第2回労災保険制度検討小委員会議事録

日時 平成11年8月25日(水)10:00〜12:00
場所 通商産業省別館第933会議室
出席者
〔委員〕 公益者代表 野見山座長、岩村委員、岸委員、保原委員
労働者代表 真島委員、松浦委員
使用者代表 宇田川委員、久保委員、高梨委員
〔事務局〕 横田審議官、荒労災管理課長、笹川補償課長、本川労災保険財政数理室長、高崎企画官、石井職業病認定対策室長、原田調査官、中野計画課長、渡延労働時間課長、坂本企画室長
議題

○ 今後の労働福祉事業の在り方について

議事

○ 座長
 ただ今から、第2回労災保険制度検討小委員会を開催いたします。本日は、佐藤委員、田中委員が欠席されております。本日は、前回の小委員会で御相談させていただいたとおり、「今後の労働福祉事業の在り方」についてを議題にいたします。事務局から関連資料が提出されておりますので、この資料について事務局から説明をいただき、後ほど意見交換をしたいと思います。

○ 事務局
 資料を3つ提出しております。1つ目は「今後の労働福祉事業の在り方(論点メモ)」、2つ目は「労働福祉事業の主な内容」、3つ目は「労働福祉事業の主な内容(施策別)」です。まず論点ですが、前回の小委員会でもお話しましたが、今後、小委員会で議論を進めていくに当たって論点を提出して、それを参考にして御議論いただきたいということをお話しました。今回、労働福祉事業の問題は、事業の内容、あるいはその見直しの問題と、今後、労働福祉事業の財源をどう確保していくかの大きく2つに分かれると思います。本日は、事業の内容、あるいは今後どのように見直しをしていくかという問題に焦点を当てて御議論をいただきたいと思います。論点は、労災保険法第23条の労働福祉事業について、今後の必要性をどう考えるかということで、社会復帰促進事業、あるいは被災労働者等援護事業、労働安全衛生確保事業、労働条件確保事業についてどう考えるかという論点を提出しました。
 これまでの審議会や小委員会で御意見があった事項として、未払賃金立替払事業を労働福祉事業として引き続き行うことについてどう考えるか。さらに、労災病院についても御意見がありましたが、社会復帰促進事業のうち、大きな割合を占める労災病院について、その実態を踏まえてどう考えるか。論点はこれに限るものではないと思います。本日の小委員会の御議論も踏まえ、追加すべきものは追加し、それに即して考え方を整理していく形で御議論を進めさせていただければと考えております。
 本日は労働福祉事業の内容について御議論をいただくということで、資料を2つ準備いたしました。1つは「労働福祉事業の主な内容」です。これは従来、労災保険審議会等に御提出した資料ですが、前回提出したものと変わっているところは、前回提出したのは10年度の予算でしたが、今般10年度の決算も確定したので、7年から10年までが決算で、11年度は予算ということです。なお、ここに計上した項目の考え方は、概ね5億円程度を超える予算項目について計上しております。業務取扱費等を除きますと、事業の経費が約1,600億円で、そういった形で計上したものを合わせて、1,400億円を超えるぐらいです。全体の92%をカバーしています。横の資料(資料2)については説明を省略させていただきます。
 縦の資料3「労働福祉事業の主な内容(施策別)」ですが、これは横の表(資料2)の個別の予算項目について、考え方、経緯、効果、実績等について簡単にまとめたものです。本日はこれを説明して、労働福祉事業の内容について御議論をいただければと考えています。
 それでは、縦の「労働福祉事業の主な内容(施策別)」について、1頁から順次簡単に御説明いたします。
 1頁以降は、社会復帰促進事業です。1つ目は、義肢等補装具支給です。概要は、業務災害や通勤災害で四肢喪失、あるいは一定の機能障害が残った方々に対して、義足や義手といった、22の種目についてそれぞれの支給基準によって支給するという事業です。内容は2頁と3頁に詳細がありますので、説明を省略いたします。義足などの支給が実際には多いです。なお、そういった補装具の修理についても一定範囲でカバーするといった事業になっております。
 3の「事業実績」ですが、10年度は4万件弱の支給件数があります。10年度決算、11年度予算は若干差がありますが、12年度以降については事業実績等を踏まえて、予算については見直しを行いつつ、こういったニーズがある障害が残った方々に対しては、不利益がない形で事業を継続していきたいと考えています。
 4頁の「アフターケア制度」についてです。アフターケアは聞き慣れない言葉かもしれませんが、趣旨は1にありますように、業務災害又は通勤災害によりせき髄損傷、頭頸部外傷症候群、慢性肝炎、振動障害等の傷病にり患した者で、その症状が固定したものについて、症状固定後においても後遺症状に動揺を来たす場合がある、あるいは後遺障害に付随する疾病を発症させるおそれがあることにかんがみ、これらの人たちに対して、アフターケアとして一定の診察、あるいは保健指導、理学療法、検査、保健のための薬剤の支給等を行っている事業です。
 具体的に言うと、労災として治ゆした場合、療養給付が支給されなくなりますが、それでも季節や天候、あるいは社会環境の変化によって、症状が増悪することがあります。これが「後遺症状に動揺を来たす」場合です。また、後遺障害に付随する疾病が出てくる場合もあるので、治ゆ後においても一定の診察等のケアが必要だということで、こういった事業をやっています。経緯としては、昭和42年から始まっております。最初は炭鉱災害による一酸化炭素中毒でしたが、その後、随時、専門家の意見を聞きながら拡大してまいりまして、現在17傷病についてこういったアフターケア制度の実施を図っています。17傷病については5頁と6頁に列挙してあります。最近では6頁の17のサリン中毒についてもPTSD等の後遺障害が残るということで、そのアフターケアを行っている状況です。
 2「事業概要」は、治ゆ後においても一定の診察、あるいは薬剤の支給等を行います。
 3「事業実績」は、10年度が26億です。支給件数は、診察や薬剤の支給でレセプトがあがってくる件数が約20万件です。11年度予算に比べても若干10年度は決算が多くなっています。流用等で対応してきましたが、12年度以降は実績を踏まえて充実する方向で検討したいと考えております。
 7頁の「振動障害者社会復帰援護措置」についてです。振動障害は林業や建設業の方が多いです。このような方については、療養期間がわりと長期にわたる場合が多く、特に林業ですと居住地が山間地にありまして、就労の場が少ない。それから、林業以外の仕事に就いた経験が少ないといったいろいろな事情により、社会復帰や再就職が非常に困難な状況です。こういった振動障害者について社会復帰を促進するということで、昭和57年から事業を展開しております。
 事業内容は、その後充実なり改正がありましたが、平成8年からは事業概要に列挙しているとおりで、(1)は、振動障害者個人に対して、職種転換等に伴う諸経費を補てんする事業です。
 (2)は、振動障害者を雇用した事業主に、訓練等に要する経費の一部を助成する制度です。
 (3)は、振動障害者自身が共同で事業を行う場合に、費用の一定額を助成する制度です。
 3「事業実績」にありますように、予算と決算は割と差があります。我々はPR等に努め、事業の内容をより使いやすいように改善に努めているところですが、それでもなかなか、予算の全額が実施されている状況ではありません。今後、さらにPR等に努めつつ、実績を踏まえて検討していきたいと考えています。なお、先ほど振動障害者は長期療養者が多いと言いましたが、だんだん減ってきております。平成5年、振動障害者の長期療養者は1万68人でしたが、平成9年に9,000人を切り、8,958人という状況で、効果は漸次上がっているのではないかと考えています。
 9頁の「労働福祉事業団出資金・交付金」ですが、主に労災病院の経費です。労災病院は全国で39ありますが、その運営は労働省の特殊法人である労働福祉事業団が実施しております。その労災病院に係る労働福祉事業団に対する出資金・交付金についてです。
 「趣旨」にありますように、出資金は労災病院等々の施設の整備に要する経費です。具体的には、老朽化した労災病院を建て直す経費に出資金が当てられています。なお、全国労災病院39のうち、吉備高原医療リハビリテーションセンター、それから、福岡のせき損センターの2つを除く37病院については、ランニングコスト、ドクター、看護婦の人件費等々については、自前収入、いわゆる病院収入ですが、その中で全額カバーしておりまして、ランニングコストの部分については、労災のほうからお金が出ているというようなことはございません。先ほど申しましたように、老朽化した施設の建て直し、施設整備に出資金が回っているということです。
 関連して、看護学校が労災病院に附設される形で13校あります。それから、理学療法士を育成するという観点から、九州労災病院にリハビリテーション学院が附設されています。そういった関係の経費もここに計上してあります。なお、先ほど言った37以外の吉備高原のリハビリテーションセンターやせき損センター、看護学校、リハビリテーション学院については一定の収入がありますが、収支差補助と申しまして、収入では補いきれない経費について収支差交付金という形で交付金を交付し、経費等の処理を行っています。
 なお、(10頁)労災病院については特殊法人の整理合理化という観点から、平成9年12月に閣議決定が行われています。3つのことが指摘されております。1つは、勤労者医療の中核的機能を高めるため、労災指定医療機関や産業医等との連携システムを含め、その機能の再構築を図ること。2つ目は、労災病院の実態にも照らし、その運営のあり方につき、統合及び民営化を含め検討すること。3つ目は、毎年損失が生じている経営状況を改善し、労災保険からの出資金の縮減を図ることが閣議決定されております。
 この閣議決定を踏まえて、(11頁)労災病院について次のような改善の措置を現在進めています。1つ目は、勤労者医療の中核的な機能を強化するということです。今勤労者の健康をめぐる状況はいろいろ複雑で多岐にわたっております。特にメンタル面や勤労者の自殺が多いといった問題や、女性が増えてきて女性のメディカルな問題、「過労死」が多いということで、脳・循環器系の問題が多く出てきております。労災病院としては、そういった問題をめぐって地域の産業医、企業、あるいは労災指定医療機関とネットワークを積極的に構築しなければいけないという観点に立って、各労災病院でネットワークの構築のため、いろいろ取り組みを行っている状況です。
 先ほど申し上げた1の(2)ですが、メンタルや「過労死」など、そういった問題で労災病院らしさを出そうということです。労働者が直面する健康問題に的確に対応していくという観点から、そういった問題に積極的に取り組むということで、特色のある分野を強化しようということで、メンタルヘルスセンターを全国にいくつかつくるという取組みも、いま行っております。労災病院はわりと高度な機器を揃えていますから、地域の医療機関と連携を強化するということで、病診連携の制度を整備する、あるいは地域の医療機関に労災病院の機器を開放するということも、来年度からモデル病院を指定して実施していきたいと考えています。
 労災病院の再編成の問題ですが、御承知のように労災病院は昭和20年代の後半から整備してきました。そうしますと、かつての産炭地域に労災病院を立地しているものも多くあります。そういった場合、同一二次医療圏に近接して設置されている労災病院については、地域医療への影響も勘案しつつ、今後統合についても検討していきたいと考えています。
 経営状況の改善と出資金の縮減の問題ですが、各労災病院は経営改善委員会が逐次設置されつつあります。そういったところで、1つひとつの労災病院の経営について見直し、より効率化、改善を図っていく努力も、今後さらに強化していきたいというふうに考えています。
 出資金については、老朽化した労災病院の建替えとか増改築の経費ですが、漸次縮減しておりまして、平成9年が350億円程度だったと思いますが、平成11年に278億円、平成12年にはさらに圧縮する方向で予算を要求したいと考えています。なお、経営の効率化という観点から、一部の業務については民間への委託を推進していきたいと考えています。こういった閣議決定を踏まえて、労災病院の経営改善を進めつつ、労働者が直面する健康問題により適切に対応するように、労災病院らしさを出していこうということで改善に取り組んでいる状況です。
