中央職業能力開発審議会第177回総会議事録
労働省職業能力開発局能力開発課
日時 平成10年6月22日(月)10:30〜12:00
場所労働省省議室
議題 (1) 緊急雇用開発プログラムの実施について
(2) 教育訓練給付金の支給の対象となる教育訓練の指定基準(案)について
(3) 高度熟練技能活用検討委員会報告書について
(4) 地方分権について
(5) その他
配付資料 No.1 最近の雇用失業情勢について
No.2−1 「緊急雇用開発プログラム」の内容
No.2−2 「緊急雇用開発プログラム」(職業能力開発局分)の概要について
No.3 教育訓練給付金の支給の対象となる教育訓練の指定基準(案)
No.4−1 高度熟練技能活用検討委員会報告書の概要について
No.4−2 高度熟練技能活用検討委員会報告書
No.5 地方分権推進計画について
出席委員 学識経験者小池会長、尾高委員、早川委員
労働者代表小栗委員、柿崎委員、平山委員、草野委員(代理沢田氏)、久川委員(代理市川氏)
事業主代表岩口委員、杉山委員、山田委員、斎藤委員(代理鈴木氏)、野村委員(代理武石氏)


○議題(1)緊急雇用開発プログラムの実施について

(会長)
 ただいまから、中央職業能力開発審議会第177回総会を開きます。
 早速、議事に入りたいと思います。最初の議題は「緊急雇用開発プログラムの実施について」です。これについては最近の雇用失業情勢の動向と労働省による対策について、それぞれ資料が提出されていますので、事務局からご説明をお願いします。

(事務局)
 (資料No.1に沿って説明)

(会長)
 ありがとうございました。引き続きお願いします。

(事務局)
 (資料No.2−1、No.2−2に沿って説明)

(会長)
 ありがとうございました。ただいまのご説明について何か質問なりご意見がございますか。

(委員)
 質問が2つと意見が2つほどあります。質問は、最初に雇用情勢のご説明をいただきましたが、地域別に、とりわけ職安の地域ごとの有効求人倍率を見ると、全体として関東より関西のほうが厳しいという状況があるように見受けます。要するに伺いたいのは、何か説明をお持ちかどうか伺いたいのですが、拝見すると北陸3県は割と有効求人倍率が高くて、工業地帯と考えられる大阪、神戸、北九州が悪いですね。これはなぜなんでしょうか。何かご説明があったら伺いたいということが1つです。
 もう1つは、同じく雇用情勢に関して10頁の年齢別の雇用状況ですが、これを見ると当然のことながら、失業率が高いところは求人倍率は低い。逆のところは逆という傾向があるのですが、若者は違いますね。若者は両方とも高くなっているので、これは何か若者に関しては特別の事情があるのだろうと思います。そうすると、緊急雇用開発プログラムに関しては、若者に関してはあまり考えてない。新規学卒者に関してはいいけれども、雇用されてない人に対しては、雇用給付金等々は考えられないということがあるので、そういうことかと思いますけれども、要するに質問としては、若者の雇用動向に関して何か説明があるのかどうかです。意見としては、若者に対しても何か政策を考える余地を、今後、考えたらどうだろうかということがあります。
 もう1つ質問は、障害者について特に対策を考えておいでになるということで、これは大変に結構だと思いますが、現象的に障害者の場合、特に雇用情勢が厳しいという何か兆しがありますかということを伺いたいと思います。
 最後にもう1つ意見として、いろいろ緊急雇用開発プログラムを考えておいでになるのは大変に結構だと思いますが、できたらそれぞれの計画がどういうふうに今後評価されるか、つまり、それぞれがどのぐらい効果があったかということも、できたら教えていただけると今後の政策を立てるため等々に、よろしいのではないかと思います。ついでに、それぞれのプログラムがそれぞれ予算配分はどういう根拠でお決めになったのかも、もしできたら伺いたいと思います。

