中央職業能力開発審議会第183回総会議事録
日時平成12年3月22日(水)10:00〜12:00
場所労働省省議室
議題(1)平成12年度職業能力開発施策の推進について
(2)ものづくり基盤技術基本計画について
(3)その他
配布資料bP 平成12年度職業能力開発行政関係予算の概要
bQ 経済新生対策(抄)
bR 厚生労働省の組織について
4-1 ものづくり基盤技術振興基本法について
4-2 ものづくり基番技術基本計画(案)の概要
4-3 ものづくり基盤技術基本計画(案)
bT 技能検定に係る試験基準の見直し等の状況について
bU 今後の職業能力開発の在り方に関する研究会開催要綱
bV 長期リフレッシュ休暇制度研究会開催要綱
bW 教育訓練給付の指定講座の状況について
出席委員学識経験者今野浩一郎
尾高煌之助
小池 和男
早川宗八郎
労働者代表市川 清美
小栗 啓豊
草野 忠義
鈴木 利文
平山 和雄
堀口 雅行
事業主代表岩口 懸一
尾崎 朋泰(代理)
小嶋 隆善
讃井 暢子
杉山 幸一
山田 恒夫

(会長)
 おはようございます。ただいまから、中央職業能力開発審議会第183回総会を開催します。早速、議題に入りたいと思います。最初の議題は「平成12年度職業能力開発施策の推進について」です。予算に関係することだと思います。事務局からご説明をお願いします。

(事務局)
 12年度の予算についてご説明させていただきます。お手元の資料bP、「職業能力開発行政関係予算の概要」という資料に基づいて説明させていただきます。
 この予算につきましては、ご承知のとおり3月17日に参議院を通り成立しています。この資料の1頁目をお開きください。12年度予算総括表というのがございます。これが能開局の予算の、いわゆる高さの表でして、12年度の予定額のいちばん下の欄をご覧いただきたいと思いますが、1,850億という数字が書いてあります。前年度のいちばん下の数字が当初予算ですが、それとの比較において130億ほどの伸びを示しています。
 なお、その前年度の上のほうに括弧書き、二重括弧書きの数字が書いてありますが、真ん中の括弧書きが11年6月の緊急経済対策という格好で補正予算が組まれています。これは補正予算の第1号ですが、それを入れた数字ということで、このときに約170億ほど能開局関係では補正予算を組んでいます。その上の二重書きのところですが、これが11年11月に経済新生対策ということで補正予算が組まれています。そのときに150億ほどの能開局関係では予算を組んでいまして、それをトータルした最終的な11年度の予算の額が2,000億というふうに、この数字をお読みになっていただきたいと思います。
 緊急経済対策、経済新生対策について、特に経済新生対策については後ほどまたご説明させていただきますが、基本的に11年6月の緊急経済対策においては、中高年の非自発的失業者に焦点を当てた能力開発という格好で、いわゆる訓練枠の拡大を入れ込んでいます。
 11年11月、いわゆる経済新生対策においては中小企業の創業支援ということ。あるいは新しい分野における雇用の開発という面から、お手伝いをする能力開発の関係の訓練の枠というものを入れ込んでいます。11年11月の経済新生対策は、ある意味では本予算の前倒し的なところもあり、ものによっては15カ月予算という格好で本予算に組んでいます。これは後ほど個々の事項についてご説明しますが、そういうような関係があるということをご承知おきいただきたいと思います。
 中身に入りまして2頁のところですが、これは能開局の重点施策の柱立てに関連名を付けたものです。第1から第8までの柱立ての中で予算を構成しています。具体的な中身については3頁以降でご説明します。
 3頁をお開きください。いちばん上の第1の項目として、「現下の雇用情勢に対応した能力開発の推進」というのがあります。11年度予算の当初から12年度予算に対しては、相当大幅な伸びを示していますが、基本的に11年度の二重書きのところで147億という数字があります。先ほど申した、
 ここで補正を大分組み込んでいるというところがあります。これは中身は何かと申しますと、離転職者等に対する職業訓練の枠というのを確保しているということ。一応、補正ですので単年度で終わっていて、ものによってはこれは予算上は出てきていませんが、12年度へ繰越し事業として継続しているものもあります。
 そういう意味で、例えば離転職者に対する訓練枠そのものは、13年度で約13万4,000人ほどの枠を確保しています。これが12年度においては約14万ということで、ここの見せかけの数字は若干落ちていますが、訓練枠そのものは先ほど申した繰越しと新規分の追加という格好で、枠はほぼ同じようなレベルを維持しています。
 ここの特徴としては、1番目に、「新規・成長分野における職業訓練の推進」と書いていますが、基本的には中小企業における新規・成長分野への進出等を、お手伝いするための職業訓練の枠というものを、ここで取り入れています。
 2番目に、「離転職者に対する高度な能力開発の機動的かつ効果的推進」と書いていますが、これは、特にホワイトカラー系を中心とした離転職者に対する高度な訓練というところで、具体的には、機構で運営している大学とか短大等の教育内容を受け入れるような訓練というものを、新たに離転職者に対して行うという格好で予算化をしています。
 主なものを申しますと、5番のところで、中小企業の創業支援等に目を付けた訓練というもので、これは上のほうに、<11'2補正予算140億>と書いていますが、主にこれは先ほど申した新経済対策のところで先取りした残り分を、12年度予算に流しているということで、これは主体的に補正のほうを主にして、12年度のほうは残り分ということで補正で140億、12年度予算で6億という格好で構成していますが、全体で3万人ぐらいの訓練をここでしたいと思っています。
 次は6のところですが、未就職者の関係ではイのところで、学卒未就職者云々というふうに上のほうに書いていますが、これは主として大学、短大等の未就職者に対する職業訓練というのを11年度から行っていますが、現下の情勢を見まして、高卒者の未就職者が大量に出そうだという状況もあり、ロとして、高卒の新規未就職者に対する職業訓練というのを、新たにここで12年度予算として取り入れています。予算規模としては3,000人程度からスタートしようかと思っています。
 第2の項目は、「21世紀人材立国計画」の推進ですが、予算要求の段階で皆さんに一度ご説明したときは、12年度予算のときに予算枠別枠でミレニアム予算というのがあり、そこの枠を使って21世紀の人材立国計画というのを、労働省としては要求していますというご報告をしました。
 結果的には、そのミレニアム予算という格好には至りませんでしたが、ほぼ思っているくらいのお金を頂戴できたというのが、ここで書いてあるものです。12年度予算で56億と書いてありますが、この21世紀関係はやや安定のほうも一部含んでいますので、要求時点では全体を含めて労働省として150億の要求をしました。それに対して約100億弱のすべての予算が付いたというところで、事業計画そのものについては、ほぼ要求どおり認められたという感じになっています。
 それと、なおかつこれについては、先ほど申した11年11月の経済新生対策から出発しています。それは備考欄の1のところの11'2補正のところに数字が計上されていますし、3のところもそうです。そういう格好で補正と本予算と全体像を含めると約90億強のお金で、この21世紀人材立国を進めます。タイム的なスパンで言うと、私ども国のほうには5年くらい、この事業を継続させてほしいという格好で、予算を頂戴しているところです。
 第3の項目の、「労働者の自発的な能力開発の推進」については次の4頁で、新しいものとしては(2)のところに、「能力開発支援センターの設置」というのがあり、5億という数字が書いてあります。従来、訓練ができる施設を機構が建設して民間の方にご使用願うという格好で、地域職業訓練センターというのを、毎年1カ所ないし2カ所設置していましたが、それを少しバージョンアップというか、訓練ができる場所プラス個人については能力開発の情報が提供できるような施設内容、あるいは事業者サイドにとっては、個人情報が入手できるような格好の施設という格好で中身を充実して、名前も新たに能力開発支援センター(仮称)と、変えた格好で作っていこうという最初の試みです。取り敢えず1カ所5億ぐらいの金を予定していて、12年度は取り敢えず1カ所の予算が認められています。
 第4の項目の、「事業主等が行う能力開発の推進」のところで、25億ほどの金が伸びていますが、基本的には1のロのところに、「人材高度化支援事業の推進」というのがあります。これは民間企業が自社の社員の高度化、専門化等の教育訓練をする場合に、助成金という格好でご援助申し上げているものですが、非常にこの活用状況がよいというところで財源的に大幅に増にしたところです。
 第5の項目の、「公共職業訓練の機能の充実」では備考欄の2のところですが、機構のいわゆる短大を大学校化にする最終年度で、13年度開校を目途にしたのが最後の3校になりました。それの施設整備を12年度に行うということで、所要の予算を計上しているのが主な数字の伸びです。
 5頁で備考欄の5のところで、これは障害者の関係ですが、4年ないし5年に1回、障害者の国際大会というのを行っています。12年度についてはチェコのプラハという所で開催されるということもあり、それへの派遣経費を新たに盛り込んでいます。
 第6の項目は、「民間教育訓練機関等を活用した能力開発の推進」ですが、備考欄の4のところに、「民間活力による製造業・建設業を担う人材育成への支援」という格好で非常に金目が伸びていますが、これはご承知のとおり「ものつくり大学」に対する施設建設費の経費です。
 第7、第8等については、通常的な経費の積み上げを淡々と行っていますが、「人づくり」のところで事項的に▲が計上されています。予算編成の大方針として財政構造改革の基本的なところは維持するという格好で、ODAとか補助金の部分については対前年度マイナスという編成方針が貫かれています。それらの影響もありODAに関して、この人づくりのところはほとんどODA経費ですが、1割まではいかないまでも若干のマイナスという査定になっています。
 7頁以降に新たなもの、特に目新しいようなものについてはタイトル表を、付けています。時間の関係でこの辺は省略させていただきますが、後ほどご覧になっていただきたいと思います。取り急ぎですが予算の説明は以上です。

