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議事
○ 座長 ただ今から、第6回労災保険制度検討小委員会を開催します。本日も前回に引き続いて、健康確保支援事業について、意見を交換していきたいと思うのですが、次回もこの問題について引き続き、必要な限り議論していくということも考えながら、今日、意見交換をしていきたいと思っています。
それでは、前回の小委員会で質問のありました事項、ならびに本日用意した資料について、一括して事務局から説明をお願いします。
○ 事務局
前回、いくつかこういう資料がないか、というお話がありました。ただ、外国の関係であるとか、個別の企業で健診の効果がわかるような資料ということで今当たっていますが、今日は間に合っておりません。また次回以降、その点についてはお出ししていきたいと思っています。
最初の資料1は、労働福祉事業団が、この9月にアンケート調査を行って、労災病院を利用している事業場を対象にアンケート調査を行ったものです。そういう調査については、規模と業種のクロスでデータが取れないだろうかという御質問がありましたので規模と業種のクロスについて整理したものです。なお、分かりやすいように、冒頭に「1健康診断実施状況(労働者割合)」とありますが、右に対象者数5万813人、受診者数4万9,059人というように、必要な数字等を載せています。詳細な説明は省略させていただきます。
4頁の資料2で、健康診断の有用性、有効性を示す考え方なり、論文はないだろうかということで、これは下にありますが、「人間ドックは突然死を予防できるか」というドクター3人の方々の論文のエッセンスを紹介したものです。図が2つあります。図の1は「心臓死群と対照群の危険因子」、2が「脳血管障害死亡群と対照群の危険因子」です。いずれも左側は、この(注)にあるように、健診機関における健診受診者を、「受診後、心疾患により死亡した者、(心臓死群)」、あるいは「脳血管障害により死亡した者(脳血管障害死亡群)」に対して、これらとその年齢性をマッチさせた対照群を区分して、その区分ごとに健診項目別に有所見とされていた者の割合を示したものです。
いわば当然ながら、左の死亡した群の人たち、有所見の割合が多いわけですが、この3人のドクターの考え方は上にあるように、そういった潜在、あるいは顕在の心疾患あるいは脳血管疾患は、総合健康診断による早期発見と、これらの疾患の危険因子に対する生活指導、及び健康教育により十分予防が可能となるという考え方です。有所見は左の方に多いわけですが、そういう有所見をきちんと事前に捉えて、的確な生活指導なり健康教育を行うということで予防が可能であるのだという考え方であろうかと考えられます。
次は5頁で、委員から御紹介いただいた、予防の考え方について、ハイリスクストラテジーとポピュレーションストラテジーがあるということです。ローズの『The Strategy of Preventive Medicine』という本からのエッセンスです。ハイリスクストラテジーというのは、ここにあるように「疾患を発症しやすい、高いリスクを持った個人に対象を絞り込んだ戦略である」ということです。今回の議論でいけば、脳・心疾患にかかわるような有所見を持っている方々に対象を絞り込んで予防をしていく戦略、あるいはアプローチの方法であろうと考えられます。
利点としては、ここに挙げているように、例えば「集団全体へ、一応に対処する場合の不経済さを避け、高いリスクを持っていない個人に対する、不必要な介入を少なくすることができる」、そういうメリットが挙げられています。ただ、限界もいくつかあるということが指摘されています。
これに対して、ポピュレーションストラテジーというのは、対象を1部に限定しない集団、一般大衆を対象にした戦略と考えられます。例えば啓発とか啓蒙とか、そういったものがこういうポピュレーションストラテジーに該当するのではないかと考えています。利点としては、啓蒙とか啓発で、「社会的、根本的な変革を促すことができる」といった点が挙げられています。ただ、限界も挙げられています。「各個人にとっては、明らかな変化が認められず、受ける利益が少ない」とか、また「そのため行動を変えようとする動機づけが少ない」という問題点も指摘されています。このローズの結論としては、このハイリスクストラテジーとポピュレーションストラテジー、予防に関連したこの2つの戦略、2つのアプローチを統合して行うことが必要であろうという結論です。
6頁は健康確保支援ということで、事務局はどのようなことを考えているのだという御質問がありました。現時点において、労災保険の中に、健康確保支援給付(仮称)といったスキームの給付を盛り込めないかと考えているわけです。考え方としては、1年に1回の定期健康診断、これは安全衛生法において義務づけられており、労働者はこれを受診するわけです。もちろん異常がないということであれば特段問題はありませんが、これに対して、何らかの所見があるといった場合、今の労働安全衛生法の体系は、7頁に前回お出しした資料を付けていますが、医師等の意見を聞いて事後措置を講じなければいけないというようなことになっています。今回考えている健康確保支援のための給付は、「過労死」に関係する項目に有所見がある労働者に対して、二次健診を実施して、その異常の生じている場所や原因、進行度合等を把握する。さらに保険指導ということで、いわゆる生活習慣病については「運動」「休養」「栄養」の3つの改善が重要であるということなので、医師等による保健指導を実施する。こういった費用について、労災保険の給付で填補するということを考えているわけです。
7頁は、その「過労死」に関係する有所見項目というのは、定期健康診断でどのようなものが出てくるだろうかという問題です。定期健康診断の項目を11項目挙げていますが、アンダーラインが引いてある項目、例えば「血圧」とか「血中脂質」「血糖」「心電図」といったものが、いわゆる脳・心疾患にかかわる有所見が出てくる健診項目ではないかと考えているわけです。現在の二次健診の位置づけは、何らかの有所見があった人たちに対して、事後措置を取る前にさらに詳細な情報を得る必要があるといった場合には、再検査又は精密検査が必要な労働者に対して受診を勧奨するということになっています。
また労働者については、事業主は保健指導を労働者に対して行いなさいといった努力義務規定が労働安全衛生法上あり、労働者自身にも、健康保持に努めなければならないということになっています。先ほどの二次健診あるいは保健指導を対象にした「健康確保支援給付」というのは、7頁でいえば「再検査または再精密検査の受診」、「労働者の健康保持の努力」といったものをさらに実行あらしめる効果があるのではないかと考えているわけです。
さらにこういったスキームに関連して、いろいろ論点があろうかと思います。8頁以降で論点を整理しています。
○ 事務局
労働福祉事業の見直しの際にも、議論のための叩き台ということで、論点メモを整理させていただいていますが、今回も、「労災保険における労働者の健康確保支援の在り方(論点メモ)」というものを事務局で用意させていただきました。簡単に御説明いたします。まず1つ目として、「労災保険における労働者の健康確保支援の必要性をどう考えるか」という点です。まず「労働者の健康の現状についてどう考えるか」、あるいは「過労死等の状況についてどう考えるか」という部分については、前回お出しした資料等の中身を簡単にまとめさせていただいています。
健康の現状のほうですが、健康診断における有所見率が高まっているということや、あるいは健康状態に問題のある労働者の数が増えているというがあり、また、将来の健康状態に不安を持つ労働者が増えているということが言えます。「過労死」等については、働き盛りの者の脳・心臓疾患による1年間の死亡者数は約2万6,000人に達していて、働き盛りの者の死因の2位、3位を占めています。また脳・心臓疾患は、突然死の原因の4分の3を占めています。過重な業務負荷によって基礎疾患が著しく増悪し、脳・心臓疾患が発症して、死亡または障害に至ったもの、いわゆる「過労死」の事案については、労働災害として認定されていて、その件数等、近年増加傾向にあるということも、前回お出しした資料にあります。こうした中で、こういう問題というものは、本人、遺族のみならず、企業にとっても重大な問題になっていて、企業の責任の問題であるとか、労災認定を巡ってのさまざまな争いとか、そういったことで広く社会的な問題になっています。ここに書いてあるような状況をいろいろ踏まえると、さらに今後、「過労死」等の事案が増大することが懸念されます。
