中央職業能力開発審議会第174回総会議事録
労働省職業能力開発局能力開発課
日時 平成9年9月8日(月)10:00〜12:00
場所 労働省省議室
議題 (1)平成10年度職業能力開発局重点施策及び概算要求について
(2)職業訓練基準等の改正について(職業訓練基準部会報告)
(3)調理関係訓練科に係る職業訓練基準等の改正について
(4)その他
出席委員 学識経験者 小池会長、今野委員、尾高委員、小宮山委員、早川委員、古郡委員
労働者代表 柿崎委員、草野委員、鈴木委員、久川委員、平山委員
事業主代表 岩口委員、斉藤委員、杉山委員、福田委員

 ○ 議題1 平成10年度職業能力開発局重点施策及び概算要求について

(事務局)
 (配付資料No. 1、2について説明)

(委 員)
 最後にお話しになった、8名になったのはこの1年間で、その前までは10名だったのです。その時、実は国の数などが減らなかったのですが、今度12名にする時には何か特別な理由があるのでしょうか。

(事務局)
 いま委員がおっしゃったように、タイ、フィリピン、インドネシア、レーシアから今年度は8名を受け入れておりますが、10年度におきましても国の数は引き続きそのままにして12名という形で考えております。また、対象国についてももう1カ国拡大しようということで、具体的にはベトナムを念頭に置きまして、10年度は調査を行うことを考えております。その結果を見て、指導員養成の協力の必要性が高いということであれば、11年度以降の予算に反映していきたいと考えてございます。

(委 員)
 ODAがカットになったという全体の状況の中で、やむを得ない部分もあるのかと思うのですが、国際協力の部分などが、全体の予算の枠が減ってきますと、概して減らされる傾向が非常に強いのが気にかかるのです。外国人の研修生の制度も作るときには、かなり景気の状態もあって、すごく熱が入っていたのが、最近少し熱が引き過ぎているのではないかと思いまして、これから先、必ず人手の問題とかで、この辺を手厚くやっておかないと、日本としてもいろいろ困る部分があるのではないかと常々思っております。まだまだ試験の仕組み自体なども改正しなければならないところが非常に多くて、実際にやっているものの、項目で受けられなかったりとか、試験の内容によってすごく受験生の受かる確率が違ったりとか、まだまだ力を入れて充実していかなければいけない部分が多いのではないかと思っていますので、その辺り、全体の状況はわかりますが、あまり減らさないで充実していってほしいなと思っております。

(事務局)
 技能実習制度をはじめ各種施策について概算要求したところですが、今回の予算が1割カットということはありますが、その中で一律に削るということはなくて、各事業の中でメリハリを付けて、今回考えてございます。いまおっしゃいました技能実習制度の対象職種の話なり、あるいは試験制度の話なり、制度を運営にする上におきまして大事な問題だと考えていますので、さらにその辺の充実というものを当然考えていきたいと思っております。

(事務局)
 額的には、ここに書いてありますように6億6,000万円で、昨年は7億4,000万円ですから、約1割、7,600万円の減で、同じODAの中でもやはり必要ではないというわけではございませんが、精査しながらそれに合わせて要求をしているところでございます。

(事務局)
 技能実習制度のことをおっしゃっているかと思いますが、いま実態を見ますと、今年の4月から2年を3年にしています。ただ、見てみますといろいろな職種でやりたいというのが、増えてきています。いま全体で技能実習が累計で1万人近くになって、これからおそらく予想的に見ますと、労働力不足時代が来るということで、職種も含めて、対象職種も見直しをやりまして、そこはちゃんとしたルールというか、確立していかなければいけないのではないかと思っております。

(委 員)
 新しい建設業・製造業の担う人材育成、いわゆる私立大学に対する国際技能振興財団を通じた支援という新しい予算項目があるわけですが、説明はお伺いしていますが、1つは私どものような所で行っている民間での訓練などの部分はかなり制限されているし、あまり伸びが悪い状況で大変苦労しているわけです。それから労働省全体として見ると、公共職業訓練の高度化ということで、大学校とか短期大学校の大学校化とか、かなり充実を図るという路線で、それはそれで進められている施策になるわけです。今回出ているこの問題は、いろいろ背景はあるようですが、基本的には文部省所管の私立大学校に特異な性格を持たせるということで、労働省として支援をしようと。考え方としてはあり得るかなと思うのですが、全体のこういう労働者なり、技能開発なりをやっていく流れの中で見ると、ちょっと唐突で、もう1つ言えば、果たして私立大学校の中で、期待されたようにうまくいくのかなと。要するに、いま働いている労働者の皆さんが、四年制大学に行くようなシステムが、いまの枠の中で労働省が期待したようなものに進むかどうか、という点ではちょっと危惧もあるので、十分いろいろな判断をされたと思っているのですが、少し整合性にちょっと欠けるものがあるのではないかというような印象をぬぐえないということを述べさせてもらいたいと思います。

(会 長)
 いまのご指摘は、概算要求の4頁の中ごろから下の項目に、いまの点で何か事務局のほうでご説明することはありますか。

(事務局)
 これはおっしゃったように、民間の私立の大学の設立の運動で、そういう民間の運働体が、産業界のニーズを踏まえて、産業界のニーズに合った高等教育機関を作りたいという、民間主導の運動なのです。それを私どもがどういう形で応援するかということですが、1つはもちろん私どもの従来の行政の領域であります能力開発の体系、民間の認定訓練も含めてですが、能力開発の体系の中でどういう施策を実施しているかということとの件ですが、そういうことをやった上で民間の運動に労働者はどういう観点でコミットするかということが問題だと思っております。2つございまして、1つは新規学卒者も、例えば工業高校の卒業生にも広く門戸を開いて受け入れたいという趣旨もあるようですが、在職中の職人さんたちが、もう一度体系立った学問を身につけて、それでいま職場の産業界のニーズに応えるようなそういう高度な人材を養成したいと。ですから、いまいらっしゃる在職労働者の能力開発に資するという観点で私どもの行政目的に合致するというふうに思いました。2つ目には、そういうことを通じて技能労働者の社会的な地位といいましょうか、技能労働者も体系的な学問を習得して、大学卒業、学士という資格を得て伸びていくというようなことは、ひいては技能労働者の職人さんたちの社会的な地位の向上にも資するのではないかという2つの観点から、在職労働者の能力開発の促進という観点、それから技能労働者の全体的な社会的な地位の向上という観点から応援するということには十分意義があるのではないかということで応援するということにいたしたわけでございます。一方、私どもが手掛けている能力開発短期大学校を全国で26カ所持っておりますが、それを統合しながら、そのうちブロック単位程度で大学校化、四年制での訓練ができるようにするという対策も併せて持っておりますが、両方とも人材の高度化を図る、産業界のニーズを踏まえた人材を作るということでは共通点も多いわけです。かたや、能開大学校というのは地域の中堅企業の労働者、そこで中核的に地域の中小企業を担っていく労働者を作るということが主たる人材養成のターゲット化というふうに思います。
 一方、こちらの大学校の構想というのは、聞いておりますところによりますと、もちろんその地域の中堅企業の労働者になる方もいらっしゃるでしょうが、それ以外にマネージメント教育というのが先ほど説明にもありましたが、例えば企業の後継者になる、あるいは自分で企業を起こすというような働き方にも対応できるような人材を育てていきたいと思います。

