中央職業能力開発審議会第182回総会議事録
日時 平成11年9月27日(月)10:00〜11:30
場所 日比谷松本楼「花水木の間」
議題 (1)  平成12年度職業能力開発局重点施策及び概算要求について
(2)  職業能力開発の現状について
(3)  その他
配付資料 No.1  平成12年度重点施策(職業能力開発局)
No.2  平成12年度職業能力開発行政関係の概算要求について
No.3  民間教育訓練実態調査報告書(平成9年2月調査)
出席委員  学識経験者  大澤 眞理
 尾高 煌之助
 小池 和男
 早川 宗八郎
労働者代表  市川 清美
 小栗 啓豊
 草野 忠義
 平山 和雄
 堀口 雅行
事業主代表  岩口 縣一
 尾ア 朋泰
 讃井 暢子
 山田 恒夫

(会 長)
 おはようございます。ただいまから「中央職業能力開発審議会第182回総会」を開催します。
 最初の議題は、「平成12年度職業能力開発局重点施策及び概算要求について」であります。事務局から説明をお願いします。

(事務局)
 資料No.1に基づき、平成12年度の職業能力開発局の重点施策についてご説明いたします。前回、7月の審議会の際、いろいろとご議論いただいたことを踏まえながら、取りまとめています。これに基づいて、現在、財政当局に対して予算要求を行っています。
 第1として、「現下の雇用情勢に対応した能力開発の推進」ということであります。これまでも緊急雇用対策、あるいは昨年の経済対策等々に基づいて講じてきた施策を引き続き推進する、ということが中心になっているものであります。
 その1つに、「新規・成長分野における職業訓練の推進」ということで、新規・成長分野についての雇用対策を講じる一環として、これに対する職業訓練、具体的には委託訓練の推進を図っていくということをやってういます。
2点目に、「離転職者等に対する能力開発の機動的かつ効果的な推進」ということであります。これも公共職業訓練、あるいは委託訓練の組み合わせをすることによって機動的な対策を講じているところですが、引き続き、その推進を図っていくことにしています。
(3)は「生涯職業能力開発促進センター(アビリティガーデン)方式の訓練の全国展開の推進」であります。これは特に雇用情勢の厳しい中、ホワイトカラーの離職者が増加している状況のもと、アビリティガーデンで開発したホワイトカラー向けの訓練について、全国の職業能力開発促進センター(ポリテクセンター)などを活用して、全国展開を図っていこうという内容のもので、引続き推進するものであります
 (4)は「自主選択能力開発プラン(バージョンアップ・フレックス・プラン)の実施であります。これは6月の緊急雇用対策に盛り込まれたもので、民間教育訓練機関が行う教育訓練コースから、労働者が自主的に選択できる形での教育訓練を推進しようというものであります。
 (5)は「未就職学卒者に対する能力開発の推進」であります。これも6月の緊急雇用対策に盛り込まれたもので、補正予算の中で盛り込まれた中身と同様の内容であります。専修学校等を活用して、大卒等の未就職学卒者に対し、短期の実践的な訓練を推進しようという内容であります。
 大きな2点目が、「21世紀人材立国計画の推進」ということであります。これはのちほど、概算要求のほうで説明がありますが、新たに総額2,500億円の「情報通信、科学技術、環境等経済新生特別枠」というものが設定されました。これに対する各省庁からの要望ということで、労働省は総額153億円ほどの要望枠が認められたところであります。この関係の施策で、現在、要望、説明等を行っている段階であります。職業安定局と共同での要望なのですが、ここに書いているのは能力開発局関係の施策です。多少、詳しいものがいちばん最後にありますので、最初に1頁目を説明した上で、多少詳しい中身を説明したいと思います。
 この「21世紀人材立国計画」に関して、どういう事で推進するかについてですが、今後、我が国の発展を期するにあたり、我が国最大の資源である人材をいかに効果的に活用するかが課題ということで、そのためのシス テムづくりを図っていこうというものです。そのために各都道府県単位で、産学官関係者による人材育成推進の場を産業特性等を踏まえた形で設置するというものであります。名称は仮称ですが、「地域人材育成総合センター」というものを各県単位で設置し、そこでさまざまな施策を展開してい こうということであります。
 具体的な中身が(2)にあります。1つは、情報化や高齢化、環境とい った状況変化に対応した中で、21世紀に必要とされる人材を育成するための教育訓練機会を開発整備しようというものであります。内容としては、それぞれの職業経歴、あるいは教育訓練経歴に応じた最適な教育訓練機会の提供を可能とするようなさまざまな機関、公共でもそうですが、高等教育機関、あるいは民間教育訓練機関などを活用して開発整備をしようというものであります。開発整備をした教育訓練機会、あるいは既存の他の施策を併せ講じて、各人にふさわしい、最適な教育訓練機会のコーディネートをしようというのが2点目の内容です。
 このほか、「人材育成の取組に対する特別の支援」ということで、いくつかの事業について助成事業を講じようという中身であります。能力開発局関係では、中小企業の発展の基盤となる、高度な人材を育成するための事業主の取組に対する助成事業を講じようという内容であります。また、これらの施策を効果的に推進するために、官民の協力のもと、教育訓練コースの開発などを進めていこうというものです。
 詳しい内容については4頁をご覧ください。教育の枠組みは同様ですが、どのような形で「地域人材育成総合センター」で教育訓練機会の開発整備を行うか、特に、@の下の○の中に5つほどの囲みを作っています。これからどういう人材育成が必要かという想定のもとで類型化したものであります。
 1つは、「新たな事業展開を担う高度な人材」ということで、中小企業を中心として新たな事業展開を図るにあたり、その核となる人材の育成が必要になってきます。この方々に対しては、国内外の高等教育機関、大学院、海外留学、あるいは研究機関における共同研究といった形での教育訓練を進めていこうということであります。
 それから「企業の基盤となるべき人材」、これは技能等を有し、新たな事業展開を担う高度な人材が開発したものを踏まえながら、具体的な事業を展開するにあたって必要となる人材であります。これについては、事業主等の行う実践的教育訓練ということで、事業主などに対する委託訓練の形での教育訓練を実施していくことがふさわしいであろうというものであります。
 3つ目の囲みですが、在学生とか、最近言われている第2新卒も念頭に 置きながら、特に高校在学生を対象として職場体験やガイダンス、そういうことを踏まえた教育訓練を講じる、ということが施策として必要ではな いかという考え方であります。
