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議事
○ 座長
ただいまから、「第7回 労災保険制度検討小委員会」を開催いたします。
本日も前回に引き続き、労働者の健康確保を支援するための労災保険制度上の措置について議論を引き続き続けてまいりたいと思います。前回の議論等に関連いたしまして、事務局のほうから資料が提出されておりますので説明をお願いいたします。
○ 事務局
それでは資料1から御説明いたします。前回までの資料が机の上にありますので、可能であれば前回第6回の資料4、「健康確保支援給付スキーム(案)」を御参照いただきながら、お聞きいただければと思っております。
前回、健康確保支援給付のスキーム(案)ということで、定期健康診断に基づく「過労死」、脳・心臓疾患に係る一定の有所見があった者に対して二次健診、さらに保健指導を含めた給付を行ってはどうか、というような考え方をお示ししたわけです。今回御用意した資料1は、そういった健康確保支援給付のスキーム(案)について、なぜ脳・心臓疾患を対象とするのか、労災保険で実施する理由等について簡単にまとめた資料です。
冒頭にありますように、この健康確保支援給付(仮称)は、災害が発生していない時点で給付するということからいきますと、従来労災保険で行ってきた、災害があった場合は事後的な補償を行うといった従来の給付とは性格を異にする新しい給付であると言えるのではないかと考えております。したがいまして、その給付内容とか対象者については、既存の災害補償に係わる給付とは異なる考え方で設定されております。
内容はスキーム(案)の御説明の時にも申し上げましたが、事業主が実施する定期健康診断、これは労働安全衛生法で義務付けられておりますが、その結果、脳・心臓疾患について、今後、生活上の要因のほか業務の状況如何によっては増悪、発症する危険性が否定できない労働者に対し、その危険因子の詳細な内容であるとか程度、医療受診をしたほうがいいのかどうか、こういったことを含めて予防措置の必要性等を把握するための二次健診を行うということです。それによって事業主の適切な事後措置につなげるとともに、個人の予防の取組みを促すという仕組みを考えているわけです。
ポイントの1つとしては、なぜ脳・心臓疾患を対象とするかということであります。脳・心臓疾患については、「過労死」と言われておりますように、過重な業務によって発症に至るケースがあることから大きな社会問題になっていることが1つ挙げられるのではないかと思います。さらにほかの病気と違うのは、突然発症し、発症時の被害が非常に甚大である、死に至ることもままあるということで、被害が甚大であるということが挙げられると考えております。さらには、これは後で医学的なデータなり情報については御説明いたしますが、発症の危険因子の存在について事前に把握することがある程度可能である。高血圧とかそういった問題ですが、危険因子を事前に把握することが可能である。そういったことから職場における発症予防措置が有効である、というようなことも挙げられるのではないかと思います。さらに最近の傾向を見ますと、脳・心臓疾患に関する異常所見を有する労働者が増えており、労災認定の増加にもつながる恐れ、あるいは可能性があるということです。
なお、職業病と言われるものについては、有害な業務により発症する疾病、例えば有機溶剤中毒等々多くあるわけですが、こういった原因と結果たる疾病の因果関係が非常に明確であるといったものについては、労働安全衛生法、あるいは法に基づく省令とか通達等により、個々の事業主の責任で特殊診断を行うといったことが義務づけられ、あるいは指導されております。そういった意味で、原因と結果たる疾病が因果関係が明確であるといったものについては、事業主の責任で行うという意味で、引き続き労働安全衛生法の体系によって、予防を含め、対応していくことが適当であろうと考えているわけです。
給付のポイントの2つ目としては、給付の対象者及び内容であります。従来の労災補償給付というのは、事故があった場合に事後的に補償するといったものでしたが、今回は「生活上の要因のほか、仮に将来過重な業務があった場合、脳・心臓疾患が発症する危険因子を有する」といったことについて疑い得る定期健診の結果が出た、定期健診でそういった危険因子を有するということが疑い得る結果が出た者を対象にしてはどうかと考えているわけです。
具体的には、将来過重な業務があった場合、脳・心臓疾患が発症する危険因子を有するといった人をどのように捉えるかということですが、定期健診の結果、脳・心臓疾患の発症を引き起こす危険因子となる循環器系の異常に関する所見があったということで、血圧とか血中脂質、血糖、肥満について、全て有所見である、いわゆる「死の四重奏」という言葉があるそうですが、4つの全てに何らかの異常がある、あるいは、こういったものについて一定数の有所見、または異常所見を有しているといった者を対象にしてはどうかと考えております。そういった循環器系の異常に関する複数の所見があった場合、必要な二次健診を行うということです。考えられる健診項目としては、心エコー検査、頸部エコー検査、ヘモグロビンA1C検査、空腹時血中脂質検査といった検査が考えられるのではないかと考えております。さらに保健指導としては、二次健診の結果を踏まえて、栄養、運動、生活といった面での指導を合わせて実施することが有効であろうと考えております。
前回、なぜ事業主が全額拠出する労災保険でこういったことを実施するのか、ということが問題になりましたが、これについては次のように考えております。まず、脳・心臓疾患に係る二次健診等を創設、実施すれば、いわゆる過重な業務の負荷が要因となり発症する「過労死」等の防止につながる、といったようなことが言えるかと思います。そういった「過労死」等は、必ずしも特定の業種に偏って、あるいは多く発生しているということではありません。わりと幅広い職種、業種にわたって発生しております。発症すれば、その企業にとっては労働力の損失を被るといったことを考慮すると、予防は必要かつ重要でないかと考えているわけです。
なお、労働安全衛生法との関係では、前回以来申し上げていますように、脳・心臓疾患を含めて基礎的な健康状態の把握、その結果に基づく有所見者等に対する事後措置の実施といったものが義務付けられております。適切な事後措置を実施するに当たって、より詳しい情報が必要であるといった場合には、再検査等の受診を当該労働者に対して勧奨する。これはガイドラインですが、そういうふうにされているわけです。さらに労働安全衛生法では、保健指導や健康教育といったものを事業主が行うよう努力義務を課しております。それで労働者のほうは、それを利用して健康維持増進に努めるとされているわけです。
さらに裁判例の状況、動向を見ますと、○の3つ目に、労働者の健康状態の把握やそれに基づく適切な措置の実施といったことが、民事上の、いわゆる安全配慮義務を構成すると位置付けられる裁判例が多く存在しております。さらには安全衛生法の健診、これは定期健診の意味ですが、定期健診の実施のみでは必ずしも安全配慮義務を満たしたとは言えない、といった裁判例も最近は存在しております。
最後に労災保険制度です。沿革的には、労働基準法上の事業主の災害補償責任を労災保険で担保するということをスタートとして、沿革的に発達してきたわけです。その後、労働基準法上の事業主の災害補償責任を超えた部分、通勤災害であるとか、あるいは年金、介護の問題とかといった、労働基準法を超えた部分も労災保険の中に取り込んできているというようなこともあります。こういったことを総合的に考慮すれば、これまで申し上げてきましたように、定期健診で脳・心臓疾患に係わる一定の所見、ここでは複数と考えておりますが、複数の所見が出た労働者に対して、将来の脳・心臓疾患の発症を予防するといったような観点から二次健診を行い、必要な保健指導を行うといったようなことについて、労災保険の保険給付により実施するといったことには合理性があるのではないかと考えているわけです。
次は資料2です。今申し上げたような、例えば複数所見があるとどのようなリスクが多くなるか等々について、医学的なデータを集めてあります。簡単に御説明したいと思います。資料は大きく3つにグルーピングできます。まず図1〜図8は、脳・心臓疾患の危険因子に関するデータです。2つ目のグループとしては、図9〜図12までで、そういった危険因子が重複した場合に発症の危険度が上昇するといったデータです。図13以降は、こういった危険因子に対して適切に運動療法、あるいは栄養の関係等で適切に対処した場合の効果を示すといったものです。
図1は約12万人の労働者を対象にした調査です。これは1990年1月から3年間で突然死及び脳死関係の事故を発症した193人が所属する企業の健診結果を、10年間遡って調査したものです。総コレステロールの所で「caseとControl」とありますが、「case」というのが突然死、あるいは脳死の事故を起こした人です。ゼロの所に「event」というのがありますがこれは、脳・心臓疾患を発症したことです。遡って−1から−10とありますが、10年間の総コレステロールの数値をフォローしたという意味です。
下に「Control」とありますが、これが対象群です。脳・心臓疾患の発症していないグループの10年間の総コレステロールの数値を、それぞれフォローしたというものです。右の欄は中性脂肪、真ん中は収縮期血圧、いわゆる最高血圧と言っているものです。拡張期血圧、いわゆる最低血圧と言っているものです。下が血糖値、BMI、これは肥満度の系数です。いずれについても、いわば発症群の方が、発症前10年間、こういった総コレステロール、中性脂肪、血圧、血糖値、BMIのいずれをとりましても、Control対象群よりも高い数字にあったといったことが窺われるわけです。
若干統計的になりますが、Pが0.05より小さいということがあります。あるいは、イコール、0.001とか。Pというのは統計上「P値」と呼んでいるものですが、これが小さくなれば小さくなるほどデータの信頼性は高くなる、逆に言うと、その誤りが少なくなると受け取っていただければいいと思います。