(事務局)
 雇用関係ですが、いくつかいただきました。まず地域の関係ですけれども、地域の関係はなかなか説明するのが難しいのですが、北陸とか、関東の内陸で北関東と呼ばれる地域あるいは甲信地方、こういった中部地区とか北陸といった内陸地区は、もともと失業率とか有効求人倍率の数字を見ても、雇用情勢がいいという指標が以前から出ています。
 おそらく、こういった地域では特に電機とかいった機械を中心に、工場立地がかなり盛んであって、そういったところが地域の核になっているのかなという気がしています。ただ、このバブル期以降は、こういった製造業も悪いので、こういったところもかなり落ちてきていますが、他の地域も落ちていますので、まだ相対的に見ると高い水準を維持しているのかなと思っています。
 むしろ最近、特に平均より上になってきたのは東北地方とかです。以前は悪かったのですが、昭和60年とか61年の円高以降、工場の地方移転がかなり進んだということで、東北地方はかなりそういった面が強かったのですが、今まで平均より下だったようなところが、平均より上がってきているといった感じで見ています。

(委員)
 いま、島根とか鳥取とか非常に良いんですね。

(事務局)
 島根とか鳥取はちょっとよくわからないのですが、最近だけで見るとかなり公共工事とかをやった部分がありますので、相対的に公共工事が地方県にかなり多く配分されたということも影響している可能性はあると思います。ただ、なかなかこの辺の状況はよくわかりません。
 あと、特に高いのは香川県とかが非常に高いのですが、もともと香川県は良いのですけれども、最近また特に高くなっているのは、おそらく本四架橋とかいったものによる需要効果とか、あるいは本四架橋ができたことによる工場立地とかが影響しているのかなと推測しています。ただ、地域の関係は如何せん推測の部分が多くて、はっきりとこういうデータでこうなっているとなかなか言いにくい部分がありますので、申し訳ございません。
 年齢別の状況のほうですが、若年というのは非常に失業率が高くて求人倍率が高いということで、いまでもそうだと思いますが、従来からこういった層というのは離転職が非常に多い。自分の都合で辞めて離転職する方が多いという傾向があります。1つの理由は、若い人というのは、まだ自分がどういう適性があるかというのはわからないことがあって、取り敢えず高校の先生とか、大学のときにバーッと回って就職はしてみたけれど、やはりここの仕事は合わないとかいった形で、もっといい自分に合った仕事を探すという過程で辞めている。それは一種の前向きの離転職です。あるいは甘えと言うと何ですが、職業意識がまだ固まっていなくて、ちょっと辛いから辞めてしまうとかもあるのではないか。こういうのが安定所の窓口などでもしばしば聞かれる声です。
 その辺、どっちがどっちというのは、なかなかわかりにくい部分がありますが、いずれにしても特徴として言えるのは、自分の都合で自発的に離転職を繰り返す方が多い。ただ、日本の企業はまだ若者をなるべく採りたいという志向がありますので、求人倍率自体は高くなっているという状況だろうと思います。
 ですから、こういったものへの対応というのは、以前はそういうのは一種のわがままみたいなものだという感じもあったかもしれませんが、ある意味でこういったところは構造的な失業率を上げているという部分はあると思いますので、何か対策を考えないといけない。いまはなるべくそういった職業意識をはっきりするような啓発指導をしています。啓発指導と言っても限界がありますが、学校と職業紹介機関、安定所が連携を取って、そういった仕事に対する意識を高めるとか。あるいは学生に対していろんな情報提供を充実させて、適職選択の機会を広げてあげるといったようなことが必要だろうと思っています。
 ですから、そういう意味で、中高年の方と、対策という面ではちょっと変わってくるのかなと考えています。またヨーロッパのように本当に職業能力が全くなくて、就職できなくて学校を卒業してからずっと失業しているというような長期失業の状況とは、まだちょっと違うのかなとは思っています。

(委員)
 若者はあまり心配しなくてもいいということ。

(事務局)
 というふうな傾向が、以前はどちらかと言うと教育的な観点から、そういった指導をやっていくという感じがあったのですが、どんどんこうやって構造失業率が上がっていくという傾向がある背景には、若年がかなり需要がありながら高失業だというのも、1つの原因だろうというふうには思います。また、最近は若者でも雇用情勢が厳しくなってきていますので、簡単に次のところが見つかると思ったら、なかなか見つからないということもあると思いますので、ヨーロッパ的な本当の意味での若年高失業という状態にならないようにしていく必要はあると考えています。なかなかすぐに対策というのは難しい部分があると思いますが、そういうことは考えていきたいと思います。