 13頁の「障害者職業能力開発校の経費」についてです。障害者の職業能力開発校は、全国で11校あります。これも造ってから30年を超えて、老朽化したものがあります。そういったものの建替えの経費について、労災勘定から経費を支出しています。なお、運営については一般会計が全額負担しておりまして、平成11年度で確か39億、一般会計で経費を負担しています。建替えや施設の整備については労災で、運営については一般会計といったやり方を、昭和39年からこういった仕切りのもとで能力開発校の全体の運営に当たっています。以上が、社会復帰促進事業です。
 14頁以降は、被災労働者の援護事業に入っていきます。最初が、「労災就学等援護経費」です。事業内容が2つに分かれていて、1「趣旨」の(1)にあるように、1つ目は労災就学援護費及び労災就労保育援護費です。不幸にして労災で亡くなられた方、あるいは重度の障害を負われた方々の、子弟の方々の進学等を援助するということで、昭和45年に労災就学援護費が創設されました。それから、お子さんが小さい場合、保育所や幼稚園に入れるといった場合の援助は、昭和54年から労災就労保育援護費という形で実施しています。
 これらについては、2「事業内容」の(1)にありますように、それぞれ小学生、中学生、高校生、大学生、あるいは幼稚園や保育園で、1人当たり月額、ここにあるような金額で援護費を支給しています。
 3「事業実績」は、(1)にありますように、10年度で合わせて約17万件です。今後は少子化の影響があります。就学適齢期のお子さまがだんだん減っていくことが予想されますが、そういった点を踏まえつつ、適正な予算の規模にしていこうと考えています。
 もう一つの事業内容は、1の(2)の「長期自宅療養者等に対する介護料」です。介護料については、沿革的には昭和39年にCO中毒の方々を対象にして昭和42年に創設されたものです。このときは炭坑災害による一酸化炭素中毒症に関する特別措置法に基づいて創設されています。その後、昭和45年には長期傷病補償給付受給者に対して介護料を創設する。さらに昭和55年には障害補償給付受給者にも介護料を支給するということで、拡大してきました。この介護の問題については、御存知のように平成7年の労災保険法改正により、介護補償給付が創設されております。介護料を受給していた大半の人たちは、平成7年以降、介護補償給付のほうに移行しています。ただ、一酸化炭素の特別措置法に基づく介護料については、場合によっては介護補償給付を受給すると不利になるという場合があります。それについては、法律で経過措置を設けて、いわば既得権の保護ということで、平成8年3月31日時点に特別措置法に基づく介護料を受給していた人については、それを経過的に引き続き受給できるという措置を取っております。そういった方々がまだ若干残っていて、介護補償給付が創設されましたが、そのCO関係の介護料は経過的に一部残っています。これについては、その時点でも受給対象者を絞っていますので、今後も増えることはありません。漸次減少していくだろうと考えています。
 15頁の「労災特別介護施設の設置・運営」についてです。労災ケアプラザと言っております。労災ケアプラザについては、2の(2)にありますように、労災年金受給者であって、傷病・障害等級の1級から3級に該当する人で、年齢が原則として60歳以上の者で、さらに在宅での介護が困難である者に入居していただき、介護等のサービスを提供するといったものです。これについては、平成3年度から計画的に整備を進めており、現在全国8カ所、各ブロックに1カ所の設置を行うという計画で、逐次建設を進めています。
 2の(3)にありますように、千葉、愛知、熊本、北海道、大阪、広島の6つの施設がオープンしています。いちばん新しい所が広島で、本年の3月にオープンしました。現在、宮城と愛媛の施設が建設中で、宮城は平成12年にオープン予定、愛媛は平成13年開所予定です。現在1級から3級に該当する者が、3万2,000人から3万3,000人います。だんだん年金受給者の方も高齢化が進んでいます。従来は在宅介護でケアしていた者が、例えば配偶者も高齢化してくるということで、在宅介護が難しくなる人たちが増えてくるだろうというふうに考えられますので、こういった施設の内容の充実を図っていきたいと考えています。具体的には、今入居率が70%弱ですが、入居率をさらに上げるといった取組みが、今後必要だろうと考えています。
 3は、これに要する経費ですが、設置費は平成11年度で約50億です。これについては、今後、宮城と愛媛に設置するということですので、漸次減少していきます。運営については、オープンに伴って全体で経費が4億から5億かかります。そういったものが宮城の施設の開所、あるいは愛媛の施設の開所に伴って、今後増加が予想されます。
 16頁の「労災ホームヘルプサービス事業」です。これも対象としては2の(2)にありますように、傷病・障害等級の1級から3級の年金受給者の方々で、在宅で介護を受けている方々です。こういった方々に対して、ホームヘルパーを派遣する事業を行っています。労災の患者で、特にじん肺やせき損の方々は、労災特有のケアが必要です。例えばじん肺であれば、常に呼吸に注意していなければいけない、痰の処理を随時しなければいけないといった問題があります。せき損であれば、寝たきりですから、褥瘡を予防するといったことで、寝返りを常にうたせなければいけない、あるいはせき損患者の場合は排泄障害を伴うことが多く、そういったものについても特有なケアが必要です。
 そういった労災特有のケアについて、一定の訓練なり講習を受けたホームヘルパーを派遣するというサービスです。特別の訓練をやっている関係もあって、利用者には3割の自己負担をしていただき、こういった事業をやっています。
 従来、なかなか実績が上がりませんでしたが、本年からより活用しやすいように、原則3時間単位でしか使えなかったものを1時間単位で使えるようにしました。休日や時間外についても、使えるようにしました。さらには時間帯も活用して、従来は午前9時から午後5時まででしたが、本年の8月から午前7時から午後7時までということにし、しかも休日も認めるようにするなど、利用時間帯の拡大をするということで、より利用しやすいような形で事業を実施していこうと考えているところです。
 17頁の「介護機器レンタル事業」です。2の(1)にありますように、対象となる方は傷病・障害等級の1級から3級で、障害の重い方の年金受給者の方々です。そういった方々に対して、日常生活上必要な介護機器のレンタルを行う事業です。これについても3割を自己負担として徴収しています。3割というのは政管健保も同様のサービスを提供していますが、やはり3割が自己負担という考え方でやっております。
 これは残念ながら、なかなか利用は上がっておりません。10年度の決算は1,200万円で、支給件数も100に満たないという状況です。来年の4月から介護保険がスタートします。そういったことも踏まえて、利用実績に踏まえて予算等については適正な規模にしていきたいと考えています。介護保険がスタートするといっても、介護保険のサービスが利用できるのは65歳以上ということですと、65歳未満の労災の患者さんに対して、こういった需要があるのではないか、あるいは65歳以上の方でも介護保険の要介護度の認定の考え方と障害等級の考え方は違っておりますから、1級から3級の方でも場合によっては介護保険では要介護度では認定されない場合もあり得るということで、全くこういった事業をなくしてしまうというわけにもいかないのではないかと考えています。
 18頁ですが、重度の年金受給者は3万2,000から3万3,000人ですが、全体の年金受給者の方々は、遺族年金も含みますが、現在22万人ぐらいいらっしゃいます。
 そういった方々で高齢化している方も多く、いろいろな相談ニーズがあります。そういった相談に応ずるということで、昭和51年以降、財団法人労災年金福祉協会に委託して、年金受給者等の相談に応ずる事業をやっております。さらに最近では、受給者というわけではありませんが、「過労死」が増えているということで、定期的に「過労死」の問題について相談を受けるといった事業もやっています。
 そういうことも含めて、全国で183人の相談員を置いており、3「事業実績」にあるように、約27万件の相談を受けています。相談の内容で多いのは、やはり労災年金の受給手続の問題や、最近増えているのが高齢化の影響で、介護の問題などの相談が増えています。
 19頁です。同じ相談員ですが、これは労働保険相談員と申しまして、監督署に配置して、労働保険の適用や加入などの問題についての相談を受けています。配置数が平成11年度は680ぐらいです。特に労働保険については、毎年4月、5月に年度更新といって、一斉に手続を始めるわけですが、そういった時期にいろいろな相談が重なりますので、集中的にこういった相談員を配置しています。
 20頁の「労災診療費の貸付事業に対する補助金等」についてです。わかりにくいかと思いますが、事業内容は2つあります。1つは、1の(1)の「労災診療費審査体制等充実強化対策費」です。これについて簡単に言いますと、労災で怪我や病気をしたときに、療養(補償)給付というものがあります。被災者が病院に行くと、御本人は負担がなく診察、あるいは診療を受けられ、医療機関が労災のほうに診療費を請求するということになっています。全体で、3の(1)にあるように、そういった関係のレセプトが、毎年300万件を超えております。平成10年度では350万件のレセプトが上がってきます。このレセプトが診療内容、あるいは診療報酬の点数等々、適正なものかどうかを審査したうえで、労災の診療費を医療機関に支払うことになっています。こういった医療関係の診療報酬の点数のチェックは、非常に専門的な知識も必要だということで、昭和63年度から財団法人労災保険情報センターを設立して、レセプトのチェック等を行うという事業を行っています。それに要する経費が、1の(1)の「労災診療費審査体制等充実強化対策費」です。レセプトは全国で350万件もあるということで、40億ないし50億ぐらいの予算を毎年計上しております。行政でやればいいのではないかという議論もあるかと思いますが、人件費等々を考えると外部に委託するような形で専門的な知識のある人を活用して、レセプトをチェックするほうがより効率的ではないかと考えています。
 もう1つの事業内容は、1の(2)の「労災診療被災労働者援護事業補助事業費」です。これもタイトルだけではわかりにくいかと思いますが、先ほど申し上げましたように療養(補償)給付を受ける場合、被災者が病院に行きます。そこで労災だと言えば、御本人が負担しないで診察、あるいは治療を受けられるわけですが、医療機関が労災に請求する場合、労働基準監督署でそれが「業務上」であるというふうに決定するまで、事案によっては時間がかかるものもあります。「過労死」などは時間がかかる案件のひとつですが、その場合、当然労災の診療費としては医療機関に支払われませんが、その間の診療費がもらえない負担を、医療機関が全部負担するということになると、医療機関にとっても大変です。決定まで時間がかかるから、労災からお金が入ってこないということになりますと、場合によっては、労災だといっても労災の患者さんに対する治療がなかなか円滑に行われないということも予想されます。「業務上」と決定されるまでの間、請求された診療費について、労災保険情報センターが無利子で貸し付ける事業を(2)で行っています。病院の負担も軽減されますし、労災被災者の方も医療機関に行った場合、円滑に労災の診療を受けられるという効果があります。もちろん労災だと決定されれば、労災の診療報酬が支払われます。この場合、貸し付けていた金額と相殺するという形で事務処理を行っています。
 3の(2)ですが、これに要する経費は、全国で労災指定医療機関は2万8,000ぐらいあり、16万件の貸付けが行われています。予算規模は、130億から140億円です。無利子で貸し付けているだけですから、この経費の大半は返還されます。要するに労災診療が円滑に回るように、100億円程度のお金がぐるぐる回っています。(注)にありますように、事務経費は別ですが、事務経費を除いた大部分は返還されています。平成10年度の決算で言いますと、補助金が133億円で、そのうち返還金が119億円です。運転資金的なものを貸し付けることによって、労災診療が円滑、迅速に行れるようにという趣旨の事業です。補助金が130億円あるわけですが、それが毎年使われるわけではなくて、返還される額が多いということです。  22頁も労働福祉事業団の関係です。労働福祉事業団は、労災病院のほかに労災保険会館の設置及び運営、労災に係る年金を担保にした資金の貸付業務を行っています。労災保険会館は、東京の後楽園、東京労働基準局の横にある通称「後楽園会館」というふうに称しているものです。昭和57年に設置しました。趣旨は、被災労働者やその遺族等々の福祉を図ることから、生活相談、宿泊、会議室、身体機能回復施設等を備えた施設です。運営については、財団法人労働福祉共済会に委託しておりまして、これについてもランニングコストは労災からお金が出ていることはありません。
