日時 | 平成12年12月7日(木)10:00〜11:30 | |
場所 | 労働省省議室 | |
議題 | (1)中央職業能力開発審議会総括部会長報告について
(2)その他 |
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配付資料 | 中央職業能力開発審議会総括部会長報告 | |
出席委員 | 学識経験者 | 小池 和男 尾高煌之助 早川宗八郎 古郡 鞆子 |
労働者代表 | 市川 清美 小栗 啓豊 堀口 雅行 鈴木 利文 | |
事業主代表 | 青山 伸悦 小嶋 隆善 讃井 暢子 杉山 幸一 山田 恒夫 |
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専門調査員 | 鈴木 正人 |
(会長)
ただいまより、中央職業能力開発審議会第186回総会を開催いたします。
それでは、早速議題に入りたいと思います。今日の議題は、「中央職業能力開発審議会総括部会長報告について」です。去る7月12日の総会におきまして、今後の職業能力開発施策の在り方については、総括部会でご検討をお願いすることになっておりました。これを受けて8月以降、総括部会では、今後の職業能力開発施策の在り方について、非常に精力的にいろいろご議論くださいました。
このたび、総括部会長報告が取りまとめられました。そこで、議論の取りまとめに当たられました総括部長より、まずご報告をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
(部会長)
平成12年7月12日に開催された、中央職業能力開発審議会において、第7次職業能力開発基本計画の策定を含めて、今後の職業能力開発施策の在り方について、総括部会で検討するようにということでした。これを受けて8月24日から11月27日まで、7回にわたり検討を重ねてきましたが、今般、この結果をまとめましたので、ご報告したいと思います。
その報告は、IT革命をはじめとする技術革新や、経済のグローバル化による産業構造の変化、高齢化の進展や労働者の就業意識、就業形態の多様化等々、経済社会情勢が大きく変化する中で、状況変化に的確に対応するための今後の職業能力開発施策の方向についてまとめたものです。お手元に報告があると思いますが、その概要を私から、かいつまんで説明させていただき、詳細については、後ほど事務局から報告していただきたいと思っています。
この総括部会長報告は、3つの柱から構成されています。第1が「今後の職業能力開発施策の方向」について述べています。いわば哲学というか、原理論の部分があります。それからIIで「職業能力開発制度の改正」。つまり第1番目の方向づけに対応して、現在の制度をどのように改善、改正していったらいいかということが、2番目に述べられています。IIIとして、では今後の職業能力開発施策を、具体的にどのようにしていけばいいかということが書いてあります。
そのI「今後の職業能力開発施策の方向」ですが、この最初の柱も、また3つの柱からなっています。第1に、労働者の自発性を重視した職業能力開発の推進が必要である、ということが1つ述べてあります。2番目に、職業能力のミスマッチ解消に向けた対応が必要。3番目にキャリア形成の推進をしたらいいと述べてあります。その第1の柱のまた第1番、つまり労働者の自発性を重視した職業能力開発の推進ということですが、以下に述べる事情から、従来までの企業主導の職業能力開発に加えて、労働者の自発性を重視した職業能力開発の推進が不可欠である。そういうことが論じてあります。
いままでも企業主導の職業能力開発が、非常に一生懸命やられてきたわけですが、労働者の就業意識、また就業形態が最近多様化し、それから、労働移動が増加しておりますので、それに対応できる能力開発を行うためには、企業主導の能力開発だけでは限界があるのではないか、という認識が第1です。それから、需要構造が激しい変化を遂げておりますので、人材の即戦力志向が高まる反面、企業内で、長期的なキャリア・パスを描きにくくなっているのが実情です。事実、近年企業による長期的視点からの人材育成の取組みが弱まっているように思われますので、社会全体としての人材投資の減少につながりかねない恐れがあると認識されます。
3番目に、企業の職務編成の柔軟化、あるいはフラット化、労働移動の増加、外部労働市場の拡大等々に伴い、個々の労働者が適切な職務経験を積み重ねることによって、仕事に対する姿勢であるとか、人脈を含む総合的な能力、実戦的な職業能力の蓄積、あるいは定着させていくことが求められているのではないかという認識があります。以上のような3つの認識から、労働者の自発性を、これまでよりも重視した職業能力開発の推進が必要であろうというのが第1点です。
「今後の職業能力開発施策の方向」の第2点としては、職業能力のミスマッチと言われる現象を、解消する方向に向けた努力が必要であろうということです。ミスマッチ対策は、雇用対策の緊急の課題となっておりますが、いわゆるIT化の進展等に伴って、産業構造や企業の在り方等が、急激に変化しているのはご承知のとおりです。その中で、キャリア形成の目標が明確に定め難くなっている等々の問題があると思います。そこで職業能力に関するミスマッチの解消を図るためには、成長分野等に関わる訓練の充実に加えて、キャリア・コンサルティングの実施等々、個別労働者のキャリア形成の在り方に踏み込んで、施策を展開する必要があると考えられます。
「今後の職業能力開発施策の方向」の第3番目に考えたのは、キャリア形成の推進ということです。いま2番目で述べたキャリア形成ということに関して、職業能力開発施策においても、労働者が職務目標に向けて、実践的な職業能力が蓄積されるように、職務経験を適切に積み重ねること、つまりキャリア形成を、施策の柱として位置づけることが必要であろうということを考えたわけです。
以上の3つの要素からなる今後の職業能力開発施策の方向を実現する準備として、第2番目の柱として、現在の職業能力開発制度を改善・改正していくことが必要であろう。この2番目の柱も、3つの要素からなっています。以下、説明をいたします。1番目の方向づけを踏まえて、創造性であるとか、あるいは成果を生み出す実践的職業能力の開発を充実・強化するために、企業主導の職業能力開発の促進に加えて、労働者の自発性を重視した職業能力開発を促進するシステムを導入する必要があるのではないかと考えます。その際、労働移動の増加の下でも、労働者が長期的観点から、能力の蓄積を図ることができるようなものとする必要があるであろうと思います。
このために、以下のように3点からなっておりますが、個別労働者のキャリア形成が、社会のニーズであるとか、あるいは環境変化に適応してなされるように支援するとともに、仮に労働移動があっても、キャリア形成が継続的に行われて、労働者あるいは社会全体の不利益とならないように、職業能力を的確に評価する仕組みを整備する必要があるであろうということです。
具体的には3点ありますが、1番目として「キャリア形成への支援」。労働者が一定の職業に関する目標に沿って、職務を経験することによって、実践的職業能力の形成を図ること、これを「キャリア形成」という言葉で呼んでいます。このキャリア形成が可能となる仕組みを、法律に基づいて推進するというのが第1番です。つまり職業能力開発施策として、キャリア形成支援を明確にする法律を作るということを中心にしたい、実践したいということが第1番目です。
「キャリア形成への支援」の第2番目は、国は事業主がその雇用する労働者のキャリア形成を支援するために、必要な指針を策定して、公表するとともに、情報提供、相談、援助等によって、労働者のキャリア形成の促進を援助するようにしたい。そのように事業主にやっていただけるように、国もその後押しをしたいというのが2番目です。
「キャリア形成への支援」の第3番目として、事業主は、その策定する事業内職業能力開発計画に、キャリア形成への援助に関する措置を定めることとするとともに、当該計画の労働者への周知、及び企業内のキャリア形成推進制度の整備を推進するようにしたい。そういう措置を企業が取れるように、これも後押しをしたいというのが3番目です。以上の3点から構成されるような、キャリア形成への支援の体制を作りたいというのが第1番目の職業能力開発制度の改正のポイントです。
制度の改正の2番目としては、職業能力評価システムを整備する必要がある。労働市場が有効に機能するための基盤として、労働者の実践的職業能力を適正に評価する。あるいは適正に評価できる職業能力評価システムを整備する。それが必要であろうと考えますので、民間の諸団体等が、職業能力評価を行う仕組みのうち、実践的職業能力の開発に資する等の要件に適合する者について、認定を行う仕組みを整備する。つまり職業能力評価システムを整備するだけでなく、その認定を行う仕組みを整備したい。それによって、労働者が多様な職業能力評価を受ける機会を確保したいというのが2番目です。
