第154回中央労働基準審議会労働時間部会及び第48回
中央労働基準審議会就業規則等部会合同会議 議事録



1  日時 平成10年1月26日(月) 14:00〜16:00
2  場所 労働省特別会議室
3  出席者
   (委員)
公益代表  小粥座長、諏訪委員、高田委員、野原委員、(花見委員)
労働者代表 大山委員(代理 早川)、落合委員、松井委員、
 松浦委員、三木委員、持丸委員、矢富委員
使用者代表  浅地委員(代理 近藤)、(大西委員)、岡本委員、
 丹野委員、福岡委員、水野委員、山本委員(代理 橋本)
 (括弧内は労働時間部会及び就業規則等部会以外の中央
 労働基準審議会委員)
  (事務局)   伊藤労働基準局長、坂本審議官、戸苅賃金時間部長、青
 木監督課長、森山労働時間課長、杉浦企画室長、馬場主
 任中央労働基準監察監督官、渡延企画官
4  議題 「労働基準法の一部を改正する法律案要綱」について
5  議事別紙のとおり


(別紙)

○座長
 定刻になりましたので、ただいまから中央労働基準審議会労働時間部会・就業規則等部会合同会議を開催いたします。本日の議事は、前回23日の合同会議の最後にお話ししたように、一応前回、労使各側の意見をそれぞれ開陳いただいたわけですが、なお追加すべき意見、あるいは締めくくり的意見があれば、今日それを開陳していただいて、そのあと報告案の取りまとめに入りたいと思います。
 初めに追加補足的意見又は締めくくり的意見が労使各側でございましたら、それぞれ御発言いただきたいと思います。

○委員
 契約期間の上限について新製品・新技術の開発等に必要な専門的な知識・技術という表現がありますが、それについてなお不十分なのではないかと思っております。これから答申をまとめるに当たっても、この項目が極めて不明りょうであるということから、私どもは判断を少し迷っておりますので、できればその規定ぶりについての考え方を、もう少し具体的に説明していただきたいと思います。

○事務局
 まず、契約期間については、労働大臣が高度の基準を定めるということになっているわけです。その基準については、この前も申し上げましたように、大学院博士課程を出ているかどうかといった学位とか、あるいは当該知識を使って当該業務を行っている経験年数などを加味したメルクマールとすることを一つ考えています。
 もう一つ、専門的な知識、技術等が必要な開発というのはどういうものだろうかという観点から、つまり、ある開発を行うために具体的に必要とされる高度な専門的知識、技術又は経験として書くということ、例えば、新型エンジンの開発に必要な専門的知識、新型ワクチンの開発に必要な専門的知識、あるいは音声識別技術の開発に必要な専門的知識といったメルクマールが想定される。この二つがあるかなと思っています。
 技術の陳腐化という話も議論されたわけですが、これは、ある知識が本当に新技術等の開発に必要であるかどうか、具体的に検討していくことになるのではないだろうかというふうに思います。ということで、ただいまのところ、二つのメルクマールが考えられると思います。

○委員
 今のは、製造技術についての例示ですね。業務の特性に応じたものの考え方をするものだと私は理解しています。契約期間の上限の延長が、今後緊急に、かつ、極めて重要になる分野は、金融です。単に金融商品云々というレベルの話ではなくて、日本の銀行業界が全部根こそぎ駄目になってしまうのではないかというような心配が多分にあるわけです。なぜかというと、製造業でいいますと、例えばトヨタには世界一の技術者がいるでしょう。新日鉄にも、多分世界一の技術者がいるでしょう。しかし、日本の銀行には世界一の技術者がいるのかなと、私は本当に心の底から心配しているのです。これからは、青い目の人であろうとどんな国の人であろうと、どんどん連れてこないと、日本の金融は駄目になってしまうのではないかと心配しています。この4月1日に外為法が改正されることについて真剣に考えるべきだと思うのです。そして、例えば経験年数といった旧来の尺度では測れない、銀行業なら銀行の人に聞いてみないと分からない専門的能力が多分あり得ると思うのです。
 要するに、業務特性に応じて、また、グローバル規模で物事を考えていただかないといけない。私自身も物づくりで育ったものですから、どうしても物づくりに視点が行きがちなのですが、これからは、物づくり以外の世界で大きな変化が起こりそうな気がするのです。またそういうところこそ、ある意味では外から雇い入れなくてはならない、しかも個別の労働契約に非常に馴染むような世界になってくると思うものですから、そこのところは是非よろしくお願いしたいと思います。

