第113回 中小企業退職金共済審議会 議事録

 日時 平成12年7月7日(金)10:35〜12:05
 場所 中央合同庁舎 第5号館 共用第9会議室
 出席者 
[委 員]今野委員、宇野澤委員、奥平委員、勝委員、菅野委員、木村委員、桜井委員、左近充委員、毛頭委員、茂木委員、山路委員、佐藤委員、渡辺委員
[事務局]澤田労政局長、奥田勤労者福祉部長、中沖福祉課長
 議題
 (1)中小企業退職金共済制度における資産運用の効率化等について
 (2)建退共における掛金納付方法のあり方検討会報告書について
 (3)その他
 議事内容  
○会長
 それでは委員の方々がお集まりになりましたので、ただいまから第113回中小企業退職金共済審議会を開催いたします。まず委員と事務局の方の交代がありましたので、ご報告いたします。山口委員が4月19日にお亡くなりになりました。その後任として平澤委員が任命されましたが、今日はご都合でご欠席でございます。
 また労働省の人事異動については、6月9日付で鈴木勤労者福祉部長の後任として奥田部長が、4月1日付で落合福祉課長の後任として中沖課長がそれぞれ就任しておられます。
 それでは、本日の議題に入る前に、前回の審議会でご審議いただきました清酒製造業退職金共済制度、林業退職金共済制度の予定運用利回りの改正等に係る政省令等が公布されたとのことですので、まずその点について、事務局よりご報告をいただきたいと思います。

○福祉課長
 それでは、政令告示改正のご報告をいたします。前回の審議会でご議論いただきました内容に基づき、政令及び告示が6月30日に公布され、7月1日から施行されたところです。委員の皆様方には改めて感謝申し上げます。
 まず政令ですが、「中小企業退職金共済法施行令の一部を改正する政令」ということで、平成12年政令第369号となっております。具体的な中身はご承知のとおり、清酒、林業に関して退職金額の見直しを行ったものです。
 また併せて「中小企業退職金共済法2条4項に規定する業種を指定する等の件の一部を改正する件」ということで、労働省告示第59号によって、林業退職金共済制度について、1カ月を15日としていました換算日数を17日に改定しています。以上です。

○会長
 それでは、早速今日の議題に入りたいと思います。まず議題1ですが、「中小企業退職金共済金制度における資産運用の効率化等について」のご報告を事務局から受けたいと思います。

○福祉課長
 それでは、資料1についてご説明申し上げます。中退資産の運用の効率化については、これまでも何度もこの審議会の場でご議論いだたいております。平成11年2月の第108回審議会においてご議論いただきました「ALM研究会報告」を踏まえて、私どもにおいて基本ポートフォリオを策定しております。ポートフォリオというのは、ご承知かとは思いますが、資産配分の割合のことで、運用資産のうち、例えば、債券を何パーセント保有する、株式を何パーセント保有するということを決定するものです。この基本ポートフォリオに基づいて資産の効率的運用を図ることとしているわけです。
 お手元の資料は、そのあとに「参考」ということで第108回の審議会でも出していますが、ALM研究会の報告の概要を付けてあります。この研究会は平成10年度において、ALM分析手法の導入を図ることを目的として研究会を開催したわけです。その内容については、先ほど申しましたとおり、108回の審議会において一応ご説明しましたが、その後交代された委員もおられますので、もう一度簡単にご説明したいと思います。
 ALM分析と申しますのは、例えば、掛金の支払いから給付が終了するまで数十年とか、非常に長期にわたるものについて、そうした長期的な資産と負債の関係をまず明らかにし、その上で目標とすべき資産配分の割合、すなわちポートフォリオを作成するための分析手法です。現在、企業年金とか、公的年金の運用方針の決定においては、大変広く用いられているものです。
 この研究会は、一般の中退制度の加入の平均期間が約9年であることも踏まえて、おおむね10年先程度を見通すということで、2010年を1つの目安として考えております。また大変長期にわたる見通しを付ける必要がありますので、そのシナリオが必要となってきます。そのため日本の実質GDPの成長率を年平約1.5%ということで仮定しており、これは1枚目の2で書いてあるような形です。
 その際、私どもとしては累積欠損金というのは大変問題ですので、累積欠損金を中長期的に解消していくことを念頭に置いてシミュレーションを行っており、その結果、基本ポートフォリオの候補を4つ選んだわけです。それが「参考」の2頁目の「累積欠損金解消のシナリオ」と「基本ポートフォリオの候補」T〜Wとなっています。期待リターンが4.0、3.8、3.5、3.44ということで4つのポートフォリオがこの研究会の中では示されたわけです。
 なお、表の右側の「基本ポートフォリオの候補」の下に「期待リターン」があって、その下に「リスク」、「リスク資産割合」と書いてありますが、リスクというのは、大まかにいえば、Tを例にとりますとリターンの4.0パーセントという値からどれほど誤差が生じるのかということを示した数字で、いわゆる標準偏差です。若干不正確な言い方を許していただくとすれば、リターンの4%に対して、±4.81%ぶれる可能性があるということです。
 また次の「リスク資産割合」というのは、(注)の国内株式と外国債券、外国株式を合計した資産の構成比で、為替とか株式の上下によって若干相対的にリスクが高いものをこういう形で合わせたものです。
 それでは、この中からどういう形でポートフォリオを決めていくかですが、この選定に当たっては、資産運用の効率性と安全性の2点をバランスよく考える必要があるわけです。そこで中長期的には累積欠損金の解消を見込みながら、リスクの値やリスクの資産の運用割合について、まずリスクの値が期待のリターンを上回らないという基準を立てています。これは単年度で元本割れとなる可能性が非常に小さいということを重視したわけです。次に、リスクの資産割合が、当時のリスク資産割合13.7%から過度に乖離しないこと。したがって、急にリスクの高い資産を多く増やすということはしないということです。
 こうした考え方に基づき、これら4つのポートフォリオの中から3.5%程度のリターンが見込まれるVのポートフォリオを選択しています。
 資料1に戻り、こちらの資料が具体的にどういう形になったかですが、この研究会の報告が出たあと、例えば、生保の一般勘定が利回りが2.5%から1.5%と非常に大幅に低下したという状況もありましたので、Vを若干微修正するシミュレーションを行いました。その結果が 1.の(1)に「基本ポートフォリオ選定基準」とあり、さらにもう一度こういう基準を立てて選定し直したわけです。
 まず期待リターンの値が3.2%を上回るものであること。これは先ほどはなかったわけですが、中退については累積欠損がありますので、責任準備金のベースで予定運用利回り3%を達成するためには、準備金を欠損分だけ下回る資産総額については、3.2%で回す必要があるという意味です。
 それから先ほど申しましたが、リスクの値が期待リターン値を上回らない。したがって、単年度で元本割れの心配がないという部分も重視しております。またリスクの資産割合がVの場合、21.56%になるわけですが、20%程度を上回らない水準であるということ。この3点を1つの基準として基本ポートフォリオを策定しております。
 その結果が(1)のポートフォリオで、具体的な数字はここにあるとおりで、リターンが3.43%です。具体的な資産の保有割合は国内債券が7割、株式が1割、転換社債が1%、外債4.5%、外国株式5.5%、生保の一般勘定が9%ということで、リスク性の高い資産については20%ということになっています。平成10年度末の実績のポートフォリオと比較しますと、リターンで約0.2%のアップになっています。
 一方、資産配分については、国内債券が4.3%の減、株式が3.5%増加、外債が2%程度の増加、生保の一般勘定については2%の減ということでリスク性資産については6%程度増えるという形になったわけです。
 なお、参考として、いまのは資産全体についてのポートフォリオですが、その中の3割強を占める金銭信託についてのポートフォリオはどうなるかが下のほうの表で、リターンが4.91%、債券が4割、国内株式が3割弱、外債が13%程度、外国株式が15%強ということで、リスク性資産が57.1%という形になっているわけです。
 では、この基本ポートフォリオへどのように移行していくかが今後問題になるわけですが、既存のファンドを解約するという形で進めていきますと、解約手数料が発生して、かえって損を被りますので、無用のコストを生じない方法、すなわち、償還期限が来た債権をこのポートフォリオの方法に従って新たな資産に投入していくという形で無理のない形での移行を基本としています。
 次の頁の3の「移行にあたっての前提」の(2)を見ますと、「乖離許容幅」という言葉が出ています。ポートフォリオの数字に厳密に固執してしまうと、かえって損が出ることがありますので、ポートフォリオから一定のずれ、変動幅を許すということを認めています。具体的には金銭信託においては±5%、資産全体については±2%の数字をとっています。基本ポートフォリオの乖離許容幅、したがって、ずれの範囲内へは約1年程度で達することができるだろうと考えています。ただ、先ほど述べた基本ポートフォリオで見込んだリターン、リスクの水準があります。この水準を達成するためには、さらに微調整が必要になってきますので、さらにもう1年を見込んで、おおむね2年で基本ポートフォリオへ移行するという計画です。このことを書いたのが4の(2)で、「移行コスト、金融市場への影響などを勘案し、概ね2年を目途に無用のコストをかけることなく目標とするポートフォリオに近づけることとする」ということです。
 なお、第108回の審議会において、5年程度の移行期間を設けるという説明をしたことがありましたが、その後、昨年度において、比較的高いリターンの期待できる金銭信託の上限枠を30%から35%に引き上げたことに伴ってリスク性資産を増やすことができましたので、2年程度で移行可能となったものです。
 またいま金銭信託の上限枠の緩和ということを申しましたが、運用規制の緩和の観点から、そのほかにも金銭信託に対する5・3・3・2規制の廃止を行いました。安全性の高い債券等を5割以上保有する。さらに株式を3割以下にする、外国証券を3割以下とする、不動産を2割以下にするというような、一つの規制が金銭信託にあったわけですが、これについては廃止しています。
 前の審議会でもご指摘いただきました資産運用状況の公表ですが、資産運用状況については、特殊法人一般についての情報公開、説明責任といった観点から、今年度中にも公表する方針で、現在どういう方法でやるのかを勤労者退職金共済機構において検討中です。私からの説明は以上です。