3つ目でメンタルヘルスの重要性についてどう考えるかについては、その対策の重要性が高まっているのではないかとまとめさせていただいています。ただ、メンタルヘルスに関しては、カウンセリングを実施して初めて医療的な対応が必要かどうかが分かってくるというものなので、あらかじめ対象者を絞り込む形で対策を講じることではなくて、広く希望者に対策を講じるという仕組みにする必要があると考えています。また、未だ存在する精神病等に対する偏見という問題もあり、プライバシーに配慮する必要性が非常に高いという点で、他の疾患とは異なるということから、それらの事情を十分踏まえた対策が必要ではないかとまとめさせていただいています。
4つ目の労災保険制度上、労働者の健康確保支援の措置を設ける必要性についてどう考えるかについては、繰り返しになりますが、働き盛りの者の死因の上位を占めている脳・心臓疾患については、業務を含めてさまざまな生活習慣が絡んでいて、早期予防措置が非常に有効とされています。業務による過重負荷が基礎疾患を著しく増悪させて発症するケースについては労働災害ということで認定がなされていますが、そういうことであれば、その予防につながる仕組みを労災保険の枠組みの中に設けることは適切であり、かつ現実的な対応策ではないかと考えています
9頁です。労災保険において、そういう健康確保支援の措置を講じる場合に整理しておくべき基本的事項をいくつかまとめさせていただいています。1つ目は、まずそもそもの問題である、予防に関する事業主の責任の問題です。この点については、事業主は、今後の業務の負荷によって脳・心臓疾患を発症しかねない危険因子を有する労働者の健康状態を把握する責任であるとか、その状態というものが業務によって増悪し、ひいては死亡、障害に至ることを予防することに努める責任を有しているのではないかと考えています。この点については、裁判例などから見ても、事業主の民事上の安全配慮義務を構成する要素とされているのではないかと考えています。これは前回お出しした判例等を基にまとめさせていただいています。
2つ目は、事業主の予防対策への取組みの強化を労働安全衛生法において義務づけるということも1つあるわけですが、その点についてどう考えるかということは、現在の労働安全衛生法の体系は、一般健康診断による基礎的な健康状態の把握は全事業主に対する義務と課しているところで、それ以上のリスク状態の把握については、有害業務など業務が直接的に発症の原因になる疾病等に限定して、事業主の義務としています。そういう現行の労働安全衛生法の体系のことを考えると、今回の脳・心臓疾患については、業務上の要因だけではなく生活上の要因も関連するということなので、一律に公法というか、労働安全衛生法上の義務として、個々の労働者の詳細なリスク状態の把握を個々の事業主の負担で行わせるということは、事業主に対して過度の負担を求めるものではないかと考えています。
次に、では、そういう取組みというものを労災保険上設けると、事業主にとってどのようなメリットがあるかということです。言うまでもなく「過労死」の発生というものは、本人、遺族のみならず、企業にとっても貴重な労働力の損失になるということで重大な問題ですし、そういう場合には、労務管理責任、場合によっては民事損害賠償を問われるというケースも多いわけです。また「過労死」等と認定されると、メリット制などを通じて労災保険料が上がるという損失も生じます。これらの損失については、発症予防措置を講じることにより回避することができるのではないかとまとめさせていただいています。また「過労死」等の発生を防止するということなので、当然ですが、災害に対する事後的な補償給付を減少させる効果というものもあるわけです。
また、昨今の裁判例で、労働者の健康状態を定期健康診断によって把握しているからといって事業主の安全配慮義務が満たされているとは言えないとしている判例も見受けられ、そういうことからすると、労災保険法制度に「過労死」等を防止する仕組みを組み込むと、独力で健康診断等を超えて防止対策を講じることが資力的に困難な中小零細事業主にとっては、そういう制度があることにより、非常に大きなメリットがあるのではないか。この点も事業主にとって、非常に大きなメリットがあるのではないかと考えています。
10頁の具体的な措置は、先ほど事務局より御説明したものをイメージしたものです。まずどのような方策が有効かということですが、「過労死」に関する危険因子を有する者が発症に至るまでには、業務上の要因と、業務外の要因が複合的に作用するということが言われています。そういう点を踏まえると、当該労働者の健康状態に関する的確な情報を把握して、発症のリスク状態にある労働者に対して事業主は適切な業務上の配慮を行い、あと当該労働者自身は健康確保の努力を行う、そういうものを促進することができるようにすることが有効なのではないかと思います。要するに、両面からの取組みが必要ではないかと考えています。
そういう対策を労災保険給付で行う必要性はどう考えるかという点は、「過労死」は御承知のように業種、規模を問わず、あらゆる事業場で発生し得るものです。ただそれは個々の事業主にとっては偶然性、事故性を有するものですから、事業主が保険料を拠出している労災保険の保険給付によって予防対策を実施することが適切かつ現実的な対応ではないかと考えられるのではないかと思っています。
また労災保険というものは、発足当初は基準法上の責任保険として創設されたわけですが、その後、通災保護制度の創設や年金給付等にも見られるように、さらにそれを超えて、労働条件をめぐる使用者責任の分野に関する、総合的な保険制度になっているので、労災保険において労働災害の予防を目的として保険給付を設けるということは、労災保険制度の趣旨に沿っているものではないかとまとめています。
また、仮に保険給付として対応する場合の保険事故をどう考えるかという点については、定期健康診断の結果、脳・心臓疾患につながり得る危険因子が確認された場合でも、その者の健康状態がその後、業務によって増悪するのか、生活上の要因によって増悪するかということをその時点で事前に判定することは事実上できないわけです。ただ、その一方で、過重な業務によって増悪する可能性も否定できないわけなので、それらの点を考慮に入れると、雇用する労働者が脳・心臓疾患につながり得る危険因子が確認されたという事実、いわば定期健康診断で有所見が発見されたということをもって保険事故として構成すべきではないかとまとめています。
さらに、全体として言えるわけですが、健康の問題というのは労働者のプライバシーにも非常にかかわるものなので、そういうプライバシーの保護の観点からの検討も、忘れてはならないと考えて最後の点を入れさせていただいています。
○ 座長
ありがとうございました。それでは出していただいた説明資料、そして論点メモが両方出ているので、併せて御質問なり御意見の開陳をお願いしたいと思います。
○ 委員
資料番号1の労災福祉事業団の調査ですが、対象者が約5万人ということなのですが、そうすると1頁目のいちばん下の「精密検査受診者」は何人なのでしょうか。全体で75.7%となっているのですが、精密検査を受診した者の数は。
要するに率がいろいろ書いてあるのですが、5万人のうち何人がやっていて、有所見になる人が何人いるかという実数がわからないと、パーセントが高いように見えても、必ずしも全体の中でそう多くはないのだろうと思うのです。次の頁は事業場の数であり3枚目も実数でいくとどれぐらいの数の人がやっているのでしょうか。
○ 事務局
1頁のいちばん下の欄になるかと思います。「精密検査受診率」です。ここで対要精検判定者、要するに精密検査が必要であると判定された者は、この右方にあるように2,926人です。この75%を掛ければ精密検査を受診した人数が出てくるわけです。1つ注意を要するのは、この2,926というのは、精検にきちんと行ったかどうかを確認している事業場をベースにして、要精検が必要とされた者を判定しています。それをベースにした者が2,926人でその75%は行っているということです。そうしないと、精密検査に行ったかどうかを確認していない事業場の労働者もいるわけで、ただそれは確認していないので、精密検査を受診したかどうかは把握できないということで、この2,926掛ける75%プラスアルファが、この調査の中では精密検査を受診していると考えられるわけです。
○ 委員
その精密検査を受けたかどうかを把握していない事業場の割合は多いのですか。あるいは少ない、ごくわずかなのですか。
○ 事務局
