払い込む。運用ですが、当然、運用先、運用額は雇用者が決定、変更する。企業は雇用者に対する協力として、運用商品の提示などを行い、60歳以後に年金として給付という形であります。これは昨年、勤労者拠出型年金ということで議論をいただいた内容をベースにして、雇用者の場合の個人拠出というものが描かれていると思っていただいて結構かと思います。基本的に、昨年議論をいただいた内容であります。
 雇用者以外にも、自営業者の場合が出ています。自営業者は指定団体を通じて、任意に金融機関と資産運用契約を締結できる。当然、拠出については、任意に拠出額を決定、変更できる。指定団体が取りまとめて金融機関に払い込む。それから、運用については、自営業者が運用先、運用額を決める。指定団体は自営業者に対する協力をし、運用商品の提示を行う。指定団体の場合、企業が行うことを行うという仕組みになっています。老後の給付は60歳以降を年金として給付、これも同じであります。
 以上述べたように、企業拠出型、個人拠出型、2つの制度を設けています。その両者の関係をどうするか、というのが(3)であります。考え方としては、企業は両方の制度を設けることができます。同時に、雇用者も両方の制度に加入できます。ただ、両方をやると、両方をやったところが得になってしまうということも出るので、事業主拠出、本人拠出等々を含めた、合算した限度額を設定し、そこで公平を期していこうという考えであります。
 自民党の「私的年金等小委員会」の中でも、企業拠出型だけ、個人拠出型だけというのは不自由ではないかという意見もあったわけです。企業拠出型に個人が拠出したり、個人拠出型に企業が拠出できるようにすべきとの意見が、上記条件のもと、「相互拠出を認めない」という形で整理されています。
 次に税制であります。税制については、先ほど基本で述べたように本人拠出は所得控除、事業主拠出は損金算入、運用段階は非課税、繰延べで、給付時課税ということです。それから、公的年金等控除は現行確定給付型と同様とする、すなわち公的年金等控除を確定拠出型年金制度に適用しようという考え方であります。
 公平性の確保ということで、いま申しましたように事業主拠出、本人拠出を合算して一定の限度額を設ける。公平を確保するためには、確定給付型も包含した限度額を設けることが望ましいわけですが、それについて個人あたりの限度額算定をどうするか、技術的に非常に難しい問題であります。その意味で、この段階では、限度額管理ができない現状では拠出型についての限度額のみとする、という整理になっています。
 限度管理をする上では、やはり究極的には納税者番号の導入が必要であろうと思います。ただ、現実には納税者番号制度がまだ整備されていない状況ですので、暫定的に、雇用者については事業主が限度額管理、自営業者にかかる個人拠出型年金については指定団体が限度額管理を行うという形になっています。
 それから、「各種控除制度等の見直し」ということで、新たな確定拠出型年金制度を導入すると、税制上の恩典を加えるとなれば、既存の税制の見直しも関連したものとして行っていかなければならないだろう。そこでから、すなわち生命保険料控除、退職給与引当制度、現行の特別控除税といったものについて見直していくことになっています。
 貯蓄税制の関係では、確定拠出型年金について、税制上の優遇措置を講ずる上で非常に重要なポイントですが、特に重要な問題として、中途引出しには原則としてペナルティを科する。受給形態は年金のみとし、一時金の受給は認めないということで、単なる貯蓄との区別を付けようという考えです。
 3番目にポータビリティであります。雇用者が勤務先を変更した場合、あるいは自営業者に転じた場合、自営業者から雇用者ということもあるわけですが、その場合、企業拠出型の間、又は企業拠出型と個人拠出型の間で、税制優遇措置を継続して直接残高の移管を認める。つまり、これが「ポータビリティ」ということであります。さらに、離転職の間、又は転職先で確定拠出型年金口座を開設するまでの間、いわばつなぎの税制優遇措置を継続できるものとして個人勘定を設けるとなっています。つなぎの個人勘定ですので、新たな積立ては認めない。こういった仕組みを作ろうというプランであります。
 現行の企業年金からの移行についても付言しています。現行の企業年金は確定給付型、適格退職年金、厚生年金基金が主でして、あるいは退職給与引当金から移行する場合、労使合意に基づき確定拠出型に変更できる。この場合、税制優遇措置を継続する各加入員への分配金を確定拠出型の口座に繰り入れられることとする。いわば、一旦、確定給付型を清算して、各加入員への分配金を決めて、それを今度は確定拠出の口座に繰り入れることによって移行していくという仕組みを考えています。
 これが12月2日の税調への長勢小委員長代理報告、いわば「私的年金等小委員会」の中間取りまとめであります。これを踏まえ、12月16日に資料No.3の「税制改正大綱」が出ています。ここで確定拠出について付言しています。4で「長寿化社会への備えと負担・給付の公平を確保し、国民の将来不安を取り除くため、年金税制については総合的な視点に立って取り組む。特に公的年金を補完する役割を有する、企業年金を取り巻く厳しい状況を踏まえ、特別法人税を凍結するとともに、確定拠出型年金の導入に向けて税制上の検討を行う。併せて年金に対する、いわゆる入口から出口にかけての税負担のあり方について、国民間の公平を確保するための準備を進める」という基本的な考えがあります。
 具体論として、下のほうにありますが検討事項の3、確定拠出型年金について付言しています。「確定拠出型年金については、年金制度の一環として制度の具体化が図られる場合には、適正な課税の確保、とりわけ拠出、運用、給付の各段階における適切な課税のあり方、貯蓄消費に対する課税との関連等に配意しつつ、税制上の措置を講ずるものとする」という結論になっています。いわば、確定拠出型年金について、年金制度の一環として制度の具体化を図る。それが図られた場合には、適正な課税のあり方について考えていく。その場合の重要なポイントとして、貯蓄商品に対する課税との関連等に配意するという内容のものになっているわけです。
 これを踏まえ、冒頭申しましたように4省からなる準備会議を設けて、個人拠出型、企業拠出型を併せて、全体としての確定拠出型年金について、どういった仕組みとするかという検討を始めたわけです。したがって、当面、この審議会では全体の検討の動向を見守っていく。結論が出たら、今度、具体的な姿と財形年金制度の関係についても議論をいただく必要があるのではないかと考えている次第です。
 その際、これまで基本問題懇談会で6回にわたり、詳細な議論をいただいています。したがって、懇談会での議論をまとめ、今後、その議論を4省における確定拠出型年金、特に個人拠出型年金の制度設計に活かしていきたい。そこで、資料5にあるように「懇談会の意見」を取りまとめています。これについて、詳細にご説明申し上げます。
 