「キャリア形成への支援」の第3番目として、職業能力開発関係の給付金等の見直しをしたい。具体的に給付金を運営していく必要がありますので、その給付金等の見直しもする必要がある。第1番目に、労働者のキャリア形成を支援するため、能力開発関係の給付金制度について、訓練目的等が明確化された教育訓練の実施、有給教育訓練休暇等の付与、職業能力評価、あるいはキャリア・コンサルティング等が効果的に組み合わされた職業能力開発を促進、また支援するという観点から、給付金制度の重点化、あるいは体系化をする必要があるだろう。
給付金等の見直しの2番目に、地域における人材ニーズ等に即した職業能力開発の基盤形成を促進するために、都道府県等の意見等も聞きつつ、都道府県と連携した職業能力開発施策の推進に向けた枠組みを検討する、というのが2番目です。給付金等の見直しの3番目のポイントは、給付金の整理、統合を図るとともに、支給事務の簡素、合理化を図ることが必要であろうと考えます。
以上、今後の施策の方向づけと、それに基づいた制度の改正について、それぞれ3点ずつ指摘したわけですが、以上を総合して、今後の職業能力開発施策は、具体的にどのようにやっていくのがいいかということが述べてあります。これも簡単に述べますと、以上のことを踏まえて、第7次職業能力開発基本計画については、以下の6つの内容を踏まえて検討することが適当であろうと考えます。
1番目は、「労働者のキャリア形成を支援するシステムを整備する」。2番目に「キャリア形成を促進するための能力開発の推進をする」。3番目に「多様な教育訓練機会の確保・提供」、あるいは「労働者の態様別の能力開発」と言ってもよろしいでしょうが、それを支援する、推進する。4番目に、「産業に必要な人材の育成をする」。5番目に「技能の振興」あるいは「ものづくり労働者の能力開発に心掛ける」。最後の6番目に「能力開発施策推進の役割分担についても、さらに工夫・検討をする」。以上のような6つのことが、具体的に開発施策として検討される必要があるであろう。ほぼ、以上のようなことが、この総括部会長報告に述べられています。簡単ではありますが、概要を申しましたので、あと詳細については、事務局からご説明いただきたいと思います。
(事務局)
それでは詳細について、事務局からご説明申し上げます。ただいま部会長から、大きく分けて3つについてご説明がありました。本報告のほうを見ていただきますと、こちらでは4つの構成になっています。最初が「経済社会情勢の変化と職業能力開発」ということで、能力開発の方向を考える前提としての経済社会状況をどう考えるかという部分が、最初に付いています。
そのあと、部会長からご説明がありました、2頁から、「今後の職業能力開発施策の方向」、続いて5頁「職業能力開発制度の改正」ということで、法改正も含めた制度の抜本的な改正の方向を示しています。最後に9頁になります。「今後の職業能力開発施策の内容」ということで、制度改正なども含めて、今後の具体的な施策の中身について、多少書き込んでいる部分です。これが第7次職業能力開発基本計画の基になるものです。以上のような4部構成になっています。
最初の経済社会情勢の変化と職業能力開発ということで、1頁に戻っていただきたいと思います。まず、労働力需要、いわゆる企業側の状況から少し分析しています。これはご存じのとおり、IT等の技術革新とか、経済のグローバル化といった進展が、産業の在り方、企業の在り方を大きく変えています。そのことがひいては職業能力の在り方や、能力開発をどうするかということにも絡まってくるわけで、とりわけ産業が融合したり、既存産業が衰退する、あるいは新規分野の創出というような事態がありまして、目まぐるしく産業構造が変わっている。そのことが企業も在り方も大きく変えていて、いままでのようないわゆる需要構造を前提として、そのシェア争いをするとか、企業序列、あるいは系列といったような在り方が大幅に変わってきています。いわば新しい分野に向かって、ワッと殺到するという、ある意味では日常的な状況が、IT化等によって進んでいるということになります。
そういうことで、企業内の状況として、需要構造が大きく変わるために、長期的な見通しがなかなか企業も立てにくい。どうしても短期的な成果主義になってきて、即戦力を外部から調達するという傾向が強くなっています。内部労働力についても、就業意識・就業形態が非常に多様化する中で、こういった外部調達という動きが出ていますので、一律の能力開発というよりも、能力開発の対象者を若年者、管理者等にかなり絞り込む。中核的な人材については、長期的投資をするけれども、そうでない部分については、必ずしも能力開発をするというよりも、外部調達という傾向も出てきています。
こうしたことから、全体として、企業主導の教育訓練はだいぶ後退してきている。統計を見ても、これまでの人材育成を支えてきた計画的OJTやOff−JT実施率が、大幅に減少しているという状況が見られるわけです。今後の能力開発の在り方をどうするかというのは、大変大きな問題と言わざるを得ません。
高齢化と急激な需要構造の変化ということから、職務編成の在り方がだいぶ変わってきています。これまでは指揮命令系統が、部長、課長、係長という明確なピラミッド系列の組織というものがあったわけですが、やはりプロジェクト方式で、柔軟でフラットな職務編成という傾向が非常に強くなってきています。したがって、職業能力というものも、ピラミッド型を前提とした特定の職務への習熟、それで上がって行くという形から、フラットな職務編成の中で、自ら発言していったり、問題を発見していったり、そういう幅広い能力や創造的な能力が求められる傾向になってきているということが、大勢として言えるのではないか。そういうことで、職業能力の在り方はだいぶ変わっていくということがあります。
企業外の状況を見ると、ご存じのように非常に外部調達が盛んになってきています。これは効率化ということもありますし、専門能力を外部から調達するという意味もあります。そのことが、結局、外部労働市場の拡大を招いている。労働移動もかなり盛んになってきているわけです。そうしたことから、職業能力の在り方というのは、いわゆる雇用される能力という幅広いものになってきている。これは労働移動の増加を通じて、そういう企業内の能力と企業を超えた能力、関連性が深まってきているという実態があろうかと思います。
次の頁で、労働者側の状況について見ますと、やはりいちばん大きな問題は、高齢化ということであろうと思います。高齢化に伴いまして、職業生涯の長期化がどんどん進んでいるということがありますが、その長期の職業生涯の中で非常に難しいことは、技術革新の進展で環境の変化、職業生活を取り巻く環境の急激な変化が進むということです。したがって、職業生涯の中で、常にこれからは需要動向とキャリア形成の方向のすり合わせを行う。それによってキャリア形成の方向を順次考えながら、能力開発を進めていくことが必要になってくるということがあろうかと思います。
最近の特徴として、やはり就業意識、就業形態の多様化が非常に強まってきている。特に若年者を中心として、1社に長く勤めるという傾向は薄まっています。むしろ専門職でやっていく。場合によっては会社を超えてということが出てこようかと思います。特に選択の際には、自己の能力発揮とか、可能性とか、仕事への充実感を重要視するという傾向も出ています。就業形態では、ご存じのようにパートタイム比率が非常に高くなっていますし、在宅就業という形態も、かなり出てきています。こうした就業形態について、キャリア形成が十分なされていない。これから大きな問題を生じかねない問題があります。したがって、こういった就業形態についても、どのようにしてキャリア形成し、能力開発をするかということが、非常に重要な問題になってくるということがあります。
就業意識の1つの問題として、若年者の中には、明確な目標がない方が非常に多くて、フリーターとして就業行動を取っている。これが積み重なっていきますと、結局、10年、20年経っても、きちんとした実践能力が身につかないという事態も起こり得るわけです。やはりキャリア形成目標はしっかり立てて、それに沿って能力開発するなり、仕事に就くなりということが必要ではないか。そういう意味でのカウンセリング指導も必要であろう。こういった労働者側の変化も、職業能力開発の在り方を考えるうえで重要な要因です。
雇用情勢は、ご存じのとおり完全失業率が4.6%、4.7%といった4%台後半で推移しているわけですが、その大きな要因は、4分の3がミスマッチであると言われています。ミスマッチの内容についても分析してみると、やはり職業能力、経験の違いが非常に大きいということで、こういったものを解消していくには、成長分野への人材誘導、訓練ということは当然ですが、それだけでなくやはりキャリア形成に関するすり合わせを、情報を提供しながらやっていくことが必要ではないかと考えられます。