(会長)
 ありがとうございました。

(事務局)
 関連しまして引き続き資料bQ、資料bRについて、ご説明を申し上げます。
 資料bQは、先ほど申し上げましたように、昨年の11月に経済新生対策ということでまとめられたものです。前回の審議会以降にまとめられた経済対策です。これに基づきまして、先ほどお話がありましたように第2次補正予算が組まれたという経過のものです。
 内容的に、これは抜粋でして、1枚めくっていただくと雇用対策の関係が盛り込まれています。そういう中で、これも能力開発行政の関連で申し上げますと、雇用対策の(1)のA新規成長分野関連で、これは人材サービスセンターというふうに書かれていますが、この中に新規成長分野への訓練の機会の確保といったことを、項目として入れています。具体的な中身については、先ほどの資料bPに盛り込まれている中身ですが、そうい ったことが盛り込まれているということです。
 Bのところですが、中小企業の個々具体的な人材ニーズに応じ、その発展を担う人材育成を専修学校などを活用しながら推進するということで、これも引き続き平成12年度の当初予算につなげていくための予算として組まれています。平成11年度の2次補正と平成12年度予算、言わば15カ月予算の中で対策として組まれているということです。
 この頁の下のほうになりますが、「21世紀人材立国計画」の推進ということで、@にありますように、産学官の連携による人材育成のためのツール開発とか、教育訓練の斡旋を行うシステムの先導的な構築、あるいは特別な支援を行うための21世紀人材立国計画を推進するということにしていまして、この関連の予算がまた補正で盛り込まれたということです。
 関連予算については、先ほどご説明しましたように、言わば15カ月予算ということで、平成11年度の第2次補正予算、平成12年度予算をつなぐような形で組み込まれていますので、この程度にさせていただきたいと考えています。若干、事後報告なりましたけれども、こんなことで取り組ませていただいているということです。
 資料bRですが、これは組織関係です。これも予算の項目ということで盛り込まれた内容です。資料bRの1頁は、2001年1月からの厚生労働省の組織です。官房等11の局ということになっていて、職業能力開発局については、右のほうの上から2つ目の局ということで、職業能力開発局(5課)という形で認められているところです。
 また、その局の内部組織については、その次の頁をご覧いただきたいと思いますが、職業能力開発局に総務課、人材開発課、育成支援課、技能振興課、海外協力課の5課という体制で、この2001年以降の厚生労働省の組織の中で、能力開発行政を展開するということになっています。
 ただ、業務的にこれまでと全く同じということではありません。例えば右のほうをご覧いただきますと、勤労青少年室というのが育成支援課に重なっていますが、現在、労政の行政でやっている勤労青少年行政が、この能力開発行政の中に取り込むといったことも出てきます。その他、介護関係であるとか若年者の職業意識啓発の問題といったことも、新しい能力開発局の行政の中で展開していくことに予定しているところです。これも広い意味で予算の一環ということで認められているところですので、こういった組織運営で進めていくということで、ご承知おきいただければと思っています。私からの説明は以上です。

(会長)
 ありがとうございました。ただいまのご説明に対して、どの点でも結構ですから、ご遠慮なくご質問なりコメントなりをどうぞ。

(委員)
 先ほどの予算のご説明の中で、今年度、1次補正、2次補正というご説明があったのですが、項目ごとに違うと思いますので大ざっぱでいいのですから、1次補正の進捗状況と2次補正の進捗状況がわかったら、教えていただきたいのです。

(会長)
 事務局、お願いします。

(事務局)
 先ほど述べたように、タイトル的には事業名が若干変わっていますが、基本的には委託留学の確保というのが1次補正、2次補正とも大きな課題で、そのための予算をいただいています。
 ちなみに、それを含めた訓練の枠の設置状況というのは、どういう数字になっているかを説明させていただくと、例えば直近で言いますと、9年度で離転職者に対する職業訓練の計画枠で、作った枠というのは4万6,000です。10年度から補正等を入れ込みまして枠の拡大を図ってきましたが、それでも10年度はまだ5万4,000という数字でした。11年度については先ほど申した1次補正、2次補正、それから11年度の当初予算と絡めますと、これが13万4,000という枠の拡大を図ってきています。まだ実績ベースでは、まだ実施中ですので数字が上がってきていませんが、基本的にはこのような格好で離転職者の受入れを行ってきたというところです。

(会長)
 いまのでよろしいですか。今の点でも他の点でも、いかがでしょうか。予算をご報告いただくときは、全体を見る、また皆さんのご意見をいただくいいチャンスですから、どうぞ。

(委員)
 もう1点だけ、先ほどのODAの関連予算ですが、これは全体としてカット、減額になっていますね。これは労働省だけでないと思いますが、関連のところからそれに対してのクレームとか、そういうのは出ていませんか。

(事務局)
 正直言ってあります。ただ、中身の事業を少し見直していただいて、できるだけ与えられた金額でやっていただきたい、というお願いはしています。

(会長)
 もしよかったら、例えばどんなクレームですか。

(事務局)
 やはり、この中については委託費とか補助金で事業構成させていますので、やはりそこの事業規模が若干落ちると、それについて全体的な計画枠を縮小しないといけないとか、何かという話が出てくるのですが、なかなかそちらのほうについては、必要なものはちゃんとやってくれというお願いをしますので、相矛盾するお願いをまたしなければいけないということもあります。

(委員)
 資料bWに「教育訓練給付の支給状況」というのがありまして、これはまた別途ご説明があるのかもしれませんが、この予算との関係で、どのように付き合わせてみることができるかというのを、ちょっと教えていただきたいのです。もちろん、この支給状況は必ずしも11年度すべての実績ということではないと思いますけれども。

(事務局)
 教育訓練給付につきましては、雇用保険法の本体給付のほうで予算化されていますので、その額については安定局のほうで計上されています。したがって、ただいまご説明したものの中には別枠になっています。支給状況についてはまた後ほどご説明したいと思います。

(委員)
 こちらのほうに環境整備とか、そういうものが入っているということですか。

(事務局)
 そうです。

(委員)
 能開の予算のほうにはということ。

(事務局)
 具体的な支給は職業安定局のほうですが、講座の指定事務とか、それに係わる業務をやっていますので、それに関係する情報提供等はこの予算の中に入っています。

(委員)
 5頁の第6、民間教育訓練機関等を活用した能力開発の推進の中の「ものつくり大学」の予算の件ですが、先ほどのお話で施設建設費というお話がございました。現在、いくつぐらいの学校をやっているか。それから今後、どういう予定があるのか、その辺をお聞かせいただければと思います。

(事務局)
 いま、お話のございました「ものつくり大学」につきましては行田市に1つ作る予定です。

(委員)
 去年12月に起工式がありましたね。

(事務局)
 はい。行田市に作ることになっていまして、私どもも必要な援助をしているという状況です。今後の話ですが、まず1つ作って、いままでの大学の工学部系の中で問題点がある中で、それを克服した形でどんな事ができるかという、ある意味では初めての取組みを行うわけですので、そこでしっかりしたカリキュラムを作って、しっかりとした先生方を集めて、学生も、ものづくりに意欲を持つ学生が集められる形になって、大学として非常にうまくいく形にしたいと思っています。したがって、この大学を私どもは1つしっかりとウォッチしていきたいし、また、そのための援助を現在やっているという状況です。ちなみに開学は来年の4月を目指しています。

(委員)
 労災保険の特別会計という項目を見ますと、全体の伸びが105.4%ということで、雇用勘定も同じような比率なのですが、特に労災勘定が他の伸びに比べると極端に多く16%ぐらいの伸びの比率になっていますけれども、何かこれは背景があるのでしょうか。やはり危険な世の中になってきているということなのかどうか、その辺も含めてお願いします。

(事務局)
 実はこの予算構成上におきまして、いま私どもは全国に国立・県営という格好で障害者校を11校持っています。これがハード部分についての予算的な援助は労災で、いまお願いしているところがございます。そういう中において、ただいま広島の障害者校について、いま全面的な建替えを行っています。4年計画で行っていまして、その年次計画ごとに数字が若干動いているところがあります。たぶん12年度あたりがいちばんピーク時になると思います。12年度は4年計画の3年目くらいかと思います。そういう状況になっています。

(委員)
 学校の建設費みたいなものですか。

(事務局)
 そうです。

(会長)
 ご意見がございますか。今日はもう1つの、ものづくりの点についてご議論、ご意見をいただきたいと思いますので、そのほうに移ってよろしいですか。この予算はまた後ほど時間がありましたら、ご意見をいただくということにしてよろしいですか。それでは第2の議題で、「ものづくり基盤技術基本計画について」というのが議題になっています。まず事務局から説明をお願いします。

