| 議事
○ 会長
ただいまから、労働者災害補償保険審議会を開催いたします。
本日は、岸委員、田中委員、久保委員が欠席されております。金城委員は間もなく到着するかと思います。
議事に入る前に、事務局に人事異動がありましたので、自己紹介をお願いします。
○ 事務局
4月1日付で労災保険業務室長を拝命いたしました池澤と申します。どうぞよろしくお願いします。
○ 会長
ありがとうございました。
議事に入ります。本日は、「労働者災害補償保険法及び労働保険の保険料の徴収等に関する法律の一部を改正する法律案要綱」についての諮問です。まず、事務局から説明をお願いします。
○ 事務局
諮問書が1枚ございます。内容は、1枚おめくりいただきまして、「労働者災害補償保険法及び労働保険の保険料の徴収等に関する法律の一部を改正する法律案要綱」です。第1点目は、「労災保険法の一部改正」です。その内容の1は、「目的の改正」です。従来の「業務上の事由、又は通勤による労働者の負傷等に対する補償」の次にありますが、「並びに業務上の事由による労働者の脳血管疾患又は心臓疾患の発生の予防に資する」ということを新たに付け加えるということが改正の内容です。
改正の2点目としては、「二次健康診断等給付の創設」です。建議の段階では、「健 康確保支援給付」というようになっておりましたが、給付の内容等に則して、「二次健康診断等給付」というような名称にしています。
この「二次健康診断給付の対象になる人」ですが、まず、「労働安全衛生法第66条第1項の規定による健康診断又は当該健康診断に係る同条第5項ただし書きの規定による健康診断のうち、直近のもので、血圧検査、その他の厚生労働省令で定める検査が行われた場合において、労働者がこれらの検査のいずれの結果にも異常の所見がある」という場合です。
具体的には、労働安全衛生法第66条第1項というのは、原則年1回の健康診断等を義務付けた規定です。特定の業務、あるいは作業を行っている労働者については年2回の健康診断を義務付けています。
同条第5項ただし書きの規定というものは、企業がいわばセットしました健康診断については、自分としては受けたくない場合に、自分が医療機関なり検査機関へ行き健康診断を受けて、その結果を企業のほうに提出するという場合の、いわば例外的な健康診断です。
そういった健康診断を労働者が受けて、これを「一次健康診断」と称していますが、その健康診断で、血圧検査、その他省令で定める検査ということで、建議の段階等々で御説明してまいりましたように、血圧、血糖値、血中脂質、肥満の4つの検査について、いずれも何らかの異常有所見がある、といった労働者を対象にするということです。
「当該労働者」の下にカッコがあって、「当該一次健康診断の結果その他の事情により脳血管疾患又は心臓疾患の症状を有すると認められるものを除く」というふうにしておりますが、これは、もうすでに一次健診の結果、脳・心臓疾患が発症しているという場合には、業務外であれば、健保で治療する、それ自体が業務起因性があると認定されれば労災の療養の給付が出る、ということです。もうすでに脳血管疾患又は心臓疾患の治療が必要という方については、この給付の対象にしない、ということを明確にしたということです。
(二)は、この二次健康診断等給付の範囲です。建議の段階等々で御説明してきましたように、一つは、必要な二次的な健康診断です。一つは、そういった健康診断の結果に基づいて行う保健指導です。健康診断のほうは、イにありますように、「脳血管及び心臓の状態を把握するために必要な検査であって、厚生労働省令で定めるものを行う医師による健康診断」ということで、従前から御説明してきましたけれども、心エコーとか頚部エコー、あるいは空腹時の血糖値の検査、あるいは空腹時の血中脂質検査等々を省令で定める予定です。保健指導については、運動面、栄養面、生活面の指導を医師、保健婦等が行うということです。
(三)は、先ほども、すでに発症している者は、もう対象にしないという考え方と同じで、その二次健康診断の結果、もうすでにその脳血管疾患あるいは心臓疾患が発症しており、むしろ治療が必要である、というふうにされた者は、この給付の保健指導を行うことなく治療の世界で対処する、という考え方を明確にしました。