こういった状況を背景として、今後の職業能力開発施策の方向です。これは部会長からご報告があったところですが、若干詳しめに述べさせていただきます。3頁目です。4点挙げているわけですが、第1点が「労働者の自発性を重視した職業能力開発の推進」です。就業意識・就業形態が多様化しつつありますので、一律の能力開発には馴染まなくなっている。それから労働移動の増加ということがありまして、企業主導の能力開発だけでは、こういったものに対応できないということになります。
したがって、今後の能力開発というのは、労働者の自主性を尊重した能力開発ということを考えざるを得ないであろう。企業主導にも限界がありますし、就業意識は多様化していますので、一律では無理だということになると、どうしても労働者自らの能力開発を支援していく形が必要だろう。特に先ほど申し上げたような需要構造が大きく変化する中で、企業の中で明確なキャリア・パスを描きにくくなっている。それから短期的な即戦力主義という考え方が出てきていて、どうも長期的視点からの人材育成に対する取組みが、弱まりつつある。このまま放っておくと、社会全体として、人的投資の減少という事態を招きかねません。そのことが生産力・国際競争力の低下、ひいては雇用の減少ということにつながりかねないわけです。やはり社会全体としての人的投資を維持するうえでも、労働者の自主的な能力開発を推進する体制が不可欠である、ということが言えるかと思います。
(2)ですが、とりわけ能力開発のターゲットとして、実践的能力というものを考えていく必要があるのではないか。もちろん企業の中の特有の技能もあるわけですが、だんだんこれが広がりを見せて、外部労働者とのつながりが出てきて、企業内外を問わず、雇用される能力が求められるようになってきています。
また、これまで職業訓練等は、特定の知識、技能の習得という点がありましたが、これからはよりそういう特定の知識、技能だけでなく、これを実践で生かせる能力、実践的な職業能力というものをやはり考えていく必要が出てきた。能力開発のターゲットも、ここに焦点を当てる必要があるということです。
4頁で(3)「キャリア形成の推進」です。そういうことで、実践的な職業能力というものを、今後の能力開発のターゲットとしていくと、これまでのような職業訓練というだけでは十分ではない。実践的能力が蓄積されるようなツールというものを考えていく必要がある。これはすなわちキャリア形成、一定の方針に従って、職務経験を積み重ねることによって、実践的能力を養成する。そういうキャリア形成というものを、1つのツールとして能力開発施策上位置づけて、やっていくことが必要であろうと思います。
この実践的能力の蓄積ということがうまくできれば、仮に労働移動しても、継続的にキャリア形成を可能としていく。例えばこれまでやってきた職務について、キャリア形成したものについて、能力評価してあげて、その能力評価した実績というものを持って、次の職場に移って、今度、次の職場でも、できればこれまでの蓄積をある程度配慮していただいたポストに就けて、そこでキャリアをさらに積み重ねていく。そういう仕組みを社会的に作っていく。ある意味ではキャリア形成と能力評価をセットとするということだと思いますが、そういうことによって、継続的にキャリア形成が可能となる方策、労働移動が増加する中でも、長期的観点から、実践的能力の蓄積が可能となる施策を考えていく必要があるだろう。
パートタイマーについては、特に非常に増えている中で、キャリア形成が問題となっています。このパートタイマーの方についても、やはりキャリア形成を考えていくことは非常に重要なわけです。女性局で出しているパートタイムについての均等取扱いについての指針というか、参考事例がありますが、そういったものの好事例を使って、パートタイマーについて、キャリア形成を具体的に図っていくことが非常に重要だろうと考えられます。
(4)「ミスマッチ解消とキャリア形成」ということです。ミスマッチの背景として、4頁から5頁目にかかりますが、やはり非常に社会が複雑になっている中で、労働者の方が、キャリア形成の目標を明確に定めにくくなっているということがあります。さらにその適切な情報が提供されないために、成長分野において必要な職業能力と、自分の有する職業能力とのすり合わせが十分にできないということがあります。若年者の方については、やはり就業意識が未成熟であるという面もあります。
したがって、こういったミスマッチというものを解消していくうえでは、キャリア形成ということを軸として、適切な情報を提供しつつ、キャリア形成の目標をはっきりしていただくことが非常に重要ではないか。漫然と訓練を受け、あるいは漫然と就職するということになると、必要な能力が身につかないとか、あるいは適切でない職業、自分に合っていないということで、転職を繰り返すような事態になりかねません。そのことがミスマッチを招来するわけです。これも情報提供を受けながら、現実的な目標を設定して、そのうえで自分が能力開発を受ける、自分から職業を選択するということになると、職業定着ということも可能ですし、能力も生かせることにつながるわけです。そういうことが、ひいてはミスマッチ解消に非常に大きく貢献していく。そういう関連であろうと思います。そういう意味で、キャリア形成を軸とした施策の展開というのは、ミスマッチを解消するためにも非常に重要であるということが言えるのではないかと思います。
こういった職業能力開発施策の方向を踏まえて考えていくと、職業能力開発促進法の体系も変えていく必要があるのではないか。いままでは職業訓練や技能検定を柱として、生涯職業能力開発をやってきて、それ自体は正しいものがあるわけですが、訓練、技能検定だけでいいのか。それからターゲットも実践的なものを考えていく必要があります。そういう意味から、法律改正を考えていかなければならないのではないか、ということに至るわけです。
特に、これから我が国の社会も知恵、知識の重要性が高まる知識経済の時代を迎えるわけです。ある意味では施設設備より人の知恵というものが勝負になってくる。その中では、やはり労働者の自発性を重視した、実践性の向上を図る。そのための社会的なシステムを作ることが重要です。そういうことから、職業能力開発促進法を改正して、キャリア形成を職業能力開発施策の中心に位置づけて、社会的枠組みを法律によって推進していく、ということが求められるということです。
その内容としては次のようなことです。まず、「キャリア形成への支援」。キャリア形成を法律上位置づけるということで、キャリア形成について、ある程度定義規定のようなものを置く必要があるだろう。これは言ってみれば、労働者が一定の職業に関する目標に沿って職務を経験することに、実践的職業能力の形成を図ることと言えるのではないかと思います。これまで現行法は職業訓練と技能検定を2大施策として、それを中心とした体系として構成してきましたが、これからはこういう2つに合わせて、実践的職業能力の開発・向上を図る観点から、労働者のキャリア形成の支援を1つの重要な柱として、位置づけることが適当ではないかということです。そうした場合に、職業訓練と職業能力評価との関係を、法律上もう少しはっきりさせておく必要があるだろう。
職業訓練との関係では、職業訓練がある特定の知識、技能を習得するものと言えようかと思いますが、そうして習得した知識、技能を実践的職業能力として定着させるには、実際の職務において活用し、何か成果を生み出していくことが必要で、いわばキャリアを形成する中で、身につけた知識、技能は生かされる。それが実践的能力になるという構図であろうと思います。また、実践的能力だけで身につかない、ある程度Off−JTで体系的にまとまって習得しなければいけないものは、職業訓練によりますので、この職業訓練とキャリア形成は、いわば相互に密接な関連を持って実施されることが必要であるということが言えようかと思います。
また、職業能力評価との関係では、キャリア形成を進める場合に、まず自分の持っている能力というものを棚卸しして、その能力を基に、何を今後の目標としたらいいか、キャリア形成したらいいかということをベースとして考えていただく。キャリア形成を今度行って、その成果についてまた能力評価を行い、どの段階に達したかを見て、すぐにどのようなキャリア形成をするか、あるいは能力開発をするかを考える。そういうことで、キャリア形成と能力評価、能力評価からキャリア形成を行う、その成果をまた能力評価する。こういうキャリア形成と能力評価も相互に密接な関連を持って実施されることが必要ではないかということです。こういった考え方の整理を、法律上明らかにしようと考えています。