(委 員)
 その時に大学設置基準というのが大学をつくるときにございますが、これは新しいタイプの私立大学というのは、こういう目的は非常にわかりますし、いま労働省で進めている短大の大学校化などはある意味で仕分けができるわけですが、この新しいタイプと言われている中には、大学設置基準もこのタイプに合わせたものとしてつくることまで構想の中に入っているし、労働省としてそれに関係していくという姿勢なのでございますか。

(事務局)
 いま、私どもが認可をした国際技能振興財団という公益団体のほうで文部省といろいろ調整を進めつつあるように聞いておりますが、大学設置基準自体は、相当弾力的になっておりまして、いろいろ特徴のある大学教育というのが出来るようになっているのです。しかしながら、いまある個々の国立大学、私立大学を見ますと、必ずしもそんなに特徴が出ていないというのは、基準と実態との間に少し差があるというのか、乖離があるということかなと思いますので、ぎりぎりいまの大学設置基準を前提にしてどこまで特徴のある大学が出来るか、カリキュラムの面で、教員の構成の面で、学生が入学する時の選抜の方法とか、基準の面でいろいろ考えておられるようです。

(委 員)
 先ほど述べていますからいいのですが、後段の、現業で働いている労者の育成というか、さらに高度化した技能の育成という趣旨が言われているわけですよね。そこら辺は考え方としてはあり得ることだけれども、非常に難しいし、実際はそうならないのではないかという危惧を持っているのと、そういうことは表明しておきたいなということなのです。ですから、十分精査してほしいなという意味で言ったのです。
 それから、やはりちょっと唐突な部分になっていて、例えば私立大学校などが今後かなりいろいろな方向に進みつつありますね。カリキュラムなどもだいぶ変わったりしておりますし、そういうものなどとの関連もありますし、これからスムーズに進むのかなという印象があるということも言っておきたいということです。

(委 員)
 ちょっと観点が違うかもわからないのですが、いま政府の方針を基にして、予算の項目について説明がございまして、概略を伺ったわけですが、政府自身が今後この3年間そういうふうな方針でいくということであれば、資料の中に書かれてありますように、重点施策として進めるものはわかるのですが、そういう枠の中で今後この辺について見直しをしてやめるもの、これはやめなければいけない、あるいは全体の流れの中で必要性も少なくなってきたということで、そういう物差しで見る必要があるのではないかと思うのです。これを見ますと、補助金も一律カットというふうな格好で、補助金のところだけではどうにも吸収できないような状況になり兼ねないなと思うものですから、補助金などについても本当に一律カットでいいのかどうか。やっぱり補助金をきちんと出すべき所にはもっと出していく必要もあるのではないかと思います。基本的にこの財政構造改革から出されました3年間の集中改革期間に対して、労働省として10年度の概算要求ばかりではなくて、今後どうしていくのか、もう少し大枠の説明があってもいいのかなと。この新規事業だけの説明はあるのですが、やめてもいいと思っているようなものもあるのではないかと思うのです。そういう点がもう少し説明があってほしいなと思ったものですからお伺いしたいのです。

(事務局)
 おっしゃるように、3年間10%減というのが続くと、事業規模が7割近くになってしまうので、そういうすべての事業が細々とやるのがいいのか、それとも本当にこれから拡充していかないといけないものと、それから効果を見て、そろそろこの辺りで終息をする、あるいは様子を見てもいいようなことというのは、それは考慮していくべきだというのはおっしゃるとおりだと思います。私が1つだけ例で申し上げたいと思いますのは、ODAの関係で、これもやはり全体で10%削減というので厳しい予算編成だったのですが、外国からの留学生の受け入れで、従来能開大学校で留学生を10人、今年は8人に削減されていたのですが、受け入れておりまして、これを大変厳しい予算編成の中で12人に増やしました。これは能開大学校の留学生というのは、開発途上国の訓練指導員、訓練校の先生になる人たちを受け入れて、養成をして、それぞれ母国へ帰って、母国の訓練校の上になっていただくようなものです。こういう人材ですから、人づくりの協力の中でも非常にベースになるものであるというふうに思いまして、これは拡充することにいたしました。
その一方で、事業を取りあえず廃止をしたというほどまで最終的に判断しているわけではございませんが、取りあえずゼロにして、要求をやめたものがございます。これは能開短期大学校で受け入れていた訓練生でございます。これは従来、12名受け入れておりましたが、その事自体効果がないということでは決してないというふうに思います。これは2年で短期大学校で学習して、それぞれ母国へ戻って、母国で技術技能者になる人たちなのです。そうすると、波及効果から言ってみたときに、訓練校の先生を養成するのと、一技術技能者を養成するということであれば、この重点というのは先生の養成のほうではないかと判断いたしまして、短期大学校の受け入れは今回はストップすると。いま受け入れている方は卒業するまでは面倒見なければいけませんが、新規の受け入れは取りあえずストップして、一方能開大学校の受け入れに枠を広げる。1例ではございますが、工夫をいたしたところもございます。

(会 長)
 いまのご意見は非常に大きな点ですから。

(委 員)
 大きな柱として労働省として今後こういう環境変化の中で、しかも政府方針として明確に出されている。これに対して、労働行政を預かる立場から、どういう物差しでやっていくのかというのが、正直なところ単年度の予算についてはわかりますが、全体像がちょっと見えないなという思いがあったものですから、その辺をお伺いしたいと思って質問したわけです。

(会 長)
 ただ、いまのご質問は主として能力開発ですか、それよりももっと広くということですか。

(委 員)
 できれば労働省全体も含めてという思いもあったものですから、ここの部分の説明についてはわかるのですが、印象としては補助金の一律カットというのがあまりにも前面に出てしまって、本当にそれでいいのかという思いもありますからね。