(事務局)
 私のほうから、ものづくり基盤技術基本計画について、ご説明を申し上げたいと思います。資料bS−1、4−2、4−3ということで、3種類の資料を用意していますので、これについてご説明します。
 まず計画を作る背景ですが、以前、この審議会においても一度ご説明したかと思いますが、資料bS−1にありますように、ものづくり基盤技術振興基本法というのが、昨年、成立した経緯があります。これは、この「経緯」のところにありますように、ゼンキン連合(現JAM)からの提言を契機として、参議院の超党派の検討会での検討を経て、議員立法ということで昨年の通常国会に提出され、昨年の3月に成立、そして6月に施行といった経過があります。
 ものづくり基盤技術振興基本法の中身ですが、次の頁をご覧ください。趣旨としては、我が国の基幹的な産業である製造業を支えてきたものづくり基盤技術の衰退が懸念されるとともに、その伝承が非常に難しくなってきているということで、関連する施策を総合的、計画的に進めるための法律を制定するという考え方です。
 こういう考え方に則って、法律案の概要の2番目にありますように、政府がこのものづくり基盤技術振興基本計画を策定することになっています。また3番目にありますように、ものづくり基盤技術の研究開発とか、あるいは雇用安定、能力開発、福祉の増進といった項目などについて、国として施策を推進するということが定められているところです。
 前の1頁目に戻って、「ものづくり基盤技術基本計画」ですが、「政府が策定すること」ということになっていて、これについて実は関連しますのが、他の趣旨もありますけれども主たる省庁として、いちばん下の2行にありますように文部省、通産省、労働省を中心として、この策定作業を進めることとしています。
 具体的な計画としては、昨年6月に施行されていますが、その1年以内、つまり今年の6月までにこの計画を策定し、国会に報告を行うことにしているところです。その言わば政府の第1次原案という形で、現時点でまとめた中身についてご意見をいただきたいということで、お願いしたいと考えています。
 なお、最初に今後の予定だけ申し上げますと、この審議会で本日、ご意見を伺った後、3省共同で、実はこのものづくり基本計画に関連する有識者の懇談会というものを設けることにしまして、これが来週29日の日にご意見を伺うことにしています。それから、これについてパブリックコメントをいたしまして、広く国民の皆さん方からの意見聴取をすることにしています。
 また現在、総理主導によりまして、ものづくり懇談会という会合がもたれていまして、これがおそらく、そう遠くない時期に提言等がまとめられるのではないかと思いますので、そういった意見も踏まえて、最終的には計画として改めて整理をした上で、もう一度この審議会にもお諮りをしたいと考えているところです。
 計画の中身ですが、本文は資料bS−3ですが、その概要ということで資料bS−2を中心にご説明します。まずこの構成から申し上げますと、第1章ということで総論的な部分があります。第2章以下が各省の関連施策について触れています。第2章は主として通産省の施策ですが、大学との連携ということで文部省あるいは労働省との連携施策も含まれています。
 第3章が主として労働省の施策です。その中には雇用安定施策ということで、職業安定局の施策が上の柱になっています。職業能力開発局の施策については、その下にある職業能力の開発及び向上、能力の適正な評価等が、能力開発局の手掌分野、つまりこの審議会としての主たる手掌分野になろうかと思いますので、これを中心に本日、ご議論いただければと考えているところです。
 第4章は、やはり通産省の施策ということです。第5章については、学習の振興ということで文部省関連施策が盛り込まれています。その他ということで、これは各省共通するところがあり、開発途上地域に対する人材育成の支援などについては、当然、労働省の施策も含まれているという構成になっているところです。
 第1章のものづくりを巡る現状ですが、ものづくり基盤技術については、製造業を支えるということで、国民経済発展への寄与が非常に大きい。あるいは国民生活の向上に大きく貢献しているということが言えるわけですが、経済の諸状況が大きく変化しています。例えば就業の側面で見ますと、若者を中心としたものづくり離れということが言われていますし、熟練技能者の高齢化といった問題があります。また海外への工業化の進展、これは逆に言いますと、地域においては産業集積の空洞化といった懸念もあるという状況です。
 そういう中で、国内の総生産に占める製造業の割合が低下している。また、ものづくり基盤技術の継承が非常に難しくなってきているという状況を踏まえて、このものづくり基盤技術振興基本法に基づく計画ということで、必要な事項を定めるという趣旨です。
 その狙いとして、いちばん下にありますように、ものづくり基盤技術に関する能力を尊重する気運の醸成、基盤技術の積極的な振興、この振興にかかる施策の総合的、計画的な推進といったことを中心として施策を展開するというのが、総論的な部分です。これは資料bS−3で言うと1頁から2頁に関連するところです。
 第2章が、「ものづくり基盤技術の研究開発」などです。基盤技術の研究開発の推進ということで、国の研究開発制度における中小企業への支出機会の増大とか、展示会等における研究開発成果の普及の推進、ものづくり技能のマニュアル化と言いますか、客観化といった施策を推進していく。ものづくりを行う事業者サイドと大学との連携ということで、国立大学などに設置している共同研究センターでの共同研究などの活発化とか、あるいは産学の連携によるインターシップ制度の導入の促進を図っていくということです。
 第3章が、「ものづくり労働者の確保等」ということで、先ほど申し上げたように労働省施策が主として盛り込まれている事項です。第1節が、「失業の予防その他雇用の安定」ということで、これは法律の表現に合わせた中身ですが、内容としては雇用機会の創出に対する支援とか、失業なき労働移動の支援、あるいは景気循環に対応した雇用の維持・安定対策の推進、労働力需給調整機能の強化といった事柄と同時に、特に技能関連ということで、技能を活用した地域における雇用開発の推進とか、あるいは特に若者のものづくり離れといったことも考慮して、若年者に対する職業意識の啓発といった取組みを行うことにしているところです。
 第2節は、「職業能力の開発及び向上」ということで、これは資料bS−3の7頁になっていますので合わせてご覧ください。この具体的な施策として、先ほど予算の中でも説明しました21世紀人材立国計画の推進といった施策を今後、重点的に取り組むということで、産学官の連携によって人材育成の推進を図っていくことにしています。これからの経済社会において必要とする人材の効果的な育成を図るための、地域における産学官の連携のシステムの構築、教育訓練機会の開発・整備といった取組みを行うということです。
 2が、公共職業訓練等の推進による能力開発の推進ということで、個々の労働者がその有する能力を最大限に発揮できるようにするための職業訓練を、公共職業能力開発施設で推進するほか、3が、事業主に能力開発の取組みについて必要な助成等の支援を行っていくということです。4が、ものづくり労働者を含めて、労働者の自発的な能力開発の推進ということが重要ですので、教育訓練給付制度を効果的に活用することにより、労働者の自発的な能力開発の向上に対する取組みを促進していく。そのための環境整備を図っていこうということです。5が、先ほども話題になりましたけれども、ものつくり大学の設立に対する取組みに対して支援をしていくということです。
 第3節は、「能力の適正な評価あるいは職場環境の整備」ということです。その1つの大きな柱が職業能力評価制度の整備です。ものづくり労働者の能力の開発・向上を図る観点からも、職業能力が適正に評価される仕組みというのは非常に重要であろうと考えています。そのために技能検定制度の適正な運営のほか、民間の職業能力検定について必要な認定制度を整備するなどの支援を行うということで、これから取組みを進めていきたいと考えています。
 資料bS−3の8頁になりますが、技能尊重のための気運の醸成ということで、ものづくり基盤産業の発展を担う技能が維持・継承されるために、それが尊重されるような社会の形成が非常に重要になってきます。そういったことから卓越技能者の表彰、あるいは技能五輪、技能グランプリなどの技能競技大会の開催などによって、その技能尊重気運の醸成の推進を図っていきたいと考えています。また教育現場などにおいて、ものづくりの素晴らしさ、楽しさといったものを認識してもらうために、施策の推進を図っていきたいと考えているところです。
 熟練ものづくり労働者の活用ということで、高度な熟練技能の中身とか、あるいは高度熟練技能者が、技能修得のプロセスについて情報を集めたり提供したり、あるいはこういう高度熟練技能者による実技指導などによる、活用を図っていく施策を展開していきたいと考えているところです。こういう、ものづくり労働者の適正な就業を図っていくためには、その職場環境の改善といった取組みが必要ですので、職場の快適化、あるいは福利厚生などの取組みも当然、図っていくということを盛り込んでいるということです。
 第4章ですが、「ものづくり基盤産業の育成」ということです。これについては産業集積の推進ということで、ものづくり事業者の技術の高度化、新分野への進出後の支援を図っていく。あるいは新規創業に対する支援を図っていく。中小企業については、地域における試験研究機関などとの連携の体制を図っていく。あるいは中小企業の生産性向上などの経営革新の支援を図っていくという取組みを、この計画の中に盛り込んでいます。
 第5章が「学習の振興」で、大きく3段階に分かれています。1つは学校教育の中の小・中・高で、ものづくりに関する体験的な学習などの充実を図っていく。高校では工業教育などの専門教育の充実を図っていく。大学とか工専については、ものづくりを中心に据えた実戦的な教育の充実を図る。あるいは社会人に対するリフレッシュ教育、技術者教育の外部認定制度の導入といったことを図っていくということです。
 また生涯学習機会の拡充ということで、専修学校などを使ったものづくり教育とか、あるいは公民館などの社会教育施設における関連事業の展開に取り組んでいくことを、計画の中に盛り込んでいます。
 第6章が、「その他」です。第6章については特に能力開発行政に関連するものとして、資料bS−3の14頁ですが、ものづくり基盤技術を支える人材の育成の支援ということで、開発途上地域における政府間の技術協力、あるいは国際機関などを通じての協力を図っていく。こういったことで、ものづくり分野についての国際協力を支援していくということを、この計画の中に盛り込んでいます。また、ものづくり関連施策について、広く関係者の意見を国の施策に反映させるということを、項目の中に入れているという内容です。
 計画としては以上ですが、先ほどもちょっと申し上げましたように、労働省の施策を主として第3章にまとめています。特に能力開発局の関係では、この中の職業能力の開発向上、能力の適正な評価、国際協力といったことを中心として盛り込ませていただいているところですので、これらを中心にご議論いただければ大変ありがたいと考えています。よろしくお願いします。
(会長)

 ありがとうございました。ただいまのご説明について、どうぞ。これは他の省はもちろんそうですが、ここの省ではこれが審議会にかかるのは、たぶんここだけらしいので、もちろん再度かかりますから、その時におっしゃっていただくことは十分できますけれども、できるならば、むしろまだ熱いうちにいろいろご意見をいただいたほうがいいように思います。どの点でもコメントなりご意見なりをどうぞ。

(委員)
 11頁のほうに、「工業高校における専門教育の充実」と書いてあるのですが、ものづくりの基盤をやっていくのは、ものつくり大学構想がありますが、大学に来てからでは遅いのではないか。もう少し若い時からということになると、当然、工業高校との関係が出てくるのですが、充実ということですから当然ですけれども、拡充ということで、これを広げていくという発想はないのですか。普通高校を減らして、いわゆる実業高校を増やしていくというところまでは、比率は広がらないのでしょうかね。

(事務局)
 そこまで具体的な内容として、検討されているかどうかというのは、私ども承知はしていません。ただ、ここで考えられているのは主として専門教育の中身の充実ということで、いま言われたように量的な拡大といったことまで想定はしていないと、私どもとしては受け止めているところです。

(委員)
 それで十分ですか。労働省の立場では、それでいいということなのか、やはり広げていきたいんだというスタンスなのか、ポリシーはどちらなのですか。

(事務局)
 社会においてどれだけ必要かという前提の中で、高校の枠組みなんかも決まってくるんだろうと思います。これから少子化が進むという中で、一概に普通高校を大幅削減して工業高校だけを広げるということには、なっていかないだろうと思います。その全体のバランスの中で考えていく必要があるのだろうと思います。

