中央職業能力開発審議会第71回総括部会
日時 平成9年9月11日(木)10:00〜12:06
場所労働省特別会議室
議題 (1) 自発的な能力開発を行う労働者に対する費用に係る支援制度について
(2) その他
配付資料 No.1 職業能力開発に係る支援の体系
No.2 自発的能力開発の費用に係る支援の体系
No.3 自発的能力開発に対する支援の実施状況等
No.4 自発的能力開発の現状及び支援策に関する要望等
出席委員
学識経験者 尾高部会長、今野委員、小宮山委員、早川委員
労働者代表 柿崎委員、鈴木委員、久川委員
事業主代表 岩口委員、斎藤委員、杉山委員(代理 矢神氏)、山田委員


(部会長)
 早速議事に入りたいと思います。本日は前回に引き続きまして、「自発的な能力開発を行う労働者に対する費用に係る支援制度について」を主な議題としてご議論いただきたいと思っております。  事務局のほうで資料を作成していただいておりますので、まず、その資料についてご説明いただきまして、その後、質疑応答をしたいと思っております。ではお願いします。

(事務局)
 (資料No.1〜No.4について説明)

(部会長)
 ありがとうございました。それではいまのご説明、並びに資料等につきまして質問、ご意見等がありましたらご自由におっしゃっていただきたいと思います。それを踏まえまして、後で、ではもっと実質的にはどうするかという論議をしていただこうと思っております。

(委員)
 中高年齢労働者受講奨励金の関係につきましては年齢の幅も広がったりしまして、大変いいなと思っています。
 そこで、資料3に記載されております支援の状況の中で、特に数値についてお伺いしたいのですが、まず1番目は中高年齢労働者受講奨励金の関係で、5年度、6年度の関係については比較的予算、実績の格差はあるものの、予算のほうが多いという感じで実績が少ないのですが、7年、8年になると極端に予算と実績の格差が増えてきていますね。加えて、雇用労働者と一般の求職者との差の内訳がどうなっているのかということで、この予算と実績の格差の理由と、できれば雇用労働者と自らの求職者の区分がわかればお伺いしたいということです。
 それと比較しますと、今度は自己啓発助成給付金については、ずっと予算、実績の関係で見ますと、これは逆に予算のほうが多く実績が少ないという状況になっておりまして、この辺についてはあまりにも極端な傾向なものですから、どんな実態なのかその理由などをお伺いできればなと思ったのですが、よろしくお願いいたします。

(事務局)
 まず、中高年齢労働者等受講奨励金についてですが、当初制度が発足しました昭和62年の段階では、50歳以上の被保険者と、いわゆる在職者に限ってやっていたわけなのですが、その後、45歳に一度引き下げまして、さらに平成5年度から40歳に年齢を引き下げたということがあったわけです。それまでは比較的そういう中高年齢層の年齢の高い所に絞っておりましたので、実績があまり出ていなかったわけですが、40歳に年齢を下げましてから、かなり制度が一般化いたしまして、急激に支出が伸びるようになったという状況です。ここ1、2年のところを見ていただきますと、予算を大幅に超過するほど人気が非常に出てきているという状況です。平成8年度まではずっと在職者が対象でして、本年度から一部雇用保険受給者を含めたということです。
 それから自己啓発助成給付金についてですが、これは実際に人員のところを比べていただきますと、中高年齢労働者等受講奨励金が4万8,000人で自己啓発助成給付金のほうが5万3,000人ということで、予算上の要対人員から見ても、それほど少ないというわけではないのですが、単価が、中高受講奨励金のほうは割っていただきますと約2万5,000円になるのですが、助成率が2分の1ですから大体5万円ぐらいが平均的にお金としてかかっているという感じなのです。自己啓発助成給付金につきましては大体1万円ちょっとぐらいでして、中身的に見ますと賃金助成の部分が非常に少なくて1割以下ぐらいになっておりますので、ほとんどがいろいろな側面的な企業の支援の部分についての申請が上がってきているということで、要的にちょっと積み上がりにくい面があるのかなという点があろうかと思います。それから、これは県のほうにお願いしていろいろPR活動もしていただいておりますが、その辺につきましてさらに強化していく必要があるのかなと思います。

(委員)
 数年にわたってこの格差が継続する場合は、予算の組み方の考え方を変えるとか、そういうことはないのですか。例えば平成7年度でこれだけ実績が違うということであれば、次の8年度の時には、7年度の実績を見て次の予算を組むというようなことができないのかどうかということがあるのですが、科目の変更がなかなか難しいのか。

(事務局)
 できるだけ私どもは実績を反映させながら要求をいたしたいと思っているのですが、要求の理屈の立て方の継続性といったような問題もありまして、あまり極端に毎年増えたり減ったりするというのもどうかなという面もございまして、結果としてこういう形になっているということです。全般的に申し上げますと、やはりそれは実績をできるだけ反映させながら要求していくということだと思っております。

(委員)
 次年度は増やしたのでしょうか。

(事務局)
 中高年齢労働者等受講奨励金は実績が非常に最近は増えておりますので、平成9年度もだいぶ予算を増やしまして、平成10年度もかなり大幅増の要求はさせていただいております。

(部会長)
 予算関連のご質問はまだございますか。

(委員)
 自己啓発助成給付金の援助を受けている事業主の数の推移というのはどうなっているのでしょうか。

(事務局)
 平成4年度から実事業所数ということで、これは両方を申請することができるわけで、賃金助成の部分と、側面的な受講料等の支援の部分と両方ございまして重なっているのがございますが、実の所で見ますと、平成4年度で2,282事業所、徐々に増えてまいりまして、平成8年度では3,039事業所という推移になっております。

(委員)
 いまのデータのことは同じ質問なのでいいと思いますが、三事業関係の収支の状況、特に能力開発費全体が時系列にどのような形で推移してきているのかということについて説明していただけないでしょうか。

(事務局)
 いまのご質問の趣旨は三事業の中で、いろいろ助成金がありますが、それが事業主に対して払われているものと、個人に対して払われているものの推移ですね。

(委員)
 それからもう1つは三事業関係で、雇用安定、能力開発、福祉事業と3つあるわけですが、そのうちの能力開発関係の収支というものが時系列にどういうような形できているかということが、もし今ご説明いただければお願いいたします。

(事務局)
 まず最初に、特に能力開発事業の推移ということですが、平成5年度で申し上げますと、能力開発事業が1,576億円です。6年度が1,424億円、7年度が1,451億円ということで、8年度はまだ実績の見込みで最終は出ておりませんが、1,477億円ということです。参考までに三事業全体で申し上げますと、平成5年度が5,640億円、6年度が5,666億円、平成7年度が6,746億円、平成8年度が、これも実績見込みですが、5,839億円ということになっております。