 4つ目の囲みですが、「次世代を担う若年社会人」、現に雇用されているわけですが、これから企業の発展を担う人材として期待される人たちをどう育成するかというものです。これはむしろ、異業種交流等の場を活用することがふさわしいだろうということで、チューターや、場所の提供を行うことにより異業種交流を図っていく。その中で、自己啓発的な形の教育訓練につなげていこうという内容であります。
 最後の囲みですが、「高年齢者」についてはその職業経験などを活かしながら、新たな事業を起こすための教育訓練について展開していこうというものであります。教育訓練としては、代表的なものをこういう形で整理していますが、今後、これによって他の施策と相俟ちながら、必要な教育訓練機会の開発整備を図り、これに基づいて必要なコーディネート、斡旋、情報提供を行うことにしていきたいと考えています。
 また、このような想定のもと、Bにありますが、「人材育成の取組に対する特別の支援」ということで、基本的には教育訓練の実施、あるいはあっせんといったことを中心に展開しますが、一定の者については特別な助成制度を講じることにしています。1つは、新たな事業展開を担う高度な人材についての育成、特に中小企業がそのような人材を国内外への高等教育機関などに留学等の形で派遣する、あるいは、研究機関での共同研究に当たらせる場合について、賃金を含めた、必要な経費についての助成を講じていこうというものであります。また、特に高齢者について、その職業経験を活かしながら必要な能力開発を行い、自ら出資することにより新たな事業を起こす場合について、初期経費についての助成をしていくということであります。
 こういったもののバックアップのために、先導的な教育訓練コースの開発などを行うことにより、必要な人材教育のためのシステムづくりを図っていこうというものであります。先ほど言ったように、これは特別枠の要望としてまとめたもので、その中での折衝になっていくかと考えています。
 「3労働者の自発的な能力開発の推進」であります。労働移動の増大、あるいは労働者の自発的な能力開発の意欲の高まり等を考慮し、自発的な能力開発に対する支援の強化が必要になってきているという基本的認識を持っていて、そのための取組をいくつか講じていこうというものです。労働者の自発的な能力開発に対する相談援助、あるいは情報提供のための体制整備ということで、特に教育訓練給付の対象となるコースなどに対し、情報提供システムの開発を講じていこうというものであります。
 ロが「能力開発支援センター」、これも仮称ですが、自発的な能力開発のために、民間教育訓練機関が行う教育訓練を受講できる場、逆に言うと民間教育訓練機関が教育訓練を全国的に展開できるための必要な施設の整備を図る。また、併せて、自発的な能力開発のための相談、情報提供といったことについての支援を行うことを目的とした施設の整備を図っていこうという内容であります。
 ハでは、昨年12月から実施している教育訓練給付制度の効果的な推進を図っていこうというものであります。
 ニでは、自発的な能力開発に関して、一定の教育訓練に自ら取り組んで行う場合に、本人が負担した費用について税制上の特別措置を要望しているところであります。
 ホですが、これは6月の緊急雇用対策に盛り込まれた事項ですけれども、長期リフレッシュ休暇制度の導入を図るなど、労働者が自由に能力開発に取り組むことができるための環境整備について、引き続きを検討をしていくということであります。
 (2)ですが、自発的な能力開発を推進する観点からも、職業能力評価制度についての整備を進めていく必要があるだろうということで、制度の充実を図っていこうというものであります。
 4ですが、「事業主が行う能力開発の推進」ということで、企業内における職業能力開発の推進、また企業内における、労働者が行う能力開発に対する支援体制の整備ということで、職業能力開発推進者、あるいは相談支援等を行うための体制整備についての側面的な支援を図っていこうというものであります。(3)は調査研究です。事業内能力開発の管理システムについて、どのようなあり方がふさわしいのか、種々の状況を踏まえながら、少し研究をしていこうという内容であります。
 5が「公共職業訓練の機能の充実」であります。1のところとかなりオーバーラップしているところがあります。まず(1)については、現下の雇用情勢を踏まえると、離転職者等に対する能力開発について、機動的、効果的な推進を図っていこうというものであります。また、今年度から推進している、先回の法改正で盛り込まれた職業能力開発短期大学校の職業能力開発大学校への計画的な転換を図ることにより、公共職業訓練の高度化の推進を図っていくことにしています。これも1のところと若干オーバーラップしますが、新規・成長分野を担う人材育成について、高度職業能力開発促進センターなどを活用しながら、必要な人材育成を図っていこうということであります。また、地域に開かれた能力開発施設ということで、職業能力開発大学校、あるいは短期大学校において、地域の社会人向け職業訓練の推進を図っていこうということであります。(5)ですが、これも先ほど申し上げたようにホワイトカラーの離職者が非常に増加していることも踏まえ、アビリティガーデンの機能の充実ということで、新たな教育訓練コースの開発等に取り組んでいきたいと思います。また、開発した教育訓練コースについて、ポリテクセンターなどを活用した全国展開の推進を図っていこうという内容であります。(7)は「障害者に対する多様な能力開発機会の提供」ということで、障害者職業能力開発校に加え、民間の教育訓練機関などを活用して、多様な能力開発機会を提供していこうという内容であります。
 3頁ですが、「民間教育訓練機関等を活用した能力開発の推進」であり ます。これも前のところとオーバーラップしますが、新規・成長分野における職業訓練を推進する。また、バージョンアップ・フレックス・プラン、自主選択方式の能力開発について推進を図るというものです。それから、未就職学卒者に対する能力開発の推進を図っていくというものであります。
また、前回、教育訓練給付制度における高等教育機関の活用について、説明いたしましたが、高等教育機関を活用した、能力開発のあり方についての検討を進めていきたいと考えています。
 大きな7点目ですが、「技能尊重社会の実現に向けた施策の展開」ということで、技能の大切さに関する社会的な理解の促進を図っていくことにしています。
また、「人づくりを通じた国際社会への貢献」ということで、人材養成分野における技術協力等の推進、技能実習制度等の効果的な推進ということを図っていきたい。
 そのような形で、重点施策として取りまとめています。予算の調整等を経た上で、来年度、これらの施策を展開していきたいと考えているところです。以上です。