 3の(1)にある出資金については、機器の整備、あるいは施設の補修や修繕といったものに当てるということで、1,000万円程度の経費が出資金として支出されています。なお、こういった公的資金が入った宿泊施設は、従来から民業圧迫ではないかといった指摘が多方面からなされております。この労災保険会館についても、そういった観点を含めて、今後のあり方については見直す必要があるというふうに私どもは考えております。
 もう1つの事業内容は、2の(2)の「年金担保資金の貸付」です。年金の受給権は一般的には担保に寄与してならないということになっていますが、労働福祉事業団についてはそういった法律的な制限を解除して、被災労働者のニーズに応じて年金受給権を担保とした貸付を行っております。実績は、3の(2)にありますように、平成10年度で貸付件数が3,290件で、融資貸付額が60億といった状況になっています。なお、交付金が0となっておりますが、貸し付けた額が返還され、返還されたものを原資として貸付に回しておりますので、これに要する交付金は平成9年、10年、11年は必要ありませんでした。以上が援護の関係の事業です。
 23頁以降が安全衛生確保事業です。第1は「化学物質の有害性調査」についてです。いろいろな化学物質、特に新規化学物質については、労働者にどういう健康障害を起こすかわからないということで、有害性調査を行わなければならないことが、労働安全衛生法で義務づけられております。特に化学物質による職業がんが大きな問題です。どういう物質ががん原性があるか、そういったことがわからないものが多く、中災防に設けられている日本バイオアッセイ研究センターに委託して、がん原性のおそれのある化学物質について、計画的に実験動物を用いたがん原性試験を実施しています。これに要する経費です。
 具体的には2にありますように、昭和57年以降実施しておりまして、約30物質のがん原性の試験を行っています。少ないのではないかと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、発がん性の試験については、多くの実験動物(主としてラット)を多く使う、時間もある程度かけなければいけないといったことで、昭和57年以降、30物質の試験を実施しております。そのうち10物質については、がん原性があると認められて、労働者の健康障害を防止するための指針を公示しているところです。今後とも化学物質が新規のものが多く出てくると言われていますので、がん原性のチェックが今後重要ではないかと考えております。
 24頁の「建設業労働災害防止対策」についてです。建設業については従来よりは災害が減ったと申しましても、やはり「趣旨」の冒頭にありますように、全産業の死亡災害の約4割、休業4日以上の死傷災害の約3割を占めるということで、労災事故の多くの部分を占めるという状況です。そういった点を踏まえて、平成6年度から建設業労働災害防止協会に委託をして、ここに掲げてあるような専門工事業者安全管理活動等促進事業、木造家屋の関係、中小地場総合工事業者の関係など、建設業における災害防止対策を進めていくということです。予算の規模は、16億円程度です。建設業の災害がなお多いという状況ですので、こういった取組みがさらに必要ではないかと考えています。
 25頁の「快適職場形成促進事業」についてです。労働安全衛生法では、「趣旨」の(2)にありますように、労働者が不快と感じることのないような職場を、快適な職場環境をつくろうということで推進しています。具体的には労働安全衛生法に基づいて、快適な職場環境形成のための指針を周知させるとか、事業者の策定した快適職場推進計画を認定するといった事業を実施しています。中央労働災害防止協会に委託することにより、事業を推進しているところです。
 事業実績は、事業者が策定した快適職場推進計画の認定状況をいちばん下に掲げておりますが、平成7年度が374件だったものが、平成10年度2,000件弱ということで、着実に推進が図られているのではないかと考えています。
 26頁の「地域産業保健センター整備事業」についてです。労働者50人未満の小規模事業については、経営基盤が脆弱であるという理由により、独自で産業医を確保できない、あるいは労働者に対する健康指導の提供もなかなか難しい状況にあるといった点を踏まえて、平成5年度より、小規模事業場で働く労働者に対する産業保健サービスを充実させることを目的にして、具体的には郡市区医師会に委託する形で、地域産業保健センターを設置してまいりました。平成9年度には全国347カ所で、監督署単位で設置が終了したところです。
 事業概要として、2の(1)にありますように、事業者あるいは労働者を対象に健康相談に応ずる、積極的に事業場を訪問していろいろな健康管理等の指導を行う、産業保健の情報を提供するといったような事業を展開しております。
 さらに平成10年度から、中小規模事業場の集積する都市部の地域センターについて機能を強化する、例えば、夜間とか休日の相談窓口を開催する、メンタルヘルスの相談窓口を増大させるといった機能強化を図るということで、5年計画で計画的に24カ所について拡充を図っていくという事業を行っております。
 ここには掲げておりませんが、健康相談利用者は、平成9年には3万989件です。そのうちメンタルについては825件の相談がありました。特にメンタル問題は今後重要ですので、小規模事業場に対する健康指導はより重要であろうということで、地域産業保健センターの一層の活性化を図っていきたいと考えております。
 27頁の「安全衛生情報センター」についてです。労働災害が減っているとはいうものの、まだ2,000人に近い労災による死亡者がいます。原因を考えてみますと、同業種の労働災害事例に接する機会などが少なく、そういった情報が少ないといったようなことがあります。あるいは機械設備や取扱物質の多様化に伴う新たな型の災害も増えていますので労働災害に対する情報提供が今後重要であろうと思います。あるいは管理者に対する教育が重要であろうとも言われています。
 さらに、労働安全衛生法に基づいて、いろいろな技能講習をやっていますが、技能講習の修了者をそれぞれの労働基準局で管理しており、統一的な管理を行っていません。このため、講習の修了や、あるいは再交付の申請に的確に対応できない状況になっており、こういった技能講習の修了の状況について、データを全国で一元的に管理するといった必要性が多くなってきましたので、平成9年以降、安全衛生情報センターを整備するといったようなことで、事業を進めてまいりました。
 2にありますように、本センターは、平成12年1月にオープンする予定になっています。事業としては、労働災害に関する情報提供を的確に行っていく、あるいは技能講習修了証明書について統一的なデータを把握して、データ提供等のサービスを的確にやっていくという事業です。
 28頁は「小規模事業場等団体安全衛生活動援助事業」についてです。小規模事業場等について、衛生関係は先ほど触れましたが、災害の状況を見ても労働災害の総件数の約7割が、労働者50人未満の小規模事業場で起きているという現実があります。その原因としては、経営基盤が弱いといったことから、安全衛生管理体制が確立していないといったことが挙げられます。平成11年度からこういった小規模事業場を団体としてつかまえて、こういった団体に対して各種の援助事業を行っていこうといった趣旨の事業です。平成11年から中災防に委託して実施しております。本年度からの事業ですが、平成11年度は94団体を指定することとなっております。
 どういう団体を指定するかということですが、小規模事業場を多く構成員に持っている団体ということで、例えば事業共同組合であるとか、あるいは工業団地といった団体を指定するといった考え方で進めております。2年サイクルで実施することになっておりまして、事業内容としては、2の(1)、(2)にございますように、その団体の中の災害状況を調査する、経営者に対する安全講習会を開催する等々の事業を考えております。小規模事業場の災害が多く発生しているといったことを踏まえて、平成12年度についても、新たに94団体を指定するというような考え方でおります。
 次に29頁の「労働基準行政情報システム」についてです。労働基準行政は多くの個別事業場を抱えております。しかもその個別事業場に係る情報が、単に名称とか、所在地、労働者数以外にも、安全衛生管理体制、あるいは危険有害業務の状況、健康診断の実施状況、さらには従来の災害発生状況等、個別事業に係る情報も多岐にわたるといった状況になります。一方、「行政情報化推進計画」は、平成9年の閣議決定ですが、国民あるいは利用者の便を図るという観点から、いろいろな申請とか届出については、従来のペーパーだけではなくて、電子情報の受付けも進めるということになっています。こういった点を踏まえて、平成7年度から労働基準行政システム、コンピューターの用語に則して言いますと「分散型ネットワークシステム」を活用した行政システムを作っております。
 内容としては、2の(1)から(4)で、「個別事業場に関するシステム」は、その就業規則の届出の電子化を受付けるためのシステムです。それから、通達も膨大、多岐にわたっておりますので、通達のデータベースを図るシステムがあります。労災関係でも複雑な業務、例えば障害が何級に当たるか、しかもいろいろな障害が重なってあると、併合とか統合などいろいろあるのですが、具体的にどういう等級に位置づけられるか、これがいわばマニュアル的にわかるようなシステムを構築して、平成10年から稼動しているところです。
 次に31頁の「労働条件等自主的改善対策推進事業」です。社団法人全国労働基準関係団体連合会に委託して実施している事業で、内容は3つございます。
 (1)は昭和63年からで、わりと前からやっている事業ですが、「労働条件に関する情報提供事業」ということで、例えば行政訴訟、あるいは民事訴訟の判例等について、データベース化して、事業主、あるいは労働者に提供するといった事業です。
 (2)「労働条件明示のためのモデル就業規則等普及促進事業」は、平成10年から実施している比較的新しい事業です。御承知のように、就業規則については、労働基準法上は、労働者10人以上の事業場については、必ず就業規則を作成、備え付けなければいけないといったことを義務付けております。10人未満の事業場については、そういった義務付けはございません。そういったこともあって、10人未満の事業場においては、就業規則はなかなか普及していないといった現状にあります。これを10人未満の事業場においても、就業規則を普及させるといったような観点から、中小企業集団420集団指定して、就業規則の作成等についていろいろな技術的な援助、アドバイス等を行っている事業です。具体的な中小企業集団としては、事業共同組合とか、商店街連合会、あるいは業種別団体の支部といったものを指定している状況です。
 (3)「労働条件制度整備支援事業」についてです。これは全国レベルで、毎年1団体を指定して、労働条件全体として向上させていこうという観点から、労働条件にはどんな問題があるか、その問題点を探った上で、どういう方向、どういう形で改善、整備していくか、そういったものを出した上で、その成果を各団体の構成員等に広げていくといったような事業です。
 次に32頁です。労働省は技術的な問題を研究する機関として、産業安全研究所、産業医学総合研究所の2つがございます。それぞれ安全関係の技術的な研究、衛生関係の技術的な研究を行っております。もちろんその研究だけではなくて、例えば大規模な災害があると、その原因を究明するといった観点から、産業安全研究所の研究員も一緒に災害現場に同行して、大規模、あるいは難しい災害の原因究明に当たるといった行政と一体となった研究機関です。こういった研究機関に要する経費をここで計上しています。なお、こういった行政の研究機関については、行政改革の関係で、平成13年4月から独立行政法人にするといったことが決まっておりまして、現在必要な法案等について準備作業を行っているといった状況です