次に「キャリア形成への支援」ということです。キャリア形成を具体的に促進していくには、どうしたらいいかということを、具体施策として法律上盛り込んでいくことが必要ではないかと思います。その場合は、まず第一義的には、雇用者については事業所内ですので、事業内でどのようなキャリア形成促進の取組みをしていくかということです。現段階において見ると、事業主によるキャリア形成の支援は、必ずしも十分全体として行われているわけではありません。むしろ今後の大きな課題です。そういうことから考えると、直ちにキャリア形成について、事業主がこれをやらなければならないというよりは、むしろ労働大臣が、事業主が行うキャリア形成を促進するための措置に関して指針を作り、その趣旨に基づいて、計画を作ってやっていただく。そういう展開がまず必要ではないかと考えます。
例えば労働大臣の指針に盛り込むものとしては、具体的にここに書いていますが、まず「企業内の職務の遂行に必要な職業能力の明示」。我が企業においては、こういう職業能力を求めている。こういうポストにおいて、こういう職業能力を求めているということを、事業主の方にまず明示していただく。それを前提として、個々の労働者の方が、自分は企業の中でどのようなキャリア形成を行うかということを考えていただくわけです。それを援助するために、職務経験について書面に記述する方法、これを「キャリアシート」と呼んでいますが、そういうものに労働者の方に書いていただいて、自分で自らの能力を棚卸しする、それを企業はお手伝いするということをやっていただくと非常にいいのではないか。
それから、そのうえで3つ目ですが、キャリア形成に関するコンサルティング、ないしカウンセリングによって、労働者の明確な目標作りをお手伝いするということが必要であろう。これは自ら企業内でやる場合もあれば、もちろん外部に委託してやることも考えられます。それからさらに労働者の方にキャリア形成目標ができたら、そのキャリア形成について、人事管理上の配慮をする。いわばポストの配分の場合に、キャリア形成目標ということとのすり合わせを、ある程度考えていただいて配置していただくことが非常に重要になってくるのではないか。こういった点を中心に指針を作って、それを基に今度事業内の能力開発計画を企業の方にお作りいただいて推進していく。
これを推進していくに当たっては、企業内における体制も必要ですので、これまでのような推進者レベルだけでなくて、もう少し上のレベルも含めて、体制をしっかり築いていただく。さらに行政としても、こういった企業について情報提供、相談を行ったり、キャリア・カウンセリングについての講習を行ったり、助成金も組み替えて、キャリア形成を支援できるような助成金にしていくということで、全体的に応援していくことで、キャリア形成を促進していくことを考えたいと思っています。
もう1つの大きな柱が能力評価です。このキャリア形成を促進するうえでも不可欠ですし、労働市場の流動化という大きな流れがあります。その中でミスマッチを解消して、需給調整を円滑化していく、いわば労働市場の機能を有効に発揮するうえで、能力評価システムを整備することが不可欠という状況になっています。特にこれからの能力評価システムというのは、単に特定の知識、技能の評価にとどまらない、むしろ労働者の実践的職業能力を評価するところがポイントになってくると思います。これまでの技能検定や民間における検定制度、あるいはいろいろな資格制度がありますが、どちらかというと特定の知識、技能、あるいは特定の知識、技術ということですが、今後はもう少し広く、実践的能力を全体として評価できるようなものを考えていかなければならない。社会的に作ることが必要だろうと思います。
そういうために、仕組みとしてどういうことを考えていったらいいかということですが、ロに若干書いています。この「併せて」以下ですが、「民間の諸団体が評価を行う仕組みのうち、実践的職業能力の開発に資するものであり、かつその適切な実施が確保されるものについて、認定を行う仕組みを整備し、そのための認定の基準等を明確にしていく」ということで、認定というものを通して、社会的な能力評価の基準、枠組みを作り上げていく必要があるのではないかと考えられます。
これと併せて、実は現在認定技能審査制度というのがあります。これは労働大臣が、公益法人の行う技能審査について、一定の基準に達しているものを認定するという仕組みですが、これについて法令に基づく制度として位置づけなさい、という閣議決定がありました。こうしたことも踏まえて、こうした認定制度を法律上位置づける必要があります。
それから、その下のほうに書いてあるのが国の評価制度、技能検定ですが、技能検定の一部について、民間の団体に委託しています。これについても閣議決定がありまして、こういう検定制度を委託する場合には、委託先の民間団体、あるいは委託基準を法律上明定せよという閣議決定がありまして、それに従って、技能検定の委託についての基準を、法律上作るということもあります。こうした閣議決定に基づく法的整備も併せて行いたい。全体として、そういうことで能力評価システムの整備ということで、法律上位置づけていきたいと考えています。それから「その他」として、能力評価技法の開発・評価を行う人材の育成も大きな課題です。以上のような点が法的問題点、法律改正の主な中身になってくるということが言えるかと思います。
次に、制度改正の一環として、給付金の見直しを考えていく必要があるだろうということです。これまで給付金については、人材高度化助成金、生涯能力開発の推進のためとか、職業能力開発給付金、それから認定職業訓練の振興のための補助金、給付金といったものがあります。かなり複雑な制度になっておりますが、こういったものをある程度整理、統合していく必要があるだろう。特にその場合、産業構造の急速な変化とか、労働力の流動化の下、能力開発施策の方向に合った形のものとして、組み変えていく必要があるということで、今回は特にキャリア形成支援というものを重点に置いて、こうした給付金助成制度を見直してはどうかと考えています。
それから、地域の都道府県に対する補助金の在り方についても、もっと地域の能力開発ニーズに即応して、都道府県が行政展開できるようにある程度メニュー化して、都道府県がそれを選択していくような、都道府県の独自性を強める方向で補助金を見直したらどうかと思っています。併せて支給事務の簡素化、合理化等を図っていく必要があるだろう。具体的な中身ですが、いま申し上げたようなキャリア形成支援の重点化を図るということですので、まず事業主の行う教育訓練における訓練内容とか、訓練目標をできるだけ明確化していただくということが、キャリア形成支援につながってくるのではないか。
助成対象とする要件として、8頁の下のほうですが、「教育訓練の内容、教育訓練を受けることによって得られる職業能力や、遂行可能となる業務が明確化されているものを助成対象とする」ということで考えたいと思っています。かつ、その計画の作成、提出については、「内容の適正化を図りつつ、労働者に対し、わかりやすい形で周知させるための措置を講じる」。つまりこういう目標で、うちの能力開発はこうやっていくということを労働者に対しはっきり示すことを助成の要件にしていく。そういうことによって、事業内の能力開発においてもキャリア形成をしやすい形に持って行くということが、1つ重要であろう。それから有給教育訓練休暇も、キャリア形成のうえでは非常に重要なツールです。こうしたものについて、支援措置を引き続きしっかりやっていくことを考えていきたい。
それから「能力評価の推進」ということが、もう1つの柱として出てきますので、能力評価を活用できるような助成の仕組み、あるいはキャリア・コンサルティングを受けることを促進するための支援の仕組みを、給付金の中で仕組んでいくことを方向として考えていきたいと思っています。
それから「地域の能力開発基盤形成」ということで、先ほど申し上げたような、地域が人材ニーズに即して、民間の能力開発を推進できるように、ある程度メニュー化したうえで、都道府県の選択したものについて助成、補助していく。ですから、都道府県がある程度補助してもらうものについて、都道府県がイニシアチブが取れるような形のものにできるだけしていきたいと考えています。併せて整理・合理化ということで、給付金がいまいろいろ細かく細分化されていますが、その中で助成対象が重複したり、併給調整の問題が生じやすいということがありますので、これらの整理、統合をできるだけ図っていきたい。支給事務についても、簡素、合理化したいと考えています。そういう方向で、今後助成金、給付金という業務の整理を行っていくという考え方です。
4番目「今後の職業能力開発施策の内容」ということですが、いまのような方向性を踏まえて、具体的に能力開発の施策をどう展開していくかということです。これは第6次の職業能力開発基本計画が今年度て終了し、来年度から第7次で、大体5年間ぐらいをメドの計画ですが、対象になってきますので、第7次職業能力開発基本計画の作成の基になるものということで、一応整理しています。いま言ったことを少し具体的に書き下ろしているということです。
