中央職業能力開発審議会第173回総会議事録
労働省職業能力開発局能力開発課
日時 平成9年5月30日(金)10:30〜12:00
場所 労働省特別会議室
議題 (1) 能力開発行政に係る今後の検討課題について
(2) 技能実習制度における滞在期間の延長について
(3) その他
出席委員 学識経験者  小池会長、猪木委員、今野委員、早川委員、古郡委員
労働者代表  小栗委員、柿崎委員、鈴木委員、平山委員
事業主代表  岩口委員、斉藤委員、杉山委員、野村委員、福田委員

○ 議題1 能力開発行政に係る今後の検討課題について

(事務局)
 (配布資料No. 1、2、3 について説明)

(会 長)
 どうもありがとうございました。いまのご説明について、ご質問なりご意見なり、今後の大事な問題でございますのでどうぞ。

(委 員)
 私しばらく前に、能力開発をするときに必要な資金は、直接個人に流れるような制度をつくってほしい、というふうに発言したことを覚えているのですが、今日はその提案がここに出ていまして、大変嬉しいなと思っているのです。例えば学生の場合には文部省が育英会を通して、奨学金制度を設けていますけれど、あれと同じように労働省も何か奨学金制度のようなもの、財源の問題もあるでしょうけれども、そういう制度をつくっていただいて、この6頁にあります3の「さらに」の所です。その部分についての助成を、制度を通してやっていただければ非常にいいのではないか、というふうに思っております。
 高齢者のほうの直接どこかの能力開発の施設、あるいは学校に行って受講した人に対する支援ではなくて、そのお金は労働者個人がどう使おうと、自分でいろいろな所に出掛けて行って能力開発をするのに使えるというような、もう少し自由度の高い制度をつくっていただきたいなという意見です。

(会 長)
 今のご意見に対して、いかがでしょうか。

(事務局)
 1つは奨学金のようなものですが、これについては若い人につきましては、技能者育成資金ということで設けております。2点目の自由度の高い能力開発に対する助成制度ということですが、ご指摘のように現在は中高年齢者に対する雇用の流動化等に対する給付金、ということで設けておりますが、これについては一定の限界がございます。特にこれは財源の問題がございまして、現在の財源が能力開発事業という雇用保険の中の事業主の方から負担をしていただいている資金で、この政策を進めているというところでございます。
 この財源の問題も含めまして、先ほど申し上げました自発的な能力開発に取り組む労働者の方々、労働者に限りません、一ぺん仕事をされていて、それからまた職場に本格的に再就職をされるというような家庭の主婦の方々にも、そういった制度が必要ではないかと考えております。したがいまして、ここでご審議を賜りたいのは、それをどのような範囲に設定するのがいいか、あるいはどのような教育訓練を対象にするのがいいか、あるいはどのような方法で支給するかと、こういったところをご審議を賜れば有難いというふうに考えております。

(会 長)
 よろしいですか。

(委 員)
 はい。

(会 長)
 奨学金というのはどういうことですか。ご説明していただけますか。

(事務局)
 奨学金のところをもう一度ご説明を申し上げますと、職業能力開発の短大でご説明申し上げますと、平成9年度で自宅以外から通学する場合は4万6,000円、自宅の場合は3万8,000円、1カ月にそれだけの奨学金を出しております。

(会 長)
 訓練校に通った場合ですか。

(事務局)
 訓練校に行った場合です。ですからいまおっしゃったように、ほかの専修学校や各種学校に行った場合は、出ませんので、そこのところが今後の自己啓発のための支援制度をどのようにつくるか、というところでご審議を賜りたいというふうに思っているわけでございます。

(会 長)
 先ほどのご質問は、在職者に対する奨学金ですか。それともいまのお答えのように、在職者でない方が能開大学校なりに行かれるときの奨学金ですか。

(委 員)
 いやリストラに遭って、もし仕事を失った人とかですね。それは高齢者に限らず、どのレベルでもあると思うのです。そういう人は能力開発をしようと思ってもお金がないわけですね。そのお金をどこから援助してもらえるかという意味で言ったので、対象は高齢者に限らずどなたでも。在職者というのではなくて、雇用形態が非常に流動化していますから、いつ何が起こるかわからないわけですね。そういう人たちのためという意味です。