(部会長)
 ついでにその内訳は分かりますか。

(事務局)
 内訳は、平成5年度と平成8年度を申し上げますと、平成5年度は先ほど申しましたように支出全体が5,640億円ですが、そのうち雇用安定事業が1,979億円、雇用福祉事業が2,076億円、能力開発事業が先ほど申し上げましたように1,576億円ということになっております。平成8年度が、実績見込みで申し上げますと、支出全体が5,839億円で、そのうち雇用安定事業が2,730億円、雇用福祉事業が1,614億円、能力開発事業が1,477億円ということになっています。
 それともう1点、事業主、特に能力開発事業におきまして、助成金の総支給額のうち、事業主の方に支払われるものと個人ですが、これは取り方はいろいろですが平成8年度で申し上げますと、総支給額のうち95.6%が事業主または事業主の団体のほうに支払われている。残りの4.4%が労働者個人に対して支払われているという形になっております。

(部会長)
 5,839億円のトータルの中の比率ですね。

(事務局)
 これは能力開発事業のうちでも、そういう助成金的なもののほか実際に多いのはいろいろ公共訓練施設の運営に関する費用とかが入っています。能力開発事業にかかります助成金の中では多いのが生涯能力開発給付金の関係の能力開発給付金といったもの、それから自己啓発助成金ですとか、中小企業の事業転換と能力開発給付金といったものがございますが、こういうような助成金が全体のうちで95.6%が事業主の方々に支払われ、残りの4.4%が労働者個人に対して支払われるということです。

(部会長)
 それは8年度の数字ですね。

(事務局)
 はい、そうです。

(委員)
 この参考資料にある各種の助成金を分母として、いまのような比率になるという理解でよろしいですか。

(事務局)
 このほかにも事業主の方々が行います訓練に対する助成というのがあります。

(事務局)
 次回に整理いたします。

(部会長)
 いまの予算の所で私も伺いたいのですが、自己啓発助成給付金の実施主体は都道府県なのですか。

(事務局)
 これは都道府県に対する委託費という位置付けになっておりまして、実際に支給するのは都道府県が支給するということになっております。

(部会長)
 財源は国なのですよね。

(事務局)
 そうです。

(部会長)
 ほかにご質問はありますか。私から簡単な質問をさせていただきます。配っていただいた資料の中に、アンダーラインが引いてある所がありますが、これは説明を聞く人が、ちょうど自発的な能力開発の所に注意がいくように、資料を作った人が引いたアンダーラインというふうに理解していいですね。

(事務局)
 はい、特に今回問題になっています費用に対する支援という観点から見て、特に関係ありそうな箇所に引かせていただきました。

(部会長)
 それともう少し実質的な質問として、ここにある参考資料の中の要望書とか、あるいは要請とかというものの性格も一言いっていただくといいと思うのです。つまり連合なら連合で、何か議決をなさった結果が出てきているのか、あるいはそうではなくて、執行部の要請なのか、性格を言っていただくほうが受け取る側の対応も、またはっきりするのではないか。それから統計の数字が出ていますが、アンケート調査はその回答者の数も合わせて教えていただきたいと思います。アンケート調査とか統計調査というのは非常に偏った印象を与えかねないので、どのくらいの規模で行われているかということも合わせて知りたいと思います。

(委員)
 先ほど、ここの参考資料に上がっているのは助成金の一部とおっしゃいましたが、ほかにどれくらいそういうものがあるのか、全体像がわからないと、また今度自己啓発の部分にもっと予算をといった時に、今あまり必要性の高くないものを削って、こちらへ回すというようなことをしないと、実質的に難しいということもあるかと思うので、いま助成金全体がどういう種類のものがどれくらい出ているのかというのはわかるのでしょうか。

(事務局)
 それでは次回までに全体像がわかるような形で整理させていただきたいと思います。

(委員)
 質問というか、これはどう解釈したらいいかと思うのですが、アンケートなのでアンサーが総計数が多くないので、あまりこれと挙げることもないのですが、6頁の全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会のアンケートで、どう解釈するのかなと思ったのでお聞きするのですが、大体こういう個人主導の職業能力開発に重点を置くのだったら、そういう意味では「賛成」のほうが普通多いだろうと思うわけですが、300人以下で50%を切っている。そして、「どちらともいえない」が大体同数と。300人超はちょっと上がっていますが、また1,000人以上の所も58.8で、3,000人以上の所が8割、9割賛成なのに比べると、必ずしもそういうのに重点を置く必要はないというか、あるいはどうだろうかという部分を、どういうふうに解釈したらいいのかちょっとわからないものですから、ここはこういう感じではないかということがありましたら。つまり、やったらいいのではないかということに対して、いや、それは必ずしも国がやることではないとか、あるいは本人自身の問題だとか、あるいは中小企業からしたら、どうせ自分の所は妙に力をつけると、またトラバーユというか、人が出て行って困るとか、そういう判断も働いているのか。しかし、これは組合のアンケートですから、企業側のアンケートではないから。

(部会長)
 分析結果はあるのですか。

(事務局)
 分析結果はそこまではないのです。どちらかというと組合の執行部の方々に対して調査依頼をしたものなのです。ですから、いまのご質問のように、いろいろ大企業の場合には比較的個人の能力開発移動に対しても、組合員も自ら進んでという思いがあるでしょうし、執行部もそういう思いがある。しかし、中小の場合は逆にそういうことをされてしまうと逃げられてしまうのではないかという心配みたいなものもあって、そんな複雑なものが出ているのかなと思っているのですが、では、どうしてどちらとも言えないということになっているのですか、という一歩掘り下げた所まではやっていないのです。ですから対象としては、構成する組織に対して、アンケートをお願いしたわけですから、それぞれの組織でさらにおろしたかどうかというところまでは、ちょっとわからないです。

(部会長)
 どちらとも言えないというのは反対ではないということですね。だから、そういうふうに読めば、ほぼ全員が賛成。ただ、統計というのは先ほども言いましたが、どういうふうに調査されたかによって解釈が変わってきますから、ただ結果表だけ出されても困るかもしれません。それで、計の所は多分これは回答数ですね。

(事務局)
 そうですね。

(部会長)
 そうすると、11の組合が回答していらっしゃるわけだから、総体的に少ないですから、どのくらいこの回答が代表性があるかというのが、ちょっと保留する必要はあるかもしれません。非常に情報として貴重ではありますが。

(事務局)
 もっとほかのアンケート項目もずっとあるわけです。それで全体を見ていただくと、また違うイメージがあるのでしょうけれども、この抜粋した所だけしかないものですから、余計ちょっと全体がおわかりいただけないのかなと思います。

