中央職業能力開発審議会 第79回総括部会

日時 平成12年11月9日(木)10:00〜12:00
場所 労働省省議室
議題 (1)今後の職業能力開発施策の在り方について
(2)その他
配付資料 No.1職業能力評価制度の現状について
No.2ビジネス・キャリア制度について
No.3規制行政に関する調査結果に基づく勧告−資格制度等−」
No.4職業能力評価システムを整備する施策のポイント
No.5職業能力開発関係の給付金等の在り方について
出席委員 総括部会所属 学識経験者 尾高煌之助
大澤 眞理
早川宗八郎
労働者代表 市川 清美
鈴木 利文
堀口 雅行
事業主代表 青山 伸悦
小嶋 隆善
讃井 暢子

(部会長)
 ただいまから、中央職業能力開発審議会第79回総括部会を開催いたします。
 早速、議題に入りたいと思います。今日の会合においては、前回に引き続き、今後の職業能力開発施策を展開していくために必要な制度改正について、ご議論いただきたいと思っております。2つありまして、まず「職業能力評価制度の在り方について」、引き続いて「職業能力開発関係の給付金等の在り方について」ご議論いただきたいと思っております。そこで、第1の「職業能力評価制度の在り方」ですが、議論に入っていただく前に、事務局から職業能力評価制度の現状等について、資料が提出されておりますので、その説明をお願いいたします。

