日時 | 平成12年9月7日(水)15:00〜17:00 | |
場所 | 労働省省議室 | |
議題 | (1)今後の職業能力開発施策の在り方について (2)その他 |
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配付資料 |
No.1 職業能力開発関係各種給付金の予算・実績の推移 No.2 「職業能力開発をめぐる状況」参考資料(追加資料) No.3 今後の論点(案) No.4 キャリア形成をめぐる現状と論点について No.5 中央職業安定審議会専門調査委員雇用安定等事業部会報告 No.6 ものづくり基盤技術基本計画 |
出席委員 | 総括部会所属 | 学識経験者 | 尾高煌之助 早川宗八郎 |
労働者代表 | 市川 清美 草野 忠義 鈴木 利文 堀口 雅行 |
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事業主代表 | 青山 伸悦 小嶋 隆善 |
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総括部会所属以外 | 学識経験者 | 小池 和男 | |
労働者代表 | 平山 和雄 | ||
事業主代表 | 杉山 幸一 山田 恒夫 |
(事務局)
では、能力開発の施策の在り方をご審議いただく前に、資料No.1、No.2で説明したいと思います。
資料No.1ですが、いま部会長からお話がありましたように、「職業能力開発局の重点施策」を意思決定しております。今後、予算当局と折衝して、年末に向けて練り上げていくわけですが、当面の労働省の考え方ということでまとめております。
職業能力開発関係では3つの大きな柱で、エンプロイアビリティの向上を念頭に置きつつ、労働者個人ごとのキャリア形成に関する支援を行うというのが1つ目です。2つ目が、IT化が急速に進んでいますので、働く人すべてのIT化対応を目指すということで、基礎的なIT訓練を中心に能力開発施策を展開していく。また、ものづくり基盤の強化を図る。3つ目が「人づくり」を通じた国際社会への貢献という3本柱になっています。
第1の柱が、「労働者の個別的なキャリア形成支援」ということで、最初に労働者のキャリア形成への支援として、キャリア記述、キャリア・コンサルティングに係る技法の開発・普及。さらには、そういうものを踏まえて実地にキャリア・コンサルティングを受けられる体制の整備ということで、これは都道府県ごとに雇用・能力開発機構の都道府県センターが全国47カ所にあります。ここにキャリア形成支援コーナーを設けて、キャリア・コンサルティングの専門的な方を配置して相談に応ずる体制を整えようというものです。
同時に、労働者に対する支援だけではなく、企業においてもキャリア形成を促進できるための措置の推進ということで、企業に対する周知、啓発、情報提供等も併せ行うことにしており、(1)と(2)を併せて、大体25億円程度の予算要求を行っていきたいと考えております。
第2の柱ですが、キャリア形成支援とセットで職業能力評価システムの確立が重要です。現段階においては、いまだ十分確立していませんが、そういうシステムを今後確立していこう、作っていこうということです。(1)は再掲ですが、キャリア記述を基にした職業経歴及びそこにおける成果の評価を行う技法を開発していこうということです。それから、エンプロイアビリティ(就業能力)ということが言われていますので、そういったものの基準作りの調査研究。エンプロイアビリティをどのように捉えるかについての調査研究を行うというのが、第2番目です。
民間団体がいろいろな評価システムを作っていますので、そうしたものについて、一定の指針に基づき認定を行っていくということを進めてまいりたいと思います。これが第3番目です。以上が主としてキャリア形成支援です。
そういったものを前提に、第3の柱として、多様な教育訓練機会を確保するという観点から、産学官の連携によって、教育訓練機会を開発整備しよう、あるいは資源再利用(リサイクル)等環境にやさしい企業を支える人材の育成・確保も同時にやってまいりたい。
第4の柱が、「IT化に対応した総合的な職業能力開発施策の推進」ということで、現段階の状況を見ますと、高齢者を中心になかなかIT化に対応できないという面があります。そうした観点から、デジタル・ティバイドが生じかねないのではないか。雇用不安を惹起しかねないということで、来年度において、緊急、かつ集中的に、ITに係る基礎的な能力習得機会の確保を図ろうということで、全体として100万人程度の能力開発を行うということで、205億円程度の予算要求をしております。