(部会長)
 ついでに委員の皆さんにはもう少し詳しいものをそれぞれ。

(事務局)
 かなり厚いものなのですがいただいておりますので、参考に別途ご覧いただきたいと思います

(委員)
 中高年齢労働者等受講奨励金のことなのですが、今度雇用者については一部ですが30歳以上オーケーというふうにしたのですよね。それで条件としては資料2にもありますが、40歳未満は早期退職優遇制度によるということだったですが、これ実績としておりますか。すごくきついなというふうに思いますが。

(委員)
 あるいは求職者のほうに合わせるためにやったのかなという気もしないではないですが。

(事務局)
 今年度から施行された制度ですので、まだ実績は出ておりません。これは被保険者と受給資格者、失業者のほうと両方年齢が10歳引き下がりまして、30歳以上が対象になったわけですが、いまご指摘のように早期退職優遇制度により退職を予定する、という条件が付きまして、それから受給資格者のほうは事業主都合による離職でなければならないという制限が付いておりまして、若年のこの30歳代で早期退職優遇制度は、ただ中身的に希望退職の募集というものも範囲の中に含めるということになっておりますので、ちょっとどのくらい出てくるか、いまのところ予測はしづらいのですが、あまり大量にはいないと思います。

(委員)
 求職者に対して事業主都合というのは、割合明確にきちんとわかる概念なのですか。

(事務局)
 それは一応事業主のほうに証明をいただく。それは雇用保険の手続で一応確認をするというような形で、事業主のサイドの理由による辞職であるということを確認しています。

(委員)
 実態は事業主都合なのだけれども、形の上では本人の希望退職みたいなことになるということはいかがなものでしょうか。

(事務局)
 希望退職の募集などの場合は事業主都合ということにいたしておりますし。

(委員)
 退職勧奨された場合ですね。

(事務局)
 はい。直接または間接的に退職することを勧奨された場合も、一応離職の事業主都合に含めるということにいたしております。ただ、この制度を作りました時に、基本的に事業主のほうの三事業のほうから支出をされるということもありまして、その辺は事業主の関与を認めていくべきではないかというようなご指摘もございまして、その事業主の証明というものを第一義的な証拠書類にして判定していこうと、こういうふうな考え方です。

(委員)
 いまのに関連して、これは事業主都合だけですか。例えばいま委員のおっしゃったように、個人の都合で辞めた場合、これは全然対象にならないのですか。

(事務局)
 これは対象にはなりません。

(事務局)
 受給資格者につきましては、年齢が上の場合も同様でして、新しく今回入りましたので、事業主都合及び定年による退職以外は一応駄目ということにいたします。

(委員)
 例えば家庭の事情とか、社内における人間関係とかで辞めていって、転職しようとしていて、そこでまた新たな技能とかを身に付けたいと思っている方が申請しても、それも駄目ということですか。

(事務局)
 個々にケースを見ていかないとなかなか難しいですが、一般的にいえば難しいかなと思います。

(委員)
 先ほど部会長からお話がありました、連合から、どこで誰が決めているのかというお話ですが、原案作成者は連合の事務局が作成をしまして、それぞれの構成組織、あるいは中央連合会等々の議論を経て、6月5日の中央委員会で最終的に機関として決定をし、7月10日の時に、それぞれの関係する行政に要請書を提出いたしました。したがって、この内容につきましては7月10日の日に、労働大臣に鷲尾事務局長以下で、これらを含めた労働関係の要請をしております。なお、これらの理由については分科会というものがございまして、政策分科会で今日出席されています局長を含めまして、ご議論をいただいているところであります。そういう意味で参考資料として提出をさせていただいています。

(部会長)
 ありがとうございました。

(委員)
 それで今度は意見というか、先ほど言いました指摘をされている年齢制限と、いわゆる要件の所です。これは労働省の65歳現役の研究会のさまざまな調査結果を見ても、実際30歳での早期退職優遇というのは非常にやっぱり少ないです。早期退職優遇制度を企業規模全体でやっているのは7.7%ぐらいです。そして、特徴はやっぱり大企業になればなるほど50%近く、あるいは50%を超えるという状況にいるのですが、問題は制度がない、あるいは中小企業であればあるほど、そういうようなことが実際は適用されていない。したがって、制度の中身と、実際に行われている早期退職優遇制度に乖離があるのではないか。
 いまここにいただいているデータというのは、それらの求職問題がほとんど入っていませんから、そういう意味ではこれはこれで非常に有用性としてはあると思うのですが、実際に9年度以降これらの実績が出た時に、何か非常にいい面があるけれども、それが事業主としては、あるいは労働者個人としては実効が担保できないという形が出てくるのではないかという心配があるわけです。だから、先ほどの電機連合の要請ではないけれども、もう少し実際に適用できるように緩和したらどうだろうかと。
 そして今度は財政が問題になると思うのです。これは事業主が言われているように、何でもかんでも事業主がやっていたのではたまったものではないという、そのご意見というのは我々も十分わかるのです。したがって、そういう意味ではもう少し我々労働者も負担をする、そういう中で住み分けをきちっとしていこう。国がやるべきこと、企業がやるべきこと、労働者本人がやるべきこと、それはやっぱりお互いにそういうような負担を公平化した中で、これらの問題というものは要件として緩和していったらどうだろうか。
 ただ、非常に難しいのは、財源については雇用保険部会でやるわけです。そうなってくると、我々の意見というものはおそらく部会長なり、あるいは事務局の方のほうから、そういうような関係の部会にお話されると思うのです。ただ、あちらの部会はあちらの部会でいろいろ三事業が窮屈になってきていますから、求職給付の問題とか、これからの介護の問題だとか、そういうように財政問題というのは議論されるわけです。
 そうなってくると、我々の議論の経過というものが、どういうふうに雇用保険部会のほうに反映していくのか、したがって、これは私の意見なのですが、いま基準審の中ではいろいろと合同部会を開催していますが同じ基準審ですから、部会は合同でできると思うのですが、中職審等の局がまたがるということもあって、なかなか難しいだろうと思います。いろいろなチャンネルの仕方については否定しませんが、関係する部会とのアクセスというものが透明になるような仕組みが何か考えられないのだろうか。その中で、いま言った財源問題を含めて、我々は言うだけ、能開審が言われても限りがあるよと、すべては事業主負担ではたまったものではない、その辺については、もう少し考えたらどうか、というご意見も違う部会ではあると思います。したがって、審議会の議論の共通テーマにかかわるものについてやれないものだろうか。
 したがって、これからどういう詰め方をしていくのか分かりませんが、我々のほうとしては、自己啓発の部分、いわゆる労働者への直接部分が最大のテーマなのです。それはさまざまなアンケート調査とか行政がいろいろな所からやっている調査、あるいは労働力調査などから見て、これを確立していかないと流動化などと言っても、労働者としては不利益を被る形に結果としてなってしまう。これからの議論の中で中心的なテーマとなる以上は、いま言ったような議論の受け皿についても、少し検討してもらいたいというのが私の意見です。