(事務局)
 引き続き、予算の関係の説明をいたします。平成11年7月30日に閣議了解ということで、政府の12年度予算編成に当たっての基本的な方針等を取りまとめています。スタンスとしては、現在の経済の動向を踏まえて、11年度においては必要があれば公共事業の予備費の活用、あるいは15カ月予算という考え方に立っての補正を前提にして、まず11年度を乗り切っていこう、これを前提として、12年度の予算を編成していくというスタンスです。
12年度の予算編成に当たっては、まず、公共事業については、基本的に11年度当初予算と同額とする。この範囲内で重点枠を設定しています。「物流効率化関係」で2,500億、「生活関連等」で3,000億が、特別枠として設定されています。ただ、労働省は非公共の省庁ということで、この関係の予算については配分枠はありません。
 2番目のですが、公共事業以外のものの関係であります。こちらは労働省が関係します。社会保障の関係を除いては、基本的に前年度当初予算額と同額とする、というのが大筋の枠であります。ただ、先ほどの説明にもありましたが、特別枠というものがこれ以外に設定されています。「いわゆるミレニアム・プロジェクトをはじめ」云々と書いてありますが、基本的に我が国経済を新生させるための施策について、特別な予算配分を行うということが示されています。総額2,500億円の特別枠ですが、「情報通信、科学技術、環境等経済新生特別枠」という形でミレニアム・プロジェクトが設定されています。これについて、労働省には153億円余の枠が示されています。
 それから、社会保障関係費については義務的経費の当然増を考えて、約5,000億の増加が認められています。労働省関係においては、346億の増額が認められています。基本的に、これは雇用保険の失業等給付費の、いわゆる一般会計負担分に充当させるという感じになっています。
 あと、編成に当たっての基本的な方針として、10年度予算より堅持されている、いわゆる「1割減」というものがあります。補助金、交付金、委託費等については、基本的に対前年度1割減の枠内で予算編成をすることが堅持されています。
 このような編成方針の中において、能開局の予算をどうやって作っていったかというのが次の頁になります。「平成12年度予算要求総括表」というものがありますが、これは能開局の予算要求の、いわゆる金額の高さの表であります。下のほうに「合計欄」がありますが、12年度要求額は1,800億円でした。その上に「1,923億」という数字が書いてありますが、これは先ほどお話した、21世紀の枠を入れた数字が1,920億、それを除いた数字が1,800億ということで、対前年度で78億余の増額という形になっています。
 会計別に言うと、まずいちばん上の一般会計ですが、21世紀関係の123億を除くと132億ということで、対前年度で5億余の減になっています。能開局の予算については、委託費、交付金が占める比率が多く、先ほど述べた1割減という枠の設定の中で行っている関係で、若干の減が出てきています。ただ、ミレニアムの関係を入れると255億ということで、対前年度で118億余の増という形になっています。
 特別会計に移ります。労災勘定というものがあります。基本的に、これは障害者関係の施設整備、あるいは機器整備等についてを労災勘定からいただいています。2億ほどの伸びを示していますが、これは国立県営の障害者校である広島校の建替えを年次計画で行っています。その計画に従って増額を行っています。
 大きな割合を占めているのが雇用勘定です。全体で1,650億円となっていて、対前年度比80億の増になっています。本省と機構に分けていますが、本省は497億ということで、35億余の増になっています。この伸びの要素として、いま国際技能工芸大学というものを建設しているのですが、その本格的建設の費用が非常に伸びています。
 それから、今週の金曜日、「雇用能力開発機構」が発足いたします。その機構の関係の予算ですが、1,153億、対前年度45億6,000万ほどの伸びを示しています。交付金で約23億、出資金で約22億の伸びを示しています。のちほど、それぞれの事項について説明いたしますが、伸びとしてはこのような形になっています。全体的な数字は、このようにご理解いただきたいと思います。
 この数字をそれぞれの主要項目別に整理したものが次の頁以降です。まず、主要項目の1つの柱として、ミレニアムの関係、21世紀人材立国関係があります。先ほど事業の中身について説明がありましたが、全体で153億余のうち、能開局関係として計上しているのは123億となっています。産学官結集の場の設置で17億、センターにおける事業展開で約100億、それから、センター事業の効果的な展開を図るための推進方策、いわゆる先端的な教育訓練のコースの開発等で1億ほどのお金を計上しています。
 2の「労働者の自発的な能力開発の推進」のところですが、全体で10億8,000万、11億ほどの伸びを示しています。大きなものとして、労働者の自発的な職業能力開発に対する相談援助情報提供等の体制の整備ということで数字を示しています。
 この中で、特に「教育訓練コース等に関する情報提供システムの開発」の関係ですが、これは教育訓練給付金の支給というものが、雇用保険のほうで本体給付がありますが、その教育訓練の講座の指定等の関係を能開局で行っています。現在、4,000ほどのコース指定を行っていますが、これの情報提供等を行うための体制整備ということで、従来、指定講座の受付的なものを雇用促進事業団で行っていましたが、体制整備をするために、これを中央職業能力開発協会に一元的に統一して行っていくということを考えています。
 「能力開発支援センター(仮称)の設置」のところで、約10億ほど伸ばしています。従来、特に認定職業訓練の関係の場の提供、いわゆる訓練を行う所の場の提供として、地域職業訓練センターというものを設置していました。これからは、労働者に対する自発的な職業能力開発に関する情報提供、あるいは相談機能等を持たせた施設、あるいは各種学校等の教育が受けられるような施設提供というものを行っていきたい。いわゆる、先ほど言った地域職業訓練センターのバージョンアップをしたような形で新たな施設づくりを行っていきたい。一所、5億ほどの施設規模を考えています。とりあえず、二所の要求をしています。
 3番目の「事業主等が行う能力開発の推進」ですが、約25億ほどの伸びを示しています。ここでの大きなものは、「人材高度化支援事業の推進」ということで、ここの部分の金額が相当伸びています。基本的に、助成金の成熟化増があって、財源の裏打ちをしています。
 それから、「公共職業訓練の機能の充実」というところで約7億の伸びを示しています。ここでの大きな話としては、「離職者等に対する能力開発の機動的かつ効果的な推進」というもので、ホワイト系を主体とした高度な訓練を行っていきたいということで、10億ほどのお金を積んでいます。2番目として、公共職業訓練の高度化の関係です。平成11年度より、団立の短大を大学校化に再編、統合をしています。その最終年次、13年度開校分の機械・施設整備ということで、ここで30億ほどの伸びを示しています。その他いろいろありますが、ものによっては、相当な伸びを示しているが、7億ほどの伸びに収めているのです。いろいろな経緯の見直し等を行った結果として、プラスマイナスで約7億の増ということになっています。もう1つ、「障害者に対する多様な能力開発機会の提供」として、「国際身体障害者技能競技大会への選手団派遣事業」ということが書いてあります。これは通称「アビリンピック」と言って、4年に1回、世界的規模での競技会が開催されています。12年度はチェコのプラハで開催されるということで、ここへの選手団派遣の経費が組み込まれています。
 第5は、「民間教育訓練機関等を活用した能力開発の推進」であります。24億8,000万円ほどの伸びを示しています。まず、「新規・成長分野にお職ける業訓練の推進」ですが、まだ離転職者に対する社会的な環境は非常に厳しいものがありますので引き続き、訓練枠の拡大を図っていかなければならないと思っています。特に、ここでは雇用保険受給者の非自発的離職者に対する委託訓練の規模の拡大に取り組んでいます。約1万人ほどの訓練規模の拡大を行っていきたいと考えています。それから「未就職学卒者に対する能力開発の推進」であります。今年の補正予算で、未就職者に対する能力開発というものを予算化していますが、引き続き、この枠の拡大を図っていきたいと考えています。約3,000人ほどの訓練規模を考えて、5億8,000万ほどの予算計上を行っています。
 「民間活力による製造業・建設業を担う人材育成への支援」ですが、これは国際技能工芸大学に対する施設費の助成であります。
 第6の「技能尊重」の関係ですが、約1億7,000万ほどの伸びを示しています。「技能者を活用した技能に親しむ機会の提供」、これは文部省とのタイアップもありますが、ものづくりの大切さに関する講習会を学校教育の中で、開きたいと考えています。小学校、あるいは中学校、高等学校の授業の機会の中に取り入れて、ものづくりの大切さを技能士等を派遣していろいろやっていきたい。そういうものを新たに入れています。昨年度はこれの検討等を行っていますが、今年度はトライアルを行っていきたいと考えています。
 第7の「国際社会への貢献」の関係ですが、対前年度で7千万ほどのマイナスになっています。先ほど申しました補助金、委託費等の対前年度1割カットという関係もあり、ここの経費は若干の減になっていますが、施策的には従来の施策を踏襲して行いたいと思っています。中身の見直し等を行いながら、経費の削減を図っています。