○会長
 ありがとうございました。それでは、ご意見、ご質問をお願いいたします。

○委員
 一つだけ教えてください。「参考」の2頁の「シナリオC」の中で、「2010年においては現状以上の累積欠損金を抱えることとなるが、長期的に累積欠損金を解消する」ということですが、長期的にというのは、いつごろを目途にしておられるのでしょうか。

○福祉課長
 例えば、シナリオVのポートフォリオの場合ですと、2010年では2,400億円程度の欠損になりますが、単年度としては2007年からプラスとなりますので、そのプラスを積み重ねていって長期的に解消する見込みということです。

○委員
 長期的に解消できるのは、大体いつごろになるのでしょうか、という質問ですが。

○福祉課長補佐
 ALM研究会において何年ごろに確実に解消するという数値目標を定めたやり方はしておりませんが、当時のシミュレーションにおいて、資料6頁の「2010年に剰余となる確率」、ですから、その累積欠損を解消できる確率ということになりますが、累積欠損については26.7%ぐらいの確率で解消できるだろうと。単年度については47.2%ですから、単年度の欠損については大体五分五分ぐらいの確率で解消できるようになるだろうという試算をしています。
 ALM研究会においても、その前提として資金運用のみで累積を解消するということについては、いたずらにリスクが大きくなるような運用をやってもしょうがないといったこともありますので、資産運用のみで解消するという考え方を、この研究会においても用いておりませんので、何年度までに解消するといったような具体的な立て方はしておりません。

○委員
 それは分かるのですが、長期的に累積欠損を解消する、何年度を目標にしていないということは分かりますが、そのシミュレーションをした結果、大体いつごろに解消できるのかというのをお聞きしたかっただけなのですが。26.7%の確率で2010年に解消できると解釈したらよろしいということなのですか。

○福祉課長補佐
 さようでございます。

○委員
 そうしたら7割以上は解消できない可能性があると。

○会長
 それは2010年に解消する確率が26.7%ということです。ですから、たぶん確率計算していくと、2015年にすると、26.7が50%になるとか、そういう確率計算をしているのです。

○委員
 私が知りたいのは、限りなく9割ぐらいの確率になるのは。

○福祉課長補佐
 そこまでのシミュレーシヨンはいたしておりませんが、先ほど申し上げましたように、一時的に単年度について収支が黒字にならないこともありますが、単年度の欠損については、このシミュレーションによりますと、中央値を取っていきますと、2007年には単年度の黒字に転じますので、2010年には先ほど申し上げました26.7%程度の確率かと思われます。そこからあとはむしろ単年度の黒字で積み上がってまいりますので、徐々に解消を迎えるという形で試算されております。