(部会長)
 具体的なことをおっしゃっていただきましたので、資料の理解から一歩踏み込んでご議論をいただきたいと思いますが、その前に、いままでの所で、これはどうしても聞いておきたいということがほかにございましたら、お願いいたしたいと思います。
 よろしいですか。それでは、この部会としてどのようにしていくか。いま委員がおっしゃったことも含めてご議論いただいたらどうかと思います。事務局に説明をお願いする前に、いま委員がおっしゃったことに関して、何かございますか。なければ説明を聞いてから議論していただくことにいたします。

(委員)
 1つだけ教えてほしいのですが、前回のまとめのときに、自己啓発の個人への支援の所については、正しい言葉は忘れてしまったのですが、「社会全体での支援のあり方云々」といった表現で、最後にまとめたと思うのですが、この場合の社会全体での支援のあり方という考え方と、今日お示しいただいた社会全体での支援ということはどのように理解しておけばよろしいのでしょうか。

(事務局)
 本年1月の部会長報告の「社会全体での支援のあり方」というものも、当然それを前提にしたことでお考えいただければということで書いたつもりです。

(委員)
 いまの件を私が整理してみますと、委員がご指摘した点が今後何回か行われるこの部会のいちばん争点でして、社会的という形でいろいろニュアンスを持たせている。使用者側からいえば、三事業の負担だけでは、ちょっと困りますよというのは基本的なことです。ただ、自己啓発が大事であるということは理解しますが、では自己啓発といった場合に、実際にはいろいろ多様化しているわけですから、そういう中で使用者のみが三事業という形で負担するのはいかがなものでしょうか。しかし、それを整理していくためには、社会的な全体への支援のあり方ということが考えられます。現状の支援策の問題点の面をどのような形で詰めていくのかということが、財源とのかかわりで出てくると、私は理解しているのです。社会全体でどう負担していくのか。

(委員)
 委員と同じような理解をしてはいます。ここはきちんと詰めておかなければいけないと思います。
 先ほど私が言いましたように、関係の所に我々の部会の総意ということで、例えば、ものを言うときには、そこの所を押さえていかないと、雇用保険部会のほうもなかなか乗り切れないと思うのです。我々自身も従来は、これらの問題は何でもかんでも事業主でやればいいのだというようなことだけで本当に行けるのかどうか。それでなくてもパンク寸前になっているような状況になり、我々としてももう少し広げたらどうだろうかというような議論も、いま内部でしています。

(部会長)
 そうすると、自発的能力開発が重要だったことは、皆さん一致して恐らく問題ないだろうと思います。では、どのようにそれに取り組むかということに関して、現状の支援策の問題点と新しい支援策についてご議論いただいたらどうかと思います。それについては、いまご両者から言っていただきましたが、事業主だけではなくて、もっと幅広い負担をしていく、あるいはいま行われているプログラムを場合によっては少し見直すということも1つあります。
 それから、私どもの意見をどのようにして雇用保険のほうに伝え、また向こうの意見をこちらでも伺うという実際の段取りについても、ご意見があれば言っていただく。その2つのご意見がいま出ているかと思います。

(委員)
 全体の枠組みといいましょうか、どのぐらいのテンポでこれだけのことを詰めていって、先ほどからお話の出ている職安審のほうの雇用保険の部会の議論のテンポと来年度ぐらいにこれを実施しようとしてやっているのか、その辺の歩み方を、枠組みがないと、どこをどの程度議論していっていいのかというのが難しいのですが。

(事務局)
 それでは、その点につきましてご説明させていただきます。中央職業安定審議会のほうと並行して議論を進めていることになっていますが、自己啓発への支援を拡大する必要があるということになりますと、その必要性が確認された場合についても、どういう形での支援があるかということについては、現在も、先ほどの奨励金等も雇用保険の事業の中でやっているということがあります。1つの現実的な選択としては、そういう中でできないかということがあるわけです。
 その場合については、委員からお話がありましたように、現状は雇用保険の三事業という形で事業主負担の費用の中でやっているが、このままでいいのかという問題があります。ただ、そこの所の財源論については、最終的には中央職業安定審議会の雇用保険のほうのことになりますので、そこで能力開発審議会と雇用保険との連携をとりながら、議論を進めていく必要があるだろう。その進め方については、先ほどご意見がありました。日程的に申しますと、前回の会議のときに申し上げたのですが、特に雇用保険のほうは、できれば来年の通常国会に法律の改正案を出したいということで、議論を進めております。それを考えますと、本年の11月ぐらいには、能力開発審議会としての一定の方向を示していただければ、それを受けて最終的に中央職業安定審議会のほうで、財源問題も含めて検討し、考え方がまとまれば来年の通常国会に法律の改正案を出したいということですが、事前に改正案について、審議会に諮問するのが本年末ぐらいの見通しと聞いております。ですから、そのように考えますと、一応のまとめは、できれば11月にはおまとめいただきたいというのが私どもの考えです。

(部会長)
 参考のために伺いたいのですが、雇用保険部会として法律改正をしたいと思っている理由は何ですか。

(事務局)
 この問題もあるのですが、この問題は、特に財源を変えるとかということになりますと、もちろんそれ自身の法律改正問題になります。それと雇用保険のほうは、あとは介護の給付を失業者給付というか、基本給付の中に取り入れるかどうかという問題も、1つの大きなテーマです。その他の問題もありますので。

(部会長)
 大きな問題の1つの柱として自己啓発と介護を雇用保険で引き受けるかどうか、あるいはどのように引き受けるかということが論点で、そのために法律改正が必要だと認識しているわけですか。

(事務局)
 はい。一応そういう前提で、職業安定審議会の雇用保険部会のほうでも議論が進められていると聞いております。

(部会長)
 そういうことでスケジュールがすごくタイトで、私は心配しております。時間的なスケジュールの点は、一応事務局がどう考えておられるかは分かったとして、委員がご心配の実際の相互の議論の透明性をどう図るかという点は、何か考えておられますか。

(事務局)
 私どものほうのことで恐縮ですが、いま委員からもお話が出ておりましたように、特に並行して進めていますので、相互の連携というのは必要だと思っております。私どもとしましては、今日のご議論等も踏まえまして、部会長とも相談させていただいて、事務局のほうから、能開審議会の議論の状況について、雇用保険部会について説明させていただく。それからまた、雇用保険部会の議論の状況について、こちらのほうに次回の会合の際にでも、この場で報告させていただくという形で、それぞれの議論の状況を踏まえながら、それぞれの部会でご検討いただければと、私どもは思っております。