(事務局)
 私どもも今回労働省全体の予算編成ということで、こういう大前提で予算編成をしなければならないのはもうご承知のとおりかと思います。ただ、伸ばすべきものは伸ばさなければいけないということで、基本的に重点を置いた点は、現在、構造変化をいかに乗り切るか、新しい方向に向けて構造変化に対応する力をつけなければならないという点で、そういう点をまず第一に重点として、そこに向かった予算配分を行いたいということで予算編成をいたしております。
 その中で、私ども能開局で見ますと、能力開発の人材育成というのは、構造変化で特に重要な項目ということで、これは相当思い切って増やしております。具体的に申しますと、この中の2頁目に、「構造変化に対応した職業能力開発の推進」ということで、対前年度130%増をさせると。その他でも、職業安定局関係、特に構造変化の労働力移動に対応した形での職業紹介という点では、かなりこれから思い切った施策を打つということで、そこは重点配分をしていくということであります。
 各々強弱を私どもとしては相当付けているということであります。いま申し上げましたように、いちばんの問題は、私どもの題目として、3つ重点施策を挙げております。第1は「経済構造改革を担い、生き生きとして働ける環境の整備」ということで、いま申し上げましたように、「活力にあふれた創造的な働き方を促進する労働環境の整備」というのを第1番に挙げております。そこでは、労働時間法制の問題、労働契約法制の見直し、2番目が雇用保険制度の見直しということで、今回自主的に能力開発を行う援助施策を総合的に支援するという制度を創設したいということで、雇用保険制度はそういう方向での改革をやりたいということで、そこでは相当重点を絞った形にしております。
 2番目が「健康で安心して働ける勤労者生活の実現」ということで、これは主として安全衛生の問題、労働時間短縮の問題、健康の問題については重点的に予算配分をするという形にいたしております。3番目の大きな柱が「多様な個性や能力を発揮し、少子・高齢社会を支える基盤づくり」という題目でやっております。特にこれから大きな問題になるのが、高齢者の問題ではないかということで、アクティブエージングの観点、これは前回のサミットでも言われたことですが、そういう65歳現役社会の実現に向けた施策については、そこに重点的に配分していくというポイントをしております。ポイントを絞った形での予算配分という形で予算編成を今回しております。
 そのようなことで、ただ一律ではなくて、必要なところに必要な財源を私どもとして、労働省としてこれからの社会構造変化に対応した、特に構造変化の問題、高齢化の問題、人材育成は相当厳しい予算ですが、全体は相当伸ばしておりますので、そのようなことでご理解をいただければと思います。後ほど労働省全体の予算の資料はお渡しするということで、ご説明に代えさせていただきたいと思います。

(会 長)
 この概算要求、あるいは重点施策のご説明をいただきますときは、委員の先生方がいますぐではなくても、今後こういう点をお考えいただけたらという点をお出しいただくいい機会でございますから、いままでもそうしてまいりましたし、今年にかかわらず何かお考えがございましたら、どうぞおっしゃってください。

(委 員)
 今後のことということであれば、労働省のビジネス・インターンシップ制度のようなものを再就職、あるいは再訓練の一環として導入したらどうかと思うのです。例えば能開校の学生を実際に2、3人企業に送るとか、あるいは個人がある窓口に行って、窓口でどこかに行ける企業を紹介してもらうというような制度を設けていただいたらどうかなと思うのです。その窓口では、例えばどんな企業がビジネス・インターンシップの生徒を何人ぐらい受け入れてくれるか、というような枠組みを窓口で作ってもらって、そしてその受け入れてくれる企業には何か助成金を与えるというような制度を設けていただくと、もっと職業訓練の高度化という時代にマッチして、あまり遅れないようにそういう訓練ができるのではないかと思うのですが。

(事務局)
 ただいまのインターンシップの点につきましては、主には予算的には私どもの職業安定局と文部省、通産省のほうで共同して、積極的に進めていきたいということで検討しておりますが、いま先生がおっしゃいましたような観点で、特に私どもの能力開発施設を担当する者としても、その修了生がうまくいい職場に定着できるという観点から積極的に検討していきたいと思っております。

(会 長)
 いまおっしゃったのは、主として能開施設にいる学生さんたちのことですか。

(委 員)
 そうではなくて、個人でいいと思うのです。個人で何か相談できる窓口に行って、窓口で紹介してもらうという形でもいいかと思うのです。そういう窓口を作っていただけるとありがたいのではないかと思います。

(事務局)
 それは職業紹介の全体としましては、安定局でございますが、いまおっしゃったような観点から、私どものほうもよく連絡を取ってやっていきたいと思っております。

(委 員)
 いくつか教えていただきたいことがあるのですが、ここに書かれているような内容については、先ほどのご説明でそれなりの理解をするのですが、例えば先ほどお話があったように、現在の雇用促進事業団が運営をしている様々な短期大学だとか、あるいは大学校化とか、そういうような所といま主流になっている民間活力という関係の中での民間とのすみ分け問題というのは、どうも今一よく見えないところがある。そしてさらに、国際工芸大学をつくる母体というものがどうも今一よくわからない。そういうようなものがこれからより政治の圧力の中で拡大したときには、圧力と言ったらあれなんですが、いったい労働省としてどういうふうにそれに対応していくのか、そこが非常にわからない。
 もう1つは、雇用促進事業団だけではなくて、やはり県にもそういうような施設があるわけですから、そこの施設のすみ分けというものが、我々が何回聞いてもよくわからない。「いや、それは県でもこういうふうになっているんだ、ああいうふうになっているんだ」と言うけれども、その事の実効を国のほうは担保されていないのではないかというような感じがするわけです。これは意見ですので、特にご返事はいりません。
 そこで、次の2頁にある「産業発展を支える技能人材の育成強化」という所で言うならば、いまいちばん日本で気になっているのは、産業基盤、経済を支えている中小企業の人材の育成、そして技能の継承ということで、こういうものに対していま大きく言われているのは、ものづくり基本法の制定というものを我々は提起し、いろいろなチャンネルの中でこの問題が話されているわけです。
 そういうような部分というものは、産業発展を支える技能人材の育成強化の部分とどういうふうにリンクしているのか、考え方があればその考え方を聞かせていただきたいと思います。特に(2)の「地域人材育成総合プロジェクト事業の推進」の問題というのは、新しく9年度から通産省とジョイントして始まった新たな事業のことを指していると思うのです。これは通産がインフラをやり、労働省が雇用、そして能力開発、そういうようにお互いに役割をすることによって、大きなうねりをその地域で作っていこうという趣旨については我々としても理解しています。むしろ、そういうものをより強化することが必要だろうと思います。
 ただ、そのことを今度は予算面で見てみますと、今回は予算上の問題は別にしても、8月だとか、9月に10地域が指定されているわけですね。予算的にもまだまだあるはずだと。そこら辺の部分というものが、地方に上がってくるパイプとそれを決定するパイプというのが非常に透明性が欠けていると、それはわからないと。どういう形でそれらが指定されてくるのか、そこら辺についてはもっと透明なあり方というものができないものだろうか。
 さらには、次年度以降、この予算を見る限り、非常に小規模予算になっている。したがって、次年度以降は一体どういうふうに考えていったらいいのか。現在の10地域プラスアルファということになるのだろうと思いますが、その間の指定は5年になりますが、そこのところがよく見えない。
 もう1つは、高度活性化の地域指定と現在の雇用安定地域に指定されている地域。そこのところとの将来的な形というものが、どういうふうになるのか、これは特に能開ということではなくて、地域雇用対策課の所轄になるかもわかりませんが、どうも今一そこら辺がよく見えてこない。
 3つ目の問題としては、建設問題です。先ほど局長もおっしゃっていましたが、労働安全というのは非常に大きなテーマであると。ところがここ3年、災害事故は減少傾向にあるけれども、死亡事故が増加傾向である。特に建設における墜落、転落は非常に大きい。製造業で言えば巻き込みだとか。こういうものはやっぱり訓練の中で非常に重要な柱だと思うわけです。したがって、そういうような労働安全にかかわる訓練問題とか教育問題というものが、この中に当然含まれているのだろうと思うのですが、もう少しそこら辺の考え方があったらお聞かせいただければ、私自身としては理解が早くになると思うわけです。
 それから、いまODAでいちばん問題になっているのは、個々にODA予算を勝手に組んでやっているという。したがって、重複問題が非常にあるわけです。我々はODAの問題については、ODAを一括する予算を組むべきだと。そういうような障壁だとか、そういうものにこだわることはない。そして従来のように、箱物ではなくて、むしろソフトのODAというものをこれから我々自身も検討すべきだと。したがって、そういうようなそれぞれの考え方をまとめる所管を作って、そこで政府として新しいODA予算を組んで、それをやるべきではないかといま思っているわけです。
 だからいまのようなODAの予算の組み方、配分の仕方であれば、これはいくらやっても所詮はそんなに大きな期待をすることはできないのではないかと。それはむしろ仕組みと制度の問題ではないかと思いますので、いま言ったようなところについてもう少し事務局としてのお考えがあればお聞かせいただければと思います。