確認を実施している事業場が全体の54.8%です。ちなみに要精検と判定されたものというのは、有所見者に対する割合でいくと、1頁の下から2つ目の枠になります。ここで有所見者1万7,000人強ですから、1万7,000人掛ける33.3%というと、5,000強になるかと思います。全体としては5,000人強が要精検とされているわけです。ただ、そのうち行ったかどうか確認できるというベースでは、その2,926人が把握できて、実際に行ったというのは75%であるということです。5,000人強のうち2,000人については、要精検とされているのですが、その人たちが属している事業場では精密検査に行ったかどうか確認していないということで、その2,000人が実際に精密検査を受診したかというのはわからない。個人調査はやっておらず、事業場に聞いた調査なので、そこは把握できていないということです。
○ 委員
そうすると、1割が要検査の判定がなされている。そうすると、労災保険の適用というか、労働者数のどれぐらいになるのですか。
○ 事務局
5,000万人です。
○ 委員
その1割が要精検の対象になっているということですか。
○ 事務局
そうです。
○ 事務局
単純にすればですね。
○ 委員
資料2なのですが、この3人の方がこういう研究をなさっておられるのですが、学会ではこういう考え方が通説というか、こういう考え方で施策というか、医療機関なりあるいは医師の対応が行われているということなのでしょうか。あるいはこういう考え方が本に書かれている、あるいは学会で発表されたものに留まるのか、もう普遍的なものなのか、そのあたりはどうなのでしょうか。
○ 事務局
私ども、学会でこれが普遍的なのかどうか、コメントする知識も能力も持っていないものですから、委員にお助けいただければと思うのですが。
○ 委員
循環器疾患、心臓病とか、脳血管障害に関連して、そういうものがリスクになるのかということに関しては、ここ数十年、この太田先生たちの研究とは別に、いろいろな形での記録研究がされています。職域での調査研究とか、地域住民での調査研究とか。それで例えば心臓疾患の発生とか死亡に関して、例えば高血圧、高コレステロール血症、あるいは心電図異常とか肥満度とか、あるいは喫煙とか、そういうものがどのぐらいリスクを高めるかに関しては、おそらく数十から百ぐらい、いろいろな国で研究が行われています。
この本は割に一般的な本ですが、むしろ普段の学会ベースで発表されているのでは、これは分かりやすいのだとは思いますが、私どもは普段、むしろ逆に学会発表でそういうものを作っているのが普通です。私はこの「現代のエスプリ」というのは初めて見ましたが、むしろこの種の調査はたくさんあります。
○ 委員
よく分からないのですが、死亡する方には、いろいろな要因で死亡される方がいるのでしょうが、そのことと予防の問題とが、この表からは出てくるわけではないと思うのです。右と左と、現実に亡くなった方の状況を調べたものと、そうでないものを比べたものでですね。
○ 委員
これだけでは分かりづらいのですが、例えば総コレステロールが高い場合に、9.9%と5.6%とでは、パッと見ると約2倍、危険因子を持っている人の割合の違いがあることになります。それから血圧に関しては5.2と23.1%ですね。これ1つではたしかにおっしゃったように不十分なのですが、これらの因子をある人が持っていることによって、心臓病になるリスクがどれぐらい上がるのかという計算をするのが普通なのです。それで単独で何倍ぐらいになるとか、こういうものは「リスク要因」と私どもは言いますが、それが複合されて、2つとか3つとかを合わせて持つことによって、さらにリスクがこのぐらい上がるということに関して、それぞれの国によってもリスクの大きさが違うので、アメリカはアメリカの研究、日本は日本の研究というものが行われているのです。
これだと並べているだけなので、たしかに分かりづらいと思います。ただ発生した症例と、年齢とか、性とかがマッチしたコントロール群と比較して、どのぐらいリスクが高かったかということを統計的に検定して、優位の差であったという表が付いていると、もっと分かりやすかったと思うのです。ほぼリスクがあると思われているものについて、おそらくこの太田先生たちは、疫学者も入っているし、別の所でそういうリスクの大きさに関しての表があると思うのです。それはかなり完璧で、むしろ根本というか、確立されている考えなのです。
○ 委員
申し上げたいのは、危険因子がこういう項目について、対照群と比べてこれだけ高いというのは、まさにそのとおりだと思うのです。ですが、それはそういう状況であるということが発見できるということに留まるので、問題は、予防というのは、発見したからそれで予防になるわけではなくて、それに対する対応があって初めて予防になる。ここにも書いてあるように、生活指導とか、健康教育とか、そういうものによって予防というものが起きてくるわけでしょうが、その生活指導というもの、あるいは健康教育というものが、どういう状況であるから予防が可能なのかというところの論理というか、実証というか、それがここには全くない。要するに、危険因子がどれだけ、こういう項目について、血圧なら血圧についてこれだけ高いかと、私はそこに留まっているような気がするのです。
○ 委員
委員のおっしゃるとおりです。逆に言うと、ここ10年から20年は、血圧を下げることによって、あるいはコレステロールを低く改善することによって、どれだけ発生が下げられたかというデータも出てきています。その辺の資料を、もしかしたらこの次でも出されるといいのかなと思います。むしろその要因を取り除くことによって、発生率が抑えられるという、そういうデータが出てくるほうが望ましい。いわば血圧を下げるとか、コレステロールを変えるとかというのは、かなり介入というか、起こってしまった人に関しては、介入のほうから入るので、それほど簡単にどこでも行われる研究ではないのですが、最近はいろいろなリスクを証明すること、それを予防することによってどう改善するのか、少しずつそういうのが出てきています。
○ 事務局
この資料なり論文でお示ししたかったのは、心疾患についても、脳血管疾患についても、亡くなった人の群と、その対照群を取ってみると、いわば優位に危険因子が死亡者群に出てくる。そういうことを踏まえれば、健康診断によって、そういった危険因子を事前に把握することが重要ではないか。逆に言えば、健康診断の意味というものが、心臓疾患と脳血管疾患については危険因子が割と明確になっているから、非常に有意義ではないか、ということをお示ししたかったということです。
委員がおっしゃったような、生活指導とか、健康教育によって、こういった心臓疾患あるいは脳血管疾患がどの程度予防されるのか、有効なのかという考え方については、確かにこの論文には出ていません。それについて前回の資料では、医学的かどうかは別にして、「厚生白書」の抜粋をお出しして、生活習慣病といったものの考え方、あるいはその生活習慣病をどう予防していくのが有効であるのか、という資料をお出ししています。今の委員の質問については、「厚生白書」なりの考え方で、心臓疾患あるいは脳血管疾患については、生活指導なり、そういったものが予防に非常に有効であるという考え方は、いわば確立された考え方ではないかと私どもは考えています。
○ 委員
健康値としては、こういうことだろうと思うのですが、これは論文の中からの抜粋ですから、よく分からないのですが、もしこの一連の論文の中にクロス集計がしてあるかどうかですね。いわゆる肥満と血圧とか血糖とかということで、あるいは複数を持っている者の率が高いというような、クロス集計はこれはしていないのかどうかということが1つです。
それから要因の発見後、この網が掛かっているのは死亡ですから、逆に言えば、反対は生存と判断していいのではないかと思いますが、こういうふうに整理するのであれば、要因が発見後、大体何年目ぐらいのデータなのかがわからないと、今議論になっている要因を除去するための、死に至る前までの手立てはどのタイミングでするのか、あるいはどれぐらいに区切ってしなければいけないのかということになる。ここまで出すということは。ですから、この本の中にはそういうものが見えるように書いてあるのかどうか。
○ 委員
それは事務局の方から御説明するのがいいのかもしれませんが、一般的にはクロス集計が有効なのは、2つの因子までなのです。
○ 委員
たくさんありますね。
○ 委員