○委員
 関連ですが、ここの文章を見る限り、そのようにはちょっと読めないのです。「2010年においては現状以上の累積欠損金を抱えることになるが」とあります。ですから、累積欠損金はこれから制度的に解消しようという意味ではありませんか。

○福祉課長補佐
 まず単年度の欠損と累積の欠損というのがあるわけです。

○委員
 単年度は分かっていますから累積欠損ですよ。

○福祉課長補佐
 まず単年度の赤字が2007年程度まで続き、そのあと今度は単年度の黒字に転じて累積が解消に向かうと。
 ただし、2010年までは当時で13年先ですから、13年間若干下降線をたどりますが、そのあと2007年から2010年まで3年程度リカバーしたところで、この試算を行った平成10年当時と比べると、累積の状況は若干悪化しているという状況です。ただし、それでも10年先ですので、毎年のリスクのぶれを考えますと、その時点で累損が解消している可能性は4分の1程度はある。26.7%と申しましたのは、そのぶれの範囲として、要するに10年先でぶれがかなり大きくなっていますので、そのぐらいの確率で黒字になっている可能性はある。それ以外の場合はもちろん累積の欠損が残っているわけですが、その中で平成10年当時と比べて累積のマイナスが膨れているかマイナスになっているかということで、単年度の赤字が2007年程度まで続くということは、2007年程度までは平均値を取ってきて、期待リターンで平均値、中央値を取ってきますと、その辺りまでは累積の損失は拡大していく。ただし、その後は縮小してきますので、その上昇カーブに乗ってからあとは、基本的に累損は解消していけるという試算です。

○委員
 長期的に累積欠損金を解消しようではないかというふうにとったわけです。だから、長期的というのは2007年以降でしょうが、いつごろまで続くのかなという質問だと思うのです。私などもそれを聞きたかったのでご質問したのですが。累積欠損が2010年の段階ではいまよりも多いということは事実なのです。事実というか、そういう見方をしているのですが、逆に言えば、2007年の時がピークかも分かりませんね。それを2010年の段階では少し減り始めて、30%減っているかも分からないという見方でいいのですかね。

○会長
 いえいえ、減るかもしれないのですが、減るときに確率があるのです。もっと減るかもしれないし、もっと増えるかもしれない、

○委員
 確率の問題はあると思います。

○会長
 ですから、26.7%というのは、もっと減るほうを取って、ゼロになってしまう確率が26.7%ということなのですが、それでいいのですよね。どういうわけかリターンが良くなって、どんどん減り始めて、もしかしたら2010年に欠損金がゼロになってしまうかもしれないという確率が26.7%という計算をしているのです。

○委員
 確率はいいのです。ここで言っている「長期的に累積欠損金を解消するであろうというのは、どのぐらいを見ているのですか」と聞いているのに、そういう言い方だと分かりにくいと申し上げたわけです。

○福祉課長補佐
 当時のシミュレーションの前提として、何年度までに解消するという数値の設定はしておりませんので。

○委員
 それならそれでもしょうがないと思います。

○委員
 累積欠損を3番目のシナリオみたいなもので解消するというのは、極めて困難なのです。だから、減少しないというところはシナリオ1だと、運用利回りが4%の平均値で、リスクが±4.80でマイナスになることもあるということですが、いちばん良い場合は8%強で運用する可能性がある。そうすると、実際に予定運用利回りは3ですから、5%ぐらいずつプラスに出てくる可能性もあるということになりますが、そうすると、平均をとってみても1%はプラスが出てくるから、全部剰余金を、今までの累積赤字、欠損金の解消に向ければ2010年ぐらいまでにトントンになるかもしれないということですが、先ほどの話ですと、シナリオ3だと3.5で、予定利回り3との対比では0.5ぐらいしかないし、リスクもあるから2010年までに解消するというのは26%ぐらいで、半分まで行っていないということですね。先ほどの話だと、シナリオ3だと利鞘だけで欠損金を解消するというのは、極めて困難だという話をされたような気がするのですが。

○会長
 そうはおっしゃっておられないのではありませんか。時間がかかるということだと思いますが。

○委員
 たぶん0.2か0.26ぐらいだというのは、これだけだと10年とか10年プラスぐらいで解消する確率は極めて少ないということですね。

○会長
 これはシナリオaでも、たぶん2010年で累積欠損解消と言っても、これは確率のはずですから、せいぜい5割とか、そういう基準でやっているのでしょう。ここでも確率ですよね。

○福祉課長補佐
 はい、それは確率的に考えていくしかないと思います。ちなみにシナリオaで2010年に欠損金を解消するという場合に、累積欠損金が解消できる確率として、このポートフォリオの場合ですと、47.9%の確率と。ですから、五分五分ぐらいと。

○委員
 先ほど最後に中沖課長が言われた資産運用状況の公表ですが、特殊法人としての立場からどうするか考えたいというお話でしたが、私がこの前申し上げたのは、実際問題として、特に昨年度の場合、非常に株価が上がったことによって、例えば、厚生年金基金などは運用利率が11%上がっているのです。それを反映しない簿価では、我々が主な議題としている利率をどうするかということについて議論できないではないか、と申し上げたわけです。

○福祉課長
 例えば、年金福祉事業団などは、平成11年度の決算で11%の利回りを出しています。ただ、年金福祉事業団というのは、資産のベースで4割近く株式を持っていて、株式によって上下する割合が非常に多くなっています。向こうの昨年まで担当していた課長に聞いたところ、大体日経平均1,000円上がると4,000億円程度上下するということになっていて、株式に大変依存したような形になってます。
 私どものほうも、確かに運用を効率化しなければならないという意識で今やっているわけです。ただ、先ほど基本ポートフォリオで見ましたように、私どものほうは株式の割合が基本ポートフォリオに移行して10%ですので、その点については、年金福祉事業団ほどは利回りが出てこない形になっています。
 1点付言いたしますと、実はこの4割近く持つという形の非常にマイナス面もあって、年金福祉事業団については、平成6年には−0.34%ということで元本割れを起こしています。これは株式を非常に多く持っていることのマイナス面で、私どもの中退制度については元本割れを起こすと、そのリスクがすべて共済をかけている事業主のほうに回りますので、なかなかそういう形にはなりにくいのかとは考えています。委員がご指摘のようにきちんとした議論をしなければならないというのは当然あるわけですので、できるだけ時価評価が早くできるような形で検討してまいりたいと思っています。
 事前にご説明したときには、債券の問題で、例えば、私どものほうの債券については、バイ・アンド・ホールド、つまり、1回買ったらそれは最後まで売らずに持つという形になっていますので、それを中間的に、例えば、時価評価して評価益が出る。それを果たして見込んでいいものかどうかです。最終的には額面しか返ってこないわけですから、そういった意味で時価評価をどこまで、どういう形でやるか。実は年金福祉事業団などは、すべてほとんど自主運用ではなく、外に任せており、債券についても途中でどんどん売ったり買ったりしておりますので、そういったところと同じような形で時価評価していいのかどうかという問題もありますので、そういった問題も含めて現在検討しております。できるだけ早く方針を固めて、皆様方にご説明したいと思いますので、よろしくお願いいたします。