○委員
 技術、ノウハウというべきかもしれませんが、そういうものは必ず一般化していくわけです。ということは、この基準というのは、一定の時期に作ったものが永久にそのまま維持されるということにはなり得ず、必ず見直しをしなければならない。放っておけば、何でも自由になってしまうことになるわけです。見直しということについて、労働省としてはどういうことを考えておられるのか、お伺いします。

○事務局
 おっしゃるとおり、新技術や新知識というものは一般化するものであり、また、新しく必要になってくるものもあるわけですので、当然社会の変化とともにきちんと基準を見直していくということだろうと思っています。また、見直しの際には、そういったものを踏まえて基準を定めたときと同じような手続で基本的には考えていくべきものだと思います。

○委員
 新しく加える、一般化したので外す、そういう検討をしていく必要があると理解していいですね。

○事務局
 はい。

○委員
 ここに至る経過の中で、契約期間の上限に関連して契約の解除についていくつか話があったと思いますが、結論らしい結論がないままここに至ったという気がします。そこで伺うのですが、3年の契約期間中、労働者が契約を解除したいという場合、何か要件があるのですか。それとも、辞めたければ辞めてよいという退職の自由が貫かれるのですか。私は後者だと思うのですが。その前に損害賠償が伴ってくるのか。

○事務局
 これは契約期間を定めたお互いの約束で、債務は履行しなくてはいけませんから、勝手に辞める、又は辞めてもらうというのはお互いに言えないということだろうと思います。理論的に言えば、そこで何らかの損害を与えたという場合には、損害賠償ということもあり得ると思います。ただし、実態としては、これまでのところ、労働契約の解除に関して頻繁に行われているということではないと思います。

○委員
 例えば、使用者が契約を履行しない場合、例えば賃金を年俸で定めたとしても、その年俸どおりの金額を払わないと、労働者にとっては、それは辞める理由になると思うのですが、この場合に使用者が労基法上何らかのペナルティーを受けるということがあり得るのですか。

○事務局
 それは、起こり得ます。決めた賃金額を払わないということなら、これは賃金不払いになる。当然のことながら使用者側も労働者側も、民事的に約束は同等に守らなくてはいけないわけですね。その他に基準法上は、使用者が賃金不払いなどをすれば、罰則をもって強制されるということになります。

○委員
 契約期限の上限問題について、国家公務員などは基準法適用除外だからいいと言えばそれまでだけれども、流れとしての問題がありますからお尋ねしておきたいのですが、人事院で高齢者の再任用の問題などの議論をされていて、そう遠くないうちにある程度目鼻が付いてくるのではないかと思うのです。それと同時に、年金などの支給基準の関係もあります。
 今回の60歳以上の労働者について契約期間の上限を延長することが、今後の定年延長の議論の足かせにならないように、是非行政当局に御配慮いただきたいと思うのです。これがあるから、定年についてこれ以上の延長は、となってはいけませんので。

○座長
 それは、事務局に対する要請ということですね。

○委員
 そういう配慮をするという理解でよろしいですね。

○事務局
 はい。

○委員
 時間外労働にかかわる部分について質問でございますが、7(2)で、「その労使協定については、労働大臣の定める基準に適合したものとなるようにしなければならない」ということで、この基準に適合しない労使協定は当然労基法違反となるわけですが、そのときに労基法違反の労使協定の効力についてはどうなのでしょうか。違法かつ無効と言えるのでしょうか。