5頁は、いま厚生省が、「健康日本21」というのを実施しようとしております。あるいは、その中間的な報告を発表しております。そこで引用されていた循環器疾患の危険因子をまとめたものです。血圧、喫煙、糖尿病ですが耐糖能異常、高コレステロールです。「血圧10mmHg、男性1.2」とありますが、血圧が10高くなれば脳卒中を発症する相対的危険度が、1.2倍になるといった意味合いの表です。喫煙であれば吸わない人よりも1.7倍の相対的危険度がある。耐糖能異常であれば、その2.5倍といったようなものであります。血圧とか耐糖能異常、あるいは総コレステロールが高い、また、そういったものがあれば脳卒中、あるいは虚血性心疾患を発症する危険度が高まるといったデータです。
図3は、血圧について拡張期血圧、最低血圧の水準によって脳卒中の発症の相対的危険率がどの程度まで上昇するかというものです。1〜5までありまして、3の所が「血圧91」となっております。そこの発症の危険度を1とした場合、91よりも左のほうが最低血圧が低い、右のほうが最低血圧が高いというラインになるわけです。98のグループ、105のグループ、いずれも相対的危険度は脳卒中発症について高くなるというものであります。
6頁は図4です。これも図3と同様に健康診断の実施時点で血圧の水準と、将来の脳血管障害の罹患率の関係を示したものです。これは久山町ですが、こういったある1つの町の住民1,621名について1961年〜1987年の間、1,621名を対象に追跡調査を行ったもので、その方面ではわりと有名な調査であると言われております。
左に「累積発症率」とありますが、これは観察開始時の対象者に対する観察期間内の総発症者の割合です。いずれも収縮期血圧、拡張期血圧とともに水準が上がれば脳梗塞、これは白い方、あるいは脳出血、これは黒い方の累積発症率が上昇するということが窺われるわけです。
図5は、血圧の水準と虚血性心疾患の発症の危険度の関係を示したものです。グラフのいちばん左のグループ、最低血圧値になるわけですが、いちばん左のほうが血圧がいちばん低いグループですが、そこを基準として、右のほうに過剰死亡ですが、そういった基準のグループよりもどのぐらい多く亡くなった方が出ているかといったものを示したものが過剰死亡です。相対的危険度というのは、最低血圧グループの発症の危険を1とすれば、どれだけ相対的に危険度が増すかというものであります。いずれも血圧の水準が上がれば、それだけ虚血性心疾患の発症危険度、あるいは過剰死亡が上昇するといったことが窺われるのではないかと思います。
次は図6です。これは血中コレステロール値と、その後4年間にわたりまして虚血性心疾患の罹患率の関係を示したものです。左のほうに「HDLコレステロール」がありますが、これは善玉コレステロールと言われているものです。これは動脈硬化を防止する働きがあると言われております。右のほうが「総コレステロール」の値です。総コレステロール値が高いといったことで、だんだん右の柱のほうにいけば総コレステロールの値が高くなります。HDLコレステロール値が低い、だんだん左の柱のほうにいくと低くなるわけですが、そういった群のほうが罹患率が、棒グラフといいますか、柱といいますか、その高さで虚血性疾患の罹患率を示しています。総コレステロールの値が高くHDLコレステロールの値が低いと、いちばん図の奥のほうですが、そういったところのほうが虚血性心疾患の罹患率が高いといったものが窺われるわけです。
次は図7です。血清コレステロールの値と、その後の6年間の虚血性心疾患の死亡率の関係です。対象は約36万人について6年間追跡調査を行ったものです。Y軸に死亡率をとっておりますが、これについては、統計的に年齢による影響といったものは排除したということです。窺われることは、血清コレステロールが高くなる。だんだん右のほうに行けば行くほど虚血性疾患による死亡率が上昇することが窺われるわけです。
図8は糖尿病です。耐糖能異常がある場合、脳血管障害発症の相対的危険度をいろいろな調査、Framingham Study、Minnesota Study、Honolulu Heart ProgramRanchoBernardoStudyの4つの既存の調査について糖尿病と脳血管障害の発症の相対的危険度を調査し直したというものです。窺われることは、糖尿病を有する者は、有さない者と比較して、その背景因子の影響を除いて脳血管障害の発症が約2倍程度、相対的危険度が高くなるということです。2倍程度というのは、星印1つのほうがいいと思いますが、星印1つのほうがリスクファクター補正値で、いろいろな糖尿病以外の背景因子の影響を除いたといったものがリスクファクター補正値で、いずれも糖尿病を有する者は有しない者と比較して2倍ぐらいの危険度があるということです。
図9以降は、血圧とか、血清コレステロール、耐糖能異常とか、肥満度とかといった危険因子の重複した場合に、発症危険率が上昇するといったデータを集めております。
図9は、脳・心臓疾患の危険因子としてBMI肥満度、血圧、血糖、中性脂肪といったものを特定しております。左に0、1、2、3、4とありますが、これは危険因子の保有数であります。0の時の発症の危険率を1としまして、危険因子の保有数が1、2、3、あるいは4となった時に、危険度がどれだけ高くなるかというのを示したものです。
なお、多変量オッズと単変量オッズ比がありますが、単変量オッズ比のほうは背景因子、例えばタバコを吸っているか吸っていないかとか、ここで挙げている肥満度、血圧等々以外の要因の影響を統計学的に排除した数字です。これからいくと危険因子を持っていない人の危険度を1とすれば、3つから4つ持っている人の発症のオッズ比といいますか、何倍発症するかというのは35倍以上になるということで極めて高い。複数持っていると高い発症の度合いが窺われるということです。
図10は、冠動脈疾患についてコレステロール、血圧、喫煙、糖尿病、心臓の左室肥大を設定して、こういった危険因子が重なるとどうなるかということです。グラフの下のほうに「0、+」とありますが、ゼロというのは、そういった項目について所見がない、プラスは所見があるということです。「コレステロール」の所で、2つ目でプラスになりますが、ここはそのコレステロールだけが所見がある。3つ目のグラフであれば、コレステロールと血圧についてプラスになり、所見が出るということです。したがって、いちばん右の欄が5つの危険因子について、全て所見があるということで、危険因子の重複が多くなれば、それだけ冠動脈疾患発症の危険率が高くなるといったようなことであります。
図11は、複数所見が重なった場合、危険度の上昇を示すといったことがマルチプルリスクファクター症候群といったものです。先ほど「死の四重奏」と申しましたが、これもマルチプルリスクファクターの考え方の1つでして、真ん中ぐらいに「deadly qualtet・死の四重奏」とあります。耐糖能低下、高中性脂肪血症、高血圧、上半身肥満といったものが重なった場合、非常に危険度が高くなるといった考え方であります。いずれも医学的にはいろいろ考え方があるようですが、危険因子が重複すれば発症の危険度が高まるといったことが基本的な考え方であります。
図12は同様のことですので説明は省略いたします。
図13以下が、そういった危険因子が適切に改善できる、また、その危険因子の改善により脳・心臓疾患の発症がどの程度減少できるかといったデータです。
図13は、運動療法です。ここで言っている運動療法は、グラフの下にありますように1回60分、週3回以上の運動療法を10週間行った人と、運動を行っていない者を比較したものです。太い線のものが1回60分程度の運動を10週間にわたって行った人のグループのデータ、細い線がそういった運動を行っていない人のデータです。ここでは最高血圧、平均血圧、最低血圧について10週間の観察期間、それぞれのデータを示しておりますが、いずれも運動群のほうが、最高、平均、最低血圧が傾向的に下回るといったようなデータが出ており、運動療法が血圧に有効であるといったことが窺われるわけです。
図14は、肥満者に対する運動療法と食事療法の影響を調べたものです。グラフがいっぱいあって分かりにくいのですが、いちばん上が運動療法の効果を表しております。ちょっと太い線になっているものが、そういった運動療法をしなかった者、細い線は運動療法をした者です。aは体重についての効果を見たグラフ、bは収縮期血圧について効果を見たグラフ、cは拡張期血圧について効果を見たグラフです。真ん中は食事療法についてです。太い線は、何ら食事療法をしなかった人、細い線は食事療法をした人で、それについて体重変化、血圧変化をそれぞれ見たものです。いちばん下は運動療法と食事療法を合わせてやった場合です。太い線は両方やった人、細い線はそういった療法をしなかった人について体重、血圧変化を見たものです。結論としては、全体の傾向としては、運動療法は血圧低下、食事療法は体重低下に効果があるということで、これらを併用することにより血圧、体重、双方について改善が図れるというデータです。
次は、危険因子の改善により発症をどの程度減少できるかといったデータです。
図15は、厚生省の「健康日本21」の目標設定について参考とされたデータです。見方としては、例えば最高血圧で「−2mmHg」とあります。これは国民全体の最高血圧が、いわば2下がれば脳卒中の死亡者数が9,000人減る、罹患者数が1万9,000人減る、ADLが3万4,000人減るということです。ADL低下というのは、日常生活動作能力が低下するといった意味のものです。最高血圧が2下がれば虚血性心疾患の死亡者が約4,000減る、罹患数が約5,000減るといったようなことが推定されています。同様なことが喫煙、総コレステロール、糖尿病、多量飲酒等々について言われております。
図16は同様のものですので省略させていただきます。
なお、前回こういった生活習慣病については、ポピレーション・ストラテジーとハイリスク・ストラテジーが有効であるというお話をさせていただきましたが、企業の中で、定期健診の結果、危険因子が複数重なっているといった人に対して、健診なり保健指導をやるというのがハイリスク・ストラテジーに該当するかと思います。厚生省のほうで「健康日本21」というふうに総称しまして、血圧低下の目標を定める、喫煙率を半減させる、高脂血症、糖尿病の増加傾向を減少させるといったような循環器系疾患予防のための目標といったものを、まだ未定稿のようですが国民全体に提示して、そういった運動を行っているということであります。
資料3は前回か前々回に、こういった健診を行い、適切な運動指導あるいは栄養指導を行うと、その効果はどのぐらいあるのかといった御質問がありました。また、企業の実例でも、どういう効果があるのか示してくれということがありました。これはある企業について、どういった健診を行い、その健診結果に基づいてどういった指導を行ったか。その結果、効果はどの程度あったのか、といったものを私どもの方でヒアリング調査したものです。