三は、「二次健康診断等給付を受けた労働者に係る措置」です。従前から申し上げておりますように、この二次的な健康診断を受けて、その結果を事業主に報告し、すでに労働安全衛生法上、その定期健康診断の結果、有所見がある労働者には、その医師の意見を聞いて、何らかの事後措置をとる、ということが企業に義務付けられているわけですが、それをより適切な事後措置あらしめよう、という趣旨を明確にしたものです。
ここにありますように、「二次健康診断等給付を受けた労働者から、二次健康診断の結果を証明する書面が提出された場合における当該労働者に対する事業者の措置に関しては、労働安全衛生法の関係規定による」ということです。労働安全衛生法の関係規定というのは、その66条の4、66条の5で、「有所見があった労働者については、医師の意見を聞いて、適切な事後措置をとる」という規定の内容です。
次の頁に移りまして、四、「その他、所要の整理を行う」ということで、字句修正等です。
改正の大きな第2点としては、「労働保険の保険料の徴収等に関する法律の一部改正」です。その1点目は、「一般保険料の保険料率の設定方式の改正等」です。
(一)にありますように、「厚生労働大臣が、その一般保険料に係るその保険料率を決める」と長々と書いてありますが、労災の保険料率を決めるという場合ですが、従来、過去3年間の災害状況であるとか、ほかの給付に要する費用の額とかいったものを考慮して決めることになっているわけですが、そのほかに、「二次健康診断等給付に要した費用の額を考慮する」ということを付け加えるということです。
(二)は、この新しい二次健康診断等給付とメリット制との関係です。この二次健康診断等給付自体は、企業の災害防止努力とは別次元の問題であろうということ、この二次健康診断等給付自体が将来の過労死の発生の予防に資する、という趣旨で給付されるということから鑑みれば、そのメリツト制の算定に当たって、その基礎から除外することが適当であろうということです。これを除外しないでおくと、この新しい給付を労働者が利用すると、その企業の収支率が悪くなるわけで、そのメリットの適用に当たって不利になるということとなり、そういったものを避けるという目的です。
大きな2点目としては、「有期事業に係るメリット制の改正」です。建設業とか林業については、現在、他の産業が±40%の範囲でメリット制で増減するということになっていますが、これを特に建設業などを念頭において、現行の±30%から±35%に拡大する、という改正の内容です。
(三)の「その他」については、やはり字句修正、あるいはその条文のずれを調整するという整理です。
第3点目、「施行期日」ですが、新しい労災保険料率の設定と併せて、平成13年4月1日から施行するということです。お諮りしている「労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律案要綱」の内容は以上です。
○ 会長
ありがとうございました。次に、ただいまの事務局からの説明について、御意見 ・御質問を承りたいと思います。
○ 委員
ただいま諮問されました労働者災害補償保険法の改正に関連して、特に保険料の徴収に関する有期事業のメリット制の問題について、答申書に具体的に記載をしていただきたい、という項目がありますので、許しを得て資料を配付させていただいたうえ、御意見を申し上げたいと思います。
○ 会長
よろしくお願いします。
(資料配付)
○ 委員
検討委員会を設けて、「労働者災害補償保険法の改正問題」について検討してきました。基本的には、こうした改正について是とするという立場でいくつか御意見を申し上げたいと思います。
まず、第1点は、この「一次健診診断結果等に係る給付の創設問題」です。私どもは、これまで、今日作業スピードが非常に上がっているということや、業務態様や職場における人間関係の複雑化、多様化等に関連して、心疾患あるいは脳疾患に関連をする職場での災害に結び付く事例が非常に多いということから、これをいかに有効に予防するかという視点で、この法律改正を求めてきたものです。
