中央職業能力開発審議会 第78回総括部会 | ||
日時 | 平成12年10月26日(木)10:00~12:00 | |
場所 | 労働省省議室 | |
議題 | (1)今後の職業能力開発施策の在り方について (2)その他 |
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配付資料 | No.1 今後の職業能力開発施策の在り方について No.2 キャリア形成を支援する取組等の実情 No.3 キャリア形成を支援するための施策(案) No.4 キャリア形成を支援するための施策体系のポイント No.5 「日本新生のための新発展政策」について No.6 「勤労体験プラザ(仮称)」パンフレット |
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出席委員 | 総括部会所属 | |
学識経験者 | 尾高煌之助 大澤 眞理 早川宗八郎 |
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労働者代表 | 市川 清美 鈴木 利文 堀口 雅行 |
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事業主代表 | 青山 伸悦 小嶋 隆善 讃井 暢子 |
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総括部会所属以外 | ||
労働者代表 | 平山 和雄 | |
事業主代表 | 杉山 幸一 |
(部会長)
ただいまから「中央職業能力開発審議会第78回総括部会」を開催します。
早速、議題に入りたいと思います。まず、お手元の資料1ですが、これは前回の会合で事務局より説明され、ご議論いただいて、了承されたものであります。今後、キャリア形成を柱として、職業能力開発施策を展開していくに当たり、必要な制度改正をするための前提になるものです。この前の議論に基づき、この資料を事務局で訂正していただきましたので、改定部分について事務局からまずご説明いただきたいと思います。
(事務局)
資料No.1、「今後の職業能力開発施策の在り方について」について、前回から変更があった部分をご説明いたします。まず1頁、1-(1)、(1)のところです。3行目のところ、前回は「長期的観点からの能力投資をする観点が後退し」と書いていましたが、そこを「若年者や管理者等に能力開発の対象を絞り込む傾向がみられる」ということと、「全体として企業主導の教育訓練が後退し」という形に訂正いたしました。次に1頁、「企業外の変化」のところの(1)であります。最後のところ、「外部労働市場の拡大を生じており、労働者の自発的能力開発の必要性が高まっている」という下りを挿入いたしました。
次に、2頁の真ん中より少し上、「就業意識・就業形態の多様化」の第2パラグラフを挿入いたしました。「また、近年、パートタイム労働、在宅就業等の働き方が増えているが、こうした就業形態についてキャリア形成や能力開発が十分なされておらず、その対応が求められる」というように挿入いたしました。
次に(3)「雇用情勢と職業能力開発」であります。これは事実関係ですけれども、前回、ミスマッチの要因が3分の2と書いてありましたが、2000年度第1四半期について分析すると4分の3がミスマッチによるものですので、数字の訂正をいたしました。
次に3頁、イのところです。前回は「個人主導の職業能力開発の推進」というタイトルで記載して、いろいろご議論をいただきました。前回の議論を踏まえ、「労働者の自発性を重視した職業能力開発の推進」という表現に改め、以後「個人主導の」というものについては、「労働者の自発性を重視した」ということに書き換えています。
具体的な文章ですけれども、第2パラグラフを追加しました。「このため、今後、労働者の選択による研修の実施や労働者の自発的能力開発等労働者の自発性を重視した能力開発を推進していくことが不可欠となっている」ということで、労働者の自発性を重視した職業能力開発の中身についてここで書き込んだわけであります。
イのところ、最後のパラグラフも追加いたしました。「したがって、選択型訓練や自発的能力開発などの労働者の自発性を重視した能力開発を推進し、支援できる体制をつくり上げることにより、企業と労働者それぞれの取組みによる能力開発のベストミックスを実現し、全体として職業能力開発を推進することが必要である」というようにいたしました。
次に、ロのところは前回、「雇用され得る能力(エンプロイアビリティの向上)」というタイトルでしたが、内容が実践的職業能力の向上という書き方をしていますので、タイトルを「実践的職業能力の向上」と改めました。それから、内容的にILOでの議論とイギリス、アメリカ、NCVQとかNSSBの紹介を書いていましたけれども、説明は省略いたしました。文章自体の変更点はありませんが、ILOと外国の制度の紹介について省略をしております。
次に4頁、ハの「キャリア形成の推進」であります。これについても、文末にひとつパラグラフを追加いたしました。「なお、パートタイム労働者等については今まで十分にキャリア形成が図られていないところであるが、今後就業形態の多様化の進展が見込まれる中で、パートタイム労働者等についてもキャリア形成が可能な就業形態とするとともに積極的に能力開発を行っていくことが求められる」というようにいたしました。
5頁目、6頁目のところは、「個人主導の」というところを「自発性を重視した」というように、基本的に書き直しているだけの文章整理をしております。
次に7頁、「今後の職業能力開発施策の内容」であります。ここで柱書きを追加いたしました。(1)の前、「今後の職業能力開発施策について対象別分野別に整理すると、概ね次のようになるが、各施策を推進するに際しては、関係行政機関との連携を密にするとともに、施策の効果については、新たに実施される政策評価制度等により適切に評価を行っていくことが重要である」というように追加いたしました。
9頁、「事業主が行う能力開発の推進」につきましては、ご指摘も踏まえ、「事業主等が行う能力開発の推進について」というように変更しました。
10頁、「就業形態の多様化に応じた能力開発について」であります。ここについては、文章整理を若干行っております。追加した文言として、(1)の1行目から2行目、「こうした働き方を選好する労働者に対応するため」という下りを挿入しています。
それから、(3)の下から11頁にかけて、「企業内における通常の労働者との均衡を考慮して推進されることが必要である」ということを追加しています。
11頁のハ、「障害者等特別な配慮を必要とする人たちに対する能力開発について」であります。(2)の最後のほう、「IT化の技術的成果を効果的に活用した新たな訓練手法を検討することが必要である」と追加しています。
13頁でございます。前回、「技能の振興、ものづくり労働者の能力開発について」と人づくりの関係についてご議論いただいたわけであります。今回はこのペーパーに、「技能の振興、ものづくり労働者の能力開発について」を追加して入れています。内容的には前回お出しした資料、「今後の方向」と基本的には変わっておりませんけれども、1つだけ追加した項目が14頁の(2)であります。「将来のものづくりを担う若年者を育成するために、基盤的技能を習得できるような教育訓練機会を確保することが重要である」という項目について新たに追加いたしました。以上です。
(部会長)
どうもありがとうございました。ただいまのご説明について、何かご質問等はありますでしょうか。
(委員)
1頁のいちばん最初、「企業内の変化」というところ、前回の意見に基づいて修正を加えてくださっているということで、よろしいかと思います。しかし、なお何となく、ニュアンスの点で申し上げたい点があります。3頁の上から4つ目のパラグラフと言うのでしょうか、イのところ、「労働者の自発性を重視した職業能力開発の推進」の頭の3行、「企業内において、労働者の就業意識・就業形態が多様化しつつあり、一律の能力開発はなじまなくなっている」とあり、「企業主導の能力開発だけでは限界がある」と、同じようなことが書いてあるわけです。1頁の書き振りと3頁の書き振りというのが、調子がそろっていないのではないかという気がするのです。やはり、画一的なOJTとかOff-JTというようなものが、現状に対応するにはある程度限界がある。企業主導だけでは難しいという、企業の悩みというか、課題だというところがわかるような形で書いていただけるといいかなという気がします。
(部会長)
どのように書き直しましょうか、何かご提案はありますか。1頁のほうを書き直すことをご提案ですか。事務局のほうは知恵ありますか。いまの点について、何かほかにご意見はありますか。それでは、考えておられる間に、ほかのご意見があったら伺います。
(委員)
いまのところなのですが、(2)のほうでそういうニュアンスを膨らませることは難しいですか。(1)のところで両論を入れると趣旨がわからなくなってしまうのですが、(2)のほうが比較的、新しい事態への指摘ではないかという気がしています。
(部会長)
何か積極的なご意見はありますか。
(委員)
つまり、一律のものだけでは対応できなくなっている、ということをそのまま、いまご指摘の3頁と同じニュアンスであったとしても、(2)の冒頭か、おしまいのほうで、そのことを指摘されることはむしろ必要だと私も思います。
(部会長)
何か知恵はありますか。
(委員)
あるいは、実際にOJTやOff-JT実施率が減少しているということは事実だと思いますので、「減少しており」のあとに「企業主導の能力開発だけでは限界がある」ということを示している。これが今後の能力開発の大きな課題になっている、というような書き方にしていただいたらどうかと思います。
(部会長)
そうすると、企業の主導だけでは限界があるという趣旨のことをここへ書き込むというのがご提案ですか。
(委員)
はい。
(部会長)
ほかに何か、ご意見はありますか。それでは、ちょっとその点は工夫させていただきます。ほかに何かご意見はありますか。
(委員)
やはり、気持の上でもう少し説明していただきたいのは、実は、11頁の「公共部門と民間との役割分担」のところ、その第3パラグラフのところ、「また、公共部門は、民間では実施が期待し難い分野として」、最初の「多額の設備投資を有する先端的な分野のほか」、あとは「セーフティネットとしてのの最低限の教育訓練機会を確保するため、失業者等に対する無料の訓練や中小企業の在職者が受講できる低料金の訓練に係る分野、その他ニーズがありながらも、民間で実施し難い又はしていない分野等について、直接職業訓練を実施」ということです。これはいまもそうなっている、今後もそうするということですが、いまやっているというのはどういう分野ですか。それから、本当にこういうことがやれるのでしょうか。どうなのでしょうか。
(部会長)
ここは別に改定はしていないわけですね、この前と同じですか。
(事務局)
ここは前回と同じですし、現状を変えるという書き方ではないと思います。
(委員)
「いまもやっている」というのは、何のことを言っているのですか。「多額の設備投資を要する先端的な分野の職業訓練」というのは、例えば。
(事務局)
例えば高度ポリテクセンターとか、あるいは職業能力開発短期大学校の大学校化ということを念頭に置いています。
(委員)
ああ、そういうことを言っているのですか。
(部会長)
ここは文章が長いから、少しわかりにくいということはあるかもしれません。それでよろしいですか。
(委員)
はい、結構です。
(部会長)
多少、文章を工夫したほうがいいかもわかりません。ほかにございますか。