○座長
 これは、前回大いに質疑も交わされて、一応の答えは出ているのですが、では、改めて事務局から説明してもらいましょう。

○事務局
 これについては、この規定をもって直ちに無効となるというものではないということであります。

○委員
 その理由として、労使協定の効力は監督署に届け出ることによって発生する、受理とか審査にかかわらず届け出ることによって発生する、ということだと考えてよろしいわけですね。

○事務局
 それは先週も申し上げたのですが、(3)にあるように、行政官庁としては適合しない協定があったら、適合したものとなるようにせよという指導、助言を必ず行うということを申し上げているものです。
 ただ、ぎりぎりの話、使用者が届出は既に済ませたと言い張って指導に従わないというケースはあるのだろうと思うのです。そういう場合、それでは指導に従わないからといって届出が無効になるかというと、無効とまでは言えないだろう。したがって、届け出た範囲内の残業について、36協定が基準に適合していないからといって基準法違反の残業であるということにはならないだろう。ただ、少なくとも(2)なり(3)なりに基づく指導というのは、必ずきちんとやるということです。

○座長
 前々回に質疑は終えて、前回は意見をそれぞれ出していただいて、今日は補足的な意見ということでお願いしているわけです。報告案の取りまとめもしなくてはいけませんから、当然前回までの議論は御承知の上で出ておいでになっていると思いますので、前の質問と重複する点はできるだけ省いて御質問いただきたいと思います。

○委員
 あと二つ質問があるのですが、一つは、届出が郵送でなされた場合の扱いはどうなのか。もう一つは、7(3)の「助言及び指導」の中に是正勧告というのは含まれるのでしょうか。

○事務局
 これも前回申し上げたのですが、郵送の場合も当然指導する。ただ、郵送で届いてしまっているものですから、指導する前に届出があったということになる。ただ、必ず指導はする。
是正勧告についてですが、是正勧告というものをどう運用していくかというのはまた考えないといけないのですが、こう書いてある以上、事案によっては当然是正勧告の対象になると思います。

○委員
 全般についての意見でもいいのですか。

○座長
 はい、もう締めくくりの意見ですから。

○委員
 これは前回伺っていますが、もう一度伺っておきます。労働者代表の任期について、任期の制限はないものとするということなのか、それとも「任期を定めなければならない」と省令で定めるということの中には、年限も定めるということなのか。そこはどうだったですか、この間ははっきりしなかったですね。

○座長
 前回の答弁は、「任期は決めなさい。ただし、それを何年にするかというところまで行政として、どうこうは言えません」ということではなかったですか。

○委員
 労使協定をすることによって労基法の罰則が免除されるのでしょう。やはり任期というのは重要だと思うのです。労働組合の場合は、少なくともそこが担保されていると思うのです。年1回総会をやるとか、方針を決めるということをもって、事実上担保されているのです。この過半数代表の選出方法については、任期の年限を何も定めなくていいものなのかどうか。私には、どうしても理解できないのですが。

○事務局
 これも前回申し上げたのと同じ答えになって恐縮なのですが、我々としては、労働者代表の任期について何年ということを基準法で一律に規定するということはいかがなものかと思っています。裁量制について新たに設ける労使委員会の委員についても、必要なら、それぞれの労使委員会で任期を定めてもらうほうがいいのではないかと思っています。
 更に申し上げると、労使委員会については、新しい制度ですから、個々の事業場ではなかなか判断がつきかねるということがあれば、指針の中に適当な任期のメルクマールを示すということも考えられると思いますが、法令で一律に何年以内というところまで決めるのはどうなのかなと思っています。むしろ、任期を定めろということをきちんと言うことが重要ではないかと思います。