中身ですが、公共職業訓練において訓練ニーズに応じた多様な水準、期間のコースの整備をしてやっていこう。離職者について30万人程度、在職者については20万人程度ということで考えており、離職者については、民間教育訓練機関への委託も含めてやっていきたい。在職者については、訓練校、あるいは地域職業訓練センターなどを、土・日も開放してやっていこうと考えています。
さらに、能力水準に応じたITに係る学習の支援ということで、公共職業能力開発施設にパソコン(自習用端末)を整備して、夜間、土・日に自習ができるようにして、多くの労働者の訓練に資するようにしたいと考えています。
そのほか、IT化に対応した先導的な教育訓練コース・システムの開発を行ってまいりたいと思いますし、また(1)のような、100万人規模の能力開発を行うということになりますので、雇用・能力開発機構の都道府県センターに「地域IT化能力開発支援センター」を置いて、ここが窓口となって各都道府県ごとのIT化訓練をコーディネイトしていくという窓口です。
第5の柱として、「ものづくり基盤の拡充強化」ということで、高度技能の習得支援で、高度技能についてデジタル化を進めていこう。さらに、ものづくり振興に係る環境整備を行っていこうということを考えています。
最後に、第6の柱として、「人づくり」ということで、IT人材の養成支援など、人材養成分野における技術協力、これは特に現地を中心にIT研修を実施していこうと考えております。それから、外国人研修生の受入れを通じて、開発途上国の人づくりに貢献していこう、といった内容です。
資料No.2です。前回、統計資料をご説明した中で、「フリーター、あるいは派遣労働者等についての能力開発の状況はどうだろうか。就業形態別に見られないか」というご質問がありました。それについて、なかなかピタッと合う資料がありませんが、とりあえず集められるだけのものを集めて、ご説明に供したいと思います。
まず最初に、フリーターについてのご質問がありました。フリーターについては『労働白書』などで1997年で150万人という数が出ています。1頁のフリーターの定義は、年齢が15〜34歳。「アルバイト」、「パート」である雇用者で、男性については継続就業年数が1〜5年未満の者、女性については未婚で仕事を主にしている者。それから、現在無業の者についてもパート、アルバイトの仕事を希望する者ということで統計をとっています。そういう統計で見ますと、1980年代から1990年代には、相当の勢いで増えてきているという状況が分かるわけです。
こうしたフリーターの方についてタイプ別に類型化したのが次の頁です。特にキャリア形成という観点からあえて言えば、「モラトリアム型」、「夢追求型」、「やむを得ず型」という3つに分類しています。
「モラトリアム型」というのは、職業や将来に対する見通しを持っていない。離職時に見通しのはっきりしないままフリーターになってしまったという場合です。「夢追求型」というのは、芸能関係を志向するとか、あるいはケーキ職人、バーテンなど、何らかの技能、技術で身を立てる職業を志向してフリーターになっているという形のものです。「やむを得ず型」というのは、正規の雇用を希望しながら、なかなかなれない、あるいは事情があってやむを得ずフリーターになっているというタイプです。
キャリア形成の観点から、いちばん問題があるのはモラトリアム型と言われる(1)の部分だろうと思います。こうしたタイプの方も30〜40%とかなりのウエイトを占めており、この辺について、キャリア形成という観点から、何らかの対策を講じていく必要があるのではないかと言えるわけです。これは「キャリア形成」の所で、こうしたタイプの方に対して、どういう支援ができるか、どういう対策が講ぜられるかをご議論いただきたいと思います。
「就業形態別の能力開発の状況」ですが、就業形態別の能力開発の現状についての適切な資料がなかったものですから、とりあえず、職業能力習得・向上の必要性を感じているかどうかを聞いた「若年者就業実態調査」がありますので、それを拾ってみました。これを見ますと、全体的に「必要性を感じている」というのがありますが、パートタイマーの方については、「やや必要性を感じている」という方は低い。特にいちばん右をご覧になると分かりますが、「わからない」と言っている方が、パートタイマー、アルバイトの中ではかなり多いという状況で、能力開発について、意識してそれを行う必要があると感じている方は相対的に少ない。ただ、思ったほど顕著な差は出ていないということです。特に「必要性を感じている」という所を見ますと、正社員、パート、アルバイターの方も、「会社が行う教育訓練でやりたい」とか「会社に頼らない」、あるいは「両方」という数値を見ますと、ほとんど同じです。「わからない」という方は多いのですが、「必要性を感じている」という方について見ますと、正社員もパートもアルバイトの方も、それほど意識の面での違いはない。やはり、能力開発向上ということが、パートやアルバイトの方についても重要性があるということであろうかと思います。