使用者側委員からは、健康保険での診断による私傷病との区分けが非常に付けにくいとの意見があった、ということは十分承知していますが、そうした議論経過もあって、その対象の範囲が非常に制約されたということと、手続が複雑になったということを危惧しているわけです。是非ひとつ、こうした法改正のあとは、これがそれぞれの職場で有効に機能する新しい行政指導というものがなければならない、ということを考えているということを、まずもって申し上げておきたいと思います。
2つ目は、資料を配らせていただきましたが、建設業のメリット増減率引上げに関する労働側としての意見です。これまでも申し上げましたように、建設業の業務実態、形態などは、もう説明をするまでもないわけですが、協力企業、専門業者、専門企業の製造構造と言いますか、生産構造において、そういうものが非常に複雑になっているわけです。そういった業態からして、親企業、元請企業から強制をされなくとも、親企業の安全成績を向上させたい等の意図から、自ら下請協力企業の事業者が労働災害をかくすということが増える、ということを私どもは危惧しているというのは、これまでの議論の中で申し上げたとおりです。文書では、そこらあたりを整理をしています。
そうした気持ち、危惧の念が拭いきれないまま、これを答申するということについては、必ずしも問題がないとはいえない訳ですが、前回の委員会も含めて、そこらあたりの議論と対応策について検討をしていただきましたので、今後そうした意見がある、賛成できないという意見がある、ということを前提に、これに応えるために、前向きな安全管理体制であるとか、あるいは指導であるとか、そういったことを確実に実施していただきたい、というのが今回の私どもの意見ですので、賛成はできません、とは言いませんが、そういう意見を、単なる危惧に終わらせるような事前の対策、体制というものをきっちりと取っていただきたい、ということを是非、答申の中にこういう意見があるということを明記して、答申をお願いしたいということです。よろしくお願い申し上げます。
○ 会長
ただいまの委員の御発言、いただきましたメモについて、何か委員の間で御意見がありましたら、お願いします。
○ 委員
後段の「建設業のメリット増減率の引上げの問題」についてですが、メリット率の増減の問題と労災かくしの問題とは直接、密接不可分という関係ではないのではないかなと思います。ただ、現実の問題として、一部の事業者の中に、この労災のメリット率のことも考えながら、労災かくしを行うという不心得な者がいるのは事実ですので、行政側できちっとした対応措置をとっていただく、ということは必要だと考えています。
○ 会長
いま労働側から出された御意見について、そのほか御発言はありませんか。
○ 事務局
メリット幅の拡大に伴って、労災かくしが論理必然的に行われるとは思ってない、というのは従前から御説明してきたとおりですが、ただ、メリット幅を拡大すれば、労災かくしがさらに起こるのではないか、という懸念については、私ども十分に理解できるところです。これも、従来からこの審議会で御説明させていただきましたが、労災かくしについては、さらに対策を拡充する方向で今後検討していきたいと考えています。
○ 会長
ありがとうございました。ほかの問題についてどうぞ。
○ 委員
ただいま諮問があった事項は、大きく分けると「二次健康診断等給付の創設」と「建設業のメリット制の改正」と言いますか、「有期事業に係るメリット制の改正」の2点だと理解いたします。前段の「二次健康診断等給付の創設」については、私どもとして、種々意見のあるところですが、諸般の事情を考慮して、この給付の創設はやむを得ないもの、と考えています。
ただ、質問事項がいくつかありますので、教えていただきたいと思います。まず、第1番目は3頁の(二)のイとして、カッコの中で、「1年度について1回に限る」と規定されようとしていますが、この「1年度」というのは、会計年度と言いますか、4月から3月ということでいくのか、各企業における事業年度とか、健康診断における1つの年度とかいうものでいくのかどうかという点が1点です。
2点目が、ロとして、この法律の規定上は、「保健指導」という言葉が使われるわけですが、先ほどの御説明の中で「運動、休養、栄養の3つの保健指導」と、従来からそういう御説明をしておられたわけですが、法律的にも、その3つのことを指すということでいいのかどうかという点を教えていただきたいと思います。