(事務局)
 まず「産業発展を支える技能人材の育成強化」ということで、特に今年から始まっています地域人材育成総合プロジェクトは、予算的には一応20地域ぐらいを目途ということでございます。主には各県と相談するという形になっているのですが、確かにいまおっしゃっいましたように、県との協議の過程というのが見えにくいのではないかと。これは実は私ども職業能力開発局と職業安定局と通産省のほうで協議しながら指定はしていっているのですが、そういう県とのいろいろなやり取りの過程、地域の要望が本当に聞けているのかどうかというお話かと思いますが、その点につきましては、私どもももう一度、地域なりの要望がきちんと汲み上げられているかどうか、2省で問題がないような形で今後地域指定に当たっていきたいと思っております。

(会 長)
 それと雇用安定指定地域との関連について具体的に。

(事務局)
 地域雇用開発等促進法に基づく高度技能活用雇用安定地域とのすみ分けといいますか、それがわかりにくくなっているのではないかというご指摘かと思いますが、その点につきましては、安定局に対しましてわかりやすいような形で、地域のデバケーションといいますか、そういうことができるように安定局のほうにもお話申し上げたいと思います。

(会 長)
 建設とは限らないけれども、労働災害を能力開発の訓練コースの中でどういうふうに取り入れているかという点がありましたが、それについて何かありますか。

(事務局)
 基本的には訓練基準で、安全衛生を1つの必須科目として、各々必要な分野について入れてあります。ただおっしゃったように、労働省全体で、これは安全衛生部が主管でやっておりますが、公共職業訓練についてどんな形でちゃんとやっているかということを一遍調べて、是非安全衛生部と連携を取ってやるように、私のほうから指示します。確かに重要な視点ですので。

(事務局)
 ODAの話になりますが、今までは大蔵省主計局の労働係というのが私どもの労働省の担当の査定の所でございますが、このODAに関しましては、先ほど先生がおっしゃられたように、そういう似たような事業をやっているのではないかという話が少し出ているように聞いております。今年から、説明も主計局の経済協力係という所で二本立てで動く形になっておりますので、その時に各省庁でやっている重複しているようなところも、もしかしたら問題提起が出てくるかもしれませんが、変わったところでは今年からそういう形で査定を受けるという形になっております。

(事務局)
 ものづくり基本法への私どもの姿勢、関与の方針についてコメントさせていただきます。まず、新政策の資料bPの2頁目の2の(1)に「高度熟練技能活用促進事業の拡充」というのがございます。これは後ほど担当課長から説明があると思いますが、これは研究会を設置させていただいて、企業に任せておいては熟練技能が消滅する危険性のある技能、しかし、社会全体として、産業界全体としては将来的にも継承して活用していかないといけない。そういう技能がどこにあるのか、それからどういう形でそれを継承、活用することができるのかということをいま検討いたしておりまして、具体的な事業化を図りたいと思っております。これ以外にも熟練技能のそういう人材を持った人の育成というのも、局の大きな行政課題の1つであるわけでございます。
 一方、いまおっしゃったものづくり基本法の動きを私どもが承知しているのは、労働組合も熱心に動いているというふうに伺っておりますが、議員立法でものづくりの基本的な計画を政府全体で作り、その計画を作るために、労使も含めて関係者が参画できるような仕組みを作ろう、という法律の中身だというふうに思っておりまして、私どもが案を見させていただいた限りでは、議員立法の動きがあるということであれば、是非ご一緒に係わらせていただいて、いまの原案よりもさらに私どもの役割をきちんと位置づけていただいて係わっていきたい、というのが基本方針でございます。

(委 員)
 まだ様々な部会等がありますので、その中でさらに詰めてみたいし、きるだけ実効が担保できる、これを待っているのは我々ではなくて、やっぱり現場のそういうものを作る人たちですから、そういう人たちの期待に応えられるように、我々も審議会を作ってまいりたいと思います。
 ただ、1点だけ。いわゆるこの秋に65歳推進会議が発足して、その中でいろいろなテーマで、65歳定年問題だとか、あるいは継続雇用問題、エージェンシー化の問題だとか、3つの選択肢のシナリオが議論されていくというふうに考えているのですが、そうであればあるほど、高齢者の熟練した技能を活用する、豊かな知識を活用する、そういうものを企業に求めるだけでは企業負担として非常に大変だと思うのです。企業はスリム化して、いわゆるグローバル化の中でどういうふうに勝ち残っていくか。そういうことですから、何でもかんでも企業にそれを負担させるというのは限界性もあるというふうに思うのです。したがって、どうしてもそこには公的なサポートが必要である。公的なサポートには、先ほどおっしゃっていたような個人への助成の問題もあるだろうし、事業主への助成の問題もあるだろう。だからそういう意味では、高齢者としていままでの知識と高度な技能を伝承できるような中核になる、そういう役割を担うような助成のあり方というものも是非この中で検討いただければと思います。これはこれからのそれぞれの部会の中での議論のテーマだろうと思いますから、一応意見として表明しておきたいと思います。