(委員)
私は総じて、前回の意見は入れられているという感じで捉えております。
(委員)
いまの「公共部門と民間部門との役割分担」というのは、別に注文をつけるということではなくて、非常に重要な部分だと思うのです。やはり、今後、能力開発は非常に重要になってくるわけです。それを効率的に進めるのには公共部門が秀でているところ、民間のところが秀でているところというように、役割の違いというものを認識して進めていくことが大変重要だと思いますので、この指摘は非常に尊重したい指摘なのです。
むしろ、興味があるのは、これから具体的にいろいろな施策が出てくるときに、どのように実現されていくかというところなのです。今回も目玉というか、キャリア形成の支援ということでキャリア・コンサルティングとか、いろいろなことが出ております。私どもも今後の能力開発として、早期から企業、労働者ともども、キャリア・デベロップメントプランというか、そういうものを重点に考えていく必要があるというようにかねがね主張しております。そのような問題意識から、既に企業でいろいろ着手しているところもあるわけです。そういったところにさらに何か、こういう施策を講じなさいということで、二重の負担をかけるようになったのではあまり意味がないと思うのです。ですから、やはり、企業内でなかなかキャリア形成支援ができないところについて、「こういったやり方でやったらいい」というガイドラインを示すとか、あるいは実際にキャリア・コンサルティングのサービスをするといったことが重要かと思います。
もちろん、民間といったときに企業内だけではないと思います。民間でキャリア・コンサルティングをやっているところもありますし、訓練をやっているところもあります。そういうところとうまくバランスを取って、相互が完璧な形で実際の施策が組まれてくるといいのではないかと思います。
(部会長)
ありがとうございました。いまご指摘のようなことは、あとで議論していただきます「キャリア形成に関する新しい政策等」の中で、そのやり方も含めて十分配慮することになるだろうと思います。それから、場合によってはこれがおそらく全体の一部になるだろうと思います。それを作るときに、注記みたいな形で具体例を書くとか、そういうことで対処してはどうでしょうか。もう少しわかりやすくする、ということでいかがかと思います。ほかに何かございますか。
(委員)
総じて、よくまとめていただいたと思っています。非常に細かいことで恐縮なのですが、1つは「実践的職業能力」がキーワードとしてあるわけです。
(部会長)
何頁ですか。
(委員)
3頁のところです。見出しとしてというか、「キャリア形成」と同じようにキーワードとして浮上したと思います。細かい点と申し上げるのは、8頁の「実践的職業能力」という言葉が英米でこのように使われていますとあります。というのは、エンプロイアビリティの議論と一緒で、要するにここでこう位置づけている概念と、言わば欧米でこのように言われていることというのが同じように扱われ得るのかどうか。私はよく存じ上げないのです。多分、翻訳をすればこうなっていくと思うのですが、その辺はちゃんと符合するのかどうか。それが1点目です。
もう1点は、最後の14頁のところで、「ものづくりの基盤的議論」にかかわる(2)の項目を挿入していただいたわけです。もちろん、具体的な議論はのちほど具体的施策になっていくと思うのですが、この段階でいままでの職業能力開発基本計画よりある程度ものづくり基盤技術基本計画を受けて、少しでもこの辺を具体化しようというイメージがあればお聞かせ願えればと思います。その2点をお願いします。
(事務局)
第1点ですが、8頁、確かに「実践的職業能力」と同じ言葉で、英語でカッコを入れているのはまぎらわしいかもしれません。この英語のカッコだけ、取ったほうがいいかもしれません。
(部会長)
こういうものは注記にしたらどうですか。あと、ついでに気がついたのですが、「コンピテンシー」という言葉も説明などでは使っていますが、必ずしも日本の読者にわかる概念ではないのではないでしょうか。少し工夫したほうがいいのではないでしょうか。あと、13頁の「ボトルネック」とか。これは私の個人的趣味というか、意見なのですが、なるべく定着していない、仮名書きの、外国語っぽいものは説明をつけるというようにしたらいかがですか。
(事務局)
言葉使いをもう一度考えたいと思います。ちょっと、ラフになっておりました。
(部会長)
大和言葉を大事にしてほしいと思っています。これは特に、政府の公的な文書になり得るものですので、その点をちょっと工夫したいと思います。どうもありがとうございました。ほかにございますか。
(委員)
話は違うのですが、海外労働者の問題に対しては事情は変化しないとお考えで、ここでは全然触れられていないわけです。従来までだと、技能実習制度などに関する部分が入っていたのですが、その点ではいかがでしょうか。前回質問すべきだったのですが、時間がなくてできませんでした。
(事務局)
職業能力開発基本計画の議論は引続きまたご議論いただくわけで、その中でそういったものも取り上げていきたいと思います。ただ、いまの時点では隅々まで書き切れないというか。
(委員)
労働社会状況の変化にはまだ入ってこないだろうという理解ですか。
(事務局)
はい。中心的部分をまず書いて、それから中心でないというつもりではないのですが、そういったものは今度職業能力開発基本計画を議論するとき拾い上げてご議論いただいてはどうかと思っています。ここの時点で時間をかけて、またこれも、あれもというと、職業能力開発促進法の議論をやらなければいけませんので、恐縮ですが一応中心的にはこの程度にしておいて、おっしゃっている課題については改めて、職業能力開発基本計画を議論するときに取り上げていきたいと思います。
(委員)
職業能力開発基本計画としてはわかるのです。要するに、その辺、労働社会情勢の変化としては考えなくてもいいのかという質問なのです。
(事務局)
一応職業能力開発促進法、職業能力開発基本計画の基本的スタンスは、法的には国内の労働者の能力開発という点が中心ではあります。もちろん、外国人労働者問題という問題が周辺問題として出てくるわけですが、法律的な位置づけとしては国内労働者という位置づけですので、とりあえず制度改正ということを中心に、現時点でまとめようという場合には国内労働者中心ということで考えております。ただ、職業能力開発基本計画ではその辺も、いままでも取り上げていますし、ご議論いただきたいとは思っています。
(委員)
わかりました。
(部会長)
いまのご指摘はよく覚えておいて、職業能力開発基本計画を議論するときに議論をすることにしたいと思います。
(委員)
終えたと言うから、そこら辺が情勢の変化として重要になるということは予想される可能性もあるかなということなのです。
(事務局)
そこは否定するものではありません。
(委員)
総じてこれでいいとは思うのですが、8頁から9頁の能力開発の関係については、この間も意見を申し上げたのですが、企業から個人へというシフトがかかっているのは十分承知をしております。ただ、その間に業界というものがあってもいいのではないかという認識を非常に持っています。評価制度については、特に業界の役割ということで8頁に記載がされているのですが、能力開発と評価というのは表裏一体のようなものだと私は思っていますので、できれば将来は、自発的能力開発と事業主が行うもの、業界が行うものという3本立てになるのかなという想定をしています。むしろ、そうしなければ、いわゆるいまの企業の合併とか、いろいろな事業再編の中で、同業種を中心に企業の枠を超えて再編がされています。その辺の受け皿になり得ないのではないかということで、「事業主等」と「等」が入りましたから、ニュアンスはありますが、後ろ2行しかないものですから、もう少しこの辺を膨らませてもらって、将来は3本のうちの1本になり得るのだという種を撒いてもらえないかなという、5年後を想定した議論があるのです。それを称して、「ベストミックス」という言葉をこの間使わせていただきました。そのような感じを持ちました。
(部会長)
9頁の真ん中のところをもう少し膨らませてはどうか、というご意見ですか。
(委員)
「さらに」以降をもう少し膨らませてもらうといいのですが。業界の皆さんのご意見などを聞かせていただければありがたいと思います。こちらから見ると、そのような感じがしないでもないわけです。
(事務局)
また、ここのところも職業能力開発基本計画の話になってくると思います。その辺は具体的に、業界等でどういうものが考えられるかとか、そのようなご議論をいただいた上で、職業能力開発基本計画の中でどこまで具体的に書けるかを考えさせていただくことになると思います。
(部会長)
前にも言いましたけれども、「等」の中には労働組合も入ってもいいのでしょう。
(委員)
もちろんそうです。
(部会長)
ほかにございますか。
(事務局)
先程のものづくりの施策ということですが、説明させていただきましたが、来年度から「ものつくり大学」の開講をいたします。ものつくり大学においては、いわゆる技能と技術の両方がわかる人材をつくる。いろいろな形でものづくりを支えていく、要するに現場の長という方もいるでしょうし、業を起こされてものづくりを支える方もいるでしょう。多角的な卒業生ができあがってくることになると思います。
そのように、ものづくりを支える人材を養成していこうと思っていて、これは1つの新しい施策として考えています。
それから、もちろん熟練技能者の方の活用とか、特に集積地域などでそういった方を活用して集積を目指すような若手に引き継いでいくという施策も一応形としてはありますので、それをうまく活用して伝えていくとか、学校教育と一緒にやっていく。
そういうことを是非考えていきたいと思います。
今回の「ものづくり基盤技術振興基本法」、それに基づくものづくり基盤技術基本計画でも、通商産業省、文部省、労働省、3省が一体となって施策を展開していくことになっています。そういう形の連携を取りながらやっていく、ということになってこようかと思います。ものづくり基盤技術振興基本計画は今後5~10年を見通した基本的な計画ですので、その中で、ものづくりの本質とは何かとか、少し問題を絞ってやっていく。いま、若干総花的なところがありますから、ポイントを絞って施策を打ち出していきたい。その過程において、労使の皆さんのご意見も聞きながらやっていきたいと思っています。
(部会長)
ほかにこの資料1について、ご意見、コメント、その他ありませんか。
この文書は現在やっている能力開発施策の評価、それから今後の展望をまとめたものであります。この総括部会の議論としては、非常に重要な位置を占める文書だと思っています。
もし、いま、ご質問等がなければ、この議論を一応締め括らせていただきます。次に、制度改正についての議論をしていただきたいと思います。今日はまず、労働省のキャリア形成を支援するシステムの在り方について、ご議論をお願いしたいと思っています。議論に入る前に、キャリア形成を支援する取組みの実情、あるいは政策等に関する資料が提出されていますので、それについてまず事務局からご説明をお願いしたいと思います。
(事務局)
資料No.2からNo.4まで提出しております。まず、資料No.2からご説明したいと思います。この資料、大変分厚くできております。前半では統計を載せています。この統計のうち、4割ほどは以前ご説明したことがあるものですが、説明の都合上、以前お出しした資料も併せて載せております。現状についてはごく簡単にご説明し、その他実例、いままでお出ししていない資料を中心にご説明したいと思います。