(部会長)
 先ほど委員がおっしゃったことに関しては、事務局としてできることは最低やるつもりでいるわけです。つまり、こちらの事務局が向こうへ行って説明して、向こうの事務局がこちらへ来て説明してくれるということは最低やれます。しかし、先ほどはもう少し踏み込んだことをおっしゃいましたよね。

(委員)
 合同部会だけしかないと言っているつもりは全くありません。いまの仕組みの中では、それはなかなか難しいだろうと思います。したがって、そのことについてはこだわらないのですが、ただ事務局間の連携というのは、当然行政ですから、常におやりになっているだろうと思っています。したがって、そのことについて信頼はしています。
 ただ、審議会の透明性ということであれば、意見の集約になるかならないかは分かりませんが、可能であれば審議状況とか共通した部分について、ここの部会長がこの部会を代表して関係する部会に行ってご説明いただくほうが、我々のほうとしてはむしろよろしいのではないだろうかと。ただこれは部会長のお考え1つだろうと思いますので、イメージとして言っただけです。

(部会長)
 その辺に関して、皆さんのご意見はいかがでしょうか。

(委員)
 先ほどおっしゃったことを念を押すようで申し訳ないのですが、あちらの部会の今回の法案改正の場合の項目の重要度というのは、どの程度に自己啓発のことが位置付けられているのか、非常に大きな問題ではないかと思うのです。と言いますのは、今回、こちらはこれだけ思い入れがあっても、あちらのほうでは多くの項目のうちの4番目か5番目となりますと、その辺がミスマッチが起きるかなという気もありますので、その辺の確認と、私もできれば事務局だけではなく、部会長が行ってお話になるとか、こちらの熱意が伝わるような方法がとり得るのであれば、そのほうがベターではないかと思います。

(事務局)
 熱意ということで、これは私どもが受け止めていることですが、特に昨年来、能力開発審議会のほうで、自己啓発の問題についていろいろご議論いただいているということで、こちらのほうから具体的な提言があれば、こちらの審議会の意向を最大限生かした形で取り組んでいきたいということで、雇用保険のほうでも、ある程度コンセンサスはできていると思います。
 先ほど申し上げましたように、特に、今回重点的に取り上げている問題としては、介護休業給付の問題とこの問題が大きなもので、そういう点では2つの大きな問題を中心に議論したいと。そのほか雇用保険制度の見直しとして、財政構造改革の絡みで国庫負担のあり方の見直しなどがあるのですが、それはまた別のもので、一応介護休業給付と自己啓発給付を新たに創設するかどうかを中心に、ご議論いただいていると私どもは承知しております。

(部会長)
 いまの点について、ご意見ございますか。

(事務局)
 確認しますと、自己啓発をいかに促進するかということについては、労働省は相当前から考えていた大きなテーマです。そういう意味では、雇用保険のほうでは最大の課題だと思います。1番だと思います。2番目は介護で、これは時間が限られていてどうしてもやらなければいけない。それから財政構造改革。この3つがテーマです。自己啓発の点については、相当前から労働省全体で思い入れがありまして、私どもの相当大きなテーマであり、労働省全体としても大きなテーマですので、安定局も当然大きなテーマだとご理解いただければと思います。これを是非やらせていただきたいと思っております。
 それから、両審議会との関係をどのようにやっていくかという点については、基本的に私どもが考えている案としては、向こうの事務局にここに来てもらって状況を説明すること、逆に私どもの事務局が行って具体的に説明するということで、そこでご議論をいただくということを、いま考えております。ただ、いまご意見がありましたので、どういう形でやれるのか、果たしてそれがうまく議論が噛み合うのかも含めて、一度事務的にどういう形があり得るのか検討させます。いま考えている事務局が相互に行ってお互いにやるという方法以上に、中身によってはもっと。出ていって内容のある、実質実りのある議論が行われれば、いいかなとも思いますので、事務的に向こうとの関係もありますので検討させます。私どもはご苦労をかけてはいけないから、担当事務局同士でやればということを、いま考えております。必要性と向こうとの関係もありますので、そういう点も含めて事務的に検討させます。

(部会長)
 それでは、お願いいたします。皆さんの熱意を伝えるために、そういうことをやったほうが、やること自体に意味があるかもしれません。では、この部会としては、どのようにしたいかということを確定していただきませんと、向こうへ伝えようがありませんので、その点を残る20〜30分でご議論いただけたらと思いますが、いかがでしょうか。

(委員)
 同じような意見ですが、自己啓発の部分を考えてみると、私は去年から入っているので、その前に議論があったのかもわからないのですが、実際に企業内で行う訓練とか、極端にいえば、学校で職業訓練を行ってくるとか、職業教育をやってくるとか、そういうことを踏まえて、そうした中で自己啓発がどの程度大事なのか。したがって、企業の中ではこれはできないから、それを超えるものを自分でやれという議論になっていって、それをやった結果が企業に返ってくるので、その費用の中で企業に出せというのか、先ほどの論点の所がもやもやしているのです。基本的に東商の意見で、これも資金援助ではなくて、税制面からしなさい、という趣旨の意見なのです。費用については個人が負担するべきだ、企業にとって必要なものは企業が、集合訓練だったりOJTだったり、いろいろな形でやっていく。それを超えてやる部分について、というのが前提にあると思うのです。

(部会長)
 それぞれの委員のご議論をしてくださるといいと思います。ご自身のご意見なり、あるいは関係各所の意見を代表して言ってくださるのでもいいと思います。委員は税制がいいのではないかとおっしゃったと承っておきます。