(事務局)
 いまの点は非常に大切な問題ですので、4頁の中ほどにありますように、現在「高度熟練技能活用促進事業の拡充」ということで、そこでどう活用していったらいいかと。私が高齢者の実態を見てみますと、自分たちが技能、技術をつけたものをみんなに伝えたいというものすごい意欲がある人が相当増えております。これが現実にあまり使われていないというところがありますので、そういう点は十分考えていかなければならない問題ではないかと思っております。
 職業訓練の役割、民間、地方公共団体、国の役割分担の関係について少しだけ私どもの考え方をご説明させていただきます。私どもは、職業訓練なり人材教育は、基本的には民間でやるというふうに思っております。ただ、私どもが公共職業訓練で現在やっているのは、3つの視点を基準にいたしております。1つは中小企業です。自分の所でオン・ザ・ジョブ・トレーニングなり、オフ・ザ・ジョブ・トレーニングができない、資金的にも、人的にも、先生の面でもできない分野は、やはり国なり公共団体がそれに代わって担う職業訓練体制をちゃんと作っておくべきであるということがまず1点であります。
 2点目はやはり地域によっては民間の教育訓練体制が整っていない地域。地方へ行けば民間の専修学校なり各種学校、あるいは中小企業の事業主の皆さんだけで職業訓練ができないそういう地域については、やはり国なり地方公共団体がしかるべき措置を講ずべきであるという点であります。
 3点目は、新しい技術革新が行われてきまして、やはりどうしても施設設備をどんどん投資していかないと、新しい技術に対応できないという点があります。それは物的にも、人的にも、そこに先行的、先導的と申しますか、中核的な職業訓練、人材育成というのは、やはり国が中心となってやっておくべき分野ではないかということで、非常に端折ょった説明になりますが、この3点で公共職業訓練というのは是非必要であるということです。
 2点目の、地方公共団体とのすみ分けで、これも2点ございまして、1点目はいま法律上規定されているとおりで、普通の職業訓練、あるいは地方公共団体、高度な職業訓練は国という振り分けに法律上なっております。そういう形で地方公共団体との振り分けをしております。
 私自身やはりもっと地方公共団体が職業訓練について役割を担ってほしいという方向を、地方公共団体の人たちには、お話し申し上げております。ただ、地方公共団体は人的にも、物的にもアンバランスがあります。そこはどういう形で調整していくかということが、非常に重要なポイントになるのではないかと思います。
 2点目は、労働市場圏は地域での線引きはできていないと。ただ、離職者訓練等々、労働市場によって動きます。そういう意味では、離職者訓練を中心としたものは、地方公共団体も相当噛んでもらわなければならないのは当然ですが、中心的には国が大きなウエイトを占めてやる必要があるのではないかと。そういう考え方で。現実はいろいろアンバランスがあるところがあるかと思いますが、基本的な考え方はそういうことです。

(委 員)
 基本方針としていま3つおっしゃいましたが、公共の役割というのはもう1つあるのではないかと思うのです。公共の役割というのは、先ほどから議論に出ていますが、例えば身体障害者とか、そういうマーケットでは十分面倒が見られない、あるいは将来の状況について非常に不確定性が多いとか、民間企業に任せておくとなくなってしまうかもしれない技能の継承とか、そういう4点目の視点があるのではないでしょうか。

○ 議題2 職業訓練基準等の改正について

(配付資料No. 3について報告、説明)

(会 長)
 この件は総会から委託いたしましたので、今日のご報告をご了解いただけますでしょうか。

(了 解)

○ 議題3 調理関係訓練科に係る職業訓練基準等の改正について

(事務局)
 (配付資料No.4 について説明)

(会 長)
 いまのご説明について、何かご意見なりご質問がございましたら、どうぞ。特段ないようですので、この件も職業訓練基準部会に検討をお願いしたいと思いますが、よろしゅうございますか。

(了 解)

○ 議題4 その他

(事務局)
 (配付資料No.5 について説明)

(会 長)
 ありがとうございました。いまのご説明について、何かご意見はございますか。産業種をもう1回教えていただけますか。

(事務局)
 自動車製造、その場合に単に組み立てだけですと、高度熟練とおぼしきものがございませんので、ある部品製造まで掘り下げるという意味で自動車製造ということでございます。それから民生用家庭電化製品の製造、それと半導体の製造につきまして、その製造分野についての中でどういう作業工程に高度熟練というのがあるのかを分析、研究していくということでございます。
 補足的に申し上げますと、この親委員会のもとにその製造分野別のワーキンググループを作って、さらにそこではそれぞれの分野ごとに掘り下げてやろうということです。自動車製造に関してのワーキンググループが近々に、第1回目ということで、そこでは実際に自動車産業の方にもメンバーに入っていただいて議論するということになっております。

(会 長)
 他に、何かご質問、ご意見はございますか。

(委 員)
 直接ではないのですが、新たな委員会などを作られるときには是非女性を入れていただきたいと思うのです。業界、労働組合はなかなか難しい部分があるかと思うのですが、せめて研究者とか学者とか、何かの形で新たなものにはできればお願いしたいのですが、やはり女性の目も入れていっていただきたいと思います。

(事務局)
 おっしゃられることは、前々から重々わかっておりまして、いままで申し上げませんでしたが、この委員会とワーキングは、プロセスとしてその分野に適当な女性が委員としていないかということでかなり探したのですが、結果としてはうまくいかなかったということです。先生のおっしゃることは十分前から承知しておりますので、今後ともそれは頭に入れておきたいと思います。

(委 員)
 いまおっしゃった3つの業種をお選びになった理由は何かありますか。例えば繊維とか、建築とかはなぜ入っていないのですか。

(事務局)
 昨年度の委員会でそもそも起こしましたときに、まず大括りとしては製造業でやっていこうと。製造業でも、伝統工芸的でない、工場の生産現場の産業に着目して、そこでの高度熟練技能をどうやって継承し、活用していくかという大括りをいたしました。製造業の中でも、どういう分野から手をつけるかということで、特に大筋では空洞化が著しいと言われている産業から早めに手を付けようと。
 私どもは、予算要求の立て方もあったものですから、3カ年計画で、例えば3つずつ産業で一応大枠を括ったのですが、毎年3つの産業で9業種やっていこうと。そういう場合に、この9年度から始めるに当たって、特に空洞化が激しいと言われている産業のほうから優先的にやっていこうと。雇用の空洞化がイコール技能の空洞化に繋がって、日本からその技能が消えていくのではないかと、そうしたらそちらの産業から早めに手を付けようということで、一応海外シフトが著しいと言われているものから手を付けようではないかということで、自動車と家電と半導体ということです。半導体はまだそこまで空洞化していないとも言われていますが、自動車、民生用家電は特に著しいということですから、ここから手を付けようという問題意識でやっております。