(事務局)
 お手元にお配りしてある資料の資料No.1からNo.4までです。まず、資料No.1は「職業能力評価制度の現状について」です。職業能力評価制度、あるいは資格制度と呼ぶものもあるわけですが、これについては国家試験によるもののほか、民間で数多く実施されているという実態があります。これについては、特段の規制というものはありませんので、各民間団体が自由に設けることができるということで、必ずしもその総数というのは把握されていないわけです。
 これにつきまして、評価・資格制度というもので、行政との関わりの程度などの観点から分類いたしますと、例えば国が法令等に基づき定める国家資格、あるいは民間団体や業界が実施する資格のうち行政が認定する公的資格、行政が全く関与しない民間や業界の資格、あるいは社内検定というように分けることができるのではないかと思っております。
 このうち、国家資格につきましては、つい最近、総務庁行政監察局において調査が行われて、平成11年4月1日現在、280資格が設けられているというふうに整理されております。また、国が民間団体等を認定しているものにつきましては、平成12年4月1日現在、173事業が認定されているということです。
 この評価制度につきましては、別の観点からは業務独占型、必置義務型、能力認定型というような分け方ができると言われております。業務独占型資格というのは、弁護士や公認会計士等の資格です。必置義務型というのは、例えば危険物取扱者、衛生管理者といった資格が該当するということです。私どもは今回、職業能力評価制度として主として考えているのは、次の「能力認定型」ということで、その中にはいわゆる「名称独占」ということの国家資格、技能士のようなものも含まれているということです。
 1頁目の(2)で、労働省で実施している制度について若干ご説明いたします。まず、「技能検定制度」につきましては、現在133職種について実施しております。平成11年度の数字では、19万7,000人の受検申請があり、約10万人が合格ということで、平成11年度までの累計では延べ約250万人という規模で実施しているわけです。
 次に、「技能審査認定制度」です。これにつきましては、公益法人等が実施している技能審査というもののうち、技能振興上奨励すべきものを労働大臣が認定していて、現在27職種、23団体が認定されております。この規模ですが、平成11年度は20万9,000人の受検申請があり、このうち約9万9,000人が合格しているということです。
 その他に「社内検定認定制度」がありますが、これについては現在146職種、36事業主等が認定されていて、年間約2万8,000人の受検申請があり、1万7,000人が合格ということです。
 労働省では以上のように実施しておりますが、一般的に、労働省の制度も含めて評価・資格制度がどのような企業において活用されているのかということが、2頁以下に若干書いてあります。主として、ここではJIL(日本労働研究機構)で調査したものと三和総合研究所で調査したものがありまして、それぞれ後ろにサンプル数等は付けてあります。まず、「企業が労働者に対して義務付け、又は奨励している資格検定がある」とした企業については、JILの調査では66.7%ということで、企業においてはかなりの程度資格検定が活用されているということです。2頁目のいちばん下、ハで具体的に見れるわけですが、日本労働研究機構が実施した調査により回答のあった900票、3,042の資格・検定、これは具体的に書いていただいたわけですが、それで10件以上の回答があった資格は55資格であったということです。
 具体的には30頁ですが、どういう資格が実際に企業で多く活用されているのかということが、大体の傾向として参考になるのではないかということで付けております。必ずしも能力評価という括りだけではなくて、業務独占型とか必置義務型というものがどうしても多くなるわけです。建築士から社内検定まで含めて、ここでは55ありますが、さまざまな資格がよく活用されているということです。
 3頁は、労働省所管の「技能検定制度等」についての活用状況です。これは、三和総合研究所の調査で、企業調査は5,000社に配って、1,109の回答がありました。従業員調査につきましては、1万5,000配って、2,802の回答ということです。まず、企業の利用状況につきましては、「現在利用している」というのが35.4%ということで、「対象職種がないので利用していない」が2割程度、「全く知らない」というのも約3割ということです。労働者に調査いたしますと、「技能検定制度を全く知らない」が47.3%ということでした。
 次に「技能審査認定制度」につきましては、「企業の利用状況を全く知らない」が6割近くを占めて、最も多かったわけです。これについては、社内検定認定制度についても、「全く知らない」が7割近くを占めて最も多かったわけです。労働省所管の制度については以上です。
 3頁は、企業独自の社内検定がどうなっているのかということです。社内独自の能力認定型資格の有無を尋ねたところ、「能力認定型の社内独自の資格制度や検定制度はない」という所が82.8%ということで、最も多くなっております。
 4頁は、「評価・資格制度に対する評価」ですが、これはJILの調査で、企業の担当者に聞いた調査によりますと、肯定的な評価としては、「従業員が専門性に対する意欲を高める」というのが最も多く、以下、「従業員が自分の能力を冷静に見直せる」「社内の職業能力評価を補完する」「対外的に自社の従業員の職業能力をアピールできる」というものがあります。一方、否定的な評価といたしましては、「業務内容に合った適当な資格がない」「資格が乱立していて、内容やレベルがわかりにくい」という回答が1割程度出ております。
 その下の三和総合研究所の調査ですが、能力評価制度の問題点を指摘していただいたところ、同様の内容で「所管の違う資格水準が、横断的に比較できない」というものが35.8%と最も多く、「資格を取得しても、実際業務に役立つことが少ない」「取得するまでの時間的負担が大きい」「取得するまでの費用的負担が大きい」というものがあります。以下、「同じような内容の資格が多すぎる」「資格関連情報が入手しづらい」等となっているわけです。
 次に、「企業に対して資格制度が今後どのような目的で必要か」と尋ねたところ、「業務遂行上必要であるため」が最も多く7割近くですが、次いで「自己啓発の一環として」が多くなっております。
 4頁以下は、技能検定等、個別の制度について聞いたところですが、技能検定につきましては、企業の評価は「国家検定であるため、信頼性が高い」「社員の育成や技能向上に役立つ」ということになっております。以下、技能審査、社内検定につきましても、「労働省認定であるため、信頼性が高い」とか、社内検定については、「社員の育成や技能向上に役立つ」という回答が出ております。
 6頁は、「評価・資格制度に対するニーズ」ということです。まず企業側に聞きまして、「評価・資格制度が横断的なものとして再構築された場合に、企業はどのような利用価値があると見ているか」という設問で聞いたところ、「評価に向けて、従業員の能力向上効果が期待できる」「従業員のプロフェッショナル意識が高まる」「中途採用の際に能力を判断する指標となる」という回答が上がっています。また、「横断的な制度を再構築する場合、どのような機関が主導的に行えばよいか」と尋ねたところ、「国と業界団体が連携する」というものが6割ということでした。
 6頁の下の所は、さらに企業に好ましい公的資格制度の形を聞いたということですが、「民間が扱える資格は民間に任せる」については、「好ましい」が47.6%、「好ましくない」が46.1%とほぼ同じ比率です。「今後とも国の関与を維持・充実」を「好ましい」とする企業につきましては6割以上を占めております。
 一方、労働者のほうに同じようなことで聞いたものがあります。聞き方は若干違いますが、「民間、業界の実施する検定資格に対する規制について、検定や資格を悪用することのないように、何らかの管理・運営のために規制が必要ではないか」という聞き方をしますと、「必要だと思う」が4分の3近くということです。また、「公的資格制度の今後の在り方」ということで尋ねたところ、「民間が扱える資格は民間に任せる」を好ましく評価したものが半数弱ですが、「今後とも国の関与を維持、充実」を「好ましい」と答えたものは66.7%ということでした。
 7頁の(3)ですが、これは日本労働研究機構の調査の最後で、企業の回答者個人の意見ということで尋ねたわけです。「将来、人材の流動化、賃金体系における仕事給要素の強化、人材育成機能の社会化、高校教育からの中退者の増加、若年者の専門職志向の増加、外国人社員との共同作業機会の増加などが日本でも急速に進むことが考えられます。また、職業に必要な能力の内容は多様化し変化しています。
 このような社会的な変化に対して、英米の場合には、実際に職場で仕事ができる能力として、職業能力の業界標準を定め、その職業能力標準に基づいた検定・試験を行う動きが出ています。今後、日本でも職業能力の業界標準を社会的な指標として設定することが必要になってくると思われますか」ということで、これに対して「そう思う」という回答は55.0%、「そうは思わない」というものが18.6%、「わからない」が22.7%ということでした。以上が職業能力評価制度の現状ということです。
 次に資料No.2ですが、これは正確には職業能力評価制度そのものとは言えないかもしれませんが、「ビジネス・キャリア制度について」です。ビジネス・キャリア制度について、企業と個人、両方に聞いておりますので、どのような実態かということです。最初の企業調査につきましては、中央職業能力開発協会におきまして、上場企業ということで、かなり大きな企業に聞いた調査です。2頁の「制度の周知状況」ですが、ビジネス・キャリア制度については、「概略程度を知っている」も含めると、かなりの程度知られてはいるということです。具体的にどのように活用されているのかというのが3頁ですが、企業として活用しているというものは約2割ということです。
 4頁は、その活用している企業に目的又は期待する成果について尋ねたところ、「社員の職務遂行能力向上のため」「社員のキャリア開発援助のため」という回答がありました。4番目として、「職務能力を判定する評価基準とするため」という回答も4分の1程度ありました。5頁目は、どういう人を対象にしているかということですが、「全社員を対象に」という所が45.8%で多かったわけですが、対象を絞る場合には、中堅とか若手といった対象に絞って実施しているという所もありました。6頁は、実際にどのような制度の位置付けをしているかということですが、かなり多くの所は、自己啓発援助制度の中で活用しているということです。7頁目は、人事制度とどのような結び付けをしているかということですが、「職能資格制度、あるいは昇進昇格制度とリンクさせている」という回答につきましても、約3割程度ありました。これについては、具体的な例は後ほどご紹介いたします。
 次に、ビジネス・キャリア制度を個人がどのように活用しているのかということにつきまして、8頁以下にあります。これも中央職業能力開発協会が実施した調査です。ビジネス・キャリア制度につきましては、試験だけを受ける方もおりますし、教育訓練だけを受講する方もおりますので、その双方の観点から調査を実施しております。合わせて1万人程度に郵送しまして、2,500ぐらいの回答を得ているものです。10頁にその回答がありますが、ビジネス・キャリア制度の活用者はどういう者か、制度の活用者は30歳代が最も多いようです。業種別に見ますと、制度を活用している者の半数弱が製造業に属しているということです。
 11頁ですが、企業規模的に見ますと、やはり制度の活用者の約5割が1,000人以上規模の企業ということで、大企業の労働者を中心に活用が進んでいるということです。11頁の下の所では職務歴を見たわけですが、3年未満とか3〜5年ということで、比較的職務歴の短い人が利用しているということです。