まず、3頁の「キャリア形成の必要性」のところです。「労働者の自己のキャリア設計の重要性」ということで、キャリア設計が重要だと考えている労働者は「そう思う」、「ややそう思う」を合わせて大体4分の3いるということであります。4頁、労働者が自己のキャリアについて、どういう場面で考えるのか。「上司との面談」が42.3%、「自己申告制度」が3割ということになっています。5頁、事業主に聞いても、傾向としては「上司との面談」や「自己申告制度」ということになっています。
6頁ですが、キャリア形成についてどのぐらい考えているかという調査をしています。これは企業と個人、聞き方は違いますが両方に聞いています。まず企業に、キャリア形成を主体的に考えている従業員がどのぐらいいるのかという聞き方をいたしました。「ほぼ全員」と回答された企業は1.7%、「8割程度」が6.8%、「半分程度」は考えているのではないかという回答が31.8%でした。最も多い回答は、自分のところの従業員の「4分の1程度」がキャリア形成を主体的に考えているのではないかというのが41.4%で、いちばん多くありました。
一方、個人のほうについては、「今後の職業生活について」という聞き方をしているのですが、どのように考えているのか。「『○年後にこれをする』という形で具体的に考えている」というものが8.7%、「何年後とまでは決めていないが、漠然と考えている」というものが約半数の49.2%でした。その他、「考えようという気持はあるが、実際は考えていない」、「まったく考えていない」を合わせると、大体4割ぐらいということであります。
7頁以降、こういう中で従業員の能力の把握等がどのように行われているのかということで、一連の資料を出しております。まず、事業主のほうに、従業員の能力・適正についてどのぐらい把握しているかを尋ねたところ、「十分把握している」が1割程度、「ある程度把握している」が4分の3程度ということでした。
具体的にどうかというのは8頁、9頁にあります。8頁、例えば出身学校等は当然把握している割合が高いわけですが、真ん中辺り、階層別研修歴、職能別・課題別研修歴等を含め、教育訓練歴の把握は意外に4分の1から3割程度となっています。
あるいは9頁、「能力・適正の把握方法」であります。適性とか、業務に関連する専門知識・能力については、「上司の評価」、「仕事の実績」というものを中心に把握していて、「社内外の資格の取得状況」などがそれに次いでおります。これに対して、業務外の専門知識・能力については、「社内外の資格の取得状況」がいちばん多くなっていて、次に「自己申告」ということとなっています。したがって、業務に関連しない能力については、上司等によってはなかなか把握し難い面があるということであります。
10頁は「能力・適性に係る情報」であります。企業が以上のように能力・適性を把握した情報について、誰が持っているのか、どのように公開しているのかということであります。大体3分の2ぐらいの企業が、「直属の上司」、「人事部門の担当者」、「経営者」というところに公開しているということで、本人に公開しているのは17.7%となっています。
そういう中で11頁、「能力・適性に係る情報を活用する上での問題点」としては、「上司の主観によりゆがめられている」が41.8%、「評価基準が適切でない」が39.5%と、これは事業主側の回答であります。
12頁、今後、能力評価については「能力評価を処遇に反映させる」とか、「仕事の成果から見た能力評価を重視する」という方針が示されています。
13頁、14頁については、職業能力評価制度の必要性について尋ねたものであります。「ある程度必要である」というものも合わせると、大体4分の3の労働者、あるいは企業の方が「必要」と考えているようであります。
次に17頁、「職業能力評価制度の利用価値」でございます。いちばん多い回答が、「従業員の能力開発の目標になる」が7割、「中途採用時に能力判断指標となる」が6割、次いで「適切なキャリア形成の判断材料となる」が半分程度ということであります。
18頁以下が「キャリア形成の支援策について」であります。まず19頁、事業主による労働者に対する求める能力の情報提供については、「十分知らせている」が2割、「ある程度知らせている」が55.6%となっています。それを具体的に、どのように知らせているのかが20頁のところであります。「人事評価制度の運用を通して」ということ、これはかなりの割合が直属の上司を通してということが多いかと思いますけれども、45.9%でした。「会社の教育訓練計画を通して」というのが35.7%、「部門別の教育訓練計画を通して」が33.0%という形になっています。
21頁、こういう中で、労働者側は事業主がどういう能力を求めているかを明確化する必要性があるかどうか。「あるのではないか」と聞いたところ、「そう思う」が4分の3ということになっています。
22頁、23頁にキャリア・コンサルティングの状況が出ています。これは以前お出ししていますけれども、キャリア・コンサルティングについては労働者、企業とも、「十分できている」、「ある程度できている」という回答はあまり多くない状況であります。
次に24頁です。キャリア形成についてはなかなか時系列的に比較した資料がないのですが、1つの例として、産能大学で実施した調査を分析し、時系列的に見た例があったのでご紹介します。これはキャリア・デベロップメントプログラムの実施状況を見たわけであります。サンプル数は必ずしも多いわけではありませんが、これは上場企業ですが、90年代を通してほぼ4分の1ぐらいの企業が実施しているという状況で、90年代においてはあまり変化はないという感じが見受けられます。
26頁は「キャリア形成に係る要望」であります。キャリア形成について、労働者側に会社に何を求めるのか。キャリアの相談やアドバイスについて会社に求める対応を聞いたところ、「従業員の能力を把握してほしい」が44.7%、「会社が必要としている能力を情報提供してほしい」というのが4割、その他「従業員のキャリア希望の把握」等となっています。
また、行政に望むことが27頁にあります。ここになると「教育訓練に関する情報提供」がいちばん多くなっていて、その他「キャリア・コンサルティングの先進事例紹介」等となっています。28頁、一方、企業に行政への要望を聞いたところ、これについても「従業員の教育訓練に関する情報提供」がいちばん多くなっています。
次に、キャリア形成の周辺部分になるかと思いますが、29頁に教育訓練の実施状況があります。選択型訓練等がどのように実施されているか。これも産能大の調査です。シングルアンサーで、人材教育の方法が一律型か公募型か、選択型か選抜型か、大まかにどの型に分類されるかという聞き方をしたところであります。96年調査においては、現在「一律型」というのが57.9%、「選抜型」と答えたのは27.0%でした。今後の見通しという中では、選抜型が非常に増えるということが回答として出ていたわけであります。
(部会長)
「選択」と「選抜」とどう違うのですか。
(事務局)
「選択」は労働者が選択する、「選抜」は企業が一部の労働者を選抜するということです。これについて98年調査で見ると、まず実態のほうから見ると、一律型は若干減っていますが、公募型・選択型が増えています。労働者が選ぶ型が増えていて、選抜型は実際には若干減っているような形が出ています。行政の調査に比べ、全体のサンプル数が多いわけではありませんが、今後の見通しにおいても公募型・選択型は増える。選抜型も増えますけれども、96年調査に比べると若干差があるなという感じです。
30頁は選択型・選抜型教育研修の実施状況です。まず、「従業員が自主的に応募・選択できる教育研修が充実している」に当てはまるか、やや当てはまるか等を聞いたところ、98年と2000年でそう大きな差はありませんが、「当てはまる」が15%、「やや当てはまる」が30%から35%程度ということになっています。一方、「受講生を指名して行う選抜型の教育研修が行われている」については、「当てはまる」がこれも大体4分の1程度、「やや当てはまる」が4割程度となっています。
31頁はキャリア開発支援方針というか、教育訓練や自発的能力開発、主として自発的能力開発ですが、担当の業務とかけ離れた内容についてもできるだけ支援するか、あるいは担当の業務と直接関係しなくても内容によっては支援するか、担当の業務に直結した内容のみを支援するかという尋ね方をしています。現在の方針としては、「担当の業務に直結した内容のみ支援」が54.4%ですが、今後については「担当の業務と直接関係しなくても内容によっては支援」が46.2%というようになっています。
これも教育訓練の関係ですが、33頁以降は教育訓練の推進体制について、いままで資料をお出ししていなかったので出しています。若干、調査は古くなりますが、事業所規模別に文書化された教育訓練計画の有無を尋ねたところ、全体として「ある」が4割でした。1,000人以上だと91.6%ということでした。社内への周知・公表についてはかなりの程度なされていますが、4分の1程度は「していない」ということです。
35頁、これは複数回答ですけれども、教育訓練計画の作成主体について尋ねました。「会社単位で作成したものがある」が4分の3と、教育訓練計画については会社単位で作成するというのが多いようであります。あるいは次の37頁、教育訓練を企画する組織の状況でございます。全体として、「専門の組織で行っている」というものが4分の1程度、1,000人以上の規模になると7割程度ということになります。その他、「他の職務と兼務した組織で行っており、専任の担当者が決まっている」、あるいは「他の職務と兼務した組織で行っており、他の職務と兼務した担当者が決まっている」等々について尋ねた調査であります。
以上、統計的なものについてご説明いたしました。38頁、39頁以降では、キャリア形成の関係の実例というか、事例についてご紹介したいと思います。ここでは具体的な企業の事例3社と、キャリア・コンサルティングの事例を2社、合わせて5社について事例をまとめています。まず39頁からの部分、A社の例についてご説明いたします。これはガスの会社です。この会社の人事制度については、仕事重視の専門人材を育成する。個人の選択と自立を促すというために、「専門コース制度」という形で、そこに掲げています15の専門コースを設けています。これは組織にこだわらず、15の専門コースという人事制度を設けています。リビングエンジニアリングからリビング営業等々というようになっています。
具体的にはどのようにしているのかということですが、採用段階で6つの採用区分に大括りして採用しているわけであります。例えば営業とか経営支援とか、一般の大学生等にもわかるように採用区分を書きました。例えば経営支援だと、「人事・法務・広報」や「経理・資材」というようなものが当てはまりますが、こういう6つの採用区分で採用した上で、新人教育で15の専門コースについて説明し、採用区分と本人希望から面接で仮のコースを決めるという形であります。
仮のコースに配属されると、3年目にキャリア・コンサルティングを実施します。これは上長等が面接して、コースを変更する希望があるかどうかを確認し、上長が所見を作成するわけであります。そして、人事部がさらに面接し、専門コースの有無を決定するわけであります。この時点では、コース変更を希望する割合は、実態としては10%程度だということです。
この企業においては7年目、大体30歳ぐらいを節目と考えております。高卒は12年目ですが、ここに本格的なキャリア・コンサルティングを実施することにしています。40頁、キャリアデザインについて研修をし、自己理解、自身のありたい姿、価値基準、自己評価、行動計画等について研修をして、キャリア・コンサルティングを実施する。キャリアシートを提出するというわけでございます。ここでのコース変更希望は、実態的には5%程度だということであります。中心的にはここで自身のキャリアというか、専門コースを選択いたします。