(委員)
 これは東京の商工会議所の意見です。

(部会長)
 委員のご意見はまた別ですか。

(委員)
 私は別に持っています。

(委員)
 全体にかかわっている内容かもしれませんが、この1月に総括部会長の中で、自己啓発に関連する2点の内容について答申をしたわけです。1つは「労働者の現在の職務に役立つ職業能力開発」、2つ目は「出向、再就職や円滑な労働移動のため等、職業の安定に資する職業能力開発に重点を置きつつ、推進する」ということで答申をし、全体で承認をしたわけです。
 財源問題については、正直言って中高齢者受講奨励金で、これらの問題を処理するのは非常に難しいということは、誰しも考えていただろうと思うのです。ただ三事業と、その当時のいろいろな実態化してやむを得ないという現象の中で推移しただろうと思います。
 このときの議論の中に、もう1つは@、A、それから私自身も提案したのですが、Bとして「一般教養を身に付けるため」といったことがあったわけですが、職業という概念からすると、@、Aに収めよう。それから労使がそれぞれの何かの費用を出すに当たり、Bの問題は完全に個人ではないだろうかということで、いろいろ推移した経過があったと思います。
 昨今の状況の中で、資料1頁、例えば、問1の「自発的能力開発をめぐる現状」というのを整理するときに、「現在の職務に必要なため」ということが圧倒的に多いのです。ところが、いまの中高齢者受講奨励金の内容等を見ると、どちらかというと、「資格を取得する」、「一般教養を身に付ける」というほうが、非常に多いのです。
 それは何かというと、職業能力評価の問題が十分でなくて、資格ということが、ある面では職業能力評価の絶対的な要素になってしまうと思いますので、そこに多くの労働者が求めようとする、それを認定していく、といったことだろうと思います。
 結果的にいうと、各種学校、専修学校、教育産業全体に対する支援策としての問題ではないのかもしれませんが、そことの関係で問題が整理される恐れがないだろうかと思うわけです。
 さらに言えば、ホワイトカラー層の問題点はいま重要視されているからいいのですが、ブルーのそのような職務に役立つ自己啓発の問題というのは、非常に少ないのです。全体的に見ると、資格ではなくて、1の「現在の職務に必要な」というのは、技能検定ぐらいしかありませんから、それらの問題点をもう少し精査していく必要があるのではないだろうかと考えます。
 何を申し上げたいかというと、財源上の中高齢者受講奨励金のそもそもできた経過があるわけですから、その経過に基づいて今回の自己啓発に合わせるのは無理があるのではないかということが、まず第1点としてあるわけです。第2点は、中小企業において展開する自己啓発の問題は、従来のOJTではできないoff-JTの問題がたくさん出てきました。この点についても本人が行動を起こすわけですが、しかし企業のほうには管理目標なり目的なりがあると思いますので、管理目的なり目標に対して本人が行動を起こすといったことがあって然るべきではないだろうか。漠然として職務に役立つということの範囲を、単に自分勝手に決めるのではなく、生産との関係で目標管理、目的管理というのがあったうえで展開するという位置付けの問題があって然るべきではないか。したがって、単に個人に寄付することばかりではなく、企業を通して対応するということでも、決して間違いではないだろう。それも自己啓発の領域ではないだろうか。経営の安定の問題と雇用の安定の問題はある面では一致するわけですから、経営の安定に対して経営責任もあるだろうが自己責任もある、このような分類方法が出てくるのではないかと思うわけです。
 したがって、いまの時点での論議の対象は、前回の部会長報告のAが重点で、@の現在の職務に役立つということの考え方が、非常に少ないことと、職業評価の問題点について、まだまだ不十分なために、全体の構成が資格という状況の中に入っているのではないだろうかと感じるわけです。
 時間があれば、もっといろいろなことを申し上げたいのですが、いまのようなことの整理からすると、内容を精査するに当たり、もう一度、1月の時点での整理した問題を追いかけて、その中でどういう自己啓発に対する支援策がこうであるかと言ったほうがむしろ早いのではないだろうかと思います。

(部会長)
 ほかの委員の方はいかがですか。

(委員)
 例えば、資料No.2もそうなのですが、「自発的能力開発」という言葉と「自己啓発」という言葉がごっちゃになっていて、自己啓発だって企業内教育ですからね。たぶんここで言うのは、自分のリスクでやるときにどうするかというのがテーマだと思うのです。ですから、自己啓発自体は、極端なことを言うと、そういう意味でそんなのはテーマではない。ですから、自己啓発、つまり従来言うような企業内教育の中の自己啓発であれば、事業主を通してやっても当然いいわけで、事業主だってそれをやってメリットがある。それはいいのですが、ここで問題になっているのは、そうではなくて、自分のリスクで、もしかしたら今の仕事と関係があってもいいし、関係がなくてもいいのですが、個人の能力開発努力をどう考えるかです。これに対して一定のサポートをして、プロモーションする必要があるのかないのかということだと思います。私も議論をしていて、そこがいつもごっちゃになってしまうのです。自己啓発というのは前からあると思うので す。

(委員)
 自己主導型というのですね。いまも言われましたが、現在の中高年齢労働者等受講奨励金というものの枠の中で、この条件をどう変えましょうかということから答えを出そうというのなら、まだ簡単だと思うのです。もっと全体的に労働者個人に給付するということに雇用保険を使うのに、一体どういうことで考えるかということで問題が起きてきたのだと思います。やはりこれは全体から考えて、こういうケースなら出してもいい、こういうケースなら出すべきではないか、これなら出してほしいというものの、1つの集約をそれぞれの立場から理解して作り上げていくということになるのではないかと思うのですが。

(委員)
 だから先ほど言っているように、社会的な支援について、もう1回そこに戻らざるを得ないと言っているのです。私は柿崎さんとは、同じ労働側の中でも意見がちょっと違うかもしれません。できる限りそれぞれの委員としての意見と、労働側の意見についてはまとめる努力を我々は我々でしようと思っています。ただ、そういう意味では、先ほどご指摘されているような所について、もう1回議論してもいいと思うのです。

(委員)
 私が言っているのはもう少し広く問題を整理したうえで、そのことも含めながら、自発的な問題を包括すべきだということを議論にしているものです。

(委員)
 私の認識としては、通常の自己啓発というのは誘導された自己啓発ですので、あくまでもこれは企業内教育ですから。それとここで言う自発的な能力開発というのとごっちゃにしないほうがいいかと思っています。ですから、いわゆる自己啓発でしたら、これまでの自己啓発助成給付金をもう少し使いやすくしていけばいいのです。そうではなくて新しい局面というか、新しい状況は、日本の経済が変わるとか、いろいろ変わってくるときに、そういう自己啓発ではなくて、個人のリスクをかける、個人で頑張って勉強するということが、日本の経済、産業、もしかしたら回り回って企業の長期の成長に非常に重要なのだと考えるからやるのです。そこははっきり分けたほうがいいというのが私の意見です。

(委員)
 自己啓発という言葉をどのように解釈するか。我々企業にいる立場からいうと、自己啓発は企業内でやるのかというと、そこに限定されてしまうと、私自身は感覚が違うのです。ただ、自己啓発の中でも、確かに企業が援助する、ほかの企業がリードする部分もあります。同時に、その枠組みに入らない、文字どおり自己啓発というのも同じ自己啓発の言葉に入っていると思うのです。だから、自己啓発といったら企業がやるものだと言われると、ちょっと違うなと。そういう意味では自発的な能力開発というのと、自己啓発がどこが違うのかという言葉の定義の問題になるのかもわかりませんが、企業の中の実態において、自己啓発を企業が全部やるかという認識は、私自身はあまり持っていないのです。