まず第1番目に「キャリア形成を支援するシステムの整備」ということです。まず、「労働者のキャリア形成の支援」ということで、労働者が自らの能力を知る仕組み、棚卸しできる仕組みということで、キャリアシートの記述を推進していく必要があるだろう。これまで実践的に経験してきたものを、職業生活の節目ごとに棚卸しして、それを確認しつつ、次のキャリア形成をどうしたらいいかということを考えていくわけですので、いわばその棚卸しのためのツールとして、キャリアシートというものに、自らの何をやってきて、どういう成果を生み出したかを書いていただく。そのことによって、自らのやってきたことを振り返り、能力を確認するという前提を作っていくということです。
それを行ったうえでキャリア・コンサルティングということになるわけです。その企業のニーズと労働者の希望適正能力を照合して、キャリア形成の方向について相談していくというのが次の段階です。そのことによって目標をはっきりさせ、能力開発をどうするか、次のポストをどうするかということを企業と相談していただくということになってくるかと思います。国としては、そういうキャリア・コンサルティングができるように、うまく機能するように情報収集を考えていかなければいけない。ある意味では個々の職業について、今どういう状況でどういう需要があるのか、伸びて行くのかと、オキュペーショナル・アウトルックみたいなものが考えられるわけですが、そういうものも労働市場のインフラとして、国が整備していくことが必要になってくるということです。
それから「キャリア形成支援についての企業の取組みの推進」。これは先ほど述べたことの繰り返しになるわけですが、やはりキャリア形成を尊重し、労働者の能力を引き出す企業像というものを考える。そういう企業像を考えた場合に、まずやっていただくこととしては、指針にも書きましたが、職務、職場ごとに必要とされる能力を労働者に明示する。そのうえでキャリア・コンサルティングなどをやっていただくということであろうと思います。こういったことを先ほど申し上げたようないろいろな情報提供とか、キャリア・コンサルティングの講習とか、助成金によって国が応援していくという体制になってくると思います。
国としては、企業の行うキャリア形成支援ばかりではなく、やはり離転職者の方とか、企業内ではなかなかできない中小企業労働者の方などに、直接キャリア・コンサルティングを実施することも必要になってくると思います。来年度においてキャリア形成支援コーナーというものを雇用・能力開発機構都道府県センターに設けて、これを推進していく。これは全国47都道府県にあります。今後、こういった施策の展開を、ますます強めていくことが必要だということです。
それから、「若年者のキャリア形成の支援」ということで、フリーター現象などがあります。無計画のまま離転職を繰り返す。10年、20年経ってもきちんとした能力が身につかないということでは困りますので、国としてもやはりある程度関心を持たざるを得ない。やはりキャリア形成ということを真剣に考えていただく。そのうえで能力を的確に身につけていただくことが必要ではないかということです。
「能力評価制度の整備、拡充」です。これも先ほど申し上げたような実践的能力を評価するシステムというものが、非常に重要になってきます。その際、業種別労使団体の役割、企業横断的な評価システムということが非常に重要になってくるのではないか。英米においても、イギリスのNVQなどありますが、実践的能力を評価する仕組みとして、全国的な資格制度ができていますが、やはり業種別労使の参画ということの下になされているということです。業種の色合いというものがだいぶ薄まってくるわけですが、やはり企業を超えた横断的なものを作っていくことを考えた場合、現実的な考え方として、業種別団体というものをある程度重視して、そこに一定の役割を担っていただくことが考えられるのではないかと思われます。
これまで、能力評価については、知識、技能、あるいは知識、技術ということでやってきたわけですが、近年コンピテンシー、ある状況職務において、高い業績をもたらす類型化された行動様式と言われておりますが、そういう仕事に対する取組みの考え方というか、姿勢というか、そういったものも最近非常に重視されるようになっております。こういった知識、技能以外のものについても、実践的能力という観点からは、評価の対象として捉えていくことが必要になるわけで、そういう模索を続けることが必要ではないかということです。
それから「自発的能力開発の促進」ということで、これも教育訓練給付について特に触れておりますが、これは平成10年12月に発足したものです。現在のところ、1万5,000講座余り指定されておりまして、受けた額の8割、1月からは最高30万円まで出ますので、かなり潤沢な制度ですが、こういったものを有効に活用して、自主的能力開発を、効果的に推進していくことを考えていく必要があると指摘しているわけです。
そのほか、「事業主の行う能力開発の推進」の所で、特に強調しているのは、これからは個別のキャリア形成に対応するため、選択型の研修や自発的能力開発が必要であろうということです。事業主については、長期的な視点からの能力開発が弱まっているわけです。その重要性というものを訴え、効果的な支援を行っていくことが必要ではないか。併せて業界団体に対する開発の取組みも、重視していかなければいけないという指摘です。
それから「ホワイトカラーの能力開発」ということです。ホワイトカラーの特にキャリア形成に当たっては、能力評価システムの整備がポイントになっています。現在ビジネス・キャリア制度というものがあるわけですが、大体年間1人万以上、平成11年は1万6,000人の方が受けておりますが、こういったビジネス・キャリア制度についてもいろいろな問題があります。
例えば現行制度のレベルは上級がまだできていないという状況ですから、そういったレベルが実態に合っているのか。それからビジネス・キャリアの講座を受けたことの修了試験的な性格が強くて、能力評価制度として自立したものとなっているのかという位置づけを、もう一度洗い直す必要があるのではないか。それから民間教育訓練機関と企業との試験問題の作成に関する連携を、もう少し強化しなければいけない。それから、学習単位があまりにも細かくユニット化されすぎているということで、少し大括り化を図っていくことも必要ですし、全単位を取ることが非常に難しい仕組みになっていて、そういうことについても工夫が必要であろう。
それからビジネス・キャリア制度を受けて、その企業内の処遇とできるだけ結びつけるような方向にしていく。そのためには中身を実践的にするということもありますが、そことの連結を特に強めて、活用促進するという観点が重要ではないか。こういったあたりから、ビジネス・キャリア制度についても、これからの在り方を考え、見直しをすることが必要ではないかという指摘です。
ホワイトカラーの能力開発に当たり、アビリティガーデン(生涯職業能力開発促進センター)で、ホワイトカラー訓練の開発をやっておりますが、ここで開発した先導的なコースを、公共施設や民間教育訓練機関に、より効果的に伝達する方法について検討する必要があるという指摘です。
職業訓練指導員の方も、どちらかというと技能的なものに偏っておりますので、今後はホワイトカラー向けの職業訓練の充実、さらに企業内でキャリア・コンサルティングとか、そういうものが担えるような、対応できるような体制整備を図ることが必要になるだろう。訓練手法について、インターネットや衛星通信といったIT化を活用した訓練手法の検討が必要であろう。それから関連職層や専門職層に対する能力開発、特に企画力、折衝力などを必要とするホワイトカラー層に対する教育訓練評価は、非常に難しい面があるわけですが、その在り方を模索する必要があるとする指摘です。
「就業形態の多様化」の所では、特にパートタイム労働を取り上げています。パートタイム労働は、就業者のウエイトが非常に高くなっております。こうした方について、きちんとキャリア形成や能力開発を考えていかないと、これも国全体としての能力開発、能力投資の低下という事態になりかねないわけです。能力開発についても、訓練期間、時間等に配慮したコースの設定とか、インターネットを活用した訓練機会の提供など、工夫をこらす必要があると思います。
より抜本的に考えると、パートタイム労働というのは、単に時間が短いだけという考え方をしていく必要があるだろう。これまでのような縁辺労働力というようなことより、短時間の例えば正社員のような形のものを作っていって、そこから現在のパートタイムからのキャリア形成の橋渡しをする。そういう形でパートタイムという概念を破壊していくことが必要だろう。そういう企業のいわゆる労使取組みというものも必要ですし、そういうものを支援していくことが必要です。女性局のまとめたパートタイムの均衡を考慮するためのいろいろな事例があります。そういったものを参考として、労使で取り組んでいただく。そういったことを応援することが必要ですし、能力開発的にはキャリア形成の促進や、能力開発をできるだけ受けられるように持って行くことを考える必要があるという指摘です。