○ 事務局
 8頁に「懇談会の開催状況」、9頁以下に「懇談会における主な意見」をまとめています。基本問題懇談会については8頁にあるとおり、6回にわたり、集中的短期間にいろいろな議論をいただきました。9頁以降に、そのうちの主な意見をまとめております。なお、この資料については、事前に一旦、基本懇の先生方にお配りし、修正意見等ありましたものを加筆して出しているものであります。追加すべき意見等があれば、のちほどいただきたいと考えていますのでよろしくお願いいたします。
 まず、「財形年金貯蓄制度の見直し」「勤労者拠出型年金制度の導入」ということで、広範な議論をいただきました。総論的な部分のご意見としては、公助と言われる年金をはじめ、共助である企業年金等の給付を引下げ、負担を引き上げるという、つらい話ばかりが多く、自助を支援する制度として企業及び勤労者双方に魅力のある新しい制度、すなわち勤労者拠出型年金制度を導入することが重要である。大企業のみではなく、中小企業にとっても導入しやすい制度とすることが必要といったご意見がたくさん出されました。
 また、勤労者拠出型年金制度を老後の所得保障、年金といった位置づけにする場合には、単なる貯蓄奨励という制度とは何か違う位置づけをする、区別する理由が必要だといったご意見がありました。それから、新制度の運営は企業にとって相当のコストと事務負担が必要になると考えられるため、現在、企業が既に運営している各種の年金制度を含めた、全体の年金制度における新制度の位置づけの明確化、各種年金制度との調整が必要といったご意見がありました。
 また、新制度の対象とする範囲については、確定拠出型年金制度の適用者としては、正規社員のみならず、パートタイム労働者への適用も考えることが必要である。それから、ポータビリティを実のあるものにするために、勤労者だけではなく、転職中の者や自営業に転じた者も対象とすべきではないかといったご意見がありました。
 次に「勤労者拠出型年金制度の仕組みについて」であります。ここについては基本懇において、事務方から拠出、運用、事業主の関与・責任、給付といった項目について、論点を提示して議論をいただいたところです。まず、「拠出、運用、事業主の関与・責任等」といった項目については、財形年金貯蓄制度においては、税制上の優遇措置を受けられる積立総額が550万円までと限定されていて、アメリカの401(K)プランのように所得控除があり、かつ税制上の優遇措置の対象となる積立総額に上限がない制度となることが必要であるといったご意見がありました。預替えについては、同一金融機関における複数の商品間のみならず、金融機関間、他の金融機関への預替えもできるように措置しないと、破綻時における労働者保護の観点から見ても問題であるというご意見もありました。日本において用意された金融商品のうちから、現実に自己責任と言うが、自己責任に基づいて選択することが実際にできるかを心配するようなご意見もありました。
 また、自己責任に基づく運用の前提として、まず企業と金融機関の各々が果たすべき役割と責任といったものを明確にする必要があるだろう。また、何か一定の指針を与える必要があるのではないかといったご意見がありました。契約形態については、現行の財形年金制度と同様、金融機関と個人の契約が考えられるのではないかといったご意見がありました。
 次の頁、運用の形態については、複数の金融機関で運用する形で、単独の金融機関で運用する形等、さまざまな形態があるわけですが、こういったことについては制度上一律に決めるのではなくて、可能な限り、労使の合意による選択に任せたほうがいいのではないかというご意見がありました。
 次に給付、中途引出し、ポータビリティといった項目について、給付については単なる貯蓄とは異なる、本格的な年金制度として、その制度の所得控除に税制上の措置を講ずるためには年金給付とすることが必要であるというご意見がある一方、給付原資が極端に少ない場合についても、年金に分けて給付することができるのかというご意見、制度としての自由度を全体に高める上で、年金だけではなく、一時金給付も1つの選択肢として認めるほうがいいといった、さまざまなご意見がありました。
 確定拠出型年金については、年金の給付段階においては運用段階とは異なり、元本割れをしないような何らかの仕組みを考えることが必要であろうというご意見がありました。中途解約の場合のペナルティについては、新制度への加入を抑制するものであってはならないというご意見、それから税制上の優遇と十分に比較考量して、制度の魅力を失わない程度のペナルティとすべきといったご意見がありました。
 ポータビリティについては、創設される制度のポータビリティが機能されることが重要だというご意見が多数ありました。このためにも、多くの企業、勤労者にとって魅力ある制度として、加入促進を図ることが必要であろうというご意見もありました。
 次に、中小企業への普及についてもたくさんのご意見をいただきました。中小企業においては、現在、厚生年金基金等の制度が設けられていない場合が多いため、中小企業の従業員が税制優遇措置の恩典を受けていない。この分、別に何らかの優遇措置を設ける必要があるのではないかというご意見がありました。現在の財形年金貯蓄制度については、大企業に比べて中小企業に普及していないという実態にあるわけですが、新しい制度が情報提供や投資教育について、事業主の責務が大きく負担も重いということになると、中小企業に普及することが困難となるのではないか。その意味で、現行の財形制度も含め、企業や勤労者が運用しやすい制度とすることが必要であるというご意見がありました。
 それから、運用の選択の対象となる金融商品や預替えの頻度等について、自己による選択を可能とすることが必要となるわけですが、中小企業への普及を図るためには選択の範囲や幅について、あまり過大な負担とならないように配慮する必要がある。中小企業に普及させるためには、税制上の共通性、平等性を持たせると同時に、事務処理上のスケールメリットをどのように出していくかが重要であろう。中小企業への制度普及を図る観点から、新しい制度も含めて、財形貯蓄制度の事務処理の合理化について、実務面から具体的な検討を行う必要があるというご意見がありました。
 現行の財形年金制度から新制度へ移行する場合には、勤労者に不利にならない制度として、移行を考えておくことが必要であろうというご意見が出されています。以上です。
 
