中央職業能力開発審議会第70回総括部会議事録
労働省職業能力開発局能力開発課
日時 平成9年7月22日(火)13:00〜15:00
場所労働省特別会議室
議題 (1) 個人の教育訓練に係る費用の軽減のための支援制度について
(2) その他
配付資料 No.1 中央職業能力開発審議会総括部会長報告(平成9年1月16日)(抄)
No.2 自己啓発支援施策について
No.3 諸外国及び日本における自己啓発支援
No.4 個人の教育訓練に係る費用の軽減のための支援に関する報告等における言及
出席委員
学識経験者  尾高部会長、今野委員、早川委員
労働者代表 柿崎委員、久川委員
事業主代表 岩口委員、斉藤委員


議題(1) 個人の教育訓練に係る費用の軽減のための支援制度について

(部会長)
 本日の議題は「個人の教育訓練にかかわる費用の軽減のための支援制度」ということになっております。これについて、今日はご自由にご討議をいただきまして、それをもとにして、今後この課題をどのように扱っていくかということについて、おおよそのメドというか、あるいは企画といいますか、スケジュールを作りたいというのが、今日の主な仕事でございます。事務局のほうで、いくつか関連の資料をご用意いただいておりますので、これまでの経緯とか、あるいは現行施策とか、諸外国の状況を含めてご説明いただき、それに質疑応答、意見交換という形で進めたいと思います。よろしいでしょうか。では、事務局のほうからお願いいたします。

(事務局)
 (資料No.1〜No.3について説明)

(部会長)
 ご質問等ございましたら、お願いいたします。どうぞ。

(委 員)
 事務局にお聞きしたいのですが、中高年齢労働者等受講奨励金と、自己啓発助成給付金を使っている実績が分かりましたら、お願いいたします。

(事務局)
 自己啓発助成給付金と、中高年齢労働者等受講奨励金の実績を申し上げます。いずれも平成8年度ですが、まず自己啓発助成給付金の支給実績ですが、5億4,200万円程度です。中高年齢労働者等受講奨励金の支給実績ですが、12億4,000万円です。

(委 員)
 件数にして、どのぐらいですか。

(事務局)
 まず、自己啓発助成給付金のほうですが、対象事業所が4,376件、対象人員が5万3,079人でございます。中高年齢労働者等受講奨励金のほうですが、対象人員が4万8,319人となっております。いずれも平成8年度の数字です。

(委 員)
 これが使用されたということですね。使ったということですね。

(事務局)
 そうです。

(部会長)
 いろいろな制度がたくさんありますね。これらについて、いまご質問のような、どういうふうに活用されているとか、どのぐらい効果が上がっているとか、そういう資料は簡単に揃えられますか。つまり、どのぐらい実績が上がっていて、どのぐらい活用されていて、喜ばれているかとか、どういう問題点があるのかとか、そういうことは、多分委員の皆様にはすぐにはお分かりにならないので、もしそういう資料が用意できれば、すぐにではなくても、場合によっては回覧するのでも拝見するといいのではないかと思います。いかがですか。
 他に何かございますか。いろいろあるから、分からないこともたくさんあるのではないでしょうか。

(委 員)
 まさに、部会長がおっしゃったように、いろいろな仕組みが支援されていて、随分仕組みがあるものだなというのが印象なのです。そして、実際にどのぐらい使われているかを見たいものですから。

(部会長)
 そうですね。金額を伺っただけですと、よく分からないですね。

(委 員)
 自己啓発については、これまでの審議会でいろいろ議論されているのですが、いまの制度の仕組みの中に、例えば財形にしろ教育ローンにしろ、いろいろな点については学卒の人が中心なのです。したがって、その年齢といいますか、階層といいますか、別に物事を整理すると、中高年齢労働者等受講奨励金と財形なり他の、例えばいろいろな面での資金援助の問題も含めて、区別すると比較的分かりやすいのです。今日これから論じるのは、どちらかというと在職労働者を中心とした考え方を整理するということならば、いまのいろいろな面での自己啓発に対する参考資料に出てくるのが、何というか、消えてしまうのではないかと思うわけです。その辺のところからスタートしたほうが分かりやすいような気がするのです。諸外国の例の参考の分については、どちらかというと在職労働者を中心とした制度、仕組みでありますから、それらのこととの関連性をもう少し整理したほうが、論議しやすいのではないかと思います。

(部会長)
 ただいま、いまご意見とご提案があったと理解いたしますが、いかがでしょうか。要するに、在職労働者を中心にしたシステムに議論を限ったほうがいいのではないかと。その点、何かご意見はありますか。
 それを考えている間に、いまのご指摘について、たくさんご説明いただいた中で、在職労働者に対象を限るとどれが残るかということは、すぐにお分かりになりますか。