○委員
 できるだけ早くお願いしたいと思います。

○委員
 今の質問に関連するのですが、今日の説明ですと、リターンも重視するが、リスクも重視する。つまり、元本割れを起こさないような、ある意味で安全性を考慮した形でシナリオの3番目が選ばれたということで、非常に分かったのですが、今後の動向としては、インハウスの運用部分に比べて、金銭信託の部分が相対的に増大するということだと思いますので、今のご質問にもありましたように、情報開示というのは非常に重要だと思いますが、運用の実績だけではなく、例えば、どういう運用機関を選定しているのか。それはどういう基準で選定されているのかといったことも含めて、今後公表するという話だったのですが、何を公表すると今お考えなのか伺いたいと思います。つまり、運用実績を考えているのか、あるいは運用機関をどのように選定しているのかということも含めて考えているのかということですが。

○福祉課長
 どこまで公表できるのかということも含めて検討してまいりたいと思っています。

○委員
 今日提起いただいている内容の扱いですが、先ほど最後に言われましたように、「今までの5・3・3・2の決まりを廃棄して今度はこのように動きます」ということなのだろうと思います。そうすると、今日で決まる内容なのでしょうか。扱いとして「こういう方向でやっていきます」、あるいはシナリオcを前提に基本ポートフォリオを選定するということで、私どもが了解すればいいということで取ればいいのでしょうか。

○福祉課長
 基本的には私どもの責任で運用させていただいておりますので、こういう方向でやりたいという報告を申し上げたということです。

○委員
 ある種の公開のようなものですね。

○福祉課長
 当然、運用方法については、皆様方にきちんと公開した上で議論していただく必要もありますので、その都度必要に応じて私どももこの場にかけて議論していくということです。

○委員
 いま責任という言葉が出ましたが、前のこういう会議にも資産運用の責任という問題が出たと思います。実質的には後ろに見える勤労者退職金機構の中の中退金の事業本部において運用すると、そういう意味合いからいうと、福祉課長が言われる労働省において責任を負っているというのとは、ちょっとニュアンスが違うのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

○福祉課長
 一義的には機構のほうに責任があるわけですが、当然私どもは指導監督機関ですので、私どもにもその意味で責任はあるという意味です。審議会を運営しているのは私どもですので、その関係でも当然責任があるということです。言葉が非常に不正確でしたが、そういう意味で申し上げたつもりです。

○委員
 いまの佐藤さんのお話ともかかわりがないわけではないのですが、以前にも管理体制が問題だという話があったと思うのです。いまの状況というのはリスクも少し取らざるを得ないのですが、それだけにある意味では、過去のように超長期的に物事が安定していくという前提はもう壊れているわけです。いまから言うと、ポートフォリオも2010年ということで、10年間ということです。いままでは5年ぐらいで大体見直すみたいな話が、いろいろなケースがありましたが、それでももたないような状況が続いていた。そういうことになると、今後移行期間が2年ということになっていますが、途中でのそういったチェックをどのようにお考えになっているのか、あるいはどのぐらいの期間でそういうチェックをかけていくのか。当然毎年やられるのでしょうが、この審議会との関係ではどのようにお考えになっていますか。

○福祉課長
 毎年審議会においては、当然資産運用の結果を決算で報告しています。そこできちんとした利回りが出てきますので、その都度そこではご議論いただいていると感じています。したがって、その結果等を見て、「これではまずい」という議論も当然あるわけですし、「この方向で行ってほしい」という議論もあるわけですので、そういった審議会の議論も踏まえながら、私どもとしては運用方針をやっていきたいと考えています。
 したがって、ここで1回このポートフォリオを出したから金科玉条で、ずっと今後も、例えば、10年なら10年これでやらなければならないというわけではなく、当然金利情勢の変更とか、経済情勢の変更もあるわけですので、その点については柔軟に考えたいと思います。

○福祉課長補佐
 若干補足しますと、中退法上、予定されている予定運用利回りというのは、法律上、少なくとも5年に1度は見直すという形になっています。そのようなことも加味すると、少なくとも5年に1度は定期的にチェックしていく必要があるだろうと考えています。
 本日の資料1ですと、「移行方針」の(3)にもありますが、移行計画、あるいはそもそものポートフォリオについても市場動向を踏まえながら、状況に大きな変化があった場合は、随時弾力的に見直していくという形にしていきたいと考えております。

○会長
 今おっしゃられた議論というのは、最近の流行りの言葉でいうとガバナンスの問題になります。ガバナンスの問題を考えるときに、いつも重要な項目の1つがディスクロージャーの問題があります。先ほど事務局からお話いただいたように、ディスクロージャーについては、そんなに遠くないときに、またここで重要な議題として挙がると思いますので、そのときに関連付けながらもう一度議論したいと思いますが、それでよろしゅうございますか。

(了承)

○会長
 それでは、次の議題に入りたいと思います。第2番目の議題は、「建退共における掛金納付方法のあり方検討会報告書について」です。それでは、また事務局からお願いいたします。