○ 会長
 ありがとうございました。ただいまの事務局からのご説明に対して、ご質問、ご意見等をお伺いしたいと思います。どなたからでも結構ですので、よろしくお願いいたします。
 
○ 委員
 いま事務局から、自民党小委員会での案についてご説明がありました。これは1つ、非常に有力な叩き台になると思います。
 まず、ここで言っている企業拠出型と個人拠出型について、よくわからないのが例えば企業拠出型は「主として企業が拠出する」という表現になっています。3頁でもそうですが、「主として個人が拠出する個人拠出型」という考え方で、確か小委員会でも検討されてきたと記憶しています。
 一方、「企業拠出型は原則として個人拠出を認めない」という考え方になっています。この辺、この案どおりに仮になったとするならば、「企業拠出型と個人拠出型の両方の採用を認める」となっています。「企業」と言うか、「雇用者」と言ってもいいのでしょうか、双方の採用を認められますか。
 
○ 事務局
 はい、そうです。
 
○ 委員
 つまり、企業拠出型だけだったら、原則としてそこに個人拠出は認めないということですか。
 
○ 事務局
 はい。
 
○ 委員
 しかし、一方で、3頁にあるように「主として企業が拠出する」となっているわけです。私個人の勝手な考えとしては、ここに個人拠出もあり得るのかなという考えを持ったわけです。しかし、一方では、非常に厳しく認めていないのですが、それについてはどうなのですか。
 
○ 事務局
 この辺、確かにやや書きぶりが齟齬しているような印象を受けるわけです。企業拠出型というものは、主として企業が拠出するものを「企業拠出型」と言う、これは企業拠出型と個人拠出型の定義みたいなものです。現実に、企業拠出型をどうするかは具体的内容のほうに書いてあります。要するに、この案では企業拠出に個人拠出を認めないとなっているわけです。
 ただ、一般的に言う企業拠出型というのは、もう少し定義としては広いのです。最初のほうが定義で、あとのほう、小委員会としての中間報告の結論としては当面認めないということなのです。
 
○ 委員
 確かに、これが設けられたら、「いまの企業年金とは全く別の制度として設ける」となっています。しかし、現実問題として言えば、いま企業、あるいは従業員にとっても、例えば厚生年金基金の加算部分、確定給付を確定拠出に変えたいという要望も非常に強いわけです。また、厚生年金基金の加算部分は企業拠出が圧倒的にあるが、一方で個人拠出もやっている、従業員拠出もやっているわけです。
 そうなると、現実のニーズとして、全く別の制度として考えていらっしゃるようだけど、現実に厚生年金基金からの振替え、切替をやりたい。そういう場合には、どうなると考えればいいのですか。
 
○ 事務局
 私どもが作った案ではないので、細かいことはわかりません。推測で申しますと、やはり移行する場合にはそれぞれの拠出について、この案で言うと2つ制度を設けていただくということになるわけです。要するに、いまの厚生年金基金で、企業拠出の中に個人拠出があるという場合もあるわけです。それを今度、仮に確定拠出に切り替えるとした場合には、一旦清算して、分配金という形でそれぞれに分配するわけです。企業拠出分、個人拠出分、それぞれ1人ひとりに分配して、企業のほうで企業拠出分については企業拠出型を作りましょう、個人拠出型は少ないかもしれませんが、これについては個人拠出型を作りましょうということで、2つ作って移行していただく。この考えからはそうなります。
 ただ、問題は、もちろんこの時点での暫定的、中間的な取りまとめであります。現在は4省で検討していますので、この議論を土台としつつも必ずしもこれにとらわれない。そういう場に移行しているということで、必ずこれがそういう形になるかどうかは、具体的にはこれからの4省の設計次第ということになるわけです。いまおっしゃったような、「非常に不便ではないか」というご意見もヒアリングの中でいろいろ聞いていますので、そういった点も踏まえてこれから検討していかなければならないだろうと思っています。
 
○ 委員
 同じく、自民党の制度案について、5頁の(2)、「公平性の確保」のところは、ご説明いただいたものをこのまま、文言どおり理解をすればいいのかなと思っています。事業主、本人拠出を合算して一定の限度額を設ける、これは当然のことだろうと思います。しかし、公平性を確保するために「確定給付型をも包含した限度額を設けることが望ましいが」とあって、そのあと、「限度額管理ができない現状では、確定拠出型についての限度額とする」となっています。ということは、制度的に確定給付のない企業なり勤労者については、制度的不利もやむを得ないという意味ですか。
 
○ 事務局
 いや、そういうことではありません。限度額を設ける場合、確定拠出型のみということですので、逆に確定給付型があるところは確定給付型を別として、確定拠出額が限度額ですから、ダブルで限度額を確保できるということになるわけです。ある意味では、確定給付型を持っているところは、それに加えて上乗せで確定拠出ができて非常に有利になります。ですから、別に確定給付がないとか、不利ということではないわけです。
 