(会 長)
 そういう意味であると、いまの中高年労働者等受講奨励金とかなり重なる面があるかもしれませんね。それに関連して奨励金に関して言うと、あれ期限1年というふうになっていますから、金額は下げてもかまわないから、むしろ1年の制約を取り払うのも1つの考えかもしれない。というのは、たまたま私はそういう現場にいて、かなり受講者が多くなっているわけですね。つまりカタカナのビジネススクールにどんどん在職者がお出になっている。そうするといままでのところ1年の制約で受けられない。
 もちろんその財源の問題がありますから。むしろ金額は総額としては変わらなくても、1年でない場合をも含むということは検討の対象になるかもしれません。やっていることはあまり変わらないような、しかも自発的にどんどんおいでになるわけ、まさに個人主導でおいでになっているわけですから、検討課題ぐらいにはしてもいいような気もします。いまの点については、たくさんの問題がありまして、つまりいまご承知のように財源は1000分の3.5、使用者側だけがお出しになるものから出しているわけですから、そういう問題もありますので、ご意見がもしございましたらどうぞ。あるいは評価の問題についても何かございませんか。特にございませんでしたら、またお思いつかれたときにご発言いただくことにしまして、ひとまず先へ進ませていただきます。
 ただいま説明のありました件につきましては、能開課長のお話のとおりに、実践課程と、それからいわゆる企業人スクールの件につきましては、職業訓練基準部会に、個人主導の能力開発につきましては、コスト面と評価を含めまして総括部会に、それぞれ検討をお願いしたいと思います。

○ 議題2 技能実習制度における滞在期間の延長について

(事務局)
 (配布資料No. 4、5、6 について説明)

(会 長)
 ありがとうございました。

(事務局)
 ただいまの外研室長の説明の中にございました滞在期間を全体、2年から3年に延長するということに伴いまして、そのときに技能の到達目標を現行の技能検定3級ということで到達目標にするということになっておりますけれども、現在、3級が整備されております職種はこの中には8職種しかありませんので、残りの職種につきまして早急に整備をする必要があるということですので、そのテクニカルな中身でございますから、本日、本審の後に引き続きまして技能振興部会を開催させていただきまして、その場でご検討をいただくということにしてございます。

(会 長)
 どうもありがとうございました。ただいまご説明のありました件について、何かご意見ご質問がございましたらどうぞ。

(委 員)
 質問ですが、これまでの滞在期間2年を、この制度は5年に始まったわけですから、少しその調査なり実態はあるかという質問なのですが、2年で母国に戻られるケースですね。それは大体合弁企業型の派遣で、母国での同業種の同じような職場に戻られるというケースが多いのでしょうか。それとも期間が終わってからは、どういう所に行っておられるのかという調査がありますでしょうか。

(事務局)
 調査として数字として固まったものはないのですが、これまで現地での実地調査、あるいは受入れ団体、送出し機関等からの報告の結果によりますと、まず受入れ自体が基本的には在職者が来ているというケースが中心です。これは帰国を確保するという観点からも、帰国して後の就職が決定している、あるいは予定されているという所が中心ですので、その結果在職者が多うございます。ただ例外としてインドネシアについては、政府が帰国した実習生については就職を斡旋するという観点で、就職予定者が中心という実態でございます。
 そういうことから、実習を修了した後におきましては、もとの企業に復職するケースが多うございます。そうはいっても、日本で習得した技術・技能をより活かすという観点から、あるいは引き抜き等もあるという面もあるようですので、ほかの企業に転職するというケースもあります。
 就職先につきましては、いまのインドネシアの例で申し上げれば、就職希望者の7割ぐらいが就職しているという状況ですが、就職先の多くはやはり日系企業です。どうしても地場の企業よりも日系企業のほうが条件がいいということも背景にあろうかと思います。また自営業についても非常に志望が強いのですが、これについてもいま若干実績が上がってきておりますけれども、支援策等が不十分だということもあって、自営業の開店ですか、そういったものは十分には進んでいないという状況にございます。