(会長)
 他に対策に対して何かありますか。

(事務局)
 あと、障害者の関係のお話がございましたが、これにつきましては数がものすごく増えているというよりも、1例として先般の山一の自主廃業の際にも、ああいう企業ですので障害者の方を多く雇われていたわけですが、やはり解雇という形になりますので、その再就職のためにかなり苦労しましたけれども、概ね大体再就職はなっている。そういう中で、今後そういう形になるとどうしても弱者と言いますか、障害者の方にしわ寄せが来る恐れがあるということで、特に障害者の方に重点的な対応を図っていきたいということで、今回、予算措置をしたものです。プログラムの評価については、おっしゃるとおりですので、その成果と言いますか、それにつきましてはまた機会を見まして述べさせていただきたいと思います。
 あと予算をどういうふうな形で措置したのかについて、能力開発の関係については特に施設内の訓練ですと、いまでも当初から離転職者の規模ですと10万人規模で実施していて、なかなか施設を増やして収容能力を増やすのには限界がありますが、特にそういう民間での教育訓練機関、あるいは事業主団体の委託訓練というのを今回の措置では積極的に活用したいということで、そのための予算措置を図っています。これで十分かどうかというのは、今後の雇用失業情勢を見ながら、また対応を考えていきたいと考えています。

(会長)
 いまの点でも他の点でもございますか。

(委員)
 2点ほどお聞きしたいと思います。1つは、完全失業率4.1%と大変厳しい数字が出て心配しています。これは傾向として3〜4月が非常に伸びたのですが、これは特殊な事情によるものではないと私たちは見ています。この5〜6月も含めて4.1%以降の雇用の推移を、いまどのように捉えておられるのか。あるいは上半期ぐらいの雇用情勢をどのように見ておられるのか。この点をひとつ聞きたいと思います。
 失業率の大きな背景にある製造業の失業者の増加なのですが、これについて具体的にどのような業種において、特徴的に失業率の増加が表われているのか。あるいはその中身については、非自発的理由による離職者ということですから、倒産や解雇等リストラが行われていると思うのですが、何か特徴的な事柄があればご紹介いただければありがたいと思います。

(事務局)
 4.1%をどういうふうに、いまの現状で評価するかですが、私どもの勉強不足もあるかもしれませんけれども、3〜4月に特に特殊な事情があったかというと、他の雇用保険の指標とかを見ても似たような動きをしていることから考えると、やはり正味の数字としては厳しくなっている。この4.1自体が本当に正味の数字かどうかはあるかと思いますが、厳しさがあるのではないかというふうに考えています。
 今後、国全体としては経済対策として16兆円を超えるものをやっていますし、予算も先週できたということで、これから施行されるということになると思います。景気が回復軌道に乗っていけば、徐々に雇用も回復すると思いますが、その効果もすぐに出るのか、あるいは景気が回復してすぐに雇用に結び付くのかといったものには、従来から多少四半期ベースで1期とか2期とかラグがあるとも言われていますので、しばらくの間は厳しい状況が続くのではないかと考えています。
 ですから、その間は、こういった雇用対策のプログラムの効果で、失業者を最小限に食い止めるといった努力が必要だろうと思います。あるいは失業してきた人のために、再就職のための求人開拓みたいなものをする。雇用需要が減っている中で求人全体を増やすこと自体は難しいと思いますが、少しでも多くの求人を確保する努力をしていかざるを得ないと考えています。
 どのような業種から失業者がかなり出ているのかということですが、失業者は通常、労働力調査で取っていますけれども、なかなか労働力調査ベースではそういった数字がうまく取れませんので、例えば雇用保険の数字とか、雇用保険を受給している人がどこから辞めてきているのかといったものを見ると、やはり製造業、建設業といったところでかなり増えているという状況です。雇用が減っている分野でやはり離職者も出ているということです。
 さらにその分類というのは、手元にありませんし取れるかどうかもわからないのですが、全体的なものから勘案すると、そういった非自発的なリストラ、倒産といったものだろうと考えています。あるいは自発的な理由による離職者となっている方々も、これはまだ数字的には把握していませんので、なるべく把握したい努力は今していますが、自分がもうすぐリストラにあうのではないかといった不安から、予め辞めてしまうという方もいると聞いていますので、全体として雇用情勢が厳しくなっているのかなという認識でいます。