○ 委員
 プラスアルファということですか。
 
○ 事務局
 プラスアルファが確定給付があるところはできるという、この考え方だとそうなります。
 
○ 委員
 見方を変えたら、しょうがないということですか。
 
○ 事務局
 ただ、ここにも書いてありますように、この時点では限度額管理は技術的に非常に難しいということでこうなっていますが、そこは当然4省の中の検討で、要するに個人あたりいくらと引き算してできるかどうか。技術的な問題として、検討課題としてやっていくことになっています。
 仮に、それがクリアできればこれを含めて、ということも検討の中では出てき得るわけです。この時点では技術的に難しいということで、こういう表現になっています。
 
○ 委員
 自民党の案ですが、基本的には公的年金の補完ということになれば、税制上のいろいろな面倒も見ましょうということになっている。いまの確定給付のほうは、労使合意で乗り移りができました。財形年金貯蓄との関係はどう理解すればいいのですか。
 
○ 事務局
 ご議論いただいた時、勤労者拠出型年金ということでご議論いただきました。これについて、私どもの考えとして、現行の財形年金制度の延長として、税制を変えることによって勤労者拠出型の、確定拠出の年金ができるのではないか。当然、延長線上にあるという考えで行こうということを念頭に考えていました。その移行の仕組みについて議論をいただいたわけです。
 ただ、税調の大綱が出た時点で違っているのは、1つは確定拠出型年金は新しい法律として、別個のものとして作る。そのときに貯蓄とははっきり区別、つまり財形というのは貯蓄の中に入ります。ですから、財形年金とははっきり区別する必要があるということを謳っています。そういうことからすると、昨年議論をいただいた内容が当然、新しい制度設計のときに乗るとは必ずしもならないわけです。ですから、先ほど言いましたように確定拠出型の基本設計ができた段階で、財形年金との関係をどう整理したらいいか、実はこれについてご議論いただこうかと考えています。
 やり方としては、昨年議論をいただいた点と個人契約でやるという点で似ているわけで、年金ということも同じで、趣旨目的が同じだから乗り移りができるようにというのも1つの考えですし、また制度が違うとなればそれはそれで、既論の財形年金をやっている方に期待権を損うことがあってはならない。そういう意味で、例えば経過措置を加えつつ、新しい制度をやりたい方はそこに積み立てていくという整理もあり得るでしょう。
 その辺、正直、いろいろな選択肢があり得ると思います。ですから、基本設計ができた段階で、財形年金等の内容を比較していただいて、どうすべきかという議論をしていただくことになるかと思います。
 
○ 会長代理
 いま話題になっている自民党のペーパーの3頁、先ほどの議論とは違うのですが、質問をします。1の「企業拠出型と個人拠出型」の3行目ぐらい、「個人拠出型のみに一本化することも考えられるが、そのためには現実に行われている企業拠出について、年金拠出のための給与の支払いとするなど、労使慣行の変更を要することとなり、現実には無理がある」と書いてあります。どうして現実には無理があるのか、どう難しいかをもう少しかみ砕いて教えていただけますか。
 
○ 事務局
 ここの問題意識ですが、私も必ずしも明確に承知しているわけではありません。ここで言っていることは、要するに企業拠出を全員について行うとなれば、ほとんど給与と変わりがないのではないか。それを企業拠出ということではなしに、給与ということにしてしまえば、結局、企業拠出も個人拠出と同じになってしまうという考え方が根っこにあります。
 ただ、果たしてそれでいいのか。企業拠出でやってきたものを給与と見なしてしまう、という変更を当然にやっていいのかということについては、なお詰めなければいけない問題点があるのではないか。そこで、「現実には無理がある」というのはちょっと言い過ぎかもしれませんが、その辺をよく詰めないと、果たしてそれでいいかどうか決断できないということで、この時点ではこういう表現になったと承知しています。
 
○ 会長代理
 割合に頭から、「これは無理だ」とサジを投げた表現なので、本当にそれほど難しいのかどうかということなのです。
 
○ 委員
 先ほどのご説明の中で、4省の結論が出たあと、財形年金のあり方を考えるというお話がありました。その中で後者のほう、経過措置を設けて云々ということですが、これは新しい個人拠出型の年金ができたあとも、財形年金は並行して残るということもあり得るということなのでしょうか。
 
○ 事務局
 そこまで具体的にイメージを描いているわけではありません。抽象的に申し上げただけです。これまで財形年金をやってきて、60歳になってからもらえるはずだった。ところが、それが急になくなってしまったとすれば予定が狂ってしまう。特に、運用益非課税という特典が財形年金にはあるわけです。その分を60歳まで積み立てて、運用益非課税という特典を得られるはずだったのに、それがなくなってしまって移管できないとすれば、これまで積み立てた分が60歳まで、例えば運用益非課税で出てくるわけです。それも失われてしまうとなれば、期待権が損われるということになります。
 例えばそういう場合、このままで積み立てた分については運用益非課税を維持することを経過措置として設けることもあり得るかということで申し上げています。その辺、細かく詰めているわけではありません。それから、経過措置の中で別個の制度とするのか、同一だから移管するのかという、新しくできた制度と財形年金の中身を見比べてみないと結論が出ません。それについては結論が出てからということになりますが、選択肢としてそういう可能性もあるのではないかという、例として申し上げたわけです。
 