(事務局)
 一応、今回は初回ということもございましたので、幅広に説明させていただきましたが、いまお話がございましたように、特に今後私どもがターゲットとして考えております在職者ということを考えた場合につきましては、最初から6頁までの制度は、一応在職者を考えておりますが、特に融資制度につきましても、これは実績的に申しますと、もう、ほとんどが新規の学卒者が進学する際に使われているものでして、そういう意味では、あまり在職者を念頭に置いていない。一応、実際には活用も可能であるということですが、実績的にはほとんどないと思っております。

(部会長)
 すると、7頁から後は、進学のためのローンと考えてよろしいですか。

(事務局)
 そういうことです。

(部会長)
 12頁の「財産形成貯蓄活用給付金」というのもそうですか。これは雇用促進事業団がかかわっていますね。これも進学者のためですか。

(事務局)
 これは、この間つくったところなのです。在職者用です。

(部会長)
 「技能者育成資金」というのはどうですか。

(事務局)
 これも、大体は新たに学卒、中学ないし高校を卒業して職業訓練を受けた方が大多数だと思います。途中で辞めて職業能力開発施設に入るという方も、もちろん対象になり得るわけですが、数的に言いますと、それは少ないということです。

(委 員)
 育英会に替わるものだと考えていただいたほうが早いと思います。

(部会長)
 つまり、文部省系の学校ではなくても、こういうものがもらえるということですね。
 そうすると、大雑把に言うと6頁までが該当する。12頁の例外が1つあって、進学融資制度についても、原則としては在職者でも使えないことはないかもしれないが、実績はないと理解してよろしいですね。

(事務局)
 そういうことです。

(部会長)
 ちなみに、15頁の「技能者育成資金」というのは、どこがやっている、どういう種類のお金ですか。育英会ではないわけですね。

(事務局)
 これは、雇用促進事業団が貸付けるというものです。

(部会長)
 というご説明がありましたので、いまのご提案に従うとすると、最初の6頁プラス12頁辺りをシステムとしての対象にすれば、差し当たりはいいということですか。

(事務局)
 はい。

(部会長)
 いまのご提案とご説明を含めて、何かご意見はございますか。

(委 員)
 ただいまの整理の仕方もあるとは思うのですが、もう1つ、いまここに自己啓発を援助するための資金が100円あった場合に、どうやって配分しようかという問題で考えると、いま排除されたものは全部在職者か否かということもありますが、もう1つ、非常に長期に払うものという感じなのです。ですから、育英会なんかはそうですが、それに対応する技能者育成資金というのはそうですが、2年間なら2年間ずっと払い続けるとか、いわゆる長期のものですね。前のほうは、比較的短期の、非常にテンポラリーなものですね。一過性のものです。ですから、それによって多分狙いと資金の量も違うし、借りるほうも、かなり目的が違うのではないかと思います。それが1つの整理の仕方です。
 もう1つは、本人に直接払うものと、事業主経由というものがあって、これで4パターンぐらいが出来上がるわけです。これからは、そのように整理をして考えたほうがいいかなと思ったのです。長期のものも、育英会もそうなのですが、例えば技能者育成資金も、これからは、もしかしたら会社に働いてもう一度大学に入り直すとかという人が増えれば、在職者だって当然対象になると考えますと、在職者とそうでない人というよりは、長期と短期で払うのと、本人通しと事業主経由ということで、少し全体を整理して、それで、それぞれについて、もらうほうと出すほうの狙いが違っているみたいなことを少し考えながら、全体を整理したほうがいいかなと思ったのです。

(部会長)
 ただいまのご発言を考えると、3通りの分類の仕方が出来て、3通りいろいろ掛け合わせると8つありますね。在職者か進学者かという分け方が1つ。長期か短期か、もう1つは直接か間接か。その8通りでも、実際にはないものがあったりして、8つはないかもしれません。他に何かご意見はありますか。
 どうなのでしょうね。実際の活用状況と、どのぐらいこういうものを事業主の方々、働いている方々、これから働こうとしている若い人たちが知っているのでしょうね。PRの状況も、1つ気になるところではないかと思います。他にご意見はありませんか。

(委 員)
 やはり、どれがどこに位置するのか、大変いろいろあって分からないのです。ですから、いまやっているもののカテゴリーといいますか、そうなると、やはり在職者か新卒か、長期・短期、本人に直接行くのか事業主のほうに全体として行くのか、その辺の区別を、この枠でつくると簡単に分類できるのではないでしょうか。いますぐというわけではないですが、そういう見方からして、まず在職者と新卒、学生といいますか若い人、求職者。そういったものでの分類ぐらいで考えると、少なくとも2つに分かれますね。さきほどおっしゃったのは、まず在職者中心で検討してみたらどうかというご意見だろうと思うのです。いまから整理し直すといってもなかなか出来ないから、やれるところから少し分類して議論していったらいかがでしょうか。