それから障害者等、特別な配慮を必要とする方たちに対する能力開発です。就職後の職場適応、一貫した支援が重要です。そういう意味での事業主との連携が、これまで以上に求められてきたということですし、また能力開発について見ると、ノーマライゼーションの観点から、一般の公共訓練施設、能力開発施設において、障害者の方の受入れを促進していく必要があるだろう。障害者能力開発校においては、障害の重度・重複化、高齢化といった特性に応じた訓練の設定を進める。さらにIT化の技術的成果を応用した訓練手法の開発も、障害者の方の能力開発にとっては有効ではないかと思われます。それから離職者の方だけでなく、在職者訓練を積極的に実施することも当然の問題です。こういった障害者の方についての各般の施策を、引き続き強化して進めていくことが課題です。
「産業に必要な人材の育成」です。これについては特にIT化対応がよく言われています。IT分野の職業能力習得支援というのは、このまま放っておきますと、デジタル・ディバイドということが起こりかねない。そういう面で雇用不安が惹起しないように、すべての労働者の方のIT化対応を目指すことが必要です。
今般の経済新生対策でも、全体としてIT普及国民運動ということで、各省庁挙げて対応しています。労働省の能力開発施策としても、今年度と来年度、合わせて140万人を対象に能力開発を行う。すべての労働者の方のIT化対応を目指すということで、公共職業能力開発施設等全勢力を挙げて、取り組もうとしているわけです。やり方としては、民間への委託を積極的に進める、公共としても平日、日中以外を含めた訓練機会を提供するということ、それから離職者の方だけでなく、在職者の方にも幅広い機会を提供する、自学自習という構想を設けたりしています。そういうことで、広くIT化対応を目指す。それと同時にある程度高度なレベルのIT化対応の訓練も、進めていくことが必要であろうと思います。
情報通信技術の高いレベルについては、職業訓練というよりも、むしろ先端的な技術講習といった色彩が強いわけですが、企業活動へのIT化の進展に伴い、ITを使って業務を遂行していく。こういったものについては、能力開発、特に職業訓練という範疇の中で、高いレベルのコース開発を行って、教育訓練を行っていく必要が非常に強いのではないか。例えばeコマース事業運営など、そういうITを活用して事業の運用を行っていく分野での訓練コースの開発を中心に、積極的に取り組んでいくということ。それから人材不足が高度化のボトルネックにならないように、高度なレベルのIT化対応の人材を育成することも重要です。
そのほか、ITを活用した教育訓練ソフトの配信とか、衛星通信システム、公共職業能力開発施設間の仮想ネットワークの訓練指導、こういった新しい訓練システムの開発を検討していくことが必要です。そのほか介護分野、環境分野、その他の成長分野における公共職業訓練の拡充が必要となってきます。
職業訓練コースについて、一方的に訓練するというだけでなく、今後自発性や問題発見能力が重視される中で、こういったものを涵養できる仕組みを考えていく必要がある。併せて体験学習なども組み込み、特に若い方については、ボランティアという活動を組み込むことによって、自発性を養成していくというようなやり方の工夫も必要になってこようかと思います。
そのほか「ものづくり振興」です。これはものづくり基盤技術振興基本法ができて、通産省や文部省と連携しつつ、全体として、社会的にものづくり振興を図ろうとなっています。労働省の施策としては、技能競技大会、表彰制度の充実といったことを通じて、ものづくり、熟練技能の重要性に対する理解を深めていただく。それから若年者の育成ということで、基盤的技能を習得できるような教育訓練機会の確保。これは文部行政とも一体として進めていく必要があろうかと思います。技能労働者の生涯にわたる技能形成と促進の観点から、キャリアを得た段階ごとの努力目標を掲げて、振興していくことが必要である。さらに究極には、技能労働者の処遇が重要で、熟練労働者の方が、企業内である程度、賃金その他の面でそれにふさわしい処遇を受けるように、労使で取り組んでいくことも重要ではないかということも書いています。
「高度熟練」は、高度熟練を持った方がかなり年輩になってきている。このまま10年経過すると、失われてしまうのではないか。こういった熟練をどうやって引き継ぐかという問題です。まず1つは熟練技能者の技能や、その習得過程を分析、デジタル化して記録することが考えられます。その記録したものを公共職業訓練の基準やカリキュラム等に反映する。そういうことで、失われないうちに保存すると同時に、そういうカリキュラム等を通じて、効率的に熟練技能が伝達されるような仕組みを考える必要がある。高度熟練者の方の社会的な活用推進を、考えていく必要がありますし、地域、事業主団体の自主的な高度熟練技能の継承についての取組みを、支援していくことも重要です。
最後ですが、能力開発推進の役割分担が書いてあります。これは公共部門と民間との役割をどうしていくか。能力開発というのは、労働市場の大きなインフラの1つです。そのインフラである能力開発について、官民が協力して、きちんとしたものを作り上げていく、運営していくことになろうと思います。その中での公共の役割ですが、やはりまず民間において、できるだけ教育訓練をやっていただく。それを振興する役割が非常に大きいだろう。それから、どうしても民間で出来ない分野、期待できない分野もあります。そうしたものについては、公共が自ら職業訓練を実施していくということが基本的な考えです。
第1の民間における教育訓練の振興については、いろいろなやり方があるわけです。例えばある程度情報を提供していくとか、こういった訓練はどうだろうかと相談したり、あるいは訓練施設を貸与したり、指導員を派遣することもありますし、教育訓練を奨励するため、助成金を支給していくというやり方もあります。それから委託訓練で、教育訓練コースの開発を調整していくというのもあります。
それから、自発的な教育訓練、教育訓練給付制度がありますが、こういったものを活用して、良質な民間の教育訓練を確保していく。このようにいわゆる情報を把握しながら、民間の教育訓練の全体を見ながらコーディネートしていく。そういう役割がますます重要になってくるのではないかと思われます。
直接やる部門としては、セーフティネットとして、最低限の教育訓練機会を確保する。失業者に対する訓練、中小企業の在職者の方の訓練ということが考えられます。そのほか、高度な職業訓練についての技法の開発も考えられます。とにかくこういう民間のコーディネートという役を果たしていくうえでは、能力開発に関する情報ニーズを的確に把握することが大前提となるわけです。これは産学官の連携によって、こういった情報を把握して、いま申し上げたような民間の教育訓練をコーディネートすることが重要です。さらに事業主団体による能力開発の取組みを生かしていくことも、これからますます重要になるということです。
次に、公共の中の国と都道府県の役割分担ですが、国はどちらかというと離転職者等に対する訓練、雇用対策として一定の水準を維持するという訓練が重要ですし、また高度・先導的な教育訓練機会を、開発、普及させるという役割があります。都道府県は、地域の基礎的なニーズに応じた訓練をやることが基本ですが、特に地域のニーズに応じたということで、地域のコミュニティ・カレッジを例えば施行するとか、都道府県の多くは商工労働部という形でやっていて、都道府県の産業政策と一体となって、雇用促進にかかる能力開発を行う。そういった展開が考えられるのではないか。できれば、こうした都道府県の自主的な展開を、補助金などを通して推進していくことがもう1つ国の役割として重要ではないかと思います。
こういう得意分野をやっていくことによって、自然と両者の役割分担を図っていくということになっていくのではないか。もちろんこういう役割分担を図りつつ、能力開発という面で、お互いに連携を図り、協力してやっていくことも重要です。ですから、基本的な役割分担がありながらも連携し、協力する。そういう調整を図りつつ、全体として能力開発のレベルを高めていく。こういうことを継続的にやっていく、お互いに調整していくことが重要であろうというご指摘です。以上が、部会の総括的な報告です。
最後のペーパーとして、いままでの7回について、各回にどういうことをやったかという審議状況を添付させていただいています。以上です。
(会長)
どうもありがとうございました。ただいまの総括部会長からのご報告と、事務局からの説明を踏まえて、何かご意見なりご質問がございましたらどうぞ。
(部会長)
一言だけ付け加えさせていただきたいのですが、いま事務局にご説明いただいた文書のいちばん最後に、国と都道府県の役割分担について書いていますが、総括部会のご議論の中では、国と都道府県の役割分担について、もう少し踏み込んで書いたほうがいいのではないか、というご指摘もありました。それを議論して、総括部会としては、しかしその点については、これが職業能力開発基本計画になって運用される段階で、あるいはその職業能力開発基本計画を作る段階で議論していただくのが適当であろうということで、この報告にはこの程度にとどめています。そのことをご報告いたします。