(会 長)
 どうもありがとうございました。ただいまのご説明について、ご意見やコメントがありましたら、どの点でも結構ですからどうぞお願いします。

(委 員)
 21世紀人材立国計画」というのは、内容を伺うと、いままでやってこられたいろいろな項目に関係しているわけです。その相互関連はどのように考えたらいいのでしょうか。いままでやってきた事と、「21世紀人材立国計画」とはどういう関係にあるのでしょうか。

(事務局)
 私どもの想定としては、21世紀に必要となる人材をどう育成していくか。そのシステムづくりだと考えています。基本的には、既存の施策も活用しながら、さらに労働者の類型に応じた、さまざまな教育訓練の機会というものも開発整備することにより、トータルで必要な情報提供なり、あるいはコーディネートなりをすることにより、最適な教育訓練機会を提供できるような仕組みにしたいと考えています。当然、その意味で、既存の施策というものも有効に活用していきたいと考えています。

(委 員)
 システムづくりというときに、どういうものをイメージをしたらいいのでしょうか。

(事務局)
 私どもとして考えているのは、「地域人材育成総合センター」、これはこれまで雇用促進事業団等を含めた形での、言わば官を中心とした人材育成策であったわけですが、ここにさらに産業界、あるいは学の関係者にも結集いただき、その中で新しい教育訓練機会の開発整備と同時に、必要な情報提供のコーディネートをする。こういう事を行う事より、最適な教育訓練機会が1人ひとりにふさわしい形で提供できるようにしたい。その意味では、特にこの「地域人材育成総合センター」、これは施設ではなくて機能ですが、そういう機能を新しくスタートさせたいというのが新しい点ではないかと思っています。

(委 員)
 いまの質問に関連して、「21世紀人材立国計画」、非常にびっくりする システムというときに、組織を考えるのではなくて、民間と政府、それからおそらく学術団体も含めて、社会全体がいまおっしゃったようなことを含んで機能するような体制にしたいと理解していいのですか。

(事務局)
 はい、そうです。

(会 長)
 いまの点でも、ほかの点でも、かまいませんので何かありましたらどうぞ。

(委 員)
 いまの質問に関連して、「21世紀人材立国計画」、非常にびっくりすると同時に、学校、産業界にはこれからいろいろな問題があるわけで、その中身という意味で期待して見ていました。
 質問としては、これはミレニアム・プロジェクトの一環なのかどうか。もしそうならば、産学官という名の下で、例えば労働省と文部省の関連、オーバーに言えば今後、1000年は言わずとも、100年の体系を考えて、学校教育、産業人教育を含めた問題の広がりを検討する予定はないのかどうか。
 もう1つお聞きすると、「人材立国計画」に「場の設置」というのがあります。具体的には、これは施設なのか懇談会なのか、あるいは将来そういうものを考えておられるのか。その点をお聞かせ願えればと思います。よろしくお願いします。

(事務局)
 私どもとしては、これはミレニアム・プロジェクトの1つとして要望しています。いま、全省庁では80ほどのテーマが出されていると聞いています。
 他省庁との連携ですが、既に文部省、通産省、あるいは郵政省など、関係省庁とも検討状況について既に話をしております。実現する段階では、是非、共同してやっていきたいというように、私どもとしては考えているところです。ただ、他省庁で、これとセットになるような予算が出されているという状況ではないわけです。その意味ではいろいろなノウハウ、あるいは既存の予算を含めた施策を活用しながら、人材立国計画が進んでいけば大変ありがたいと思っています。
 そのためのシステムとして、実は全国で人材育成のための推進会議を設けています。ここには当然産業界、あるいは学術関係者だけではなくて、関係省庁にもおいでいただいて、一緒になってこれからの人材育成にどう取り組むのか。能力開発の分野だけではないだろうと思いますので、大学等の高等教育機関、民間の教育訓練機関、あるいは企業そのものでの教育訓練のあり方、そういったことを含めた基本的な方向づけができれば大変ありがたいと思っています。
 この地域人材育成総合センターというのは、決して新しい施設を作るということではなくて、機能だというように私どもは思っています。公共の関係者だけではなくて、あるいは産業界、学術関係者にもここにおいでいただき、言わば地域レベルで、大きな方向づけについては人材育成会議で行うにしても、それを踏まえて具体的な展開を各県単位で、協議会の形で行いたい。また、協議会で定まったそれぞれの役割ごとに、このセンターの中で展開をするという仕組みにしたいと考えています。
 繰り返しになりますが、これは決して施設ではありません。むしろ、公共訓練の分野でこのような事を展開します、大学等の関係では、このような分野を是非お願いしたいという、具体的な協議を行います。また、それにふさわしい情報をそれぞれが共有することによって、またそれに基づいて必要な教育訓練機会をそれぞれの労働者、あるいは企業に対して提供できるような仕組みになるのではないかと考えているところです。

(委 員)
 ありがとうございました。今後に期待されるところは大だと思います。その意味で、ミレニアム・プロジェクトというのは1年とか2年とか、具体的に1つの方向づけをする有期のプロジェクトと考えていいのですか。

(事務局)
 ミレニアム・プロジェクトについては、3から5年で、計画を立て、また進行管理を行いながら官民の役割分担をはっきりさせ、また産学官で進めていくというのが基本的な考え方のようです。そういったものを適用するような形で、基本的な設計をしています。21世紀全体を展望する場合に、将来は労働力の供給制約ということもあります。それに必要な人材が提供できるようなシステムを21世紀の早い時期、要望としては5年という形で出していますが、その中できちんとしたシステムづくりを図っていきたいと思っています。  

(委 員)
 いまの2人の質問に関連するのですが、やはり人づくり全体から考えればいろいろな省庁の関係の部分があるわけです。ここでのいちばんの特徴は「地域」といううたい方だと思います。都道府県、あるいは自治体に分けて、その中でやったものを積み上げていくということだけなのか、もう少し別の視点があるのか。その辺がこれだけだと浮かび上がってこないのです。「それぞれの地域の」という言葉以外に、「地域」という言葉があまり出てこないのですが、その辺はどのようなイメージで捉えたらいいのでしょうか。

(事務局)
 イメージとして描いているのは、先ほど申しました「人材育成推進会議」というものを立ち上げ、そこで言わば全国的な視野に立った方向づけを行う。地域というのは基本的には各県単位を想定していて、各県の中に「地域人材育成総合センター」という機能を持ったものを立ち上げ、単なる積上げということではなく、そこで関係者が協議しながら、必要な施策は何なのかということを考慮に入れて、それぞれが役割分担をしながら事業展開を図るということをイメージしています。
 そういった意味で、単なる積上げというよりも、各県での方向づけも含めながら、また進行管理もそこで図りながら、全国、それから各県単位での取組を効果的に推進していきたいと考えています。