(委員)
 そういうことだろうと思いますが、できる限り現状を細かく分析していただいて、それにふさわしい雇用対策を取っていただくことが何よりかと思っています。我々こういう労働組合の産業別組織も、地域事情とか業種でいろんなバラつきがありますので、こういう情報が入れば我が方も対策を取りやすいと思いますので、是非そうした一般的な製造業でなくて、もう少し業種とか地域なんかも分けて、こういう時期ですからその状況も詳しく見ていただきたいなという意見を申し上げます。

(会長)
 まだこれは大事な問題で、いろいろご質問なりご意見がおありと思いますが、予定の議題がございますので次に移ってよろしいですか。

 (異議なし)



○議題(2)教育訓練給付金の支給の対象となる教育訓練の指定基準(案)について

(会長)
 それではそうさせていただきます。次の議題は「教育訓練給付金の支給の対象となる教育訓練の指定基準(案)について」です。まず事務局からご説明をお願いします。

(事務局)
 (資料No.3に沿って説明)

(会長)
 ありがとうございました。この点、この審議会が何回か時間をかけて議論してまいりました。ご質問なりご意見をどうぞ。

(委員)
 質問なんですが、以前に説明があったのかもしれませんけれど、資料3の1頁目の2の(1)の内容なんですが、ロのところで入門的又は基礎的な水準の教育訓練を除くとなっていますが、これはどの辺の判定基準になって、入門的なものと基礎的なものを外すのですか。

(事務局)
 現在のところしてませんけれども、これは一例ですが、例えば英検などでいうと3級程度のものは除いたらどうかという形で議論をしています。

(委員)
 まだ確定しているわけではない。

(事務局)
 はい。これからこういう内容でそれをいただければ、具体的にまた出して確定していきます。

(事務局)
 3級というのは、中学3年生が受験することを想定されているレベルです。そういうレベルの層と。

(委員)
 例えば、その団体が決めたやつの中で、たぶんこの級はこのレベルというのを、試験をやるときには大体決めているのですが、例えばこの入門にあたるというのは、大学生レベルというのは入門とかにあたるのですか。

(事務局)
 内容にもよりますけれども、知識の点から言うと大学生レベルもいろいろあると思いますが、ある程度積み上げた高等教育レベルというのは、ある程度高いレベルになるのではないかと思います。

(委員)
 いま英検に関しても、例えばまず初歩から入っていく。3級レベルから入っていって、それから2級、1級を目指して順次やっていく場合の部分であれば、3級を学んでいる部分についても補助が出ると。

(事務局)
 いまの考え方としては、3級は対象にしないけど2級以上になると対象になる。

(委員)
 3級だけを目指すのは駄目だけども、2級を目指していればいい。

(事務局)
 いや、それはやはり3級を受講している間は対象にしないと。やはり2級のカリキュラムから対象にということです。

(会長)
 いまのでよろしいですか。どうぞ。

(委員)
 ただいまのご説明で、大学院の社会人入学を進める方向で検討されているというふうに言われましたので少し安心したのですが、さっきの緊急雇用開発プログラムの中でも、職業能力開発の高度化とか、人材の高度化という言葉に触れておられますね。これ、私は教育訓練の指定基準というか、ここで言うと指導者にあたるような部分で、特に社会人の大学院入学に関して、こういう対象にしていただくということは非常に大きく、日本にとって少し大袈裟に言えば第一歩になると非常に強く感じます。ですから、これがいわゆる省庁間の壁で、決して後退しないようにお願いしたいのです。
 その理由を簡潔に申しますと、ホワイトカラーに限定する必要はないですけれども、これからの人材の高度化のいちばん重要な部分の1つというのは、メディアの人たちとか公務員の方々、組合の幹部あるいは幹部候補の方々です。そういう方々が対外的な問題に関して発言されるとき、あるいは交渉の場に臨まれるときも含めて、ここで期間は事実上1年となっていますが、この1年は可能だと思います。そういう方々がもう一度大学院で、いわゆるセカンドディグリーみたいなことを目指して再入学されると。これから言論での論争というのは非常に盛んになりますから、そういう方々がグループをある程度念頭に置いて、こういうプログラムあるいは指定基準の作成を是非お願いしたい。
 いま日本がガタガタとトラブッている1つの大きな原因というのは、人材の育成が軽視されてきたのではないかと思うのです。ですから是非、社会人の大学院入学に関して、こういう指定基準に入るような形で進めていただきたい。これは私の非常に強い意見です。