(委員)
 私は企業がやるということではなくて、別に個人がやってもいいのです。企業といういろいろな目標とか、いろいろなことがあるわけですが、それに合わせてやるのが自己啓発だと私は思っています。それは短期とか長期とか、真っ白からグレーとか実際にはいろいろあります。では、例えば私が従業員で、全然現在の業務あるいは将来の業務ともかかわりがないような教育コースへ行きますがいいですか、と上司に言っても、イエスとは言ってくれないでしょうね。そういう意味なのです。

(委員)
 直接に役員ではなくても、いま考えている社員に必要な能力というのは、以前考えていた狭い範囲ではないのです。自分の職務に役立つ、例えば、技能だけを身に付けていていいのかというと、そうではなくて、それを活用するためには、いろいろなことに取り組んでいく姿勢、やる気、向かっていってやったときに継続できるとか、それが必要なのです。私は極論をこの前言ったのですが、お茶とかお花についても、福祉の一環で出さないときもあるのですが、企業によっては出す所があるのです、なぜかというと、新しいことに挑戦する意欲と、それを継続してやるということは、その人にとってとても大事なことなのだと。そのためにそれには出すという会社があるのです。その枠組みが私はよく分からないのです。だから、議論があったのかなと思ったのです。

(委員)
 いまおっしゃったことで非常に重要なことは、「お花をやってもいいぞ」ということを、企業が決めればできるということなのです。つまり、私の自己啓発はそういう意味です。ここでいう自主的というのは、企業が「このようにやったほうがいいよ」と違うことを言って、「やろうじゃないか」と。それを個人が考えてやったときにはリスクはどうしようかということなのです。

(委員)
 いまの全体の資料が自発的と言っているものの、自己啓発の資料がずっと載っているものですから、総括的に議論をしているものだと思っていたのですが、今野先生がおっしゃっているような内容で私も納得するし、むしろそのほうが正解だと思っているのです。つまり、自己啓発というのは、ある面で生産なり何なりの目標管理、それに対して企業から命令されることもあるし、個人がそのことに到達しないために努力しなければいけないということもあると思うのです。今回の問題は全く別の角度から自発的なという言葉が、いままで審議会の中でどこから出てきたのかと思っているわけですが、1月の時点で。財源なり必要性なりをもっと掘り下げようと宿題になっていました。この部分があるものだと思って、いま発言したのですが、よく見たら「自発」と「自己」というのは違うということをよく承知しましたので、その点では混乱させて申し訳ありません。ただ、1月の総合部会のときに部会長が報告して、この内容を精査し、財源上の問題を含めて展開していただけないだろうかということと、そのようなことのBを、つまり、いま議論されている内容の問題も費用をどのように復活するのか、社会的な負担の問題もあるのだということで、全部が包括されて部会長報告に出されたものを議論するものだろうかなと思っていたのですが。

(部会長)
 そういうことでもないのではないですか。委員がおっしゃったのは、広い枠の中でどう議論するかということを一応考え直したほうがいいということで、それと関係しているのですが、自己啓発なのか自発的能力開発なのかという問題がもう1つあるわけですよね。言葉の問題もちゃんと整理しておいたほうがよろしいですね。

(委員)
 そうすると、前回の1月の論点の@、Aというのは、ある面で整理されて、Bの本人のために行うということの内容の問題を、今日議論していると思うのです。

(部会長)
 一般教養とかそういうことですか。

(委員)
 そうです。

(部会長)
 それが自発的能力開発ということでもないのです。

(委員)
 それは違う変数でしょうね。

(委員)
 1月の分はある面で整理されて、今度は別の角度から論点をされているのでしょう。

(委員)
 そうでもないのではないですか。移動に役に立つ、そういう話になるわけですが、論理的にいうと、それは自分で勉強したいと言って、現在の職務に役に立つものならやってもいいわけですから。

(委員)
 私の理解では、お花やお茶といった教養的なものは、もう対象から外そうという理解だったと思うのです。

(委員)
 そういう議論があったことだけは事実です。

(委員)
 それは自己啓発でも自発的でもいいのですが、能力開発の内容を言っているので、自主的かどうかというのは内容ではなくて、誰がリスクを負うとか、誰が決めるのかという話で、ちょっと違うのです。

(委員)
 おっしゃった内容の問題も含めて1月の時点で整理されたのです。それでいい点で収めて、この問題点についても財源上おかしい、さらに拡大していく。この時点ではいいのですが、これを拡大する時にはもっと考え方を整理しなければ、ということだと思っていました。今回の論点の分は新たな視点での問題の捉え方をしたほうがいいような感じがします。つまり、中高齢者受講奨励金の範囲の問題を論じているような気がするのです。

(委員)
 私もこの前の議論のときにお花などということを言いましたが、あれはあそこで1回終わっているのです。私も終わっているのはわかっているのですが、説明によれば、国全体の水準のボトムアップというのが入ってきています。一方、いまの枠組みの中での支援なのです。そこの所は一緒に2つを考えるのだったら、さらにやっていかなければいけない。お茶、お花というのは企業が決めればいいではないか。いまやっているのは国とか行政などがどうやって支援していくかという話になっていきますから、そのときは全体の社会として考えて押さえておかないと違ってくると思います。

(部会長)
 あと10分ほどを使って、今度は何をやるかを決めていただきたいと思います。私の提案としては、1月に敷いた路線と繋がるように整理をして、今日のご議論をその中に位置付けて、さらに発展する議論をしていただいたらいいのではないかと思います。そのご議論と現在の仕組み、あるいは雇用保険で議論をしている議論と繋がるように最後に整理をする。

(事務局)
 雇用保険部会の日程もありますので、それへの説明の取り扱いについては部会長にご一任いただいて、部会長と相談させていただきたいと思います。

(部会長)
 今度何を議論していただくか、大体の方向性を決めて終わりにしたいと思います。

(委員)
 部会長が最初におっしゃった労働者の自発的能力開発は、大いにプロモーションするということについては、「異論はないですね」というお話でまとめられたから、私は異論はなくもないのです。

(委員)
 1月の文をそっくりそのまま読むと、「自主的な能力開発に取り組む労働者個人に対し、社会的、社会全体での支援のあり方について、その手法や財源を含めて、今後速やかに検討する」と。この文での自主的というのはあるのですが、自発的というのはなくて、1と2と分けて、その分野についても、その議論についてどうしようかということの、その文を言っていると思っていませんでしたので、ここの所を議論するのかなと思ったのです。
 しかし、中高年齢労働者等受講奨励金は、いまの状況はいいのだが、もっと広く物事を考えるときには、それぞれのあり方の点について考え方を整理しなければいけないということがあったと思うのです。その論点が内容も含めて精査されないで、いきなりこの文だけを論じるというのがいいのかどうかと思ったものですから。