 15頁ですが、実際にビジネス・キャリア制度を受験したり受講した人が、どういう契機で情報を得てビジネス・キャリアを受けたのかということですが、「会社からの案内」「上司からの案内」ということが圧倒的に多くなっているわけです。それは、その次の16頁にも関係するわけですが、「動機」といたしましては、担当業務に関する自分の知識・能力の程度を確かめたい等もありますが、これは複数回答ですので、やはり会社や上司からの勧め、これは命令や指示も含むということになっております。また、「自分のキャリアの証明の1つとして活用できるから」「社内の人事制度等での評価対象になるから」というものも出ております。
 このビジネス・キャリア制度がどのように受け止められているのかというのが17頁で、受験者の約5割程度が、「いわゆる資格試験の1つとして捉えている」という回答をしております。一方で、「自分の実力を測る手段として」ということで、これも重なるような面もありますが、そういうものとして捉えられている面もあるということです。
 次に、ビジネス・キャリア制度の実施の実態ですが、21頁はどれだけの教育訓練を認定しているかということです。現在、講座数につきましては、3,398講座を認定しており、実施機関数としては108機関になります。また、修了認定試験について、これを実際に利用している人数で見ますと、22頁ですが、平成11年度は、受験者数ということで見ますと年間1万6,363人が受験して、7,922人が合格しているということです。これを分野別に見たのが23頁で、平成11年度は「生産管理」「営業・マーケティング」という所が多く、次いで「情報事務管理」「人事・労務・能力開発」といった分野が多くなっております。
 次に企業の中でどのように活用しているかという事例を2つ付けております。25頁に企業の例を付けております。大きく「キャリア開発支援型」「自己啓発支援型」と書いてありますが、25頁の活用例1の所です。事務系の専門知識を体系的に身に付ける目的ということで、平成6年より実施しているということです。受講につきましては、本人の自由意思が基本ということで、受講料等の補助は行わないことを原則としている。ただし、修了認定試験の合格者は人事で登録している、というスタイルです。この企業の場合には、人材開発センターそのものがビジネス・キャリア制度の講座の認定機関となって実施しているわけです。これが自己啓発型の利用です。
 特定の分野では、もう少し違った使い方をしているというのが26頁です。「法務職能専門研修」と書いてありますが、企業内でも法務の部門につきましては、若干自己啓発というよりも、必須、必修というような位置付けで扱っているということです。「社会に通用する体系的法務知識を習得するため、法務基礎研修の通信教育ツールとして位置付けている」ということで、「法務・総務」分野の中の「法務」部門につきまして、必須・選択それぞれの講座を選定している。最終目標として、修了認定試験の合格ということで、必須講座につきましては、昇格のときまでに修了認定の取得を目指すということで、昇格の要件とまではしていないようですが、一応、そういう形で人事制度の中に組み込んでいるという例です。
 次は27頁の例です。これにつきましては社内において、「営業キャリア制度」という資格を設けているようで、営業キャリア初級、営業キャリア中級という社内の資格の中で活用しているという例です。これは営業部門に1,900名の社員がおりますが、営業キャリア初級の場合には、ビジネス・キャリア制度の「営業・マーケティング」分野の6ユニットのうちの任意のユニットの修了認定試験に合格し、かつ日本商工会議所の販売士検定試験で3級を取得したもの」ということで、2つの外部の制度を活用して、それに受かった者を「営業キャリア(初級)」という社内の格付けをしているという例です。これは、営業キャリア中級につきましても、具体的には書いてあります。このような活用をしている例があるというご紹介です。
 次に評価制度に戻って、資料No.3です。職業能力評価制度の関係につきましては、以前、本総括部会でもご紹介申し上げましたが、公益法人に関する閣議決定、あるいは総務庁の勧告というものが出ておりますので、ご説明を申し上げたいと思います。これは、平成12年9月の勧告で、国の資格制度について、このようにせよという勧告です。まず、「資格審査事務の在り方の見直し、適正化」ということですが、「事務の委託・推薦等の透明化」という勧告が出ております。「関係省庁は、資格審査事務の委託等又は推薦等の透明化を図る観点から、次の措置を講じる必要がある。(1)資格審査事務の委託等については、委託等の根拠及び委託等法人の選定に当たっての審査基準等の基本的事項を法律で定めること。また、委託等法人は、法律又は政省令によって指定すること。資格審査事務の推薦等については、推薦等の根拠及び推薦等を行う際の基準を法律又は政省令で定めること。また、推薦等法人は、法律又は政省令によって指定すること」と書いているわけです。
 これにつきましては、具体的には労働省におきましては技能検定制度がこれに当たりまして、現在、技能検定制度につきましては、調理とビルクリーニングの2つの職種につきまして、委託を実施しております。委託の根拠につきましては、事業主団体あるいは事業主につきまして委託を行うという規定は法律にはありますが、委託等法人の選定に当たっての審査基準等につきましては、法律で定められていないということがありまして、それについて法律で定める必要があるわけです。
 エの「指導監督の徹底」です。「関係省庁は、資格審査に係る委託等事務及び推薦等事務について、事務の実施状況及び財務・会計状況を的確に把握し、公正かつ適切な実施を図る観点から、次の措置を講じる必要がある。(2)法令において、立入検査の規定が設けられている法人に対しては、定期的に立入検査を実施する等指導監督を徹底すること。また、それ以外の推薦等法人に対しては、事務の実施状況等を的確に把握、確認できるような仕組みを設けること」ということです。したがいまして、これも同じく技能検定につき ましても、監督等の規定を整備すべきではないかという問題があるわけです。
 2頁目の「民間技能審査事業認定制度」です。これは、私どもでいうと、認定技能審査の関係です。「認定制度の在り方の見直し」ということで、「関係省庁は、事業認定制度について、透明かつ適切な運営を確保する観点から、次の措置を講じる必要がある」ということです。(1)は「事業認定制度の根拠及び認定に当たっての審査基準等の基本的事項については、法律又は政省令で明確に定めること」ということが書いてあります。(4)は、「認定に当たっての事業実施団体の事業遂行能力等に関する審査は、具体的な審査基準により、厳格かつ適正に行うこと」ということが書いてあります。これにつきましても、現在の認定技能審査制度につきましては、労働大臣の告示ということで実施しておりますので、これを法律又は政省令で明確に定めるということが必要になるわけです。
 次に「認定事業の運営の適正化」ということです。これも技能検定の所で説明した並びですが、「認定事業の実施状況及び財務・会計状況を的確に把握するため、認定事業実施団体から、必要な業務報告書類を適宜徴収できる規定を設けるとともに、徴収した業務報告書類について、具体的な審査基準、方法を策定して適切に審査するほか、必要に応じて実施指導を行い得る仕組みを整備すること」ということで、認定を行った場合には、きちんと監督できる規定を設けなさいということです。
 3頁以下は、それの背景となりました「閣議決定」等を付けてあります。平成8年9月20日の閣議決定で、具体的な中身は、以前一度ご説明申し上げましたけれども、4頁の所です。「検査等の公益法人への委託等」ということで、「各官庁が、不特定又は多数の者に対する検査・認定・資格付与等の事務を公益法人に委託等を行う場合、以下の要件がすべて整っていることを要するものとする」ということで、(1)「委託等を行う事務の基本的内容、事務の委託等を行うことのできる公益法人の基準が法律で定められていること」ということです。
 2の「検査等の推薦等」が同じようなことですが、認定技能審査の関係です。これも「推薦等が法令に基づくものであること」等が書かれているわけです。これにつきましては、5頁のいつまでに実施するかということですが、「各官庁は、上記1.から3.について必要な措置を、平成12年度末までに行うものとする」ということで、今年度末までに措置をするようにということになっているわけです。
 6頁と7頁以下につきましては、現行の規定です。現行の職業能力開発促進法の技能検定につきましては、先ほど口頭で申し上げましたとおり、第64条の5項について、「労働大臣が、特に必要があると認めるときは、労働省令で定めるところにより、事業主又は事業主の団体で、あらかじめ指定する者に技能検定試験に関する業務の一部を委託することができる」という規定が設けられてはいますが、委託の基準については法令で定められていないということです。7頁につきましては、「労働大臣告示」でやっている技能審査認定規程そのものを参考までに付けております。
 以上のようなことを受けて、資料No.4、「職業能力評価システムを整備する施策のポイント」ということです。まず、「職業能力評価システムの整備の考え方について」ということです。「職業能力形成、キャリア形成を促進するとともに、労働力の需給調整を円滑化し、ミスマッチを解消するためには、労働市場の機能を有効に発揮されるよう基盤整備を行う必要があり、職業能力評価システムを整備することが重要である」ということで、これについては既に総論的なご議論をいただいたと思っております。その際、特に知識、技能にとどまらない労働者の実践的職業能力を評価することが必要ではないか、という観点が1つあります。
 もう1つは、「労働者の有する実践的職業能力を適正に評価するために、また、労働移動が増大する中で、随時、職業能力を評価するために、検定による評価制度だけでなく、職務経歴等を基礎として実践的職業能力を評価することのできる仕組みを推進する必要があるのではないか」ということで、キャリアシート等については既にご説明を申し上げたところです。
 以上のようなことからすると、現行の職業能力開発促進法に、職業能力検定という概念を入れて、さまざまな規定を置いております。「職業に必要な労働者の技能、及びこれに関する知識についての検定」、具体的には技能検定等を想定しているわけですが、これについては以上のようなことから職業能力評価ということ、技能、知識にとどまらない、職業能力全体を評価するということ、あるいは試験の結果だけでなくて、職務の経験の確認等に基づいて行うものも対象として、職業能力評価という概念に捉えまして、「多様な職業能力評価の仕組みの整備、労働者が職業能力評価を受ける機会の確保等の施策を推進していくこととしてはどうか」という考え方です。
 それでは、「職業能力評価システムの具体的な整備について」ということで、まず、「民間の評価制度」については、先ほどご説明申し上げた「公益法人の検査等の委託に関する基準(閣議決定)、及び規制行政に関する調査結果に基づく勧告」を踏まえ、現行の認定技能審査制度について、法令に基づく制度として位置付ける必要があるのではないか。その際、民間の諸団体等が評価を行う仕組みのうち、職業能力の開発に資するものであり、かつその適切な実施が確保されるものについて認定を行うこととし、そのための認定の基準や評価実施団体等に対する監督等について法令で明確にする必要があるのではないか。労働市場の基盤整備という観点から、上記認定の対象は幅広く考える必要があるのではないかということです。
 次に「国の評価制度」、労働省の場合は技能検定ということになるわけです。技能検定制度につきましては、閣議決定及び総務庁勧告を踏まえ、技能検定試験の業務の一部を事業主団体等が行わせる際の基準や、当該事業主団体等に対する監督規定について法令で明確にする必要があるのではないか。基準については法律、監督規定については法令ということになるわけですが、法令で明確にする必要があるのではないかということです。
 「その他」ということで、これは前回までにご議論いただきましたが、労働者の職務経歴等を基礎として実践的な職業能力を評価する仕組みを定立するために、能力評価技法の開発や評価を行う人材の育成を行う必要があるのではないかということです。以上です。