 次に33頁の「安全衛生施設整備費」についてです。安全衛生関係の施設は、2にあるように、化学物質のがん原性の調査を行うといった観点で日本バイオアッセイ研究センター、いろいろな安全衛生教育を行うといった観点で安全衛生教育センター、建設業安全衛生教育センター等々、大きく6つの施設を設けております。こういった施設の改修、あるいは新たな研究に対応するための施設整備、機器整備を行う経費として、ここに計上しています。平成10年度は55億円、平成11年度は36億円と、平成7年、平成9年と比べて、若干多い額を計上しているのですが、(6) の安全衛生総合会館(港区田町)の施設の改築を行うといったことで、平成7年度以降、4年計画で進めており、そういった事情で、10年度、11年度は若干経費が多かったという事情です。
 次に34頁の「労働時間短縮促進援助事業」についてです。法定労働時間については、御承知のように、従来46時間、44時間と段階的に法定労働時間を短縮してきたわけですが、これを円滑に行うといったような趣旨で、労働時間短縮促進法といったものが定められております。それに基づいて、全国労働基準関係団体連合会が、2の(1)、(2)、(3)にあるように、法定労働時間40時間を円滑に進めるといった観点から、団体あるいは個別事業主に対して、助成金を支給してきたものです。(1)、(2)、(3)は、法定労働時間40時間が定着した現段階、平成11年度をもってすべて廃止といった状況です。
 (4)、(5)については、特例事業場を対象とした奨励金、あるいは助成金です。特例措置というのは、いちばん下にございますように、労働基準法第40条、施行規則第25条で決まっているわけですが、常時10人未満の労働者を使用する商業、映画、演劇業、保健衛生業、接客娯楽業といった小規模のサービス業関係の事業場については、法定労働時間が週40時間ではなくて、現在週46時間です。これについては中央労働基準審議会でいろいろな観点から議論をした上、平成13年4月1日からは週44時間に短縮するといったことが決まっております。この(4)、(5)の奨励金、助成金は、特例小規模の特例事業場を対象として、現在、法定労働時間46時間を週44時間に円滑に短縮していくといったためのものです。そういった意味では、平成12年度までの事業で、もちろん平成13年も経過的に支払いが残るといったことで予算措置が必要になるかと思いますが、ものの性格からいきますと、平成12年度、平成13年3月31日までといった事業です。
 なお、こういった労働時間関係の助成金についてはいろいろ議論はあるかと思いますが、法定労働時間40時間を短縮していくに当たって、特に経営基盤がなかなかしっかりしていない中小企業等々が40時間を実施していくに当たっては、大きな役割を果たしたのではないかと考えております。
 次に37頁の「労働災害防止団体補助金」についてです。労働災害防止団体は、冒頭趣旨にあるように、労働災害防止団体法に基づきまして、事業主団体による災害防止のための自主的な活動を促進しようといったことで、設置、設立されているものです。予算については、労働保険特別会計労災勘定の予算の範囲内において、その業務に要する費用の一部を補助することになっております。具体的にどういう団体かと申しますと、2の(1)にあるように、6団体ございます。中央労働災害防止協会、それから、業種別に建設業、陸上貨物運送事業、林業・木材製造業、港湾貨物運送業、鉱業関係といった6団体で、6つの災害防止団体に補助金を出しているということです。
 補助内容については、各協会について管理諸費の2分の1、人件費については、中災防は2分の1、その他の業種別の災害防止団体については、人件費の4分の3を補助するといったようなことになっております。
 その他に事業としては、中小企業の安全衛生活動を促進するための事業、それから、労働者の健康を確保するための事業といったものをやっております。この点については、特に中央労働災害防止協会は、平成12年度に民間法人化といものが決まっております。これもたしか平成9年4月の閣議決定で決まったかと思いますが、行政改革の一環として、中災防の民間法人化を平成12年度から実施することが決まっております。
 具体的には、国からの補助金の割合を縮減して、自主的な事業を充実させる。そういうことで、自立的な事業運営を行うといったようなことが決まっております。そういった意味で、2の(2)、(3)の事業については、平成12年度限りで廃止するというようなことで、補助金割合の縮減といったものを今後進めていかなければいけないといった状況です。
 次に38頁の「産業医学振興経費」についてです。内容としては、産業医の養成、50人以上の事業場には産業医を置かなければいけないといったことが労働安全衛生法で決まっておりますが、産業医の養成確保を図るといった観点から、産業医科大学(福岡県)を設置しております。その産業医科大学の施設及び運営に対する経費について、ここの項目で措置しているといったことです。
 内容については、(1)にあるように、産業医研修、産業医活動促進対策費等の事業、あるいは人件費、管理費等々についてです。医科大学ですから、附属の病院もあるので、そういった病院についても一定割合を補助しているということです。
 卒業生は昭和59年度から平成11年度まで1,536人が出ておりまして、それぞれ産業保健関係の仕事に従事しているものが多い状況です。ただ、補助金の割合が100億を超えるといったような事情もあって、今後さらに効率的な運営といった観点から、補助金については見直しを行っていきたいと考えております。
 39頁も労働福祉事業団の関係です。労働福祉事業団は、労災病院の他に、労災病院に附設する形で、2.の(1)にあるように、健康診断センターの8センターを附設しております。それから、(2)にあるように、産業医に対する研修とか、情報提供を行うといったことで、平成5年以降、産業保健推進センターを全都道府県に設置を進めております。現在、33都道府県ですが、こういった事業に要する費用です。
 3.「事業実績」にあるように、出資金については、健診センターの機械、機器整備等に当てています。特殊健診などを中心にやっているわけですが、7万件を超える特殊健診を各健診センターで併せて実施しているといったような実施の状況です。
 産業保健推進センターについては、各都道府県に設置するといったことでいま取り組んでおりまして、だいたい毎年4つぐらいずつ増やしております。活動実績は2.の(2)にあるように、事業主セミナーが607回、相談事業が7,500回、情報提供が3万件といったようなことで、より活性化を図っていかなければならないと考えております。以上が安全衛生関係です。
 次の40頁以降が労働条件確保事業の関係です。最初が「未払賃金立替払事業」です。7月の審議会で、平成13年度までは立替払事業については、労働福祉事業等の限度額の対象から除外するといったような特例措置を講じたところです。なお、この立替払事業については、趣旨にあるように、昭和51年の賃金の支払の確保等に関する法律によって創設させております。背景としては、オイルショックの後、倒産が相つぎ、実質的に労働者の賃金債権が確保されないといったことが大きな問題となったわけですが、そういった事情のもとで、この法律により、国が立替払を行うという仕組みが出来上がったわけです。その後、昭和63年から制度を改正して、年齢別に3段階に上限を設定する、さらに対象としても退職金を加えるといったような制度改正を行っております。
 3「事業実績」にあるように、平成10年度は倒産が非常に多かったということもあって173億円です。労働福祉事業団で実施しておりまして、労働福祉事業団に交付した金額は約150億です。その差については、これは立替えですので回収します。事実上の倒産の場合はなかなか難しいのですが、会社更生法とか、法律上の倒産のときは、回収がわりとスムーズにいく場合もあります。そういった回収金をさらに立替払に当てるということで、立替払の実際の額と交付金の額については差があるといったことになっているのです。
 次に41頁の「勤労者財産形成促進事業の実施費」です。財形貯蓄は昭和46年から実施しておりますが、財形というのは、貯蓄を促進するというだけではなくて、国としては財形貯蓄の還元融資として、住宅とか教育関係の融資を実施しております。雇用促進事業団で事務を行っているわけですが、雇用促進事業団に対してこういった融資事業を行うための経費を補助しているということです。なお、これについては雇用勘定と労災勘定で折半といった状況になっております。
 「事業実績」の(1)で平成10年度、11年度は若干減っておりますが、これは融資との実績見込みを勘案して予算を積算して、こういった形になっております。
 ただ、平成12年度以降は住宅関係の税制の特例が設けられたとか、そういったことで、持家融資が若干増えつつあるということで、平成12年度は増額する必要があるのではないかと考えております。
 次に42頁の「中小企業退職金共済掛金助成費」です。昭和34年から、独力では退職金制度を設けられない中小企業に対して共済制度を活用して退職金制度を設けるといったことで、中小企業退職金共済制度を始めております。昭和61年からさらに中退金制度への加入を促進するという観点から、掛金助成の制度が始まっております。内容は新規加入掛金月額の3分の1を加入時より24カ月助成するものです。これについては、労災、雇用折半となっております。
 事業実績は、平成10年度で220万件の掛金助成の件数があります。なお、昭和61年からなぜ始まったかというと、たしかこの時に労働基準法研究会の報告が出まして、退職金については、会社の外で社外積立てを促進しろというような研究会報告が出ており、退職金保全措置をより的確に進めさせるといったこともございまして、昭和61年からこういった掛金助成を始めたということです。ちなみに、平成10年度は倒産件数が非常に多かったわけですが、中退金で支払った退職金が190億円というような状況になっています。
 次に43頁の「総合的短時間労働者対策推進費」についてです。これは短時間労働者(パートタイム)の対策です。パートタイム対策については、平成5年にいわゆるパートタイム労働法が制定されております。このパートタイム労働法に基づいて、パートタイム労働者の福祉の向上、あるいは通常の労働者と同様の措置をパートタイム労働者についても取る、そういったことを行った場合に、一定の助成金を支給するというものです。例えば、雇入れ時の健診とか、定期健診を常用労働者には行っているが、パートにはやっていないといった事情が多くあります。そういった事情を改善していこうということで、こういった助成金を支給しています。
 44頁は「労働条件に係る紛争の解決に資する相談支援事業」についてです。労働条件に係る相談については、監督官はもとより、従来から各局署に相談員を置きまして、対応していたわけですが、最近景気が非常に悪いといったこともあり、労働条件をめぐる個別的な苦情、紛争といったものが増加しており、今後とも増えるのではないかと考えられます。そういった状況に対応するために、労働基準法を改正して、個別紛争に労働基準局長が関与できるといった趣旨の労働条件紛争解決援助制度を作りましたが、さらに個別的な苦情・紛争に的確に対応するために平成10年10月以降、大幅に相談員を増員して、当該事業を実施しているということです。
 最後に「中小企業勤労者総合福祉推進経費」についてです。「中小企業勤労者福祉サービスセンター」と言っておりますが、独力ではなかなか従業員のために福利厚生事業が展開できないといった中小企業を対象として、団体を作っていただき、スケールメリットを利用して、共同でいろいろな福利厚生事業、福祉事業を実施してもらうための事業です。具体的には、サービスセンターといったものを中小企業が集まって市区町村単位に作っていただきます。そこに対して、人口とか、会員数でランク付けをした上で、一定額を助成するといった事業です。
 事業内容としては、在職中の生活の安定ということで生活資金融資の斡旋、あるいは健康の維持増進ということで人間ドックの受診、斡旋、健康関係のセミナーの実施等々を実施しております。なお、この事業についても雇用勘定と労災勘定が折半で負担しているという状況です。非常に長くなりまして恐縮でしたが、以上でございます。