こういうときは多変量解析というのをします。しないのではなくて、3つまでは何とかできますが、4つ以上になると、絡み合ってしまって分からなくなってしまう。それを多変量解析で、いろいろな疫学的なモデルがあるのです。「ロジスティックモデル」と言うのですが、それによって例えば年齢を調整してもこのリスクは優位で残ったとか、非常に血圧は高いけれども、血糖値はあまり問題がない人とか、個人のいろいろな組合わせでありますから、それを数学的にというか、いろいろな要因を調整しても独立の原因因子として残るのは何かということを、方法的にそれをはっきり出せるのです。太田先生たちがどうされているかはわかりませんが、おそらく分かりやすくこの本に書かれたのだと思うので、一般的にはきちんとそこまでやったうえでデータを出さないと専門家の批判に耐えられないので、おっしゃるとおりなのですが、そこまでやるのがこの10年か20年くらい常識になっています。
○ 事務局
後段の御質問については、人間ドック後死亡した者が何名と書いてあるのですが、どのぐらいの期間のスパンを捉えて、死亡したのを取ったかどうかという説明は、今読んでいるかぎりはどうもないようです。場合によっては、先生方の所属もわかっていますから、直接当たってみるとか、そういうこともしてみたいと思います。
○ 委員
また戻るのですが、3頁に精密検査受診の援助がある場合の受診率は72.5%、ない場合は29.9%というデータが出ているのですが、実数はそれぞれどれぐらいになるのでしょうか。
後で教えてもらうようにして、もう1つは、援助をしている場合の援助以外の状況と、下の援助がない場合の状況との違いがあるのかないのかという点についてなども調査しているのでしょうか。例えば援助をしているケースの場合は、労災病院に来てくださいよ、来れば援助しますよとなっているとか、あるいは健診車をその会社に派遣しているということでやっていて、下のほうはそういうことは全くやっていない、要するに自分で好き勝手にどこへでも行って来い、ということなのかによって、片一方の場合は、特定の所に集中するとか、あるいは施設があるとかという状況で違うのです。そういう援助するかどうかということ以外の要因の影響がない形で比較したところ、片一方が約30%で、片一方が70%強なのでしょうか。そのあたりの実態はわかるのでしょうか。
○ 事務局
これについては、精密検査について援助していた事業主が、当該事業場の労働者が精密検査を受けるに当たって、いわば財政的な援助をしているかいないかということだけを取って、結果を集計した調査なので、逆にそれ以外の事情との関連についてまで取った調査ではありません。これは繰り返しになりますが、事業主が、当該労働者の精密検査の受診に対して、財政的な援助をしているかいないかということをもって取ったデータです。逆に言えば、それ以外のものについては、あるかないかという実態についてまで踏み込んで調べているわけではないので、それについてはお答えできません。
○ 委員
先ほども申し上げたのですが、労災病院に行けば、あそこには金を払わないで精密検査が全部できますよと会社が通知していれば、要するに労災病院に行けば援助が受けられるという場合と、それから単にあそこの労災病院に行けばいいのだという場合とで、精密検査を行う誘因、状況が違うのだと思うのです。ところが下の場合は、とにかく精密検査を受けなさいよということだけに留まっているので、ではどこに行ったらいいよということが、事業主あるいは健診機関か、よくわかりませんが、そういう所から全く出てこないということになると、その辺の事情の違いもあるのだと思うのです。
○ 事務局
援助しているほうの事情は、おそらくそういうこともあるかと思うのです。どこかの健診機関と契約して、よく人間ドックなどでありますが、そこへ行けばいいですよというのがあるでしょう。ただ、援助がない場合は、そういうバリエーションは考えられないわけで、何にも経済的な援助をしていないわけですから、あそこの病院に行けとか、別にそういう指示はないと思うのです。そういう意味では、上の援助がある場合は、また便宜が図られている可能性はあろうかと思います。ただ下の援助がない場合については、そういういろいろな周辺事情はほとんど考えられないわけで、そういう意味では、援助がない場合には、3割弱しか精密検査を行っていないという数字については、わりと信頼性があるのではないかと思います。
○ 委員
そこは違うのだと思うのです。要するに上のケースの場合、労災病院なら労災病院に行きなさいよと、あそこへ行ったらただで受けられますよというのではなくて、要するにかかった費用は、領収書を持って来れば会社で出しますよと言っている形でも援助することにはなるのです。だから下の援助をしませんよという所も、同じような状況の中で比較をしてみないと、片一方が7割で、片一方が3割でということは別の要因も重なっていることになるのだろうと思うのです。
○ 委員
そんな細かいことはあまり問題ではないのではないですか。むしろ私などは受診者の方ですから、援助があるかないかということを財政的な支援という面で見ているということですから、再診をするのは、実際に皆様方も経験されていると思いますが、この種の検査は、今は飛び込みで行ってもできないわけです。特に精密検査ですと、予約をして日にちを定めて行くわけです。予約の手続の煩雑さの問題もあるし、仕事との関係で、予約の予定日に行けるかどうかという問題もあるわけです。
でも、ここでは財政面の援助があるかないかということで、的を絞って対比がしてあるといえば、そのほかの要因問題について、ここで細かくせんさくする必要はない。これは財政支援があるかないかということだけだとはっきり言われているわけだから、そのほかの要因もあるからこれだけで、財政支援だけできっちりとあるかないかだけで、率が高いか低いか、あるいはそのほかにどういう支援策が必要かということについては、もう少し具体的な資料がいるならいると言われた方が、むしろいいのではないでしょうか。
私どもの所では民間企業ですから、相手が何日と何日に予約の空きがあるから精密検査に来なさいとまで言ってくれますが、自分の所で事業場病院とか、指定医などを持っていない所は、大体自分で予約するのがごく普通ですから、むしろ限定した対比表だといえば、それで解釈をすればいいのではないですか。
○ 委員
そうではないと思います。これを使いたいのは、要するに、金を出せば受診するよと、こういうことで2倍以上の効果があるのではないかと、金をつければということを言いたいために、この表を出しているのだろうと思うのです。ですから、金があるかどうかという問題ももちろん影響していないとは思いませんが、ほかの要因もあるのではないのですかと。そういうものについての違いがわかるデータはないのですかということです。
○ 委員
そういう御質問や御意見なら、私たちも分かります。
○ 座長
精密検査を促進するための要素は、財政支援だけではなくて、もっと利便を、事業主がどんどん休暇をやるとか、都合をつけてあげるとか、いろいろな要素があると思うのですが、そういう調査がもしあるのであれば、研究してみてください。
○ 事務局
可能な範囲で探してみます。
○ 座長
何が二次健診を抑制しているのか。休暇が取りにくいとかね。
○ 委員
男性は肝が細いから、本当の中身が出てきたら怖いからという人がいちばん多い。会社が行けと言っても、行かないケースが結構ありますからね。
○ 委員
委員がおっしゃったとおりで、この出されている資料の限りにおいては、どの程度の援助があるのかわかりませんが、具体的に援助がある事業場のほうが、しっかりと精密検査を受けに行くのだということが明らかになっているということが分かれば、それはそれでいいのではないですか。
○ 委員
そう取られるから、私は申し上げているわけです。
○ 委員
ですが、それ以上探ってみても、今日、これから議論していく問題と、あまりかかわらないのではないですか。
○ 委員
そんなことはないです。援助をしない状況と援助をしている状況とで、データ的な問題は関係ないということを前提にするのならいいですよ。ここについての議論はしません。前に進まないという意味で言っているのではないのです。そういう点も解明しないといけないのではないですかということで、そういうデータが取れるなら取ってほしいのです。
○ 座長
ただ、このいただいた資料で、財政支援のある場合の再検査受診率が、ない場合に比べると高いということは、これで一応理解できると思うのですが、それでは納得されないわけですか。
○ 委員