(委 員)
 空洞化が望ましくないという前提が入っていますね。

(事務局)
 一部空洞化するのは、やむを得ないのではないかと。そこでシフトしている東南アジアとのすみ分けはあり得るだろうと。特に、ある程度の技能が空洞化といいますか、そちらにシフトするのはやむを得ないにしても、こういう分野だけは日本が失っては日本自体が生きていけないのではないか、というところに的を絞って、そこを何とか活用し残していこうというすみ分けは必要かなと考えています。すべて空洞化は駄目という発想でもございません。

(委 員)
 その点は非常に気になっているところで、高度技能の保全・活用というのは確かにそうなのですが、保全すればいいというものでもないですよね。将来的に要らないようなものはあり得るわけですから、そうすると、逆にそういうことを守れば守るほど、非常に技能、あるいはある意味で人材のリフレッシュが進まないという心配もあるわけです。だから、いちばん難しいのはそこかなと思うのです。短期的にはいま要らないけれども、長期的には必要だと。短期的には要るけれども、長期的には要らないというのがあって、その切り分けは非常に難しいということです。それは一種の評価の問題ですが。 もう1つは、その評価を見る目が個別の企業のいろいろなことを積み上げるだけでいいのかという感じがします。つまり、ある種の社会的な活用ということを考えていらっしゃるものですから、一種の社会的なスキルマップみたいなものができていないといけないのではないかと思うのです。ですから、その辺の枠組み作りの問題と、それをベースにした各スキルについての評価をどうするかというのは非常に難しいと思います。

(事務局)
 先生のおっしゃるとおりでして、我々も問題意識としては、現在なくなりつつある技能で、長期的に日本にとって、もう必要でないものはどれかと。それを無理に保存するという気はございません。そういうものは一応置いておくのだろうと。現在も必要で、将来ともに必要と。それから現在すたれつつあって、放っておくとなくなるが、長期的に見るとまた必要になってくる。この両方の部分をどうやって維持していくかというところに的を絞って手を出そうかと。その辺は当然ワーキンググループだけでやると、その業界の方から出ていただきますから、その業界、あるいは自分の企業の観点からだけの意見が出るおそれもありますので、親委員会にフィードバックしまして、その辺の方向づけをしていただこうと。その辺の問題意識は持って、のめり込むことなくやろうという気ではおります。

(委 員)
 国家検定とか、社内検定とか、評価の問題でいろいろございますね。そことの関連も一応視野に入って検討なさるわけですか。

(事務局)
 先ほどの新施策のところで申し上げましたが、能力評価制度の見直しということを来年度の予算で要求していますが、それとの関係で現行の技能検定制度なりがどういうふうに変わるかということもありますから、一応見ながら、ただあまりとらわれると危ないということで、やはり産業的に技能検定は一応置いたにしても、こういう技能は必要だと。その技能がたまたまいまの技能検定の尺度から見てはみ出ているものなのか、その一部なのかというのはあるでしょうが、あまり今はとらわれたくないと思っております。もちろん全く無視した形で進めていこうという気持はございません。

(委 員)
 いまの検定制度が、高度熟練技能の目から見たらナンセンスになってしまうとまた困る部分があるのではないかと。それをうまくお互いに関連し、調整していただく必要があるのではないかと思います。

(事務局)
 もちろん、そこは横目でにらみながらではありますが、基本的にはその枠にはとらわれたくないと。そこは委員会の先生方にまず自由に議論していただこうと思っています。

(委 員)
 この委員会と審議会との関係はどういうことになるのですか。

(事務局)
 局長の私的研究会という性格でやっていますので、また適宜そこの成果は成果として、これは私どもの行政方針としてこう動かしたいというときには適宜審議会に報告し、ご議論いただいてご指示、ご示唆いただければ、それに基づきましてまた議論を中でやっていくという格好だろうと思います。