○福祉課長補佐
 資料2です。この資料はもう少し製本した形で前回の審議会の際に提出しております。前回の審議会において時間の都合で説明は次回にさせていただくとご説明させていただきました。
 「建退共における掛金納付方法のあり方検討会」と申しますのは、平成10年以降、この審議会の場でも種々ご議論いただいておりました建退共の加入促進についての改善方策の中でも掛金の納付方法の見直しを行うということが盛り込まれていた、その流れを受けて、昨年度において勤労者退職金共済機構の建退事業本部のほうで9回の議論を経て、取りまとめられたものです。
 具体的には、本日の資料2の30頁に「検討会の開催経緯」、29頁に委員の構成が入っていますが、29頁の名簿にありますように、建退共の事業本部を中心として、建設業の事業者の皆様、あるいは労働側からも委員の方にお入りいただいて方式を検討してまいったところです。
 具体的な検討経緯は資料30頁にありますように、過去の種々のカード方式、そのほかの方式を検討し、その中でどのようなものが可能であるかといった点について検討して取りまとめられたものです。具体的に資料2に沿って、この検討会の報告書を粗々かいつまんでご説明申し上げます。
 この検討会の当初の問題意識としては、資料の1頁にありますように、「検討会設置の目的」ということですが、平成10年当時の一連の新聞報道などにも見られましたように、建退共の証紙について、1つは事業主即ち共済契約者にとって、手帳に証紙を貼付するという事務が煩雑である、あるいは新聞報道に見られるような現場の労働者に実際に証紙が行き渡っていないといった問題、あるいは逆に公共事業のように、証紙を先買いするような場合においては、共済契約者の手元に証紙が残ってしまうといった種々の問題点が指摘されていました。
 またこのような点については、その当時の問題において、建退共のほうで行った実態調査等でもアンケート結果等として取りまとめられ、この審議会の場でもご説明したところです。そのようなことから、先ほど申し上げた10項目にわたる改善方策が、平成11年3月に取りまとめられましたが、その中で、証紙以外の方法の導入について、建退共本部に検討の場を設けるということが、労働省、建設省、それから建退本部で取りまとめた改善方策の中でも盛り込まれ、このような検討会を開始することとなった次第です。
 検討にあたっての具体的な視点としては、資料2の2頁に、「現行の手帳・証紙方式の問題点」として、1つは事務が煩雑である。これは手帳に証紙を月に1度とは限りませんが、給料の支払いの都度、貼り付けるという事務が、現在のパソコンなどが普及してきた段階において、事務としての煩雑さが非常に強く認識されるようになってきているといったところです。
 またこれは実態論としての状況ですが、2点目として、「証紙の貼付状況の把握ができない」ということです。これはむしろ、この事業の運営者としての機構の建退事業本部のサイドから見てということですが、建退事業本部のほうで、どのぐらい手帳に証紙が貼られているかを把握できるかというと、現在ですと、手帳を更新する際に手帳が送付されてくる、そのタイミングしかありません。そのようなことから、共済契約者つまり事業主に対して、証紙が確実に貼られているかいないか、証紙の貼付の確実な履行についての指導などを行う上でも、なかなか手元に材料がないといった点があります。
 3点目として、公共工事の発注者においても、具体的な証紙の貼付状況が、同様に把握できないといったことから、証紙の過不足といった問題も生じています。
 4点目として、これは実態論ですが、現場の労働者つまり被共済者において、手帳を持たないことが、しばしば見られるということです。これは具体的には給与の支払いの都度、事業主において手帳に証紙を貼付するという手続が必要になってくることから、事業主が手帳を預かっているというケースがまま見られます。このようなことから被共済者である労働者自身が、自ら手帳を持ち歩くことをせず、事業主に預け放しになっている。それは事業主のほうが預かり放しになっているとも言えるかと思いますが、いずれにしてもそのような場合には、被共済者であるという自覚に乏しくなり、場合によっては自分が建退共の退職金を受け取ることができる、あるいはどのぐらい受け取ることができるということについて、把握できないケースも見られるのではないかという恐れがあります。
 そのようなことから3頁の「2」ですが、「事務的に簡素で、合理的なものであること」、「制度の適正な履行に資するものであること」、3点目として「コスト的に実現可能なものであること」という3点の前提条件を置いて検討を開始しています。
 3番目のコストの点について申しますと、あまりに過大だとコストが見込まれるものについては、さすがに検討の対象から外すというものです。具体的なコストについては、まだ試算し切れておりませんが、あまりに過大なコストが見込まれるものについては、その旨、報告書の中で特記していくといったことが行われています。
 また「新たな掛金納付方法のあり方を検討するにあたって留意すべき事項」として、そもそもこの建退制度の前提となっている、企業間を労働者が移動することへの対応や、元請・下請関係への対応、すなわち元請事業主が一括して証紙、出退勤の管理、その他を行っている場合が多いといったことです。
 あとは掛金の納付、中小・零細企業への対応、個人情報の保護等の配慮、その他に挙げているような事項についても併せ、考慮しながら、システムを検討してまいったところです。その際、過去の検討経緯等については、6頁以下に、過去において検討されたようなものについても検討しているのですが、詳細は省略させていただきます。
 具体的にどのようなシステムをこの報告書では提案されているかと言いますと、資料の20頁の「掛金収納システム」の図で、いちばん右の被共済者というのが手帳を所持している労働者、間の契約者が共済契約者即ち事業主、左側が機構で、建退事業本部です。
 現在の手帳に替えて、磁気カード、ないしICカードといったものを使用し、それは更新せずに、ずっと労働者が保持するというシステムを前提にしており、その場合、被共済者と契約者の間に矢印が3本ありますが、いちばん典型的なのがいちばん下の矢印です。具体的には、しばしば大きな塀で囲って入口にゲートが設けられている工事現場を、委員の皆様もご覧になっていると思いますが、その現場に出勤記録装置を設置し、被共済者即ち労働者は、自ら所持するカードを記録装置に挿入することで入構するということを考えています。
 具体的に申しますと、出勤記録装置と言って、普通の事務所などでは受付に機械があり、毎日出勤・退社の際に、出勤時刻、退社時刻を記録するカードを挿し込んで出退勤の管理を行うタイムレコーダーのシステムがありますが、あれと同様の記録装置をイメージしていただければと思います。ただし、その場合、出勤、あるいは退場といった記録は、カードのほうではなく、自動記録装置のほうを通じて事業主の管理するパソコンに記録されるというシステムを考えています。被共済者は現場に出ますと、そのカードで入構し、そのことによって出勤日数がカウントされることになります。