まず健康状況の把握は、労働安全衛生法に定められた一般健診、特殊健診のほか、新入社員、20歳、25歳、30歳、35歳、40歳以上の社員については胃、肺機能等の健診項目を追加した「ドック健診」を実施するということです。その健診結果の対応としては、健康者は特段問題ありません。日常生活指導者、これはAグループとBグループに分かれております。Aグループは、その正常値をわずかにはみ出ているが医療的な措置は不要である、Bグループは健康診断の結果、「要観察」、「要注意」である、場合によっては医療措置も必要である。医学的管理が必要な者を、そのほか4つのグループに分けるということで、健診結果に基づいて4つのグループに分けるわけです。そういった管理区分に応じて、それぞれの労働者に対しては保健指導とか、健康体力づくりのための運動を指導するといったようなことが行われております。なお、費用は会社負担であるということです。
どういった効果があったのかということですが、昭和60年から、こういった「総合健康管理制度」として今述べたような取組みを行っているわけです。平成9年のデータと比較して見ますと、従業員1人当たりの平均休業日数については1.44日から1.16日に減少した。従業員10万人当たりの死亡者数の死亡率は、181.7から56.8に低下したといったような効果が出ているということです。これは10何年間ありますから年齢構成も変化しているわけですが、当該企業からのヒアリングでは、10数年間の年齢構成の変化といったものの影響は一定の方法で排除して、平均休業日数の減少、あるいは死亡率の減少といったものを出しているということです。
ちょっと長くなりましたが以上です。
○ 座長
どうもありがとうございました。それでは前回の議論を踏まえて、資料1、「新給付の創設についての試案」ということで出ております。関連資料2、3も出ておりますので、御質問、あるいは、できれば資料1などを中心に意見交換を進めていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○ 委員
前回、2つとか3つとか因子が重なった時にというような質問が出ていたのに、ずいぶんたくさん資料を用意されたものだと思って見させていただきました。ほとんど皆さん、お分かりになるのではないかと思いますが、どうでしょうか。
○ 委員
資料2の所でいろいろなデータを出していただいているのですが、医学の世界では大体これが定説になっていて、他の学説とか、そういうところからの批判に耐えれるものというか、固まっているというものは、どの辺まであるのでしょうか。先ほど「死の四重奏」ということを言っておられたのですが、それはそれで学説としてあるのだと思います。ただ、その学説以外の主張をなさる方もいるのではないかと思うのです。しかしそうは言っても、「死の四重奏」という4つの項目が、明確に、死に至る最も要因として大きいということが科学的に検証されてきているのかどうか。日本の場合もそうですし、それから国際的な医学の世界ではどうなっているか、という問題もあるのですが。
また、項目としていろいろな検査項目がありますが、例えば定期健康診断だとすれば、血糖検査だとかBMIが出てくるというのは、平成10年に初めて、そういうことが制度として定期健康診断項目に付け加えられたということで、科学の進歩に従っていろいろ行政の面でも進化してきているのですが、過去10年前から勤労者についてBMIを取れと言っても出来ない話ですし、また、血糖について10年前の結果を出せと言っても出ないわけですので、一般的な国民の健康という観点からすれば、どういうことが大事だという点についてのデータの1つとしての貴重なものとは言えるのですが、しからば、労災の給付としてやるものについて、「死の四重奏」として、これこれのものについてやるのが医学の世界でも明解であると言えるのかどうか、その辺はどうなのでしょうか。
○ 事務局
まずBMI、血糖は今年1月1日から定期健診に入っております。この重要性はかなり以前から指摘されていて、長らく検討した結果、今年から実施することになったという経緯があります。
「死の四重奏」については資料2の11頁をご覧いただきたいのです。「deadly qualtet」という言葉は1989年にカプランが言ったものです。その他に似たようなものとして、大阪大学のマツザワ先生らが1987年に「内臓脂肪型肥満」が危険因子であるという論文をお出しになっております。ここでの内容も、要するに内臓脂肪蓄積、肥満ですね。それと耐糖能異常、糖尿病のようなものです。それと高脂血症、これはコレステロールが高いということ、または中性脂肪が高いということと、ほとんど同義です。それと高血圧。この5つに分けてありますが、内臓脂肪蓄積と肥満がほとんど同じようなものを指しているということから言いますと、「死の四重奏」とほとんど同じ内容のものをマツザワ先生らは「内臓脂肪型肥満」という形で発表されております。
同様に、シンドロームXですとか、インスリン抵抗性症候群とか、さまざまな呼び方はされておりますが、ここで言っておりますのは、ほとんどdeadly qualtetと同じように肥満、しかも上半身の肥満、あるいは内臓周りの肥満ということですが。それと、耐糖能異常、糖尿病、インスリンの異常というような糖尿病に関連するもの。3番目に、高脂血症、トリグリセライドが高い、善玉コレステロールが低い、あるいは中性脂肪が高いというような、要するに血液の中の脂質の異常、それと血圧。この4つの点で危険因子になるという意味では、いろいろな言い方はしてありますが、ほぼ同じものが日本でも海外でも言われております。WHOでもこの考え方を採用して、こういうものが危険因子であるというふうに国際的な場でも表明をして、今いろいろなキャンペーンを張っているという状況です。
ですから、さまざまな言われ方をしておりますので、「死の四重奏」という言葉が非常に一般的かというと、1つの学説というか、1つの提唱のされ方ではありますが、指し示しているものは、他のものとほとんど同一の方向ということが言えるわけです。この基本になりましたさまざまなデータというのは、先ほど御説明しましたような、Framingham Studyでありますとか、日本では福岡県の久山町スタディでありますとか、そういうさまざまな集団を捉えて、長い間追跡した結果をもって出てきたものを解析した結果がここに挙がっているようなことでまとまったという意味では、どういうふうに呼ぶかは別として、これは医学上の確定された方向とほぼ同じ内容のものを危険因子として示しているということが定説になっていると言って差し支えないだろうと考えられます。
○ 事務局
労災との関係で、今委員から国民一般の健康に関する資料、あるいは、そのリスク要因として理解できるのだというお話がありましたが、労働者の健康状態、あるいは体の仕組みが国民と違っているというようなことはないと思いますから、こういった医学的にわりと確立されたデータなり、調査なりで明らかになったリスクファクターについては、労働者についても当然ながら同様なリスクがあるだろうというふうに考えていいかと思います。
そういったリスクファクターが複数重なった場合に脳・心臓疾患の発症率が高くなるということについては、労働者についても同様だろうというふうに考えておりますし、現にそういったものが、いわゆる「過労死」として問題になってきたのではないかというふうに受け止めております。
○ 委員
一般国民の心疾患についての防止の必要性の問題と、労災保険という事業主が全額拠出する制度のお金を使って、労働者に対してどういう給付をするかということは全然別の話なのです。事務局の答えだと、そこのところが飛躍して、だから労災のお金を使ってやるのは合理性があるよという主張になるのですが、そこのところは飛躍がありすぎるのです。
前からも申し上げていますが、脳・心疾患という基礎疾患は、まさに私病です。その私病について、スクリーニングとして一次健診の健診項目について異常があるというのが出てくるのであって、その一次健診の結果で高血圧症であるなどという診断まで出来るものではないのですね。一次健診というのは、あくまでもスクリーニングであって、病気の診断をする機能は持っていないわけです。まして二次健診についてもそういう性格のものです。一次健診で異常があれば、この人はどういう病気であるということが分かるということを前提にしての論議のような気がするのです。それは一次健診の性格を間違って見ているのではないかと思うのです。
○ 委員
なかなか理論的にも面白いお話で興味深く伺っていました。いわゆる「死の四重奏」とかというように複数の危険因子が重なった場合には、急性の脳・心臓疾患とかというものが発症する確率は非常に高い。それは医学の世界においてもはっきりと、ほぼ定説になっていると言ってよいというのがまず第1に確認できたと思います。
委員は「医学の世界でも労災でやるのが明確なことなのか」ということを、お聞きになっていたような気がするのですが、そこはどうなのかというのが1つ問題としては残っているような気がいたします。ただ、今日拝見した限りでは、業務というものを直接的に取り上げて疫学的に検証するというのは多分難しい。そうすると、業務というものが反映しているような要素がここに入っていればいいというふうにある程度考えることはできないか。それで何らかの理解というのが可能なのではないか。
この中を見てみると、肥満とか糖尿病とかというのは、例えば業務からくるストレスでどうしても食事をたくさん摂ってしまうとか、アルコールをたくさん摂ってしまうとかというようなことから、やはり起こり得るのだろうという気がするのです。だから、完全に私病であると言い切ってしまうのは、それも飛躍があるのではないかというのが私の感想です。
もう一つは、委員は急性脳・心臓疾患、あるいは、こういった疾患というのは私病であるとおっしゃっています。その点は確かに否定はできない。個人の私生活の状況とか、そういったものは生活習慣ですから、まさに仕事の場以外の所での生活習慣というのが関係いたしますから、私病という要素があることは否定できない。ただ他方で、現実には急性脳・心臓疾患とか、あるいはその結果、倒れて後遺症が残った場合、全部私病として扱っているか、現在の労災保険が全部それを私病とみなして労災保険の外へ追いやっているかというと、そうではない。業務との間の因果関係が、どういう形で因果関係を判定するかというのはいろいろ問題があるにせよ、少なくとも業務との因果関係が認められれば労災保険で扱うということは、今は確立して認められていると思います。