(委員)
 労働省だけでは難しいと思いますが、せっかく文部省、通産省も合わせた非常に大きな教育の根っこの議論だと思うのです。やはりそういう点で、いまの体制を前提とした議論ではなくて、根っこから是非議論していただきたい。ものづくりを本当にきちっと考えていくのであれば、小学校、中学校、高校、大学のあり方も含めてどうするかという議論がまずあって、そして中身をどうするかというふうにしていかないと、結局、いまある枠の中での話だけでは、限界があるのではないかという思いがあるものですから、せっかくいい機会なので敢えて、いますぐというわけにいかないと思いますが、5年後、10年後を見定めた議論をお願いしたいなと思います。ですから、当面は充実でいいのですが、将来は是非拡充という格好でやれるように、ご努力いただけないかなという感じです。

(事務局)
 この点については、もう一度関係省ともよく協議させていただきたいと思います。

(委員)
 いまのと関連するのですが、技術者資格については今後、技術者教育と技術者資格と、これは文部省とか通産省が絡んでやって、それでもって教育までアクレディテーションしようということが出ているわけですが、例えば技能者に対してはどういうふうに考えたらいいかということです。
 これは、技術者資格に関しては国際的な視野で統一していこうということで、ワシントンがこうだとか、ISOなんかがやろうとしているわけですが、技能者教育と技術者教育というのは、やはり両面があるのだろうと思います。それから技能者そのものの資格というのがあるわけですが、これに対してグローバルな目でどういうふうになっていくかということに対して、労働省としてはどういうふうに考えられて、どういうふうな進め方をなさろうとしているのかについて、もしご意見があれば伺いたいと思います。

(会長)
 いかがですか。もしご意見があればということです。

(事務局)
 技術者教育の外部認定制度の導入というのは、いま進められているということで承知をしていますが、技能者の分野についてどうするかは、まだ明確な方向付けを特にしているわけではありませんので、これからの検討課題ということにさせていただきたいと思います。

(委員)
 マイスターが少し国境の枠を越して、制度の変更をしようという話も聞いていますし、特に技能者と技術者との関係、それから技能者の資格、ここにも能力資格をどうするかというので、評価をすべきだというのはもっともなことなので、当然しなくてはならない。ただ、それがなるべくグローバルな流れと言いますか、それとマッチしていくようなことを私たちとしては望みたいわけですので、ひとつよろしく今後、取り組んでいただければと思いますので、お願いします。

(委員)
 昨年、このものづくりの基本計画、基本法律ができたということで、では具体的にどうするのかという部分で興味深く見ていたので、今回、この実施計画を読まさせていただきまして、やはり予算のところでもご報告がありましたように、労働省としては21世紀人材立国計画と、かなりペアを組みながら念を起こしていかなければいけないのではないかという部分で、やはりいまの日本の場合ですと後継者不足とか、あるいは若者の技術離れというのはかなりありますので、いま先生から言われた部分での評価をして認定されるという部分の動きも、小さいときからそういう環境づくりということもあると思います。
 2点ほどお願いしたいのですが、7頁の職業能力評価の点と公共訓練の推進ということで、お話をさせていただきたいと思います。1つは職業能力評価という部分で、どう評価して、どう認定して、どう処遇するかという部分が、各産業界あるいは業種によって、なかなか確立されていないという部分があると思います。
 電機労連あたりですと、電機労連あたりである程度認定して、電機労連の中である程度職業を持った部分は横断的に移動できると、その評価をしているという話はあるのですが、是非、この評価も技能検定制度部分を否定するわけではないですが、技能検定制度を、もう少しうまくマッチして幅広く認定するような活用をしながら、技能検定だけでなく、何ができて何ができないのか、何かできたらどうするのかという部分まで、是非、このものづくりに関する部分だけでなく、すべての職業能力評価を労働省が司るような方向で、いけないものかなと思います。それが確立してこそ初めて技術、技能を国民が認知して、それにいこうという部分になるのではないかと思っています。
 2つ目は公共訓練の推進ですが、ここで公共という訓練を一括りしているのが、もうそろそろ国の役目の公共と、都道府県の役目の公共という部分を、区別したほうがいいのではないかと思うのです。先ほどの予算の中で、公共の訓練の高度化という部分で短大の大学校化も出ていますが、それは都道府県というより、どちらかというと国の部分でどうリードしていくかというところが多いと思いますので、是非、公共でも国の役割としては高度化あるいは新分野、高付加価値化をどう先鞭性をって研究開発していくかという部分です。あるいは、都道府県レベルですと実際にそれを実践して、どうするのかというところまで分けていったらいかがかなと、この部分を読んで思いましたが、いかがでしょうか。以上、2点、質問させていただきたいと思います。

(会長)
 いかがですか。

(事務局)
 1点目の職業評価制度ですが、特に技能検定の運営ということも重要ですが、これから将来を考えて、ここにもありますように、民間の職業能力検定制度を活用した施策というものを、是非実施していきたい。そういう意味での新たな制度の整備に向けた検討を進めていきたいと考えているところです。その際にはどういう中身になるか、また時期がまいりましたら十分この審議会でもご議論いただきたいと思いますが、できるだけ幅広く活用されるような仕組みにしていきたいと、我々としてもそういう気持でいるということです。
 公共職業訓練の問題ですが、確かに国と都道府県の役割というものは違ってくるのだろうと思います。ですから公共の役割と民間の役割というのが1つある。そういう意味での公共職業訓練というのは、やはり1つの括りとしてならざるを得ないだろうと思います。その中で国と都道府県の役割を毎回、毎回分けて書くのかどうかという問題はあると思っています。ですから、民間と公共の役割ということで整理するというのも、1つの整理の仕方かなと思っています。厳密に、だから国と都道府県に完全に分け切って記述するということまではどうかなという印象は、私どもとしては持っています。

(委員)
 補足答弁と言うとおかしいですが、ただいまの質問の中で電機連合の話が出まして、職業能力評価制度を実施しているような雰囲気でご報告があったのですが、将来、そういうふうにしなければいけないし、そういうふうにしたいなという思いを言っているだけでして。誤解があると困りますので、できれば同じ産業の中で労働組合が仲介をしながら、企業の枠を越えて移動ができれば雇用のミスマッチはないのではないか、という思いでの問題提起だけでして、まだそこまでいっていませんので、誤解のないようによろしくお願いします。

(会長)
 進行係が言っていいでしょうか。評価と、それから国と地方ですか。まず簡単な国と地方のことですが、私はこの委員が長いものですから実はある時期、何年前か忘れましたが、もう十数年前ですけれども、ほとんど基準を事実上フリーにしたのです。都道府県からのアイデアを待ったのですが、いまのところあまり来ませんでした。ですから、むしろ制度としてはA基準、B基準で、ほとんど事実上、つまり昔は一定の規格に対して一定のパーセンテージの国の金を配分するという格好が、そうではなくなったのです。それはできるわけですから、むしろ都道府県がいま、何をどれだけしているかは、想像以上にやっているのではないかと思います。そういう情報をまず集めることが大事かもしれないという気がします。制度としてはかなりやったつもりなのです。
 大事なのが評価で、評価についての私の意見はたくさんあって、まずグローバル化については国際競争がこれから始まる。そこでいま私の知る限り2つの方向があって、1つは割と研修なり、昔のドイツのマイスター制度みたいに、トレーニングをするとちゃんとライセンスが出るという方向です。
 これは、ロンドン大学にマースデンという人がいます。イギリスのプロフェッサーは日本と違って終身学科長ですから、そのマースデンが分けて、1つのタイプとしてドイツのタイプを非常に強調しています。マースデンというのはいろいろな国際機関に顔を出していて、非常に人柄のいい重要な人ですので、そういう意味で1つの有力な方向になると思います。
 マイスターというのは、一定のいろいろトレーニングをします。後で日本の企業所内教育と同じように、ものすごいトレーニングを企業内でするのですが、そういうのがあると面倒な問題をちゃんとイニシアチブを取ってやっていく。かなり技術の枠、仕事内にも手を出すというタイプがあって、それはマースデンによればドイツ、アメリカ、フランスとは全然違うというタイプを言っているわけです。
 対抗するのが日本で、日本のほうはブルーカラーに割と面倒なことまでしてもらう。そういう意味ではドイツと変わらないのですが、しかしマイスター制度みたいなことはやらない。そうすると日本のマイスター制度とどこが違うかというと、私は日本のほうがずっと優れていると思います。
 なぜかというと、より長期にわたって技能が上がった人にご褒美を出せるのです。ドイツはレベルは高いけれども、要するに大工さんのような払い方です。あと職位としてのマイスターになるとポンと上がりますけれども、いわゆるマイスターの称号でなくて、職位としてのマイスターというのは日本の企業内の組長、職長です。そこに関してはずっと横ばいなのです。ですから、それよりはむしろいいかもしれないのです。とにかくグローバル化と言ったときに、日本のやり方を念頭に置きますと、割と実務経験を評価する。それが1つの潮流になっています。繰り返しますが、すべての潮流でなくてこれから争いが始まるという感じがします。
 幸いにしてILOの、そういう職業訓練を担当している人が、オブタに毎年来ていろいろお話をしている。ILO全体の方針ではありませんが、それを推進している一部の人の方針は、Work place based skill.なのです。つまり日本語に翻訳すれば、まさに実務経験を評価する。研修も大事だけど研修の免状だけでは無理だよということ。そのために日本から学ぼうというのですが、日本はさっぱりやってないということです。
 それとリコグニッションですが、リコグニッションがまさに資格と言ってもいいかもしれません。会社が資格をするのか国か社会か、それはいろいろありますけれども、そういう2つの潮流があると思います。そのどっちが勝つかわかりませんけれども、私はドイツでも日本でもいちばん重要な生産性に影響を与えるのは、決まり切った仕事を上手にこなすことではないと思う。それだったら日本の高賃金では日本は食っていけない。そうではなくて、予期しない問題が起こったり、あるいは予期はしても、たくさん起こる変化を上手にこなすかどうかで勝負だと思います。
 それは簡単に間に合わないからできない。間に合ってできたレベルではタイに勝てない。中国にも勝てない。それで勝っていくためにはそこをこなす。そうすると、それは社会的に通用するような資格に簡単にはなりにくい面がある。
 それを十分に承知した上でやっていくために、私の具体的な提案は2つあって、1つは、グローバル化が重要なことだということを、他の国に猛烈に強く言う義務があるように思います。もう1つは、国内で割とそういう実務経験による評価をしている良いケースを、霞ヶ関としては情報として流していくことかもしれないという感じがするのです。
 長く言ってすみません。いままでいろいろ評価のことが出たものですから、ついつい申し上げました。ですから電機連合が一生懸命お作りになろうとしても、おそらく中のミドルのレベルまではできると思うのですが、それから上はなかなか難しいかもしれないというのが私の予測です。