○事務局
 補足いたします。いま○○委員の心配されているような点、つまり、省令をどう書くかというのは、またいろいろ御議論いただかなくてはいけないと思っています。私どもとしては、選挙などの民主的手続で選ぶようにせよと定めることにしていますが、選出の際にこの委員は何の権限を持つものとするかという問題があると思います。例えば、有効期間が何年間の複数の労使協定を結ぶ当事者として授権する、あるいはある年度の一つの協定、例えば36協定について授権する。恐らく選挙をやる以上、授権範囲というのを明らかにしなくてはならない。ただ、授権の仕方にはいろいろなパターンがあり得ると思います。選挙等の選出手続を定める省令を作るに当たっては、当然そこを整理しなければならないという気持ちがございます。そこはまた御議論いただかなくてはいけないと思います。

○委員
 今、授権ということを言われましたが、そうだとすると、例えば裁量労働制について一度決議したら、何年かごとに見直しをしなければならないというような規定がないといけないと思うのですが。

○事務局
 いや、もし、何らかの措置をするなら、決議の有効期間としてではありませんか。

○委員
 そうすると、裁量労働制については、「結びました」というだけでは要件を充足していなくて、決議する際に何年間有効であるというようなものも要件の中に入れるということですね。

○事務局
 決議のパターンとしては、大臣が告示で指針を示しますが、その中でそういったことを示すこともあり得るかと思います。

○委員
 ですから、協定なら協定を結ぶについては、当然期間の定めをするということなのですね。

○事務局
 私どもは、指針を示すに当たっては必ず審議会にお諮りします。今は、まだ細部までこうなりますと申し上げられる段階ではありませんが、必ずその点については御議論いただき、有効期間はどういう考え方がいいのかをお諮りして、あるべき姿を指針で示します。

○委員
 授権という概念を入れるとおっしゃるから、やはり期間というものは当然必要になってくるわけでしょう。

○事務局
 あるいはそうかもしれませんね。

○委員
 繰り返しになって誠に恐縮なのですが、7(2)での労働組合の位置付けについてです。「使用者及び労働組合は」と入っていますね。労働基準法においては、労働組合は労使協定の締結当事者として位置付けられていますが、労働組合に義務が生ずるような書き方というのはあまりないと思うのです。「基準に該当するように労働組合が努めなければならない」という規定について、もう一度説明してくれますか。

○事務局
 これにつきましては、そもそもどの条に書くのかというお尋ねがあったわけでございますが、労使協定自体は現行の36条を前提にしているわけです。確かに36条の書き方では、使用者は、使用者と労働組合又は労働者の過半数代表が労使協定を結んだときは、32条の原則的な労働時間を超えて労働させることができる、となっております。その限りで規定の主語は使用者であるわけですが、同時に労使協定の締結主体は明らかに労と使であるわけでございます。
 したがいまして、新たに設ける7(1)の上限基準について適合させるべき責務は、使側だけが責任を負ってやれるものではありません。労使が十分に話し合ってお決めいただくものであるわけです。その仕組みを淡々と法制的に表現した場合、ここにありますように、「使用者及び労働組合又は労働者の過半数を代表する者は、労使協定で延長する時間を定めるに当たり、当該労使協定が(1)の基準に適合したものとなるようにしなければならないものとすること」という表現になるわけであります。現在ある36条の隣にこれを記しましても、当然、項としてはちゃんと書き分けておりますので、直ちにそれが混同されるというおそれはありません。
 また、(3)で「指導、助言を行う」ということ、これは建議にありましたとおり、今回のスキームの中で非常に重要なポイントだと考えているわけです。ここについて法律で書くからには、指導の相手方をはっきり書かなければいけない。そういうことになりますと、ここでも対象としての労使をはっきり書かざるを得ないということであります。
 逆に、(2)で労使当事者というのを書きませんと、(3)の指導規定が成り立たなくなる。結果的に、建議で御提言いただいたことを忠実に要綱化するという方針に背くことになるわけであります。建議の仕組みを忠実に再現しようとしたものであることを御理解賜りたいと思います。