○ 座長
 どうもありがとうございました。非常に詳細にわたって、各事業について説明をいただいたわけでございます。今日は「労働福祉事業の在り方」が議題ですので、全体の枠のお話もあるかと思いますが、説明いただいた各事業について、まず意見交換をしたらいかがかと思います。

○ 委員
 その前に、このあいだ、読売新聞に掲載されていた記事について、事務局の考え方をお伺いしたい。8月18日の読売新聞の見出しに「健康相談に労災保険適用」ということで、「労働省の方針として、企業の「過労死」対策の支援をするということで、労災保険審議会の中に小委員会を設けて検討に入っており、年内に具体的な支援方法を決め、来年の通常国会に労災保険法改正案を提出する考えだ」と報道されているのです。私は前回の小委員会に出席してなかったので、どういう説明を事務局がなさったかわからないのですが、小委員会のほうで、検討するということになっている。その時の事務局の説明というのは、「過労死」問題も出てきているので、どういうふうな措置を労災保険法上取り扱うかどうか、そういうことをするかどうかもひっくるめて、小委員会のほうで検討してほしいと私は理解したつもりです。しかし、新聞報道のように、来年の通常国会に改正法案を提出するということで議論を進めるとすれば、それは必要なのかどうかという議論は別にして、とにかくそういう事業を考えてくれということになってしまいます。そうならば、何のために審議会を開いて、議論をしようとするのかわからないのではないかと思うのです。報道が間違いならば、それはそれで結構ですが、この件についてどういうふうに考えるのか、今日の議題とは離れますが、冒頭にお伺いをしておきたいと思います。