(部会長)
 どうもありがとうございました。ただいまのご説明に対する質問等を含めて、今後の職業能力評価制度の在り方について、ご議論をお願いします。ご自由にどうぞ。

(委員)
 検定のことは中央職業能力開発審議会技能振興部会のほうで扱っているのですが、そこでいちばん基本的なこととして、検定をして、ある資格なり評価を与える。それの有効性といいますか、例えば自動車免許なら、何年か経ったら書き直すということもあるわけですが、そういったことに対して、基本的にどういうふうに考えていったらいいのか。要するに、民間の研究の中には、何年かしか有効ではなくて、そのあともう一度研修を受けなさいとかという制度もあるわけです。溶接などはそうなっているのですが、国家検定の場合にはそういうのはないし、大体、いままでのやり方では一遍、資格を評価すると、そのまま一生人の評価が続いていくということで、キャリアシートを見て、それでその評価はどのぐらいまで有効かということを判断する側に任せましょうということなのか、あるいはやはり将来ともそういう技能的な能力というものを時々はチェックをしていくというシステムを考えるのか。そのところはいかがでしょうか。

(事務局)
 これは、やはり技術革新の激しい時代ですから、資格制度のようなものもある程度の間隔で見直していくということは、これから不可避であろうというふうに考えています。ですから、例えばイギリスのNVQにしても、これは3年間で見直すということでやっているわけです。これからは、ますますそういう傾向は強まってくるだろう。ですから、いまの仕組みをそういうのに合わせてどうするか、具体策はこれから考えなければいけませんが、例えばこういう民間の評価を認定するような場合は、有効期限を3年にするとか、3年後にまた改めて状況に合わせて認定するかどうか考えてみるとか、そのような工夫というものをやっていかなければいけないのではないか、という考えはあります。それはこれからご議論いただきながら、具体的なシステムの設計という部分はやっていかなければいけないと思いますが、おっしゃるようなことは、これからますます本当に置かなければいけないという気持は持っております。

(委員)
 いまのお話とちょっと関わりがあると思うのですが、ILOの100号条約、「同一労働に関する同一報酬、同一価値労働、同一賃金」、あれで条約勧告適用専門家委員会から勧告を受けて、日本は職業能力評価システムはないと。そういうことで、100号を批准しているにもかかわらず、遵守をされていないということが指摘されていますが、これは中央職業能力開発審議会でやることとは違うかもしれませんが、そういうことは一方で言われているわけです。
 資格を取れば、資格を取った時点の能力は社会的にも認定されるわけですが、その能力というのはいつまでも続くわけではないというおっしゃるようなことと、職務の評価で賃金を払うというのは、一方は世界的な流れといいましょうか。そういう日本の条約勧告適用専門家委員会で指摘を受けたこととの絡みで職業能力評価システムはやるのだけれども、それとの関連はどのように考えたらいいのでしょうか。

(事務局)
 100号条約の勧告というのは、何のことをおっしゃっているのですか。

(委員)
 「同一価値労働、同一賃金」で、日本においては職務評価システムがないので、実態的には同一価値労働、同一賃金になっていない。しかし、100号条約そのものは「同一価値労働、同一賃金」を謳ったもので、いま日本は既に批准しているわけです。何遍か勧告を受けていますが、日本は実態的には同じような価値のある職務に応じて賃金を払うという制度になっていないことがある、ということを政府が回答しているのです。

(事務局)
 最近、政府の回答の詳細は承知していないのですが、100号条約の問題とこの能力評価制度とは、必ずしも同じものではないのかなと思います。

(委員)
 私が言いますのは、一方ではそういう勧告を受けていますね。したがって、このような職業能力評価システムを作るという場合においても、100号条約での勧告の問題は、依然として職業能力を評価するシステムを作るということと、それとは別に職務評価に応じて賃金を払う制度というのは、一方では同時に課題としてまだありますね。そこを整理して、それはあるのだけれども、職業能力評価システムを作っていくのだということになるわけです。

(事務局)
 そこのところは、勧告の内容を正確に見てみたいと思いますので、そのうえで。

(委員)
 中央職業能力開発審議会の問題ではないかもしれませんが。

(事務局)
 それを見たうえで、ご回答させていただきたいと思います。

(部会長)
 ILO100号条約の関係は、少し調べていただいて、的確な答えをしていただくようにして、それは預からせていただきます。ほかにありますか。最初のデータの所で初歩的なことを確認したいのですが、資料No.1の1頁に、技能検定制度というのは133職種とありますが、これは上の国家資格とか、公的資格とか、280とか、173とかある中に入っているのですか。

(事務局)
 総務庁の分類は職種ではなくて、資格の数です。したがって、この280のうちの1つが技能士、技能検定制度というもので捉えられています。

(部会長)
 280のうちの1つで、その1つの中身が133ということですか。

(事務局)
 そうです。

(部会長)
 2頁の上から4行目に、「現在27職種」と書いてあるのは、技能検定とは関係ないのですね。また別の話ですね。

(事務局)
 これは、技能審査認定制度で、これについては1頁との関係で申し上げますと、173事業が認定されているとなっていますが、173のうちの27ということです。

(部会長)
 それは、173の公的資格のうちに数えられているのですね。

(事務局)
 そうです。

(委員)
 今後の政策のポイントとして、いままで議論した中で私がいちばん気に留めているのは、各労働者が企業から正しい評価を受けていないのではないかというデータの説明がありましたが、その辺は企業が求める人材像と、自分が目指すものがはっきりするということが、これからのキャリア形成支援、あるいはただ単に技術とか技能だけではなく、実践的な能力開発の部分では非常にプラスになると思うのです。それからいいますと、職業能力評価システムの整備の方向としましては、実践的な能力を評価する、あるいは技能検定という堅い名前でなく、全体的にかなり大きく職業能力評価という方向に行くのは本当に賛成ですし、是非そういう方向にしていただきたいと思います。
 そこで、資料No.1の6頁の所で、先ほども説明がありましたように、これから企業側として、そういう制度を作っていくには、やはり国と業界団体が連携してほしいということで、かなり国なり労働省として、一緒に指導して、そういう体制づくりを作っていただきたいという部分の声が特に多いのではないかと思うのです。ですから、これから労働力の流動化なり、あるいは自分が何を目指すかというと、やはり専門職とか業界というところで、業界団体と国が連携して、業界団体自身がいかにも現場に近い、実践的に近いというような評価システム、あるいは訓練システムという部分を是非とも作り上げていただきたいと思います。そのためには、是非、国なり労働省という立場で、何々業界の、いわゆる標準的な体系はこうとかというような情報をどんどん吸収して、情報を速やかに提供できるような体制を作って支援していただくという部分をお願いしたいと思いますし、資料No.4の最後の行にありますような「能力評価の技法の開発」という部分の指導、さらには「評価を行う人材の育成」という部分も、これも具体的に評価を行う人材なり、これから作り上げていくキャリア支援の人材を育成するという部分も、これから大きなポイントになると思うので、その辺の具体策等も盛り込めればとお願いしたいと思います。

(部会長)
 いまおっしゃった資料No.4のいちばん最後の所の「人材の育成を行う必要があるのではないか」というのは、具体的には誰がやるのですか。そういうことも考えないといけませんね。いまのご発言に対して、回答、そのほかありますか。

(事務局)
 おっしゃるとおり、いまのところ労働市場のシステムとして、能力評価というものがまだ整備されていない。やはりこれからのことを考えますと、市場の枠組みといいますか、労働市場としてのインフラをきちんとしていくということは非常に重要だと思います。その場合、いまのいろいろな認定制度、資格、能力評価というのはバラバラになっているわけで、これをある程度コーディネートしていくという国の役割はあるのかと思っています。
 もちろん、こういう世の中で、国がやることに対して、果たしてその必要性があるのかということで、いろいろな観点から国の関与を薄めるという方向は出ているわけです。ただ、市場の枠組みづくりのようなものについては、ある程度国が何らかの観点から関与して、しっかりした柱を作っていくということが必要だろう。特に能力評価については、まだ市場としての枠組みが極めて不完全というところで、これをしっかりさせていくうえで、やはり国の検定以外に認定制度という形で、これを活用して実践的な能力の評価の仕組みを、社会的に定着をつくっていくということであろうと思うのです。
 その際に、やはり知識、技能だけではなくて、例えばキャリア・コンサルティング技法による評価とか、そういったものも技法として確立すれば、視野に入れていくということもあろうと思いますし、実施主体についてもこれまでは技能審査認定制度は公益法人ということですし、社内検定は企業ということでしたが、必ずしもそういう公益法人とか企業に限らず、おっしゃるような業界団体とか、実施主体は多様であっても、それがある程度雇用される能力といいますか、実践的能力を評価する仕組みとして、適当であるというものについては積極的に認定していくというような考え方が必要かと思っています。
 また、そういうことを担っていく人材の養成というのは、片方で進めていかなければいけない課題です。特に実践的能力評価にかかわるコンピテンシーといいますか、いわゆるキャリア・コンサルティングを担う人材とか、そういう部分というのは非常に欠けている分野ですので、技法の確立と並んで、その育成ということに相当力を入れていかなければいけないという考えです。