(局 長)
 必要なときに報告します。またフィードバックするという形で。

(委 員)
 いま委員がおっしゃったような視点をどこかに入れられるといいですね。

(会 長)
 いまの話題に限らず、中長期的なことでも構いませんから、先ほど言い残されたことなりございましたら、どうぞ。

(委 員)
 先ほどの「予算」の所に関連することで、何点かお願い申し上げたいと思います。まず、資料bPの1で、いま話題になっております能力評価制度の確立が出ておりますが、従来からいろいろな面で主張してきたのですが、技能検定というのがあることは事実です。しかし、技能検定だけではなくて、抜本的に、もっと言うならば国際的に通じることが1点と、もう1つはあとで出てきます「自己啓発」、それぞれが何を目標にして、それぞれが勉強していくのかという、目標設定になるような問題点を精査していただけないものだろうか。
 3点目の問題は、現実的な企業内のいろいろな面での教育があるわけですし、生産等の係わりがあるわけですが、そういう現実的な問題点も中に入れなければ、架空論議になってくるおそれがあると思いますので、これらのことを併せた制度全体として見直すことが必要ではないかと思うわけです。それは資格ということではなくて、それぞれが目標に定めて行動するような、そういう体制のものでもいいのではないかと。それがいずれ、横断的な資格関連性の問題にも繋がるだろうと思うわけです。
 2点目の問題点は、いま議論されておりました高度熟練技能活用促進の問題です。先ほどの報告の内容も含めて、どうも守るということが前提に立って行動を起こされる、というふうなことばかりではないと思うわけです。この2頁の上のほうに、「技能者の活用」ということがあるわけですから、この中に全部入るのかもしれませんが、新分野のものづくりに対しての研究等についても、やはり課題として展開していただけないだろうかと思うわけです。その辺のところを、通産省とどういうふうにすみ分けするのかよくわかりませんが、ものづくりの新分野開発の点に付いていかなければ、この地盤がだんだん低下していくだろうと思うわけです。そこの研究会なり、(2)に出ているようなプロジェクトみたいなものにも指向していただけないものだろうかと思うわけです。
 3つ目の問題点は、2頁の6に「民間における職業能力開発の推進」の所に出ておりますが、地域職業訓練センターの活用の問題だと思うわけです。これまでいろいろな面で指摘された経過もあるわけですが、財政的に基盤を失っているところとか、またはその活用が有効に展開できないところがあるということを、各地から、聞くわけですが、もっと相互に情報を提供する流れをスムーズにするような組織体系を見る必要があるのではないかと思うわけです。いま全国に78カ所あると思うのですが、78カ所がバラバラに動き出すのではなくて、ある面では共通的な流れの問題点、またある面では成功者例をお互いに検証し合うようなところが必要ではないかと思うわけです。そういうネットワークの円滑化について、さらに検討を加えていただきたいと思うわけです。
 さらには、いま申し上げたように、財政基盤の問題は、今回提案されていただいているところですから、その辺のところの有効改正も含めて、もう少し充実していかなければ折角作ったものが有効に活用しないような現象が起きるのではないかと思うわけです。
 4点目の問題は、いまの6の(5)に「中央職業能力開発協会」が出ておりまして、本来はここに出るところではなかったと思うのですが、平成10年から民間になる体制になるわけです。しかしこれを作ったときの経過なり、役割機能性の問題、それから冒頭に申し上げた1の資格評価の問題ということについても、重要な単なる民間の問題ではないはずだと思いますので、全面的に従来の業務内容を精査して、労働省としても大きな役割の問題がこの中に付しているわけですから、審議会等の中でも議論する機会があってもしかるべきではないかと思うわけです。
 つまり、有効活用という前提で、審議会の中でどのような方策を見つけ出すのか。先ほどの資格問題に関連することと合わせながら、問題を整理していただくことをお願い申し上げておきたいと思います。民間になった途端に、2年か3年で、その事業体が消滅していくことのないように、十分にその配慮をお願い申し上げておきたいと思います。
 5つ目の問題は、先ほど局長がおっしゃった3点に、さらに1点加わって4点なのですが、基本的に言えば、国家政策を先行実施するという機動性、弾力性ということからするならば、民間なり、地方の公共施設ではできないことですので、時代の変化に対して政策の先行実施、そういう機能性をまず第一に挙げるべきではないかと思うわけです。
 つまり、時代の変化の中で高度化が必要だ、時代の変化の中で集積地域が出るということの問題を、単に地域性の問題ばかりではなくて、国家事業としての対応を先行するということを第一に挙げて欲しいなと率直に思うわけです。つまり、国が行うわけですから、相当変化するという前提での公共の施設づくりをしなければいけない。肯定的な現象ではないということを申し上げているつもりですので、その点も含めてよろしくお願い申し上げます。

(会 長)
 他に何かございますか、どうぞ。

(委 員)
 1つだけ具体的な問題ですが、沖縄県における産業人の能力開発の視点が非常に重要だと思うのですが、ご説明いただいた資料bQの4頁に「公共職業訓練の高度化の推進」で「沖縄における公共職業訓練の充実・強化」というのがありますが、これにつきましてはいま言ったような観点からひとつよろしくお願い申し上げます。

(委 員)
 能力評価と自発的な能力開発に関しては、哲学を掲げてその実態との関係をもっと詰めろということですか。

(委 員)
 はい、そうです。この評価制度ということを言うと、必ず技能検定等を申し上げられるところであるわけです。それは百数十の技能検定があるわけですから対応するわけですが、しかしそれぞれの人が自己啓発ということで職業生活の中で追っ掛ける場合に、技能検定を目安にして展開するとは思えないのです。また、企業のほうで採用するに当たっても、さらに企業のほうで1つの目標を設定するに当たっても、技能検定ではなくて、もっと現実的な段階、程度というものがあってしかるべきだというふうに思うわけです。
 実を言うと、雇用促進事業団で一定のそういう段階、体系という5段階レベルでの問題をいろいろな面で作っているわけですが、労働省として評価をされていないところであるわけです。その裏付けの問題も含めてもっと精査するなら精査する。つまり、資格ではなくて、1つ1つ追っ掛けていく、最初の導入段階からずっと上がっていって、最先端まで行けるような仕組みになっているわけです。そういうふうなことで、多くの人が最終的に参加するような仕組みづくりをしなければいけないのではないかということです。
 つい先立って、オーストラリアのほうでも5段階の体系のものが出来たり、いろいろな国がそういうふうな体系、段階というものがずっと出ているわけですから、その分を考えてみても、技能検定が万能ではないだろうと。もっと現実的な問題の中で検討を加えるべきではないかと思っております。

(会 長)
 それではいままでのご議論の中で、事務局のほうで何か説明される点がございましたらどうぞ。

(事務局)
 いまおっしゃいましたように、職業能力評価制度のあり方の検討の問題につきまして3点ご意見をいただきましたので、その点につきましてはまた検討の中で十分検討させていただきたいと思います。
 それから、地域センターの活用の見直しの問題につきましては3つありますが、いろいろ課題も抱えておりますので、その点につきましては十分検討させていただきたいと思います。

(事務局)
 高度熟練の関係で先生のほうから、「守るだけではなくて、攻めのようなことも」というご意見がございましたが、私どももただ単に伝承するだけではなくて、そういう高度熟練を体得するに至ったプロセスの解明を、映像なり、いろいろなデジタル表示、あるいはCG化ということをやって、できればそういうものを1つの教育ソフトに仕立てて、高度熟練をマスターするには、平均16年という調査が、昨年度の委員会で出ております。できるだけマスターする期間を短縮化できるのはそういう教育ソフト。場合によっては、それ以外にも新たな教育機器の開発ということにも役立てればいいのではないかと。多少そういう攻めの考えも持っておりますので、その辺もより重点にしながら委員会のほうで検討していきたいと思います。

(会 長)
 前回の総括部会にお願いした件はどうなっていますか。

(事務局)
 自己啓発の問題につきまして冒頭に出ましたが、現在費用にかかわる支援制度の創設の問題につきまして、総括部会のほうでご議論いただいております。7月に1回開きまして、9月11日に2回目をお願いしているところでございます。
 総括部会の検討結果がまとまれば、またこの総会のほうでご報告いただいて、ご議論いただきたいと思っておりますので、ひとつよろしくお願いしたいと思います。

(事務局)
 中央協会の法人化の話ですが、今年10年度予算に向けての予算要求をさせていただいております。いまご指摘がございましたように中身の精査もしながら、予算的にいま組もうとして、要求しているところでございます。トップバッターということで、いろいろと世間もよく見ているようにも私自身感じておりますので、その辺りは業務の内容も中身を精査しながらいま要求しているところでございます。