(委 員)
 やはり、国レベルで共通して行われるようなものも、各県で考えられたものと、国レベルで考えたものが各県に流れていくという状況の2つが考えられる。要するに、いまの公共職業訓練などというのは各県ごとに相当特徴がありますが、国全体のレベルで行っているような部分もあるわけです。その辺の往復は、こういったセンターのシステムで扱って考えていくというところもあるのですか。

(事務局)
 はい。全国的には、先ほど言ったような推進会議の中で基本的な方向づけをしますので、それと地域のセンターが行う具体的な取組みとが、お互いにフィードバックし合うというか、単に指示で受けるということではなくて、地域の中で展開するものはもう1回フィードバックする中で、お互いの関連づけを図りながら施策を展開していきたいと考えています。

(委 員)
 このメニューを見ると新卒から在職者、あるいは高度なものを目指すというように、幅広くメニューを持っていますので、受ける側からすると、そこへ行ったら能力開発をどのような立場でも、あるいはどういう段階でも受けられるというのは非常にいいのではないかと思っています。いまお話があったように、5年ぐらいのスパンでということですので、働く者が、あるいはこれから職業に就こうとする者が、ここへ行ったら、能力開発がいつでもどこでも、受けられるという部分で、将来展望を持って推進していただきたいと思います。
 ここで、地域的な人材育成という部分がメインになっていますが、地域で問題が解決できないときの情報なり、サジェッションなりを核となる本部機能というか、あるいは地域で解決できないものを全国ネットで調査して、またフィードバックするという、核となる部分を是非要望します。また、多様な機会のあっせんということになると、おそらくカウンセリングをして、コーディネートをするということについて、新たな人材なり手法という部分がこれから必要になってくるのではないかと思います。そのような、新たな人材の育成という部分も、地域の総合センターの中では必要ではないかと思うのですが、そこら辺はいかがでしょうか。

(事務局)
 いま、「本部的なもの」というお話がありましたが、全国での人材育成推進会議をヘッドとして、当然、地域人材育成総合センターで全部の、地域の情報を把握できるということでもありませんので、そういった意味では、雇用促進事業団の中にそういったセンター・オブ・センター的な機能を持たせるような形で展開していきたいと思っています。そこで全国情報もそうですし、例えば「新たな事業展開を担う高度な人材」については、海外の高等教育機関の情報といったことも必要になってきますので、そのような情報が受けられる形でのシステムにしていきたいと考えています。
 それから、新たな人材育成ということですが、これをなぜ地域単位というか、都道府県単位で行うかということは、やはり地域の特性を踏まえた形で推進する必要があるだろうと思うからです。地域の状況に応じて、必要な人材育成が展開できるような仕組みを工夫しなければならないだろうと思います。おそらく、その際にはこの関係だけではなくて、既存のさまざまな施策との組み合わせの中でやっていくことが大事なのだろうと考えています。

(会 長)
 これは地域が最初に出ています。もし、この点についておっしゃりたい事があったらお願いします。

(事務局)
 やはり地域の中では産業構造など、いろいろな違いがあります。そういう意味では、実態を踏まえた対応が必要だろうと思います。その場合、どういう地域が考えられるかというと、やはり能力開発体制等は都道府県単 位で整備されていますので、とりあえずのところは都道府県を単位として関係者が相集うということが、システムとしてはいちばんうまく機能するのではないかというように思います。
 いずれにしても、この問題はいかに関係者が熱意を持って取り組むかということにかかわっています。その意味では、地域の人たちの意識を高める上でも、このような設定が有効ではないかという思いがします。

(会 長)
 イニシアティブが各地域からどんどん出てくる、というのは大変ありがたいことです。

(委 員)
 雇用の問題で言うと、3つの段階があるのだろうと思います。1つはいま、このように大変な不況の中、失業率が5%を超えるかどうかというところの雇用対策をどうしていくかという問題が1つある。次のステップで、期待感も含めて、おそらく景気はある程度回復したり、構造改革が進んでいくだろうと思います。そのときに、やはり構造調整という、もう1つの大きな問題が出てくるのだろう。その次のステップでいくと、日本型雇用システムが変わるか変わらないかという議論は別にしても、雇用の流動化が必ず起きてくるだろう。それも、主体的な流動化が起きてくるのが望ましいと思っています。そのような3段階を考えた際に、やはりこの「21世紀人材立国計画」というのは非常に重要なテーマだろうと思います。そういうことを全部見こした上で、中期的に計画を練っていく必要があるのではないかと思います。そういう意味から言うと、よくわからないのですが、先ほどから出ている中央と地方の関係が非常に曖昧な感じがします。地方の雇用対策、あるいは人材開発は非常に重要なポイントだと思うのですが、そうは言っても、やはり構造改革が進んでいくのは全体的に進んでいきますから、中央と地方との関係をどう整理していくか、ということをもう少し明確にする必要があるのかというのが1つです。
 それから、「熱意を持ってやる」という観点で、言葉だけではなくて、中身において、もう少し訴えるものがあってもいいような気がします。感想として、そう思いました。

(会 長)
 いまおっしゃった「訴える」ようなものについて、何かありますか。

(委 員)
 単年度予算ならしょうがないと思いますが、場の設置だけというのはいかがなものか。場を設置して、いろいろな意見を集約するというのは大事なことだと思います。しかし、それがどういう方向に向かっているのか、というところをもう少し打ち出したほうがいいのかなと思います。きざな言葉で言えば、「ビジョン」のようなものを出したほうがいいのかなという感じがします。

(会 長)
 話を伺っていると、ビジョンが各地域からどんどん続生してくるというイメージなのか、それとも同時に地方もどんどん出していくということなのかがまだよくわからないのです。審議会の関係で言うと、昔、能力開発基準をかなりレセフェールにしたことがあるのです。そのときのことを考えると、これはなかなか面倒な問題だなという印象です。
 この21世紀人材立国計画はこの会議にまた出ることがあるのですか。それとも、今日、ある程度皆さんのご意見を聞いておかなければいけませんか。

(事務局)
 それについては、現在、予算要望という形で提出している段階です。どう展開するのか、私どもも想定し切れないところがありますが、必要があればまたご相談する場面もあろうかと思っています。

(会 長)
 とにかく3年から5年ですから、1回だけではもったいない気がします。もし、機会があれば、是非委員の先生方のご意見を伺えればと思います。

(事務局)
 お尋ねの件ですが、先般、雇用対策基本計画を作りました。実は、能力開発の計画については「雇用対策基本計画」と合わせてという形を取っておりませんが、近々、それを作らないといけないと考えています。
 実は、時期的にちょっと前後などしますが、おそらく今後どうしていくのかなどについて、当審議会でも本格的議論をいただくべきはその計画のほうになろうかと思います。このミレニアムというのが、ご案内のように予め見込まれていたわけではないということもあり、内容面についていまいろいろなご意見を頂戴したようなことについて十分消化しているかというと、それは今後の問題ということになろうかと思います。
 いずれにしても、私どもの能力開発計画は今後、21世紀にかかって動いていくことになりますので、そちらのほうでまたいろいろなご相談をさせていただければと思っています。