(会 長)
 よろしいですか。

(委 員)
 ありがとうございました。2年で短過ぎるという判断が、職種によってはいろいろ違うかとも思うのですが、その2年がなぜ3年でなければ。逆に言いますと3年で十分なのか、あるいはもっとかかるかもしれないものがあると、あるいはそうでないものもあるという個別的な判断もいるのではないかなというのは、前にちょっと私申し上げたのです。

(事務局)
 いまのアンケート調査のところで、ちょっと端折った部分なのですが、資料6の終わりから3枚目をご覧いただきたいのです。図3ということで短い理由がありますが、これは2年で短いという企業が大半だと先ほどご説明申し上げましたが、その大きな理由としては、技術の習得という面からすれば、2年で技能を習得するのには短いと、これはいろいろな工程がありますので、それらを一通りこなすという観点からは短いということですが、これについては送出し国、あるいは修了した実習生におけます調査におきましても、工程全体がわかるような形で勉強させてほしい。特に日本の優れた技術・技能の柱としての品質管理ですとか、工程管理ですとか、段取りですとか、なかなか机の上では勉強しないような部分が非常に大事だということで、それを教えてほしいという声が非常に強くて、そういうものに対応するという観点から今回1年延長したわけです。
 それで3年で果たして十分か、まだ短過ぎるのではないかということにつきましては、技能検定3級というのが日本の初級の技能労働者の一定のレベルですので、まずその水準まで高めていく。その後につきましては、帰国した後にいろいろな形でさらにブラッシュアップしていただくということで、十分対応し得るのではないかと考えております。

(委 員)
 1つは基礎1級をいま2年目でやりまして、実習に入ってから1年のところでやりましょう、それが1つの狙いでもあるように思うのですが、それがもし評価をしなかったり、もしそれでもってパスしなかったりというようなケースでは、3年以内とは言いながら、2年のところで実習をやめさせるわけですか。

(事務局)
 これは実習に移行して1年経った時点で、実習の実施状況を評価しますけれども、これは実際に試験を受けさせるという形ではなくて、実際の実習が計画どおりに行われているか、あるいはそれが実際にきちっと身に付いているか、これらを書面、あるいは受入企業の研修指導員自身の評価、あるいはJITCO、国際研修協力機構が行います実地指導、そういったものを通じまして、総合的に評価して行うというものでございます。
 例えば、指導員の評価として実習生が十分に技能を習得していないというような状況、あるいは実習が計画どおり行われていない場合、そういった場合にはこれは不適切だということで、その後の滞在期間の延長は認めないという仕組みでございます。

(委 員)
 もう1つ延長して3級程度が目標だということですね。技能検定のほうなら3級をつくればいいですが、技能検定以外のがありますが、それも期間が3年以内というところまで延ばしたければ、3級を用意しなさいという姿勢で臨むわけですか。

(事務局)
 はい、そうです。

(委 員)
 また、3級が用意できなかったら、これは2年でおしまいになるのか、その辺はいかがでしょうか。

(事務局)
 その技能実習制度の対象となる職種につきましては、いま先生からお話がありましたように、技能検定の職種とそれ以外の職種でJITCOが認定した職種につきましては、いま溶接など4職種ありますが、これはそれぞれの業界団体が実施しております。現在その実施している団体に、今回の制度改正について説明いたしておりまして、3年間実習を行うという場合には、新たに技能検定の3級に相当する制度を設けることが必要だということを説明していまして、それでこれから業界団体が取組みを始めるのではないかというふうに考えております。

(委 員)
 今回の大きな改正の目的というのは、3年に延ばした、1年間延ばしたということ。やはり2年では培えなかったプラスアルファーの技能・技術を研修生に習得させるというところが大きな問題だと思うのです。そこで国としての中央職業能力開発審議会でやっているわけですから、そこら辺をきちっと明確にするということを含めますと、先ほど技能検定3級程度のというのは、日本的なレベルよりもきちっと、作業なり業種によって職務分析して、これができる、これができるという部分ですね。
 例えば機械加工だとすると旋盤ができる、NCができる、プレスができるというような部分の、その中でのある程度の難易度も含めまして、きちっと国際的に認知されるような技能検定制度を、この時期に考えたほうがいいのではないかと思っています。この3年に延長するというのですと、受ける側の目的、目標、実施する企業側でもそういう意識をもつ。
 さらには帰国後もこの生徒は、あるいはこの研修生はきちっと3年間でこれとこれができるという部分を、はっきり認知できるような、国際認定できるような制度をこの際考えたらと思うのですが、いかがですか。