(会 長)
 どうもありがとうございました。

(委 員)
 少し長期な話なのですが、民間の大学を支援というのがあったり、短大を4年制にしたり、非常に乱暴に言いますと職業教育から学校教育というか、もう少し理論とか、そういう問題に少し寄ったような高度化をずっとしていっていると思うのです。つまり、学校教育というか、大学教育に少し寄ったような形で一応してきたと。
 他方で、文部省所管の大学を見ますと、出発点は確かに学術研究をベースにして教育という話になっているのですが、だんだん職業教育になってきているわけです。ですから、お互いにずっと寄ってきている感じがすごくあります。
 そうすると、先ほどから話がありますが、ディバケーションをどうするかという話が出てくるのです。そういうことも1つあるのですが、それぞれ出発点が違って、強みと弱みが違っていて、どこかでだんだんオーバーラップしてきたわけですから、そこを少し意識して、新しいやり方を将来的には考えていったほうがいいかなと思います。
 例えば大学で言いますと、社会人の大学院といったものがどんどん増えると思うのです。これは職業教育ではないかと言われれば、確かに職業教育でありますが、文部省も、やれやれと言っているわけです。カリキュラムも自由度を高めて、自由にやりなさいとか言われます。就職の問題とかいろいろありますが、だんだん職業教育ぽいところへ動いていくのではないかと思うのです。将来的にその辺の協力なのか、ディバケーションなのかわかりませんが、考えながらやっていかないと。戦略として長期的に考えたほうがいいかなというふうに感じましたので、意見を申し上げました。

(会 長)
 第1点は同じ点なのですが、私は昔文部省の係官を4年半やっておりまして、割と高い管理職におりました。その経験でいきますと、むしろ文部省の領域とオーバーラップすると恐れずに、むしろフロンティアを探して、その後それぞれに検討していったらいいのではないか、というのが私の率直な印象でございます。それは逆に文部行政にも非常にいい影響を与えられるのではないかと。つまり、今日いろいろ出ましたご意見も問題をたくさん含んでいるわけですが、次第にいままで経験のない領域に乗り出していくことをあまり恐れないほうがいい。ただ、絶えず検討、吟味はしなければいけないというのが私の率直な印象です。文部省の設置基準というのは、審議官がおっしゃいましたように、実際上は非常にフレキシブルになっているはずでございますので、そういう意味も含みます。
 2番目には、評価が最も大きな要点として出ているわけです。評価のときに、絶えず能力開発というのは時間をかけて、高いレベルを目指すわけですから、その間に環境にしても、仕事内容にしても、いろいろ変化するわけです。ですから、何が必要かというのは、必ずしもはっきりしない、不確実な点がどうしても出てくる。それを覚悟していきますと、低賃金の諸国に取られてしまう仕事を別にして、非常な高賃金、日本はおそらく世界最高の賃金国だろうと思いますが、それでやっていくためには、そういう不確実なものをこなすところで勝負せざるを得ない。そうしますと、簡単に標準化はできない。じゃあ標準化を諦めるかというと、諦めるわけにはいかないが、それはするけれども、その標準化しさえすればすべて片が付くということではない。検定にしましても、評価にしましても、一応は標準化する。しかし、それだけで片が付かないものを絶えず追っ掛けて、また組み替えてみるとか、そういうことが必要ではないだろうか。
 つまり、しばしば社会的に通用する資格がないから、日本は遅れているというのは、私は非常に自虐的な議論であって、非常に高度な不確実なものをこなすノウハウを求めるならば、標準化できようがない。しかし、一歩ずつでも標準化していくということも大事だと。そういうことを抽象的で恐縮ですが、進行係が申し訳ありません。

(事務局)
 確かに職業教育と大学、文部省と議論していても境界をどうするのかということは常に考えてやっていますが、両方が同じようなことを言っているような面もあることは確かです。だから、オーバーラップするというのは、先ほどから議論がありました職人大学、私どもは通称「職人大学」と言っているわけですが、それは完全にある程度オーバーラップするところを否定できない、両方から寄っている感じの分野ではないかと思います。
 この職人大学についてはいろいろご批判がありましたが、この大学はあくまで民間活力ということで私立大学です。私どもは私立大学を助成するという形にしておりますが、これはやはり新しいタイプの大学を目指そうといたしております。その中身は3点です。  1点は、理論と実践を融合することによって、技能・技術を習得させるというのが大きな目標であります。どちらかというと、いままでの理科系大学はどうも理論に偏重して、必ずしもネジを回せないとか、ノコギリを使えないとか、いろいろなことが言われておりますが、そういう意味で、理論のウエイトを少なくして、物をつくれるタイプの人を育てたいというのが第1点です。
 第2点目は、マネージメント教育を入れるということです。これはどういう意味かと申しますと、中小企業の人に聞きますと、ヨーロッパのブランド物よりもはるかに中身はいい物を作れるということです。ただ、売出し方が下手だと。あまり具体例を挙げて言ってはいけませんが、同じ商品だけれども、日本で自分たちが作った物のほうがはるかにいいのにもかかわらず売れないということがありますので、そういう意味で商品開発、マネージメントが同時にできるような人材を育てたいということが第2点です。
 その背景には、中小企業の例を申しますと、中小企業で自分の息子に家業を継がせたいのだけれども、大学へ行かせて自分の家業を継がすのとは関係ないと、どこかへ飛んでいってしまうということが切実な問題としてあるようです。そういう意味で、ここで企業家と申しますか、後継者を育成したいというのが、いろいろな意味での大きな声であります。そういう意味で、マネージメント教育も同時にできるということを目指しております。
 第3点目は、やはり社会人がここで学ぶことができるというところに相当ウエイトを置きたいと思います。例えば、3カ月集中的に勉強して、半年は職場に戻ったりして、何も4年で卒業するのではなくて、8年でも、10年かかってもいいような、柔軟な教育で社会人を育てる。これは特にこれから高齢化社会に入っていきますと、若者が当然減っていきます。そういう意味で、こういう在職者が新たな気持でやっていこうという場合に、後立てになる大学も必要ではないかということで、特に在職者に配慮した形での私立大学をつくりたいというのが大きな3つの特徴であります。
 そういう意味で、すり寄っているのではないかというところもありますが、やはり若者の技能離れ、若者が入ってこれるような、そこで物をつくる人材を育てたいということ。 もう1つは、先ほどから議論になっております高度熟練技能について、いままで技術がある程度マニュアル化して技能ができてきているわけですが、そういう要らない技能はどんどん淘汰されていくのですが、必要な技能というのは必ず残っていくということで、そういうものを伝承していく状況が非常に少ないのではないかということで、やはり若者に魅力を付けた形での大学にして、そこにだんだんと高度技能労働者がちゃんと入っていけるようにというのが背景にあるということで、是非ご理解いただきたいと思います。こんなことでご説明させていただきました。

(会 長)
 今日はどうもありがとうございました。

(閉会)



(注)  本文中に記述されている資料については多量なため省略しております。資料についての詳細及び問い合せについては、職業能力開発局能力開発課 03-3593-1211(代)までお願いします。



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