(部会長)
 いまおっしゃった6頁から7頁にかけて、評価とか資格制度のニーズを聞いた中で、「民間に任せるのではなくて、民間がやるものについても、やはり公的に関与する必要がある」という答えがかなり多いので、私はびっくりしました。「民間に任せるのが好ましくない」という答えが随分ありますね。

(委員)
 評価制度なんかも、普及、波及というのも、やはり民間ベースでなければ大きく広がらないと思うのです。ですから、ある程度国が情報提供して、各国の状況、世界の状況、あるいは業界の情報を集めるのはやはり労働省のように国ではないかと思います。そこである程度指導してやって、実際に実施する、あるいは評価をするというのは、各企業であり、企業の上の業界団体が認定するというような部分でないから、そう普及、波及はしないと思うのです。ですから、そこまでの道標は、やはりある程度支援していく、前面に出ないでサポートするというような形が国の役割ではないかと思うのです。

(部会長)
 いま事務局がおっしゃったように、制度が定着するまでは、少なくとも国が面倒を見るという。

(委員)
 私はそう考えているのですが。

(部会長)
 ちょっと私はあまのじゃくなので、7頁の質問の仕方は、少し誘導質問したのではないかと思っています。「必要ではないですか」とか「必要になってくると思われませんか」というふうに聞かれると、「必要だ」と答えるのではないですか。どうですか。そうではなくて、本当に皆さんが民間に全部任せるのではなくて、やはり国がコントロールしてくださいというふうに考えておられるのだったら、もちろんそれで結構だと思うのですが、大丈夫ですか。

(委員)
 関連して、やはりアンケートの中でも、職場の中できちっと評価されていないという大きな理由の中に、上司の恣意的なとか、そういうものが結構入っていましたね。ですから、どうしても具体的な職場の中での評価ということになると、第三者みたいに冷静にということが難しくなるところが結構ある。それを補完する意味で、国が第三者的といいますか、そのような格好での役割を果たすというのは結構あるのではないかと思っています。ですから、これは企業の側に聞いても好ましくないというところがあるわけで、企業側も一種の自信のなさというと語弊がありますが、そういう本当にきちっと評価できているのかどうか、自問しているのではないかというふうに、この結果を見ているのです。
 そういう意味で私は前から言っているように、企業の枠を超えた業界が、もう少し横櫛を入れる時代になっているのではないかと思っております。

(委員)
 いまの問題に関連して、4頁から7頁ぐらいの調査を拝見しまして、実は私も国の関与が必要だという回答の多さに、ちょっとびっくりしたのです。それは、先生のおっしゃるように聞き方があるかもしれませんけれども、4頁に「評価・資格制度全般」で、日本労働研究機構と三和総合研究所の調査結果が載っておりますが、ここに出ておりますとおり、いろいろな資格が乱立していて、よくわからない。レベルとか内容とか、実際にどのような業務に活用できるのか、反映できるのか、それを企業がどうやって評価していくのか。
 そういうことが実はよくわからないというところがあって、それを整理してほしいという気持もおそらくあるのではないかと思うのです。この調査は、断片的に見ますと、関与が必要だ云々というふうに読めますけれども、そういうふうに並列的に見てみますと、そういうような視点というものを入れながら見ませんと、視点が偏る傾向にあるのではないかと思っています。この点、横断的に比較できないというところに大きなポイントがある。特にビジネス系と言われる、ホワイトカラーの資格とか評価という点については、非常に乱立状態ですから、この辺が企業サイドのほうも困って、評価する所が困っているのではないかと思っているのです。実際、商工会議所のほうでいろいろなヒアリングをやるのですが、情報が多いという所と情報が少ないという所と、どういう判断をしたらいいのだというようなところがよくわからない。そのような声も出ております。その点、注意すべきかと思っています。

(部会長)
 わかりました。私は資料No.1のご説明を聞きながら、1つの問題点は、いまおっしゃった4頁の所で、企業側も比較ができないとか、同じものが並んでいるのにどうなっているのか、関係がわからないとかいう類の答えがあるのに気が付きました。ほかにありますか。使用者側のほうから、何かもう少しありませんか。

(委員)
 評価システムを整理する施策としては、法令に基づくようにするとか、枠組みをそのようにする必要があるというのはよくわかるのですが、根本的に技能検定なり何なり、検定の中身をいかに実践的職業能力に結び付けるかというところの今後の対策といいましょうか、その辺はどのようにお考えでいらっしゃるのでしょうか。先ほども、技術革新なり何なりが非常に早い中で、どうやってこれをアップデートさせていくのかというご質問がありましたけれども、今回、実践的職業能力というのを強調するわけですから、それを技能検定、その他の認定といかに結び付けるかということが、どのように行われているかというのが実際の中身を決めていくことになるのではないかという気がいたしますので、それを質問させていただきたいということが1つです。
 もう1つは、情報の部分で、使われていないのは知らないからというのが結構ありますね。情報提供というのは、やはり政府の非常に大きな役割だと思うのですが、その辺のところを今後どのようにお考えなのか、お聞きしたいと思います。

(事務局)
 最初の実践的能力のほうですが、非常に難しい問題ではあります。これまでの技能検定、これは技能、それから技能に関する知識、それについての検定制度でした。ほかの各省でやっているもの、民間でやっているもの、総じて知識とか技能というある種の特定の職業能力に関する評価制度です。これを実践的なものという視点で考えた場合、まず扱っている評価制度の幅の問題が1つあります。例えば「技能検定」であれば、技能というかなり限られた、職種に限られているということになります。ほかのいろいろな資格制度も、ある分野に限られている。その幅の問題をどのように全体をカバーしていくかということ。
 それから、「実践的能力」といった場合に、単なる知識、技能とか、そういうものでなく、よく言われるコンピテンシーといいますか、広い意味で仕事に取り組む姿勢とか、やる気とか、あるいは実践的となりますと、それまでいろいろ経験で培ったノウハウとか、人脈とか、そういうのも場合によっては入るかもしれません。
 そういうことになってきますと、これを評価するという今までのようなやり方とはちょっと違ってくる可能性があるわけです。まず、そういうことの手掛かりとして、キャリアシートということをご説明申し上げましたが、そこに自分で書いてみる。具体的にどういう職務を経験し、どういう課題について、どういうアウトプットを出してきたか。そういうものをまず細かく書いていただくということによって、自分で確認するとともに、それを専門の、例えばキャリア・コンサルティングをやる方が見て、対話しながら、どれだけの実践的能力を身に付けているか見ていく、というやり方が実際にある程度行われていて、それで業界などでも紹介したり、ヘッドハンティングしたりとかいうことに使っているという実態もあります。そういうものというのを、少し技法として確立していってはどうか。そのことによって、単なる知識とか技能、技術だけでなく、アウトプット評価といいますか、そういう観点から実践的なものを少し考えていくという縁にできないか。それが1つの現実的なやり方かと思っています。
 さらに進んでいけば、コンピテンシーなるもの、これは前にも説明しましたとおり、イギリスやアメリカでもかなり取り組んで、必ずしも成功しておりませんが、そういった試行的なものというのを念頭に置いて考えていく。日本流のコンピテンシーというのはどういうものか考えて、それをある程度評価するような仕組みというものを、これまでの仕組みに加えて作っていくことが必要ではないか。これは、これをやれば必ずというものではないわけで試行錯誤にならざるを得ませんが、そうした方向に向かっての努力をしていくということが必要です。そういう技法の確立、そういうものができてきた場合には、そういうものを認定することによって、社会的に公表し、そういうことで社会的に実践的能力を評価する枠組みを作っていくということが、いまの時点で考え得るぎりぎりのところかと。ただ、確然とは言えないわけですが、そういう方向に向かって、技法の確立や認定制度などを通して作っていくということは必要ではないかと思っています。
 第2点について、おっしゃるとおりで、やはり情報の整理といいますか、いろいろな資格制度がある中で、一種の物差しみたいなものというのを考えていく必要がある。その物差しが同時に能力評価の社会的な枠組み、労働市場の枠組みの1つを成していくと、こういうことだろうと思います。ですから、そのものを整理するというのは、一種の認定というのも、一種の物差しを持ちながら認定していくわけで、そういう作業を通して、社会的な評価の基準作りをやっていく。ある意味では、認定して公表するということが1つの情報になりますので、認定制度をうまく活用して、そういう情報の整理を行っていきたい、一般的な基準作りを行っていきたい、というふうに考えておるわけです。認定制度を作った場合、その辺の運用の問題というのは相当考えていかなければいけないと思っています。

(委員)
 最初のほうのお話ですが、いままでの認定とか検定とかというのが、ある程度特定の知識、技能に固まっているので、それを補完するものとしてキャリアシートとか、そういうのを使って、なるべく実践的な職業能力を評価するという方向に持っていくということはよくわかるのです。技能検定なり何なり、そのものも、もっと実際的なものにするということも必要なのではないかと思うのですが、アンケート等には、企業の指摘する問題点として、資格を取得しても実際業務に役立つことが少ないというような指摘もありますし、知識なり技能なりのレベルでも、もっと現状を反映した、企業のニーズに基づいたものにしていくということが可能なのではないかと思います。

(事務局)
 前におっしゃった、技術革新の中身の見直し、これは当然やらなければいけないと思います。それは、技能検定という国家検定だけでなく、民間のものも認定しながら、そういう実践に応じられる体制というのを全体としてとっていくということだろうと思います。

(部会長)
 職業能力評価制度の在り方について、ほかにご議論ありますか。

(委員)
 ビジネス・キャリア制度は、受験者の所だけ性別をいただいているのですが、できれば技能検定、認定技能審査、認定社内検定、これについても項目別に。できれば時系列に女性がどのぐらいいるのか、増えてきているのか、減っているのか、どういう状況なのか。こういう制度がありましても、性別により偏りがあるということであれば、何らかの見直しをするということも必要かと思います。