(委員)
 関連して、ものづくり教育ということを行政がやっていらっしゃる場合に、基本的にどういうふうに考えたらいいかということを質問したいのですが、ものづくりと言うとき、ものづくりの定義はどうなのですか。労働者と言うときの労働者はどのくらい厳密に考えていらっしゃるのかということを、ちょっと伺いたい。
 というのは、ものと言っても最近は情報化が進んで、かなり裾野が広がっているので、サービス的な例えばコンピューター関連のものとか、そういうものも含んでいいのかどうか。それから製造業が考えられていますけど、いま、会長も大工ということを言われましたが、建設もものづくりだと思うのですが建設業は含まれないのですね。この点は国としては、それでいいのかどうかということ。
 最後にもう1つ、ものづくりで、例えば大学を作るとか学校教育を充実していくといったときに、その対象は外国人でもいいのですか。

(会長)
 いまの2点について、どうですか。

(事務局)
 ものづくり労働者というか、この法律の中での労働者の定義からご説明したいと思います。この法律自体はものづくり基盤産業、あるいはものづくり基盤技術ということは直接は定義していませんが、去年の夏に施行された政令で、この法律で言うものづくり基盤技術とは何か。あるいは、ものづくり基盤産業とは何かということを定義しています。
 ものづくり基盤産業は、基本的に製造業プラスアルファという形になっていまして、ご指摘の建設業は、この法律の趣旨自体が、製造業の基盤が危ういということでできた法律ですので、建設業は入っていません。製造業にプラスアルファ、例えば自動車整備であるとかソフトウェアとか、そのあたりがプラスアルファ的に入っていて、基本的には製造業が中心です。
 労働者の範囲は、いま申し上げたものづくり基盤産業に従事している労働者のうち、事務などをやっている方を除く。すなわちものづくり基盤技術に従事している方ということだけになります。この法律で考えられているものづくり基盤産業に従事する方が、全体で大体900万人強です。そのうち、ものづくり基盤技術に従事していると想定される方は、直接の統計はありませんけれども、大体その900万人のうちの約3分の2ぐらいではないかと考えています。

(委員)
 その辺は、例えばテクニシャンと呼ばれるような人も入っていいのですね。あまり狭くしないほうがいいのではないかと思うわけです。

(事務局)
 ものづくり基盤技術のご説明で、範囲がものすごく広いわけです。設計とか何とか入っている。

(事務局)
 先ほど申し上げましたように、26の技術というのが政令でも指定されていまして、設計とか研摩とかいろいろございます。お手元にお配りしてなくて恐縮です。

(事務局)
 常識的なことでお話申し上げますが、まずものづくり産業ということで業種別の状況を政令ではっきりさせると。その上でものづくり基盤技術、技術とは一体何だというときに、直接、製造の技術だけではなく製造関連と言いますか、バックアップ部分が入ってきます。ものづくり労働者自体も確か微妙に分かれていて、従事する人がたくさんいる中で、確保の関係で直接言っているのは高度研究者が入ってない。直接的には、その中で先端部分の研究開発そのものをやる人は入れないけれども、ものづくり基盤技術に係わる業務に従事する労働者というのを、ものづくり労働者と。この法律ではちょっと特殊に、ものづくり基盤技術自体が衰えないようにしつつ、これを伸ばしつつ、それに関連する産業ということで、結果として製造業はほとんどなっていますが、現実に設計とかデザイナーとか、そういうことばっかりやる部分もあるかもしれませんし、それをふくらませていこうと、そういう発想で全体ができていますので、言葉の上のものづくり労働者というイメージよりは、かなり広い感じです。

(会長)
 いま委員が言われたのは、テクニシャンというところまで入れたほうがいいということですね。

(委員)
 ではないですか。あと外国人も対象にしたほうがいいのではないかと思うのですが、どうですか。

(事務局)
 まず外国人の話について、特に排除とかいうことにはなっておらないと思います。いまの法律の体系としてはですね。ですから、その中でどの範囲が具体的に入るかということは別にして、日本でそういう仕事に従事される方が外国人でおられれば、それは当然対象になってくるだろうと思います。
 先ほどお話がありましたように、ものづくり労働者の約600万ということで話した中では、技術者等も入れた形で一応、私ども推計しているということで、例えばものづくり基盤産業の中で事務関係の人たちは当然、入ってきませんけれども、それ以外の方々については広く入ってくるという想定で考えているところです。

(会長)
 私がまた発言して恐縮ですが、委員が言われたのは非常に大事で、むしろそこの点は、日本のほうは、普通の生産職場のメンバーとテクニシャンが分かれてないというか、それも含んでいるというふうに考えたほうがつかまえやすい。むしろその良さを伸ばしていくという、そういう意味もありますか。私もそういうふうに非常に強く思うのです。
 つまり、たぶん他の国であればエンジニアがやるべき部面を普通の生産職場の方が、全員ではないけれども、その中のかなりの方が割と問題処理に取り組まれる。それがかなり大きな競争力の源になっているのではないかという気がします。そういう意味で案外大事な点かもしれません。日本にテクニシャンという言葉は、あまりないのではないでしょうか。私が駆け出しのころまでは現場にいたのです。大卒の技術者と工業高校卒の技術員と義務教育と、それが何十年も前からなくなりました。
 いまの点でよろしいですか。今日はなるべく、どんどんご意見をおっしゃっていただいたほうが、たぶん事務局としても助かると思います。取り入れられるかどうかは別として、さっきのたくさんのステップがあります。

(委員)
 技能の伝承と言いますか、ものづくり労働者を育てることと、それに正しい評価を与えることは大変重要だと思います。昨年度のこの審議会の視察で行かせていただいた富山の北陸エネルギー技術工学院ですか、何か認定の学校だそうですけど、そちらで伺ったお話の中で、現場の高度技術を持っている方を先生にして、いろいろ指導していると。それぞれの会社では後輩になかなか教えたがらないようで、技術についてもその学校で先生として教えるときには喜々として、講師として教えている姿が見られるというお話を聞いて、非常に感銘を受けたのです。
 資格とか、そういう評価というのも非常に重要だと思いますが、教えることというか、そういう場をきちんと設けることというのも、非常に評価というか世間からの認知ということで、意味を持つことかなというふうに思いましたので、そのような視点も入れていただけると大変ありがたいなと思います。
 もう1点は、第6章に、開発途上地域に対する人材育成の支援というのがありますが、先ほど予算のときに3人からご質問があって、ODAがどんどん減っているというご指摘がありました。財政再建のためには、いろいろ手段を講じなければいけないということはわかりますが、ODA全体の中で箱物を作ることはあまり重点を置かずに、人材育成とかそちらのソフトの部分に重点を置こうという話は、ずいぶん以前からも出ていることで、全体枠の縮小ということはあるでしょうけれども、やはり日本として開発途上国における人材育成にどれだけ貢献できるかは、大きな視点から言って重要なことだと思います。こういうところに重点的に予算が付けられるような形で、労働省のほうでもいろいろご尽力いただけるといいのではないかと思います。

(事務局)
 第1点ですが、熟練ものづくり労働者の活用ということで8頁に出させていただいています。その中で表現等についてはまた考えさせていただきたいと思いますが、この実技指導を通じて、高度熟練技能者の活用といったことを入れていますので、できるだけそういうふうな方向になるように、また検討させていただきたいと思います。
 もう1点について、予算については政府全体としての制約がありますので、その中での対応とならざるを得ないと考えていますが、その中でできるだけ努力をさせていただきたいと思います。

(事務局)
 委員から、学校のものづくり教育をもっと拡充すべきではないかというお話がありました。あと、いまの委員のお話とも関連するのですが、学校の問題につきましては、11頁の初等中等教育におけるものづくり教育の充実という中で、小・中・高の教育の中で学校と地域や産業界との連携を図り、地域の熟練ものづくり労働者などの教育力を積極的に活用するとともにという形で、要するに学校自体も技能を持った方々を学校の中に入れ込んで、彼らが実際に教えていくというシステムを作ることを考えています。
 この背景には、いま労働省と文部省で研究会を作っていまして、いま委員が言われたように、地域の技能者の中には、何とか自分の技能を教えて自分の評価も高めたいし、また自分の持っている技能を少しでもみんなに見てもらって、技能の素晴らしさを知ってほしいという方がたくさんいらっしゃるわけです。
 学校のほうはむしろ、ものづくり教育はしたいと思っているのですが、どうやっていいか分からない。例えば先生方でも家庭科の先生では限界があるわけで、そういう中で立派な技能を持った地域の方が来てくれれば、それはありがたいということで始まった研究会です。それがもうそろそろ最終段階に入っていて、次の時にはご紹介できると思っていますが、そういう形で議論はしています。
 これが実現しますと、私どものほうは技能労働者のリストはたくさんありますから、それを学校のほうに提供し、学校のほうは総合的学習時間というように、かなり自由な時間の中で授業が学校単位でこれからできますので、そういう中でものづくり教育を行って、技能者を受け入れるという形で進めていくというふうになると思います。
 そういう意味で、学校教育の拡充と言われましたが、充実の意味でもかなりそういう形で、いままでとは違った中身の議論が進んでいます。また小中でそういう教育が進んでいけば、自ずからいまの偏差値の輪切り教育の中で、工業高校に進学する状況になっているものが、俺はものづくりが好きなんだから工業高校へ行くんだという、そういう職業選択もしくは学校選択にも係わってくるような、問題状況になるのではないかと期待していますので、この点については、そういうことで私どもも重要な問題と考えていることをご理解いただきたいと思います。