(事務局)
 いま委員ご指摘ありましたように、日本で3年間勉強した成果が母国できちんと評価できる、あるいは通用するという仕組みをつくるのは非常に大事だと私ども考えております。先ほど申しましたように、実習が修了した時点での技能検定の受験、これは現在非常に低調なわけです。今回1年延長したことによって、技能検定3級が到達目標で、終わった時点で3級を受けていただこうと考えているのですが、これについては十分徹底をして、ほとんど全員が受けるぐらいの形でもっていきたいと思っています。
 その際に、合格した場合には、もちろん合格証が出るわけですが、それを現地語あるいは英語で証明する。同時に単に3級という表現ではなくて、実際何ができるのかというところを具体的に書いて、それが帰国した後も企業等で適切に評価できるような仕組みを、これからさらに強化していきたいと考えています。

(委 員)
 是非、いまも基礎1級もほとんど取らずに帰ってしまうわけですね。3級は望ましいわけですが、せめて基礎1級ぐらいはきちんと取って、できるように是非ご指導していただかなくては。

(委 員)
 たぶん労働省マターではないのではないかと思うのですが、これだけ人数が増えてくると、在留資格の問題が気になっていまして、いまは特定活動か何かでやっているわけですか。例外的というわけですね。ですから、そろそろ本当に考えていただいたほうがいいかなとも思うのです。

(事務局)
 いまのご指摘、私ども非常に日ごろ感じている部分です。言ってみれば、技能実習という1つの技術移転のスタイルが制度上十分と言いますか、明確に位置付けられていないというところだろうかと思います。これから技能実習制度を大きく発展させるという観点からは、いまの在留資格上の位置付けを含めまして、いろいろな観点から整備すべき分野が多いのではないかと思っています。それについてもこれから法務省等、関係省庁といろいろ協議する中で、できる限り明確にかつこれからの発展を支えるような形で、整備を進めていきたいと考えております。

(委 員)
 在留資格名というのは1つのコンセプトの表現ですから、やはり作ったほうがいいなというのが私の感想です。それ以外にもう1、2点あるのですが、この延長はいいのですが、そのときにもう少し先を考えるときに、これを5年にするのかとか、4年にするのかとかいう話がまた出てくるかもしれないのです。
 例えばこの制度は少しグレイっぽい所もありますから、言いにくいのですが、もしこれ研修でずっといくのだったら、延長というのもアイディアですけれど、再研修というのもアイディアです。いま一度研修で入るとあとは非常に入りにくいのです。先ほどから品質管理だ、生産管理とかいろいろ言われていますが、3年間で技能を覚えて帰って、少しランクが上がったら、今度は生産管理とか品質管理でもう一度入って来るというほうが、研修という点ではいいかなという気もしないではないのと、さらに延長すればするほど就労にますます近くなってきますので、その辺は少し先の問題として考えておいたほうがいいかなという気がするのです。

(事務局)
 いま非常に大事な点をご指摘いただいたと思っているのですが、これまでの研修制度につきましては、再研修ということも制度上は行われているところです。そういう中でいま委員のご指摘にありましたような品質管理ですとか、工程管理、いわゆる管理系のものについては、実習を終わった後帰国して、自ら管理者として行った後にもう一度日本に来て勉強をするメリットが大きいのではないかという、ご指摘だろうと思うのですが、それにつきましてまだ十分検討は進んでいないといいますか、これからの検討課題だというふうには私ども考えております。
 将来途上国自体もどんどん技術、技能が進んで、生産現場も高度化してきますので、それに見合ったようなサポートを日本として、どういうふうに進めていくかということは、いままでの仕組みを一歩踏み出した形で考えざるを得ない面もあろうかと思っていますので、委員のご指摘のことについても、これから十分検討を進めていきたいというふうに思っております。