12年目には若干調整するという意味で、キャリア・コンサルティングをやっているということですけれども、基本的には50歳ぐらいまでは30歳のときのキャリア希望によって働いていくということであります。50歳になると、上長面接によるキャリアプランの最終見直しがあります。これについては、セカンドライフの開発というものも視野に入っているということであります。
このようなキャリア形成について、どういう支援が行われているか。これは各専門コースごとにローテーションルールや教育プログラムを設定していく。異動は原則として、個人の専門コース内で行われるということです。それに関連して研修等が用意されていて、「階層別研修」、「選抜型研修」、選抜型研修はほとんど海外研修等、異業種交流です。「選択/選抜型研修」としては留学等です。その他「選択型研修」、これはかなり自己啓発というか、自発的能力開発に近いような内容で、外国語等も入るという形にしています。
具体的に、41頁で「経理・資材コース」の例を出しています。これはこのA社が新人その他、専門コースについて、こういう仕事をするということで示しているものであります。「多岐にわたる企業活動の中において、主としてカネ、モノといった側面から経営支援を行うコースである」ということで、対象職務や目指すプロのイメージというものを専門領域ごとに示しています。
その中で、43頁でローテーションのルールを示しています。基本的考え方のところは、先ほどのキャリア・コンサルティングとからみますが、まず入社後4年間は「適性確認期間」ということで、「経理・資材」というコースであっても「人事・法務・広報」の2つのコースを経験する。経理と人事に関する基礎知識を習得するということであります。そのあと、30歳までは「基礎育成期間」というように位置づけられています。
30歳、これは7年目のキャリア・コンサルティングですが、そこで専門領域を確定して、専門性の向上を図っていくわけであります。そして12年目、35~36歳のところで若干の調整をしたあとは、「集大成期間」という位置づけになっているわけです。
ローテーションのルールについては、入社のときは、地域事業本部や工場等の現場部門に配属する。そして、適性確認期間4年間に先ほど申しました2コースを経験する。入社から7年経過のキャリア・デベロップメントプログラムまでは、最低1回、原則2回の異動を行う。そして、入社から11級終了までの間に、少なくとも3単位のローテーションを経験する。1カ所の滞在期間は、7年経過までは原則4年、7年経過以降は原則5年ということが書いてあります。
その次の44頁に、それを図で示しています。会社の中でどういう部門、経理・資材と言ってもどういう部門があるのかという、簡単なものですがローテーションマップを示しています。
その裏づけとなる能力開発との関係ですが、45頁であります。OJTが基本となりますけれども、Off-JTも用意されています。45頁のいちばん下のところ、30歳までに原則として日商簿記検定3級を取得することを必須資格として、なおかつ推奨資格についていくつか示し、能力開発の目標を示しているわけであります。
さらに細かく目標を示したものが46頁以下にあります。46頁ですと(2)のいちばん下、「専門性ステップアップガイド」で確認しつつ、能力アップをしていただきます。具体的な例を47頁のところに付けています。「経理・資材コース専門性ステップアップガイド」ということであります。これが全部ではありませんが、Iステップ、IIステップということで、「できる仕事」、「必要な知識、技術、技能、ノウハウ、マニュアル」ということで分野ごとに示しています。この中には一般的な形で書いてあるというよりも、むしろ企業の中の具体的な作業を含めて、「何々ができるか」、「何々を理解しているか」ということで書き込んである形でして、これで能力を確認しながら能力開発をしていくスタイルになっています。これがA社の事例です。
次に48頁、これは1枚紙ですがB社の例があります。選択型訓練の1つの例として、「能力開発ポイント制」というものをご紹介する趣旨です。能力開発ポイント制というのは、社員に一定のポイントを付与して、社員が主体的に能力開発プログラムを選択して受講できる仕組みになっています。1ポイント1,000円となっています。1等級は新入社員ですが、7万5,000円分のポイントが与えられる。2等級は20代後半ですが、10万円分のポイントとなる。4等級、5等級、6等級となると課長とか部長ぐらいになり、管理職については特に勉強してほしいという趣旨で、昇格時にボーナスポイントを与えているわけであります。
プログラムについては、社内のセミナーとか、会社が紹介したものも用意してありますが、専門学校、各種学校も含めて、自分でいろいろな講座を探してきて、自分のポイントを使って受けることができるというものであります。ただ、これについては趣味的な講座を受けられる可能性がありますので、一応人財組織部というところで認めたものということになっています。趣味的でなければ業務直結でなくても認めるような運用をしているということであります。
講座受講の時間については、業務時間外が原則という建前にはなっていますが、実際上は業務と関連する講座を受けることもあるわけです。上長が認めれば業務時間内に受講が可能ですし、そういう例も少なくないということであります。ポイントの消化率は約5割という実情にあるようです。
次に49頁、C社の例であります。これについても、A社と同じような形であります。人材育成については、特にホワイトカラー職種の人材育成においてはプロ人材を育成する。例えば、労働市場で年間1,000万円以上の価値がつく実力を持った人材を育成するということでやっている例です。
具体的には50頁、51頁のところで、人材開発プログラムとプロ人材像というものを示しています。ここにおいては、例えばこれは人事部門の例ですが、人事部門においても「総合型プロ人材」、「専門型プロ人材」という、2つのタイプに分けてキャリア開発を行っているという特徴があります。
総合型プロ人材というのは、50頁の右側、「プロ人材へのキャリア形成」にあるように、人事部門においては大きく業務領域が7つあります。人事管理、教育、採用・要員管理、労働条件管理、労使関係、組織企画、事業体支援の7つがあります。このうち、人事管理と労働条件管理をコアキャリアとしつつ、なるべく幅広く知識、技能、その他能力を習得する。3つ以上の業務領域を経験するということで、ローテーションを行っていくわけであります。
51頁にあるように、これに対して専門型プロ人材というのは、この中の特定の領域、その中のさらに特定の分野ということであります。例えば51頁の下、ライフプランナーという例、あるいは教育という専門、あるいは賃金制度や就業管理制度の専門というような、各専門のプロになっていくというキャリア形成があります。以上、キャリア形成の支援を行っている3社の例をご紹介いたしました。
52頁以下については、アビリティガーデンで行っているキャリア・コンサルティングの例を2つ紹介しています。これについては簡単にご紹介します。以前、アビリティガーデンのキャリア・コンサルティングの例をご紹介しましたが、企業外というか、転職を中心に想定をした例でした。これについては、企業内で行った例として紹介しています。
52頁は総合建設業の例です。具体的には56頁から例がございます。この方は一般職、43歳、勤続3年という役職名です。学歴は商業高校卒ということです。商業高校を出て銀行に入られて、結婚をしたあと、家庭に入られた期間もありますが、税務署、会計事務所のパート勤務や派遣社員等を経験して、一貫して経理の事務を行ってきたということであります。この企業においては、経理の人材が足りないので採用したということで、この会社に入って3年という時点です。
(8)の「ニーズ」ですが、一般経理事務のベテランであるが、自分の持てる能力の強み、弱みを確認してみたいという本人の希望と、あとは(9)にありますけれども、本人は営業やマーケティングにも興味を持っているということなので、それを中心にキャリア・コンサルティングを実施したという例でした。
能力の確認を57頁のところで書いています。これはツールを使っています。必ずしもツールを使う必要はないわけですが、ツールを使ってみると、会計帳簿や原価計算というようなところは強いわけですが、今後の予算編成をどうするかというような、企画系の経理事務が比較的弱いということです。しかし、総じて、経理についてはなかなかよくできるのではないのかなということだったわけです。
しかし、58頁のところ、建設業の経理は若干特殊ですので調べたところ、建設業会計については意外に知識がないようであることがわかったわけです。58頁の下のところについては、営業・マーケティングを本人はやりたいと言っているわけですが、経験がない割に知識はかなりあるようであるということがわかったわけです。
これを受けて、56頁のいちばん下、とりあえずこの方については、建設業会計について勉強をしていただくということでどうか。企業の側については、経理の事務の方が足りないという状況がありましたので、マーケティング等については若干人材が育ってから目標面接の中で話し合う、ということでキャリア・コンサルティングを終えたという例であります。
次に59頁、ガラス会社の例であります。これは大企業の例です。具体的には63頁のところです。大卒、事務系、35歳の男性です。営業と能力開発部門でやってきたけれども、実力が思うように蓄積できていないように感じている。一度、棚卸しを行って、今後の方向性を考えたいということでキャリア・コンサルティングを受けたわけです。
具体的にどういう職歴かというと、65頁にキャリア・デザインシートで書いています。平成2年に入社して、営業をやったということです。営業ではなかなか見所があるということで、4年間経験して、平成6年に教育部門に転勤になりました。ここでももちろん、営業関連の教育というか、能力開発を担当してきたわけであります。
しかしながら、本人はなかなかしっくりこないということで、67頁のところで分析したわけであります。ごくかいつまんで申しますと、営業関係の知識・技能はそこそこあるのではないかということです。一方、69頁のところに、「人事・労務・能力開発分野」について棚卸しをしたわけですが、なかなか能力開発の知識・技能は身についていないという結果が出たわけであります。
ツールを使うとこういうように出るわけですが、64頁、この方については具体的にいろいろ話をしていった結果、どうも営業部門から間接部門に移すのが早過ぎたようである。潜在能力、営業の能力はなかなかありそうなのだけれども、ちょっと早過ぎたということなので、もう一度営業に戻ったらどうか。そのあとで、もう一度能力開発をやるのか、営業でいくのかという道を考えたらどうかということで、キャリア・コンサルティングを終えたという例であります。
70頁のところに「キャリアシートの記述例」と書いています。これについてはごく簡単に申し上げます。キャリアシートは履歴書と違い、自分の能力を棚卸しするわけですが、70頁、71頁というように、自分が何をやってきたかを書き出していくわけであります。その中で、71頁の(3)にあるように何をやったかということだけではなくて、そこでどういう成果を出したか。どういうことが印象に残っているか、というところを書き出すということが、職務の棚卸しについて重要なわけであります。72頁で、そこでアピールできる点とか、どういう職業能力がついたのかについて、さらにメモを書いたわけであります。