(事務局)
 簡単に申しますと、直接受講者本人に行くというのは、最初にご説明しました中高年齢労働者等受講奨励金だけですが、実質的にいろいろな制度、現在やっている助成金制度等は雇用保険の特別会計の資金でやっておりますので、原則的には事業主が援助する場合について、さらにそれを国が援助するという仕組みが大多数です。いま口頭で申し上げただけでは分かりにくい点もあろうかと思いますので、この点につきましては次回までに、もう少し整理した形でお示ししたいと思います。

(部会長)
 多分、我々が仮に審議会に提言するとして、そういう状況を考えたとすると、実際に雇用促進事業団が関係していらっしゃるプログラムが中心になるのだろうと思います。ですから、そういうことでは、おそらく結論的には先ほどのご発言の内容に近付いていくとは思います。提言を仮に考えるとして、それを作るための資料としては、少し広く考えたほうがいいかも分かりませんね。
 1つは、とにかく私たちとしては現状がどうなっているかを正しく認識するという仕事があるだろうと思います。それを1つの情報にして、では私たちは何をするか、つまり、お金の負担を個人の自己啓発等々の資金がかかるわけですが、その負担をどのように軽減するかということを考える場合に、どういう哲学というか方針でいくのか、そういうことを考えるということがもう1つあると思います。その2つを今後どのように組み合わせて議論していただくかということを日程的に詰めるということが、もう1つの作業かと思います。

(委 員)
 部会長のご指摘からはずれるかもしれませんが、今日の会合については、結局いまは雇用保険三事業ですが、それが事業主のみの負担で自己啓発をしているということで、そのことについて昨年末、1月で問題提起になっているわけです。能力開発の中心は自己啓発でありますが、自己啓発ということは、自己責任原則であるという大きな流れがあると思うのです。今日の問題について、タイムスケジュールなのですが、支援のあり方について、今日の後どういう形であるかということです。ということは、この問題について、私どもとしてもそういうものをまとめて発表したいと思っているわけです。今後の大まかなこと、あとは、いつごろどうなって、どうなっていくかということを若干教えていただきたいということです。

(部会長)
 私も必ずしもすべてが分かっているわけではないのですが、雇用保険制度の見直しという議論もございまして、それと連動しないといけないということが1つあります。事務局から何かご説明ありますか。

(事務局)
 今後のスケジュールというお話がありましたので、これは、この場でいろいろ皆様からご意見をいただくことになりますが、一応事務局といたしましては、今日いろいろご意見をいただいたものを次回、一応9月上旬ぐらいを考えておりますが、その時までに事務局のほうから次回には論点メモのようなものを出させていただきまして、それで、もう少し詰めた議論をしていただきたいと思っております。スケジュール的に申しますと、この問題につきまして、特に財源的な問題につきまして、中央職業安定審議会の雇用保険部会のほうでも議論がすでに始まっております。
 雇用保険部会のほうは一応今年の大体11月ぐらいを目途に取りまとめをすると聞いております。こちらのほうの議論も、私どもとしましては、こちらの部会の考え方を前提にしまして、職安審のほうではその財源的な問題をどうするかという議論になると思いますので、できましたら、それ以前に一応の今後の支援制度のあり方につきましての考え方をおまとめいただければ、大変ありがたいと考えているところです。

(委 員)
 先ほどのカテゴリーを考えて、いまあるのは、この部分はありますというようなことがまず分かった上で、新しい基本計画に沿った自己啓発を推進、支援するについて、今度はどの部分を新しく主張して進めていったらいいかということの共通理解が出来ればいいわけですか。そこが分からないのですが。