(部会長)
 これはデータはありますか。あれば次回にでも。

(事務局)
 技能検定については、都道府県を通じてやっているので、データが取れるかどうかは確認してみないとわからない面があります。

(部会長)
 もしあったら、次回お願いします。「職業能力評価制度の在り方について」は、資料No.4に端的に要約されているのではないかと思うのです。特に資料No.4の上半分というのは、いままでご議論いただいたことの要約になっていると思うのです。要するにいま意見があったように、今後やるべきこととして、職業能力情報の顕在化と標準化が必要だと。だから、供給側にとっても、需要側にとっても必要だということなのだろうと思います。
 今後の施策の在り方の1つとして、法律的な枠組みを作る必要があるということが、下の半分に謳われています。これについては、皆さんご異論ないだろうと思いますが、ほかに何かおっしゃりたいことはありますか。

(委員)
 いま申し上げた資料を是非いただきたいと思います。男女雇用機会均等法で、それぞれの業務は男女均等取扱いをしなければいけないということになっているのに、もし偏りがあるとするなら、評価システム、枠組みを作るとするなら、きちっとその点を検証して、改めるべき点は改めるというようなことは必要だと思います。

(部会長)
 格別ほかになければ、2番目の話題に行ってよろしいですか。
 引き続き、「今後の職業能力開発関係の給付金等の在り方について」、議論をしていただきたいと思います。「雇用保険三事業における各種給付金の今後の在り方について」は、9月7日の総括部会で事務局より報告がありました。本年9月1日付で、中央職業安定審議会専門調査委員雇用安定等事業部会の報告がありまして、その中で能力開発事業の給付金については、今後、労働者個々人の適切なキャリア形成とか、労働者の主体性を踏まえた就業能力、いわゆるエンプロイアビリティの向上に資する職業能力開発によって、重点を置いて体系化していくことが必要だと言われております。
 これを踏まえて、事務局に「職業能力開発関係の給付金等の在り方について」の考え方を整理していただきましたので、それについてご説明いただきたいと思います。

(事務局)
 資料No.5ですが、いま総括部会長よりお話がありましたとおり、現在、雇用保険三事業の給付金について、9月1日の中央職業能力開発審議会の部会報告に基づき、全体的な見直し作業が行われております。雇用保険三事業の給付金につきましては、職業安定行政のみならず、職業能力開発行政、女性局、労政局等について幅広く関係しているものですから、関係各局の施策との関連、今後の施策の展開との整合性等も考慮して、関係各局の部分については関係各局の政策を審議する審議会において、今後の給付金の在り方についても併せてご議論をお願いしたいということで、先般9月に中央職業能力開発審議会の雇用安定等事業部会報告について、ご説明申し上げたところです。
 これまで、今後の職業能力開発施策の在り方について、一通りのご議論をいただいてきていますが、そういった議論も踏まえて給付金、主には職業能力開発に関して、事業主の行う職業訓練等について、どのような支援を行っていくことが施策の推進について必要かという観点から検討すべきと考えておりますが、今後の能力開発施策の在り方に即して、給付金の観点からのご議論もお願いしたいということです。
 それでは、資料の説明に移ります。資料は便宜的に考え方を先に綴って、現状等について、簡単に後ろのほうに資料を付けておりますが、先に現状について簡単に触れて、考え方についてご説明するという順番にさせていただきます。4頁の「助成金制度」ですが、雇用保険は昭和50年から発足して、相当期間が経ちまして、かなり複雑化してきております。ご覧のとおり、助成金の数も相当の本数になってきておりますので、こういった観点からも簡素合理化、重点化が求められるわけですが、大きく分けると4つのグループに分けられるのではないかということで、分類しております。 1つは、「人材高度化対策」ということで、それに向けては助成金が何本かあります。これは比較的新しい助成金で、人材高度化助成金ができたのが平成7年ということです。2番目は、「生涯能力開発の支援」ということですが、基本的に現在、職業能力開発促進法に「事業内職業能力開発計画」という制度がありますが、そういう計画を作っていただいて、それに基づいて職業訓練をしていただいた事業主の方に助成するということで、いちばんオーソドックスな「生涯職業能力開発給付金」ですが、自己啓発助成金につきましては昭和50年、生涯能力開発給付金につきましては昭和57年にできております。
 3番目がもう1つの大きな柱で、「認定職業訓練の振興」です。訓練基準に基づいて、民間の事業主団体あるいは事業主が行う訓練につきましては、都道府県知事がこれを認定することができるという制度、これが「認定訓練」です。これも職業能力開発促進法に位置付けられている制度ですが、認定訓練を振興するために、認定訓練の運営、認定訓練に対して労働者を派遣して受けさせた事業主に対する賃金補助といった形で、いくつかの助成金が整備されております。
 そのほか、労働市場の変化を踏まえて、自主的な職業能力開発についての環境整備といったもの。それから、これは通商産業省との共管ですが、法律がありまして、それに基づいて情報関連人材育成をしております。近年、IT人材育成というのが話題になっておりますが、こういった助成金もあります。それから、「能力再開発適応講習受講給付金」、これは昭和54年にできた古いものですが、通常、職業訓練を受ける際の導入研修とか、スムーズに職業訓練に入っていただくための講習等をするための給付金です。ざっとご説明しますと、そういった形になっております。
 詳しい内容は5頁以降になりますが、先に額だけ概要を見ていただいて、この助成金の財源といいますか、どのように使われているかご覧いただきたいと思います。どちらからご説明したほうがわかりやすいかわかりませんが、まず額からご説明させていただきますと、「人材高度化」に関する助成金というのが1の四角の中にあります。合計欄を見ていただくと、約80億円ほどあります。その下の2つ、「中小企業雇用創出等能力開発給付金」「地域人材高度化能力開発給付金」、これは人材高度化助成金の特例みたいな制度で、それぞれ中小企業労働確保法、地域雇用開発促進法によって、より高い助成が定められていて、それぞれ約30億円、約15億円ということで、12年度で申し上げますと、「人材高度化」全体で約120数億円といった予算規模になっております。
 「生涯職業能力開発の推進」、これがいちばんオーソドックスなもので、事業主が計画を立てて訓練をした場合に助成させていただくということで、約170億円ほど予算化しております。
 「認定職業訓練の振興」につきましては、これもいくつか分かれているのですが、大きなところは「認定職業訓練助成事業費補助金」ということで、都道府県を通じて、認定訓練を行う事業主の方々に認定訓練に必要な施設費、設備費、運営費を補助するというもので、これが約26億円です。もう1つ大きいところは、「認定訓練派遣等給付金」です。これは、認定訓練に対して、自分の雇用する労働者を派遣して受けさせる場合の助成金で、受けさせる事業主に対して支払うものですが、約20億円ということです。その辺が大きいところで、約50億円を、「認定職業訓練の振興」に振り分けております。
 「その他」ですが、合計しますと約15億円ほどということで、全体を12年度予算で合計しますと、約350億円強といったところが能力開発給付金に振り分けられている予算額ということになります。
 予算と実績ということで、11年度の「実績(見込額)」ということで掲げておりますが、能力開発給付金以外にも安定給付金等のほうで予算、実績の乖離といったものが問題になります。能力開発助成金の所を見ていただきますと、例えば11年度の「人材高度化」を見ていただきますと、予算が約73億円に対して、実績(見込額)が約91億円ということで、実績のほうが上回っております。「生涯能力開発」につきましては、11年度は約170億円の予算に対して実績が160億ということで、大体予算どおりです。「認定職業訓練」につきましても、ほぼ予算どおりの執行状況です。「その他」につきましても、あまり大きな乖離はなく、予算を上回る執行を行っている部分もあります。予算を上回る執行ができるというのは、実は雇用安定給付金につきましては、細かい形で積算はしておりますが、実際は予算項目としては大きなものがありまして、その中で余った所、足りない所を振り分けて使えるということで、結果としてそういう形になっているところです。
 5頁の「能力開発関係の給付金等」ですが、これも詳しく申し上げると時間がかかりますので、簡単にまとめたもので、イメージだけご説明したいと思います。1番目は、先ほど申しました「人材高度化助成金」です。ちなみに括弧内は、どこで支給しているかということで、支給機関を掲げております。支給機関の問題はいくつかに分かれておりまして、これもややこしい、わかりにくいというご批判のもとにもなっておりますので、そういった整備、統合の観点も議論の対象になろうかと思います。人材高度化につきましては、1つ目が「人材高度化助成金」ということです。「人材高度化事業助成金」「人材高度化訓練運営助成金」、これは実は人材高度化の仕組みということになるのですが、事業主団体で人材の高度化ということで、傘下の事業主も含めて取り組んでいただくということを基本的な原則にして、そういう団体の事業に対して上の2つの助成金が支給されます。職業訓練の準備経費、運営経費といったものが主になっております。
 先ほど、いちばん大きな額が出ておりましたものが、「人材高度化能力開発給付金」で、4頁と見比べていただきたいと思いますが、これがほとんどを占めております。約80億円の予算のうち、約75億円がこの人材高度化能力開発給付金で、これは事業主団体等の構成員の事業主の方々が人材高度化のために訓練を行った、あるいは有給教育訓練休暇等を与えたといった場合に、その賃金費用に対して助成するものです。
 「地域人材高度化・中小企業等雇用創出等能力開発給付金」、これは基本的には上の人材高度化助成金の中の能力開発給付金と同じ考え方ですが、地域法に基づく高度技能活用雇用安定地域内にある事業主団体、事業主であれば助成率を非常に高くしていく、あるいは中小企業ですと、中小労確法の認定組合であれば、助成率を高くするといった形で、助成率の特例ということでご理解いただければと思います。
 2番目の「生涯職業能力開発の支援」ですが、これは都道府県のほうで窓口になっていただいて支給しておりますが、1つが「能力開発給付金」です。事業内職業能力開発計画に基づいて、雇用する労働者に職業訓練を受けさせる事業主が負担した賃金、受講費用等に対して助成しております。対象となる訓練、年齢、企業規模、これはかなり複雑に分かれていて、これがわかりにくいという批判もありますが、内容は具体的には省略させていただきます。
 ここで「事業内職業能力開発計画」というのはどういうものか、サンプル、様式を8頁以降に付けてあります。これを提出していただいたうえで、これに沿った職業能力開発をしていただいた事業主に助成をするということで、内容としては非常に簡単です。「事業内職業能力開発」ということで、1頁目が事業主の概要です。2頁目からが「事業内職業能力開発計画」ということです。具体的には、訓練の種類ということで、いくつかに分類させていただいておりますが、その分類に従って、名称、給付金の受給の予定があるか、あるいは実施予定人員対象者等、実施方法、予定期間といったものを書いていただくことになっているわけです。これを提出していただいて助成をするというものが、5頁の能力開発給付金です。「自己啓発助成給付金」ですが、上の能力開発給付金は、事業主が職務命令でこういった訓練をやりなさいといったときの助成ですが、自己啓発の必要性も併せて支援しようということで、有給教育訓練休暇を与えた場合、自己啓発の機会を与えた場合に、その間の賃金、受講経費についても助成をしようという制度です。
 6頁の3番目の大きな所は、「認定職業訓練の振興」です。「認定訓練助成事業費補助金」ということで、このペーパーの中で、これが唯一「補助金」となっていて、必ずしも助成金とか給付金ということではないのです。これは仕組みとしましては国ということで、国の立場から見れば国なのですが、国が都道府県に補助をして、都道府県から事業主に補助をする。そのときに、国だけではなくて、都道府県も国と同額を負担して事業主に補助するという仕組みになっております。これは少し特別な仕組みですが、中小企業の事業主、団体の方々が、先ほど申し上げました、知事の認定を受けた認定職業訓練を行う場合に、県を通じて補助する。運営費用、あるいは施設設備の設置の費用等を助成するということになっております。
 2番目は、「広域団体認定訓練助成金」です。これは上と同じなのですが、県が複数に跨がってくる場合については、単独の県に負担させられない場合も出てまいります。そうした場合は、上と違って、国が100%を負担してやりましょうということで、枠組みとしては同じものです。
 3番目は、「認定訓練派遣等給付金」です。これがもう1つ大きい助成金ですが、雇用する労働者に認定職業訓練を受けさせる中小企業事業主が負担した賃金に対して、その賃金の一部を助成しております。
 「中小企業人材育成事業助成金」は、認定職業訓練を実施する事業主さんの側に職業訓練の準備事業に対して助成する。「地域職業訓練推進事業助成金」も、認定訓練を行うほうの事業主、事業主団体に対して助成するもので、認定職業訓練の実施計画の策定経費等について助成をしております。いずれも額としては小さいもので、いちばん上の補助金と、真ん中の認定訓練等派遣等給付金、これは非常に大きいものです。
 そのほか、「自主的能力開発環境整備助成金」の1つで、これはまた雇用・能力開発機構で支給しておりますが、「受講環境整備奨励金」、これは事業主に自主的な能力開発環境整備計画を作っていただいて、就業規則の変更などをして、自主的な能力開発のために時間を確保するために必要な措置、能力開発の機会に関する情報提供、相談その他の援助を行う事業主ということで、対象としては比較的広いものですが、こういった環境整備に一定の奨励をしていこうという助成金です。
 「長期教育訓練休暇制度導入奨励金」ということで、先ほど能力開発給付金の中では、有給教育訓練休暇の支援ということになっておりましたが、ちょっと視点を変えて、ここで長期教育訓練休暇というものの導入を奨励しております。就業規則で教育訓練受講目的で連続1カ月以上の休暇制度を導入した場合に、その休暇を取得させた事業主に対して支給するということです。
 「情報関連人材育成事業助成金」ですが、新事業創出法という法律が平成10年12月に制定されて、翌年2月から施行されております。この助成金も、翌年度の11年4月から作っておりますが、IT関係の人材養成に特化した行政で、通商産業省との共同事業ということになっています。
 その中で、「推進団体助成金」ですが、これは情報処理振興事業協会という中核的な団体がありまして、その協会に対する助成。それから、「情報関連人材育成事業推進助成金」というのは、実際に情報処理に関する訓練を行う主体に対する助成です。最後の「派遣奨励金」は、訓練を行う主体に対して、自分の労働者を派遣する場合の助成で、これは受講料の助成をしております。
 最後は「能力再開発適応講習受講給付金」ということで、これは雇用保険の受給資格者ということに限っておりますが、職業訓練の受講を促進するために必要な知識を付与するために行う講習を、雇用・能力開発機構で行っております。訓練の事前講習みたいなものですが、それに対して受講した場合に、さまざまな費用とか受講の奨励といった観点から、1日当たり1人に対して880円を支給するという給付金です。以上、ざっとご説明申し上げました。