 この出勤記録装置を通じて事業主のパソコンにまとめられた出勤状況の記録を、電子メールなど一定の書式を設定することを想定していますが、電子媒体で建退事業本部に毎月送ってもらう。建退事業本部のほうでは、それで証紙の貼付状況が、各被共済者ごとに把握できるというものです。
 証紙のたまり具合はそれで分かるわけですが、掛金の納付については、金融機関からの引落としを想定しており、一方で機構のほうから事業主すなわち共済契約者に対して掛金請求を行い、その金融機関等を通じて掛金の支払いを受け、領収証を毎月発行していく。その掛金の請求は電子媒体で届けられた証紙の貼付状況というか、出勤状況に基づいて行うということを考えています。
 被共済者側からしますと、先ほど手帳を保持していないことが多いと申し上げましたが、手帳がカードになったときに、どういう不便が生じてくるかということです。まず第一に想定されるのが、制度的にはもともとその手帳を被共済者が管理して、自らの証紙のたまり具合が随時確認できるというシステムだったわけですが、今度の場合は、カードだけを見ても、証紙のたまり具合、自分の退職金のたまり具合が分かりませんので、それについては建退事業本部から年に1度、ないし数度、共済契約者、被共済者、双方の個々人ごとに、どれだけのポイントが貯まっているかを郵便で通知する。それと併せてフリーダイヤルなどで、電話の自動応答装置などを用いて、被共済者が必要に応じて、随時自分の出勤状況、自分のポイントのたまり具合を確認できるようにするといったシステムを、この検討会の報告としては考えられるのではないかと思います。
 この検討会で検討している掛金収納システム、カードのシステムというのは以上ですが、このようなシステムでやる場合に想定される問題点として掛金の納付時期、そのほか若干の問題が検討会の報告書で触れられております。
 以上のような形で昨年度いっぱいかけて、9回の検討を行い、このような検討会の報告書が取りまとめられたところですが、最初に申し上げましたように、この報告書ではコスト、あるいは掛金の納付時期など、細部が全く詰まっていません。そのようなことから、昨年度の建退共におけるあり方検討会報告書において示された新たな掛金納付方式について、本年度、来年度において建退事業本部においてこのシステムの概略設計、青写真を1度書いてみようということを考えております。
 概略設計といっても、具体的な、例えば電算システムのプログラムを書いてしまうといったようなところまでではなく、基本的に全体についての青写真をコスト計算なども合わせて行っていくということを考えています。概略設計の過程においては、現場での試行、あるいは掛金の収納などに関して、金融機関に実際どのぐらいのコストがかかるのか、どのぐらいの手間がかかるのかといったことも含め、摺り合わせをする必要がある。20頁の図でICカードと縮めて申しましたが、これは大手の現場において、すでに一定程度普及しているカードのシステムがあって、実際にはカード1枚当たりの単価が相当かかるようですので、その場合にはICカードに替えて、磁気カードという形で、もう少しコストの安いカードを用いる。ただし、この場合ですと、建退独自のカードという形になってしまいますが、そのような形のものを用いる。中小、あるいは零細の現場においては、実際上は現在用いられているような出勤簿による出退勤の管理という形でやっていかなければ、事業主の全部が全部パソコンで管理できるわけではないと思いますので、やっていかざるを得ないということも考えています。それらも含めたトータルな試行、それから関係機関との摺り合わせを、今年度および来年度の2年間かけて進めてまいりたいと考えております。
 また現場での試行においては、共済契約者つまり事業主、あるいは被共済者つまり労働者に対する意識調査等を行い、現場での利便性等を確認していく必要もあるのだろうと考えています。
 概略設計、試行といったものの状況については、コスト計算などについては、この検討会でもその具体的な数字までは全く詰め切っておりませんので、ある程度の結論が見えてきた段階で労使の方に入っていただき、もちろんこの審議会も含めてですが、新たな場において報告し、評価、ご意見を頂戴したいと考えております。
 今年度および来年度における具体的な検討事項、検討状況としては、今年度、来年度において数カ所の現場で試し実験、試行をし、システムの実効性、あるいは共済契約者、あるいは被共済者の声をいただくとともに、システムの細部について、次に申し上げるような事項を検討してまいりたいと考えています。
 1つは掛金の納付について、口座引落としを行う回数、費用などです。具体的に申しますと、先ほどの電子媒体、あるいは出勤簿でやる場合にはOCRの様式で出勤状況を建退事業本部に送っていただくことを想定していますが、それが就業状況の報告に応じて掛金の引落としを行っていく場合、例えば、各金融機関から、週に何回とか月に何回ぐらいの引落としを行うかで、金融機関から引落としを行う際の手数料が決まってきます。そういった頻度に応じた費用の点なども含めて、各金融機関に意見を聞いてまいりたいと考えております。
 また、その引落としを行う口座として、事業主が複数の口座から、例えば、現場ごととか支店ごとからの引落としを希望する場合の取り扱いとか、この報告書の中でも若干触れてありますが、口座からの引落としが不可能な場合の取り扱い、口座引落とし以外の方法も考えておく必要があるのではないか。まず掛金の納付については、そんな点を検討していきたいと考えております。
 2点目として、掛金納付状況の被共済者への報告ということで、何らかの形で年に数回は行えるようにしたいと考えておりますが、例えば、郵便で送るのが最適な方法なのか、実際には現場を渡り歩くような労働者もおりますし、1年の間に転居された場合に、例えば、転居通知等を郵便局に出していなければ、被共済者に郵便通知を出しても届かないといった問題もあり得ます。
 さらには、先ほど電話のフリーダイヤル等で自動応答システム等も考えられるのではないかと申し上げましたが、そのほかインターネットとかいろいろな媒体で状況が確認できるようにする、その場合、技術的にどういうやり方があり、またその場合にどのぐらいのコストがかかるのかといった問題もあるかと考えております。
 そのほか、検討会報告で提起された概算納付方式といった方式についても、上記と合わせて引き続き検討していきたいと考えているところです。
 以上のような次第で、まず検討会のあり方研究会として提案されたシステム、それに基づいて今年度および来年度において現場での試行を含めたシステムの概略設計、それに伴うコスト計算といったようなことを進めてまいりたいと考えているところです