○事務局
 さらに言うと、これも前回そのような話も申し上げたと思うのですが、基準法の第1条第2項を御覧いただくと、「この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない」とあります。労働関係の当事者というのは労使双方です。ですから、労働組合なり労働者代表にこういった責務を課すということは、別に基準法としておかしくない。
 要するに建議の趣旨が、必要な助言・指導を行うということでしたから、助言・指導を行う対象もきちっと書いておかないといけないだろうということになり、労使協定の締結当事者の両方を書くということに当然なると思います。
 さらに、繰り返しになりますが、先ほどの第1条第2項という規定があるので、基準法の在り方からしても、おかしなものではないと思います。

○委員
 具体的な話になりますが、この法律が成立すると、使用者を指導すると同時に、協定のもう一方の当事者である労働組合の委員長なり労働者代表に対しても、「あなたの結んでいる労使協定については、これは基準に合致していませんから直すように」という指導が監督署からあると、こう受け止めていいですか。

○事務局
 そうです。ただし、そこまでが労使の義務であって、そこからあとは、これは当然使用者の義務になります。例えば36協定に違反するような残業命令を発したりしたら、それは当然法違反です。要するに、労使対等で労使協定を結ぶところまで使用者にだけ責務を課し、指導しても無理でしょうと。それは、例えば労働組合がいろいろと御意見をお持ちであれば、労働組合にもこの規定の趣旨を徹底しないといけない。つまり、基準に合致したものとなるように、労働組合にも御努力いただくということだろうと思います。

○委員
 今回の場合は別にして、もし罰則が適用になるとすると、勧告までは労働組合も対象になるが、罰則については労働組合の委員長は対象にならないということですか。

○事務局
 まず、そこまで罰則が付けられるかどうかという問題があると思います。だから、罰則付きの条文になるのかならないのかというところから検討しないといけないので、にわかにそこは御回答しかねます。36協定で押さえる、という考え方になると思うのです。

○座長
 現在の要綱では、そこまでの罰則をかぶせるということは考えてないわけでしょう。

○事務局
 はい。

○座長
 罰則は、現行のままで、つまりは使用者にかかっているものだけでしょう。

○委員
 今後こういう文章が出てくると、労働組合の中で、いいとか悪いとかいうことではなくて、疑義が生じたときに、「お前はこの問題についてどう論議してきたのだ」と質問されたときに、まさか「分かりません」とは言えませんから、失礼ですが、くどくどと訊かせていただきました。

○座長
 以上のほかに、まだ総括的な御意見はあるのですか。使用者側は、先ほどないということでしたが、労働者側はいかがですか。

○委員
 それでは、ここで労働側委員の意見を総合して、今回の諮問に対しまして答申を作るに当たって考慮していただきたい点、そして挿入していただきたい点等について申し上げたいと思います。
 今回の労働基準法の改正の趣旨については、建議の中の前文で述べられているように、雇用・労働を取り巻く環境の変化に適切に対応するために見直すというものであるわけでございます。私どもも、そうした趣旨、意義というものを踏まえてこれに参画をしてきたわけでございますが、なおいくつかの点で不十分なものもあると判断するわけでございます。
 しかしながら、今回の改正項目の中には、多様化した雇用形態の中で不安定な労働者の雇用や労働条件を守るという項目もございますし、さらに労働条件を高めるために必要な措置というものも少なくないことから、今回の答申については、次のような意見を付して了解をするということにしたものでございます。
 一つ目は、時間外労働及び休日労働の関係について、具体的上限を法律に明記するとともに、深夜業についても上限を明記すべきである。
 二つ目が、裁量労働制については、対象業務を特定する考え方としては未だ不十分であり、議論が尽くされていない中での法律改正は適当ではなく、引き続き審議すべきである。
 三つ目が、1年単位の変形労働時間の要件緩和については、従来本制度が、週所定労働時間の短縮を促進する趣旨で導入されたものであること等から、要件を緩和するに当たっては所定労働時間の短縮についても条件とすべきである。
 四つ目は、有期雇用契約期間の反復更新の取扱いや審議の過程で出された意見、建議において今後引き続き検討を行うこととしている事項については、政省令の制定に際して十分斟酌すべきである。
 私どもは、これまでの審議の経緯を十分尊重し、今後検討すべき課題を確認し、なお疑問と不安が残る点については意見を付けるということで、働き方が多様化している実態に対応するための法改正について国会での審議をあえて認めるという判断をしたということを申し上げておきたいと思います。