(事務局)
 この場でも何度かそういうご意見がございまして、私どもとしては、いま言われたような方向でしていきたいと考えています。

(委員)
 思い出したのですが、そういう関係で考えると、例えば開発援助とか海外へ行って何かやるというようなことも教育訓練に入りますか。そういうのも入るほうが本当はいいですね。

(事務局)
 そこは正直言いまして、あまり意識にはなかったです。

(委員)
 それは労働省もやっていらっしゃるけど、そういう人が足りないでしょう。ちゃんと英語あるいは外国語で指導できるとかね。企業にもそういう人はたくさんいるわけです。

(事務局)
 外国の大学院へ行くわけですか。

(委員)
 そういうレベルでは必ずしもなくて、企業で例えば外国の直接投資をしているようなところで指導するための人材をたくさん準備するとか、そういうことも広い意味の教育訓練です。

(会長)
 おそらくある意味で、OVTAがある程度やっているものをもっと長期にということでしょうね。OVTAは短期ですから。

(委員)
 教材がなくてはいけないといったとき、その教材というのは例えば書いたもののような教材なのか、もっと例えばこういうものを作れといったとき、その模型を教材と考えていいのか。全部条件を満たさなければいけないということの中に、例えば教材とか実績とかいうのはどうなのでしょうか。

(事務局)
 受講料の中に教材のための費用というのが含まれると話しましたが、その教材とはということ。

(委員)
 だから、いまの開発の問題もそうだし、いろいろな意味で教材というのは常にポピュラーに、いつも誰でもわかるようなものがある場合とは限らない場合に、それでも授業内容という理解ならいいのですが、何かここに書いてあったのは教科書かテキストブックか、何かそういうものという想像なのです。

(事務局)
 我々がいま現在、想定しているのは、教科書というかテキストとか。

(委員)
 そういうものを、まずは作ってくれという理解で考えられると。

(事務局)
 それの購入に要する授業というか、そういう訓練の遂行に必要なものについては、弾力的にやっていきたいということでいまのところは考えています。

(委員)
 先ほど期間に関連して、大学院というのが2の(2)の1年以内ということで、限定しているのかどうかわかりませんが、他の省庁もそうですけど、例えば労働省の中で今度できる応用過程みたいなことについて言えば、むしろ積極的に活躍する場に提供すべきだと思います。この前の審議会でも、夜間等の応用過程の発足みたいなことを、将来にわたって仮に行うとするならば、期間の1年という限定して展開するのが適切かどうか。または特例として問題を見るのか、こういうふうな考え方がございますか。労働省で行っている応用過程に入る資格の問題です。

(事務局)
 その問題につきまして、一応、原則的には1年以内ということで考えていますが、先ほどお話に出た大学院のような場合については、1年を超えるものについて、場合によっては必要性のあるものについては特例と言いますか、そういう形で考えてもいいのではないか。
 いま言われた応用過程の問題ですが、短期過程は短いですから1年というのはないと思いますが、長期のものについては入るかということで、これは全般に費用がどのくらいになるかという問題がいろいろあります。その辺については安定局のほうと、具体的にその必要性について詰めていこうということで、いま考えています。

(委員)
 要望だけお願い申し上げたいと思いますが、せっかく労働省が自らこういうふうなことを作り上げたことだと思うし、趣旨からしても応用過程ぐらいは入れるような仕組み作りはすべきだと思います。実際問題、応用過程というのは単に18歳、20歳というふうな若年の問題ばかりでなく、生涯にわたり多くの人が参加して初めて応用過程というのが構成されるだろうと思うわけです。
 そういうふうなことで、これから検討されることだと思いますが、ひとつ入れるような仕組みと、その期間の弾力性、対応性というようなことで、産業界が非常に関心を持って、自分のほうから派遣したいということの考え方を持っているだけに、それらのことについてもご検討していただきたいと要望しておきたいと思います。