○ 会長代理
 自民党の話ではなくて、「基本懇における主な意見」について質問します。私が言うのは筋違いかもしれませんが、感想として申しますと2カ所指摘したいと思います。1つは9頁の下から2つ目、「自己責任に基づく運用の前提」として、「企業と金融機関の各々が果たすべき役割と責任を明確にする必要がある。また、何か一定の指針を与える必要があるのではないか」とあります。連動する問題として次の10頁、(3)、中小企業その他」の2つ目ですが、「新制度の情報提供や投資教育について、事業主の責務は非常に大きく、負担の重い制度となると、中小企業に普及することが困難となる」とあります。
  この辺を総合した感想を言うと、一般的な投資教育、一般情報に止どまらない、中途半端な個別のアドバイスをすると、逆に運用の結果について公的責任を追求される恐れがあると思うのです。個別の商品について、どの程度まで事業主に情報提供や投資教育についての責務をかぶせるかが非常に微妙な問題で、あまりそこに期待すべきでないと思います。究極的には、損も得も自己責任原則を徹底するということで割り切るしかない。これに参加する者がどの程度知的に優れているか、どの程度情報を持っているかは関係ないというふうに割り切らないと、あとでトラブルを起こすと思います。
 
○ 会長
 これは私からの質問なのですが、いま考えられている案だと、企業に雇われている雇用者はその企業が個人拠出なり、企業拠出なりの年金を持っていれば個人拠出ができるわけです。ところが、企業が個人拠出を持っていない、雇用者が自分で個人拠出をしたいといっても受け付けてくれるところはどこもない。中小企業にそういう制度が普及していないとすると、結局、企業が普及してくれない限り、個人としてやりたいといっても出来ないことになりますか。
 
○ 事務局
 そこは非常に大きなポイントなのです。実は、これを仕組む場合の最低の問題は天引拠出、限度額管理、それから非課税口座の特定という、税制にからむ問題があるわけです。雇用者についてはご存じのとおり、源泉徴収は企業がやり、年末調整も企業がやる。要するに、企業を通しての税制という仕組みになっているわけです。ですから税にかかわる分、あるいは天引にかかわる部分というのは、企業を関与させずにやる仕組みは事実上不可能であろうと考えています。この部分だけ、税の仕組みを企業と切り離すことはできないわけです。そういう意味では、最低限企業がやらなければならないものが仕組みの中で出てくることは避けられないだろうと思います。
 ただ、ならばそこについてのやり方はどうするか。企業がそれさえも嫌だと言った場合に、個人が入る余地はないのかということになります。財形年金制度を見ると、実はこれは個人契約なのです。ただ、天引拠出はやはり企業を通じてやることになっているわけです。企業が拒否したらどうなるかという、同じ問題があります。財形の場合、企業に協力を義務づけています。個人がやりたいと言ったら、協力しなければいけませんという義務づけをしています。
 
○ 会長代理
 罰則規定はないのですか、道徳的義務があるということですか。
 
○ 事務局
 おっしゃったような問題をクリアするとすれば、財形と同じような仕組みが考えられないかということが1つの論点として出てくると思います。それ以外、例えば運用上の問題や受託者責任の問題という、重いものについては企業がやらなければいけないのか、別の仕組みができるのか、そこは工夫する余地があるかと思います。ただ、おっしゃったような税のことだけは最低クリアしなければいけないので、例えばそのために財形と同じような仕組みを実施方法として考える。そういう協力義務を付けても、それに反した場合は非常に難しいかという感じは抱いています。
 
○ 委員
 先ほど、拠出額の上限を企業拠出プラス個人拠出で本当に公平なのか、ということをおっしゃいました。いまのご説明を聞いても、財形貯蓄自身が中小企業に普及していないという現実から見れば、やはり非常に複雑で高度なこの制度は、多分、いままで議論した話を聞いている範囲で考えれば、中小企業に協力義務等が形式上はあっても普及しないことになるのではないかと非常に恐れます。
 
○ 委員
 私もそう思っているのです。いま、厚生年金基金そのものについて、総量で言うと加入者が伸びない状態になっている。明らかに、平行から下降傾向に入っている。適格退職年金も同じである。財形もかねてから指摘されていながら伸びない。これは全体の趨勢ではないかと思っています。
 そこへ持ってきて、片方は3,000万と言われる何もない層がある。ということは、現実としては明らかに制度格差がはっきり出ているではないかということなのです。どの制度でも、制度のないところに新しい制度の恩恵をかけようということがいちばん大事だと思います。そのとき、ある種の税制の誘導というか、言わば適格退職年金なり厚生年金基金なり、それに見合うだけの税額控除が付くとか、何らかの制度が要るのではないかと考えます。そうでないと、明らかに制度格差がある。現行制度でやっているところは明らかに限界に突き当たっているではないか。産業構造の変化があれば、厚生年金基金、適格退職年金ともに、加入者は急速に下がる。もう、明らかに下がる傾向を示している。
 財形制度そのものは伸びていないが、制度的には誰でも加入しやすい仕組みを持っていますから、その点をもう少し、新しい制度を考えるにあたって全体を活かす方法を考えてほしい。あるいは、これが固まる前に、意見を言わせてほしいと思います。
 
○ 委員
 それに関して、制度上の問題もさることながら、実は基本懇で金融機関のヒアリングを行ったわけです。ずばり、その感想から言うと「中小企業のことなど考えていない」、要するに大企業を中心にガサッと商売したいということではなかったか。かなりしつこく聞いたのですが、中小企業の普及について、何がネックかという説明は金融機関からはほとんどなかった。関心もない。
 その後の新聞報道等で、いろいろな金融機関が提携しながら、401(k)対応のシステム開発や営業体制強化を進めているようです。そして、彼らは財形年金制度を持っている大企業にいろいろヒアリングをしているようです。
 そのときに聞く話からすると、やはり営業的事業として成立するためには、まずコストが低く押さえられる大企業をベースに考える。中小企業は財形年金も普及もしていないし、あまり実態も知らない。中小企業を対象にこういう制度をPRして、「導入しませんか」ということは非常に労力がかかるし、商売上もメリットが出てこないというふうに、金融機関ははっきり考えているので、制度上の問題もさることながら、現実に資産運用をすることになるであろう日本の金融機関だけで、外資はもっと柔軟かもしれないのですが、少なくとも中小企業をターゲットに販売、制度普及をしようとは考えていないということも、我々としては考えておく必要があるのではないかと思います。
 