そうだとすると、急性脳・心臓疾患なり、あるいは、もう一歩前の「死の四重奏」といったような危険因子が複数重なっている症状というか、そういう症候群みたいなものを完全に私病の世界であると言い切るのは、私は困難だろうと思います。全部業務上の世界であるというのは明らかに行き過ぎですが、全部私病の世界であるというのも、これも極論であるという気がします。
この点で、仮にこうした給付を労災保険の中でどこに位置付けるかを考えるとすると、今回事務当局でお出しになっている案というのは、その点ではかなり工夫をされているのではないかと思います。つまり、従来の労災保険の療養の給付、その他の中に直接入れるのではなくて、それとは別のカテゴリーを立てて、その中で扱いましょうというふうにされています。「死の四重奏」とか、そういった重複したリスクを持っているケースの特殊性というものをある程度考慮しながら、しかし、他方で使用者の負担でやるということとの間の調節をうまく図ろうとされているのではないかと思います。
委員は、私病であって、それを労災保険でやるのは論議に飛躍があるというふうにおっしゃるけれども、そこまでは言い切れない。むしろ、実際には「過労死」その他の問題があるということを考えると、そうではないと見る方が私は、より妥当な結論に至るのではないかと思います。
おそらく1つ考えられる懸念というのは、これによって使用者の負担する範囲が非常に広がるのではないか、それこそ私病の世界まで広がるのではないか、ということだろうと思います。私も、広がるということに関しては非常に懸念を持っています。
他方、今日の資料で御説明いただいたように、考えられている二次健診の対象というのは重複リスクがあるケースとか、かなり限られたケースです。しかも、業務による発症の危険度の高いものと限られているので、その点の懸念も今日の案を見る限りでは、そんなにないのではないかと思っています。
○ 座長
ありがとうございました。
○ 委員
私の質問に対して反論がありましたので私の考えを申し述べさせていただきます。勤労者の健康状態で、高血圧だとか、あるいは肥満だとか、耐糖能低下という方々がいらっしゃるのは事実だと思います。学生だとか、あるいは児童だとかの中にも、高血圧だとか、糖尿の病気の方々というのもいるのです。それは、業務とは直接関係がない状況の中でおるわけなのです。もともとの基礎疾患というものを業務に関連付けて、だからその基礎疾患が出てきたという形の整理をするのでは、今の労災補償行政というものは成り立たなくなると思います。もともとの基礎疾患というものが私病であるけれども、その私病そのものが自然の経過で悪くなるのではなく、それ以上に悪くなる。それ以上に悪くなるという状況というのが、業務上の要因でもあるし、私生活の面でも両方あるけれども、その両方ある中で業務の方が決定的というか、相対的に重要だというか、そこのところは若干の説はあるとは思いますが、そういう仕分けをしているのであって、もともとの基礎疾患が業務によって引き起こされるということを前提にすること自体おかしいと思います。
○ 委員
なかなか難しいところでうまく話せるか分からないのですが、現実に今「過労死」ということで起きている形が増えている。これはみんなが認めているところだと思いますが、こういう問題が出てきているわけです。日本にしか「過労死」などというものはないと言われています。そういう点で、日本の勤労者というのは、経営側の過剰ノルマはあるのですけれども、ものすごく責任感が強いと思うのです。そのノルマと責任感が非常に強いところが相い重なって「過労死」という問題が起きているのではないかと思っているわけです。
そういう点では、ポイントの2にあるように、生活上の要因が将来過剰な業務で増悪する危険性があるとすれば、労基法と安衛法の双方から対応するのがいいのではないかと思っております。
時代の背景として、今労使がいろいろ力を合わせて、具体的に物的な労働災害は減少していると思います。物的な労働災害が減る代わりに、今度は時代的と言いますか、こういう世の中になって、メンタルヘルスとか「過労死」といったものが少しずつ違うところに出てきたと思います。そういう点では、今の時代を担うような法体系であってもいいのではないか、むしろそうあるべきではないかと考えているわけです。
そういうことが減少すれば、相対的に企業が言う負担のほうも減ってくるのではないかというふうに考えております。もちろん、私的な部分と、業務上の部分と多少ファジーな部分がありますから、その辺の線引きはどうするのかということはありますが、総論として、物の考え方として、少し具体的にその辺のところをちゃんとしていくということについては、誰が見ても間違っているということではないのではないかと理解しております。
○ 事務局
3人の委員の議論をお聞きしておりまして、基礎疾患自体の位置付けが一つ問題になっているのかと思います。私どもが前回お出ししたスキームの(案)、あるいは今回の資料におきましても、基礎疾患自体が業務に関わりがある、だから、労災でやるんだというような考えは採っておりません。もちろん、高血圧症とか、糖尿病自体が業務の影響によって生じるということが医学的に排除できるかどうかというのは私もちょっと自信がないのですけれども、今回の考え方は、そういった基礎疾患自体が業務に関わりあるから労災であるというような考え方は前提にしていないということは御理解いただきたいと思います。
そういった基礎疾患自体が、過重な業務といった要因が加わった場合に、自然的な経過を超えて発症するといったときに、そういった脳・心疾患に業務起因性を認めているという考え方はまさに委員がおっしゃったとおりです。今回の新しい給付を導入するということになりましても、そういった考え方自体は、私どもも当然ながらないと考えております。
○ 委員
別の角度からなのですが、いずれにしてもこの小委員会をスタートする前の議論として、未払賃金立替払いについては、全体の財源の中で非常に厳しいということで特例扱いされたと思うのです。それで、そもそも労働福祉事業の在り方というものを議論し始めました。その中では、当然今までやってこられたいろいろな事業についての必要性を徹底的に分析をして、見直すべきものは見直すということでやってきたと思うのです。
そういう観点からいくと、確かに今疑問がありますように、この問題については、たぶんこういうことをやれば一定の効果があることは事実だろうと思いますけれども、そういう労働福祉事業の見直しという観点に立ったときに、本当にこのこと自身が優先度を持つのかどうかということには非常に疑問があります。そういった観点からの考え方をお示しいただけたらと思います。
○ 事務局
委員がおっしゃったことにつきましては、労働福祉事業の見直しといったことは当然ながらやっていく必要があるかと思います。今回の脳・心疾患を念頭に置いた健康確保支援給付については、「過労死」といったものが社会的に非常に注目されている。しかも、脳・心疾患は突然発症すれば被害が非常に大きい。これは、家族にとってもそうですし、本人にとってももちろんそうですし、貴重な労働力が失われる、あるいは一定期間入院せざるを得なくなるといった意味で、企業にとっても非常な損失があるだろうと考えております。そういった意味では、国民全体を見ても、循環器系の疾患がこれから増える、というようなことが想定されまして、厚生省でもいろいろな取組みを行っているということなども考えると、労災の世界においても、こういったことを行っていくといったことは近々必要ではないかと考えているわけです。
○ 事務局
委員がおっしゃったことは、これから制度を立ち上げていく場合に、どのぐらいの予算でこれをやるのか、それがどのぐらい効果があるかという話だと思います。まだ、基本的な考え方をお示ししているだけで、ここに書いてあるように、脳疾患を取り上げても、「死の四重奏」と言われているような4つ全部について有所見のあったものをやるか、あるいは一定数と書いてありますが、普通の項目に有所見を有する人に対してやるとか、ここのところで若干はっきりしていないところがあります。ここのところは、いま問題提起がありましたことを頭に置きながら、要件を具体的に、機能的に、御指摘の点をじっくり頭に置いた上で検討していきたいと考えております。相当お金がかかるのに、効果があまりないというようなことになれば、何のために制度を作ったかわからないという問題もありますので、今お話のあった点を十分頭に置いて、これからさらに精査していきたいと思っております。
○ 委員
そういう意味でちょっと危惧しますのは、いろいろな議論がありますように、性格が明確に位置付けられない私的な部分あるいは業務に関わる部分とあるのだと思うのです。こういう制度に一旦踏み込みますと、運用によっては金額・規模の方も相当大きくなるわけです。労働福祉事業の在り方で、スクラップ部分を一生懸命検討していただいている中で、また一方で増えてくるということについては非常に懸念が大きいものですから、ずっとお話させていただきました。
○ 事務局
今お話のあった点は、私も非常によく分かります。病気の限定の仕方の問題から、あるいは二次健診を行う場合の要件の決め方といったところについても、今御懸念がありましたようなことがないような形で説明できるよう要件設定をしていきたいと考えております。
○ 委員
資料の中から予防医学の立場で少しお話させていただきます。7頁の図5、登録時の血圧と、その後6年間の虚血性心疾患、年齢調整死亡率というのは、MRFITといって、アメリカの大きな研究から採られたものです。白い柱の所が過剰死亡です。黒い点で線でつないでいるものが、いちばん左側の血圧が低い人に対してどれだけ相対的に危険度が増しているかというところです。先ほど事務局のほうから説明がありましたように、相対危険度は、血圧とかなり右上がりに上がっていっているのですが、過剰死亡は130ぐらいから150〜160のところ辺りもかなりバーが高いというところを気をつけて見ておいた方がいいと思うのです。
これは何を示しているかというと、いわゆる「過労死」という名前で出てくるような神経系の突然死が必ずしも全部高い層から出ているわけではなくて、いちばん多いのが130辺りの人たちなのです。だから、ハイリスクの人たちだけに的を絞ったストラテジーを持っていれば、それが数としても日本全体で減るのだということではない。そこの部分が15頁の「健康日本21」で、最高血圧を−2mm低い方にシフトすれば、循環器系疾患の死亡率を、これだけ日本全体で減らすことができるという議論になっています。