4頁です。これは、「パート、アルバイト労働者の平均勤続就業年数」です。昭和62年と平成9年をとってみますと、パートの方については着実に伸びてきていると言えます。アルバイトについては大体横這いです。この資料にはありませんが、正社員も含めて、全体を1978年と1998年を見ますと、1978年は9.9年、1998年が13.4年ということで、平均勤続年数は、全体として伸びているという状況があり、パートの方もそれと符合して伸びてきているという状況になっています。
5頁目です。先ほどの調査とダブりますが、「今後職業能力を高めたい方法別労働者割合」ということでとっています。正社員の方は、この調査で見ますと、高めたいと思っている方はかなり多い。反面、非正社員、特に短期間のパートの方は低いという格好になっています。
最後に、「計画的なOJT」実施企業の割合です。ここでいう「計画的なOJT」というのは、日常の業務に就きながら行われる職業能力開発で、能力開発に関する計画書を作成するなどして、教育担当者などを定めて、段階的、継続的に実施する。単に配置しているというのではなく、きっちりやる形のOJTを捉えていますが、これを見ますと、最近に至って急激に減少しているという実態です。特に平成6年から7年が10ポイント、さらに平成11年は、平成7年に比べて20ポイントも落ちているという状況で、昨今の状況の中で、OJTという面で取組みが急激に弱まってきている、ということが言えるわけです。
以上が前回ご指摘いただいた追加的資料です。
(部会長)
どうもありがとうございました。それでは、ただいまの2点についてご説明がございましたが、ご質問等がありましたら、ここでお受けいたします。
(委員)
いまの説明の最後の「計画的なOJT」の割合が非常に減ってきているわけですが、これは何か特別な理由というか原因があるのでしょうか。
(事務局)
これは細かく分析する必要があるのですが、OFF-JTもかなり下がってきていて、OFF-JT、OJTとも長期的に育成していくという形が薄れ、どちらかというと、即戦力志向というところが出ているのかと思われます。ですから、そこはまた詳しく分析しなければいけませんが、長期的に育てていくという考え方が少しずつ薄れ、即戦力志向という問題を踏まえて、これから議論していかなければならないのではないかと思います。
(委員)
前回の資料の補足説明に関連してですが、前回の資料の49頁に「自己啓発実施方法」というのがあります。その中でいろいろありますが、会社主催がいちばん多くて、会社以外がその次、それ以降、いわゆる公的機関と思われるような所、専修学校、各種学校、公共職業能力開発施設、大学、大学院といった所が非常に低い。通信教育がまあまあで、独学が結果としていちばん多いという状況になっています。労働省中心に公的な能力開発、その他をやっているのが自己啓発との関係で、どうしてこんなに低いのか、統計の取り方がいろいろあるのか、補足説明してもらえませんかと、次回で結構ですとお願いしたのですが、その辺はどうなのでしょうか。
(事務局)
あとでご報告しようかと思ったのです。統計調査をマルチプルアンサーで聴いていて、それが混乱して会社主催と会社以外と付けてしまい、専修・各種学校、民間教育訓練機関とマルチプルアンサーなのですが、そこの所がマルチプルになっていない可能性がある。聴き方にちょっと問題があったと考えております。ですから、今日お配りしていませんが、自己啓発の実施方法については、次回以降になりますが、もう1度聴き方を考えてみなければいけないかと思います。聴き方に問題があったと考えてりおります。前回ご説明したような数値のままではなかろうという感じを、私どもとしては持っております。
(委員)
先ほどの「計画的OJT」の資料の追加の質問ですが、種類別実施人員を昭和63年度については尋ねているというのが、(注2)に記載されていますが、対象人員の変化というのは、比較、あるいはこの調査ではなく、実際には割合ということになると思うのですが、何か別のものでフォローは可能ですか。
(事務局)
ちょっと検討してみます。
(部会長)