それをまとめたものが74頁です。これは企業内の例ではなくて、主として就職ということですので、このような職務経歴書形式になっています。74頁のように、「仕事を通して身につけてきた職業能力」という形でまとめた例であります。
実際に今後、キャリアシートということでやっていくに当たっては、もうちょっと詳しい形で、なおかつ能力開発に結びつく形でやるわけですが、職務経歴書のもう1つの例が76頁であります。これは時系列的にではなく、一旦書き出したことをむしろ分野別にまとめる。前のものは「編年式」と言いますけれども、これを「キャリア式」と言います。76頁の下半分、職務経験、総務実務とか経理実務、あるいはコンピューターの活用等、何が具体的にできるのかを自分で一旦書き出したあとにまとめたというスタイルのものです。人脈等も含めて書いている例であります。このキャリアシートについては、いまのところ開発を進めているというところです。
次に、資料No.3でキャリア形成を支援するための施策を書いています。資料No.3の2枚目と3枚目の図をご覧いただきながら、お聞きいただきたいと思います。キャリア形成の支援については、企業内と企業外の両方にシステムが必要ではないかと考えていますが、「企業内におけるキャリア形成システム」について書いたものが2枚目でございます。事業主が必要な能力を明示して、キャリア形成の推進体制を整えて実施していくということでして、具体的にはキャリア形成支援の担当者、キャリア・コンサルタントと呼んでもいいわけです。あるいは、直属の上司等が実際に相談・援助を行うわけであります。これは以前ご説明しましたけれども、本人に職務の棚卸しをしていただいて、どういう能力を持っているのだろうかというものを把握する。把握したあと、キャリア形成のあり方について相談をして、能力開発も含めたプランを作るということでございます。その上で、例えばこの人はこういうところに配置したほうがいい。先ほどの例で言えば、営業に戻ったほうがいいということであれば、キャリア・コンサティングを踏まえて適正な配置を行う。引き続いて、能力開発の支援を行うということであります。
左の上、公的支援機関においては、ノウハウを中心にした指導援助や講習の実施、あるいは情報提供という形の援助が中心になります。能力開発においては当然、いままで実施してきたような各種の援助を実施するわけであります。
これに対して、「企業外のキャリア形成システム」については、なかなか企業内でキャリア・コンサルティングを受け難い人を想定して、公的支援機関が直接能力の棚卸し・助言、能力の把握・確認、キャリアプランの作成等を行い、それと教育訓練コースの紹介から、さらには転職の場合、あるいは就職の場合には公共職業安定機関における紹介まで、一貫してキャリア形成を支援するということであります。
以上、ご説明した中で、本日ご議論いただきたいことを資料4でお出ししています。「キャリア形成を支援するための施策体系のポイント」ですが、いままで総括部会においてご議論いただいたことの確認等も含めて書いています。1番目は「キャリア形成支援に係る施策の位置づけについて」です。キャリア形成の意味ですけれども、「キャリア形成とは、単に職務を経験することを意味するだけでなく、労働者が一定の職業に関する方針に従い、相互に関連する職務を経験することにより実践的職業能力を形成すること」。これを仮に「職業能力形成という」というようにしていますが、そのように考えてはどうか。
この職業能力形成の位置づけですが、現在の職業能力開発促進法においては職業訓練と技能検定が二大施策として、自発的な能力開発等を付随的に捉えているわけです。今後はやはり個別労働者の自発的な能力開発、とりわけ実践的職業能力の開発及び向上を図る観点から、労働者の職業能力形成の支援を柱として法律上位置づけ、こうした職業能力形成が可能となるような仕組みを法律に基づき推進することとしてはどうかということであります。
職業能力形成と職業訓練との関係ですが、職業訓練等で習得した知識及び技能を実践的職業能力として定着させるためには、その知識、技能を実際の職務において活用していくことが重要であろう。また、まとまった体系的知識、技能を身につけるためには、職場で職業能力形成ということではなかなか困難な面があるだろう、職業訓練による習得が効率的だろうし、不可欠であろうということですので、労働者の職業能力の開発及び向上をバランス良く行っていくという観点からは、職業訓練と職業能力形成とは相互に密接な関連をもって実施されることが必要ではないかということです。
また、職業能力評価との関係ですが、職業能力形成によって習得された職業能力については、やはりしっかり評価で確認していく。それをベースに、さらに能力開発向上に向けて職業能力形成を行っていくこととなるのではないかということで、職業能力形成と職業能力評価は相互に密接な関連をもって実施されることが必要ではないかということでございます。
「職業能力形成の支援について」、2をご覧ください。全体として、必ずしも事業主による職業能力形成への支援が十分ではないということなので、今後、事業主の取組みを促進していくために、厚生労働大臣は事業主の行う職業能力形成を促進するための措置に関し、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針を策定、公表することとしてはどうか。
指針に盛り込む事項としては、具体的に次のようなことが考えられるのではないかということで、先ほどご説明申し上げたような、企業内の職務遂行に必要な職業能力の明示に関する事項。職務経験について、書面に記述する方法に関する助言等労働者が職業能力を把握するために必要な方法に関する事項。職業能力形成に関する相談その他の援助に関する事項。職業能力形成を促進するための人事管理上の配慮に関する事項ということであります。
また、それを計画的に実施していくということで、企業内職業能力開発計画に定めるべき事項に、職業能力形成に関する援助の措置を追加してはどうか。そして、それを具体的に推進していくために、企業内において労働者の職業能力形成を効果的に支援していくために、企業内の職業能力形成を含む能力開発を推進する体制を明確にするとともに、情報提供、相談・援助、講習の実施、助成金の支給等により、こうした体制等による職業能力形成の促進を国が援助を行うこととしてはどうかということであります。以上です。
(部会長)
どうもありがとうございました。3種類の資料に基づいて、丁寧な説明をしていただきました。キャリア形成に関する情報、統計・ケーススタディに関する資料、それからキャリア形成を支援するための政策に関する案、それを制度化するためのポイント、その3種類の資料が提出されました。ご議論をお願いしたいと思います。どなたからでもどうぞ。
(委員)
まず資料2、調査の関係についてはどういう事業所を対象としたのか。調査の概要を明らかにしてほしい、ということを部会長もこの前もおっしゃられていたと思いますので、それを補足していただければありがたいと思います。例えば、こうした調査は、どういう業種、規模を対象にした調査なのか。
(事務局)
資料No.2の調査は、主として三和総合研究所の調査を中心にしています。これについては、事業所調査については全業種をなるべく満遍なく配っています。約5,000社に配付して、900数十社の回答をいただいている調査でございます。個人調査については、2万人にその5,000社を通じて配付して、2,340人程度のご回答をいただいた調査であります。
もう1つ、何カ所か扱っている調査があります。これは富士総合研究所に委託した調査です。それについては5,500社に配付して、1,100社程度の回答をいただきました。個人調査については、その5,500社を通して1万5,000人に配付、3,000数百人の回答をいただいたものであります。
(委員)
三和総合研究所のものは、ブルーカラーとホワイトカラーは込みですか。
(事務局)
込みです。ただ、ホワイトカラーを中心になっていると聞いています。
(委員)
そうでしょうね、これを見ると。
(部会長)
そのほか、資料に関するご質問等、コメントはありますか。資料を出すということは、施策の基本になる情報がどのぐらい一般性を持っているかを言いたいわけです。多分、これは答申にくっつく資料になると思いますが、その場合はいまの一般性があるのだということを読者がわかってくれるように、一般性に関する情報も書いていただくほうがいいと思います。サンプルの規模がどのぐらいだとか、それから「S.A.」と「M.A.」というのも一般の人が見るとわかりにくいから、「シングル・アンサー」と「マルティプル・アンサー」だということを書くとか、もう少し丁寧に書いていただいたほうがいいかと思います。それから、A社とB社はどういう基準で、なぜ選んだのか、ちょっと書いてくださるほうがいいのではないでしょうか。ほかにありますか。
(委員)
三和総合研究所が5,000社ということですが、規模は大体どのぐらいのパーセントになりますか。規模別というか。大体で結構です。
(事務局)
従業員規模30人~99人のものが大体3分の1程度、100人~299人が3分の1程度、300人以上が3分の1程度という回収状況になっています。
(委員)
大体、満遍なくという感じですね。
(事務局)
はい。
(委員)
もう1つ、富士総合研究所のほうはいかがでしょうか。
(事務局)
富士総合研究所のほうも満遍なくやっております。
(委員)
約1,100社の回答があったということでしたね。
(事務局)
はい。300人未満は約300社、300人以上500人未満が200社、500人以上1,000人未満が130社、1,000人以上が200数十社でした。比較的、大規模のところが多いということです。
(委員)
わかりました。
(部会長)
これからやることで、あまり情報が多くないところで情報を提供しなければならないわけですから、難しいことだと思います。
(委員)
前回の議論で、ブルーカラーとホワイトカラーという問題が出たと思います。いまの資料にも出ていたと思います。基本的に資料No.4、「施策体系のポイント」での焦点というのはどういうところに重点が置かれているのでしょうか。向こう5年間の計画ですから、焦点を当てるべきところがあるのかなと思うのです。いまお話がありましたように、希望性の問題、それからブルーカラーとホワイトカラーの問題という課題が上がっているかと思います。この辺の整理というか、どのように考えたらいいのかを教えていただければと思います。
(事務局)
これは職業能力開発基本計画というよりも、職業能力開発促進法の改正に向けての議論の絞り込みということで考えていただいたほうがいいかと思います。その場合には当然労働者ということで、大企業、中小企業を問わず、ブルーカラーやホワイトカラーを問わずという形のものであります。ただ、これまでどちらかというと、職業訓練、技能検定という形で、ブルーカラー職種が中心であったわけです。ただ、いま起こっている経済社会の大きな変革を見ると、知識社会というか知恵の社会というか、特にホワイトカラーで大きな変革が起こってきている。ただ、それはホワイトカラーに限らず、当然技能職にも反映してきているという視点はございます。
したがって、特にどこの部分ということではなく、労働者全体に及んでいる影響を見て、こういった転換が必要ではないかということであります。とりわけ、ホワイトカラーというのは、いままで職業能力開発促進法の体系の中で位置づけられつつも、その点の突っ込みが弱かったという部分がありました。今回の焦点はそこを中心に、労働者全体に光を当てるという形になってくると考えています。
(部会長)
企業規模はどうですか。
(事務局)