働く人の集団でしたら、そこの事業所の中の全体についても少し血圧を下げる方にやっていく努力と、ハイリスクが重なっている人たちに個別に保健指導することによって増悪させないようにする努力と、両方やる方がコストベネフィットがいいわけです。産業医など現実に働いている人たちを見ている人たちが両方のことをするようにということを、最後にまとめるときに入れていただいた方がいいのではないでしょうか。事業主の方たちも大変コストのことを心配されていますし、私どももコストに見合ったような効果が出るためには、この真ん中の部分、つまり産業医とか産業保健婦とかといった事業所全体の健康度をより良い方へシフトする努力、それから、いま現在リスクをいくつかもっている人に対して個別の指導をする部分と、その両方がうまく入っていくように、労働の場でもするということが大事だと思います。
片方が厚生省の仕事ということではなくて、働いている人の集団でいちばん見ているのは産業医であり、その人たちの健康度に関心のあるのは事業主の方たちだと思いますので、どこかに偏ってはいけないのです。私は公衆衛生学なものですから、7頁の図5に関してそれを申し上げておきます。
それから、誰が保健指導をどういうふうにやっていくのか。その人たちの育成と言いますか、力と言いますか。本当は1回だけでない方がいいのです。1回ではどんな指導も、その人自身の努力も、何年間か続いて初めて効果が出てくるものですので、その辺につながるようせっかく制度として入れるのでしたら、保健指導のやり方とか、効果も含めて、その辺も進んでいる事業所ではいろいろお持ちと思います。
○ 委員
1頁の2行目の所で、「今後生活上の要因のほか、業務の状況いかんによって」ということが書いてあるのですが、一次健診の結果というのは一次健診の結果として出てくるわけです。問題はその一次健診なり、状況によっては二次健診を行った後の生活上の要因なり業務上の状況ということが増悪・発症ということなのですね。一次健診の結果出てきたものが、大変な社会的な問題になっているということではないのです。社会的な問題になっているのは、死亡とか、発症ということが起きているという現象と、もう1つは過重負荷というのが企業の責任において生じているという、そこのところが重なっていることが社会的な問題になっているので、一次健診の結果異常が出てきているということが社会的な問題ではなくて、生活習慣病対策の問題としては大変重要な問題ではあるのですが、そこのところが死亡とか、あるいは発症することが社会的な問題になっているから、この労災保険の給付をした方がいいのではないかという形の整理をしていると思うのです。
もともとの一次健診の異常の結果が出てくるというのは、国民のすべてについてそういう健診が行われれば異常が発見できるという問題ですから、むしろ労働省の問題よりは、国民の健康を預かる厚生行政としてどうするかということを考えたり、あるいは健康保険法上、こちらの方は労使が負担をしているわけですけれども、その労使が負担をしている制度において、どういうふうにするかどうかということを検討すべき問題で、労災保険のように事業主だけが負担しているという制度の範疇で検討するのはいかがかと考えます。
○ 委員
今の発言があったので、また元へ戻ってしまうような感じがするので、そこの部分について意見を言わせていただきます。その危険因子というのは、私病である場合が多い。私病である場合も、業務上によってそのような危険因子が高まることもあり得る。そして、過重な労働によって不幸にして死亡することがある。そんなふうに考えれば、委員のおっしゃられた健康保険の分野の問題だというふうにはならない。その先を今提案されているのであって、そこの部分の「運動、休養、栄養」の3つの要素を挙げているのですが、私が聞きたかったのは、どの程度のことを求めている給付なのか分かりにくいのです。言葉ではその3つが挙げられて、それはそれで分かりますけれども、どのようなことをイメージしたらいいのか、もう少し具体的に説明してほしいと思います。
○ 事務局
資料の1頁の内容のところで、「今後、生活上の要因のほか業務の状況如何によっては増悪・発症する危険性が否定できない」というところで何を申し上げたかったかということですが、基礎疾患たる生活習慣病、それは血圧、血中脂質、血糖、肥満によっても把握できるものと言ってもいいと思うのです。そういったもの自体が、将来増悪して発症する可能性自体は、それはいくら業務で気をつけていたとしても、私生活上の要因で発症するといったことは否定できないと思います。
ただ、労災あるいは業務との関わりで言えば、過重な負荷が加わって、自然経過を超えて発症したといったような場合には業務起因性が認められる。そういった両方の意味合いでここでは申し上げたかったということです。業務起因性が認められる場合があり得るということになると、その結果発症した場合には労災であるということになるわけです。それが1つです。
そういった基礎疾患たる状況というのは健保の方、あるいは厚生省の方の行政の領分ではないかというお話がありましたが、そういった危険因子をいくつかもっているということについては、労働安全衛生法で定めている定期健診で十分把握し得ることであります。それが、よりさらにどういう状態にあるのか等々を把握するために二次健診をやるわけです。そういったものを定期健診で把握できるというようなことであれば、労働省、あるいは労働行政の範疇の中で当然ながら処理し得る問題ではないかと考えております。
それから2つ目は、栄養指導とか、運動指導とか、生活指導といったようなことの具体的なイメージということでしたが、例えば運動指導であれば資料の13頁に、「1回60分、週3回以上の運動療法を10週間」とありますが、運動というのは大義です。要するに、ジョギングしなさいとか、スポーツセンターへ行きなさいということではなくて、その人の状態に応じて、どういう負荷で、どのぐらいの運動をすればいいかどうかという処方箋を出すということがあります。そういったことを医師の処方箋に基づいてやる、というようなことをイメージしております。
栄養指導については、例えば具体的に医師の指示に従って栄養士がこういう食事をしなさい、というような指導をすることがあると聞いております。そういったことを具体的にイメージしているということです。
○ 委員
一次健診で異常が認められたときの次のステップに移るのは、再検査とか精密検査に移るわけです。先ほど、心エコーだとか、ヘモグロビンA1Cだとか、空腹時の血中の糖ということを指摘しておりましたが、それはこの検査の手法の1つであって、高血圧だということを検査する手法というのは別で、それに限られるものではないのです。値段の高いものもあるし、安いものもあるし、科学の進歩によって、医学技術の進歩によって、これからどういう検査方法ができてくるかということも、これは科学の世界ですので分からないわけです。しかも健康診断ですので、この診療報酬というのは決まっていません。自由な値段付けができます。一方において労災保険の方からすべて給付がなされますということになれば、どういう状況になるのかという心配も、その負担をする側からすればあります。
それから、栄養指導、運動指導、生活指導というのは一回で済むものではありません。高血圧症ということになったときに、30歳なら30歳の人が、30歳のときに健診を受けたということで1回指導を受ければそれで済むということではないはずです。1カ月に1回か2カ月に1回か知りませんけれども、ちゃんとした医師の所へ通って指導を受けなければならないと思いますし、少なくともそれが望ましいと思います。たぶん、良くなるということはほとんどないのです。注意しないと、必ず血圧は上がりますから、そういうことで継続的にその指導をしなければならないという問題も起こってくるわけです。
もともとの基礎疾患というものが私病の世界なのです。二次健診というのも、一次健診で異常があるということを契機にして、労災の保険給付の対象にしようというのが皆さん方の試案なわけです。一次健診の結果異常があったとしても、二次健診あるいは再検査をすれば、別に問題ありませんよということになっていく人が大勢いるわけです。
健康診断の制度管理ということを健診機関でやっていますが、いろいろ労働省の指導もあってかなり進んではきていますが、今だに健診機関によってバラつきがあるという状況は否定できません。ある健康診断機関に行けば異常値が相当の数が出るという現実もあります。そうすると、そこの所へ行った人は、労災保険の給付の対象者が増えるという状況が出てきます。
もともとこの構想というのは、出発点のところに無理があると思うのです。発想として、生活習慣病をどのように予防していくか、減少させていくかという、そこのところは確かに分かるのですが、それを労災保険の仕組みの中で解決をしていこうという、そこのところはどうもいささか無理がある。
一方において、医師関係あるいは看護関係の団体というのは、前から私が申し上げておりますように、予防が大事だということでの主張をなさっておられるわけです。今現在、健康保険法の取扱いでも健康診断そのものは給付の対象にはなっていないのです。それはそれなりに理由があってなっています。
今年の4月16日に、厚生省の医療保健福祉審議会の制度企画部会が、診療報酬体系のあり方についての意見を厚生大臣に具申をしております。その中で予防についての取り組みについても、この審議会で議論をされているわけですが、こういうふうに言っております。「生活習慣病患者に対する運動指導や、療養生活指導、小児齲蝕の再発防止や咀嚼機能の長期的な維持管理のための技術など、健康な状態に回復し、維持することによって、直接的に患者の生活の質の向上と医療の効率化とを両立できる予防的な治療技術は今後とも給付の対象とし、また評価の充実を図ることを検討することが必要と考える」。私なりの解釈では、リハビリといったものは、これからもきちんとやっていけということだと思うのです。
ただ、それに続けてこういうふうに言っているのですが、「しかしながら、健康診査等は、これを受ける者の中には、結果として治療を必要としない者が含まれており、費用対効果についてさまざまな評価があること、また、保険者の創意と工夫によって多様な取組みが可能であることなどから、現在の財政的な枠組みにおいては、保健福祉事業による対応が現実的と考えられる」。こういうのが、この審議会の結論であります。