(委 員)
 もう1点だけ。この技能実習期間中は半分労働者ですから、ですから短期間では労働者として我慢できるものが、長期間になったら我慢できないということは、当然起きてきますよね。今回これを適用すると、2年3カ月ですか、2年ちょっと実習期間に入るわけですから、普通に言うと雇用管理みたいのを、少し目配りしておいたほうがいいのではないかと思うのです。これまでは非常に短期間ですから、例ですが、給料なども短期間だから、研修の延長だからみんな同額でいいかとやっていたわけですが、だんだん延びてくると、当然働きに見合って賃金に差をつけようかという話も、いろいろ出てくると思う、それは1つの例ですけれどもいろいろな話が出てくるのではないかと思うので、延長とともに、かつ人数が増えはじめたら、実際に企業の中で半分労働者ですから、雇用管理をどうするかなということは目配りしておいたほうがいいかなと、そんな感想をもっています。

(事務局)
 いまの賃金等労働条件の問題につきましては、正に労使自治の原則で、労使間で決めていただくのが原則なのですが、いまご指摘がありましたように、技能実習生については行政としても十分気配りしていく必要があると考えていまして、これは先ほど申し上げましたJITCO、国際研修協力機構がこの全体のサポート機関、指導援助機関なのです。JITCOを通じまして労働条件等処遇の問題につきましても、適切に配慮をするよう企業に対して働きかけをしていきたいと考えています。
 もう1つは技能実習生につきましては、家族の帯同を認めていないものですから、そういった面で人権上の配慮ということもありまして、これまでも一時帰国については認められていたところではあるのですが、今回期間が延びて3年になるということから、それをもう一歩前に出しまして、本人が希望する場合には、企業としても積極的に一時帰国に配慮をするという仕組みを作るべきだということで、これも併せて企業に働きかけをしております。当然年次有給休暇は付与されていますが、恐らく交通の便等々から考えれば、最低でも2週間程度は一時帰国の期間は必要だと考えておりますので、そういったものからすれば特別休暇の付与なり、何らかの形で企業としての配慮をお願いしたいと考えています。
 ただ、その際には帰国費用等については企業の負担の義務づけまでは考えておりません。それはケースバイケースで対応をお願いしたいと考えています。
今回の1年の延長により、委員が言われましたように、いろいろな面で配慮すべき事項が増えてくると思います。先ほど申し上げました安全衛生の問題についても馴れから事故が起きるということもあり得ると思いますので、そういった面で我々としても十分配慮をしていきたいと考えております。

(委 員)
 お伺いしたいのですが、実はアンケートの調査について、先ほど日本側の受入れ側の結果についてはここに書いてあるとおりだと思うのです。冒頭質問のありました受講された方が帰国後、向こうでどういう形でやっているのか、あるいは受講者の希望がこの制度の中にどういうふうに活かされていくか、あるいは送出しの国側として日本にどういう要望があるか。そういうのもお互い与える方、与えられる方双方がうまくやらないと、こういう制度というのはうまく機能しないと思うのです。
 そういう点ではアンケート調査は日本側のものしかここに提示されていないのですが、同時にいままで研修で受講された方の追跡調査とか、あるいは送出し側の要望とかいうのもあるのであればお伺いしたい。5年目ぐらいに入るわけですから、そろそろその辺も取ってみる必要もあるのかなと、そういうふうに思うのです。

(事務局)
 送出し側の要望について、調査結果報告書本体のほうにも若干整理をしているのですが、いちばん多いのは、やはり技術・技能について帰国した後に、より活用できるような形でもっと高いものを学ばしてほしい。
 逆に言えば期間を延ばしてほしいというものが1つ。対象職種につきましても、現在53職種ということで限定された形になっておりますので、三次産業あるいは一次産業を含めて、もっと幅広い形で受入れをしてほしいというものがございます。
 もう1つはマッチングの問題についても、これは本人も来る時点ではそれでいいということで来てはいるのですが、実際にやってみるとやはりちょっとということもあったりするものですから、そういうマッチングの問題、これらが共通して大きな課題になっています。帰国した後につきましても、元の職場に復帰するケースが多いので、技術・技能をそこで活かしているわけですが、それについて調査しますと、給料等の処遇改善がなされたというのが大体3分の2ぐらいあるわけですが、逆に言えば3分の1ぐらいは、そういう改善がなされていないという面もあるものですから、それについては先ほど申しましたように、日本で習得した技術・技能が客観的に評価できるような仕組みにして、それを基に処遇の改善に結び付けていくということも大事だろうと思っていますので、そういう観点からも取り組んでいきたいということです。以上でございます。