規模は大中小を問わず、同じような問題は出ているのではないかと思っています。ただ、対策としては、大企業のほうは企業内でどういう仕組みを作っているか。それを推進していくということになります。また、どうしても中小企業のほうは、直接国がご支援申し上げる部分が非常に高くなってくる。ですから、施策としてはどちらかというと中小企業、直接的な施策というものが大きくなると考えています。
(委員)
資料4の2枚目のほうなのですが、いままで説明されたキャリア形成に対する要望等では、企業側、あるいは労働者側から見ても、やはり会社が必要としている能力を提供してくれ、あるいは従業員の能力の把握というものがかなり要望に出ております。今回キャリア形成を支援する、特に企業側の部分の推進という体制について、私も本当に同感だと思います。特に推進する体制について、いま、おそらく「各企業内に能力開発の推進員を置く」という文言があると思いますが、「職業能力開発推進員」という名前でいいのかどうか。あるいは、キャリア・コンサルティングとかキャリア・コーディネーター的な部分でもうちょっと明確にするという、その「明確」をもう少し明確にしてほしいなというような方向性はお考えなのでしょうか。
(事務局)
このように企業の在り方が変わってくると、特に人の能力、知恵をいかに出していくかというのは、企業の最も中心的なテーマになってくるわけです。そうすると、いままでの職業能力開発推進者というのは担当者レベルという場合が結構多いわけですが、それだけではやはり足らない。むしろ、企業全体として人材というものを念頭に置いて、キャリア形成を促進し、能力を引き出すという仕組みを企業内で作っていくことが今後必要になってくる。それに見合った体制を当然考えなければいけない。
ですから、担当者ということももちろん、キャリア・コンサルティングを具体的に担当するという人は必要ですが、より大きく言えば、企業全体を人材の育成に向けて組み直す。キャリアを考えるということは、すなわち配置なども念頭に置くということですので、それにふさわしい、企業のトップクラスを中心とした企業内体制というものを作っていただくことが必要ではないかと考えています。ですから、企業全体としての取組みの体制、それから具体的にこういうキャリア形成を支援していく。キャリア・コンサルティングをしたり、行政との窓口になったり、あるいは上司に働きかけたりとか、そういう担当者レベルと、2つのレベルで考えていかなければいけないのではないかと思っています。そういうものを念頭に、法的にどう位置づけるかを考えたいと思っています。
(委員)
いま、雇用保険三事業の重点化ということで、能力開発の部分もエンプロイアビリティやキャリア形成というものがかなり重点整理される方向だと思うのです。それも含めると、企業の中での担当者、あるいは全社をあげてという部分は是非今回も、その後の法律改正も含めて、バックアップをさせていただければと思います。よろしくお願いします。
(委員)
先ほど、2人の例のところで、結局最後の落としどころが後進が育つまでそこにいなさい。あるいは、部署を移るのが早過ぎた。残ってはどうかということでした。今回の新しい施策が、そこにどのようにかかわるかわからないのですが、仮にそういうケースがあったときに、資料3の2枚目のチャートで言うと、いちばん最後にまさにいま出た、「キャリア・コンサルティング等を踏まえた適正な配置」があります。つまり、配置となると、能力開発の問題以上に人事そのものになってくる。これは本人にそういうアドバイスをしてもしょうがないし、そういうAさんがいたときに、このシステムが事業主に対するカウンセリングというか、そういうようなことまで結びつくことを想定しておられるのか。その辺がよくわからないのです。結局、能力開発が最後は処遇と雇用と配置とセットである以上は、どうしてもそこに触れざるを得ないわけです。それにこの仕組みがどこまでかかわり得るのか。あるいは、関接的にでもかかわろうとしているのか。その辺、イメージが湧かないのです。
(事務局)
結局、個人のキャリア形成を支援していくということになると、キャリア・コンサルティングをやったあとは本人はキャリア形成の希望を持っていますが、それについて企業側がどう配慮するかという接点は出てくると思います。ただ、もちろん、職業能力開発促進法というのは能力開発を促進することであって、企業の人事体制自体どうこうに直接触れるわけにはいかないわけです。ただ、そういう接点が出てくるということも確かなことです。
その辺、例えば先ほど申し上げた指針というもので、キャリア形成を促進するために指針を作って、それについて事業所の方に企業内を見ていただいて、企業内で計画を作る。そういう形で、指針の中にコンサルティングをやったあとにキャリアについて配慮していただくとか、そういうことを書くことは考えられるのではないか。その趣旨に基づいて、具体的に企業が計画の中でどうこなしていくかということはあるかと思います。そういう指針を使って、企業内でキャリア形成を尊重していくような仕組みという方向へ引っ張っていく。そこにおいて、先ほどの接点のところを処理していってはいかがかと考えています。直接的に法律の中で配慮とか、そういう形を書くというのは問題がないわけではない。むしろ、そこは指針のような形で、弾力的に引っ張っていくという形が考えられないかなと、私どもとしては考えています。
(委員)
引っ張っていくというのは、直接ではないですが、つまりそういうシステムをセットでやっていくような体制を作りなさい。整理しなさいということですか。
(事務局)
はい、そうです。
(部会長)
何か積極的にご意見はありますか、いまの点について。
(委員)
いや、よくわからないのです。
(委員)
例えば資料3の2枚目、前の研究会報告だと、これは企業内のケースですが、労働者は「持っている能力の棚卸しをしなさい」、事業主は「必要とする人材像を明示し、必要な能力を示します」ということがセットだったと思います。今度の表を見ると、労働者のところは3つに分かれているということです。いちばん左に公的機関のことが書いてあって、真ん中は事業主、右側が労働者です。事業主と労働者との間に矢印で事業主が「職務・職階ごとに必要な能力の明示」というように書いてあるのです。実は、ここは先ほど確認された基本的な能力開発の在り方で、事業主がなかなか事業の将来像についてはっきりビジョンを持てない。そして、必要な能力を示し難い状況にあるというそのものを確認したかったわけです。ですから、もう少し、ここについて事業主がどのようなことをするのかということが明らかになっていないといけません。労働者は棚卸しをするのですが、事業主はどういうことをするのかということが、3のこの表ではちょっと明らかになっていないと思うのですが、いかがでしょうか。
研究会報告では、労働者は自分の持っている能力の棚卸しをしましょう。そして、事業主も、事業にとってはどういう人材がほしいかというものを明らかにしますということでした。そこですり合わせをして、必要なキャリア形成について話し合い、どのような訓練、教育をするのか。または職務の経験をするのか、ということをやっていくということでした。このペーパーだと、事業主が人材像を示すというところ、必要な能力を示すという点の書き方が小振りになっていると思うのです。
(部会長)
そうすると、真ん中のところで、事業主がどういう人材がほしいかという情報を公にするというような文章があるほうがいいということですか。
(委員)
はい。ちょっと、小振りになっているのではないでしょうか。
(事務局)
1つの職階ごとに必要な能力の明示というのは、人材像を示すことに相応しています。それを見て労働者のほうは、この企業の中で自分はどういうキャリアを積んだらいいかを考えていただく。それと同時に、企業内外のキャリア・コンサルタントと相談して、自分の適性や目標に向かってどういうキャリアを積んだらいいかを相談しつつ、その企業の示したものと照らし合わせていく作業、ここが「すり合わせ」になってくるわけです。
ですから、おっしゃったことは1、2、3という形では書いていないのですが、当然これはそういうことが前提で書かれているわけです。ただ、書き方が、キャリア形成支援担当者の業務を中心に書いているものですからわかりにくいかとは思います。
(委員)
ここはちょっと直したほうがいいと思います。
(事務局)
どのように直したらよろしいですか。
(委員)
労働者は確かに努力しますよ。しかし、事業主もその点は相当努力をしていただいて、会社は将来どういう事業戦略を持ってどういう人材がほしいか。そこを明らかにしてほしいと思います。
(事務局)
それはおっしゃるとおりです。点線の矢印で示していますが、例えば資料4の指針の中身のほうを見ていただくと、「企業内の職務の遂行に必要な職業能力の明示に関する事項」、こういったものをちゃんと指針に書いていただいて、その上で相談していただくなり何なりということで考えています。
(委員)
口頭でおっしゃっているようなことが含まれているという意味ではなくて、図でもちゃんと書いていただきたいと思います。
(事務局)
点線の矢印を実線にすればよろしいですか。
(委員)
もうちょっと内容を書く必要があるのではないでしょうか。つまり、図のイメージでウエイトが想定されてしまうわけです。だから、企業が努力している部分がちょっと見えにくいのではないかと思うのです。企業は相当努力しなければいけないと思うのです。
(事務局)
はい、よくわかります。
(部会長)
それでは、この図を少し工夫していただきましょう。確かに書いてありますけれども。ほかにございますか。
(委員)
関連するようなしないような、理解を深めるための確認の意味でお聞きします。資料4の中で、「能力開発の支援について」ということで2項目あります。「全体としてまだ云々」と書いてあって、「厚生労働大臣は云々」として、「公表することとしてはどうか」と書いてあるのです。これは企業に対して、その計画を公表させることにしてはどうかという意味なのですか。
(事務局)
いや、単に策定するという。「策定、公表」というのは一語ですが。
(委員)
策定して、こうしなさいというものを出しただけで。
(事務局)
要するに、指針というものを法律上位置づけて。それは当然指針ですから、省令や告示ということになってくると思いますが、そういう形で公表することになります。単にそれを言っているだけで、公表には特に意味があるわけではありません。
(委員)
前にまだ不十分だ、まだ十分でないと言っているので、公表させることによって十分にしようとしているのかなと取れたわけです。
(事務局)
要するに、事業主の中でまだ、キャリア形成などを考えるというのはまだそんなに浸透しているわけではありません。特に中小企業ならなおさらです。ですから、企業はキャリア形成についてこうやっていただくといいという指針を作って、それを見ていただいて、今度は事業主が計画を、自分のところでやったほうがいいだろう。こういう状況だから、やはり能力を引き出さなければいけない。知恵を出さなければいけない。それはそういう体制を入れていただく。そのための計画を作っていただいて、計画の中でキャリア・コンサルティングをやったり、あるいはキャリア形成をやったあとに教育訓練へ派遣したり能力評価を受けさせたり、そういったことを書いていただく。そのことによって全体として推進していくということです。指針を作って、それをもとに計画を作っていただくという形で、十分でないキャリア形成というものを広めていくという意味でございます。
(委員)
そうすると、いままではその指針すら公表もしていなかったということですか。
(事務局)
いや、指針ももちろんないし、職業能力開発促進法自体にキャリア形成という概念がありません。