(委員)
 簡単な質問なのですが、前から能開局で力を入れていらっしゃる職業体験プラザとの関係は、どうなりますか。

(事務局)
 勤労体験プラザですね。勤労体験プラザのもともとのコンセプトは、最近の若い人たちがなかなか実際の職業と接する機会がなさ過ぎるので、よく出てくる話としては、例えば中学校、高校、大学を卒業した人の3年後の離職率が6割、5割、4割と非常に高い問題の中で少しでも職業というものを、学校時代から知ってもらおうというコンセプトで職業を幅広く紹介し、自分でもできるだけ体験をしてもらうというコンセプトでできた施設です。これに途中から私ども能開局も企画に関与することになりました。
 その理由は、ものづくりの問題、技能の問題が結構大きくなる中で、そういう技能とかものづくりの能力、もしくはそういう仕事というものも、幅広い職業の1つであるけれども、1つの重要な部分として若い人たちにそれを紹介し、その素晴らしさを理解してもらおう。またそれを体験してもらうというコンセプトを、勤労体験プラザに入れてということでやりました。したがって全部が全部技能ではありませんが、かなりの部分で技能の面白さがわかるようなコンセプトにもしたい、というふうに考えています。

(委員)
 委員の意見に賛成なのですが、体験プラザにしても、ものづくりの技能者たちが学校で教えるにしても一過性だろうと思うのです。基本的には事務局がいま言われたように、最終的には進路指導のときに成績順で高校を決めていくのではなくて、自分の希望を持っている方々を、その進路に合った学校に進めていかないと、いくら体験学習させても、そこでまた成績順で送ってしまうと、それでもって切れてしまうと思います。
 たぶん小学校のときには、みんな何かになりたいという夢を持っていると思います。それを切ってしまうのは中学ではないかと思います。中学に入った後に、高校に行くときの成績順で工業高校、普通高校、商業高校、農業高校と振ってしまうと思います。そういうのがかなり強いと思うので、基本的には、ものづくりの基礎教育のところをきちんとやっていかないと、いくら体験させて職業がわかっても、その後の進学のときに先生のほうで、君は成績がいいから普通高校へとやってしまったら、それが消えてしまうと思います。
 高校に行くときに目標を持っている方は、工業高校なり商業高校に行かせて、また高校は3年間ありますから、そこでもう1回、自分の進路をきちっと見直しをさせて、そこでまた振っていくとか、目標を持ってない子に普通高校に行ってもらって探させるとか、そういった仕組みにしていかないと無理だろうと思います。そこまできちっと労働省側としても言っていかないと、文部省だけではできない部分であると思います。

(事務局)
 先ほど一過性という議論でしたが、確かにいままでやってきたことは一過性の部分が多かったと思います。ただ、これから議論していく内容というのは、総合的学習時間ということで体系的に1つのテーマを設定して、それを例えば半年なら半年追っていくという、そういう流れの中で乗っけることもできる。クラブ活動の中で乗っけることもできるという形で、かなり一過性でない形、イベント的でない形で進めていきたいと考えていま す。
 それから、先ほど言われた進学の問題というのは学校の中での文化というか、父兄の意識、子供の意識、先生の意識も係わってくる問題で、これは学校の中の文化を変えていかなければ、どうにもならない部分だと思います。
 そういう中で、なぜ技能を持った方々が学校に入ることに意味があるかと言うと、彼らが物を作るということは、いままで見たこともないようなすごいものを作れる可能性がその場であるわけで、それを見て子供たちはびっくりすると思うのです。この議論でいろんな議論がありますが、私どもの立場からは技能者の地位を高めたいとか、将来、技能者になる希望者がだんだん減っていって、もの離れが進んでいろいろ問題が起こるのを何とかしたいという問題意識です。
 文部行政の立場からは、そもそも物を作るということはいろんなことを勉強できるし、いろいろな困難に向かいながら、それを解決して最終到達点まで行くという意味で、教育としても非常に人づくりの上で意味があるという議論でやっていますので、私どもも一過性でなく一定の期間にわたってやり、またそれが先生、父兄、子供の意識を変えて学校の文化にも影響し、100パーセントでなくても1割でも2割でも自分の希望が、いままでとは違った形で将来の仕事を考える上で変わっていくような、そういう形になってもらいたいと思うし、そのために努力したいと思っています。

(委員)
 いまの点に関連するのですが、製造業にタッチする者として、いまの基本計画が時宜に適したものだと評価したいと思います。中で全体的計画ですからやむを得ないものとして、どうしても理想論的、抽象的になっている部分があると思います。これ自身は反論するところはないのですが、一過性とか何とかという話も出てきましたように、下手をすると理想論の中で現実に具体化していく中で、少しく危うさではないですけれども、実現に向かっていく場合に、是非ここは考えておく必要があるなと思うので、一言申し上げたいと思います。
 いま何度も、ものづくりの楽しさとか素晴らしさという表現が出てきたのでずか、実はちょっとこれに引っかかったのです。確かに教育の現場だと楽しさとか素晴らしさということでいいと思うのですが、結局、ものづくりというものが我々メーカーの中においても、かつての大量生産で同じ物を同じように作るという時代から、いまその時代は過ぎて、かなり少数で、かなり専門的な技能というものが脚光を浴びるし、それの技能継承が問題になってきていることが現実にあるわけです。
 それは、場合によっては、ニーズ側としてはそういうニーズを抱えているのですけれども、供給側、つまり社会だとか学生だとかいう立場から見たら、いま、そういう技能というものに対して行きたいという気持を、どれだけ持っているかということはあると思います。例えばそれを言うために楽しさ、素晴らしさと言うのでしょうけれども、確かに模型飛行機を作るとか、そういう楽しさを味あわせることによって目を開かせる面があります。
 結局、技能尊重というのは、我々、親を含めて技能に対する社会の評価だと思うので、それは楽しさとか素晴らしさとか、これは大事なのですが、より以上にものづくりの大切さみたいなところとか、あるいは奥深さみたいなものとか、すごさみたいなものとか、要するにものづくりそのものが持つ、社会における意味付けを大事にするということが基盤になるのではないか。楽しさ、素晴らしさというと一過性になり、やって楽しかったという感じになって、それが過ぎれば、そういうものだということで過ぎ去ってしまう。
 やはりものづくりというものは、物というものがどういう格好で作られ、その過程にどれだけすごい技能が潜んでいるかというか、土台になっているかということを見る。それが例えば高度技術者になっても、現場というものは大変なんだなと、やはりすごいんだなという評価にもつながってくるのではないか。こういう感じがしますので、素晴らしさ、楽しさそのものはいいのですが、何かちょっと言葉が浮いて、これが本当の技能尊重に結び付くかなと、ちょっと心配も逆にしました。

(会長)
 これからは、なるべくご発言、ご意見のほうに時間を主に当てたいと思いますので、説明のほうが必要な場合は私がお願いしますから、どうぞ。

(委員)
 いまの委員と全く関連しているのですが、私も実はものづくりのど真ん中におりまして、ものづくりでいつも悩んでいるわけなのです。まさに生徒さんあるいは子供さんに、ものづくりの大切さあるいは楽しさを分かってもらうと同時に、それを教育する先生方にも分かってもらわなければいけない、さらに大事なのは、その父兄の方です。家庭における父兄の方に分かってもらわないと、どれが欠けても私は、ものづくりから離れていくような気がするのです。
 例えば進学に際しても、生徒さん本人と先生が納得して行っても、家へ帰ってお父さん、お母さんに反対されてしまうとか、あるいは逆に父兄がそう思っていても、先生が理解がなければ、そこでやはりものづくりから離れていってしまうということですから、本人、いわゆる子供さんと家庭も含めてご父兄と、それから学校の先生方三位一体となって、ものづくりに対するご理解、あるいは大切さを分かってもらわなければいけないと思います。
 マイナーなお話で大変に恐縮ですが、私どもの街では、それをずっとやり続けてまいりました。例えば最初は学校の先生方に、ともかく今のものづくりを知ってもらおうということで、かなりの先生方にものづくりを見てもらいました。

(会長)
 どこの街ですか。

(委員)
 川口です。それで、なかなか効果が出てこない。これは子供というか生徒というか学生というか、その方々に分かってもらおうということでやってきましたが、最終的に父兄に見てもらわなければしようがないだろうということで、いま、それに取り組んでいる最中なのです。
 そんなこともあって、いま委員が言われたように楽しさだけでは駄目なんで、大切さ、絶対必要なんだということを、特に先生方、本人、父兄が三位一体となって分かってもらわなければ、なかなか、このものづくり離れからは戻って行かないのではないかと、いつも思っています。

(会長)
 ほかに何かご意見はございますか。

(委員)
 いまのお話と関連しますが、先ほどの説明の中でもある意味でPRと言いますか、世間のものづくりに対する理解度を高めていく必要性と言われましたけども、基本的には全くそのとおりだと思います。これは日経連に教えてもらったのですが、昨年の技能オリンピックをモントリオールでやったときに、日本のマスコミはゼロであったという話を聞きました。昨年、久方ぶりに技能オリンピックの成績をかなり回復してきたのですが、一般紙には1行も出ていない。専門紙にほんのちょっとの記事が出ていた。
 私、あるオープンな場でそれを喋ろうと思ったのですが、裏を取っておかないといけないと思って労働省の実際に行った担当者の方に聞いたら、そのとおりだということなので、そういう意味ではマスコミも含めて、PRをしっかりやっていく必要があるのではないかと思いました。
 それと、先生が言われたように質問なのですが、これは文部省にしたほうがいいのではないかと思いますけれども、高等工業専門学校が鳴物入りで発足し、当初は非常に人気を博していたのですが、最近、どうもあまり人気がなくて希望者が非常に少ないと聞いているのです。この辺について労働省か実業界の方か大学の先生か、もしお分かりになったらその辺の背景を教えていただければ大変ありがたいなと思います。