○会長
 ありがとうございました。それでは、ご質問、ご意見をお願いいたします。

○委員
 2年間かけていろいろテストをするというか、試行をするようですが、この文書の冒頭にもあるように、共済契約者15万事業所があって、220万人の被共済者がいる。どの程度試行するのか。トップゼネコンと言われるような所をやるのか、地場ゼネコンをやるのか、その辺りどの程度抽出して、いま言われたコストの問題、引落としの問題も含めて、被共済者に対する通知の問題等を含めて、規模はどの程度考えておられるのか説明していただきたいと思います。

○福祉課長補佐
 2年間にわたってやっていきたいと考えていますが、今年度においても数カ所程度の現場をやっていくことになるかと思っています。どのぐらいの問題点が出てくるか、特に現場の具体的な利用者が、この試行で共済契約者、被共済者、特にカードでやる場合にはシステムが変わりますので、被共済者の意識でどの程度の問題点が出てくるかといったこともありますので、現場で試しにいくつかやってみて、その状況を踏まえながら、さらに来年度において、どのぐらいのことをやっていくかを考えてまいりたいと考えております。これだけの現場の数でやると決めている数字はいまのところはありません。

○委員
 その前に、大々的な建退共事業本部による大掛かりな制度の実態調査が行われたというのは報告されているわけですが、建設業というのは、登録業者数全体からいっても56万と、大・中・小を含めて非常にたくさんあるわけです。いまおっしゃっている意味は分かりますが、どの程度の規模で、新しい納付方法に変えていくために十分だと思われる調査をするには、この程度の調査を行いますと言ってもらわないと、数カ所やられて「これで全部答えが出ました」という言い方では、ちょっと足りないのではないかと思いますが。

○委員
 私どもは中小・零細企業の方が結構多いのですが、このシステム設置の費用に関しても資料を集めていただいているのでしょうか。零細企業などで、これだけ被共済者からICカード、磁気カードの読取機を作って、それを電子媒体によって機構に通知をする、それらのシステム全部設置しないことにはできないと思うのです。

○会長
 順番で、先ほど佐藤さんがおっしゃられた件については、少し計画が具体的になったときに、もう一度報告していただいたらどうですか。いまはまだ決まってないようですから。

○委員
 こういう検討委員会の報告は前は冊子になって出され、今日は内容説明があったわけで、検討委員会はある程度論議はこの部分としては済んでいるというか、だったらどの程度の試行をするのだということを、ここで言ってくれるものだと私は思っていましたので、くどく聞いているのです。出来ていないのなら出来ていないでいいのですが。

○福祉課長補佐
 申し訳ございません。具体的な現場数などまで詰めた形での検討計画というのは、現在まだ策定できていません。そこは逆にこの検討委員会でも現場での感覚というか、現場での試行という部分、あるいは細かい使い勝手については詰められておりませんので、その辺はむしろ問題点を見ながら、必要に応じてさらに追加的な現場を加えていくといったこともあり得るだろうという形で、細部まで詰めずに走り出したところで、検討条件については随時報告したいと考えております。
 それから、中小・零細の場合のコストということですが、先ほどの私の説明が不足しておりましたので、報告書の20頁に戻りたいと思います。掛金収納システムとして、今考えているルートとしては大きく言って3つほどがあります。1つは、現在すでに大手のゼネコンの現場などで実用化されているICカードです。これは個々の労働者に1枚1枚カードを渡して、それに建設労働者の健康診断の結果とか、各種機械を操作する資格の有無などを記録し、同時に現場に出入構の際に、そのカードで操作することによって出退勤管理を行うというものですが、それにあとは建退共のデータを相乗りさせるということを考えています。この場合ですと、現在大手のゼネコンなどで使われているカードですと、1枚千数百円程度と聞いております。ただ、これに建退のほうも載せられるように加工する必要がありますので、それに若干乗ってくるのかと考えております。
 それと併せて出退勤管理用のカードリーダーを事業主に設置していただく必要がありますが、これも現在使われているシステムにプログラムを書き加える必要があるということになってくるかと思います。
 またそれほど大規模ではないと言いますか、基本的にはこのカードは、そのカード自体に記録するというよりは、出退勤の管理ができればいいわけで、コスト的にそのほかの機能まで付かない場合であれば、建退の出退勤管理用の磁気カードというようなものができるかと思います。これですと、もう1桁安くやれるのではないかというぐらいの感じだと聞いています。
 さらに20頁の「契約者」の上のほうに、「IC未対応」というのがあります。「磁気カード読取りまたは出勤簿による確認」です。これは現状と同様に、現場ないし現場の前の集合地点において出勤簿で出退勤の状況を管理するというものです。出勤簿に基づく出退勤の状況に基づいて毎月機構のほうに所定のOCRの様式で報告を送っていただく。この場合には電子メールではなく、OCRで報告を送ってもらい、それを機構のOCRの読取器で読み取り、あとは電子媒体で送られたデータと同様に処理していこうということです。この場合、コストは、基本的にはOCRの様式を送っていただく郵送料ということになってくるかと思います。現在でも年に1度ないし数度、手帳の証紙がいっぱいになった労働者がおられれば、その都度更新で郵送してやってもらうようなシステムになっていますので、郵送手数料という意味でいくと、その分だけ見れば、コスト的にそれほど大きくは変わらないのではないかと考えています。

○委員
 要望ですが、事務の簡素化という点では、こういった方向は望ましいと個人的には考えますが、今度また発表されるときに、もしお分かりになればということで、例えば20頁の掛金収納システムの中で、「IC未対応」というのは中小企業で我々が非常に留意しなければならない部分だと思いますが、全体の中で割合はどのぐらいになるのでしょうか。
 あと1つ気になることがあります。それは16頁ぐらいに、この委員会の委員の方のいろいろな発言が書いてありますが、Jに、「実績払い方式は、移動性の高い建設労働者には不適応と思う」という意見があります。私は直感的にしかいまのところは分かりませんが、かえって記録がはっきり残るということではいいのではないかと考えますが、この委員がおっしゃっている「不適応と思う」というのは、どういう点を我々は考えたらいいのでしょうか、もしお分かりになれば説明していただきたいと思います。

○福祉課長補佐
 まず1点目のICに対応できる現場がどのぐらいになるかについては、コストの話と非常に結び付いてくる話ではないかと考えています。具体的にはカード1枚当たりどのぐらいになるかというのもありますし、現場でカードリーダーなどを設置する費用等とも関連してくるかと思いますので、その辺はコスト計算と合わせて、ある程度見えてきた段階でご説明できるような形にしたいと考えております。
 報告書の16頁のJですが...。

○委員
 委員ではないので分からないと思いますが、もし想像がつけばお願いいたします。

○委員
 では、私からお答えいたします。うちの賃金体策部長が発言しているのですが、要するに、建退共というのは常用労働者のことを想定していないわけで、日々雇用と言ってもいいわけですし、期間雇用と言っています。そうすると、昨日はいたが、今日はまた別の現場へ行ってしまうということになると、いまの方法で後払方式になれば、「もうあの人間はどこへ行ったかわからないのだから、いいではないか」と企業は考える可能性があります。
 例えば、1つの現場に今日は10人いたが、明日は5人に減っていた。その行った先の5人はどこへ行ったかは、その日、元請は承知しなくてもいいというか、本来は承知しなければいけないが、細かく管理できていないということになれば、どういう方法を採っても、その労働者分のお金をちゃんと払ってくれるか。善意でいえば払ってくれると考えて、あとから労働者分として累積されると考えられればそれでいいのですが、もういなくなって、何県に行ったか分からない労働者の分まで買わなければならないのかとなるのではないかと。