(委 員)
 そうしますと、向こう側の要望も十分入れて、この延長の提案をされているということですね。

(事務局)
 はい、そうでございます。今回の期間延長に当たりましては、先ほどご説明をしたJITCOの実態調査も踏まえて行っていますので、その際には中国、インド、フィリピン、主要送出し国に行って、現地の政府、あるいは送出し機関と意見交換を踏まえた上で調査結果をまとめておりまして、それらも参考にして決めたということです。

(会 長)
 この問題は、グレイっぽい面がもちろんあるのですが、しかし、同時に非常に立派な面もあるはずなのです。私の観察ではアメリカであれ、イギリスであれ、ドイツであれ、日本であれ、技能習得の基本は、職場で働きながら身に付けるということが、どこの国でも変わらないことでして、そういうことをやるとしたら、一種の技能実習制度というものを活用していく、そういう意味では一つの重要な、ある意味ではパイオニアかもしれない。
 ただし、いろいろご指摘があるような問題点がありますので、気をつけていかないと、せっかく日本のやり方をいろいろ覚えてもらうときに、マイナス面を付けて覚えていただいたらもったいないことですから、気をつけなければならない点が多々あると思います。ただ、それにとらわれて本来の重要な点を忘れるのは、これまたもったいないということです。技能の国際資格については、私の知る限りないのでして、一種のデファクトスタンダードを日本が作っていく、ということにならざるを得ないだろう。そういう意味でも重要です。
 したがってたびたびご指摘がございましたように、ある程度の資格を取らない企業なり、団体なりは、だんだん研修生は取りにくくするというようなインセンティブがないと、ちょっと無理ということと、もう一つ、放っておくと就労と全く区別がつきません。それは日本の職場もそうなのです。一つはいま言ったテストですが、もう一つはこれもなさってはいるのでしょうが、いわゆるフォーマルOJTと言いますか、指導項目のチェックリスト、これは日本の職場でやっているわけですが、それを用意することと、インストラクターを一応は指名しておくと。大したことはありませんが、そういうこまごましたことをお付けになることが意味がないではないという気がいたします。余計なことですが。この問題いままでいろいろご指摘がございましたように、たくさんの問題を含んでおりますから、どうか今後も委員の先生方のご意見をいろいろいただきたいと思います。恐縮でございますが、先へ進んでよろしゅうございましょうか。あと「その他」が少しあります。2つほど「その他」の報告がございます。最初は「平成9年度行政運営方針」です。事務局からお願いします。

○ 議題3 その他について

(事務局)
 配布資料No. 7 について説明)

(会 長)
 ただいまのご説明につきましては報告ということでご理解いただきまして、次の資料のご説明をお願いいたします。

(事務局)
 (配布資料No. 8 について説明)

(会 長)
 どうもありがとうございました。いまのご説明について何かご意見なりご質問がございませんでしょうか。大事な問題だと思います。私、簡単な要望ですが、これクラフト型だと思いますので、はっきり名工でもいいですし、何かそういうタイトルを、つまり技能検定とは別におつくりになることはできないのだろうか。つまり卓越した技能者はいまありますから、卓越を取った形でもよろしいですし、何らかのそういう。つまりこれができればもうあげるというのではなくて、かなり上のほうのタイトルを差し上げるようなことは構想できないのでしょうか。

(事務局)
 そういうことも含めて、そういう本人、個人に対するメリット、そういう方を抱えて出してくださる企業へのメリットですね。そういったことも何かないかということを今年度以降で検討いたしたいと考えておりますので、その辺も踏まえまして検討させていただきたいと思います。

(委 員)
 この調査の問題意識なのですが、日本経済、日本産業、企業が国際化して、物づくりのファンクションがどんどん海外へいってしまう。したがって、ここでいう高度熟練工のような方がするような仕事がどんどん海外に流出して、高度技能者の人材がそのうち枯渇して、今度本当に必要になったときに、日本経済が人材がなくて立ち上がれないというので、高度な技能者というのは、社会的に、政策として維持するということが長期的に必要なのだというような問題意識かなと思っていたのですが、この調査を見ると、そんな必要はないと、つまりいつも必要としている、国際化したからといって高度熟練技能者のニーズが日本産業、企業の中では決して減っていないと、そんな結果として理解していいのかなと思ったのですが、どうでしょうか。