(会長)
 いま、その点について知識をお持ちの方、どなたかいらっしゃいますか。

(事務局)
 調べさせていただいて、文部省に問い合わせた上でご報告します。

(会長)
 ほかにご意見、ご発言がございますか。私から1つだけ。つまり、ものづくりの技能を尊重しようと。ではその技能の中身は何かということについて感想があります。私のようなアマチュアが言うのはおかしいのですが、金型を昔だと機械加工だけではうまくできないので手ヤスリで、赤い粉を付けて雌型と雄型を合わせてやりますね。そういう言わば匠の技能はもちろんいまも大事だし尊重すべきことで、それは何の否定もしません。
 ただ、おそらくそのウエイトはものすごく下がって、金型だったら相当下がったように私には見えます。放電加工機とCAMの非常に優れた進歩によってですが、無くなったわけではありません。
 では、どういう技能が増えたかというと、私はその点でこれをもっと強調していいと思うのは、非常にITと融合した技能のような気がするのです。例えば金型を例に出しましたから金型で言えば、金型の最初の構想設計ですね、大体CADで写したのに対して、仕上げ組立をなさる方がその場面で、こういうタイプだとこういう製作しにくい点があるとか、プラスチック成形だと射出機に持っていったら、こういう問題が出やすいよということをどんどんおっしゃる。見ていると、これは委員の出身とは別のところですけれども、それは感動しました。
 それに対して、大学院卒の設計者は非常に誠実に反応する。なぜならば、その言うことを聞かないと後で困った経験を持っているようです。あるいは実際に組み立てるときに、機械加工の数量、数値を与える数量設計の部分で、ちょっとしたインプットミスがあると組立がうまくいきませんね。組立をやっているほうは、うまくいかないのは我々がまずいのかというときに、その数量設計にほんのちょっと1、2年でも経験があると、あるいは数値の誤りかということに気が付きやすい。
 そうすると、つまり匠の技も大事だけど、同時の一種の知的なITと融合した技も極めて重要になってくる。そうすると、これは実は3次産業にも非常に広がっていく可能性が強いような気がするのです。そういう点をもう少し強調してもいいのではないか。これを見るとみんな匠の技という感じが些かしないでもないという、それだけです。

(委員)
 ものづくりの意識付けということで、学校教育の議論がいろいろされたわけですけど、少し気になるのは、ものづくり離れが起きているというのは、もともと職業意識が減っているかもしれないということなのか、職業意識というのはあるんだけど、選択されて製造業が選ばれないのかで全然違うので、この辺を少し区別しながら議論をしなければいけないかなと思います。これは感想です。
 もし選択問題だとすると、何で製造業が選ばれないのか。例えばソフトウェアの開発だって一種のものづくりで、最近はゲームなんかがありますから、ゲームソフト開発の有名人というのは何人もいるわけです。そういう人は一種、カリスマ的になって子供たちからすごく人気がある。子供たちは将来、ソフトの開発に行こうかと思うような状況があるとすると、何で製造業はそうならないのか。
 昨日か一昨日、私は新聞を読んでいてやっぱりそうだなと思ったのは、旭硝子がプラスチックで光ファイバーを作ったというのが新聞に出たのです。これは極めて象徴的で、他の時にもいつもそうなのですが、慶応大学と旭硝子が共同研究でやって、慶応大学は何々先生と出るのですが、こちらは会社しか出ないのです。つまり日本の会社は、そういう時に個人を出さないのです。
 それと、いま言いましたソフトウェアと製造業の違いみたいなことを考えると、行政上の施策の問題から離れるのですが、企業内の評価の仕方に問題があるのではないか。それと連結して外から見ていると、もう少し個人が出るようにしたらどうか。例えばこの金型は何々会社が作ったというのもいいのですが、Aさんが作ったとかいう形で発信しないと、やはり社会には伝わらないのではないかと思います。ですから、その辺をもう少し会社のほうも考えていただきたいというのが感想です。

(会長)
 それは大いに書けますね。今日は、この問題に関しては最初にご説明申し上げましたようにご意見をいただき、再度、先ほど事務局からご説明がありましたようにいろいろなステップがあり、その後、またこの審議会におかけするという予定のようですので、今日は、まだ少しあるのでしょう。

(委員)
 皆さんのご意見を伺っていて思ったことなのですが、これは質問でなくて意見です。この事の趣旨は非常に望ましいことであることはもちろんですが、例えば学校教育でものづくりを教えるとか、楽しさとか大事さを教えるというのは限度がある。つまり、装置産業のようなものは学校へ持って行って、それを教えるわけにいかないわけです。
 言いたいことは、要するに現場の協力がないといけない。だから経営の方々の協力もないと委員が言われたように、本当に情報を子供たちとか先生とか父兄に伝えることはできないわけです。
 そうするとコストがかかるわけで、そういうことを経営者のほうもできるだけ協力して、例えば高校生には、インターン制度なんていうのも考えていいかもしれないと思います。それはコストがかかるので、コストを経営側も考えていただきたいということと同時に、行政のほうも供給側のことだけでなくて、企業に対する補助みたいなものも考える必要があるかもしれないと思います。

(会長)
 恐縮ですが、この点は今回は一区切りして、「その他」ということで資料5、6、7です。説明をお願いします。

(事務局)
 「その他」のところのトップ資料bT、「技能検定の試験基準等の見直しについて」という表題のご説明をします。技能検定については、ご案内のとおり国が労働者の技能を一定の基準によって検定をして、これを公証するわけです。これは能力開発促進法の規定に基づいて34年から実施されています。
 現在、133職種、さらにその職種の中で選択科目という形で作業区分がありますが、その作業としては500を超えるぐらいの作業が行われています。この技能検定は等級が特急、1級、2級からずっと、ここにありますように分かれています。あと、それとは別に単一級で行われているものもあります。
 この技能検定の職種については、法令によって職種、それからその具体的な中身、私どもは試験基準と呼んでいますが、それは政令または省令によって定めることになっています。技能検定については、一般の能力評価試験とは大分違いまして、学科試験もありますが、それと同時に実技試験という、実際に物を作らせる試験をやるのが極めて大きな特徴かなと思っています。このためには業界の方々にも相当な協力をいただいているということです。
 また、技能検定は常に見直していかなければいけないという問題がありますので、常に業界の皆さん方の意見を聞いて必要な職種を設定したり、または既にあるものに新しい作業を追加したり、またその基準も見直しをしながら必要な改正を行うということで、事業主もしくは企業、また労働者からのご意見もお伺いしますが、そういういろんなところの情報を得ながら見直しをしているということです。
 この見直しは、具体的には能開審の技能振興部会において議論をお願いしています。平成11年度に試験基準を見直したものとして、(1)にありますように3級の新設が広告美術、試験基準全般を見直したものとしては広告美術仕上げ等の3職種があります。現在、見直しについての検討を行っており、今日、これから振興部会が行われると思いますが、そこでも議論していただきたいものとしては、新たに導入を検討している産業車両整備で、これはフォークリフトの整備の関係です。新たな選択科目の追加としては、この4つの職種について括弧内の作業を追加したいと思っています。鉄道車両の車両点検は、ちょうど地下鉄の事故でタイミングがいいのですが、それとは関係なく6カ月点検をできる人材の評価ということの形で、JRからの代表が中心になって議論をしてきたものです。3番目としては、試験基準の見直しを検討しているものとして、ガラス製品製造等があります。

(会長)
 質問もあるでしょうが、ご説明を一通り伺ってからご意見をいただきたいと思います。次の資料をお願いします。

(事務局)
 資料bUと7について、私のほうからご説明します。能力開発行政に関連して2つの研究会を昨年の秋から立ち上げて、現在、検討を進めているという状況についてご報告させていただきたいと思います。
 1つが資料bUです。今後の職業能力開発のあり方の研究会というものを、昨年の11月以降にスタートしています。考え方として、経済社会構造が大きく変化する。あるいは働く人の意識が大きく変わってくる中で、能力開発のあり方というか、その役割というのは非常に大きくなってきているという基本的な認識を持っています。
 そういう中で、雇用対策については第9次の雇用対策基本計画が、昨年、策定されたところですけれども、今後、職業能力開発基本計画についても、新たな計画の策定に向けての検討が必要であろうということ。あるいは能力開発基本計画、あるいは今後のあるべき施策に反映させるための基礎的な研究というか、学識経験者による検討の場ということで、昨年の11月から、今後の職業能力開発のあり方の研究会というふうなものを開催しています。
 テーマとしては、ここにありますように職業能力開発の現状と課題、21世紀に向けた人材育成戦略ということで、能力開発のさまざまなテーマとして、事業主の行う能力開発とか自発的な能力開発、職業能力の評価制度、あるいは公共職業訓練のあり方、民間教育訓練の開発のあり方などについて、幅広くご議論をいただくということでスタートしています。一応、目標として今年6月に最終的な取りまとめを行いたいと考えています。この研究会の取りまとめが行われた段階で、またこの審議会にもご報告し、引き続きこの審議会でご議論いただくための材料としていただければと考えているところです。メンバーについては、今日もご出席いただいています先生を座長としまして、合計9名の方にご参集をいただいているという状況です。
 もう1つの研究会が資料bVです。これは長期リフレッシュ休暇制度の研究会ということです。これは昨年の第1次補正と言いますか、昨年6月に策定された緊急雇用対策の中で、ここにありますように職業生活の節目において長期にわたって休暇を取り、能力開発をはじめとするさまざまな取組みを進めていくことが重要であるという趣旨で、長期リフレッシュ休暇制度の早期導入についての検討ということが謳われているところです。
 これを受けまして、具体的にどういうふうな施策を講ずるかということを、有識者の皆さん方にご検討いただく場ということで、長期リフレッシュ休暇制度研究会を開催することにしたところです。
 具体的には昨年の11月から、2枚目にありますようなメンバーで、法政大学の藤村先生を座長とした委員、専門委員による研究会をスタートさせているところです。長期リフレッシュ休暇制度の具体的な内容、あるいはその際の能力開発等の活動を効果的に行うための方法などについて、幅広く検討をいただくという趣旨で設けているところです。
 これも中間報告を、本年6月ぐらいを目途にまとめたいと考えています。それもまとまった段階で、またこの審議会にご報告させていただいて、ご検討の材料にさせていただきたいと考えています。私からの説明は以上です。