(部会長)
 財源は何ですか。財源は、大体、雇用保険ですか。

(事務局)
 すべて労働保険特別会計雇用勘定の能力開発事業です。事業に基づく給付金ですが、実は能力開発事業の給付金といいますと、これだけではありません。例えば建設関係の教育訓練助成金、あるいは介護関係の能力開発助成金、これは実は職業安定局所管という部分もあります。これは、要は特別な分野にかかる助成金で、介護だったら介護、建設だったら建設ということで、セットで考えておりまして、従来からそういった切り分けでやっていて、職業能力開発局所管部分の助成金をただいま説明させていただいたということですので、その点ご理解いただければと思います。

(部会長)
 ほかにも、そういうものはありますか。労働省の中ではそれだけですか。

(事務局)
 ほかにも、分類をしているものというのは、いくつかあります。もし必要であれば、次回にでも、参考までに他局所管分ということで資料をお出しします。

(部会長)
 中央職業能力開発審議会としては、労働省のそういう縦割りにあまりこだわらないほうがいいですね。もう少し広く、情報は承知していたいと思います。

(事務局)
 資料No.5のいちばん初めの頁に戻ります。今回の「見直しの趣旨」です。「給付金等は、人材高度化の推進、生涯能力開発の推進、認定職業訓練の振興等を主な目的とする制度となっておりますが、職業能力開発施策の在り方の見直しに当たりましては給付金制度についても、これに沿った見直しが必要となります。また、これまでの助成金制度の累次の改正の結果、事業主による職業訓練の実施に対する賃金助成等が複数の制度で重複して措置されるなど給付金制度として非効率で、事業主が給付金を活用するに当たってもわかりにくい仕組みとなってきている傾向も認める」。
 先ほど、人材高度化、能力開発、認定訓練というふうに分けてご説明しましたが、いずれも事業主が労働者に職業訓練を受けさせる場合の助成ということで、かなり重なっております。法令上は、併給調整規定を設けて調整しておりますが、実際上重なる部分があって、どの助成金を請求していいのか、どこの窓口に請求していいのかというのがわかりにくい部分も相当出てきているというのが現状です。
 「このため、能力開発事業に係る給付金等の見直しに当たっては、今後の職業能力開発の施策の方向性を十分に踏まえた助成の重点化、体系化を図るとともに、給付金制度としてわかりやすく、かつ利用しやすい制度となるよう簡素合理化を図ることが求められる。
 すなわち、産業構造の急速な変化、労働力の流動化の下、職業能力開発施策の在り方を個々人のキャリア形成支援に重点を置いたものへと見直していく中で、事業主の行う職業能力開発を支援する助成金制度についても、より労働者個人の主体的な能力開発の取組みの促進に助成の重点化を図った上で、新たなわかりやすい助成体系を構築することが必要である。
 また、地域ごとの企業及び労働者の能力開発ニーズに対応した職業能力開発を捉進するため、各都道府県の独自の職業能力開発施策とも十分に連携する必要がある。さらに、給付金等の簡素合理化の観点から、支給事務等を見直す必要がある」。
 これは一応、事務局として、こういった大きな観点が能力開発給付金の見直しには必要ではないか、と考えているということです。
 整理しますと、「見直しの視点」ということで、「個人の主体的なキャリア形成の支援促進への助成の重点化、体系化」「地域ごとの能力開発ニーズに対応した職業能力開発の促進」「助成金支給事務等の簡素合理化」といったところではないかと思われます。
 参考ですが、先ほど部会長からも若干ご紹介がありました、雇用安定等事業部会報告ということで、本年9月1日に出されたものです。こちらの責任で、能力開発の関連部分を極めて簡略化してまとめております。「重点化及び体系化」「能力開発事業の給付金については、今後、労働者個々人の適切なキャリア形成や労働者の主体性を踏まえた就業能力(エンプロイアビリティ)の向上に資する職業能力開発により重点を置いて体系化していくことが必要である。その際、職業能力評価制度の整備を促進するとともに、労働者個々人による主体的なキャリア形成の取組みに対して事業主が支援する仕組みについても、重要な手段として位置付けることが適当である」。この部分については、職業能力施策に関する在り方研究会の議論をこの部会にもご紹介申し上げて、そのご理解を得て、それと同様の方向で記述していただいたという経緯があります。
 「簡素合理化」の所は、これは各事業共通の部分で、こういった観点で見ていただきたいという部分ですが、「実績、実効性の視点からの点検」は、実績、実行性のないものについては、廃止を含めた整理合理化をする。「支援の必要性の点検」は、業種、企業規模、地域、年齢等を用いた支援対象の決定方法の妥当性の検証ということです。そういった形で、助成対象は区々に分かれておりますので、なかなかわかりにくいという部分があります。
 ちなみに、職業安定局の議論では、いま業種の枠組みというのが非常にわかりにくくなっておりますので、特定不況業種等関係労働者の雇用の安定に関する特別措置法という、特定不況業種の労働者の対策の法律がありますが、それについて来年6月30日で期限が切れるわけです。そういったことで今後、業種対策というのをどうしていったかという議論はありますが、業種の区分については今後維持できないのではないか、新たな考え方が必要ではないかといった議論が、いま中央職業安定審議会でなされている状況です。
 「助成手法の妥当性等の点検」は、「政策目的が同一又は類似でありながら、創設の経緯等から別の助成金となっているもの等の整理統合」です。先ほど申し上げた3つも、いろいろな経緯で3つの分類になっているわけですが、政策目的とか手法は類似をしている部分が多いと思われます。「廃止、見直し期限の設定」は、ずっと補助的制度ということを原則とするのではなくて、一定の期限を各助成金に設定してはどうかという考え方です。最後に「事務手続の簡素化」ということで、「支給窓口の統合などの事務手続の簡素合理化による事業主の負担軽減」です。こういった点を総合的に見直したらどうかという考え方が示されているところです。
 そこで、具体的に各助成金をどうするかという議論、これは次回にお願いしたいと考えております。そのときの前段階の議論として、考え方を少し整理しております。
 2の(1)、「重点化及び体系化」の点ですが、1つ目はイとして、「労働者の主体的なキャリア形成に対する支援」ということで、今後この部分について、政策的重点を置くとすれば、給付金についてもこういった重点化に沿った見直しが必要ではないかという観点です。「今後の職業能力開発施策の在り方に関する議論を踏まえ、能力開発関係の給付金制度についても、訓練目標等が明確化された教育訓練、職業能力評価、キャリア・コンサルティング等を効果的に組み合わせた職業能力開発を促進、支援するという新たな視点から見直す必要があるのではないか」という点です。
 さらに、「教育訓練、能力評価等、個別の事項につきましては、次のような考え方により措置することが適当ではないか」ということで、(イ)として、「事業主の行う教育訓練における訓練内容や訓練目標の明確化」として、「事業主の行う教育訓練に対し、助成措置を行う場合には、個々の労働者の主体的な能力開発を促進する観点から、当該教育訓練の内容、及び当該教育訓練を受けることによって得られる職業能力や、それで遂行可能となる業務が明確化されているものを助成対象とすることが適当ではないか」ということです。そのため、現行の助成要件である事業内職業能力開発計画の作成、提出につきましては、「その内容の適正化を図るとともに、労働者に対しわかりやすい形で周知させるための措置が必要ではないか」ということです。先ほどお示しした事業内職業能力開発計画は、様式を見ていただいてもわかるとおり、助成金をもらうための計画みたいな形になっていて、事業主が作成して都道府県に提出をされる、このペーパー自体はそれだけのものです。宛先も「都道府県知事」となっています。
 今後は、労働者の主体的な能力開発を事業内においても推進していく必要がある、という基本的な方向性を考えますと、事業内職業能力開発についても、もっとわかりやすく、この訓練の成果がどういう形でその人の能力や処遇に反映されていくのかということが示されているものである必要があり、またそれが労働者に対してわかりやすい形で周知されている必要があるのではないかと考えております。労働者の主体的な職業能力開発を積極的に推進する立場からは、そういった訓練目標の明確化等の措置を講じている教育訓練について助成をする。むしろ、助成制度を通じて、そういったことを促進していく、指導なりをしていくことが、今後の政策推進に重要であり、効果的ではないかという観点です。
 (ロ)ですが、もう1つの大きな政策重点の「職業能力評価等の推進」について、どのような考え方で支援していくかということです。1つ目は、「労働者の職業能力が適正に評価されることを促進するため、事業主が個々人のキャリア形成を支援するに当たり、適正な職業能力評価制度の活用を促進するための支援の仕組みを設けることが適当ではないか」ということです。先ほどご議論いただきましたように、職業能力評価制度は多種多様なものがあります。その中で、どのようなものを選択し、受けていくかということも重要ですし、それが受けやすい環境づくりというものが必要ですので、そういった観点から新しい形の助成制度、給付金制度を構想してみてはどうかということです。
 もう1つは、「労働者が自らその職業能力開発等の方針を定め、効果的な教育訓練の受講等を促進するため、事業主がその雇用する労働者にキャリア・コンサルティングを受けさせることを促進するための支援の仕組みを設けることが適当ではないか」。能力評価、教育訓練、いずれも事業主から与えられるだけのものではなくて、むしろ労働者が主体的に計画的に、こういった教育訓練なり評価を受けて、自らを伸ばしていく。これを促進することが最終的には必要なのではないかということで、能力評価の中で、評価制度に対する支援とキャリア・コンサルティングの支援と、これは必ずしも同じ形にはならないし、助成技術的にも違う形になると思いますが、こういった要素も新しい形で入れていく必要があるのではないかということです。
 繰り返しますと、これまで教育訓練について助成をしておりましたけれども、これについてはもう少し労働者の主体性が発揮されるように、わかりやすい形で訓練の効果とか目標をもっと明確にしていくという部分。それから、新しい考え方ですが、職業能力評価等についても、助成、給付金の重点化、政策目的に入れていくということが重要ではないかということです。
 もう1つの大きな「重点化及び体系化」の視点ですが、「地域における職業能力開発の基盤形成の推進」です。「地域における人材ニーズ等に即した職業能力開発」、これが重要なことは言うまでもありません。その中で、これは基本的には地域がやることなのでしょうけれども、国としてもその基盤形成について、一定の支援をしていくことは重要ではないかと考えております。そのため今後、「都道府県の意見等も聴きつつ、都道府県と連携した能力開発施策の推進が可能となる新たな枠組みを検討することが適当ではないか」ということです。これは国がどうこうというよりも、都道府県の創意・工夫をいただく部分ですので、もしこういう形でご了解いただくなら、今後どういう枠組みでこういったものをやっていくかについては、幅広く都道府県の意見等もお聞きしないといけない部分です。
 もう1つ大きなもので「簡素合理化」ですが、「給付金の整理統合」です。今度、三事業の大きな見直しをしておりまして、昭和56年辺りに1回大きな見直しを行っておりますが、それ以来、大規模な見直しは実は行っておりません。それ以来の見直しを今回、三事業全般にわたって行おうということにしておりまして、その間に増えてきた給付金等を整理統合して簡素化しようという動きで、能力開発事業についてもそういうことが求められております。
 現在、事業主の行う職業訓練等に対する助成制度は、その創設の経緯等により、各助成金にそれぞれ分担、細分化されております。そのために、当然、助成対象が重複して、併給調整問題が生じやすい状況になってきております。制度として複雑化、非効率化しており、支給申請に当たっても、事業主さんの側から見てもわかりにくい。制度を運用する側も窓口として、雇用・能力開発機構、都道府県、国といろいろありますので、双方にとってわかりにくい制度になっております。政策的な効率化の観点から、これらの整理統合を図ることが適当ではないかということです。
 「支給手続の簡素合理化」ですが、「支給手続の複雑さをはじめ支給手続上の問題により、給付金の利用が抑制されることのないよう、支給窓口の統合など、支給事務の簡素合理化を図ることが適当ではないか」ということです。これは各助成金共通のことで、その辺を併せてご検討いただければと思います。
 こういった基本的な考え方の下に、ご了解いただければ、先ほど申し上げた具体的な助成金の取扱いについて、次回にでもご議論をいただければという流れで考えておりますので、よろしくお願いします。

(部会長)
 どうもありがとうございました。ただいまのご説明に対して、ご質問、そのほかありますか。

(委員)
 「雇用三事業にかかわる給付金の見直し」の「考え方の基本」として、「仕事と家庭の両立の支援」の所については、これは重要な課題であるということが、まずあったと思います。それで、育児・介護給付金が25%から40%、能力開発事業にかかわるものとしては、「育児休業復帰プログラム助成金」があったと思います。
 私は、この三事業見直しの基本的に仕事と育児の、とりわけ育児の所は1年、1歳までというと長い期間になりますから、復帰プログラムを実施する事業主に対する助成金というのを、今度の見直しの中において両立支援策というのが重点であるということであれば、それにきちっと支援を置いていくなり、充実していくなりという課題として受け止めていきたいと思います。

(事務局)
 9月1日の雇用安定等事業部会報告におきまして、「主要な対策分野別に見た見直しの視点」ということで、いくつかの視点が掲げられておりまして、いまご指摘のあった両立支援対策関係についても指摘されております。読み上げさせていただきますと、「仕事と家庭の両立支援対策については、7月25日から女性少年問題審議会において、法的整備も念頭に置きながら検討が開始されたところである。このため、両立支援対策関係の助成金の見直しについては、同審議会における議論の方向性を見極めたうえで行う必要があると考える」ということです。現在、女性少年問題審議会におきまして、先ほどおっしゃられた育児休業・介護休業復帰プログラムの助成金を含めて、審議がなされていると聞いています。

(委員)
 基本的に、この見直しについては私は時宜を得たものではないかと思いますし、むしろ遅かったのかという感じがしないわけではないのですが、能力開発関係ばかりではなくて、過日マスコミでも、雇用保険三事業に関するある意味でのミスマッチがあって、有効に活用されていないのではないかと、そのようなご指摘があって気になっていたところで、是非きちっとやってほしいと思っております。
 1つは、2頁目の「地域における職業能力開発の基盤形成の推進」という項目ですが、特に労働移動が激しくなってくる時代とは言いながらも、やはり居住地を移転するということまでになると、中高年は抵抗が多いということになると、どうしてもその地域の中での移動というのが非常に重要になってくるのではないかと思っており、この視点は大切だと思っております。したがって、「新たな枠組みを検討する」と書いてあるのですが、現時点で考えがあれば、どんなことを検討しようとしているのかお伺いしたいと思っております。
 もう1つは、これは不勉強で大変申し訳ないのですが、能力開発関係の給付金等について見ても、資料の5頁から7頁に記載されている言葉だけで見ても、「助成金」「給付金」「補助金」「奨励金」、こういう言葉があるのです。これは、もちろん性格が違うのだと思うのですが、金額の規模が違うのか、あるいは予算勘定が違うのか、それとも対象が事業主の場合なのか、個人なのかと、このように見て話を伺っていたのですが、どうも頭の中で整理ができないのです。次回でも結構ですから、その違いとかを説明いただければと思います。この辺についても、わかりづらいというところの一因になっているのではないかと思いますので、小さい話かもしれませんが、この辺も少し整理されたらどうかと思っています。いまおわかりなら、その違いをお伺いしたいと思います。

(事務局)
 「助成金」「給付金」「奨励金」という名前についてですが、先ほど補助金とそれ以外はかなり違うということで申し上げました。「補助金」というのは、一旦、県に渡して、それから補助するという仕組みのものです。「助成金」「給付金」「奨励金」の違いは、「奨励金」はかなり性格がはっきりしていて、例えば対象とする、例えば賃金とか運営経費、こういったものとの関連性が非常に薄いわけです。制度を導入したから、奨励措置としてポンと30万ということで、奨励の意味で金額を支給するということで、助成対象との関連性が非常に薄い場合が奨励金ということで使われる傾向があるということです。
 「助成金」「給付金」については、これは非常に混乱をしておりまして、一般的には大きな括りを「助成金」、その中の細かい括りを「給付金」ということで使う場合が多いのですが、実はこれを見ていただいてもそれがかなり混同されていて、名称として、どのレベルの名称なのかということが、はっきり言ってわかりにくくなっています。まだ内容の検討が続いておりますので、今回、名称については最終的にどういう方針で整理するのかというのが行われておりませんけれども、ご意見につきましては十分踏まえたいと思っております。
 第1番目の地域の基盤形成の推進につきましては、先ほど申し上げましたように、どういう形でやったらいいのかというのは、むしろ都道府県の方々の意見、地域の職業能力開発に基盤形成というのは、国策としても非常に重要なものですから支援していくということです。これは、実は先ほど言った助成金・給付金型ではなくて、むしろ補助金型になると思っているのですが、県にも負担していただいて、国も支援するという形で、県独自の能力開発施策を展開していただくということです。
 国と都道府県との役割分担というのは非常に重要な議論としてあるわけですが、例えば先ほどおっしゃられたような地域に限定された高齢者、障害者の問題とか、あるいは地域限定型の特定の技能、知識の振興、あるいは地場産業の高度な技術人材の育成、こういったものがおそらくこの枠組みの中に入ってくるのではないかと考えております。いずれにしても、そういった創意・工夫の枠組みということで、一定のメニューは示させていただくことになると思うのですが、できるだけ地域の創意・工夫を尊重していきたいと思います。
 これは、職業安定局におきましても、今後、雇用の創出等に当たりましては、国と地域の共同事業というのは雇用政策の部分でもやはり必要だろうということで、いま新しい枠組みを検討されております。能開行政としても、そういった形である程度呼応した形で、雇用対策、能力開発施策を十分連携した形で、国・地域の共同事業みたいなものをしっかり推進していくということを大枠としては考えたうえで、ロの部分をご提案させていただいております。