(委 員)
 恐縮ですが、資料No.1で、部会長が1月16日に出しましたものの時の論議というのは中段にありまして、「個人が主体的に行う職業能力開発の範囲は様々であるが」ということで、1、2、もう1つあったのですね。1が「労働者の現在職務に役立つ職業能力開発」、2が「出向、再就職等円滑な労働移動のため」、3が全く本人の、全く自分の範囲の教養を身につけたり、このようなことの範囲があったと思います。これは3つに分けたのですが、この部分がいまの制度の中で財源上の問題があるわけですから、雇用三事業から持ってこざるを得ないということで、中高年齢労働者等受講奨励金のほうに1と2を付けてしまって、それで問題を整理したわけです。時間の問題も含めて、1は、おそらく企業の負担と個人の負担がある。そこに対して、どのような支援策が講じられるのかという基本論があると思います。
 2の場合は、離職をするという前提、または離職しているという前提ですから、就業に結び付けるような能力開発で、国と個人の負担の問題がその中に出てくるのではないか。3の分についてはここでは網羅されており ませんが、雇用三事業では無理な話ですから、その3点については、以後何かの方法で考えていくとしても、その対策を講じなければいけないだろうということです。このように3つがあるのです。3つがそれぞれバラバラに展開するのではなく、3つがそれぞれ自己啓発であると思うのです。 特に1の場合には、中小企業がある面では雇用管理なり管理目標を定めて、労働者がそれに到達するような方法を用意しなければいけない。このようなことも含めながら、自己啓発が単に自分のやるための問題ではなく、生産性なり企業でのこのような目標なり目的に向かって、個人個人が努力することも自己啓発ではないか。このようなことで整理をされたと思うのです。2は、就業するためには就業先の条件の問題に対して、自分の職業能力の格差をどのように埋めていくのか、その辺のところを積極的に移動するものと、消極的に移動するものが出てくるのではないか。
 このようなことで整理されたわけですから、これらの問題点を通して、1と2の部分で、現行制度の中高年齢労働者等受講奨励金が対応するわけですが、おそらく、いま事務局からもお話があったのですが、中高年齢労働者等受講奨励金についても、年々伸びているのだと思うのです。伸びているのですが、一方移転を促進するような、前もって分かっている人にしか出さないわけですから、果たして会社の中でそのようなことでできるだろうかと非常に不安定な要素もあるわけです。このようなことを総じて整理することが必要ではないか。したがって、自己啓発イコール労働者が勝手に勉強するというのは自己啓発ではなく、ある目標が設定されて、その目標に到達する、その過程の問題も含めて自己啓発として整理するほうが適切ではないだろうかと考えるところです。前の審議会の議論では、そのようなことで1、2、3と分けたと、考え方を整理しているつもりなのです。
 したがって、いまからやる自己啓発の問題は、ここには出ていない3のことに限定するのではなく、1も2もやってほしいということです。特に中小企業等の中における自己啓発、つまり管理目標に対する個人労働者が、その目標設定に対してどのように啓発していくのかということも、大切な要素になっているのではないかと考えるわけです。OJTから脱してoff−JTに行った時の負担の状況の問題なり何かということも考えて整理しなければいけないだろうと思うわけです。

(部会長)
 ありがとうございました。記憶を新たにしていただきました。いまのご意見については何かコメント等ございますか。

(委 員)
 おっしゃるとおりです。個人主導といった時と、事業展開、雇用管理の問題に絡むところとの、その区別といいますか、それはどう考えるべきなのでしょうか。

(委 員)
 個人主導という問題は、例えばいまは仮に3つの要素に分けているわけですから、1の場合には、これは企業の関係の管理目標、生産目標みたいなものがありますね。そういうものに対して、ある面では個人がどのように辿っていって目標に到達するかというための自己啓発です。したがって、これは個人主導とは言わないで、1の場合には企業主導ですね。ある面では企業主導です。2、3になってくると個人主導ですね。どこに就職するか。ただし、自分が一生懸命勉強しても就職するとは限らないわけです。労働市場があって、経営者がいらっしゃって、そこで採用するかしないかの判定をするわけですが、そこの条件を満たさない場合には、労働者が雇用を確保することが出来ないわけです。それは、アメリカと違って日本の場合には、アメリカの場合には具体的に技能レベルが明確に示されて、それに対して到達した者を採用するとやっているわけですが、日本の場合には、まだ今世紀の間にはそんなことが起こるだろうかと率直に感じるところです。
 したがって、就業先を見付けて、その就業先に対して自分の職業能力をどのように付加して到達して、その雇用に結び付けるかということが今日的には課題であるし、当分の間はそのように移行するのではないかと思うわけです。
 したがって、自己の責任となってくると、2と3が自己の責任になってきて、1の分は、ある面では企業との関係を整理しておかなければ、なかなか受講の機会もないし、その対策も出来ないのではないかと考えるところです。

(委 員)
 よく分かりました。資料No.1の大きいイの次に「個人主導の職業能力開発の推進」といった時に、いまの分類でいきますと、@これはやはり個人主導の中には入っているが、企業主導型であろうと。Aは出向とか、そういった労働移動ということになれば、やはり企業との関係を抜きにはいかないので、個人及び企業との両方のかかわり合いですね。Bといいますか、おっしゃったとおり、議論の中で自分の質向上、個人的な質向上や何かの部分とか、人格形成とか、そういったものに関しては、これはあくまで個人主導だと。そのような含みで、ここの基本的な考え方を見ていくし、今後の助成の仕方や整理の仕方も考えるということでよろしいのかなと理解するのです。