(会長)
 もう1つ、お願いします。

(事務局)
 報告事項の最後、資料bWによりまして「教育訓練給付の指定講座の状況」についてご説明を申し上げます。教育訓練給付については、もう既にご案内だと思いますが、雇用の安定のために雇用保険の被保険者、あるいは被保険者であった者が一定の教育訓練を受け、それを修了した場合に支給をするということで、具体的には労働大臣がその講座を指定しています。そういう場合に給付額として、労働者が負担した受講料等の費用の8割、20万円を上限にして給付をするもので、10年12月1日からスタートしいます。
 お手元の資料は、この4月1日以降の教育訓練給付の対象講座の概要です。これまで制度発足の10年12月以降、基本的に4月、10月に新たな講座を指定してまいりまして、この4月1日以降については、この2月末に第4回目の指定告示をさせていただいたところです。
 概要のところにありますように、11年10月1日現在の指定講座数は8,000コースですが、12年4月1日以降は約4割増えて、1万1,200コースになるということです。約4割の増加です。
 その内容についてはご覧いただいたとおりですが、多い順に記載しています。事務関係で翻訳、簿記、あるいは専門的事務処理と言って行政書士とか医療事務が入っていますが、こういうホワイトカラー関係が最も多くて、これが6割伸びています。あと伸びたところでは3番目の情報関係ということで、情報処理、パソコン・OA・CADといったところがやはり6割ぐらい伸びています。もう1カ所伸びているところでは、7番目のホームヘルパー、社会福祉を中心にした福祉関係が6割ぐらい伸びているということです。1万コースということになりますと、職業、雇用安定に資する分野がかなり網羅されてきているわけですが、そういう中で@のホワイトカラー、Bの情報、Fの福祉関係で伸びているということで、ご理解をいただきたいと思います。
 資料2頁目の給付の状況ですが、先ほど委員のほうからのお話にもございましたし、また前々回の本審議会でもお話があったと思いますので、この資料について若干の補足をさせていただきたいと思います。
 受給者数は、10年12月にスタートして、その方たちが訓練を修了して安定所に受給に参りますので、若干遅れて3月から支給が始まっています。3月以降から徐々に増えてまいりまして、本年1月までの計11カ月間に約1万2,000名の方がご利用になられました。支給総額はAにありますように110億となっています。
 男女別に見てみますと、ご覧のとおりでございまして、男性と女性では約6割強が男性ということです。あと年齢的に見てみますと、20代後半と30代前半をいちばん高いところとして、徐々に下がってきているような状況です。20代後半とか30代前半というと、5歳刻みで大体そのクラスが2万人ぐらいですが、徐々に下がってきて60代ぐらいまでは1万人ぐらいまできて、60代から下がっていくという状況です。中堅層の労働者のキャリアアップに貢献しているというふうにご理解いただけると思います。特に受講が多い講座としては、事務関係、技術関係、専門サービスといったところが利用の多いところになっています。

(会長)
 ありがとうございました。テーマがいろいろですが、以上の3つについて、いかがですか。

(委員)
 簡単な質問ですが、技能検定の対象に航空機製造整備が入っていましたか。もう1つ、教育訓練給付ですけど大学院は含まれていますか。

(事務局)
 航空機整備は、今はございません。

(委員)
 入れたほうがいいのではないですか。

(会長)
 2番目はどうですか。

(事務局)
 大学、大学院の関係につきましては、昨年夏の研究対策以降、講座指定対象にして、現在、35大学、大学院の76コースが指定になっているところです。

(会長)
 よろしいですか。

(委員)
 同じく教育訓練関係なのですが、1つはコースの面で、この全体を見ますと1万2,000というコースになったわけです。先ほどから話題になりました、いわゆるものづくりの部分のところがどのぐらいあるかと言うと、主にこの6ではないかと思います。1万某のところの250コース程度が、製造業のものづくり関係というような部分しかないということを見ますと、やはりものづくりをこれからということになれば、これをどう拡大していくかという部分が1つあるのではないかと思います。
 今年度の予算も含めて、あるいは前々回に委員のほうから言われましたように、公共の職業訓練のものづくりの部分を、いま先生が言われた大学院あるいは短大という部分で、企業人とどう連携するかという部分のコースも、いま、おそらく作っているのではないかと思いますので、是非、そこら辺も含めて指定講座、いわゆる製造業の指定をどう拡大していくかという部分は、是非ご検討をお願いしたいと思います。
 もう1点、ここは確か1回受けますと5年間受給ですね。5年もするともう陳腐化しますので2年なり3年なりということで、先ほど言いました20代の後半なり30代の前半という、若くてバリバリやってさらに意欲ある人という部分は、かなり自主的に受けていると思いますから、これは5年と言わないで2年か3年くらい、予算もあると思いますけれども、サイクル的に考えられないかという部分でお話をさせていただきます。

(委員)
 関連して、教育訓練給付の中身ですが、大変時宜を得た取組みということで好評な状況で、街を歩いてもいろいろな所でポスターが目立ち始めたなという感じがするのです。
 でも、いろいろ導入のときにも議論になったのですが、いまはとにかく雇用保険の対象者に絞ってやらざるを得ませんと。将来は、国として雇用保険に関係ない人も含めてやれるように、将来の課題としてという格好になっていたと思うのですが、あのポスターを見ると、何か誰でもいけるような雰囲気で、確かにちょっと雇用保険というのを書いてあるのかもしれないのですが、そうなると自分は大丈夫かなと、行ったんだけどあなたは駄目ですと言われるケースが出てくるのではないかと、かえって心配しているのです。それで、是非、雇用保険以外の人の取組みについて、どうなっているのかを伺いたいなと思っているのです。

(会長)
 たくさんありますが手短にお願いします。詳しくは後でゆっくり説明してください。

(事務局)
 前半のほうのご説明をさせていただきます。技能の関係については、Eの製造関係は製造技能関係が中心でして、先ほどの議論にございますような設計とかCADでもありますし、技術関係にももちろん入っているわけです。そういう意味でこのEだけが製造業ということではないと思いますが、委員のご指摘のように、こういったところで取組みが進められることが望ましいわけです。特に、例えば事業主団体等が取り組まれるような講座が出てくればいいなと思いますし、私どもとしても積極的に指定をしていきたいと思っています。

(会長)
 間隔は短くできますか。

(委員)
 これはうちの部から要望を出しています。5年間は長過ぎるということ。それから資格が複合化されてきているので、企業の中でも1つ取ったらいいとなってないのです。だから1つ取って終わりでなくて、2つ、3つ取って組み合わせて使っていくのが出ていますから、短くしてくださいというのは日商からも要望書が出ています。

(事務局)
 その点、先ほど給付実績を見ていただきましたように、ようやく昨年3月に最初の給付者が出たと。それから講座の指定状況も先ほど見ていただきましたが、急速に増えているものが確かにございます。ただし、この急速に増えているものが伸びているという意味ではありません。最初、非常に指定しやすいところで、国家資格関連等は割と学校がまともかどうかだけ見れば済みますので、ものすごく指定しやすいわけです。そういう意味で指定しやすいところが指定された。それで他の部分が、いま急速に伸びているということは、まだ全体状況が実は現状でも落ち着いた状況になっていないというのが実態です。まだ分野では、もっと本当は指定されて然るべきもの等もあるだろうと思います。
 したがって現在の骨格、つまり5年に1回というふうなことについては、確かに制度的に不十分ということも感じられると思いますが、もう少し全体をカバーして、つまり住む所の状況等もございますので、全体をカバーしてみて、なるほど、かなりの方が利用できるとか、そういう状況をつかまないと、ちょっとまずいのではないかと思います。そういう意味では、ご意見としては非常に貴重だと思いますが、もうちょっと時間をかけた課題かなと思います。ご指摘の点は痛切にわかるのですが、もう少し時間を貸していただければと思います。

(会長)
 もう1つ、雇用保険の対象者外については、どういう経過になっていますか。

(事務局)
 これも基本的には、いま事務局から申し上げたことと同じだと思います。ただ、現在の制度自体は雇用保険の制度の中で構築されているわけですので、それで本当にカバーしきれないのかどうかということも含めて、検討しなければならないだろうと思います。そういった意味では、いますぐの課題というより、ある程度時間をかけて考えなければならない課題ではないかと思います。

(委員)
 参考のために、12年度の支給金の予算額というのは、いかほどになっていますか。

(事務局)
 約33万人の273億です。

(会長)
 よろしいですか。これは室長、教育訓練給付についてこれほど質問が出たら、次回に時間があったら追加報告をなさってくださいますか。まだ質問し足りない人がたくさんいらっしゃいます。
 最後に、どうしてもこれは言っておきたいというのがありましたら、どうぞ。

(委員)
 一言。今回の会議でこのぐらい議題が出ているのですが、かなり皆さんの意見が出たと。前回、いつ開催したかなと思うと6カ月開催していないのです。現下の雇用情勢とか能力開発という部分が、かなり注目されている時ですので、1カ月に一遍とは言いませんが、せめて3カ月に一遍程度の開催を希望させていただきたいと思います。

(会長)
 それは、どうですか。

(事務局)
 これから鋭意、それは対応させていただきます。特に今回の計画につきましては次回、おそらく5月か6月初めぐらいには、もう一度ご審議をいただくような形になろうかと思いますので、その点もよろしくお願いしたいと思います。

(会長)
 何か法律の改正が入りますと頻度が上がるのですが、ここは間遠ですので他の審議会よりは割とゆったりとしています。今日はいろいろありがとうございました。これで終わりたいと思います。

照会先 厚生労働省 職業能力開発局
    総務課 政策計画・調整係(内線5959)


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