(委員)
7回にわたる総括部会で、部会長には大変なご苦労をいただいて、おまとめいただき感謝申し上げたいと思います。また、私だけではなく、何人かの委員からキャリア形成という新しいツールを使って、それを能力開発の施策に入れていこうということに当たり、助成のうえでの開発とか、増えているパートについてもできるような形ということで、その点は十分論議をしたことを、総会のメンバーの皆さんにも、いまのペーパーを読んでいただきましたごとく、おわかりいただけると思いますが、その点はかなり論議したことを一言添えさせていただきたいと思います。
また、総会でもご意見をいただき、そして部会でもできるだけカタカナの用語は、文脈に応じて日本語にしていくということが、皆さんの合意であったと思います。それは少し消化不足かなというところがあったとしても、それはかなり事務局のご努力をいただいたうえで、今後さらに詰めていく必要があればという形で、私は総括部会の1人として受け止めています。
(会長)
特になければ、私、会長としてではなく、一委員として感想を申し上げてよろしいでしょうか。何分にもたくさんいい点がありますが、1つだけ仮に言えば、かなり長期の職業能力開発が、ある意味で企業がやや短期化を重んずる傾向のために、長期にわたる人材形成がやや弱まる恐れを感じて、そこにそれなりの施策を考えるということは、私は非常に同感です。しかもそれを具体的にキャリア形成、つまり1つの仕事ではなくて、関連の深いいくつかの仕事を、企業の内外を問わず経験していくことはとても重要ですし、そのことは言い換えれば、実は実務経験の評価、特定の1つの職務ではなくて、私流に言うと幅広い専門性になるのですが、それはともかくとして、そういうことを指摘されたのは非常に重要だと思います。
それは同時に、この報告にも少し出ていますが、よその国のイギリスとか、アメリカとか、フランスとか、そういう国と同じような傾向が見られると言ったらいいかもしれません。向こうの国の言い方は、「ワーク・ベースド・スキル」。私からすると実務経験に基づいた技能を、ここでは「実践的能力」と、カタカナでないほうになさったのだと思いますが、それはとても重要だと思います。
そういう点を踏まえて、一委員の解釈として議事録にとどめておいていただければ、ありがたいと思うことがあります。それは全体の論点を通じて、当座に必要な職業能力開発あるいは人材開発と、競争力を高めるための人材開発というのは分けて考える。国はもちろん両方、是非ともやらなければいけない。セーフティネットという言い方だと主として前者になる。例えば離職者の方に半年、1年の訓練の機会を提供する。それだけでは競争力は保てないのです。それでしたら乱暴な話をすれば、例えば多くの途上国との競争に勝てるわけがない。そうすると、雇用の面ではそれは非常にマイナスになってきます。同時に競争力を高めるような人材開発も必要で、両方とも大事なのです。
それをいままで言われたいくつかの点について、まず個人主導の能力開発が非常に重要であるというのは私は全く同感で、前の審議会からそういうことは申し上げているつもりですが、その理由に、競争力を高めるという観点からすると、ここの報告書にある部分はもちろん間違いではありませんが、同時にもっと強い面がある。つまり競争力を高めるような、例えばトヨタの生産の職場では、半数ぐらいの人は、ものすごく高い競争力を持っていると思いますが、その人々の技能を高めるためには、個人主導の理由は、単に労働需要が不確かとかなどではなくて、もちろんそれはありますが、いま自分の高い技能をさらに高めるにはどういうコースが必要か、どういう次のOJTが必要かということは、むしろ企業やあるいは人事課長よりも、あるいは研修課長よりも本人自身がより良く知っている場合がある。
例えばアメリカでは、モトローラはそういうわけで、かなり中高年の人に選択する機会を用意しているということを、ここで私は前に申し上げたことがありますが、日本企業だけではなくて、そういう意味で言うと、個人主導はもう1つ強い理由が加わるかもしれない。
それからキャリアの形成支援にしても、当座に必要な人材開発はたくさんあってわかりますし、かなり文書化できるのですが、競争力を高めるようなものになると、なかなか簡単に文書化しにくい。そうすると、優れた事例を事例集として集めていくことは非常に重要で、つまり例というのは大変重要ではないだろうか。そういうことがこの中にある言葉で言えば「情報の収集」。国の役割の1つとしてそれはあるかもしれない。というのは、個々の企業は競争上出しませんから。
それからさらに認定、評価にしても、民間機関のいいところを認定するのはとてもいいことだと思います。しかし、同時にそれはしばしば当座の人材開発の場合がやや多くて、競争力を高める場合は、もう少し工夫して、個々の企業でやっている中のいい部分、情報として集めて例示していくということが少し必要ではないか。
コンサルティングも全く同様で、いわゆるいまの人材会社が、いろいろなさっていることはとても大事ですが、それはやや当座の人材開発の場合にとても適用性がありますが、競争力を高めるという観点からすると、もう少し工夫したほうがいいかもしれない。そしてITについても、情報格差という点で何か機器の操作ができるのはもちろん大事です。それはもちろんいいのですが、同時に先ほど私が申し上げた競争力を高めるような場合には、ITと呼び難いような普通の職場のすごい知識と融合して、つまり一種の補足性、お互いが補い合って高めていく、カタカナで言えばコンプリメンタリティということもやはりあって、それはそれなりにたくさんの事例を集めて、こういうことがあるのだよという情報を普及していくことも、1つの霞が関の大事な役割ではないだろうかと思います。
(委員)
2つあります。1つは総括部会の1人の委員の意見として、こういう職業訓練について、かねてから専門家でいらっしゃる会長が、この総括部会長報告をどのように評価なさるのかということに、非常に関心がありまして、いま言ってくださったことは、その評価の一部分かと思うのですが、全体としてどのように評価なさるかということを、もしできましたら皆さんを代表して、もう少し伺いたいという気がします。
もう1つは、委員の1人としての勝手な発言なのですが、いま会長が一委員として言ってくださったことを、議事録にとどめるだけでなくて、もしできたらこの計画が実施される段階でも、付帯文書として、会長がこういうコメントをなさったということを、どのように取り扱われるのかわかりませんが、委員会等で配付していただいたらよろしいのではないかと思います。
(会長)
1番目は、私はもう申し上げたことに付け加えることなく、今日がこの中央職業能力開発審議会の最後なものですから、私は数年間、進行係でしたが、基本的には私の意見でやってきたつもりは全くなくて、なるべく皆様方のご意見をまとめて、かつアピールするようなという主観的なつもりでやってきただけですので、先ほど言ったことに尽きております。
(委員)
総会の席で、大変基本的な問題かもしれないのですが、5頁に3のいちばん最初の4行があります。これは実践的な職業能力開発をすることの重要性を説いた部分なのですが、どうもその認識が、実は私たちのように職業能力開発に携わっているものだと、どう位置づけたらいいかわからないのです。
いま、難しいことを申し上げようというわけではないのです。たしかに知識重要性が高まる知識経済の時代を迎えるのだと。その「迎え」で、その次が、だから創造性や成果を生み出す、実践的職業能力開発が必要なのだという理解なのか、これは知識の重要性と並行の話だけれども、並行して必要になりますよという話なのか、にもかかわらず、そちらは見捨てられては困りますよという話なのか。その辺がわからないのです。総括部会のときにも申し上げるべきだったのかもしれませんが、もしその点について、この作文なさった側での理解、あるいは委員の方々の理解はどうなのでしょうか。
(事務局)
事務局として申し上げますと、知識経済の時代を見ると、知識によって付加価値を産んでいくという社会であろうと考えております。その知識の中身というのは、ある意味では創造的なものを生み出す、付加価値を生み出す知恵ということになってきますので、それをもう少しわかりやすく言うと、創造性や成果を生み出す知識・知恵ということが中心となって経済を引っ張る。そういうものが付加価値として重視される経済という意味です。
(委員)
要するに知識の重要性が高まる、当然そこの中に創造性や成果を生み出す、実践的職業能力開発の充実が必要となるだろうという理解ですね。
(事務局)
はい、そうでございます。
(委員)
わかりました。というのは、ホワイトカラーとブルーカラーの区別とか、特にITの問題との関連が、その辺で明確な委員の方々のご理解があれば結構だと思っているのです。どうもありがとうございました。