ただ、続けて最後のところでこうも言っているのですが、「なお、諸外国でも予防を公的医療保険制度の給付対象としている例もあり、また医療費財源の在り方に関係する課題であることから、今後引き続きその在り方について検討することが求められる事項と考える」。こういうことで、引き続き検討をしていきましょうという整理もしているわけです。
そういう意味でも、健康保険制度の中でも、予防給付をどうするかということが1つのポイントになっておりますので、その状況を見た上で、労災保険給付として給付するかどうかというのは、この予防給付が健康保険制度で行われて、それの定着状況を見た上で考えればいいことではないのでしょうか。
○ 事務局
いくつか御指摘いただきましたので、順次お話していきたいと思います。1つは健診、しかもその健診技法として心エコーとか、頸部エコーとか申し上げたのですが、それだけに限られないのではないか、必要な検査というのはいまでもいっぱいあるし、これからも科学あるいは医学の進展に従って無限に広がるはずだということ。それを踏まえると、健保とは違う診療体系でやっている労災でいくと、診療報酬が膨大にふくらむのではないかといったことが1つ御指摘ありました。
私どもが考えているのは、精密検査全般になると、おそらく病気の存在を前提にして、その病態がどうなっているか、あるいはその原因は何か、病巣はどこにあるかといった、治療のために必要なことをすべてやる、精密検査まで今回含めるというようなことは考えておりません。二次健診の趣旨、資料1にも書いてありますけれども、その危険因子の内容とか程度、あるいは治療を受けた方がいいのかどうか、そういったものを把握するというような意味合いで考えております。
そういった考え方からいくと、二次健診で認められる検査の手法なり技法というものは、一定の限界なり制限が出てくると考えております。そういった二次健診のメニューも明確に示す必要があるだろうと考えております。
点数のほうについても、労災のほうは健保準拠であり、労災特掲ということで必要なものについては健保よりも高い点数を付けるというようなことでやっているのですが、概ね心エコーとか、頸部エコー、ヘモグロビンA1C検査等々は、健保の中でも点数化されているものですので、健保準拠の形で点数を定めるということを考えておりまして、膨大に診療報酬がふくらむようなことはない。逆に言えば、膨大にふくらむようなことになってはいけないと考えておりまして、その検査の手法をメニュー化すること、診療点数も明確化するというようなことは、当然ながら必要であろうと考えております。
それから保健指導ですが、これはずっとやらなければ効果がないのではないか、という御指摘がございました。これも、ある意味で正しい御指摘だと思います。ただ、今回考えているのは、1回保健指導が必要であるとなった場合、2年も3年もずっとやり続けるかというようなことはどうかと考えております。いわばきちんとした生活を送るといった意味合いのインセンティブを本人に与えるのに必要十分な給付の期間なり回数でいいのではないかと考えております。
検査機関によって、一次健診の検査結果の示し方も相当違うのではないかといった御指摘がございました。この点についても、健康確保支援給付を法律で定め、その詳細な要件については省令などで定めるといったことになってくるかと思うのですが、その場合に十分考慮しなければいけない要因の1つであろうと考えております。逆に言えば、その一定基準を省令等で明確化するといった点も頭に入れながら対処しなければいけないことではないかと考えております。
最後に、医療福祉審議会における予防の問題についての取り組みについての現状の御紹介がありました。その中で、予防は健保では保健福祉事業による対応が現実的と考えられるということの1つの論点として、検査結果の中で治療を必要としないものが含まれているということの御指摘があったわけですが、今回は、先ほど来申し上げておりますように、脳・心疾患等に係る異常所見、しかもそれが複数の異常所見をもっているというようなことで、わりとハイリスキーな人を対象にするというふうに考えております。
脳・心疾患の特徴としては、発症していなくても過重な業務が負荷されることによって急激に増悪して、それまで発症していなかった人も突然発症するということがあり得るわけですから、その治療に行く前の人に対しても、そういったきちんとした状況を把握し、保健指導をきちんとやる。あるいは、業務上の事後措置をきちんとやるといったことが当然ながら重要ではないかと考えているわけです。
もう1つは、健保のほうの結論を待ってから、労災において予防の関係をどうするかを考えればいいのではないか、といった御指摘がありました。これも資料1に書いてあるのですが、労災なり労働行政の考え方としては、有害業務により発生する疾病というのは、個別の事業主に義務付けることによって、その症状の把握から予防まで、安全衛生法の体系も通達も入れてですけれども、そういった中で措置しているわけです。
そういった中で、脳・心疾患については結果労災というふうに言われるわけですが、そのための予防の措置というのは、安衛法一般の中で決めてあるのですが、必ずしも十分に機能していないということもありまして、この脳・心疾患について、労災保険の給付で財源的なインセンティブを付けるといったようなことで、予防をきちんとやっていくというようなことは、必ずしも別に健保の結論を待って考えなければいけない問題ではないと考えているわけです。
○ 委員
こういう制度は非常に結構だと思いますので、是非これを進めてほしいという立場で考えてみたいと思います。こういう時勢ですので、基礎疾患と言いますか、私病についてもいろいろ複雑になってきているというのは事実だろうと思います。そういった中で、特に業務との関係において、そういう一般的な私病をもっている人が多い中で、精神的、肉体的に過重な業務を課せられることによって、そういう状況が悪化して死に至る、というようなことになっていこうかと思います。
一次健診をやり、そして二次健診をやって引っかかった人に対しては業務の軽減などをやっていれば、かなりの人が助かっている場合が多いのではないかと思うわけです。現実の場合に、そういう業務については非常に特定の人がそういう仕事に携わっている。開発業務であるとか、特定な専門的知識を持ってそういう業務に関わっている。そういうものが発見され、指摘をされても交替ができないというような中で、そういったものが継続され、そしてそれが起因して死に至るというような状況になっているのが、これまでの多くの事例に出ているところではないだろうかと思います。
問題は、二次健診で問題があるというふうに指摘をされた場合に、事業主に対して、どれだけの強制力をもって業務の軽減をさせることができるのかどうか、というところが1つ大きな問題ではないだろうか。それから、労災保険として、どういうところの費用を負担するのか。二次健診の費用を負担するのか、あるいは個人の予防保健指導にかかわる費用について負担するのか、その辺のところが明確になっていないわけです。給付する内容についてもう少し具体的にというようなお話がございましたが、その辺のところももう少し明確にお聞かせいただきたいと思います。
○ 委員
委員のお話で2つほど気になったのですが、1つは委員の持論なのですが、労災保険は事業主の100%負担だということを言われるのですが、付加価値における分配率の中で、今日経連でも総労務費、総人件費とか盛んに言われているわけです。今、労働組合もいろいろな交渉の場で、総人件費とか、総労務費という立場で、企業の法定福利費についても一緒になって論議しているわけです。私たちも、正確に使われない費用を、国にどんどん納めて、変なふうに使われるなどというのはまっぴらご免ですから、正しく本当に働く人たちに使われる、目的どおりに使われるということで、我々もこれに賛同しているわけです。そういう視点からすると、事業主100%負担だからということをあまりにも強調しすぎではないか。付加価値の分配からいうと、ちょっと言いすぎではないかと思っております。
もう1点は、もともと私病だと何回か言われているのですが、先ほどそれはそうではないのではないかという御指摘もあったわけですから、そろそろ、もともと私病だというところは少し修正をしてもらわないと。専門家の方々が、そうではないのではないかと言われているのですから、もう少し意見を改めてもらわないと話が進まないのではないかと思います。
○ 座長
まだまだ議論があると思いますが、前回御出席できなかった委員等からも活発に御意見の開陳をいただきました。後の説明も受けたいと思っておりますので、本日のところは健康確保支援に関する労災保険上の措置についての一わたりの議論をここで一応終えて、後ほどまとめに入る段階で必要な御意見をさせていただいたらいかがかと思います。本日は、これで一応のところの議論を終わらせていただきます。
それでは、9月に労使から出していただきました要望事項等についての議論に入ります。労使から出されました要望事項についての今後の検討スケジュール、そして要望事項にかかわって現在どうなっているか等の資料も出ておりますので、この辺について事務局から説明をいただきます。
○ 事務局
9月いっぱいということで、本小委員会で検討する必要がある事項ということで、労使各側から御要望事項をいただきました。労働側からは7項目、経営側からは優先的に検討すべき事項として6項目、それから口頭で私立学校非常勤職員の通勤災害の問題をいただきました。それから、本小委員会を立ち上げるときに、労災審議会の過去の建議で宿題になっている事項も取り上げる、というようなことを申し上げております。そういった事項について、本日は時間の関係もありまして、資料4に基づいて、御指摘のあった点についての現状がどうなっているかということを御説明したいと思います。労使各側から出された事項等については、今後合わせて2回ほど議論をいただき、私どもとしては年内に取りまとめていただきたいとお願いしております。本小委員会の報告書に対応の方向等について盛り込んでいただければと考えております。
資料4に基づき、御指摘がありました事項についての現状を簡単に御説明します。労働側からいただきました事項の第1は、「労災保険制度において、健康確保対策を強め、予防給付の導入をはじめ、制度の適切な改善を検討すること」ということです。バーが引いてありますが、これは本来この小委員会にお願いした事項として3回ほど検討をいただいているという趣旨で、この現状では省略してあります。