○ 座長
 この点については、前回の小委員会設置のときの趣旨の中に「「過労死」の発生を予防し、労働者の健康確保を支援するための労災保険上の措置について検討を行う」ということで、一応、労働省側からの検討依頼事項の中には入っているのですが、新聞報道されたこと等について労働省から説明願います。

○ 事務局
 私どもに取材があったことは事実でございます。労災保険審議会にこういった小委員会を設けまして、労働福祉事業の問題、あるいは「過労死」などを念頭に置きまして、労災保険制度に、予防の観点からどういった制度が導入できるかどうか議論してもらうといったようなことをお話しました。
 これがどうして健康相談に労災保険適用という記事になったのかというのは、私どもが関知するところではないのですが、いずれにしても、私どもの基本的な考え方は、労災保険において労働者の健康確保を支援する、「過労死」を念頭に置いて、そういった予防の観点をどういう形で導入できるか、その在り方をどう考えるかという問題については、本小委員会で検討をお願いしたいと考えております。この小委員会、あるいは労災保険審議会の議論を踏まえて、適切な措置を取っていきたいというのが労働省の考え方です。

○ 委員
 お伺いして、大体の趣旨はわかったのですが、要するにその点は法律改正をするのだということを前提で、その中身を検討してくれということではなくて、法律改正をするかしないかをひっくるめて、検討をしてもらうというふうに理解していいのですか。

○ 事務局
 先ほど申したように、労災保険法上の取り得る措置の在り方について、御検討をいただきたいと考えているところです。

○ 委員
 要するに法律改正するか、しないかということは、大変重要な話なのです。そこのところを、はなから新聞記事にあるように、法律改正するということを前提にして、どう改正するのかという中身を審議会で検討してくれという趣旨であるとすれば、審議会にお願いしたのは中身の問題で、しないという結論を出すことを労働省は全然期待していないということになるわけです。そこのところをお伺いしているのですが、いまの事務局の答えでは、趣旨がどうもよくわからない。

○ 座長
 この点については、今日は会長がお見えなので、前回の審議会は、本審議会においてそちらの文言上は労災保険制度上の措置について検討してくれということで、有無も含めてとか、中身ということまで書いていないわけです。その辺はどうやったらいいかということも含めての検討依頼だと理解できますので、それは今後検討の中でいろいろ意見を出していただければいいのではないかと思いますが、いかがですか。

○ 委員
 意見を述べさせていただきます。

○ 座長
 ただいまの問題は一応終えまして、本日の「労働福祉事業」の御説明について、意見交換をしたいと思います。それでは、4つの事業について、できるところから、それぞれ意見交換をしていきたいと思います。よろしければ、まず最初の「社会復帰促進事業」について、順次意見交換をしていきたいと思います。今日の資料の1頁から13頁までございますが、どうぞ自由に御意見等々をお願いしたいと思います。

○ 委員
 座長のほうから、部分的に13頁までということなのですが、その前に、先ほどの全体の説明をお伺いして、各頁の下のほうに、「事業の実績」ということで、これまでの決算額等が掲げられているわけですが、それを全体として見れば、年を追うに従って増えているものがほとんどなのです。労働時間の短縮の関係とか、新たに法定給付としてた介護の給付の問題について、減額といいますか、減るというものがあるわけですが、それ以外のものは、年を追うに従って決算額が増えてくるということは、トータルすれば、結局全体の額が増えるということになる。ここに掲げられていない事業のことはわかりませんが、こういうふうに見て取れるのです。
 結局、毎年々々決算額、あるいはその基礎となる予算額というのを増やしていくということで、それで限度額の問題とも関係してくるわけですが、毎年々々、労働福祉事業の額が増えるという形の構造といいますか、構図はどうするか。そこのところをきっちり議論しておかないと、個々の項目ごとに、議論するということももちろん大事なのですが、全体としてどうかという議論を、今でなくてもいいのですが、是非必要だと思いますので、その点を冒頭に申し上げておきたいと思います。
 具体的なことについて申し上げれば、7頁に「振動障害者社会復帰援護事業」の関係で、(1)から(3)までの事業があるのですが、(1)から(3)の奨励金、援護金ごとの実績といいますか、あるいは支給件数がどういうふうになっているのか、後ほどで結構ですので教えていただきたいと思います。
 同じく、関連して8頁のところで、いま助成の対象になっている方々というのは、どういう職種が振動障害を受けている方が多いのか、教えていただきたいと思います。
 それから、11頁の「閣議決定にどう対応しているか」という説明をいただいたのですが、1の(3)に「登録医制度」ということが掲げられておりますが、これはどういう制度なのか教えていただきたいと思います。また、「労災病院の再編成」について、総合的に検討しているという説明がございましたが、検討は期限を切ってするのか。要するに、ずっと検討し続けているということで、結論がいつになるのかわからないということなのか、平成11年度末かどうかよくわかりませんが、いつまでという期限を切って検討をしているのか。それから、11頁のいちばん下のところに、「外部委託をしている」ということがありますが、給食の関係は、どの程度の外部委託が進められているのか教えていただきたいと思います。

○ 委員
 各論に入る前に、今日は基本的な「論点メモ」が出してありますが、もう既に誰もが御存じのとおり、労働力人口は2000年の初頭をピークにして減少する見込みです。また、労働災害は作業環境の改善等の努力があって減少するということになります。そうしますと、労災勘定については、これからは減少の方向をたどるという、いわゆる料率の改定をしない限りは、減少の傾向をたどるというふうに思われるわけです。
 片方で、これまで労働災害にあわれた方の高齢化とか、あるいはその後のフォローという問題は、継続していくということになるわけです。そうしますと、こういった財源の縮小という傾向の中で、継続して労働災害に遭われた方の補償とフォローをしていくと同時に、労働災害の防止という手立てもこの勘定の中でしていかなければならないということになります。したがって、「財源の確保」に書いてありますが、いかなる措置で、安定的に財源を確保していくかというのは、料率を簡単に上げられるという状況でなければ、やはり基本的には長い経過の中で、いま説明を受けた中では審議会に報告されていない新しい労働福祉事業がいくつか入っているように私は判断をするわけですが、やはり、新しい施策を導入するとすれば、古くなった部分については整理をするということでなければ、財源はいつまでも膨らんでいって、これは負担をすることになる。これは使用者側委員は、経営者が負担をしていると言われますが、これは従業員が稼ぎ出したお金で負担しているわけですから、従業員の負担も当然大きくなるわけです。
 したがって、今回の労働福祉事業の在り方については、いわゆる現在の経済状況のもとで、立替払金が一時的に拡大を余儀なくされたということから、今回はその枠を外すという措置をしましたが、これを機会にして、労働福祉事業というものについて、基本的にどういうふうにしようと考えておられるのか、あるいは、我々がどういうふうに考えていくのか、軸足をどこに置くのかということの議論からしないと、各論に入って、それぞれの対象となられる方については大いに寄与しているような施策をあれこれ詮索して、具体的な中身がわからないのにここで審議するというのは、非常に無理があると思うのです。
 だから、まず骨組みについてどうあるべきなのか、あるいは事務局としてどう考えているのか、その考え方をまず聞いた上で、私の考え方と意見が違うのであれば、私も勉強し直して、しっかりここは議論しないといけないと思っているのです。まず、冒頭にその基本的なスタンスがどこにあるのかを聞きたいと思います。