○ 会長代理
 ちょっと、その議論を中和する必要があるかと思いますので申し上げます。率直に言って、私は各委員ほど、いわゆる401(k)的な年金について楽観していないわけです。結局、これは非常に手間とコストがかかるものである。いままでと違い、個人に選択の自由、商品の乗換えその他を認める。いままでの確定給付型に比べると、それだけのコストが別にかかる。
 それから、ポータビリティというのは大変結構なのですが、どんどん転職していく者を20歳から60歳ぐらいまで追いかけるというのは、これまた今までなかったようなコストである。しかも、結局、そのコストというのは有無を言わさず、運用の果実から天引せざるを得ない。もし、運用の果実が0であれば、元本から天引せざるを得ない。コストは最優先的に引かれるわけですから、加入者をどのくらいハッピーにするような運用ができるかというのは、なかなか大変な話だと思います。いま、金融界が大体2大グループを中核として、合従連衡の議論をやっているのは、みんな事務負担が最大のネックだと思っているに違いないわけです。
 中小企業に普及するというのは大変結構なのです。ただ、普及しても、元本割れを起こしたらどうにもならないので、まず成り立つものから自然に組み立てていくというのが1つの勢いではないかと思います。だから、どうしても中小企業とおっしゃるなら、中小企業対策、中小企業政策として、絶好の見地から配慮なり助成なりを考えたらいいのではないかと思います。ここは簡単に、金融システムとして割り切ったらいいというふうに、極端ですがあえて申し上げておきます。
 
○ 委員
 いまの問題で、自営業者にかかる個人拠出型年金というのは一体どういうものになるのか。先ほどおっしゃった天引や限度額管理、限度額管理は指定団体がするのだろうと思いますが、天引はありません。だから、個人が自発的にやるのかどうか。
 例えば、これを拡張解釈して、所得のある個人がこれに加入できるような団体にすればいいのではないか。もちろん所得は申告しなければいけませんから、そこまでやるかという話はあるかもしれませんが、やはり公平性が大切だと思うので、考え方によってはこちら側から出来ないのだろうかと思いました。そういうことは不可能なのでしょうか。
 
○ 事務局
 先ほど申し上げた、企業を通じて源泉徴収をするという税の仕組み、天引もそうです。それから、非課税口座の特定もあります。それを企業を離れてやるとなると、税の仕組み全体を変えないと難しい面があるかと思います。
 
○ 委員
 住宅融資控除などは、ちゃんと申告しているわけでしょう。
 
○ 事務局
 はい、年末調整として。
 
○ 委員
 いや、そうではなくて個人、所得のある人で。
 
○ 事務局
 もう1つ難しい問題として、実は限度額管理の問題がからむわけです。現在、確定拠出型だけと言っていますが、仮に確定給付のようなものを含めて限度額管理をやるとすれば、どれだけ確定給付についてやっているかというのは企業が把握しているだけで、指定団体が把握するというのは事実上不可能なのです。
 
○ 委員
 それは自営業者も同じではないですか。
 
○ 事務局
 自営業者には国民年金基金がありますから、仮に例えば国民年金基金をやれば一括して限度額管理ができるわけです。ならば、例えば商工会議所と国民年金基金と指定団体との関係をどうするかという問題も出てきます。そこは企業ではないわけです。ただ、もちろん、確定給付の場合は企業が把握しているわけですし、事実上限度額管理ができない状態になります。税の問題も必要要素だし、限度額管理の問題もあるということで、事実上非常に困難と言わざるを得なません。
 ただ、先ほど申しましたように、納税者番号制度ができれば納税者番号で把握できる。そうなれば、おっしゃったような懸念は解消して出来るだろうと思います。それが出来ない段階では、残念ながら断定的に、こういう形でやらざるを得ないのではないかと思っています。
 
○ 会長
 いろいろ議論があるわけですが、実際の流れとしては、一応4省体制の検討が始まったということで、とりあえずはその結果を見ざるを得ない。我々としても、財形年金だけの議論にも限界があることは、いろいろの機会で指摘されていたことですから、とりあえず新しい制度がどうなるかを見て、その上でまた財形年金の対応を考えるというのが事務局の案だと理解しました。その方針で進んでよろしいでしょうか。意見がある方には個人的におっしゃっていただく機会もあるでしょうし、必要に応じて審議会を開いていただくことにして、とりあえずこの流れで進めていただきたいと思います。よろしいでしょうか。
  それでは、まだ2つほど議題が残っていますので、そちらに移りたいと思います。「金融機関等の破綻等の場合の預替え制度の拡充」、及び「財形持家融資制度の見直しについて」、これも事務局から説明をお願いします。
 