(委 員)
 前段の所で確認したいのですが、自己啓発助成給付金の所で、4頁で見ますと、職業訓練の受講コースが、それぞれ対象職業訓練、職業としてのそれぞれの名前は出ておりませんが、これは、こういうコースがあるということで限定されて決まっているわけでしょうか。

(事務局)
 これは、それぞれの企業が自ら訓練を行ったり、あるいは、どこか他の所でやっている訓練に人員を派遣したりと、このような形になるわけです。基本的には、事業内職業能力開発計画といって、それぞれ自らの従業員に「こういう教育をしなければいけない」という計画を作って、その計画に当てはまるような訓練を探したり、あるいは自らの所で実施したりして、その場合の経費を助成するという内容になっているわけです。したがいまして、実際に計画の中でやられることになっている訓練内容が、中身的に見てどれに該当するのか。その場合は、例えばAに該当する配置転換等によって、新たな職業に就かせるための訓練であるということであれば、35歳からは大丈夫です。このようなことになっております。

(委 員)
 実態的に、それに合うような訓練というのはどういうものがあるということで推定されているのでしょうか。前頁のほうには、中高年齢労働者等受講奨励金の中では、「指定教育訓練とは」という形で、いくつか例が挙がっていますね。こんな形で指定されるのか、それとも。

(事務局)
 中高年齢労働者等受講奨励金のほうは、労働大臣の指定講座の受講を対象とするわけですが、自己啓発助成給付金のほうは特に講座指定をするということはなく、自分の所で必要である訓練をやればいいということです。

(委 員)
 それは、企業外ということでもですね。

(事務局)
 はい。

(委 員)
 そうしますと、先ほどのことも絡んでくると思うのですが、これは一種事業主が対象となるということなのですが、もともと主体としては雇用労働者の申し出によりということがあります。ですから、雇用労働者が申し出て、事業主のほうが許可したもののみが出来る形ですね。圧倒的に事業主の裁量のほうが大きいのか、それとも雇用労働者、要するに本人が申し出て「こういうものをやりたい」というものを持ち出してきて、それによって事業主のほうがある程度分かったというところなのか制度的にどのような形で整理をするのですか。

(事務局)
 こちらのほうは生涯能力開発給付金という制度の中の自己啓発助成給付金ということになっておりまして、基本的には、やはり事業主が事業内職業能力開発計画を作って、どのように訓練していかなければいけないかという大きな流れの中にあるわけです。この場合は、自己啓発ということは、個人が発意するということが当然あるわけですので、申し出てきた訓練が、訓練計画の中身に沿っていれば、それは問題がないということになるわけです。

(委 員)
 でも、それを認知するのは事業主ですが、いざ給付金をやる時に判定する一番の主体は、どうなるのでしょうか。

(事務局)
 これは事業主が最終的に、例えば有給訓練休暇を付与する場合ですと、有給訓練休暇を付与したという事実があります。それ以外の場合は、例えばどこの講座を受講するのに、その受講料を事業主が払った、そういう事実がまず確認できるということがあります。その中身の講座が、例えば全く教養的なものではなく、要するに、ここに分類されているようなAからEというような分類の中で、これに該当するというような申請が事業主のほうから出てくるわけです。それを審査して、内容的に妥当であるということであれば支給する、こういうことになります。

(部会長)
 具体的な順序としては、まずプランを作って、それを告知して、それを見た従業員が応募してきて、それを受け付けて実行した時に、それを今度は都道府県に取り継いで、それをまた審査してOKならお払いする、そういうことですね。

(部会長)
 ちなみに、いまご質問があった紙の下半分に、「賃金の支給限度額」ということが書いてありますね。最高はいくらになるのですか。例えば200日で、1日当たり1万660円だから、200万円ぐらいまで支給できるのですか。

(事務局)
 そういうことになります。助成の率が掛かっていますが、助成率を掛けた額がこの1万円ぐらいの額ですと、大体そのような計算になります。

(部会長)
 この場合には、毎日行かなくてもいいのですね。

(事務局)
 継続というのは要件にはなっておりません。また、いわゆる通常の労働時間内に終わるものであるということになっております。

(委 員)
 実際の例があるので説明したいのですが、個人が事業主が教育訓練させるというプログラムの判断の中で申し出て、事業主のほうが「そうではない。こういう制度があるし、該当すると思う」と足並みが揃わない場合は、どうしても、この制度そのものが生きてこないことになりますね。事業主が主体としてはそこを判断すると、いうことの気がします。