(委員)
 この教育訓練給付金を初めてされるという意味では、そのレベルがやはり大事かなと思います。せっかく作られて、あまり幅広くというかバラまき福祉ではないですけど、そうなると印象が薄いかなと思います。先ほどの2の(1)ロの基礎的、入門的あるいはイの教養的というのをどこで判断するかです。
 たまたま先ほど例に挙げられた英検2級、3級でいくと、例えば2級というのはどちらかといえば教養的とも言えるのではないか。職業能力ということになると、あまり細かい議論をするつもりはないのですが、要するにレベルで、なるほど、これはかなり重点を絞ってやっているなという印象を入れるときに、例えば英検で言えば2級だったらものすごく幅が広いわけです。準1級とか1級という格好であれば、これは職業能力として、英語として何か志すというか、そういう職業に関連するという感じもあるのです。
 レベルをどうするかが大事だという意味で、たまたま例に挙がったものですから、これはいろいろ個人によって意見が違うでしょうけど、例えば2級まで入れてしまうとずいぶん拡散して、あ、このレベルかというふうになるのではないかというのを心配するのですが、いかがですか。

(会長)
 いまの点、何かありませんか。

(事務局)
 いまお話がありましたが、私どもそこのところは実は両方の議論がございまして、非常に難しいところです。

(事務局)
 現在実施している中高年齢労働者等受講奨励金制度においては、一応、新しく入っているのは2級以上ということでやっています。ただ、過去に3級も一部入っているのがあります。

(委員)
 ああ、過去の流れとの継続性。

(事務局)
 ですから、ちょっとそういう点では、そこのところはやや実態的に言うと非常に無理なのですが、ただ、そういうあまり何かバラまき的な印象を与えるとかいけないし、あまりまた狭めると実際に意欲のある人が、ステップを踏むのが狭くなり過ぎるという問題もありますので、そこのところはこれからいろんなケースを具体的に考えていきたいと思います。

(会長)
 2つあります。1つは、いまの趣旨に実は賛成です。大学の学生たちで見ている限りでは、2級であるといささかという気がしないでもない。ただ過去の経緯を引きずっている以上、これはやむを得ない点がもちろんあります。つまり、ある程度準1級以上でないとあまり意味がない。つまり英検そのものを否定するわけでは全くないわけですから、そういう感じが多少あります。そういう意味では過去の経緯をいま抜きにすれば、私は同意します。
 もっと大事なことは、大勢の委員が言われた、おそらくこれが日本の大卒ホワイトカラーを中心にする、日本の専門職でなくて、いわゆる英語のプロフェッショナルですね、そういう人たちの能力開発に対する小さな、しかし案外大きなインセンティブになる場でとてもありがたい。というのは2つ理由があって、1つは、例えばイギリスの企業を見たら、従業員の1割ぐらいしかイギリス本土で働いていないのです。ほとんど外国なのです。日本の松下だったら半分超えていると思います。トヨタはまだそこまでいっていないけど、おそらく近い将来にそうならざるを得ない。そうしたときに、立派に良い物を作ってすごい実績があるけど、それをちゃんとよその国の人に説明するというのはとても大事なことで、それをしないと日本の雇用を保てない面がある。ささやかながらその第1歩として大事だということ。
 もう1つ、いまは残念ながら私は他の省でそれをやっているのですが、さまざまなソフトウェアのルールが日本は蹂躙されている。日本は割と自分の企業グループでやってきたのですが、そうするといま言ったように、よその国とどんどん取引していくと、よその国のメンテまでしなければいけませんから、日本のトヨタならトヨタ、松下なら松下の自分たちのソフトウェアでは間に合わなくなるのです。結局、ドイツ製とかアメリカ製のソフトに牛耳られる。そうすると差し当たりは猛烈に能率が下がるのです。にもかかわらず、そうせざるを得ない面がある。
 つまり何を言いたいかと言うと、要するにある意味で次第に1つのルールを事実上の強制適用に近くなる。そのルールの策定にあたって、きちっと良いものを作っている人がワーワー意見を言うことがないと損してしまう。つまり能力開発の基盤である雇用も危なくなるという気がします。
 そのためにこの労働省の能力開発は生産職場には非常に実績があったと思うのです。それをもう少し、ビジネスキャリアもそうですが、日本流大卒のホワイトカラーにあたる部分に広げる重要な1歩なのです。お金の制約とかありますから、細かい技術的なことは面倒でしょうが、とにかく第1歩を是非、窓を開けていただきたい。それがいちばん強いお願いです。
 他に何かご意見がございませんか。もしなければ次に移らせていただきます。この点はご了解いただきたいと思いますが、よろしいですか。それではご了解いただいたものとします。



○議題(3)高度熟練技能活用検討委員会報告書について

(会長)
 次に議題の第3は、「高度熟練技能活用検討委員会報告書」です。お願いします。

(事務局)
 (資料No.4−1、No.4−2に沿って説明)