○ 事務局
 11頁、資料5をご覧ください。「金融機関等の破綻等の場合の預替え制度の拡充について」であります。こちらについては、先般、3月12日の閣議で政令改正をしましたので、そのご報告となります。
 従来、金融機関の破綻等の場合の預替え制度については1にあるとおり、平成8年の阪和銀行、三福信用組合の破綻を契機に創設をしました。預替えができる要件としては、「金融機関に対して行政庁が業務停止命令をかけた場合」に限って認めていたものであります。しかし、最近の情勢等を見ると、業務停止命令が行われなくても、金融機関が自主的に廃業する、撤退する、その他の場合等もありますので、今回、政令を改正して、金融機関が財形業務をやめる場合にはすべて預替えができるということを考えて改正したものであります。こちらの制度は、平成11年4月1日からの施行になっています。
 下のとおり、現行制度で業務停止命令がかかった場合に預替えができるというものを、改正後は業務を廃止した場合、これには全部の金融機関の自主廃業という場合、またいままでこういった例はありませんが、例えば財形貯蓄の取扱い機関が財形業務だけをやめる場合も含み得ます。
 次に、営業等にかかる認可、承認、登録を取り消された場合、解散した場合があります。いずれも、「業務を廃止した場合」と包括して言えるわけですが、免許認可、承認、登録を取り消すという場合にはその時点、解散した場合にはその時点から預替えができるという制度に改正したものであります。
 次に12頁、資料6であります。「財形持家融資制度の見直しについて」です。こちらの改正については政令改正、それから業務上補償の改正をしています。政令改正については3月12日の閣議、業務上補償については23日に労働大臣の認可という手続きを経たところであります。
 主な改正点として、まず財形持家融資制度について、資金調達方法が変わっています。従来、調達については雇用促進事業団、あるいは住宅金融公庫から10年債券を発行する。それから、1年間の借入金を50%ずつ組み合わせて調達する方法を取っていました。これを5年債券の発行と1年の借入金ということで、債券の期間を10年から5年に短縮するという方法に改めて、10年債券よりは5年債券のほうが低利ということで、従来より低利で調達できる方式と改めています。
 次に、貸付け方式については、いま申しました調達方式を改めることと対応しているわけであります。従来、貸付は1年ごとに変動するという変動金利でした。それを5年ごとに変動するという、5年間の固定金利に改めるという改正をしています。このことによって、上で申しました5年債権の発行とちょうど期間が合致するということで、制度の財政上の安定が図れるということがあります。また、最近では住宅ローンを借りられる方の5年間程度固定している金利に対してのニーズが増えていて、そういったことにも対応できると考えています。
 また、貸付利率については、従来は下限3.0%が政令で付いていました。これにより、現行の貸付利率だった高止まりの3.0%を廃し、今後は調達金利をベースとして、金利変動が財政収支に及ぼすリスク等を考慮して設定する、下限はないという方式に改めたところであります。これにより、4月からの当面の貸付利率は2.1%という予定になっています。
 次の頁にも、いま申しました制度改正による新旧対照表を設けています。右側が現行制度、左側が新制度です。資金調達については、10年が5年債券になった。この債券の発行割合について、従来は50対50で固定していたものを、そのときどきの金利情勢によって最適の状況に変動させるといった改正をしています。
 貸付条件については、1年ごとの変動金利から5年間の固定金利となっています。利率の設定については、いままで貸付利率は調達利率とイコールだと言いつつも、下限が3%と決めていました。この下限3%を廃すると同時に、貸付利率は調達金利をベースとして、金利変動が融資制度の財政収支に及ぼすリスク等を考慮して設定するという改正を行っています。この結果、貸付利率は従来原則として3%でした。ただし昨年から、710万円以下については、当初2年間は1.70%という特例を付けていました。これが全体として2.1%と、非常に大幅に下がるものであります。
 なお、(注)3に書いてありますが、既に貸付をしている方々については従来どおりの契約ということで、1年ごとの変動金利といたします。利率設定、資金調達については、新しい制度の方式を適用することとしています。
 次に14頁ですが、3月23日に認可した業務上補償の改正に伴い、いまの体制及びさらに細かい改正について新聞発表をしていますので、その資料を付けています。1の(1)はいま説明した点であります。1の(2)は財形持家融資のうち、従来、セカンドハウスについては住宅の増改築の融資ができなかったものを、今回の改正でセカンドハウスの増改築も融資対象となる改正をしたものであります。(3)教育融資については、貸付金利を現行の3.06%から2.88%へ改定することを謳ったものであります。
 2「財形住宅貯蓄の住宅取得要件の緩和」ですが、財形住宅貯蓄については利子非課税貯蓄ということであります。非課税で払い出すためには、住宅の床面積や中古住宅の築後経過年数等、的確に払い出すための要件が定められています。
 この要件について、今回、ここにあるとおり若干緩和をして、勤労者がより住宅を取得しやすい制度としています。具体的には、床面積についての制限を緩和すること、中古住宅について築後経過年数を緩和するといった改正をしています。これについても、施行は4月1日からを予定しています。
 次の頁には金利の表を載せています。こちらは先ほどご説明したとおり、1の(1)財形持家転貸融資の通常貸付については、改定の欄を見ていただければおわかりかと思いますが、710万円以下・超を問わず2.1%、かつ5年間の固定金利としています。
 (2)のセカンドハウス融資については、自宅の場合と比較して緊要度が低いということがありますので、0.3%の上乗せをして2.4%としています。(3)(4)については、(1)と同様の改正を行っています。
 2の「財形持家分譲融資」、こちらは事業主等が住宅を勤労者のために建設、あるいは購入して分譲するための融資であります。こちらのほうも、事業主等への融資を行う場合には2.1%、5年間の固定金利ということで、1の(1)と同じ制度であります。
 2の(2)、日本勤労者住宅協会に分譲融資を行う場合については、従来からずっと永久固定金利、変動させないということでやってきています。今回も検討の結果、従前どおりの取扱いとするということで、ほかの5年間固定金利とは異なり、永久の固定金利ということで、10年までは3.1%、11年以降は3.3%という金利としたいと思います。
 共同社宅用住宅融資については、1の(1)と同じです。
 財形教育融資はほかの住宅融資と異なり、窓口となる金融機関の手数料等を国庫から補填していないという事情がありますので、こういった手数料を上乗せして2.88%という率に設定しています。
 なお、財形教育融資については固定金利ということで、最大限8年間借りられる期間を通してずっと固定ですので、持家融資も5年間固定金利と、金利の設定の仕組みについても異っています。説明は以上です。
 なお、資料として、融資の実施状況を2頁載せていますので、のちほどご覧いただければと思います。
 
○ 会長
 ありがとうございました。何か、ご質問等はありますか。確か、破綻のときの措置については、以前にこの審議会でも話題になったことがあったかと思いますが、こういう形で政令が改正されたということだと思います。
 