高くなると思います。問題はこのように2倍程度高くなるのかどうなのか。労災病院以外の所での状況がどうなのかということが分からないですね。これは、たまたま労災病院とその健診機関において、今年の8月ごろに急きょやられた調査ですね。日本には労災病院以外の健診機関、あるいは医療機関における健診も広く行われているし、またそういうことを利用せざるを得ないところもたくさんあるわけです。そういう精密検査の状況なりについて、どういう実態なのかということは、労災病院の関係だけで、この日本全体を推し量ることでいいのかどうなのか。もっと幅広く捉えてやる必要があるのではないでしょうか。
○ 座長
この点は職域健診団体がデータなどを持っていないのかどうか。
○ 委員
今委員がおっしゃったような意味合いでいけば、これからのこの議論の基本的な資料なのだという意味では、前回も指摘しているとおり、日本の事業場の規模は千差万別あるわけですから、このくくり自身も非常に大きな括りになっているし、もっと業種もたくさん最近はあるわけです。そういったことを考えれば、これを基にして議論しようとは、そんなに思っていないのです。ですから、結論的に言えば、今あったように、一定に援助があれば、労働者はそれで再検査に行くということがここでもわかるという程度であれば、それはそれでいいのではないかと、そういうふうに申し上げているわけです。
もっと詳しいデータがほしいということになれば、これは実際の町の小工場や、小規模な事業場の問題はどうなっているのだということを聞かざるを得なくなってきます。そういったところが現実にはたくさん問題を発生させていて、そういう所について、手を差し延べなければならないということなどは、ここの資料の限りでいくと、素通りしていく可能性がある。でもいま主要にはそういうことが重要な議論ではないということで申し上げているのです。
○ 事務局
今座長が言われました、健診機関を当たってみてはどうかということでやってみたこともあるのですが、その健診機関に戻って来て精密検査を受けていれば、その限りで分かるのですが、他の病院に行くとか、そこまでは健診機関で把握し得ないわけです。そういう意味でどうかということで調査はやっていません。労災病院に健診を委託していて、その事業場で労働者を把握した上で、その人が別に労災病院でも他の病院でも、他の検査機関でもいいのですが、行ったかどうか把握したい。そういう意味では、こちらの方が信頼性が高いと思います。
後、確かにオールジャパンの状況がどうかという問題意識は分からないでもないのですが、労災病院に健診を委託している所は、わりと健康問題についても意識が高い所だと思います。そういう意味では、おそらく日本全国を調査すれば、この数字よりもいい数字は出ないだろう。もっと悪い数字が出るだろう。論証しろといっても難しいのですが、おそらく悪い数字は出ると思うのですが、良い数字というのは出ないのではないかという感じは受けます。
○ 委員
私もほぼ同じように考えていますが、たぶん状況は、中小零細企業もひっくるめた所だと、格差は開いていると思います。ですが、その実態はどうなのかということをきちんと把握した方がいいと思うのです。ですから労働省で、労働者の健康状況調査というものを大規模な形で、労働者の調査という形でやっているわけですから、そういうものの付帯調査として、現在再検査の状況について、どうなっているかということをきちんと調べたうえで、それで現状がこうだということの中で、問題点がどこにあるのか。それ以外の状況ももちろん調べないといけないと思いますが、そういう状況をまず踏まえた上で、部分的な調査結果ということでいくのではなくて、日本全体の状況を的確に把握していった方がいいのではないかと思うのです。
○ 委員
それは難しいのではないですか。委員も御存じで言われているのだと思いますが、健康診断の受診率の報告を企業はする責任を持っているわけです。要精密検査という人の数も、きちんと報告書の様式の中には入っているでしょう。そして最後、再受診をしたという報告には確か、がんはなかったというように記憶しています。
全部、企業単位で拾っていって、それを業種単位、あるいは業界トータルで日本全体の傾向を見るなどということは、やはり傾向値でしか見られないでしょう。実際、500万からの事業場があるのに、事業場単位で1つひとつ調べて、それを全部集計していくということなど、実際上は不可能ではないですか。
○ 委員
全国調査は必要ないと思います。やるとしたら抽出で、ということだと思います。多分、「労働者の健康状況調査」も抽出でやっているのだろうと思うので、そういうしっかりしたデータを把握してみる必要もあるのではないですか。
○ 事務局
ただ、今回、労災病院も1労災病院ではなくて、全国15カ所ということで選んでみました。対象労働者数も5万人程度となっています。そういうところから見ると、日本全国の状況とそれほどかけ離れた数字がここに出ているとは私どもは考えておりません。
○ 委員
抽出で、何人かについて、有所見率になって、再健診者が行ったかどうかという調査をやられたことはないのですか。
○ 事務局
現在、定期健康診断の結果報告書というものがこういう形であります。その中には、それぞれの検査項目の実数がいくらであるとか、有所見者数が何名であるなどという報告を求めています。ただ、そのあとどうしたかという点については事業者に求めていないということがあり、今議論になっている数値というのは把握できないシステムになっています。
○ 座長
私が1つ質問していいでしょうか。今回提案されている健康確保支援というのは、言ってみれば、「過労死」に関するハイリスクの人たちを確認するということに対する財政援助をしようということです。問題は、確認したあと、確認された人間が「私は危ないから、健康的な食事、休養その他をやらなくてはいかん」ということで、どれだけ取り組むかによって結果がかなり違ってくる可能性があるわけです。だから、ハイリスクの人が全部駄目だというのではなくて、一生懸命にやれば良くなるし、いくらハイリスクが確認されても良くなろうという気のない人は、確認しても結果は良くないということにもなりかねない。
要するに、健康確保の支援と言う以上は、確認をして、そのあとの処置とある程度セットしていかないと、本来の目的が達成されない。そういう意味で、まず確認作業をするという、二次健診に対する助成、これは大事だと思います。その後、事業場に戻ってきて、その人に聞いて配置転換をするとか、あるいは交代制労働をやめさせるとか、昼間の労働に代えるとか、そういうことに対して事業場がどの程度措置を取ったかということにつながっていくような対策に対する助成があり得るのかどうか。あるいは、労働者が二次健診の結果を受けた結果、休養を取らなければいけない、あるいは栄養を取らなければいけないということで、生活改善をするためのいろいろな措置に対する促進対策をある程度セットしていって、初めて確認作業の意味が出てくると思います。もちろん前提ではありますが、どうも入口でその先の作業といかに連携を取っていくかという、その辺をどのように考えていらっしゃるのでしょうか。
○ 事務局
6頁、スキームの案を見ていただきたいと思います。確かに、検査をして分かった、然らばどうするかというところが座長がおっしゃったように問題だと思います。2つの流れがあって、1つは労働安全衛生法でも措置されているのですが、事業主としては労務の軽減など、「事後措置」と言っていますが、有所見者に対してはそういった適切な措置を講じなければいけない。これは、労働安全衛生法の義務の世界になっています。二次健診というのは、そういった適切な事後措置を取るに当たって、より詳細な情報が必要な場合がある、そういった健康に関する詳細情報を得るため、必要な範囲で、二次健診について給付を措置してはどうかということであります。
一方、確かに事業主についても、労働者の方が何もしないということでは実効が上がらない。7頁、今の労働安全衛生法の世界でも、そういった有所見者に対しては、事業主として、労働者に対して医師、保健婦等による保健指導を行うようにという努力義務がかかっています。そういったものを受け、労働者本人には言わば健康保持の努力をしなさいということが安全衛生法でうたわれています。これをいろいろ実効あらしめるために、医師等による保健指導も含めた健康確保支援給付といったものを考えてはどうかというのが今回の御提案の趣旨です。
○ 委員
今回、事務局が考えている資料4の点というのは、脳・心疾患の関係のところに焦点を当てた形で給付を考えようという構想と思われます。
この前の小委員会で、労働者側委員から「こういうことをやってほしい」という要望が出ていました。そこでは、「労災保険制度において健康確保対策を強め、予防給付の導入をはじめ」云々というようになっているわけです。御提出の「予防給付」というものは、一体どういうものなのか。要するに、安全の予防というものがあるのかないのか。あるいは、健康の予防というものがあるのかないのか。