(会 長)
 これ以外に、概算要求のご説明がいろいろありましたが、何かご質問、ご意見等はありますか。

(委 員)
 少し現実的な問題でお聞きします。今回の重点施策でも引き続き、「離転職者等に対する能力開発の機動的かつ効果的推進」という方針が掲げてあります。ただ、この予算を見ても、正直言ってどこに、具体的にどのようにうたわれていて、どのようなことがされたいのかが見えてこないというのが率直な印象なのです。現下の雇用情勢の中で重要な問題となっているのは、失業者の対策をどうするのかということだと思います。まだまだ、この状況は続くのではないかと見込まれているわけで、離職者に対する対策というのは12年度における重要な課題かと思います。これが具体的にどのように展開していくかについて、もうちょっとご説明いただきたいと思います。
 予算を見ていくと、「公共職業訓練の機能の充実」という中に、「離職者等に対する能力開発の機動的かつ効果的な推進」ということで、10億円の予算が建てられているわけです。先ほどのコメントでは、これはホワイト系を中心にというお話でした。いま、ホワイト系はもちろん大変なのですが、5%に至らんとする失業者の皆さん方というのは、必ずしもホワイト系ばかりではないわけです。いちばん問題となってくるのは、中高年の方々の新しい職業の確保という問題があるわけで、そうした方々に対する対策が欠落してしまっているのではないかという印象を受けました。予算の中に、きっと全般的にこの問題が入っているのでしょうが、もしこれが重要なテーマとするならば、職業能力開発局として、どのようなもので具体的にそれを実行するのかをもうちょっと見せていただきたいという印象です。

(会 長)
 何か説明はありますか。いろいろな項目に入っていたように思うのですが。

(事務局)
 離転職者に対する能力開発については、おっしゃるとおり大きな課題になっているところであります。公共職業訓練、あるいは民間教育訓練機関等を活用した能力開発の推進、それぞれに盛り込んでいるものであります。公共職業訓練については、例えば夜間に訓練を実施したり、あるいは定員を増やすような形で対応を進めたり、そういう形で行っています。加えて、さらにここで、離転職者に対する能力開発ニーズが非常に多様化していることを踏まえて、高度な訓練も併せて実施していきたいということで、その予算が盛り込まれているというものです。
 また、当然公共職業訓練だけでは、このような雇用情勢の中ですべてを実施することは難しいわけです。そういう意味で、広い意味では公共職業訓練ですが、専修学校、各種学校等を活用した能力開発についても、離転職者訓練に対応する形で展開したいと考えています。
 例えば、「新規・成長分野における職業訓練の推進」の中に、民間教育訓練機関に委託するような形での教育訓練の枠を設定しています。また、これまで補正等で盛り込まれた事項について、一部は基金で盛り込まれたり、あるいは継続して実施できるものもありますので、そういったものを相互に活用しながら、トータルとして必要な、現下の厳しい雇用情勢に対応した離転職者の訓練枠を確保したいという考えです。

(事務局)
 全体的な訓練の枠の大きさですが、ホワイト系、ブルー系、いろいろな部分を含めて、全体的に離職者に対する訓練枠というのは、例えば11年度当初予算では12万ほどの訓練枠を設定していました。それに対して、11年度の補正で5万、それからこれは安定局と一緒になっているのですが、「緊急雇用創出特別基金」というものを11年度の1号補正で作り、そこで3万の訓練枠を設けました。したがって、トータルベースで、11年度は8万の訓練枠を新たに追加しています。合わせると、約20万ほどになります。
 それから、いま言った8万のものについては、11年度及び12年度以降も継続して枠を使っていくという形になっていて、したがって、単年度だけでこの枠を消化することは考えていません。12年度以降もこの枠を使います。
 それから、12年度の当初要求においては、11年度当初の枠に対してさらに上積みをして、約14万ほどの訓練枠の設定をまず行っています。したがって、いま、11年度予算に対して約2万ぐらいの上積みをしています。とりあえず、この2万と、11年度の補正のからみのものをやると、少なくとも11年度当初に比べると、枠としては相当な幅を持たせているのではないかと思います。

(委 員)
 おっしゃるとおり、いろいろなところに散っていますし、重点施策としてやられていることはわかりました。予算の表現の面などでも、もうちょっと工夫されたらどうかと思います。
それから、確かに枠は広がっているのですが、現地の話を聞くと、枠はあるのだけどなかなか実行に移せない。というのは、民間に委託しようと思っても、委託先との協議、あるいは具体的にどのテーマに絞るのかといったところで、必ずしもまだ機動的に動いていないようなのです。まさに機動的かつ効果的にやるように、施策を実施していただければありがたいという趣旨で申し上げました。よろしくお願いします。

(委 員)
 「労働者の自発的な能力開発推進」の「能力開発支援センター(仮称)の設置」のところでお聞きします。民間なのか公共の分野なのか、その辺はわからないのですが、2カ所ほど場を確保するというご説明でした。自発的な能力開発のための場を新たに、例えば民間なり公共なりがそういう場を作って、新たに全国のどこかに作ろうということなのかどうか。どういう場を想定しているのか、具体的に2カ所という説明もあったのでお聞きしたいと思いました。
 もう1つ、「技能尊重社会」というところ、私どももそういう立場でいろいろな運動をやっていて、大変結構なことだと思います。文部省との関係で、私どももいろいろお手伝いしているのですが、障害もあるわけです。ご説明では、小中高において、技能者の技能を活用して親しむ機会ということで、トライアルの年だというお話でした。別に、技能の中にそのものはいろいろありますから結構なのですが、どの程度のレベルというか、規模なのでしょうか。小中高とあって、最後に高校のことも言われたわけです。いわゆる、かなり技能的な高校もありますので、それが一般的なところなのかどうかも含めて、もう少しご説明をいただければと思います。以上、2点ほど質問します。

(事務局)
 1点目、「能力開発支援センター」について、いま考えていることをご説明します。教育訓練の場合、どうしても地方、地域に教育訓練の資源が十分でない点があります。
この「能力開発支援センター」は先ほど、地域職業訓練センターのバージョンアップというご説明があったかと思います。
 従来から、地域職業訓練センターを設置し、地域の中小企業の人が教育訓練を行う場合に、場所、設備を提供してきたわけです。しかし、これまでのお話にあったように、今後はさらに多様な教育訓練を展開していく必要がある。さらには、自発的な能力開発に関して、地域の中で支援をしていく必要があるということから、中小企業の教育訓練に対する場を提供する従来の機能に加えて、民間教育訓練を受講できる場、つまり地域的に偏在している民間の教育訓練機関が地域で訓練を展開するときに利用できるような施設、あるいは地域の労働者に非常に高まっている自己啓発、自主的能力開発のためのいろいろな情報が提供できるような機能を付加した施設づくりをしていきたい、というのが能力開発支援センターの設置です。