○ 委員
 この融資制度に関して、固定金利にしたことについて質問します。この制度は繰上げ返済などができるのですか。というのは、いまは金利が安いから、先ほど「事業者もおそらく固定を望んでいる」とおっしゃっていましたが、金利が高い局面になると、そういうことが起きないかしらと思ってしまいます。固定というのは時流と逆行している気がちょっとしたのですが、そういうことはあまり考えなくていいのでしょうか。
 
○ 事務局
 いままでは変動金利でした。やはり、住宅を買って資金を返済していくとなると、ある程度の見通しがないと困るという声も非常に強いわけです。そういった点から、いろいろな案の中で、例えば2年、3年ということも考えたのですが、やはり5年程度先までの金利がある程度わからないと計画が立てられないという話がありました。そういうことも考慮して、現場の意見なども聞いて、5年程度が適当ではないかということに落ち着いたわけです。
 ただ、あまり長期にすると調達金利も非常に高くなってしまう。いまは10年で、かなり高いので、そこはある程度低くしていく必要があるかと思います。それと、ある程度の計画性、借りる方々の分も考えなければいかんということで、5年債券という利率をはじくことにしました。
 
○ 委員
 経営の安定化のようなことをおっしゃったので。
 
○ 事務局
 いや、借りる側の返済計画です。
○ 委員
 借りる側としては、繰上げ返済が可能ならば、金利が高くなればどんどん繰り上げていく。高い局面に借りた人が下がってくれば、という事態が起きることも、別にかまわないということですか。
○ 事務局
 ええ、そういうことも折り込んで、制度の安定性なども考えて2.1という数字を設定しています。
○ 委員
 どうも、ありがとうございました。
○ 委員
 いまの続きなのですが、14頁の2の、「住宅の床面積」、現行も改正も50平米以上となっています。いま、ずいぶん晩婚化が進んでいると思いますが、独身者が家を持とうとするとき、必ずしも50平米もないような家を買いたいという人もいるのではないかと思います。この「50平米」という根拠は、どういうところから出てきているのですか。
○ 事務局
 建設省が所管なのですが、最適な住宅の居住面積の基準をいろいろ出されています。この程度以下の小さな家を持つことはあまり推唱していないことから、融資制度については一定のレベル以上を払い出し要件としています。あるいは、住宅ローン控除という制度もありますが、そういう制度と整合性を持たせた床面積のレベルになっています。
○ 会長
 よろしいでしょうか。それでは、「その他」に入るかと思いますが、資料7、1月26日に審議会の整理・合理化が行われるということで、大綱が取りまとめられたようですので、事務局から説明をお願いします。
○ 事務局
 審議会については中央省庁等改革の一環として、審議会のあり方についても中央省庁等改革推進本部において検討されているわけです。その結論として、本年1月26日に「中央省庁等改革にかかる大綱」が取りまとめられました。それがお配りしている資料7です。そのうち、大綱の関係部分を抜粋しているわけです。
 具体的な方針ですが、5の「審議会等の整理合理化」というところに書いてあります。「活動不活発なものは基本的に廃止」、「法令上、時限が設けられたものは、時限の到来等により廃止とする」。3番目、これが我が審議会にかかるところですが、「原則として廃止する」となっています。「但し、行政の執行過程における計画・基準の作成について、法律又は政令に基づき、審議会等が決定若しくは同意機関とされている場合又は審議会等への必要的不議事項が定められている場合については、その必要性を見直した上で必要最小限の機能に限って存置する。それから、基本的な政策について審議するものを数を限定して存置するという原則が謳われています。
 我が財形審については、に当たるかどうかという問題があるのですが、結果的には原則として廃止という中に入ってしまいました。19頁、「以上、1から5の結果、個々の審議会等の扱いは別表のとおりとし、存置される審議会等の名称及びその書証事務、組織のあり方については今後確定される」となっています。別表の中で、21頁の下から5行目、右のほうに「勤労者財産形成審議会」、20頁の3、廃止する審議会118審議会等の中に「勤労者財産形成審議会」も入ることになりました。したがって、2001年1月からということになりますが、財産形成審議会については基本的に廃止していくことが決まったわけです。
 しかし、財形については審議する場がないかというと必ずしもそうではなくて、18頁の(3)の、「基本的な政策について審議するものを数を限定して存置する」ということになっています。この中に「中央労働基準審議会」は存置されることになっています。したがって、労働省としては、この中央労働基準審議会をいまの形のまま存置するのではなく、他の審議会の機能も統合して、いわば労働政策全般にわたる審議会にしていこうと考えています。この中に、財形に関する審議もできるようにしていこうという考えであります。
 細部はこれから検討していくわけですが、現在のところ考えているのはいま申しました中基審、これは政策的に幅広く労働関係を議論できる審議会にしていく。仮称として、例えば「労働政策審議会」という形にしてはどうかと考えています。審議会の構成については、「労働政策審議会」は公労使の3者構成を維持する。それから、審議会には必要に応じ分科会、部会等を設置することを考えています。
 したがって、財形についての議論も、この「労働政策審議会」でしていただく。その場合には、3者構成を維持する。必要に応じて、部会、分科会等を設けて議論していく。このような考えをもとに、現在、細部を詰めているところです。今後、各省等設置法案の立案作業が進められることになっていますので、その後の進捗状況については適宜、審議会にご報告したいと思います。以上です。
○ 会長
 ありがとうございました。もし、ご意見、ご質問がありましたらどうぞ、よろしいですか。
 それでは、本日の審議を以上で終わります。署名委員は奥村委員と河口委員にお願いします。よろしくお願いいたします。どうも、ありがとうございました。
 
(注)本文中に記載されている資料については多量なため省略しております。
 資料についての詳細及び問い合わせについては、労政局勤労者福祉部企画課 03-3593-1211(代)までお願いします。






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