4頁の第二の一の(一)のところですが、「二次健康診断等給付に要した費用についても考える」ということですが、現状において、労災保険の保険料率は4つに構成されているわけです。「災害率」、「通勤災害の分」、「労働福祉事業の分」、4つ目が「過去勤務債務」と言いますか、「積立て不足分への対応」という4つで構成されているのですが、今度の二次健康診断等給付の関係は、その4つのどこかの中に入るのか、それとも、いわば5つ目として位置付けるのかという点です。
ちょっと細かい点ですが、今後の方針みたいなことにも係わるわけですが、今度のこの諮問案によると、ある部分というのは、厚生労働省令に委任されるわけですが、その厚生労働省令について定めようとする時は、この労働者災害補償保険審議会に諮問というようなことが行われるのかどうか。
最後に、先ほど御説明いただいた労働安全衛生法関係の規定、事後措置の関係について、この二次健診の結果についても事後措置が必要である、というふうになるわけです。ということは、労働安全衛生法の、いわば実質的な改正ということになるとすれば、この労働安全衛生法のそもそもの所管の審議会、中央労働基準審議会にこの労働安全衛生法への影響の部分についてどういう取扱いをするのかというあたりについて、お答えいただきたいと思います。
○ 会長
いまの5点についてお願いします。
○ 事務局
最初の3頁の「1年度」と書いてあるのは、意味合いとしては、保険年度ということで、要するに、労災保険の保険年度です。具体的には4月から3月になります。これも、建議の段階で御説明してきましたが、この新しい給付については、原則、1年1回の定期健康診断をベースにしているというようなこと等々、あとは労働者の健康についての自己管理責任というのも重要ということも踏まえて、1年に1回ということで給付する、という考え方を説明してきましたが、それを、いわば保険給付を行う会計上、1年度1回ということで縛ったという意味の文言です。
「保健指導の内容」は、法律文上は、その「保健指導」ということしか出てこないのですが、内容的には、委員がおっしゃいましたように、運動とか栄養とか 生活とかいった面に当然なってくるだろうと考えています。
次の頁にまいりまして、「保険料の算定に当たって考慮すべき要素」ですが、いまの、「4つある」という御指摘がありました。確かにそうです。今回、この「二次健康診断等給付に要した費用の額を考慮する」ということについては、ちょっと要綱の説明上省略してしまいましたが、「この「二次健康診断等給付」というのは、目的も新たに追加しておりますように、従来の業務上の災害あるいは通勤災害に係る給付とは別立てで設定するものです。そういう意味合いのもので、料率の設定に当たっても、いわば5つ目の考慮する要素として、この条文に書き加えるということです。
「いくつかの点を厚生労働省令で定める」ということになっています。タイミングがどうなるかは未定ですが、周知に必要な期間を3カ月程度あるいは2カ月程度と考えれば、できれば年内、あるいは、年を越しますと、労働厚生省となりまして、審議会のあり方も変わるのですが、年内であれば、本審議会に諮問するということに当然なります。場合によって、年を越すということになれば、労働省の関係の審議会は「労働政策審議会」ということで、大きく1本になります。ただ、この労働者災害補償保険法の政省令を定めるに当たっては、その審議会の意見を聞くというような機能は当然残るわけで、労働政策審議会の関係部会がどうなるかということもありますが、労働政策審議会あるいは労災の問題を所管する新しい審議会の部会のほうに諮問する、ということに当然なるだろうと考えておりますので、当然諮問することになります。
5つ目の「労働安全衛生法の問題」です。先ほども御説明しましたが、定期健康診断で有所見とされた者について、すでに労働安全衛生法上、医師の意見を聞いて、適切な事後措置をとる、という義務がすでに現行の安全衛生法上かけられています。今回、いわば、より適切な事後措置を講ずるに当たって、その二次健診の結果も考慮してください、ということになるわけで、そういう意味では、新たに義務を創設するということではないのではないか、と我々は考えていて、中央労働基準審議会との関係では、適当な時期に労働者災害補償保険法をこのように改正します、ということを報告したいと考えています。