(事務局)
 この制度自体は、事業主に対する助成制度でありまして、事業主が有給訓練休暇を付与して賃金を払ったり、あるいは受講料を払った場合に、事業主に対して支援をするという内容になっておりますので、この制度に限って申し上げれば、事業主の考え方がある程度大きいと言えると思います。中高年齢者受講奨励金のほうは、どちらかというと個人の判断が優先する制度でありまして、個人が申請をして指定講座を受講した場合には、事業主の証明等が要りますが、個人が給付を受けられるという内容になっております。

(委 員)
 事業主のみの負担による雇用保険三事業の枠組、能開事業で行ってきたところであるが、労働者が自発的に能力開発を支援するとすれば、その費用負担のあり方、これが大きな問題なのですが、そこで資料No.4の個人の教育訓練にかかる費用の軽減のための支援に関する報告等における言及ということで、言及された抄録があります。これを説明していただけますか。

(部会長)
 そうですね。よろしいでしょうか。では、時間もないことですので、資料No.4をご説明いただけますか。

(事務局)
 (資料No.4について説明)

(部会長)
 いかがでしょうか。少なくとも平成7年12月以来はっきり謳われてきていることで、まだ検討課題として残っているということですね。

(事務局)
 いちばん最後の、経済構造の変革に対応する行動計画で、このように閣議決定されておりまして、これに基づきまして本日この部会でもご審議をお願いし、また、先ほどご紹介いたしましたように、中央職業安定審議会の雇用保険部会におきましても、テーマとしてはこれだけではなく介護休業制度等の問題もあるのですが、自己啓発、自主的な能力開発という問題につきまして、特に財源問題を中心に、雇用保険部会のほうでもご議論いただいているというのが現状です。

(部会長)
 いちばん最後の閣議決定は、多分ここの審議会での議論も踏まえて、こういうことが決められたのでしょうね。

(事務局)
 はい、そういうことでございます。

(部会長)
 連動しているのだと思います。私たちに非常に深くかかわるいろいろなプログラムの中では、先ほどたくさんプログラムをご紹介いただいたのですが、個人主導ということで、従業員が自らの主体性で何かやろうと思った時にかかわってくるのは、多分いちばん最初の中高年労働者等受講奨励金だけですね。あとは事業主が対象ですね。

(事務局)
 先ほど来若干お話も出ていますように、特にこの中高年齢受講奨励金は労働者本人に行くという形になっておりますが、一般論として自己啓発なり自主的な能力開発を、どこまで援助なり支援するかという問題もあります。また、財源的に言いまして、いまの雇用保険制度の能力開発事業としてやっていく場合に、どの辺に限界があるのか、事業主負担部分だけでやるのか、ある程度労使の財源負担のもとにやるのか、というような議論も出てくるのではなかろうかと思っております。

(部会長)
 全く新しいプログラムを作るということは考えられますか。

(事務局)
 それは、もちろん考えられます。ですから、その辺は、できましたら幅広にご検討いただければと思います。

(委 員)
 個人主導というのは、ここにいろいろ書かれていますように、業務上のものであっても、個人が自主的に自分の意志でやるということですか。

(事務局)
 はい。いまおっしゃられたような意味で使っております。

(委 員)
 いまは基本的にはOJTでやった部分の限界が発生して、off−JTに対して一定の支援策を講じる。もともと研修なり啓発というのは、本人にやる気がなければ、いくら「やれ」と言っても出来ないわけですから、そこの環境を整備してやるということです。OJTの延長上に立つoff−JTであるということも、資料No.1では論じられたわけですね。中小企業等においては、むしろ、そのようなことがなければ追い付いていかれないということで、OJTの限界の中でoff−JT、自己啓発の問題が論じられたという意味もあるわけです。
 ヨーロッパでも何でも、無制限に解放するというのは、そんなにないのではないかと思うのです。在職労働者に対して、有給教育休暇制度があるのですが、年間何%とか、一定の枠がありますね。したがって、1は比較的しやすいですが、3の部分でこられるとなると、おそらく労使がある面で金を出さなければ、それは追い付いていかないというのは当たり前だったのではないでしょうか。1の分についてだけ限定すれば、それは、いまの雇用三事業で網羅することは可能だと思うのです。
 そのような問題からすると、財形上から追っかけていくというよりも、一回制度の仕組みの問題を論じて、その財源をどこから捻出するかということだろうと思うのです。雇用三事業からやることに対して、限界が発生しているという前提で、こういう議論がなされているのだろうと思うという気がするのです。