(事務局)
 現在、若年者の状況の中で、職業の問題についてはあまり身近に考えていないという問題があります。特に技能に関しては、技能離れと言われているように、技能の面白さが十分に理解できる場がなかなかないのかなという問題があると思っています。
 他方、学校の中においては、最近だと総合的な学習時間について言われているように、本当にいろいろな問題が学校の中で起きてきている。その中で、学校の現場に授業の内容について、ある程度裁量権を持たせるよう な動きがあります。それら全体を見ながら、学校の中で技能を持った方々、物を作られるような方々が活躍できる場があるのではないかと思い、いろいろ議論してまいりました。現実にも、そういうことが行われている地域があります。
 ただ、難しいのは、学校は慎重な対応をしていて、例えばどのような人が学校に入ってくるか、なかなか心配だということもあります。したがって、文部省の関係者と私どもの学識経験者が一緒になって、どういうシステムで学校に人材を送り込めば、安心して活用してもらえるのか、それから、具体的にどういったことで活用の場があるか、という議論をこの半年ぐらいで行っていきたいと思っています。小学校、中学校、高校でそれぞれ、使われ方については分けて考えなければいけないだろうと思います。
特に工業高校ぐらいになると、かなり専門的な技術、技能を先生としてやるのか、それとも先生の代用の形でやっていただくのか、いろいろな形があると思うのですが、それが問題として出てくると思います。
 その辺、これから文部省と詰めながら議論をし、小学校、中学校、高校、それぞれに合った形での派遣の方法を考えていく。それはどういう職種で、どういう内容で、どういう人を送ればいいのか。どういうシステムを作っていけばいいかを詰めていきたい。それを踏まえて、来年度の予算要求の中で、若干の地域ですがトライアルでやってみようと思います。そこで成功という評価が得られれば、翌年からはもうちょっと幅広くやっていきたいと思っています。

(会 長)
 まだいろいろ、ご意見を伺いたいのですが、もう1つ議題が残っています。3番目の「職業能力開発の現状について」というところ、事務局から説明をお願いします。

(事務局)
 「職業能力開発の現状について」ということで、現在の我が国の教育訓練の実情ということで、「民間教育訓練実態調査報告書」を提出していますので、これについて若干の説明をしたいと思います。これは毎年行っていますが、現在取りまとめているものは平成9年の調査のものです。これについてご説明したいと思います。この調査は、全国の民営の事業所約4,000カ所、対象労働者約1万2,000人に対して、事業所調査、個人調査という形で実施しているものであります。今回の調査については訓練の実施状況等、労働者の自己啓発の促進に関する事項について調査をしたものであります。
 まず、事業所調査の中で、労働者に対してどのような能力開発を実施しているか。1年間を単位として聞いていますが、OFF−JT、あるいは計画的なOJTという形で実施している事業所の割合は66.1%、約3分の2であります。
 これについては在職者、あるいはその年の新規採用者について訓練の目的を聞いています。その中で、在職者に対する訓練の目的を見ると、いちばん高いのが「基本的な知識・技能の付与」で84.4%、次いで「専門領域の高度化」が78.6%ということになっています。
 また、どういう施設で行ったかということですが、トップは「社内の施設」で約6割でした。続いて、専修学校、各種学校等を除いた「民間職業訓練機関」が45%という順になっています。
 教育訓練を行ってどういう効果があるか、ということについて聞いてみると、「効果があった」というところが84.8%、約85%。効果があった事業所について、その中身を聞くと、トップが「専門知識の向上」で約8割、「技術・技能の向上」が約7割、「意欲の向上」が約65%という状況になっています。
 「効果がなかった」というところは非常に少ないわけですが、それを見ると「体系的な訓練として実施されていない」という点とか、「期間が短かすぎる」といったところが問題点として指摘がされています。
 これからの教育訓練の重点についてですが、事業所としての取組としては「OFF−JTの充実」が過半数となっています。続いて、「OJTの充実」が約43%という割合になっているところであります。
 また、事業所サイドの自己啓発に関する取組の状況ですが、事業主サイドとして最も講じている対策としては「受講料等の金銭的援助」が約73%ということでした。次いで、「講座・図書等による情報提供」、あるいは「就業時間についての配慮」、これが半数強ということになっています。なお、「教育訓練休暇の付与」については、約2割という状況になっています。
 続いて、対労働者個人に対する調査の結果であります。個々人が教育訓練を受講したかどうかということで聞いてみますと、1年間でOFF−JTの形での教育訓練を受講した労働者の割合は約半数、5割となっています。性別で言うと、男性は53.3%、女性は約4割という割合になっています。また、教育訓練の効果ということで、何らかの効果があったということで見ると、「職務内容の高度化」、あるいは「基本的な職務内容の習得」という割合が高くなっているという状況です。
 次に労働者個人に聞いた、自己啓発の実施状況であります。自己啓発を自ら実施した、という労働者の割合は約55%となっています。性別で言うと、男性は57.5、女性が45%という状況になっています。自己啓発の目的ですが、最も高いのが「職務内容の高度化への対応」で約6割となっています。続いて、「基本的な職務内容の習得」が4割、「配置転換(出向)への準備」が35.4%という状況になっています。
 分野別で見ると、最も行われているのが「人事・労務・能力開発」で34.3%、「ワープロ・パソコン等の操作技術」が32.8%ということで、この2つが分野別では非常に高くなっているという状況です。また、経費とし ては、「1万円以上5万円未満」が48.3%と、いちばん高い状況になっています。
 それから、企業からの支援ということで、金銭的な援助について聞いています。金銭的な援助を受けた労働者の割合が約6割でした。その半数が「1万円以上5万円未満」という結果になっています。
 労働者自身の自己啓発の必要性について、「必要性を感じている」というのは92.1%と、非常に高くなっています。その理由としては「現在の職務(仕事)に必要」というものが最も高く、次いで「将来の仕事に備えるため」という結果になっています。
 また、自己啓発に関して、「企業に対する希望がある」とするものが8割強にのぼっています。特に高いのは「受講料等の金銭的な援助」、次いで「社内での講座セミナーの開催」、「就業時間についての配慮」、「学習の成果に対する評価」といったところが3割前後になっているという状況です。

(会 長)
 どうも、ありがとうございました。ただいまの説明、それから先ほどの説明に関するコメント、ご質問でも結構ですが、どうぞお願いいたします。

(委 員)
 重点施策の中のバージョンアップ・フレックス・プランについて質問します。確か、8月の末か9月の頭だったか、新聞で「公共訓練以外の部分でも受けられます」というところを確か見たと思います。
 この点について、もう既に実施されているのか、あるいはどのくらいの コースが認定されて動いているのか。あるいは、これからどうするのかという部分があれば、詳細な報告をお願いしたいと思います。