(委員)
わかりました。そういう意味ならよくわかりました。
(部会長)
これを策定、公表するのは大臣なのでしょう。
(事務局)
はい、そうです。そういう方向で考えてはどうかということです。
(部会長)
もし、そこが混乱するようだったらこの文章を2つにして。
(委員)
前の修飾語がずっと来ているので、後ろに引っかかると。
(部会長)
「促進していく必要がある」として、1度切って、「厚生労働大臣が」と始めたほうがいいかもしれませんね。
(委員)
先程の意見の続きのような感じですが、資料3の2枚目、「キャリア形成システム」というチャートに関連して、特に先程の意見は職務、職階ごとに必要な能力の明示をもっとしっかりしてほしいということだと思うのです。ここは目指すべき像を明示することだと思います。その像に対して、労働者はそこに到達できるように頑張るわけですが、今度、どこまで到達したかというのが事業主側の(3)、「職業能力評価」ということだと思うのです。ここで(2)、労働者のほうの「プランの作成と職業能力評価の結果等のすり合わせ」が出てくる。この「すり合わせ」が結局、目指すべき像にどこまで到達しているか、ということが労働者本人にとって明らかになっていないと、さらに頑張るべき点は何かがわからないわけですから、すり合わせの透明性を増すことが非常に重要だと思うのです。
そこで、資料2の「調査結果」を見ると、例えば11頁に「能力・適性に係る情報を活用する上での問題点(事業主回答)」があります。私は最初、これは労働者回答の間違いではないかと思ったぐらいなのです。これは評価システムそのものについての評価ではないので、微妙な聞き方になっているとは思うのですが、何と40%以上の企業が「上司の主観によりゆがめられている」、同じく4割近くが「評価基準が適切でない」と言っています。これにやや対応する労働者の側の見方というのは16頁、「能力評価についての要望」でいろいろ出ているわけです。「評価結果を本人に開示してほしい」、それから「客観的な評価項目を取り入れてほしい」というようにして、事業主側の問題点の認識と一致している部分がかなりある。
つまり、透明性や開示度というところで、双方ともいまの評価方法には問題がある。つまり、「主観によりゆがめられている」と企業が思っていれば、なかなかそういうことは開示できないのだろうと思います。双方がそう思っている中で、先ほどのチャートに出てくる(3)の「すり合わせ」の開示度、透明性、納得性が高くないと、このキャリア形成システムというのはうまくいかないのではないかと思うのです。その辺のところは、労働省としてはどのように透明性や開示度の向上を促していくつもりなのか。その辺が1つポイントかなという気がした次第です。
(事務局)
非常に重要な点だと思います。いままで、そういう評価はあまり意識してなされていない。上司が何となく判断している形のものが結構多かったと思います。今回、キャリア形成というものを考えるについて、キャリアシートの様式についてもある程度しっかりしたものを作ろうと思っています。それからキャリア・コンサルティング技法についても、いま同時に研究会をやっていて、技法をある程度客観できるような形のものを作ろうとしています。1つはキャリアシートなり、キャリア・コンサルティング技法というものをある程度確立したものを作ることによって恣意性をなくしていく。
もう1つはコンサルティングをする人の養成、これを専門家として育成する必要がある。これも専門的な講習を実施して、単に恣意的にやるのではなくて、専門的な角度、キャリアシートやキャリア・コンサルティング技法を踏まえた上で相談できる仕組み、専門家の育成ということによってできるだけ客観化していきたいと考えています。これが1つの制度として確立し、システム化することによって、できるだけ恣意性というものをなくしていくのが1つの眼目であります。
ただ、終局的に言うと、評価基準をある程度統一していくことが必要です。それはなかなか大変な作業ではありますが、そういう実践的能力をどう評価するのかということも同時並行的に進めていかなければいけないだろうと考えています。イギリスやアメリカでもそういうことをやっているのは、ちゃんとした1つの基準を作ろうということで、なかなか難しいのですが同時並行的に進めなければいけない。ですから、こういうシステムを確立する。それから、さらには雇用される能力など、実践的な基準を作っていくことによって、次第次第に恣意性をなくしていくことが必要です。また、労働力流動化の中で、流動化しながらも職位が落ちないためにも是非必要なことだろうと思います。
いまの段階で、ハンドルをこういう方向に向かって切るということは私どもとしては必要と思いますし、できるだけそういうシステムを通して客観化するという努力はしたいと思います。ただ、もちろん、完全にそういうものを払拭というのは現状ではなかなか不可能ですが、そういうものが払拭できるようにシステム化しようというのが狙いです。おっしゃった点は、非常に重要なことと思っています。
(委員)
先ほどの点に戻るのですが、事業内、特に企業の推進力の体制整備ということ、それから先ほど「今後の在り方」の中で、個人があって、企業がある。中小企業レベルだとどうしても、かなり推進力が弱いというデータもありますので、ここに業界自身が団体ぐるみでどう推進するかというところも、資料4の最後の頁に書き振りとして入らないかなと思います。ただ単に、特に中小企業にこぞってキャリア形成を支援するという、業界団体の役割というのはかなり大きいと思います。ですから、「今後の在り方」との整合性も含むのなら、業界団体がどうあるべきかというところがあってもいいのかなと思います。いかがでしょうか。
(事務局)
今後の大きな課題だと思います。それでは、現時点でどういう役割を担っていただけるのかというと、現状ではすぐ、例えば法的にどうだとかいう話にはなりにくいだろう。むしろ、これから事業主団体の役割、特に業種別の労使とかの役割というのはイギリスやアメリカの例を見てもかなり大きくなると思いますので、そこは重要な課題として考えていく必要がある。職業能力開発基本計画は5年計画ですから、その中でおっしゃったようなことを課題として書いて、具体的にどういう役割を担うかという方向性を出していただければと思います。
(部会長)
いまの点、使用者代表の方は何かご意見はありませんか。業界団体等もやったらどうかという。サポートするなり反対するなり、ご意見はありませんか。
(委員)
一般論なんですが、やはり国の考えていること、あるいは国がやろうとしていることは、中小企業全般になかなか浸透しないと思うのです。そういう意味で、我々業界団体というのは大変になりますが、やはりある程度協力してやっていかなければ、こういうことも浸透していかないと思います。先ほど意見があったように、特に評価の問題も個々の企業ではなかなか、例えば国が「こういう評価があります」と明示してもなかなか浸透しないと思います。そういうときに、業界団体が中に入ってやることも必要ではないかと思います。大変なことだと思います。
(委員)
いまのお2人のご指摘に全面的に賛成です。今日お示しいただいた企業の例、こういうことができるようにするための施策としてやるのか。それとも、そもそも先ほどの総論で議論したような、企業を超えてキャリア形成がされていくことを支援するのか。言ってみれば、先ほどのA社の場合はたまたまでしょうが、長期型、まさにセカンドステージまで見据えた立派なプランであって、それは多分自力でおやりになると思うのです。その中で我々が学ぶノウハウはあると思います。先ほどの役割分担ではありませんが、行政として、まさに民ができないところをバックアップしていくために何が必要かとなると、やはり移動してもキャリア形成がちゃんとされていく。評価もされていく。そして、自力でできないところは、まさに業界レベルでノウハウも開発していく。当初考えていたキャリア形成という位置づけから、いまのプランだと、内外と分かれていますけれども、ちょっとそこがはっきりしない。その趣旨よりはむしろ、企業内型で立派なシステムを作っていくほうのバックアップというように読み取れてしまうのです。ここまでの体制を中小まで、各個別表指標でやるのはまず不可能であろう。そうすると、いま、お三方がご指摘になったような、業界団体で何ができるかというところにチャートの比重を移すことが必要かなと感じています。
(事務局)
社会的に、個人中心にキャリア形成を誘導ということになってきますので、キャリア形成というものを一緒に考えてあげないといけない。個人が勝手に能力開発をしなさいと言われているから。そういう仕組みを社会的に作っていくというのが今後の法改正の狙いではあります。
ただ、キャリア形成のことを考える場合、企業内外で状況は違うわけです。例えば、企業内の人がキャリア形成をするとした場合、企業内の職務を経験することによってキャリア形成をするわけですから、抽象的なキャリア形成ではないわけです。その点が企業内のキャリア形成では非常に具体的になってくるということです。ですから、具体的なキャリア形成を行うについては、職務上、配置をちょっと配慮してもらうこともセットで含めた、より具体的なキャリア形成なので、それは事業内計画というものを作って、そこでキャリアを現実のものとしていくというプロセスだろうと思います。
企業外ですと、離職者の方などはどこに勤めるかわからないわけですから、職業選択という、どこに就職するかを含めたより幅広い話になってくる。若干、ディメンションが違うのではないかと思います。ただ、共通して言えるのは、そういう基準についてキャリアシート、キャリア・コンサルティング技法というものを共通にしていくとか、それによって企業を超えても移れるようにしたり、評価基準を統一していくとか、そういうことが社会的な仕組みとしては非常に重要なのです。
そういう意味では、法律には出てきませんがキャリアシートやキャリア・コンサルティング技法の開発、また、法律では職業能力評価を盛り込んでいこうとしていますが、そういうものをある程度、企業内外を問わず統一していく。そういう仕組みを社会的に作るというのがもう1つの柱です。そこは法律上、直接出てくる部分は少ないかと思いますが、関連的にはその前提で法律体系を作るということになってくると思います。
企業内はより具体的な話になります。企業内において、キャリア形成を尊重して能力を引き出すという企業像があるとすれば、そういう体制に持っていっていただけるように指針をもって誘導する。かつ、キャリア・コンサルティングをしたあと、例えばその配置についても配慮していただくとか、より具体的な形での推進ということになりますので、これは指針か計画ということで考えてはどうか。そこが企業外のキャリア形成と違う点かと思います。
(委員)
もう1つの柱というのは法律上どう盛り込むかは別にして、職業能力開発基本計画の議論としてもう少し浮上できないのですか。
(事務局)
そこは是非ご議論いただきたいと思っています。それをどのように社会化していただくか、共通化していただくか。非常に大きな課題だと思っています。
(部会長)
法律を作って施策を実施していくという、趣旨はもちろん、官民が協力して行うこと、また、行政は民間ができないことを支援すること、というところにあると思います。ですから、このような話をもし読む人が読み取るとしたら、それはちょっと意図と反するのではないかと思います。どうですか。ほかに何かありますか。時間がかなりたちましたが、大事なことですのでゆっくり議論していただきたいと思います。