この統計は、たぶん構造的な変化と景気が悪いことの影響と両方入っているのではありませんか。だから、バブルがはじけたために生じている景気の悪さ以前に起こった景気の悪い時にも、OJTは落ちたのかどうか見たいような気がしますね。要するに、構造変化と景気の変化による影響と分けて見る。
(事務局)
おっしゃるとおりだと思います。そこのところがOFF-JTも減少傾向にありますので、教育訓練全体がだいぶ下がってきているということと、コスト的な要因というか、そういうものもかなりあるのではないか。それから、即戦力志向という需要構造が非常に変わっておりまして、IT化が進んでいるということもあります。そういう中で短期間で成果を上げていかなければいけないということから、即戦力志向になっている面もあるのではないか。おっしゃるように両面があろうかと思います。
(部会長)
ほかに何かございますか。これはつまらないことですが、フリーターの所で、注の中のフリーターの定義ですが、「男性については、継続就業年数が1〜5年未満」と書いてありますが、1〜5年未満というのはどういう意味ですか。例えば、1年未満の人は入っていないのですか。
(事務局)
1年未満は入っていないと思います。
(部会長)
そうすると、1年未満の人はフリーターとは呼ばないわけですか。要するに、ポイントは、こういう細かい所に注意をしてほしいということです。これは1年以上で5年未満という意味ですね。
(事務局)
1年未満を入れない理由は、1年未満を入れると、学卒未就職者がここに入ってしまうということです。ですから、学卒未就職者とフリーターは性格的にちょっと違いますので、それを除くという意味で1年未満を入れていないということです。
(部会長)
少し小さなことを言いましたが、もし何かありましたら、戻ってくることにして、先へ進みたいと思います。それでは、本日の中心議題の「今後の職業能力開発施策の在り方について」の議論をしていただきたいと思います。議論に入る前に事務局から、「今後の職業能力開発施策の在り方について」の論点案を、この間、皆さんにご説明した説明資料、皆さんのご議論等を踏まえて作っていただきましたので、議論の材料というか土台として、これを使ったらどうかと思います。
(事務局)
これから全体的なご議論をお願いしたいと思っておりまして、どういう論点でご議論いただくかを事務局なりに整理したものが資料No.3です。これは研究会報告書もありましたし、前回、資料説明などをさせていただきました。さらには今日ご説明しましたように、IT化対応、ものづくりなど新たな施策内容が必要になっています。そうしたものを入れ込み、まず大きな論点として大体6点ぐらいに絞れるのではないか。
特にキャリア形成については、少しきめ細かくご議論いただく必要があるのではないか。そういう観点から論点形成を行ったものです。今回、次回、次々回という順序でご議論いただき、その結果を踏まえてまた論点としてポイントとして再構成していくということで進めさせていただければと思います。
ちなみに参考として、第5次と第6次の職業能力開発基本計画の「目次」を配らせていただいております。これを見ますと、第5次では、第3部以後が論点風のものですが、企業内職業能力開発の促進、自己啓発の促進、公共の能力開発、特別の配慮を要する方の能力開発、能力評価、技能尊重、「人づくり」ということで、能力開発について主体別に論点として挙げているという格好です。
第6次の計画になりますと、少し項目によって分けておりまして、雇用の安定・拡大を目指す能力開発の展開ということで、高付加価値化・新分野、産業間・企業間の移動、ホワイトカラーの能力開発。それから、労働者の個性を活かす能力開発ということで、個人主導の能力開発等々。それから、経済社会の変化に対応した能力評価ということで、能力評価の推進、技能検定制度の見直しや民間団体の能力評価の推進、技能労働力確保等。それから、能力開発推進体制で、民間・公共の訓練の推進、「人づくり」といったテーマ別に、少し論点整理をしているという形になっています。
今回については、研究会報告もそうですが、個別のキャリア形成ということが1つのポイントになるのではないかという考えです。それとそのセットとしての能力評価ということを、まずご議論いただき、それからそれの受け皿としての多様な教育訓練機会の確保。企業側のニーズということで産業に必要な人材の育成で、IT化対応といった辺りがポイントになるかと考えておりまして、こういった順序でご議論いただいてはどうかと思う次第です。
(部会長)
ありがとうございました。それでは、ただいまの論点案に関して、ご質問、ご意見はございますでしょうか。もしこういう論点を中心に、今日と次回、あるいはその次も含めてご議論いただいて、だんだん集約していったらどうかというのが事務局の案なのですが、もしそういうことでよければ、今日は「論点」の最初のほうの2つぐらいを説明していただいて、議論をしていただくということにしたらどうかと思います。