(事務局)
 いまご指摘のバージョンアップ・フレックス・プランについては8月1日から実施をしています。内容としては、民間の教育訓練機関が行う教育訓練コースから、労働者が自主的に選択をできるようにするという内容です。現在、さまざまな方法で情報提供といった形での取組を行っています。
また、特にこのバージョンアップ・フレックス・プランで想定しているのがホワイトカラー離職者等ですので、人材銀行等、ホワイトカラーを対象にした職業紹介機関に必要な体制、「能力開発支援コーナー」という形での体制を作っている段階であります。今後、具体的な活用が進む対策がさらに必要かと考えています。今後、そういう方向で取り組んでいきたいと考えています。

(委 員)
 コースの認定などはまだなのでしょうか。

(事務局)
 コースの認定という形ではありませんが、一応、離職者訓練として一定時間以上の教育訓練コースという形で、そういう意味での絞りは想定はしています。

(委 員)
 労働者の自発的な能力開発の推進というところについて、お尋ねとお願いがあります。1つは、「税制上の特例措置の要望」があります。教育訓練給付金も非常に重要な制度だと思うのですが、利用すするにあたっては5年に1回などの縛りもありますので、やはり生涯能力開発ということを目指す場合には、非常に税制の措置というものが重要なのではないかと思いますので、是非ともよろしくお願いしたいと思います。 それから、「能力開発支援センター」など、個々の労働者に対する情報提供やアドバイスが与えられるということで、変化が激しい時期にふさわしい能力を身に付けるのは非常に重要なことだと思います。やはり、それをアドバイスする側のバージョンアップというか、きちんと時代を見据えた、適切なアドバイスができるようにすることが非常に重要だと思います。その辺については、何か具体的に施策などを取っていらっしゃるのでしょうか。

(事務局)
 第1点目の税制改正の関係ですが自発的な能力開発に取り組む労働者が自ら負担した経費について、一定のものについて税制改正の要望をしております。ただ、税制改正としては特別措置ということになりますので、なかなか厳しい面があろうかと感じています。
第2点目ですが、支援センターに限らず、これから労働者自身が的確な能力開発に取り組むことに対しては、必要な情報提供、あるいは相談援助といった取組みが必要になってくると考えています。そのための体制づくりについては、今後、本格的に考えていかなければならない課題だろうと思っています。いま、ご指摘がありましたような、経済社会情勢の変化に対応した形での情報提供、あるいは相談援助ができるような取組みを今後進めていきたいと考えています。

(会 長)
 アドバイスするほうのバージョンアップについて、何かアイデアがあったらおっしゃってください。

(委 員)
 まず、いまどういう方がアドバイスをするような仕事をなさっているのか、あまり知識がないものですから。どういうことを経験してきた方が相談をされているのか、それを常に新しくしていくためにはどうしたらいいかということが非常に大きな課題だと思います。

(事務局)
 自発的ということには限りませんが、現在、能力開発の取組についてのアドバイスをする担当者については、例えば企業の人事・労務などを経験されたような退職者なども活用しながら、できるだけ経済社会の実情に応じた形での相談支援体制といった取組を行っているところです。

(委 員)
 先ほどの「職業能力開発の現状」について、民間教育訓練の実態をお出しいただいたわけです。ただ、やはり、国、都道府県がやっていらっしゃる、我が国の能開行政の全体像が把握できるようなものを1年に1度ぐらい、例えばどういうところはどういう講座をやっていて、受講者は何人いて、それを参加者はどう評価したのかというところを出していただきたいと思います。
それから、先ほど職業相談お話が出てきました。例えば、ゼンセンの調査によると、リストラで解雇された人たちを対象とした調査ですが、現在は雇用保険の給付でごったか返していて、職業紹介の相談に乗るような雰囲気ではないということも言っていました。また、職業訓練校の説明は職安でもないし、どこへ聞いたらいいかわからないという声も上がっています。今度、そういうことを来年度の予算の中で、情報提供についてきちんとなされることを要望します。

(委 員)
 1点だけ要望します。いま伺った調査報告、これはこれで非常に貴重です。しかし、基本的に雇用保険が対象になった事業者に聞いているわけです。そうすると、個人の情報でも、それ以外の方々は入っていないわけで、せっかく21世紀の新しい計画をお作りになるわけですから、難しいでしょうが、そういう方々についての情報も得られるような調査も考えていただいたらどうでしょうか。つまり、例えばまだ未就職の新卒、アルバイトの人、あるいは専業主婦で、将来、いずれ復帰したいと思っている人、あるいは事業所でも29人以下の所、そういう人たちのニーズはわからないのではないでしょうか。

(事務局)
 ただいまのご質問ですが、多分、職業能力開発に関するデータというのは2種類に分かれると思います。能力開発行政として何をやっているのか、という面から捉えたもの、それから世の中全般の職業能力開発にかかわる状況はどうかというもの、これには労働者属性、企業属性、その他いろいろな属性があろうかと思います。その両面について、「資料が非常に不足している」という指摘をいただいているところです。今後、計画策定に向け、すべてうまく出来るかどうかということはありますが、出来るだけ調査等をやりたいと思っています。
 それから行政情報の関係、これは都道府県、あるいは国の分がいろいろと錯綜しておりますが、これについても、出来る限り基本的な資料を取りまとめる方向で検討を始めたところです。
 1、2点補足すると、能力開発支援センターの件ですが、これについてはいろいろな機能を想定しています。1点だけ特徴的なことを申し上げると、民間の教育訓練機関というものも数多くあるわけで、こちらの教育訓練機関とあちらの教育訓練機関にはそれぞれ持ち味がある。その持ち味を足して、さらに公共の能力開発施設にもノウハウがありますので、それも足し合わせて、今後の時代に向けた新しいコースを実施していく場としても使えないだろうかと思っています。これはあくまでも、当面する課題、あるいは先々の問題、それも2種類ぐらいに分かれると思います。そのときに、机上のプランはいろいろ言えるわけですが、実際にコースを作っていく場というものがなければなかなか進みません。そこで、前後してしまうわけですが、ツールとしては一旦持っていいのではないかという発想があります。
 相談体制については、今はこういう時期でもあり、もともとどういう観点からどういう知識、情報を持ってアドバイスしていくか、非常に難しい時期になっているかと思います。現在のところは、当面する緊急事態ということで、企業でそういう事をいろいろ経験された方、職業訓練について従来経験を持っておられる方などを中心にお願いしています。ただ、先々を見ていくと、これについての体系的なマニュアルというもの、あるいはいろいろなお考えがあるということも踏まえた上でどういう体制を取っていくか、非常に重要な課題だと思っています。今後に向けて、いろいろとやっていきたいと思っています。

(会 長)
 今日の予定は以上です。本日の会議はこれで閉会したいと思います。どうも、今日はありがとうございました。



(注)  本文中に記述されている資料については多量なため省略しております。資料についての詳細及び問い合せについては、職業能力開発局能力開発課 03-3593-1211(代)までお願いします。



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