(委 員)
 もう1つ整理しなければいけないのは、資料No.4の2頁目に、個人主導の職業能力開発の推進ということがあるのですが、今後においては離転職者も含め、広く労働者1人1人が様々な機会をとらえ、自らの意志で主体的に職業能力開発に取り組むことが出来ると書いてあることの意味を、勝手に考えるわけにはいかないので、もっと実際の内容の枠組みから、こういうことを個人主導の能力開発だとしましょう、ということを決めないといけないのではないかと思うのです。その点はどうでしょうか。

(委 員)
 それは、2の所で、消極的に配置転換なり出向なり、そして離職する人がいらっしゃる半面、積極的に自分の職業能力を高めて、いまの所では満足しない、もっと積極的に別なほうに移動しようと。さらに上に行こうという時に、そういう文章を使ったのではないでしょうか。

(委 員)
 それは分かります。それで先ほどの1、2で、1は逆に言うと、個人主導というよりも、個人もそれに賛成して納得して進んで加わるというのが1で、2が、ちょうどその両方の事業主と個人とのかかわり合いみたいな場所になってくるのです。3は全く個人的な主導の話で、3は除いて、2の所辺りが、いちばん具体的な内容としては対象になっていくという感じがするのです。ポイントが狂っているのかもしれないですが、そういう話も少し。

(部会長)
 そうすると、我々の課題としては、具体的に1つは現状のシステムの認識を正しくするということがあって、それから、ではこれをどのように前進するかという基本方針というか、基本哲学を決めるということがあって、もう1つは、現行の枠内でどういうプログラムを考えていくかという3つがあるわけです。それぞれ関連していますが、それをどのようにやっていきましょうか。

(事務局)
 いま部会長から整理していただきましたが、よろしければ、次回までに、今日は総花的に全体の資料をご紹介いたしましたが、もう少し整理した形で次回までに用意いたしまして、それと併せまして議論に進みますように、論点を事務的に整理させていただきまして、次回にそれをご覧いただきながら、それぞれの点についてご議論いただくという形でいかがかと思います。どうでしょうか。

(部会長)
 いまご提案がありましたが、いかがでしょうか。仮に11月ごろ、11月といっても上旬なのか下旬なのか知りませんが、11月ごろに一応の提言なり結論なりを出すということであるとすると、こういうふうにやってほしいというご注文とか、ご意見とかがあるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。もし、そういうことがおありでしたら、いま言っておいていただいたほうがよろしいかと思います。特に前半、仕組みがどのようになっていて、活用状況といいますか、具体的にもしできたら、そういうことも。基本的には、これからどうするかという哲学とか、あるいは、どこまでカバーするとか、あるいは個人主導型とはどういうことかとか、そういう議論が多分いちばん大事だと思うのです。そういうことを中心にまず論点を整理していただいたらどうかと思います。それをやってから、もしまだ時間があったら、現在の仕組みの活用状況も、もしできたら教えていただきたいと思います。そういうものを拝見して、議論をするということかと思います。
 進め方について、何かご意見はありませんか。

(事務局)
 分かりました。いまいろいろお話があった点につきましては、私どものほうでもう少し整理いたしまして、できるだけご議論が出来るような形で整理したいと思います。

(委 員)
 文章上のことなのですが、資料No.2になっている所、いちばん頭の所に、「この制度は」ということで、概略的な説明なのですが、「定年退職後の再就職、労働移動の円滑等」ということが入っているのですが、一応前提となりますのは、これが前提ということで、制度そのものが動いているのならよろしいのですが、現行の、あるいは現在の職業能力の開発、指定教育訓練に書いてあるような文章ですと「開発、向上に資するもの」ということが入らなくてよろしいのでしょうか。この制度そのものが再就職のためのものであり、労働移動の円滑化のためのものなのか、それとも、やはり現行の職業能力の開発をすることによって、その人の現在における職業の付加価値を高め、さらに、それが雇用の安定や、そういったものにつながらせるという意味まで含まれているのでしたら、もう1つぐらい文章の中に、これはあくまで資料だと思いますが、そんな感じがします。

(事務局)
 職業能力の開発、向上に資するというのは、大前提だと思います。

(部会長)
 冒頭で多少ご議論がありましたが、我々が対象にするいろいろな制度は、在職労働者に直接かかわるものを差し当たり中心にするが、その他の、先ほどご説明にあったいろいろな長期にわたるローンとか、あるいは子供の教育のために用意されているものも、最初は少なくとも排除しない。少なくとも、情報として視野に入れておくということでよろしいですか。

(委 員)
 技能者育成資金というのが非常に気になっていまして、かなり大きな金額で、重要な分野になっているのですね。

(部会長)
 これは、在職の人が訓練をまた受けるような時には対象になるわけですね。

(委 員)
 実際問題、初期課程に対しての支援策なのですね。そうすると、最短でも2年というものが出てくるのですね。在職労働者が2年間その中に入ってくるとなると、一旦離職するような格好になるのではないでしょうか。