○ 座長
 最初に申し上げたとおり、労働福祉事業の在り方と、それに必要な財源というのは表裏の問題ですから、今後とも膨らんでいくのであれば、膨らんでいく財源の確保という問題も出てくるし、見直しをして総枠を抑えていけば、財源もそれに必要な財源確保でするということです。両方とも非常に密接に関係がありますので、総論をいまの時点でやるとすれば、これからやってもいいと思いますが、できればその問題は、事業の見直しと財源確保はどうやったらいいか、事務局の考え方が現時点であれば伺って、それを次回議論するということも結構だと思いますが、どういたしましょうか。

○ 事務局
 いまの委員の御指摘の点については、非常に重要な点だと思います。例えば、今後の保険料収入の見通しとか、年金受給者の推移の見通しとか、そういったデータと併せて、今後の労働福祉事業をどういうふうに考えるか、事務局の考え方が整理できれば、そういった点も含めて、次回に御提示したいと思います。それに基づいて、御議論をいただければと思います。

○ 委員
 私は、それぞれの現在の施策、それからどこが、受託しているか、そして受託しているものが効率的に運用されているかどうか、逐一、労働福祉事業の1つひとつの項目ごとに、その是否とか、少し効率が悪くなっているのではないかという議論をさせるというなら、それはそれでもいいです。その代わり、必要な資料を改めて請求しますから、それを出してもらわないと、これだけの資料で、これでいいか、悪いかと言われても、責任のある結論は出せないと思います。

○ 座長
 今日は、労働福祉事業の4事業でそれぞれ行っている事業について、一応御説明いただいたので、その事業について、問題点といいましょうか、そういうものをひとわたりまず伺っていったらどうか、ということで提供しているのだと思います。

○ 委員
 それならそれでいいです。

○ 事務局
 いずれにしても、労働福祉事業の4事業、あるいはもっと全体枠組みも含めてかもしれませんが、どういうふうに考えるべきか、できるだけ整理して、次回、論点としてまた御提供したいと思います。
 それから、委員の御指摘の点である各論の点です。資料7頁の「各事業別の実施状況」ですが、「振動障害者社会復帰援護金」が、469件(平成10年度)です。

○ 委員
 ということは、(2)と(3)の援護金はなしということですか。

○ 事務局
 (2)の援護金は18件、(3)の奨励金は1件。それから、どういう業種が振動障害に多いかということですが、平成9年度の新規受給者は612人おり、その中で多くを占めているのが建設業の389人、林業が144人、次いで製造業が32人、鉱業が26人、採石業が12人、その他が9人となっております。なお、過去、療養中の人たちなどを見ますと、林業と建設業がほぼ同じぐらいの割合ということです。
 次は「病診連携登録医制度」ですが、これは医療改革の中で、公的病院などの大きな病院は、いわばセンター的な機能、あるいは紹介を受けてやるという方向で考えられている場合が多いのですが、他の町の診療所、あるいは病院と連携して、例えば急性期の難しい患者さんは大病院に搬送するとか、だんだん落ち着いてきた患者さんは、その後診療所に戻すとか、そういったやり方も模索されているところです。労災についても、これは具体的に、こういう制度だと申し上げられるものはないのですが、そういった病診連携を労災病院などを中心にして、どうやって進めていこうかということを検討しています。個別病院では、例えば愛知の旭労災病院のように、非常に地域の医師会などとうまく連携して、病診連携制度がうまくできている所もございます。そういった所をモデルとしながら、全体にどうやって波及させていくかというような考え方です。
 次に、労災病院の再編成で、統廃合をいつまで検討するのかということですが、ずっと検討中ということでいこうという考えはもちろんございません。わりと早い段階で、一定の結論を出さなければいけないと考えておりますが、今はまだ具体的にいつまでに結論を出すという点は申し上げられる状況にはないということです。
 それから「委託」のところの「給食」は、手元に資料を持っていませんので、次回までに調べて御報告したいと思います。以上です。

○ 委員
 今の登録医制度で、旭労災病院がやっている仕組みといいますか、何人ぐらい登録されているのか、次回、あるいは次々回まででも結構ですが教えてください。

○ 事務局
 それでは、次回までに旭労災病院の例について御報告したいと思います。

○ 委員
 お願いします。

○ 委員
 いま議論がありましたように、今後の就業者の動向とか、そういうマクロ的な流れの中で、これをどう考えるかといった部分と、それを踏まえながら、やはりここに書かれているいろいろな労働福祉事業について、これまでの実績と今後を展望したところで評価をする、また、これからどうするかという検証はすべきだと思いますし、そういうことは是非やっていただきたいと思います。
 そういう中で、私がお話をお聞きしている中で、そもそもこの労災保険で、いわゆる事業という意味で、労働安全衛生確保事業の労働基準行政情報システムとか、労働条件等自主的改善対策、あるいは労働条件確保事業の中の勤労者財産形成とか、中小企業退職金共済金といったものまで含まれているわけですが、こういったものが、本当に労災保険の対象なのかどうかについての整理といいますか、その辺を是非1回教えていただきたいなという感じがいたします。何でこういうものがここに入っているのか、ちょっと疑問がございますので。

○ 座長
 4つの事業のうち、もう確保事業のほうまで入っていますので、そこも含めてどうぞ。

○ 委員
 この間、実は立替払についてもそのような議論がありましたが、具体的に教えていただくということで、2、3番などは議論をしておく必要があるのかなと思います。

○ 委員
 4頁に「アフターケア制度」が取られていますが、この医療費は労災特会ということで、通常の健康保険よりも高い点数なり、単価になっていると思うのですが、そういう形で支払われているのかどうか、通常の健康保険よりは高いものなのかどうか。

○ 事務局
 これは労災の療養補償給付と同様の診療報酬です。

○ 座長
 まだ御質問、御意見もあると思いますが、あと4事業全体で、よろしければ援護事業、確保事業等も含めて、当面、意見を申し上げておくということがございましたら、どうぞお願いいたします。

○ 委員
 14頁の「労災就学等援護経費等の概要」の部分と、その次にも全部かかわるのですが、まず先ほど22万人程度という説明があったと思いますが、1〜3級を含めて、年金をもらっている人が何人いるのか、正確に教えてもらいたいと思います。例えば、15頁のいちばん上の行では、「過半数以上が60歳を越えている」というふうに言われていますので、年金受給対象者は何人かということが1つです。
 14頁に戻りまして、この事業の関係についても、「日額が1万6,000円を超えないものを対象とする」ということになっていますが、例えば障害が残って、療養されておられる方の生活問題と、遺族ということで年金をもらっている方では、少し状況が違うと思うのですが、こういうものがどういう基準で決定され、不公平感はないのかどうなのか、というようなことは極めて重要な問題だと思いますので、それは経緯も含めて、少し教えてもらいたいと思います。
 それから、労災年金相談の関係も、労災年金の相談件数は多いのですが、これだけの予算を使っていて、特別に窓口を設けてする必要があるのかどうか。この種のものについては、通常の監督署でもできるはずだと思いますが、監督署と特別相談窓口とのダブリというものはどうなっているのかということです。
 次に、22頁の後楽園会館の関係ですが、いまは出資金は非常に少なくなっていますが、民業圧迫という問題との関係で、このようなものが引き続き必要かどうか、その存在を知っているものだけが利用しているというようなこの種の施設は、今後いち早く民間委託をしていくといいますか、そういうことが必要ではないかと考えられます。また、それを労働福祉事業費で持っていくという必要性はどういうふうに考えておられるのかということなどを確認しておきたいと思います。
 次に、問題の大きいと考えられる地域産業保健センターですが、50人未満の小規模事業場の労働者対策、そして経営者対策という意味では、設置するときには大きく意義があると宣伝をされてきて、既に相当の予算がつぎ込んであるわけですが、その活用状況については、あまり芳しくない。何カ所か行きましたが、ほとんど開店休業の状態であると判断しております。そういったものに対して、さらに予算をつぎ込む必要性についてどう考えておられるのか。
 次に、安全衛生情報センターについてですが、他の事業と非常にダブリ感があって、あまり有効に機能していないのではないかと判断されますが、これについてはどうお考えなのか。
 次に、小規模事業場等団体に対する援助事業の関係ですが、なかなかその成果が目に見えないというように判断しますが、これまでの適用を受けた事業場において、適用を受ける前と後では、どういうような変化が起こっているのか、過去数年間にわたってのデータを提示してもらいたいということです。
 それから、労働基準行政情報システムというものも、平成10年10月から全国で稼動、実施しているということですが、平成9年に出されたこれらについても、労働福祉事業としてやるということ、そしてその中身について相談を受けた記憶はないのですが、これは閣議で決定されたからやるということになったのか。審議会で諮った経緯があればその資料をもう1度提出していただきたいと思います。
 先ほど指摘がありましたが、労働条件等自主改善推進事業の関係など事業団体を通じて活動を展開しているものの、実績というものについて。座長は「各論で議論する」と言われたので、事業団体等に給付している各事業団体の給付実績と活動実績について、是非出していただきたい。そうしなければ、責任ある考え方はまとめられないと思いますので、差しあたり、たくさんありましたがお願いしたいと思います。