○委員
 いま佐藤委員が説明してくださったので、20頁のシステムで、出勤のたびにICカードで出勤したということが、機構のほうに記録されるということで、記録が残るのだから、それについては払わなければならないということにはならないのですか。

○委員
 全部そういう方法になればできるでしょうね。そこをもう少し言いますと、先ほどコストの問題を言われましたが、これは非常に大変なことだと思います。どういった程度の企業までが、この新しいシステムに耐え得るのかどうか。それに合わせて労務管理もするのだということですが、本来常用雇用ではない下請の日々雇用の人たちを把握していくというシステムが、日本のような複雑な雇用になっている国において把握ができることなのかどうか。そのために相当なお金を使うことが、現実的に行われれば非常に望ましいと思っていますが、難しいのではないかという不安がまずあります。今日そういうことを議論する場所ではないものだから、あまり言っていませんが、そう思っています。

○福祉課長補佐
 あと1点だけですが、掛金納付方法の検討会ですが、最初のご説明で抜けていたのですが、この方法でやるか否かは、この2年間の試行概略設計の結果を見て考えてまいりたいと考えています。もしやるという形になりますと、法令改正が必要という形になってきます。その際には、法令改正という話になりますと、あり方検討会の評価をいただくというのとは別として、審議会の皆様にご審議いただく形になるかと思っていますので、お含みおきいただければと思います。

○会長
 私からのお願いですが、非常に大きなシステム変更ですし、今日も委員の方からいろいろな意見が出ましたので、本年度と来年度でいろいろ試行されたり、概略設計されたりする時の状況についての報告を、なるべく適宜やっていただいて、我々が議論できるようにしていただきたいということをお願いいたします。そういうときにまた、もう少し具体的なのが出てくると思います。私も素人ですが、パッと見たときに、「あっ、大変だ、いっぱいあるな」という感じがしますので、今回以降の審議会でも、そういう形で議論させていただきたいと思います。

○福祉課長補佐
 承りました。

○会長
 それでは、時間も迫っていますので、この議題はこの辺にさせていただきまして、次に「その他」ですが、事務局から資料3〜5までについてご説明をお願いしたいと思います。

○福祉課長補佐
 資料3、資料4は前回の審議会で「新旧加入促進5カ年計画についての実施状況」、それから「新しい5カ年計画」という形で提示させていただいた資料のリバイスでございます。と申しますか、前5カ年計画、資料3については前回の審議会で11年1月までの数字になっていましたので、年度末まで行った状況ということで達成状況についてかいつまんで説明いたしますと、最終的に5カ年の目標として共済契約数で20万所、被共済者数で76万人の新規加入を目標にしていたところですが、資料3の5カ年間の合計という所を見ますと、最終的には、新規加入の実績としては11万3,000所、被共済者数52万人ということで、おおむね6、7割の達成度という形になりました。
 具体的に新規加入の状況について一言だけ申しますと、共済契約者ベース、被共済者ベースのいずれも産業別で言いますと、建設業、製造業といった重厚長大型の所は構成比については、若干落ち込んでいるのですが、サービス業、あるいは商業といった業種の加入促進が図れたという面では、一定の成果があったのではないかと考えております。
 また規模別に申しますと、これはリストラなどで企業の規模自体が縮小しているという部分もあるかとは思いますが、1〜4人規模への加入促進が進んだと言えるのではないかと考えております。
 またこれらの状況を踏まえて資料4の「新規の5カ年計画」ですが、引き続き今年度からスタートする「5カ年計画」についても積極的に取り組んでまいりたいと考えているところでございます。
 これについてもポイントとしては、前回も申し上げましたが、資料4の2頁に、引き続き小規模企業加入促進に努めてまいるとともに、新規創業企業、5番のサービス業等への新規加入の促進といったことに引き続き努めてまいりたいと考えております。
 資料5ですが、建退共の改善方策は平成10年に取りまとめられたものですが、基本的には平成11年度からスタートしているもので、このうち一部については、具体的には項目の中の1番の「共済手帳及び共済証紙の受払簿の普及」といったことで、公共事業の発注管庁に対する証明書などについては、平成12年度から添付をしないといった取り扱いを開始しているところです。
 また加入促進等についても、資料の2頁の「10」ですが、いわゆるゼネコンというよりも、水回り、電気配線といった建設業協会に必ずしも加入していない業者ですが、専門工事業者への加入促進についても、「10」の4つ目の「・」にありますように、平成12年度から意見交換などを開始しております。駆け足になりましたが、以上のような報告です。

○会長
 ありがとうございました。ご質問、ご意見ございますでしょうか。

○委員
 建退共の制度ですが、事業主の責任ばかりではなく、被共済者自体の自覚、あるいは教育とか説明を徹底して、自分が頂くものですから、しっかり自分から請求できる場面を事業主と共に関わっていったら、最終的にもらえないなどということのないようになるのではないかと思います。

○福祉課長補佐
 ありがとうございます。そのようなご意見も含めて考えてまいりたいと思います。

○会長
 ほかにございますでしょうか。それでは、今日の審議会を終わりたいと思います。
 今回の議事録署名は、渡辺委員と奥平委員のお2人にお願いをしたいと思います。よろしくお願いたいと思います。それでは、審議会を終わりたいと思います。ありがとうございました。


6 配付資料 
(1) 基本ポートフォリオの策定等について <参考>ALM研究会報告概要
(2) 建退共における掛金納付方法のあり方検討会報告書
(3) (前)中小企業退職金共済制度加入促進5か年計画の実施状況等
(4) 中小企業退職金共済制度加入促進5か年計画(概要)
(5) 「建退共制度改善方策」の実施状況について
(注) 配付資料については多量のため省略しておりますが、労働省(大臣官房総務課広報室又は労政局勤労者福祉部福祉課)において供覧しております。


照会先 労働省労政局勤労者福祉部福祉課 担当:山本・武村
TEL 03(3593)1211(内線5376)



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