○ 委員
関係の省令を定める時には、その段階でまた意見を述べさせていただきたいと思います。なお、今回の諮問の2つ目の大きな柱の「有期事業に係るメリット制の改正」の事項については、使用者側としては賛成です。
○ 会長
本日の諮問について、そのほか御意見はありませんか。
○ 委員
「労働安全衛生法との関係」について教えていただきたいのですが、まず出発点の質問としては、この部分については特に労災保険法を改正するということではない、ということの趣旨と理解しましたが、それでよろしいのか、それとも労災保険法は改正するということなのか。
もう一点、もし労災保険法でこの趣旨の条文を入れるとしますと、他方、これを受けた労安法の規定のほうはすべて66条の規定を受けての実施後の措置とかになっていますが、そうすると、この「二次健康診断」というのは、労安法上、66条の健康診断の一環であるという理解になるのでしょうか。そこを教えていただけば、ありがたいのです。
○ 事務局
考え方としては、この要綱にありますように、「二次健康診断の結果、企業に提出された場合には、その労働安全衛生法の関係規定による」ということで、「医師の意見を聞いて、事後措置を講ずる」ということになります。
このケースの場合、法技術的にどのように法律に取り組むか、という点の御質問だと思います。いま考えていますのは、労災保険法の中に安全衛生法の66条の4という規定がございますが、これは「健康診断の結果について、その医師の意見を聞くこと」という条文ですが、それは読替え規定を労働者災害補償保険法の中で規定する、と考えています。具体的には、健康診断のほか、この労働者災害補償保険法の給付を使って、二次健康診断の結果を、「医師の意見を聞いて」というふうに考えていまして、要するに、この労災の給付を使って二次健康診断が企業に提出されない場合には、いまの労働安全衛生法の規定の流れでいくということですが、この給付を使って二次健康診断を受けて、それを企業に提出されたという時は、その労働安全衛生法ではなくて、労働者災害補償保険法の中に、法技術的に読替え規定を置くということで、いま法制局と調整を行っています。
○ 委員
すると、労災保険法の中にその保険給付や福祉事業などとは違う内容の規定が入る、ということですね。
○ 事務局
そうです。
○ 委員
そうしますと、最初の2頁の「目的の改正」のところで、「必要な保険給付を行う」 というふうに当初定義されているものの枠を越えませんか。
○ 事務局
さらに技術的になるのですが、いま労働者災害補償保険法は、法令集を見ていただきますと、労働総覧の1,697頁に労働者災害補償保険法があります。いま、目次のところを見ていただければと思いますが、その保険給付として、一般的に給付金基礎日額をどうするとかいうのはその通則で書いてあります。業務災害についての給付を第2節で書いて、通勤災害に関する給付は第3節で書いています。今回の新しい給付は、節を新たに設けて、第4節で書くということです。ですから、大きな第3章の「保険給付」の中にさらに1節を作って、この新しい「二次健康診断等の給付」を書くという考え方です。その中に、いわば安衛法の読替え規定の「義務」を創設するということではなくて、いわば手続の一環的なものとして、ここに書き加えるということで、章としては「保険給付」の中で書くということですので、その枠を越えるということにはならないのではないか、と考えています。
○ 委員
それは保険給付なのですか。
○ 事務局
「目的」のところで書いていますように、「業務上の事由による発症の予防に資するために、給付を行う」と書いています。要するに、業務上の事由によって発症することを予防しなければ、この給付は給付と言えないわけです。そのために、法制的に、その安衛法との分事規定をおくことによって、それを担保するということです。要するに、それがないと、単なる健康診断促進給付になってしまうわけですから、そういうことで、「範囲を越えるものではない」ということで、法制局とも相談しました。
○ 委員