第2点として、「労災未加入事業所の一掃を図り、労災かくし対策の強化を行うこと」です。労働保険については、事業主の意思にかかわりなく、労働者を雇用していれば法律上当然に労働保険にかかる保険関係が成立するわけです。しかしながら、商業、サービス業等の小零細事業においては、残念ながら相当数の未手続事業が残されていると考えております。そういった点を踏まえ、現在事務組合等と連携し、適用促進活動の実施であるとか、あるいは行政側においても労働保険適用捉進月間等を定め、労災保険制度の周知活動に取り組んでいるところです。
次に「労災かくし」の問題です。労災かくしというのは、私どもの理解では、労働災害の発生事実を陰蔽するため、故意に労働者死傷病報告書、これは安全衛生法に基づいて提出しなければいけないというふうになっておりますが、こういった労働者死傷病報告書を提出しないもの、あるいは虚偽の内容を記載して提出するといったことを労災かくしと私どもは受け止めております。こういった点については、監督、あるいは集団指導等の機会を通じ、労働者死傷病報告書の提出を適正に行うといった点について、あらゆる機会を捉えて指導を行っております。さらに、労災かくしの存在といったものが明らかになった場合には、司法処理も含めて厳正な措置を講ずるといったこととしております。
3点目の事項は、「雇用・就業機会の多様化等に対応し、労働者の定義を適切に拡大し、実質的に労働者と同様の業務に従事している者は労災保険の対象とすること(シルバー人材センターの会員の一部など)」といった点です。労災保険は労働基準法上の労働者といったものを対象としておりまして、逆に言えば労働基準法上の労働者でないとされる者については労災保険の適用はありません。そういった意味で、シルバー人材センターの会員、これは一般的には請負といった形で業務を行っているというようなことでして、一般的には基準法上の労働者性がなく、そういう意味で労災保険の適用対象となりません。
ただ、形式的に請負とか委託とされていても、私どもの考えとしては、実質的に業務の現場において労働者性がある、労働者と認められるといった者については、個別具体的に判断を行っております。そういった意味ではシルバー人材センターの会員についても、労働の実態に即して労働者性が認められる場合には、労災保険の対象になるということです。
なお、労働基準法上の労働者以外の者、例えば一人親方であるとか、家内労働者、あるいは中小企業の事業主というのは基準法上の労働者ではないのですけれども、そういった者についても特別加入といった制度が労災保険上ありまして、基準法上の労働者以外にも労災保険の適用が拡大されております。ただ、現状ではシルバー人材センターの会員、あるいは個人の家庭に雇用され、介護業務に従事する者については、特別加入の対象にはなっていないといった現状があります。参考2、参考3でシルバー人材センターの概要であるとか、特別加入の概要が添付してありますが、時間の関係もありますので省略させていただきます。
4点目の御指摘は、「じん肺症について、合併症の認定基準や考え方を改善し、管理3の者が肺ガンを発症した場合も給付対象とするなどの見直しを行うこと」です。私どもの考え方としては、現段階では、じん肺と肺がんの因果関係が医学的に確認された、というふうには取り扱っておりません。一方では関連があるといった学説、研究があります。また、一方では関連がないといったものも多くあるという現状ですので、そういった取扱いをしているわけです。
ただ、2つ目のパラグラフにありますように、じん肺管理区分が4といった場合には、肺がんの早期発見が困難となるとか、あるいは肺がんの治療範囲が狭ばめられるといったようないくつかの理由から、管理区分4であるといった者に発生した原発性の肺がんについては業務上の疾病として取り扱っているというところです。ただ、この点については国際がん研究機構(IARC)が、最近、二酸化けい素、これはじん肺の原因物質になるというふうにされているものですが、この二酸化けい素の発がん性の評価を改めました。「ヒトに対しておそらく肺がん性がある」から、「ヒトに対して発がん性がある」というふうに強い評価にしたわけです。そういったこともあり、現在、労働省においては、本年度から2カ年計画で専門検討会を設置して検討を行っているという現状にあります。
5点目の指摘としては、「障害等級の認定基準の見直し、はり・灸等の東洋医学の適用の取扱いの改善などを行うこと」です。まず障害等級表ですが、これは障害補償の障害の程度を認定する基準になる障害等級を定めているものです。さらに、その詳細な認定基準として、障害等級認定基準といったものを私どもは定めております。
これについては、昭和50年に大幅に改正した後、大きな見直しを行うことなく現在に至っております。そういったことを踏まえ、この障害等級、あるいは障害等級認定基準については、本年から見直しの必要性があるかないか等も含めて検討を行っているところです。
次は、はり・きゅうの問題です。はり・きゅうについては、次の(1)、(2)に該当する場合については労災の療養(補償)給付の対象にする、というような取扱いを現在行っております。1つは、業務上の事由による傷病、怪我をしたとか、骨を折ったといったものの治療効果がもはや期待できないと医学的に認められるものであって、その後痛みがあるのだとか、しびれが残るのだといったものの改善が期待できると主治医が認め、診断書を交付するといった場合にのみ、9カ月以内を限度としてはり・きゅうの施術を療養(補償)給付の対象に入れております。なお、3カ月を限度に延長できるといった扱いになっております。
(2)は、一般的な医療とはり・きゅうの施術を併せ行うことについても、運動機能の回復が期待し得るということで主治医が認めた場合には9カ月、さらに3カ月を限度に延長できるといった取扱いになっております。いずれについても主治医が「必要である」といったことが要件になっているというのが現状です。
6つ目の御指摘としては、「手間請け従業者の労働者性の判断を行う際には、平成8年3月25日に発表された「労働基準法研究会労働契約等法制部会労働者性検討専門部会報告」に示された判断基準に基づいて判断を行うこと。また、これについては各基準局、監督署に対しても適確かつ十分な指導を行うこと」です。なお、手間請け従業者というのは、私どもの理解するところでは、建設業において坪単価等により報酬の予定額が決められ、実績に応じて報酬が支払われるといったような形態で就業している者、というふうに定義しております。
労働者性の問題については、具体的には業務に従事すべき旨の指示に対して諾否の自由があるかどうかであるとか、業務の遂行方法に対して指揮命令があるかどうかであるとか、こういった点をいくつかの要素として、個別具体的に判断しており、この手間請け従業者についても同様に扱っております。御要望の中にあった、基準法研究会の専門部会報告、これは平成8年に出たわけですが、手間請け従業者の事例等について詳細な報告をいただいたものです。これについては、現在、業務の参考として、各都道府県労働基準局労働基準監督署に対して周知を行っているという状況にあります。
7つ目は、「建設業従業者に対する労災保険の適用については、現在行われているような適用業種区分の細分化をやめ、建設業で従事する者についてはその全てが建設の区分で労災保険の補償が受けられるようにすること。上記の実現に向けて、建設業で従事する各業種についてその就業実態を調査・把握し、それらがあくまでも建設の請負いに基づく作業であることを認め、建設現場での労働災害はもちろん、作業現場での加工時などの労働災害について、建設区分での保険関係で補償を行うこと」です。
おそらく問題点としては、右の現状の欄の3行目にありますように、工事の完成に必要な設備等の製作・加工等の作業について問題があるのではないか、という御指摘と受け止めております。こういった作業については、建設現場の中で、工事と一体となって行われるという場合には、まさにその元請けのみが当該事業の事業主としてその保険料の納付義務を負う、というふうな扱いになっているのですが、そういった工事の完成に必要な設備等の製作・加工等の作業を建設現場以外の工場等で行うといった作業については、建設とは別に独立した事業を営んでいるというような考え方から、現状では別途保険関係を成立させる必要があるわけです。
もちろん、そこで働いている労働者が業務上の災害に遭ったという場合には、もちろん当該労働者の属する事業の業種区分のいかんにかかわらず補償を受けられるわけですが、別途保険関係を成立させなければいけないといったような問題点があるというような御指摘ではないかと考えております。そういった意味では、中小企業主の特別加入というのは、2つの適用事業を持つ中小企業主が特別加入しようとすれば、その各々の事業で特別加入しなければいけないとか、あるいは建設業の一人親方の特別加入については、建設の関係の事業というふうに認められれば特別加入できるのですが、製造業の関係であるというふうになると、一人親方の特別加入すらできないといったような問題があるという御指摘であろうかと考えております。
建設業の問題でいくと、そういった取扱いが各労働基準局、あるいは監督署の扱いが必ずしも統一されていないといった点を踏まえて、実態調査等を行ってはどうかというような御指摘ではないかと考えております。
21頁にまいりまして経営側から出された事項です。労働福祉事業の見直しの問題、労災病院の問題ですが、これは9月以来、労働福祉事業の見直しの問題の中で、現状等を報告させていただいていますので省略させていただきます。
(3)は「労災年金と社会保険給付との調整のあり方の検討」です。従前の建議でも指摘されている問題ですが、現在、同一の事由により労災と厚生年金、国民年金が支給されるという場合は、障害が残るといった問題、つまり障害補償年金ですが、こういったものについて同一の事由により労災保険の側から、あるいは社会保険の側から給付がなされる、あるいは、遺族年金についても労災あるいは社会保険から給付がなされるということで、同一の事由により給付がなされます。その場合に今の調整のやり方では、労災保険の側が一定の率に従って減額され支給される、というような調整を採っております。なお、老齢であることを要件にして支給される社会保険の問題については、支給事由が異なるといったことから、現在では併給調整の対象にはなっていないということです。(4)は「労災保険給付と民事損害賠償との完全調整」です。これは後ほど過去の建議の問題としてもありますので、そのときに御説明いたします。