○ 座長
 かなり多項目にわたって、御質問と御意見がありましたが、時間がまいっておりますので、事務局側でいまお答えできるものと、次回までに資料を整理するものがあると思いますが、今日お答えすることはございますか。

○ 事務局
 年金受給者数は正確には、平成9年度で21万4,489人です。詳細、年齢別とか、あるいは等級別等々については、次回に提出したいと思います。
 それから、労災就学援護金で、1万6,000円を上限としていること、これが障害補償年金と遺族年金の場合で不公平感があるのではないか、という御指摘についてですが、次回までに整理してお答えしたいと思います。
 18頁の「年金相談」については、監督署でできるのではないかということですが、先ほど申したように、だんだんケアとか、介護といった相談も増えていますので、監督署ではなかなか対応できない相談内容も多いということで、こういった相談窓口を作っておく必要があるのではないかと考えております。
 それから、後楽園会館を民業との関係でどう考えるかということですが、説明でも申したように、いわゆる公的宿泊施設の在り方については、経営の在り方も含め、今後見直さなければいけないという認識を我々も十分持っておりまして、そういう方向で検討したいと思っております。
 地域産業保健センターの今後の活性化をどうするか、予算をさらにつぎ込む必要があるのかどうか、安全衛生情報センターは他の事業と重複しているのではないか等々については、次回までに整理して御報告したいと思います。
 28頁の小規模事業場の関係ですが、過去の成果がなかなか見えないのではないかということですが、この事業自体については平成11年度からです。2年サイクルで実施するということですが、いま委員が御指摘のように、成果が見えるような形で事業を実施していくといったことが今後は重要かと思いますので、そういった点を踏まえて、事業を実施してきたいと思います。
 29頁の労働基準行政システムは、審議会等でどういう報告がなされたかどうかは、全体を報告する中で予算も御報告しているかと思いますが、経緯を調べて次回までに御報告したいと思います。
 次に31頁は、労働条件等自主的改善対策推進事業だけではないかと思いますが、事業主団体に給付されている助成金等々がどういう形で活用され、実績を上げているかどうか、これもできる限り次回までに整理して御報告したいと思います。

○ 座長
 ただ今、口頭で回答があった点について、まだ御意見がおありだと思いますが、これは次回に保留していただいて、あとは資料等で次回、提出したものを含めてまた御意見がありましたらお願いしたいと思います。

○ 委員
 次回もまた質問をしてお答えをいただくということも結構ですが、できれば質問だけさせてもらって、次回までに整理していただくということをしたほうが、事務局のほうも用意もしやすいということだと思いますので、私とすれば質問だけさせてもらいたいのですが、いかがですか。

○ 座長
 時間が延長になるかもしれませんが、御了承をいただければ質問だけ伺っておくということでよろしいですか。それでは簡潔にお願いいたします。

○ 委員
 15頁のところで、先ほど入居対象者について、(1)の対象ということで、3万2,000人という説明がありましたが、60歳以上の(1)と(2)を組み合わせると、対象者が何人ぐらいいるのか教えていただきたいと思います。
 次に20頁の「労災診療費の貸付事業」の関係ですが、審査を行っているのは、事務的な審査を行っているにとどまるわけですが、内容の審査はどこでやっているのか。内容の審査の実績はどの程度あるのか。社会保険診療報酬支払基金のほうですと、それなりの実績が出ていたり、あるいは健康保険組合でも実績が出たりしているのですが、労災保険の関係での内容の点についての実績、返戻がどういうふうにあったとか、あるいは査定があったとか、その辺がどうなっているのかということを、データがあれば教えていただきたいと思います。
 次に26頁のところで、地域産保センターが全国配置になり、さらに平成10年度から24カ所ずつ機能強化ということですが、結局、24×5で打ち止めになるのか、そうすると残りの所はどうなのかということが出てきそうな感じがするのです。結局、今までの全国配置でどれだけ実績が上がっているのかどうかとのかかわり合いにもなってくるのですが、何でも広げればいいというものではなくて、それなりの費用対効果というものの積み重ねがあって、抜けている点がどうかということだと思うのです。ここのところの計画、機能の拡充についての考え方について教えていただきたいと思います。
 次に31頁の(3)として、労働条件等整備支援事業がございますが、毎年1団体という事業実施する必要があるのかどうか、具体的にどういう団体が指定されて、どういう事業をやられたのか、それを教えていただきたいと思います。
 次に32頁のところで、研究所が独立行政法人化の予定になっているようですが、独立行政法人化した場合、財源は変わるのかどうなのか。
 次に38頁の産医大の関係のところですが、いま産医大の場合の授業料の水準は、国立大学の医学部とか、あるいは私立の医科単科大学などの水準と比べて、どれぐらいになっているのか。卒業生の1,500人のうち、多くは産業保健関係ということですが、具体的に最も最近の年度において、卒業者のうち、何人が産業医になっているか、あるいは産業医以外でも、産業保健関係に就職している人もいると思いますが、労災病院なら労災病院とか、そういう具体的な内訳を明示していただきたいと思います。
 立替払についての説明があったのですが、前回諮問の関係があった特例措置の省令の関係は、いまどういう手続きに進行されているのか。公布になったかどうか、まだ私はわかっていないのですが。

○ 事務局
 8月13日官報登載で、即日施行でございます。

○ 委員
 わかりました。それから財形制度について、41頁にありますが、労災特会と雇用勘定と折半で負担しているわけですが、要するにその特会以外の収入があって、労災保険と雇用保険のほうから支援しているということになると思いますが、あるいはそうではなくて、労災特会だけで賄っているかもしれませんが、雇用促進事業団が事業する場合の収入の内訳といいますか、一般会計からの補助があるということであれば、それはそれでどれぐらいかということも教えていただきたいと思います。
 最後に44頁のところですが、監督署、あるいは労働基準局長の個別紛争の相談事業の昨年度の実績はどれぐらいあって、そのうち単なる相談の受付けにとどまるものと、助言・勧告というものも確かあったと思いますが、その助言とか、勧告というのは、何件ぐらいあって、どういう事案について勧告が出ているのか、その辺について実績を教えていただきたいと思います。以上です。

○ 座長
 ありがとうございました。それでは時間も大幅に延びましたので、お答えは次回、口頭ないし資料でお願いしたいと思います。本日はこれで終わりたいと思いますが、4事業の現状について、まだ御意見等もおありの方もおられると思いますので、次回に引き続いて現状についての意見交換、そして次回は将来の労災保険制度の基盤になるデータについて、必要なデータを事務局から提出していただくということと、さらに今日予定していた未払賃金立替払事業の在り方、あるいは労災病院の問題等についても、意見を問われておりますので、この辺も意見交換ができればありがたいと思います。そして時間が許す限り、労働福祉事業の全体の今後の在り方と、それに必要な財源確保の問題についても、できれば議論をさせていただきたいと思いますので、よろしく御準備いただきたいと思います。
 次回は9月13日(月)15時からを予定しておりますので、大変お忙しいとは存じますが、是非御出席いただきたいと思います。なお、前回の小委員会の際に、事務局から小委員会を定例会化したらどうかということの提案がございましたが、それはどうなりましたか。

○ 事務局
 その点については、各委員の皆様の御都合をお聞きしたのですが、残念ながらお忙しい方が非常に多くて、なかなか定例化するということは難しいような状況です。そこで、今後のスケジュールについては、できるだけ委員の方に多く参加していただける日を選んで、御相談させていただきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。

○ 座長
 それでは10月以降の開催日程について、事務局で前広に調整をしていただきたいと思います。本日は長時間どうもありがとうございました。


照会先
労働基準局労災管理課


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