(会長)
いまの点は、総括部会の委員でない人間の解釈からすると、もう少し具体的にもっとはっきりしていて、まさにホワイトカラーとブルーカラーの区別が次第になくなる。特に私の言う競争力を高めるような人材開発の場合は、ますますなくなって、つまりホワイトカラーの中の、例えば上半分ぐらいの人というのは、なぜそうなのかとか、なぜそういう故障なのか、どういう原因なのかというところが非常に効率に影響してきている。それは研修も必要ですが、簡単な研修だけでは無理なので、私流に言うと、それは「ワーク・ベースド・スキル」だという解釈も1つあり得る。
(委員)
だと思うのです。ですから、にもかかわらずという理解ではないのだろうということなのです。
(委員)
感想ということで申し上げたいと思います。私どもが取り組みましたのは、「今後の職業能力開発施策の在り方」ということで、労働者の自発性を重視したキャリア形成、あるいは実践的能力の強調ということで、新しい視点が入って、充実したものになっていると思います。
取り組んだ対象が、労働市場にいる方々を対象にする。それから職業能力局でなさっていることを対象にする。さらに財源としては労働保険特別会計雇用勘定というか、3事業のお金を当てるという切り口で、箱を区切って見ると、その中に盛られた内容としては非常に充実したものになっていると思います。
その箱の外側の部分というか、ここに書かれていないことについては、もちろん当然お考えだと思いますので、ここで再度言うのも余計なことかもしれませんが、やはり人間というのは非連続的なものではなくて、連続性があるものですから、例えば「労働者の自発性を重視したキャリア形成」といったときには、前提になるのは職業意識を持った自立的な個人ということですね。そういうものをいかに作っていくかというのは、労働市場に入ってからということではないと思いますし、実践的職業能力というのは、職務経験の積み重ねによってできるというのはたしかにそうですが、ここで注目している知識、技能は単なる知識、技能ということではなくて、職務に取り組む、仕事に取り組む姿勢というか、問題解決能力や人的ネットワークを構築する力とか、創造性のある、あるいはチャレンジを常に怠らない、そういった資質というか、能力というか、そういうものもやはり労働市場に入ってから作られるものではなくて、その前の段階で作られていくものという気がします。
また、IT化についても、基本的なITリテラシーというものは、労働市場に入ってから、当然できるものではなくて、その前の段階のことですので、せっかく新しい発想に立って出来上がった今回の職業能力開発施策をより生かすためにも、関係の教育機関やあるいはその他の省庁との協力といったところに、今後心を砕いていただきたいというお願いでございます。
(会長)
いまの点に何か付け加えることはありますか。
(事務局)
文部省との連携は、次官レベルで今年も年2回やっています。この間の10月に行いましたが、どちらかというと企業への委託やフリーター対策あたりが中心になっていますが、根っことして、やはり教育訓練においても、学校においても、実践的な職業能力というものを涵養していくことを、文部省の幹部の方も非常に考えておられるという感じがします。ですから、今後ともそういう文部省と労働省の次官レベルの会議というのは、頻繁にやっていこうと思います。それだけではなくて課長レベル等も含めて、非公式にもいろいろやっているのですが、ますますその連携は必要になってくるということであろうと思います。
イギリスなどは雇用教育省ということで、NVQを作るに当たっては、学校教育と職業訓練が一体となった資格制度を設定しています。できるだけ能力開発行政については、教育との関係を深めていくことが必要ですし、すでにある意味では、委託訓練などは、専修・各種学校を活用したり、場合によっては大学の教育も、訓練として受けさせるというようなことをやっています。その方向がますます強まるということは当然のことですし、我々もそういう気持で、文部教育との連携を図るように取り組んでいきたいと思います。よろしくご指導いただきたいと思います。
(委員)
総括部会の一員としては、ここに書いてあることは、日本の労働市場政策としては、おそらく画期的なことが含まれているのではないかと思うのです。それをこのようにまとめていただいた総括部会の委員の皆様には、大変なご努力がありました。それからそれを支えてくださった事務局のご努力も、非常に大きなものがありましたので、その点を僭越ですが、会長からおねぎらいいただければ幸いです。
(会長)
ものすごい回数でして、どうもありがとうございました。しかも私は長年、特定の職務中心の職業訓練というのは、非常に職場の中の実務、それがしかもキャリアとしてということは、この審議会とは別に、長年そういう主張をしてきましたので、実は大変私個人としてもありがたいと思っています。本当にご苦労さまでございました。
いかがですか。特にもしなければ、総会として、この総括部会長報告については、妥当ということで了承してよろしいでしょうか。そうしましたら、当審議会として、この内容の報告をもって、労働大臣に建議することにしたいと思いますがいかがでしょうか。
(異議なし)
(会長)
ありがとうございます。それでは、事務局から建議文書を配ってください。それでは事務局、読んでいただけますか。
(事務局)
「今後の職業能力開発施策の在り方について(建議)。当審議会は、今後の職業能力開発施策の在り方について、本年8月より総括部会において鋭意検討を行ってきたが、今般、別紙のとおり総括部会長報告が取りまとめられた。今後この総括部会長報告の趣旨に沿って、職業能力開発施策を推進することが必要であると考えるので、この旨、建議する」。以上でございます。
(会長)
ありがとうございます。ただいま事務局から読み上げていただいたとおり、労働大臣に建議するということでよろしいでしょうか。
(異議なし)
(会長)
ありがとうございます。それではご了承いただき、労働大臣に建議することといたします。
それでは、ほかにないようでしたら、今日の総会はこれで終了いたしますが、ご承知のように中央省庁再編に伴い、この中央職業能力開発審議会は廃止になります。来年1月からは職業能力開発施策についての審議の場は、労働政策審議会に引き継がれることになります。したがって、本日の総会は、最後の中央職業能力開発審議会になります。それでは、最後の職業能力開発審議会の閉会に当たりまして、一言、職業能力開発局長よりご挨拶いただきたいと思います。
(能開局長)
ただいま会長からご発言がございましたように、中央職業能力開発審議会の前身は、「職業訓練」という名称で始まったのが昭和33年。途中で「職業能力開発」となりましたが、実態においては同じような形でまいりまして、40年余にわたったわけですが、省庁再編を機として、各種審議会の整理ということで、労働政策審議会の中に職業能力開発分科会を設けて、ということになっております。
本日、おまとめいただきましたご報告もそうですが、本当にいろいろな形で私どもを支えていただきましたし、またいろいろなご提言等もいただき、私ども、非常にありがたく思っております。形は変わりますが、また引き続きよろしくお願いしたいと思います。
最後に一言だけ申し上げますと、本日の部会長ご報告なり、またこれを受けて今後計画を作っていくことになりますが、私も職業能力開発行政というのはそう経験したことなく、実は局長になってからが初めてです。私の印象から申し上げますと、能力開発というのは金とか何か罰則というような制度、仕組みではなくて、こういうことをしたらいいのではないかということについて、地道にどこまでも、いわばしつこくやっていくことがないと、なかなか容易ではないのではなかろうか。
ここ2、3年の経験で、過去数十年を量るのは大変失礼ですが、そういう意味で今日おまとめいただいたものを、来年から組織も変わってしまうわけですが、職業能力開発局に関しては、組織は強化されるということでまいりますし、21世紀にまさに入るときに当たりまして、こういう立派な報告をおまとめいただき、そして私ども行政としては、とにかくしつこく、しつこく追いかけて行く、少しでも進めるという姿勢で臨んでまいりたいと思っております。本当に長い間、いろいろご指導いただきましたが、また姿を変えて、同じように公労使の方々から来世紀もご指導を賜りながら進めていくことには変わりはございませんので、どうぞよろしくお願いしたいと思います。本当にありがとうございました。
(会長)
いまも局長が挨拶されましたが、今日が最後の中央職業能力開発審議会の総会ですので、その閉会に当たり何かコメントでも感想でもございましたらどうぞ。もしございませんでしたら、本日の会合は以上をもって終わりにいたします。ありがとうございました。
照会先 厚生労働省 職業能力開発局
総務課 政策計画・調整係(内線5959)