ただ、保険給付の中に入れてしまいますと、例えば第1節の「通則の規定」の適用が出てくるのではないかとか、法技術的にはちょっと何かややこしい問題、解釈上の問題を提起しかねないのではないかという懸念はあるのですが、この事業者の措置というのが、結局、保険給付だと捉えられかねないのではないかという気が、法技術的にはいたします。
○ 事務局
その点については、法制局とも十分議論しておりますが、特に通則との関係で問題になるということにはなりません。
○ 委員
労働安全衛生法の問題に引っ掛りそうな気がするが。
○ 会長
若干、私も疑問なしとはしませんが。
○ 委員
いや、私は特に拘りません。いま法制局と十分調整なさっているということですので、了承します。
○ 会長
そのほか御意見はありませんか。ないようでしたら、答申の案文をどうするかという問題は、これから原案を作らせていただきたいと思います。つまり、労働側委員からこういう御意見が出ましたので、それも含めたものにしたいと思いますが、ここでまずお諮りしたいのは、諮問のあった件について、本日、その答申をすると。いま言いましたように、案文についてはこれからですが、そういう方向でよろしいですか。
(異議なし)
○ 会長
それでは、本日、答申をするということで、大変恐縮ですが、本日の議論を踏まえたものを用意したいと思いますので、暫時休憩とさせていただきます。私と事務局のほうと、恐縮ですが、会長代理にもお入りいただいて、文案を作りたいと思いますので、ちょっと休憩をさせていただきます。
(休憩)
○ 会長
答申の案文ができましたので、議事を再開させていただきます。まず、事務局に案文を配付してもらいます。
(答申案文配付)
○ 会長
案文の配付が終わりましたので、案文を事務局のほうから読み上げていただきます。
○ 事務局
読み上げさせていただきます。
「労働者災害補償保険法及び労働保険の保険料の徴収等に関する法律の一部を改正する法律案要綱について(答申)」。平成12年4月4日付労働省発基第83号をもって諮問のあった標記要綱については、当審議会はこれを了承する。なお、有期事業に係るメリット制の改正に伴い、いわゆる労災かくしの増加が懸念された。こうした点も踏まえ、建設業の元請の安全管理体制の強化・徹底等の措置を講ずるとともに、同業界に対する指導を徹底することが必要と考えるので、行政当局において所要の措置を講じた上、その内容について当審議会に報告することとされたい。以下、省略させていただきます。
○ 会長
ありがとうございました。答申の文案については、ただいま読み上げた内容でよろしいでしょうか。お諮りしたいと思います。御意見がありましたら、お願いします。特に御意見がないようですので、答申の文案をこのように確定させていただきたいと思いますが、よろしいですか。
(異議なし)
○ 会長
ありがとうございました。答申はこれで終わりましたので、事務局からご挨拶をいただきます。
○ 事務局
昨年夏以来、長きにわたり大変真摯な御議論をいただきまして、まことにありがとうございます。その結果、今日の法案要綱を御答申いただきました内容になったわけです。
今後のスケジュールについて一言申し上げておきます。今週、この審議会以外に、こういった制度については、社会保障制度審議会のほうにかける必要がありますので、6日7日と社制審のほうに諮問、答申という運びでもっていきたいと思っています。
そういった手続を終えて、その先、国会に提出するということが残るわけですが、現在のような御案内のとおりの国会の状況で、いろいろ流動的なことが考えられると思っています。ただ、折角御答申いただきました重要な内容ですので、少なくとも来年4月1日の施行に間に合うように国会に提出し、御審議いただき、御了承いただきたいと思っています。
いずれにしても、政府側の最高責任者の総理が過労で倒れられるという事態になったことを考えますと、過労死対策ということでやってまいった私どもとしては、ある意味で、感無量な感がいたすわけです。今後とも省令その他、先ほど御議論がありました労災かくし問題等を含めて、また御配慮をわずらわせる機会があると思っていますので、今後ともよろしく御議論いただきたいと思っています。ありがとうございました。
○ 会長
本日はこれで終わりにしたいと思います。どうもありがとうございました。
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