健康と言ってもいろいろな健康があるわけです。たまたま、今焦点になっているのは脳・心疾患、しかもいわゆる基礎疾患が業務によって増悪するというところに焦点を当てているわけです。もともと、委員がお考えのこの予防給付の導入というのは、どこの範囲まで広げた、あるいは絞り込んだものをお考えなのでしょうか。
○ 委員
私どもの要求は、現場の実態に基づいた要求であります。大企業においては、今健康診断をやった結果、成人病の予備群、あるいは要注意、要治療という段階の人には健康増進対策をやっています。私の出身の事業場の企業においても、陸上と水中のトレーニング施設を持っていて、要注意者に対しては3カ月コースでそれぞれ、そういったコースを健康保険組合負担でやっているわけです。その結果、著しい改善がされているという実績があります。
大企業ではそのように自前でできるというところがある一方、中小企業では自前の設備を持っていないとか、自前で市中の健康施設を低料金で活用する上での補助ができないというところに、労働条件格差の1つとして極めて大きな差になっている。それがひいては職場の安全にも影響している。個人の健康のみならず、個人の健康が職場の安全にも影響しているということから、私どもとしては名称はこだわりませんが、「予防給付」という形で、有所見者に対する健康回復、増進といった指導、あるいはそういった施策を支援する給付を行うべきではないかということを申し上げているわけです。
○ 委員
仮にそれが会社ではなくて、健康保険組合の助成であるとすれば、健康保険組合の経費というのは労使が負担していくものなのです。労使の負担の中で、どのような施策を自分のところの従業員でやるかということになるわけです。
労働省が考えている施策というのは労災保険法ですから、労使の負担の問題ではなくて企業の負担で、しかも企業の責任という側面で構築しようとしているわけです。そこのところ、健康増進対策と今回の脳・心疾患に焦点を当てたものとは、対象の点でも、それから費用負担の点でも違いがあるような気がします。
あるいは、政府管掌健康保険制度の中で行われている健診、これも労使の負担で行われている制度として健康診断事業が行われている。それはまさに、政府管掌健康保険制度ですから、被用者の健康状況をきちんと把握して対応しようという制度なのです。その点、私はかなり違うのではないかと思います。
○ 委員
私は少しも違わないと思います。今、このように厳しい経済事情、経営事情だから、お金を負担することが難しいと言われているのか。それが職場の安全衛生にも好影響を与えるだろうということを承知されているのかいないのか、全く無視されているのか。正直、どちらにあなたの疑問があるのか、問題意識があるのかが見えない。
ここは労働災害に係る新たな対策を導入しようとしているわけですから、どちらが負担するというより、前から言っていますが確かに事業主の責任で全額負担を謳っていますが、そこは従業員が汗水流して稼ぎ出したお金から出すわけです。経営者のポケットマネーから出してもらっているわけではありません。これは確かに一般給与として受け取ったものの中から出すというシステムではありませんが、財源は産業活動、企業活動によって生み出す富の中から配分するわけで、もともと初めから引いた残りを配分しているだけなのです。それを初めから配分しておけば、また配分の中からでもいいでしょう。でも、それでは全く同じなのです。
今、確かに経営の状況は厳しいから、それほど簡単には上げられないぞとおっしゃるのなら理解をします。しかし、健康保険の組合の負担の方法と労災保険の財源の負担の方法が違う、それはむしろ、やったほうがいいのではないか、個人の健康を個人で守るということが基本であるという、そういう御指摘なら納得します。
しかし、そうではなく、先ほどから申し上げていますように、前回のときに御指摘があったように、労働災害も、本人の健康状態、心身の状態が大きく影響しているし、それが直接的な原因にもなっているというデータもたくさん出ているし、出されたわけであります。したがって、労働災害を防止するという意味、それから予防給付という形で全体の健康を回復するということが、国民1人あたりの医療費の削減にも大きくつながるということも、前回具体的な説明を受けたわけです。そのようにこの問題を考えていかないと、なかなか前に進まないのではないでしょうか。
○ 委員
その点は大変大事なポイントだと思っています。「予防給付の導入を」という要請で言うところの「予防」というのは、例えば職業病、あるいはそれに近いような形の予防の給付という方法をお考えなのか、それとも今おっしゃられたような健康増進対策、あるいは事務局がお考えの脳・心疾患において、「過労死」につながる問題とは質的に違うのだと思います。
なぜなら、いわゆる「過労死」という問題というのは、もともと基礎疾患というのは私病の世界なのです。その私病が過重な業務によって、自然の経過を越えた形で増悪させてくる。そういうことが後から付け加わってくるわけです。しかし、健診で出てくる問題というのは、基礎疾患の状況があるということが有所見者として出てきて、中には精密検査や再検査が必要だということが出てくるわけです。その点、直接的には基礎疾患があるかどうかということは、職業性で基礎疾患が出てくるというものとは違うわけです。
健康の問題について、健診や予防が不必要だと思っているわけでは全くありません。問題は国民なり、健康という問題について、どのような手法でどういう財源のところでやっていくのが最も適切なのか。そこが最初の振り分けとしてあるのではないかと考えたものですから質問しました。
○ 委員
考え方としては理解をしますが、ちょっと違うと思います。今、例えば肥満、高血圧、血糖というようなものが私生活でしか発病しないということではないのです。職場のスピードが進んでいる、人間関係が難しくなっている。また、合理化やリストラのプレッシャーがかかっているという中で、今のような職場実情、あるいは生活実情ということであれば議論をしてもなかなか何が第1要因なのかがはっきりしない。この人は職場のストレスが要因で肥満になった、あるいは高血圧になった、あるいは私生活で贅沢をしているからという、そのような区分けなど1つひとつは出来ないです。
だから第65条の2項、第66条も含めて、成人病の予防検査をする、それに対して、労働者の適切な努力、事業主もそれを支援するということが法の中で付け加えられているわけです。ただ今の意見だと、それを否定するということになって、自分の健康は全部自分で守りなさい、だから、何もしなくていいというところまで後戻りをすることにはなりませんか。
○ 事務局
今の2つのポイントについては、資料5の8頁をご覧ください。私どもとしてはこのように考えています。いちばん下の「・」、労災保険制度上、労働者の健康確保を支援するための措置を設ける必要性についてどう考えるか。2つ目の「・」、業務による過重負荷、基礎疾患を著しく増悪させ、発症するケースについては労働災害の認定がなされているところである。生活習慣病というように考えれば、おそらく主な原因は私生活上の問題、私病の要因が強いかと思います。場合によっては、もちろん、業務にからむ問題もあろうかと思いますが、私病の要因が強い。
ただ、過重な業務といったものが加わって、「過労死」というところではゴールは労災だというように言われるわけです。それであれば、「ゴールは労災」と言われる、予防につながる仕組みを労災保険の枠組みの中に組んでいくことは、適切かつ現実的な問題ではなかろうかと考えています。
○ 委員
それは違うと思います。流れを考えていけば、基礎疾患が全くないところで、過重負荷があっても「過労死」にはならないという考え方を今取っているわけです。要するに基礎疾患があって、それが大変過酷な業務によって、自然の経過を越えて増悪させる状況が来るからということで、死に至るなどのケースがある。その結果のところで、だから労災の認定をしましょうということであります。
然らば、それには順序があって、まずは基礎疾患というものがあるわけです。その基礎疾患をどうやって把握するかというと、いろいろな手法があるのでしょうが、年1回の健康診断で把握するというときに、人によっては再検査の必要性が出てくるわけです。