私も今回は発言します。2つあります。法律に盛り込むかどうかは別として、1つは学校制度との関係は何か考えておかなくていいのかどうか。実際に職業選択については、高等学校でやっているわけです。ということは、おそらく将来中学校、高等学校、場合によっては大学等も含めて、キャリア形成の一端を学校制度も担っているわけです。将来というか、いまでも既に事実上やっているのだと思います。どのように学校制度と連携していくかを考えたほうがいいと思うので、そのための準備の穴をどこかに開けておいたらどうか。一般的ですが、そういう感想が1つあります。
もう1つは技術的なことで、事例でA、B、Cというように挙げたのは、どういう意図でA、B、Cを選んだのか。もし、できたら教えてほしいなと思います。Aはいままでどおりのタイプ、BとCは少し新しいことを模索しているタイプですか。
(事務局)
A社については、キャリア形成施策について、全体的にご説明するのになかなか説明しやすい事例ということで取り上げています。B、Cについては確かにバリエーションということであります。
(部会長)
その点も、1行入れておいたほうがいいのかなと思います。学校制度との関係はどうですか。
(事務局)
これは法的にどうこうという話ではないのですが、非常に重要な点であります。実は私どももそういう意識で、文部省と労働省で事務次官トップに関係局長を集めた会議をやっています。先般も開催したところです。その中で、文部省側も学校教育について、少し実践的な能力を意識してやっていかなければいかんという意識が非常に強まっています。そういう面から言うと、学校教育と職業能力の開発、向上とをある程度連動させていく道筋というのは、これから極めて重要になるのではないか。その辺については、文部省も労働省も大体共通認識を持てているという段階です。
これを今後、具体的にどうやっていくか。差し当たり、突っかかりは学校教育の中で企業派遣とか実習というものを重んじていく。あるいはフリーター対策で、キャリア形成という観点から文部省と労働省が協力していく。そういうところで具体的な協力項目として挙がっています。そういうことを突っかかりとして、今後、学校教育と職業能力開発というものをある程度一貫したものとしていく方向に深めていくのがこれからの課題だと考えています。
(部会長)
私は別に、中学校や高等学校で職業教育を促進するほうがいいと思っているわけではありません。将来の不確定要素が大きいときには、むしろ基礎教育に重点を置いたほうがいいというのが私の意見なのです。いま言った意味は、カリキュラムのことももちろんありますけれども、プログラムの上で連携を取れるようにしておくほうがいいということなのです。どうもありがとうございました。かなり時間を取って議論していただきました。最後に、事務局から2つほど報告があるそうです。それについてお願いいたします。
(事務局)
資料5をご覧ください。去る10月19日に策定された、「日本新生のための新発展政策」というものであります。この背景には雇用情勢が非常に厳しい。消費の動向も一進一退の状況がある。我が国経済全体として、民需を中心にこれから自律回復軌道に乗せていく必要があるだろう。そのために「IT革命の飛躍的推進」、「循環型社会の構築など環境問題への対応」、「活力に満ちた未来社会を目指す高齢化対策」、「便利で住みやすい街づくりを目指す都市基盤整備」、この4分野に重点を置いた「日本新生のための新発展政策」が策定されました。この中に能力開発の関係も重要なものとして位置づけられていますので、若干ご説明したいと思います。
1頁は「日本新生プラン具体化等のための施策」です。1-1、「IT革命の飛躍的推進のための施策」という中に、「IT普及国民運動の展開を通じたIT利用技能の向上策」とあります。具体的に、労働省関係としては、IT化に対応した総合的な職業能力開発施策の推進として、ITに係る公共職業訓練の拡充等を図ることを打ち出しています。
いちばん最後のペーパー、別紙を見ていただきたいと思います。来年の新政策、「IT化に対応した総合的な能力開発施策」ということで、「100万人計画」についてご説明したわけです。この新生対策の中では緊急対策として、今年度中の対策として、「事業の概要」に書いていますように、約40万人を対象として「情報格差(デジタル・ディバイド)解消のためのIT職業能力習得機会の確保、提供」ということを考えています。基本的には、「100万人計画」の前倒しという考え方であります。(1)「ITに係るレベルに応じた職業能力開発機会の確保」、これは(1)から(3)にあるような、ある程度専門的なものから基礎的なものまで、レベルに応じて多様な能力開発を受けられるようにする。離職者、在職者のそれぞれについて行う。離職者については、民間教育訓練機関なども積極的に活用してどんどんやっていく。在職者については、夜間、土日を含め、公共職業訓練などでも対応していくという考え方です。
それから、「自学自習」ということで(2)に書いています。これは訓練施設や地域職業センター等ですが、そのようなところにパソコンを置き、インストラクターを配置して、夜間、土日を含めて自習をしていただく形のものです。40万人規模のそういう訓練をこなしていくために、各都道府県に雇用・能力開発機構の都道府県センターがありますので、そこが窓口となって「地域IT化能力開発支援センター」として、民間教育訓練機関の活用、訓練の仕分け、割当て、相談といったものを窓口として担っていくということが(2)でございます。
(3)に併せて書いていますが、ITインストラクターを養成しようではないかと考えています。中小企業などのことを考えると、基礎的なIT化対応というのはある程度企業の中で、OJTでやっていくということでも対応できるのではないか。そうすると、中小企業である程度基礎的なことを教えられる方、インストラクターを養成する必要がある。これは商工会議所などとの連携で行います。商工会議所が傘下の中小企業に声をかけていただいて、インストラクター養成について手をあげていただく。手をあげた中小企業から、インストラクターの方をまとめて教育訓練機関に送り込んで、そこで3カ月なりの訓練を受けていただく。ある程度教えられる能力を身につけていただく。今度は中小企業に戻っていただいて、OJTなどでIT化を進めていく。そういうことによって、幅広くIT対応能力ができるように均転していくという施策がこの(3)です。
以上、企業内、あるいは企業外をあげて、労働者のIT化対応の能力開発を進めることによって底上げしていく。また、デジタル・ディバイドを解消していく。これが労働省が打ち出している、IT関連の能力開発の眼目であります。以上のようなことを中心に、日本新生のための新発展施策に対応しています。
そのほかに、3頁目の2つ目のパラグラフで、「求人の増加傾向の下での求職とのミスマッチの解消を促進するため、中高年失業者等に対する求人未充足分野に係る高度な専門知識、技能の訓練機会の確保」というものが出ています。これはいわゆる成長分野で、ある程度技術の高い方というところを考えています。人材が足らなくて、一種、成長のためのボトルネックになっているという面があります。そこで、求職者の方の中からある程度の高度な能力に対応できる方を選び、集中的に高度な専門知識を付与するための訓練をして、ボトルネック解消に役立てていこう。これは離職者の方の再就職ということにもつながります。そういう狙いも含めています。以上が、「日本新生のための新発展施策」の職業能力開発分でございます。
(事務局)
続いて、資料No.6をご説明いたします。前回の中央職業能力開発審議会で、「その後、勤労体験プラザはどうなってしまったのか」というご質問がありましたので、そのパンフレットであります。後ろに場所の地図が書いてあります。「関西文化学術研究都市」の精華・西木津地区という所に建設を予定しています。
パンフレットをめくっていただくと、右側の真ん中のほうに「進む開館準備」と書いてあります。平成14年度末の開館を目指し、今年2月に建設の着工をしたところです。施設計画にありますけれども、敷地面積が約8万3,000m2、総床面積が約3万5,000m2ということであります。
下のほうに地図があります。2階がエントランスホールになっています。青いところをゾーンI、ゾーンIIと見ていきます。そして1階に降り、ゾーンIIの残りを見て、深緑のゾーンIIIを通って、ゾーンIVを見る。必要な方はライブラリゾーンを見て、それからまた2階に昇って外へ出るというようになっています。
次の頁では、それぞれのゾーンが一体何なのかが書いてあります。左側のほう、エントランスからまず最初に入ると、ゾーンIで「仕事ワンダーランド」があります。これは先端的な職業を中心に、その仕事ぶりやこういう仕事がありますというものを示すところです。
ゾーンIIは「仕事ワークランド」です。ものづくりの体験やシミュレーションでいろいろなことを体験してみる、あるいは実際のプロの実演とか実技を見て一緒に体験してみられるところです。このゾーンIIが体験を中心としたコーナーとなっています。
その後、ゾーンIIIが仕事の歴史、将来どういうようになっていくかを見られるところです。ゾーンIVが「体験ワークランド」ということで、自分の適性をコンピューターなどで、どんなところに適性があるのかを自分で発見してもらおうというコーナーです。ライブラリゾーンについては、さまざまな職業情報について映像や音声、文字によって、中学生や高校生にもわかりやすいような形で職業に関する各種の情報を提供していこう。検索もできるわけですが、それがこのライブラリゾーンという形になっています。平成14年末に開館予定で、着実に準備が進んでいる状況にあるということです。以上です。
(部会長)
どうもありがとうございました。以上のご説明について、何かご質問等はありますか。
(委員)
IT化の関連で、各都道府県ごとに地域IT化能力開発支援センターを整備するということですが、これは既存の機構の一部に新しい機能を加えるということですか。
(事務局)
雇用・能力開発機構都道府県センターに相談員のような方を配置していただくことを考えています。
(部会長)
この「新発展政策」の中で、労働省が使う予算はどのぐらいなのですか。そのうち、職業能力についてはどのぐらいなのですか。
(事務局)
労働省としては、IT化に対応した総合的な職業能力開発施策の推進で約218億円です。また、職業能力のミスマッチ解消のための高度人材養成事業の実施で約120億円です。
(委員)
「勤労体験プラザ」では、職業訓練の実施ということは不可能なのですか。例えば、コンピューターを置いて訓練を実施するということは考えられるのですか。
(事務局)
現時点では、ここで職業訓練を直接やるということは考えていないと思います。
(委員)
こんな立派な、素晴らしい所なので、是非セミナーとか、あるいは事業主団体をかなりベースにしていると思いますので、そのような職人さんの講習会とか、あるいは高度な専門的なセミナーをできればやったほうが効率的ではないかと思います。まして、ちょっと遠いので宿泊施設なども置いてはどうか。ただ、修学旅行生が来て見るだけではなくて、訓練もして、あるいは在職労働者も活用するという方向が考えられないかなと思っていま質問しました。
(委員)
確認をさせていただきます。IT化に対応した総合的な職業能力開発施策の推進が218億円ということでしたか。
(事務局)
はい。
(委員)
同じく職業能力のミスマッチ解消のための高度人材養成事業の実施はいくらでしたか。
(事務局)
約120億円です。
(部会長)
今日の新制度に向けてのご議論は、次回に続けてやっていただきたいと思います。次回は11月9日、10時に予定されています。ほかに何か緊急にあれば別ですが、なければ以上で終わりとします。よろしいですか。どうもありがとうございました。
照会先 厚生労働省 職業能力開発局 総務課 政策計画・調整係(内線5959)