(会長)
 ありがとうございました。ただいまのご説明に対して、何かご質問なりご意見がございますか。

(委員)
 これは私の個人的な意見ですが、技能尊重気運を醸成したい、しなければいけないというのは全く大賛成ですけれども、具体的な中身について疑問があります。1つは非常に技術的なことですが、高度熟練技能あるいは高度熟練技能者を公共財というふうに言うのは経済学の定義に反する。公共財とは言えない。何を言いたいかはわかりますし、共通の遺産として大事にしようということだと思いますが、経済学で言う公共財とは言えないと思います。
 もう1つ、Aタイプを特に大事にしたいということですが、機械で達成できる精度とか品質が可能であれば、機械を使わないで、機械と同等に作れる技能というのを何で大事にする必要がありますか。それは骨董品を大事にするというのと似ているのではないですか。ちょっと強い言葉で申し訳ないのですが、高度熟練技能と言うときは何かもっと違うものを考えなくていいのでしょうか。これは問題提起です。

(会長)
 いまの点について何かありますか。

(事務局)
 公共財の問題につきましては、そういう気持で書かせていただいたものだと思います。Aタイプ、Bタイプ、Cタイプの問題ですが、ここでの問題意識は、当然B、Cタイプも企業の中では高度熟練というふうに認識されている場合が多いのだと思いますが、そういう部分は比較的企業としての具体的なニーズがいままでもあったので、比較的その企業の中で育成がされやすかったのではないか。
 それに対してAタイプの場合には、時間がかかるとかコストがかかるということで、ちょっと強く言えばおざなりになってしまったのではないか。そういう中でAタイプが技能のベースとなって、それにBタイプ、Cタイプという発展した形の技能が出てくるわけで、そういう意味でAタイプをまずこの場で議論しましょうという推移でした。

(委員)
 ちょっと疑問があります。もう少し検討したほうがいいのではないでしょうか。少し過去にとらわれているのではないかと思います。

(事務局)
 具体的に何かご提案がございましたら。

(委員)
 日本にとってどういう技能がこれから必要かということを考えて、そういうコンテクストの中で、高度熟練技能とは何かということを確定することが必要で、そういうことと離れてただ珍しい技能とか、高い技能を持っている人を尊重するというのは、それ自体としてもちろん賛成ですが、政府の政策として考えるときは、コンテクストが必要ではないかと思います。

(委員)
 いま言われたような感じも一面するのですが、ここで言っていることの中に、やはりBタイプ、Cタイプの技能と技術の関連の中で考えれば、Aタイプの人がちゃんと育成されていないと、できませんよということが1つあるんだと思います。確かに特殊な技能だけでということになると、機械でやれないことだけやるとなり、それこそ文化庁の分野との関係でどっちかなと思うようなものも起きてきますが、実際はそうではなくて、新しい製品を作っていくいろんなプロセスの中に、Aタイプの人がどうしてもこれからも必要ですよという理念が1つ入っているように思いますが、いかがですか。

(事務局)
 博物館に入れて取っておきたいような技能を、ここで伝承するという仕組みでは全くないのです。そういうことを考えているわけではありません。実際の製造業の作業現場で本当に不可欠な技能だけれども、このまま放置すれば企業単位で伝承されない。あるいは業界全体としても伝承しにくいような技能というイメージなのです。
 具体的には、3頁に作業例で研磨の話がありますが、例えば5/1000ミリの誤差が問題になるような作業で、あるいは機械によっては5/1000ミリの作業ができる機械もあるかもしれませんが、ここで想定しているのは、通常の機械では5/1000ミリの作業というのは、人の五感でないとわからないようなものとかです。金型の製造などがよく例に出されますが、通常程度の精度でいいような金型ですと、これはCADやCAMでできるわけですが、例えば1/1000ミリ単位の精度が必要なような金型というのは、最後の微調整はやはり高度熟練技能者が手でやっているのです。私もその現場を見たりしました。
 そういうことをイメージとして描いていて、珍しいものを尊重ということでは全くなくて、いま、まさに日本の物づくりの実力を維持して、またそれを将来につなげていかないといけないときに、放っておくと無くなってしまうような、養成に相当に年数のかかるような技能のところから、まずやっていこうと。BとかCタイプというのは、BとかCタイプを必要とする職場というのは大変に広範ですので企業の中でも養成されていますし、私どもの公共職業訓練の中でも、そういうものは養成されているということもありますので、まずいちばん危機意識の強いAタイプからとっかかったらどうかというのが、この報告書の提言だと理解しています。