○座長
 4点の意見が出されておりますが、特に4番目は、法案要綱そのものに対するものではなくて、恐らく今後の審議会運営に当たっての問題になるだろうと思うのです。1番目から3番目までに指摘されている事項について意見を付して了解するという趣旨は、この3項目を含めて全体としてやむを得ないと考える、と理解してよろしいのか。それとも、この部分はやはり反対であると受け止めるべきか。意見を付して了解するという趣旨が若干あいまいなのですが、その点はどちらでございましょうか。

○委員
 法案要綱とは反対の意見、あるいは不足部分をさらに明確にせよという意見を付しているわけでありますから、反対か賛成かと言われれば、この3項目については反対の意見であります。
 私どもも、先ほど最後に申し上げましたように、審議の経過は経過として尊重した上で、答申を出すことにまで反対するというものではないという趣旨で申し上げたと御理解いただきたいと思います。

○座長
 分かりました。特に労働側は意見を総括的に出されましたが、御質問ないしは御意見はございますか。
 では、特になければ以上で諮問案件に対する質疑及び意見はここで終わらせていただきまして、これから報告案の取りまとめに入りたいと思います。案文の調整に若干時間が必要かと思いますので、暫時休憩させていただきたいと思います。

(休 憩)

○座長
 合同会議を再開いたします。各側ともいろいろ御相談しながら、合同会議として本審に対する報告する案を取りまとめさせていただいたわけでございます。まず、案文を事務局に読んでもらいます。

○事務局
 (案文読み上げ)

○座長
 では、私のほうから、案としてまとめた趣旨を御説明します。既に建議をまとめる段階までにいろいろ議論は尽くしてきたわけでございます。そして、今回、労働省が法案要綱として出してきたものについて答申を出さなくてはいけないという段階になっていることは御承知のとおりです。
 座長として、でき得ればこの要綱について、いろいろな意見はあったにしても、三者一致した意見でおおむね妥当と答申できればと思ったわけです。先ほどの合同会議の中でも労働側委員から特に3点について意見が表明され、その3項目についてはむしろ反対である趣旨の意見が出されたわけでございます。したがって、その3点を除いておおむね妥当と考える、というまとめにしてございます。
 これは労働側からは総括的意見として4点のものが出されておりますが、4番目の有期雇用の反復更新については、既に建議の中で、これは三者一致の考え方として、専門的な調査研究を行う場を設けるということを既にうたっておりますので、今回の法案要綱に対する答申の中に盛ることは適当ではなく、かつ、それは建議の段階で三者一致であったものであり、労働側意見としてのみ書くことはかえって不適当であるという趣旨で外しております。
 したがって、法案要綱に対する労働側の意見は、すべて盛り込んだものと受け止めていただきたいと思っております。
 以上で合同会議としての本審に対する報告案ということにいたしたいと思いますが、御意見がありましたら、どうぞ御発言いただきたいと思います。
 特になければ、合同会議として今日を含めて3回検討、審議をしてきたわけでございますが、全体が三者一致という形にならなかった点は残念でございますが、それぞれの立場もございましょうし、それなりに論議は十分尽くしたものと考えますので、これで本審に両部会長名で報告させていただくということでよろしいでしょうか。

(一同異議なし)

○座長
 ありがとうございます。では、今日の合同会議は以上でもって終わらせていただきます。どうもありがとうございました。



(注)  本文中に記載されている資料については多量なため省略しております。資料についての問い合せについては、労働基準局監督課 03-3593-1211(代)までお願いします。



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