(委員)
 私も少し議論を整理しておいたほうがいいなと思ったのです。委員から話があり、あるいは一部から話があるように、現在ある中高年労働者等受講奨励金の延長線上で論議するのではなくて、新たな制度を設けるべきではないかという問題意識ですから、私の捉え方はそれとはまた別に、全体を包含した形での制度ではないかという認識で議論に参加しているのです。そうなりますと、いろいろ論議されている話についてのボヤーッとしていた所についても、もう1回フィルターをかけて論議しておいたほうがいいのかと思います。
 名前ではいろいろありますが、確かに自己啓発というのは何となく一般的なイメージになっているというのであれば、この際、ちょっと違った新たな制度だという印象を与えるのであれば、皆さんのご了解を得られれば、自発的能力開発というのを前面に出していくことでもいいでしょうし、私どもの場合は「個人主導の」という、個人がリスクを負うという言葉でやっていますので、その辺についても、もう少し論議されたほうがいいのではないかという思いはしますね。

(委員)
 全く賛成です。私はこれを見させていただいたとき、こう感じたのです。例えば、健康保険でいうと、病気になった後、いろいろやるのが従来だったのですが、だんだん事前的に健康維持をするために、要するに病気以前にやるという方向へ企業の中の健康保険も重点が移行してきます。もちろん病気になったあとの対策も依然として重要ですが、むしろ病気になる前なのです。そういう意味では、今度のこの考え方も失業してとか、中高年になるというのも、結局定年後などということを考えたのが従来だったのに比べると、いわば自分の力をちゃんとプロとして世の中に通用するように本人も考えなさいと。その中で企業にあまりどっぷり漬っていると企業に制約を受けるから、それを超えたものとして、例えば、国が支援をするという、例えば、失業というか、雇用が途絶えることに対する対策、あるいは定年後の対策、中高年の対策ではなくて、事前にその人間の能力開発を、意欲を持っている者に対していかにして支援していくか、というように発想を変えるのがベースにあるのかなと思ったのです。そういう形なら従来の発想から1つ考え方を変えた形で展開できるから、よく言われる終身雇用とか、集団主義などからの脱皮、あるいは企業に閉じ込められている個人の能力、それから超えたものに対する支援、ということで国がやる意味が出てくる、という感じがしていたのです。

(委員)
 私も、全く新しい発想で新たな制度を作ろうとしているのだと思っていましたので、自発的能力開発というのはきちんと定義をして、その中にはもちろんいままで自己啓発と言っていたものも一部結果として入るものもあるのだろうと思うのです。そういう個人を主体にした能力の開発であって、そのためにはいまの制度をただ延長するのではなく、いままでの給付金制度を抜本的に見直しというのは、新たなものを作るためには、いままでの中で要らないものも整理してという意味もあるのではないかと思ったのです。その中に結果として、いまの中高年齢労働者等受講奨励金などの趣旨も入ってくるものもあるのでしょうが、あくまで、新たな発想の中で、新たな枠組みの中にこれも吸収していくといった考え方なのではないかと思うのです。

(委員)
 こういうので総合的な自発的能力開発助成金システムというのを考えています。そうなると、まず個人に長期訓練計画を出していただいて、それを全部合わせて、その場合は企業がやるのは自己啓発でもいいし、中高年でもいいのかもしれません。私が言いたいのは、焦点は個人なのです。

(委員)
 やはりいちばん大切なのは、いままでの我々の訓練のあり方は、基本的には長期勤続をベースにした企業内ジョブ・トレーニングが中心です。それは中小と大企業との間で濃淡があったとしても。そういうことだけで本当にいいのだろうかというのが、いま時代の要請として出てきたわけです。いまの中心的な部分というのは、事業主に対する助成というものは、十分であるかないかは別にして、それなりに仕組みとしてはそのようなカバーアップがあるわけです。
 しかし、それは基本的には企業が求めるスキルアップだとか、企業が求めるレベルアップで、場合によってはお花があるかもしれないし、何があるかわかりません。そういう企業中心の支援について、少し抜本的に見直そうではないか。そのときに40歳以上については30歳以上にした。しかし、30歳から40歳の所に要件があまりにもきついのではないかという議論までしたわけです。そして最終的なまとめについて、財源問題も出てくるわけですから、社会全体のあり方を含めて次回のステージで検討しようというので、いまのステージに入っているわけですから、我々のほうとしては、全体的な見直しも1つのテーブルであると思うのです。そこだけでやっていたのでは間に合わないだろう。むしろ我々が要求している個人への具体的な支援の拡充については、この中で早めに一定の方向性は出していただかなければいけないのではないか、と私自身は思っていたものですから、全体の枠組みをもう1回見直して、そして新しい枠組みの中でいままでのものについては整理統合、スクラップ・アンド・ビルドするという、あとわずか2、3カ月の中でそこまで持っていくことができるのだろうかと思いましたので、私自身はあくまでも前回の議論を受けての個人の支援の策を、どのようにアップできるのか、そこが中心的テーマだと、今の今まで思っていたものですから。
 そういう意味で、これからの議論について、整理をしていただいて、その結果、例えば、委員がご指摘されているような枠組みで、もう1回議論してもいいのなら、私はそれで構わないと思います。それは仮に来年の通常国会に結果として間に合わないことがあったにしても、むしろもっと大掛かりなことになろうかと思いますので、それはそれで構わないと思います。

(部会長)
 事務局のほうはどうですか。

(事務局)
 今日いろいろお話がありましたが、もう少し我々の問題意識も含めて、今日のご議論を整理して、もう少し具体的な問題意識がはっきり出る形で整理して、次回までに用意させていただいて、もう一度ご議論をいただければと思っています。

(部会長)
 具体的にいうと、大きく構えて1月に部会報告を出したときの路線を確認して、その上に乗せる形で議論をする。他方では、非常に急いでいる保険部会との整合性を図るということも、その中で位置付けるというように次回整理をして、ご議論をいただくということでよろしいですか。私は1月との整合性ということを最初に思ったものですから、事務局は2月というので、とてもできないと思ったのです。しかし、皆さんが、それはそうだとしても、事務的にできることは協力しようと言ってくださるのであれば、一方では総合的な議論をして、他方では保険のほうとの詰め合わせもやるということもやってみるということを、皆さんが了解してくだされば、それは結構です。

(事務局)
 ご了解してくださるのであれば、部会長がおっしゃった点に沿って、論点を次回までに用意させていただいて、ご議論いただけるようにしたいと思います。

(部会長)
 それでは、やってみることにいたしましょう。いまのようなことで次回ご議論を続けていただくことにしたいと思います。次回は10月16日(10時〜12時)でございます。それでは、今日はこれで終わりにいたします。どうもありがとうございました。



(注)  本文中に記述されている資料については多量なため省略しております。資料についての詳細及び問い合せについては、職業能力開発局能力開発課 03-3593-1211(代)までお願いします。



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