(委員)
 わかりました。

(事務局)
 具体的に情報を集めるときの、どういう情報を集めるかという基準などを作るわけですが、それについての考え方は9頁とか10頁にあります。まず今後ともこの技能についての高い必要性があるということと、であるにもかかわらず、その技能が無くなってしまう可能性があるという分野わけの中で設定していこうと考えています。

(会長)
 私はいま、ちょうど金型職場をいろいろ見歩いて調査していますが、むしろ最も精密を要する金型の技能は、実はちょっと違う面かもしれない。確かに手の研磨は残ってはいるのです。でもその相当の部分は昔に比べて少なくなりました。むしろいちばん残っているのは何かと言うと、金型はいろいろやり方があるようですが、構想設計、詳細設計、形状設計をやって、その後に数値を入れますね。つまりプログラム作り、そして修正です。
 そうすると、見ているといちばん最後の組立のときは、むしろ数量設計、形状設計の最後の詳細設計に誤りがあると、かえってまずい点がある。その誤りの発見のほうがむしろ重要で、そうすると案外に細かい手の研磨も不要だとは言いませんが、むしろそれよりも、ある種の金型全体に対する構想のアイデアとプログラミング、つまり金型製作についてのプログラミングについてのノウハウが非常に重要です。それをどういうふうに育てるかというと、もちろん研磨はやるのですが、同時に2、3年は数値設計、形状設計の最後の詳細設計のほうに回したりするというのが少し出始めてきました。
 私はA、B、Cそれぞれあれですが、Aが特に重要というふうに言うよりも、むしろBなりCなりの1つの基礎として、Aをちょっと見るぐらい、つまりバランスの問題のような気がします。これはたまたま金型研磨の例が出たので申しますと、最もマニュアルなことを要求されることの1つが金型研磨であることは、異論は全くないのです。
 ですから、そこを割と詳細にいろいろなケースを見ている限りでは、いま1つのケースではなくて総合して言うと、案外B、Cというのは、ただ幅広くやるというのでは全然ないのです。その点はもう少しお考えいただいたほうがいいような気がします。

(委員)
 ご趣旨はわかります。ただ、人間が機械ではできないことをやるというところが高度技能なのであって、機械がやってくれるところはそこは任せて、総合とかあるいはセンスを持つとか、あるいはさっきのお話の外国の人にもわかってもらうというのも含めて、新しい時代に入って新しい高度熟練技能が必要になるのだと思うのです。だからご趣旨はよくわかりますが、説明がもうちょっとあってもいいのではないかという感想です。

(委員)
 いま金型の話が出ましたので、そこから入りたいと思います。実は私のところは金型を製造するNCマシーンを売っているメーカーです。トヨタにも何台かは納めていますが日進月歩でどんどん進んでまいります。その意味では高度技能という研磨の必要性というのは、どんどん少なくなっているだろうと思います。
 一方、このレポートに出てくるような問題について、実は私はこれに対しては賛成です。というのは、やはり職人的な技能というものは大変な努力が要るわけで、その努力を続けさせるのは社会における評価であるとか、なにがしかの報酬であるとか、そういうものによって続けられるわけです。そういうものが必要であるというのは、我々メーカーにおいては一般的な意見であり、このレポートは当たっているという認識です。

(会長)
 ありがとうございました。まだご意見がおありかと思いますが、もう1つ議題がありますので次に移らせていただいてよろしいですか。



議題(4)地方分権について

(会長)
 もう1つは議題の(4)「地方分権について」です。事務局から説明をお願いします。

(事務局)
 (資料No.5に沿って説明)

(会長)
 ありがとうございました。何かいまの説明に関してご意見なりご質問なりございますか。特にないようでしたら、あと数分ですが、今日の議題と関わりないことで何かご意見なりがございましたらどうぞ。

(特になし)

(会長)
 本日は以上をもちまして終わりにしたいと思います。ありがとうございました。



(注)  本文中に記述されている資料については多量なため省略しております。資料についての詳細及び問い合せについては、職業能力開発局能力開発課 03-3593-1211(代)までお願いします。



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