(事務局)
 このアンケート調査は、全産業にお願いしたところであるものですから、そもそもうちの企業、産業分野では高度熟練技能なるものを必要としていない生産形態だ、というのもございました。そういうところから数字が、必ずしもこちらの予想したとおりの数字で上がっているというわけではございません。もちろん委員の言われたように、いずれまた必要になったときにというだけではありませんで、いま現在も中小企業の方の意識は、中小企業が生き延びるためには通常の熟練技能を要するような生産品だけでは食べていけないと、やはり高付加価値化したものを新規開発をして、単なる大企業の下請でない、中小企業でも独自のブランド開発をすることによって生き伸びたいという企業が結構ございます。
 そのための新製品の開発とか、試作品の作成ということになると、やはり高度熟練技能者自体、いま必要としている。だけどその方たちがもう定年退職をしかかっているが、なんとかいまは定年延長とかで引き止めていてもいずれいなくなる。そのためにも引続き高度熟練技能者が必要だと、こういうご意見が多かったのです。

(委 員)
 そうだと思うのですが、単純に現在日本の企業がどんどん海外に工場を出してしまうと、技能の空洞化だという話があるものですから、そういうのは高度熟練など考えると、極端に言うとあまり関係がなくて、やはりいつも必要で。

(事務局)
 それはおっしゃるとおりです。

(委 員)
 したがっていつも供給不足だから、もう少し供給体制を整備しようということになるのでしょうかということです。

(事務局)
 それはおっしゃるとおりです。大半の企業の方は普通の熟練技能は極論をすると、分担と言いますか出て行ってもいいと、しようがないと、だけどこういう高度な部分は引き続き日本に残しておけば、いずれまたマザー工場として最後の仕上げの段階でやはり戻って来るのではないか、そのためにも引き続き高度熟練技能者を確保したいし、その方たちが引退しても残るような継承システムをとっておきたいと、こういうご意見がございます。

(会 長)
 何かございませんでしょうか。本日予定しました議題は全て終了いたしましたが、いままで言い残されたことや、あるいはいままでの議題に関係のないことでおっしゃりたいことがありましたらどうぞ。

(委 員)
 最初にお伺いすればよかったのかわかりませんが、総括部会長報告や先ほどの行政運営方針に関連して、技能審査認定制度、社内検定認定制度の関連の能力評価の関係なのですが、1つには各種能力評価を活用して、能力開発に結び付けるよう努力をしていくという感じなのですが、この辺については技能検定制度と技能審査認定制度とございますが、あと社内検定認定制度ということの関連で見ますと、やはり社内認定制度との評価の関連付けなどにも一歩踏み込んでいきますよということなのか。
 もう1つは社内検定検定制度については、各企業で有効に活用されるよう、その内容手続き等を検討するということは、現在それぞれの企業でもっている認定制度を相互に認知し合うような仕組みにして、世の中で普遍的な評価基準をつくっていきますよ、というようなところを言っておられるのかどうかというのが、ちょっとわからないものですからその辺をお伺いしたいと思うのです。

(事務局)
 いまの社内検定の認定制度そのものにつきましては、これはこれで推進をしていくというのがございます。委員が言われたようなところまで含めてどうするかということは、今後この研究会あるいはこの審議会でご検討を賜りたいというふうに思っておりますので、いますぐこのイメージをもってどうしようというところまではいっておりませんので、今後ご相談申し上げたいと思います。

(委 員)
 でもそこの壁を乗り越えなければいけないなという認識をもって、問題提起をしていると、そういう認識でとらえていいのですか。

(事務局)
 はい。

(会 長)
 大事なところですね。ほかに特にご発言がございますでしょうか、ありませんでしたら時間が少し過ぎましたので、今日の総会はこれで終了したいと思います。



(注)  本文中に記述されている資料については多量なため省略しております。資料についての詳細及び問い合せについては、職業能力開発局能力開発課 03-3593-1211(代)までお願いします。



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