ところが、基本的には、年1回の健康診断で基礎疾患があるかないかで有所見ということが出てくるわけです。そこのところで助成しようというのは、過重負荷があるかないかとは全然無関係なところで助成することになるわけです。もちろん、国民の立場に立ったときに、成人病を予防するということで、それでは放ったらかしでいいのかというと、放ったらかすことがいいとは全く思っていません。個々人、あるいは労災とは別の制度のもとでどうするかということを考えるべき問題であって、いわば事業主の責任保険という形で出発した制度として考えるべきかどうか。
過重負荷が加わっているというのなら別です。現に過重負荷の状況に置かれているという人が行政として判断できるのだったら、それに対して助成していくというのはわからないでもありません。そうではなくて、一次健診の結果というのは、過重負荷があるかないかというのは全く関係なく、医学的な判断によって、この人は有所見ですということが出てくるわけです。そのあたり、大変飛躍があると思っています。
○ 座長
いや、その点、基礎疾患があって有所見になっている人もいるし、業務の関係で有所見になっている人も、みんな混ざっているわけです。ただし、その中で、放っておくと「過労死」につながるかもしれない要素について、二次健診を助成しようということなのです。あくまで、「過労死」につながっている恐れのある検査をしようということですから、検査項目から見ても基礎疾患のある有所見者も全部やるということではないわけです。そこは縛りがかかっているように思います。
○ 委員
そうではないのです。今、座長は「過労死」につながるということをおっしゃったわけですが、有所見ということは客観的な事実なのです。それに過重負荷が加わるという状況が加わっていることが、「過労死」につながることになるわけです。
過重負荷がどうかということを行政の側面で、「あなたは有所見です」ということにプラスして、この人については過重負荷がつながっているというようなものを限定して取り出すことができるかどうか。そこは非常に困難だと思います。現に最初のところですら、認定を巡っては、時間をかけての調査でないと適正な判断ができないということなので、そこは非常に難しいと思います。
○ 座長
有所見者が全部、精密検査を受けなければいけないということではなくて、有所見者があって、こういう配置転換をしたり、こういう労働をすれば大丈夫というグループもある。ただし、今の労働をやっていくとすると危ないから、有所見者の中で再検査が必要だという人も出てくるわけです。再検査というのはあくまで、「過労死」につながる可能性があるという項目についてやろうということだから、有所見者は全部が対象になるということではないわけです。そうでしょう。
○ 委員
もちろん単に有所見ではなくて、要再検査という条件は入っています。
○ 委員
例えば、いわゆる成人病の場合、「高血圧いくら以上の場合に何々」という定義そのものがかなり動いています。非常に連続的なものなのです。それから、個人のデータも毎年動いているものなのです。例えば最高血圧が150で、最低血圧が70〜80だったとします。その人は、WHOの定義だと「高血圧」と言われるのですが、次の年には仕事の関係もあるし、その方のいろいろな環境要因のこともあるでしょうが、数値が動くわけです。ですから、必ずしも現代の社会で、血圧が高い人や心臓疾患のある人の全部が私病だとは言い切れないのではないかと思います。管理職の場合、それこそ仕事の負担が相当多い場合とか、いろいろな場合があるわけです。
私病と完全なる職業性の中毒などはもちろん区別ができますが、そういう意味で、ある程度の年齢層になると出てくることが多い病気に関しては、おそらくその方の持っている24時間の生活要因のいろいろな部分が血圧そのものに影響を及ぼしていると思います。
また、例えば平成11年度に多少境界域だった人が、業務もあるし、その方の習慣もあるかもしれませんが、保健指導によってむしろ良い側に動くことが十分可能なのです。それに対して、AかBかというラベルを張ること自身が医学的なところから言っていいのかどうか、またそれがどういう形で予防措置に入るのかということは、私は法律の専門家ではないのでどちらがいいのかはわかりません。でも、少なくとも、予防措置を取ることによって、集団レベルの健康も良い方向に向かえるし、そこから発生するいわゆる心臓、あるいは脳疾患による突然死の数を押さえることができるのではないかと思っています。
○ 委員
予防を講ずること自体を否定しているつもりはないのです。私自身、自分の健康を考えても、やはり早期に発見をして、しかも異常を発見するということが第1段階でしょうし、それがどのような原因であるかということを自分自身で把握することによって、予防、あるいは治療、あるいは生活上の注意や運動上の注意ということができますから、それは大変大事だと思っています。そこは全く否定するつもりはありません。
ところが、今、ここで議論をしているのは国のお金と言っても出しているのは事業主ですが、労災保険制度としてすべて事業主の負担でやっているわけです。そういうお金を使って、しかも法定の給付ということを考えていますので、一定の要件になればすべて給付をするということになるわけです。法定の給付として、「保険給付」という言葉を使っていますので、そういうものとしてやることが本当にふさわしい病気なのかどうなのか。こういうことを申し上げているつもりです。
国民の健康ということを考えれば、厚生省も「健康日本21」という新しい計画を立てつつありますが、それは大変大事なことだと思っています。
○ 委員
わかりました。ただ、今議論をしているのは「職域における」ということで、一般論としてはもちろん国民の健康ということで、「健康日本21」という厚生省の新しい計画もあるでしょうが、職域においてこのような疾患のリスクを減少させるにはどういう方策を取るのが有効なのかということでは、やはり考えられてはいかがでしょうか。やはり職域は職域で、学校保健は学校保健の場でやることがあるだろうと思っています。それは当然だと思います。
○ 委員
職域としては、健康保険制度というものが職域の制度としてあるわけです。
○ 委員
病気の治療に関してでしょう。
○ 委員
病気の治療だけではありません。もちろん、今の段階では、予防給付というのはあまり認められていませんが、制度としては既に予防も若干あるわけです。健康保険法の制度の問題としても、予防給付をどうするかというのは大変大きな問題になっているわけです。日本医師会の皆さん方、あるいは看護協会の皆さん方というのは、予防給付をやれということを強く言っておられます。
○ 委員
結局、疾病がはっきりしたあとの治療をどうするかという議論をここでしているわけではないのでしょう。ですから、それはちょっと違うのではないでしょうか。
○ 委員
だから議論をしているわけです。今の健康保険制度というのは、主に治療のほうに重点が置かれているわけです。それについて、それでは十分ではないのではないか、健康保険制度として、予防給付をやるべきだということを、医師会の先生なり、あるいは看護協会の皆さん方はそういう主張をされています。
○ 委員
日本全体がそういう方向になった場合には、健康保険で持つ予防の割合と職域の場でパーセンテージをどうするかという議論は必要だと思いますし、ひょっとすると21世紀には日本医師会や看護協会が言っているような方向になるかもしれません。そのあたりはやはり、どこからどこまではどちらが出すかという問題整理をきちんとされればいいのではないでしょうか。現時点で、そのようになっているわけではないでしょう。
○ 事務局
今の整理だと、業務上の災害なり疾病については労災の分野である。それ以外については、健保の問題であるという考え方です。基礎疾患自体がハイリスク状態にあって、もし脳・心臓疾患が発症したというとき、それが私病の世界で発症したのならば健保で治療する。もし、過重な業務などが原因となって、業務の起因性があるということであれば、それは労災で治療ということになるわけです。
今回、ハイリスク状態の人をどうやって的確に把握をして、過重な業務が加わっているかどうかという点がありますが、要するに過重な業務が将来その人に負荷されないような、適切な事後措置に結びつけていく。そのために、定期健診以上に、二次健診で、より詳細にその人の健康状態を把握しましょうというシステムなのです。さらに、今の安全衛生法でも「保健指導をやりなさい」ということになっていますから、本人の運動、休養、栄養といった面についての保健指導というものも、一緒の仕組みの中で考えてはどうかという趣旨です。
もちろん委員がおっしゃった過重な業務が云々ということについては、適切な事後措置、二次健診の結果によってより適切な事後措置を講じさせる、そのことによって、将来、過重な業務による負荷が加わることをいわば回避させるということを狙ったものであります。