(委員)
それに異議があるわけではないのですが、先ほどご説明いただいた来年度の重点施策が新聞等で出ておりまして、この部会でやっていることが相当程度出ているなという感じがしたのです。それは単年度のことだとは言いつつも、何か後追いの感じでこの部会の論議が、もうすでに来年度の構想の中にかなり見えているというところもあって、その辺について、そうなのかなという思いがあるのですが。
(事務局)
これは行政として来年度については必要な施策ということで、当面やっております。ここでご議論いただくのは、より構造的、かつ計画ですので5年先まで見通してどうするかということですから、我々行政サイドの考えというのもご説明しますが、そういうものを一応踏まえつつも、5年先、あるいは構造的対応としてどうしていくかという根本的なご議論をお願いできればと思っております。ですから、これは我々が考えて予算要求しておりますので、それは我々としてもそういった行政としての考え方というのは、これからの議論の中でご説明していきたいと思いますが、これからご議論いただくのは、むしろ5年先ぐらいまで見通して、構造対策として何をやっていくかということであろうと思います。ただ、もちろん関連はしていますので、そこら辺は私どもとしても極力ご説明させていただきたいと思います。
(部会長)
要するにこれから議論することを先取りしているのではないかということでしょうね。でも行政としては責任上、また政策の整合性上、予算要求はしているが、皆さんのご議論とか審議会の決議に従って、何か違う線が出てくれば、当然それによって修正するということだろうと思います。
(事務局)
そうですね。これは来年度ですので、それ以降のことについては、ここでのご議論ということになってくるわけです。
(部会長)
ほかに何かございますか。それでは、時間の制約もありますから、先へ進みたいと思います。
(事務局)
それでは、先へ進ませていただいて説明したいと思います。
資料No.4の「キャリア形成をめぐる現状と論点について」に基づいてご説明したいと思います。まず「キャリア形成のための施策が求められる背景」です。(1)、「経済社会情勢の変化と労働市場及び職業能力の在り方への影響」ということですが、IT革命という産業構造の変化というのが1つありますし、もう1つは人口構造の変化に伴う少子・高齢化という2つが相俟って職業能力の在り方に大きな影響を与えているということです。
具体的に企業内の状況について見ますと、これは前回も資料でご説明しましたが、高齢化と需要構造の変化への対応として、かなり企業内の構造がピラミッド型からフラットな組織になってきているという状況が見られます。
中でも調査で見ますと、OA系の情報システム改革が進んでいる企業については、よりフラットな傾向が出ており、今後IT革命が進むにつれてフラットな構造が進むのではないかということです。
(2)として、高齢化によって職業生活が長期化する一方で、技術革新と大きな環境変化に巻き込まれる事態が生じつつある。一方、これは意識の変化もあって就業形態の多様化、キャリアの多様化が進んでおり、職業能力開発の在り方は一律のものから個別のキャリア形成に応じたものに、だんだん移りつつあるのではないだろうかということです。
一方、企業外の状況については、1つはアウトソーシングが進んでおり、労働移動も増加しています。またそういう中で職業能力の在り方も企業を超えたエンプロイアビリティが問題になっています。人口構造の変化と技術革新によって、職業能力の在り方は変化しているわけですが、こういうことでキャリア形成を軸とした能力開発の展開が課題になっているのではないかというのが1頁目です。
2頁目の(2)の「実践的な職務能力の向上とキャリア形成」です。いま申し上げたエンプロイアビリティ(雇用され得る能力)というのは、必ずしも明確ではないわけですが、少なくともILOの定義などを見ても、知識、技能、コンピテンシーということで、単なる技能・知識という以上のものではなかろうか、例えば、仕事に対する姿勢、人脈のようなものも含む総合的な能力ではないか。そういう実践的な能力を高めるためには、そうした能力が蓄積されるような職務経験を積み重ねていくこと、すなわちキャリア形成というものが不可欠ではないかということです。また、特定の技能・知識などについては、教育訓練を受けることによって得ることができますが、それを実際に使える実践的な職務能力として定着させるためには、実際の職務で使っていくことが必要ではないかということです。こういった観点から職務において実際に必要とする能力の開発・向上のために、実践的な職務能力が蓄積されるような職務経験を適切に積み重ねる(キャリア形成)ことを施策の柱として位置付けることが必要ではないかということです。