(部会長)
 なるほど。

(委 員)
 ただ、最近大学は夜間のビジネス・スクールなんかをやっています。あれは2年ですから、ああいうものもありますからね。

(委 員)
 いまおっしゃられたような状態で、日中だけではなく夜間に入ってくるとなると3年課程みたいなものをつくって、先ほどの実践課程みたいなものになってくると、昼間ばかりではなく夜間でもいいではないかという議論もあるのです。そうすると、在職労働者がもっと入ってこれるのではないか。そうなってくると、いまの制度には該当しないのではないですか。

(委 員)
 しかし、これは全員が回っているわけではないですから、ある程度枠があって、資格審査をして、それで出しているので、率からするとどのぐらいでしょうかね。はっきり覚えていないのですが、研究課程はわりあい大勢ですが、長期課程はそんなに大きい割合ではなかったと思います。要するに育英会式とほとんど同じです。

(委 員)
 在職者が将来を考えて、もう一度考え直して勉強しようとなった時には、短期では意味がないのです。働きながらでもいいですが、長期でもう一度頑張ろうと。その時には、何か全体的に補助金が非常に短期な、テンポラリーな場合が多いのですが、長期のものをきちんと、そういう仕組みをつくるかどうかは別にして、何か視野に入れておかなければいけないのではないかと、そういう趣旨なのです。

(部会長)
 そうすると、他のものも視野に入れておくということだけではなく、新しいプログラムも考えたほうがいいのではないか、ということに近いのではないですか。

(委 員)
 長期有給休暇がそれに近いことは近いのです。200日ぐらいあります からね。

(委 員)
 そうですね。大学ですと300日ぐらいになります。

(委 員)
 おっしゃっている問題点は、有給教育休暇制度の充実の問題で、むしろ賃金の部分を出してもらったほうが。

(委 員)
 ただ、違うのは、長期有給休暇の場合は、企業がOKと言えば、大体通常はうちの会社に役に立つかということで出すわけです。ですが、私は5時以降に自分で行きたいというのは、これには当てはまらなくなってしまうわけです。大学のビジネス・スクールは、年間100万ぐらいかかりますから、それの補助金はないかなという人が増えてくるのではないですか。

(部会長)
 それは、自分の事業からはもらえないのではないですか。

(委 員)
 だから、育英会がそのようなものにも出すようになるかどうか、という問題と絡んでいるのです。

(委 員)
 それは、どこの国でも、昼に働いて夜に勉強へ行った時には、夜に対して補助金を出すという国はないではないですか。便宜をはかるということはあるでしょうが。

(委 員)
 ですから、ローンでもいいかもしれないし、別に政策手段を考えたわけではないですから。
 将来の大学ビジネスを考えて、そのようなことも。

(部会長)
 そうしますと、大体予定が立ちましたね。このぐらいでよろしいですか。

(委 員)
 いまの点は、もう1つ安定のほうで財源の見直しをやっていますね。財源上の問題を絡めてこの部会で議論するとなると、議論が非常に複雑になってきますね。ここでは、仕組みの問題として、どうしたら制度が充実するかということで、財源上の問題は、私のほうの審議会と連動するようなことを何か考えなければ、折角決めても途中で飛んでしまう可能性が非常に強いですね。
 どうしても、この種のものは金がかかるわけです。金がかかるから、他の国では基金制度みたいなものをつくっているわけですし、三事業では無理だということが盛んにおっしゃられていると思うのです。財源上の問題よりも、仕組みの問題をこの中では議論してしまって、職業安定所との連動を図るということになるか、その辺の整理も是非していただきたいと思うわけです。

(部会長)
 その辺、何かご意見ありますか。

(事務局)
 その辺につきましては、いまお話がございましたように、雇用保険のほうも、おそらく8月末か9月初めから、また議論が再開されるような形になると思いますので、また、事務的に中職審のほうの議論をご紹介しながら、またご意見をいただいて調整させていただければと思っております。

(部会長)
 システムというか、哲学の問題、方針のほうがいちばん大事だろうと言ったのは、そういうところを考えてのことなのですが、お金のことを全然無視するわけにも、多分いかないのでしょうね。
 そういうことで、大変暑いところ、ありがとうございました。大きな大事な問題ですので、少し忙しいですが、どうぞ、よろしくお願いいたします。ありがとうございました。



(注)  本文中に記述されている資料については多量なため省略しております。資料についての詳細及び問い合せについては、職業能力開発局能力開発課 03-3593-1211(代)までお願いします。



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