○ 委員
このあたり、なかなか切りのない議論のように思います。「論点メモ」の8頁に書かれていること全体については、先ほどいちばん下の2つ目の「・」をお読みになったのだけど、1つ目のものも含めて的確なお考えではないかと思います。ですから、このあたりは卒業していいのではないかと思います。
○ 委員
私はそのように思いません。事業主の負担でやることについて、適切かつ現実的とは思いません。そこで打ち切ろうとするのであれば、そのように申し上げます。まだ続けることについては、むしろいくつも問題点があるわけですから。
○ 座長
8頁で言っているのは、労災保険の枠組みとして予防措置を取るということと、それを保険給付でやるかどうか。保険給付でやることは10頁ですか、最後のほうだから、保険給付でなくやるという方法もあるわけです。現に労働福祉事業の中で、健康確保増進事業で予防対策についていろいろなお金が出ているわけです。それを否定するわけではないのでしょう。保険給付としてやることについて反対だという御主張ですか、それとも労災保険全体でやること自体も反対だという御主張ですか。そこはいかがですか。
○ 委員
前回の資料だったと思いますが、労働行政でいろいろな対策を講じているわけです。そういうものの中に、THPという施策も現に行われているし、産業保健センターというものを設けて活動を推進させようというようなことも、広い意味では予防につながっている措置だと思います。そういうことを否定しているつもりは全くありません。今のやり方については注文はありますが、全く否定するつもりはありません。
問題は、今ここで出てきているのは、表題は「健康確保支援」ということですが、中身はいわゆる脳・心疾患の問題だけに焦点が当たっているわけです。繰返しになりますが、脳・心疾患というのは基礎疾患があって、それが過重負荷で不幸な事態になるというときに補償をしようということで、業務上の疾病の場合もあるでしょう。そこには労災の療養給付が出るということになるのでしょう。
問題は、基礎疾患があるかないかということは第一次健診でわかるわけです。しかし、第一次健診で十分な結果が得られないということで、もう一度検査をしてくださいということで再検査が出てきたり、あるいは「どうもあなたの場合は病気かもしれない」、もっと精密な検査をやったらどうですかということで、医療機関などから「どうですか」というものが出てくるわけです。ただ、そのときはまだ、過重負荷がかかっているかどうかというのは関係がない人がほとんどなのです。
もちろん、そういう人もいるかもしれません。既に過重負荷がかかっている人もいるかもしれませんが、ほとんどの方というのはまだそこまではいっていない。そこでの再検査や精密検査を事業主の負担の制度として対応しようというのが、事務局がお考えの制度ですが、そこのところは違うのではないかと思います。事業主負担の世界ではなくて、むしろ国民的な、あるいは被用者保険の上でどうするかということを考えるべきテーマではないかということなのです。
○ 委員
そこは逆ではないですか。いわゆる心臓病と脳血管疾患関係において、業務との因果関係が大きいから、そこに的を絞ってあるわけです。がん等と言えば、胃や腸などに原発性で、直接取り扱っているもの、あるいは職業雰囲気と関係があるものに限定してあるわけです。これに限定をしたということは、業務の状態によっては脳疾患や心臓疾患に結びつくことがあらゆるデータで多いことが証明されているから、一般の健康保険と区分するという意味で、非常に明確な判断をしていると言えるのではないですか。そうでしょう。代表的な死亡例としては、今がんがあります。その他にどういう疾病があるか分かりませんが、むしろ業務との因果関係が非常に大きく影響する病気だというようにデータが証明をしているからこそ対象になり得るわけでしょう。
○ 事務局
基礎疾患自体、もし業務起因性があるということであれば、そこはもう労災の世界なのです。ただ、一般的に「過労死」と呼ばれる場合は、いわば生活上の要因が原因となって、高血圧になったり、心臓が若干悪いというものが過重な負荷が加わることにより発症してしまう。最悪の場合は亡くなる。そこは業務の影響が大きかったということで、労災だというようになるわけです。
その結果、労災になるものですから、予防の世界でも労災の中で仕組むのがいいのではないかという考え方です。もし、疾患自体が業務の要因が強い、あるいは、業務に起因しているということであれば、今の世界ではもう労災なのです。
あと、この前、いくつか判例を御紹介しましたが、健康状態をきちんと把握しておくということは、いくつかの裁判例からも、労働者を雇っている事業主の安全配慮義務の一環であるとされています。さらに、最近の裁判例では定期健診だけではなく、有所見があった労働者に対しては定期健診以上のことをして健康状態を的確に把握する、それも安全配慮義務を構成するというように言われています。いわば二次健診をやって、事後措置に結びつけていくというようなところは、裁判上、事業主の責任があるというようにされている世界ではないかと考えています。
○ 委員
そこは少し飛躍があると思います。裁判例でおっしゃったような判決が出ていますが、そういう判例が確立されたものであるかどうかというのは、まだ状況を見なければいけないのではないかという点が1つあります。もう1つ、仮にそのような考え方が確立されているとしても、それは民事上の問題としての安全配慮義務が事業者にあるかどうかということに止どまるのです。
今、私が飛躍しているというように申し上げるのは、民事上の安全配慮義務があるから、それでは労災保険で負担をしましょうというのは飛躍があるのだと思います。もともとの労災保険制度というのは、民事上の過失責任の世界の中で、そのようなものを保険制度でやろうということで出発したものではないのです。もともとは、労働基準法上の災害補償責任をどのような形でリスク分散をしようかというところで出発したわけですので、民事上の問題を即、労災の給付のほうにつなげてくるというのは飛躍があると思います。
○ 事務局
その点については、10頁に「論点」として若干挙げています。確かに、労災保険の成り立ちは、ただ今指摘がありましたように労働基準法の事業主の災害補償責任を担保する責任保険として創設されています。ただ、その後、通勤災害であるとか年金を給付するといった意味では、責任保険という分野を中核としつつも、その範囲を越えつつあるのではないかと考えています。労働条件をめぐる使用者責任分野に関する総合保険制度になっていると考えています。そういう意味では、労災保険において労働災害の予防を目的とした保険給付を設けるといったことも、労災保険制度の趣旨に沿うと考えられるのではないかというように思っています。
○ 委員
その点は全く納得できません。「労働条件をめぐる使用者責任の分野に関する総合的な保険制度」というように仕組まれたとは全く思っていません。労災保険法の目的のところで、そのように読めるような条項は全くないと思います。
○ 座長
本日はいろいろな御意見が出ました。まだほかにも、労使委員で御欠席の方もいらっしゃいますし、次回、引き続いてこのあたりでさらに意見を交換していくことにしたいと思います。基本的な御意見は今大体出ましたので、本日はこのあたりで終わって、御欠席の方もいらっしゃいますから次回に引き続いて議論をしたいと思います。
○ 委員
私どもは組織の中で検討し、いろいろなデータや事例を参考にして要求を組み立てていますが、そういうところも大事にしないといけないのではないか。確かに小委員会の委員ですから、自由に発言をすることはいいのですが、産業、企業の、あるいは産業の現場における安全確保という問題に大きくかかわる問題ですので、是非、議論のまとめの段階にあたっては、産業人としてそのような反応をされているのかどうかということも確認をしたいと思っています。
○ 委員
事務局の具体的な提案をどうこうというより、むしろ労働者の健康支援対策をどのような形でまとめていったらいいかということに我々の検討の主眼があるわけです。そういう方向で、次回、どういうことが考えられるか、皆さん方でまた知恵を出すことにしたいと思います。そういった観点から議論を引続き、そしてもし時間があれば、労使双方から出た労災保険制度の要望事項等についても、検討できるところまで検討していきたいと思います。よろしくお願いします。
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