(委員)
 この体系化、重点化という部分については、大いに賛成で、かなりの数があったり、中身がかなり混乱しているのが現状だと思うのです。その体系化、重点化をバックアップするためにも、今回の2頁にありますように、労働者にわかりやすい形に周知させるとか、あるいは業務が明確化されたものについて助成対象にするという部分では、私たちがいま議論している次の職業能力開発基本計画をどう推進するかという部分が大きな役割になるのではないかと思います。この重点化、体系化をいわゆる支援、バックアップするためにも、いま議論している部分で書き上げる次の職業能力開発基本計画の部分では、ある程度詳細な、あるいは推進するという部分で引っ張っていくような文章の書き方というのは、一工夫する必要があるのではないかと思いますので、その辺はよろしくお願いします。
 もう1点は、3頁目の「簡素合理化」ですが、支給の内容なり、支給箇所が違うということと、前回アメリカに行かせてもらいまして、この7月から「労働力投資法」という法律ができて、ワンストップのキャリア支援センターというのが各州にできているのです。ですから、能力開発の部分で相談に行くと、その1カ所で全部、支給から訓練の指導まで対応できるという部分ができています。日本も、能力開発の部分が都道府県のどこかへ行くと、そこですべて導入から支援まで、あるいは訓練の指導までできるように、支給手続も含めてワンストップのキャリア支援センター的な窓口ができて、例えば受付で、「こっち行きなさい」「あっち行きなさい」ではなくて、1カ所で支援できるような体制を何か考えていく必要があるのではないかと思います。「簡素合理化」のほうでは、縦割の制度になるのか、あるいはフラットになるのかは別にして、そちらのほうも顧客対応でワンストップで支給業務ができるような部分は、是非、お考えをお願いしたいと思います。

(事務局)
 確かに第1番目の点につきましては、どういった形で訓練計画というか、体系を各事業主の方々に明確化させていくのかというか、労働者がわかりやすい形で理解できるようにするのかというのは、これはまだまだ試行錯誤しながらやっていかなければいけません。例えば中小企業の方々については、業界なり、共同してやっていただくということも、いろいろ考えていかないといけないかもしれません。国としても、雛形を示すとか、給付金だけではなくて、啓発活動を事業としてやっていかないといけないということがあると思います。情報を示して、それを見て、キャリアプランなりを労働者が立てていく、このような形でつなげていけば、能力評価の制度のシステムの整備にも資するのではないかと思っています。教育訓練だけを見ても、教育訓練をするのか、その目標は何か、効果はどういうものなのかということをしっかり押さえていく必要があると思っています。そういう点は、十分、第7次職業能力開発基本計画の所にも踏まえていきたいと思っております。
 ワンストップの話につきましては、これはどこまでできるかわかりませんが、都道府県の所を見ましても、都道府県の県庁の他に、労働局というのができましたし、公共職業安定所、能力開発に関しては都道府県センターと、いま言うだけでも4つほどあります。事務的にいいますと、どこかに集中すれば、事業主さんとか労働者の方はわかりやすいのですが、集中した所の機関は業務量がアップいたしますので、たまらないということになります。その辺を勘案しながら、例えば支給事務はそれぞれの所でやるけれども、受付窓口はできるだけ統一するとか、それを回してあげるとか、そういった工夫もあるのではないかと思いますので、その辺は事務的にどこまでできるかということを含めて、これは職業安定局なり、ほかの局との局間の問題でもあるので、引き続き前向きに検討していきたいと思います。

(委員)
 先ほどの評価・資格制度と同じように、あそこでも言われているように乱立して本当にわかりにくいというのは、この給付制度についても言えると思うのです。具体的に能力開発絡みのものが大体20種類近くあると思うのですが、ざっと並べていただいたものの名称を見ただけでも何が何だかよくわからない。これが実情だと思います。お考えは次回以降に示されるのかもしれませんが、この20種類近くあるものをばっさり全部切ってしまって、全く新しいものを作るのか、それともこれは必要なものを残して、何らかの組替えをするのか。その辺の考え方というのは、何かできているのでしょうか。
 もう1つは、これとは別枠で、教育訓練給付制度でしたか、個人に支払われる制度があって、活用がどんどん進んでいるという実情が一方であるわけですから、そういうものとの見合いでいくと、やはり現実性のあるもの、それはある程度絞り込む必要というのは絶対あると思うのです。その辺のイメージとして、トータル的に考えていかなければいけないと思うのですが、そういうものについてのイメージをお持ちなのかどうか。もし持っているなら、漠然とした姿でもいいですから、お示しいただきたいと思います。

(委員)
 次回、具体的にお示しできればと思っておりますが、いちばん大きなところのイメージとしては、事業主が行う職業訓練に対する助成金が、同じ訓練なのにいろいろな助成金に分かれている、ここは少なくとも統一していかないといけないだろうと思っております。ですから、いまI、II、IIIと分かれているわけですが、実際やっている事業主にとってはあまり違いはない部分がありますので、その辺はむしろ事業主さんの感覚に近付ける部分、これは事業主さんだけではなくて、労働者の受ける感覚にも近いと思うのですが、そういった部分で統合なり、そういった塊にしていくということで、できれば1つの名称の下にやりたいと思っております。もう1つは、訓練だけではなくて、新しい部分として職業能力評価という部分を突っ込んでいくというイメージがあります。
 IIIの「認定職業訓練の振興」の部分があるのですが、ここは先ほど言った県の基盤整備と非常にかかわるところで、助成制度としても県を通じてやっている部分もあります。認定職業訓練の認定自体も都道府県のほうでやっておりますので、都道府県の職業能力開発施策と、かなり関わります。おそらく、この見直しを契機として、第7次職業能力開発基本計画の運用の中で、国と都道府県の役割とか、県がどういう形で今後やっていくのかという部分も議論していかないといけないと思います。その部分は、すぐにできるかどうか、自信がないのですけれども、早急に認定職業訓練の部分も含めてやっていきたいと思っています。大きく分けると教育訓練ということで、教育訓練自体を一括りにするということと、職業能力評価をしっかりやっていく。それから、都道府県の基盤整備をしっかり支援できるような形にしていくということがあります。
 職業能力開発促進法というのは、先ほど申しましたように、中小企業労働確保法とか地域雇用開発促進法とか、情報関連とか、ややこしい、かなり数が膨らんでいるという部分は、実は特別法で特例を作っているからという部分もあるので、その辺はどの程度整理できるか、そこはちょっとわかりませんけれども、基本骨格はしっかりそういった形でやって、ほかの助成金は特例だという形で、わかりやすく整理はしていきたいと思っています。いずれにしても、具体的イメージは次回ということでお願いいたします。

(部会長)
 技術的なことを確かめておきたいのですが、この審議会は、職業能力開発基本計画を作るということです。その中の一部が給付金のことも議論することになるわけですか。

(事務局)
 いわば基本的な方向性という形で、いまご議論いただいておりまして、12月に職業能力開発基本計画の策定に向けた今後の施策の方向性を示していただく中で、当然その一部として、給付金の在り方についてもご提言をいただきたいと思っています。

(事務局)
 7月にご審議を始めた経緯は、「今後の施策の在り方」ということで、非常に包括的なものです。その中の大きな柱が職業能力開発促進法関係と職業能力開発基本計画ですが、その2つに必ずしも限定されるものではありません。今後の施策ということで、7月からご議論いただいています。その中の1つとして、助成金も具体的にどうするか。職業能力開発基本計画にどう書くかという問題ももちろんありますが、それだけではなく、給付金自体としてどうするかというのも、今後の施策のあり方の1つとしてご議論いただいていると、こういう形です。それはどこまで細かくというのはありますが、一応、職業能力開発基本計画を書くだけの範囲だけではなく、施策として助成金も議論いただくということです。

(部会長)
 例えば、給付金を取ったときに、これは具合が悪くなったからやめるというのは、勝手に一方的に決めてしまっていいのですか。もらう側とか、事業主とか労働者には、一方的にこれは新しくします。もちろん、改良するわけだから、目的は新しくなって、制度としては改善されているわけなのですが、中央職業能力開発審議会がこれはやめてこちらにしますというふうに、勝手に一方的にやってしまっていいのですか。

(事務局)
 ですから、勝手にやらないように、中央職業能力開発審議会でご議論いただくということです。

(事務局)
 いまご議論いただいているのは、現状を踏まえて、どういうふうに整理するのがいいかというお考えを、審議会からご提言いただきたいということですから、助成金の整理統合を具体的にやるとなると、これはまた改めてそれを受けてということになりますので。

(部会長)
 勝手なことを申しましたけれども、1つの変わり目にいるわけだから、この際、給付金も細かい手直しをやるのではなくて、いままでのものを全部ゴミ箱に入れて、新しく考えるというふうにしたらいいのではないかと思ったのですが、そうすると、そういうことも理屈としては可能なわけですね。

(事務局)
 気持としては、おっしゃるような気持で、また次回具体的に。

(部会長)
 まだご意見があるかもしれませんが、そうするとこの次はこの給付金の話の続きと、職業能力開発促進法の改正の話の続きもあるわけですね。いずれにしても、制度改正についてのご議論を次回も続けていただきたいと思います。次回は、11月27日、月曜日の午後1時に予定しております。よろしくお願いします。どうもありがとうございました。

照会先 厚生労働省 職業能力開発局
    総務課 政策計画・調整係(内線5959)


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