(5)は「積立金の財政方式の見直し」です。現在、労災保険では将来の年金給付に充てるといったことで6兆5,000億ほどの積立金があります。これは、事故があったときに、将来の年金給付に必要な費用をその事故があったときに徴収する。いわゆる充足賦課方式の考え方に基づいて料率を設定しておりますので、こういった積立金が必要になるということです。
ただ、こういった充足賦課方式を導入したのは平成元年度からです。それ以前については6年分だけ徴収していまして、6年を超える部分については後年度負担としておりました。そういった意味では、昭和63年度以前の分については積立不足があります。平成元年度に充足賦課方式を導入した際に、そういった積立不足については、平成30年度までの30年間で解消するというようなことで本審議会にもお諮りし、あるいは御報告して、現在過去債務分について当初は1,000分の1.5、いまは1,000分の1.0ですけれども、料率の中でそういったものを過去債務に充てるということで徴収しているという現状にあります。
(6)は「メリット増減率の引き上げ(建設業を含む)」という問題です。メリット制度というのは、労働災害の防止努力の結果災害が減ったということであれば、料率を100分の40の範囲内において引き下げる、あるいは成績が悪かった、災害が多かったといった個別事業主については100分の40の範囲内で料率を引き上げるといったような制度です。要望の御趣旨は、この100分の40自体を引き上げてはどうかといった問題。それから建設事業、立木の伐採の事業については、一般産業、一般業種は40%の範囲内でメリット制を働かせるということになっている一方で、建設、立木についてはプラスマイナス30%でメリット増減率を考えることになっております。
特に、建設業界からは規制緩和というような観点からも、メリット増減率一般業種と同じ100分の40にをしてほしいといったような要望があります。これは、そういった問題であるということです。
(7)は口頭でお話があった点ですが、「私立学校非常勤職員の通勤災害の範囲についての検討」の問題です。現在、労災保険法上の通勤とは、労働者が就業に関し、住居と就業の場所との間を合理的な経路及び方法により往復することというふうにされております。問題提起のありましたのは、私立学校の講師のように、例えば午前中はA大学で英語を教え、午後はB大学で教えるが、そのA大学とB大学との間の移動が通勤に当たらないというのは問題ではないか、というようなことであったかと思います。現在、条文上の通勤というのは、住居と就業の場所の間の往復ということでして、就業の場所と就業の場所との間の往復といったものは通勤に該当しないという取扱いになっております。
次は「過去の建議における事項」です。1つは「給付基礎日額の最低・最高限度額の見直し」です。労災保険は、事故があった場合には原則として被災前3カ月に支払われた賃金により算出した給付基礎日額をベースにして給付を行います。特に年金の場合、日本の年功賃金制の下では、若いときに被災すると賃金が低いまま年金の給付基礎日額になる。あるいは、年功賃金制のピークで事故に遭うと、非常に高いまま年金の給付の基礎日額になるというようなことで、加齢に伴う稼得能力の変化を反映する仕組みになっていないといったような問題が従来から指摘されておりました。
現在では、日本の年功賃金制を反映するような形で、年齢階層別の最低・最高限度額を設定し、例えばあまりにも若いときに事故に遭って、低い賃金で年金の給付基礎日額が算定されたという場合に、その最低額に引っかかる場合には、その最低額まで引き上げて年金を給付するというような仕組みにしております。これについて、いろいろな状況を的確に考えるべきではないか、といった建議であったかと思います。
もう1つ具体的には、高齢者の就労実態を適正に給付基礎日額に反映させるべきだという御指摘がありまして、65歳以上は一律だったのですが、その年齢区分を65歳以上70歳未満、それから70歳以上と2段階に分けて、平成6年の建議で具体的に指摘された点には処置をしたということであります。
最後に、経営側からの御要望でもございました、労災保険給付と民事損害賠償との調整の問題です。労災について事業主にも責任があるといった場合です。1つは、民事損害賠償の場合における調整の考え方です。これは、労災と同一の理由について民事損害賠償を受ける場合、現在のやり方では、その事業主は前払い一時金の最高限度額相当額を限度に民事損害賠償の履行を猶予でき、実際に年金給付が支給されたといった場合には、その価額の分だけ損害賠償を免責されるといった仕組みになっております。
なお、その民事損害賠償が確定するまでの間に、労災保険が既に支給されたといった場合には、その保険の種類を問わず、労災保険が支給された限度で民事損害賠償が控除されるといった仕組みです。これは、同一の事由で、その損害補償が二重に行われてはいけないといった考え方に基づいてこういう調整を行っているわけです。
なお、(2)にあるように、民事損害賠償が先行した場合、その裁判で使用者の損害賠償が早く確定したといった場合には、民事損害賠償が行われた際の労災保険給付の支給調整に関する基準、これは労働大臣が定めているものですが、そういった基準に従い、労災保険の支給を停止するといったことになっております。
ただし、前払一時金最高限度額相当期間の終了する月から9年間、あるいは就労可能年齢原則67歳のいずれか短い期間を支給調整期間とする、その支給調整期間後は、労災保険の支給が開始されるといったのが、現在の支給の取扱いになっております。
2つ目は「第三者行為災害」です。これは、労働災害が第三者の責任によって起こされたという場合です。典型的には、営業マンが営業中に交通事故に遭って、向こうのドライバーの方が責任があったというような場合、これは第三者行為災害に該当する場合になります。
これは、労災が先行して支給されている場合には、その事故の責任のある第三者に対して、政府が保険給付を行った価額を限度に損売賠償請求権を代位取得し、第三者に求償を行うといったような仕組みになっております。民事損害賠償が先行している場合には、政府は、責任のある者が事故に遭った人に支払った損害賠償の価額の限度内で保険給付を行う責任を免れる、というようなことになっております。なお、この第三者行為災害の場合には、運用上災害発生後3年以内に支給事由が生じた保険給付に限って支給調整を行うということになっております。なお、特別支給金は支給調整の対象には含まれてはいないということです。
関連の資料をいくつか付けておりますので、後ほどお読みいただければと思います。以上です。
○ 座長
次回以降議論していただく現状につき、事務局から説明をいただきました。議論は次回以降にしたいと思いますが、本日どうしても聞いておかなければいけないということがあればお伺いします。
○ 委員
3番目の、事務的なものというのはどういうものですか。
○ 事務局
今回、優先的にというところを取り上げさせていただきました。いただきましたのは、事務手続の簡素化であるとか情報開示等の問題です。行政内部で検討させていただきまして、一般論ですが、出来るものについては順次実現させていきたいと考えております。
○ 座長
今週の金曜日に次回があるのですが、議論を進めるために現状は説明していただいたのですが、この事項について事務局としてはどのように考えているかというようなものは何か準備していただけますか。
○ 事務局
御議論いただく前に、事務局でこうするというのを最初から出すのもいかがかと思いますので、議論の中で必要に応じて私どもの考え方を御提案し、それについての御意見を賜ればと考えております。
○ 座長
次回は、労使双方の要望事項についてフリートーキングするということで入っていきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。本日は定刻を超えておりますので、これで終了したいと思います。
○ 委員
議論の進め方についてなのですが、本日の健康確保事業のことについても、はっきり言えば一定のまとめもしないまま行くわけです。そして、労使双方から出ている課題をやっていくということです。あと年内いっぱい議論するのですが、どうい うふうな段取りで、どこで何をまとめようとされているのか、そこが分からないのです。
○ 座長
労働者側の考え方もあると思いますが、12日、24日辺りのところで、労使双方から提出された特に優先的に議論していくもの、あるいは建議事項の議論についてできれば一わたり終わる。そうすると、これまで労働福祉事業の見直し、健康確保支援対策、労使の要望事項等、大体この3つを小委員会の検討事項として依頼された事項が終わりますので。12月は3回で終わるかどうか分かりませんが。
○ 事務局
本日、委員から、給付の具体的なイメージをもうちょっと出してくれ、というようなお話がございました。12日は無理かと思いますけれども、24日にはそういった点も御提示したいと思います。
○ 委員
もう1つですが、先ほど説明がありましたが、労災保険と民事賠償の調整の問題というのは、小委員会設置の段階では大きな課題のように思っていたのですが、いまのお話ですと、この現状説明で実質的には終わってしまって、研究会報告というのが配られているから、それなりに書かれていると思うのですが、そこをさらに突っ込む議論をなさろうとしているのかどうか、そこが分からないのです。それは、どうされるのですか、ということをお聞きします。
○ 座長
建議を取り残してずっと来ているわけだけれども、事務局は取り残した事情もあるだろうし、その辺のところを御説明ください。
○ 事務局
次回、次々回と御議論させていただければと思っておりますが、研究会もありましたし、その内容につきましての詳細を御報告したいと思います。関係省庁もありまして、実は水面下ではいろいろ話をさせていただいておりまして、そういった点も御報告する、というような形で御議論の材料を提供していきたいと思っております。
○ 座長
よろしいでしょうか。
○ 委員
はい。
○ 座長
それでは、本日はこれで散会いたします。ありがとうございました。
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