ただ、これについては実際には、いま始まったことではないわけで、我が国の企業内においては、ほかの国に比べて技能・知識等の能力蓄積を図るという観点から、職務ローテーションに配慮する。そういうキャリア形成意識がほかの国より強いと言われています。特に実践的職務能力については、長期的な観点から構成することが必要で、今後ともこういった日本の従来からある良さ、我が国の風土というものを発展させて、労働力移動が増加することがあっても、長期的観点に立った能力蓄積を進めるということから、改めてキャリア形成を進めていくことが重要ではないかということです。
(3)が「雇用失業情勢とミスマッチ対応」です。これは現在、非常に厳しい雇用情勢の中でミスマッチというのが問題になっていて、その原因として挙げられているのが職業能力・経験の違いというものが大きいのではないかという分析をしています。そうなると、ミスマッチの解消のために能力開発が重要ということになるわけで、現在ITとか介護という訓練を強化しているところですが、しかしながら、実際のミスマッチというのは、こうした訓練も重要ではありますが、それだけで解消するというよりも、もっと構造的に考えたほうがいいのではないかという問題意識があります。
IT化進展、産業構造の変化、企業の在り方、変化という中で、キャリア形成の目標が、労働者側にとっても、あるいは企業側にとっても非常に明確に定め難くなっているのではないだろうか。あるいは成長分野と能力とのすり合わせ、あるいは必要な情報の提供といった問題もあるのではないか。それから、前回以来、話題になっていますが、若年者の職業意識の問題などもあって、やはり労働者のキャリア形成というところまで踏み込んだ施策をしないと、構造的に問題が解決しないのではないかということです。
(4)にありますように、以上のような観点からキャリア形成のための施策を柱として位置付けることが必要ではないか。さらに、「このようなキャリア形成を能力開発施策の柱と位置付けること」ということは、少子・高齢化が進んで若年者の職業意識が変化する中で、我が国の人的資本形成全体にとって、非常に重要で良いのではないかということです。2の「キャリア形成の現状」というのは、いま私どもが手元に持っているような資料をご紹介するということで、簡単に申し上げますと、労働者は、自己のキャリア形成の必要性について、「そう思う」、「ややそう思う」ということで、大体4分の3ぐらいがキャリア形成が必要であると考えているという状況です。
キャリアについては、上司との面接等で考えるということですが、若干飛ばして、4頁の(4)です。それでは、具体的にどのようなキャリア・コンサルティングの状況かということですが、社内におけるキャリアについての相談・アドバイスについては、「あまり受けることができない」(41.5%)、「全く受けることができない」(23.0%)とする労働者が非常に多くあり、こうした機会の確保を求める労働者が多い。
一方、事業主側にきいてみましても、労働者に対して、キャリアについての相談・アドバイスについて「あまりできていない」が半数近く、「全くできていない」が3割という回答になっています。その他、キャリア形成のための職業能力評価制度、社内公募制度の状況についても書いてありますが、(7)にあるように、労働者のキャリア形成の重要性、キャリア形成について考えたいという認識は高いということですが、各種キャリア形成を支援するための仕組みは、必ずしも十分とは言えないのではないかということです。
「なお」というところですが、第6次の職業能力開発基本計画においては、「生涯職業能力開発促進センター(当時は仮称)においては、在職者や離転職者を対象に、関係機関とも密接な連携を図りつつ、キャリア分析・キャリアカウンセリングを具体的に実施するとともに、その実施状況を踏まえつつ技法の開発を一層推進する」としており、私どもは前回の計画に基づいて、キャリアに関する相談援助というものを実施しています。
その実施例をご参考までに9頁の「別紙2」に付けてあります。詳しくはあとでご覧いただきたいと思いますが、1例として、イメージが湧くのではないかということで付けています。アビリティガーデンにおけるキャリア相談ということで、例えば、昨年証券会社におられる方が相談に来たときの例です。
第1回目に来たときには、キャリアマークシートというもの、いわば能力の棚卸しというのをして、能力診断を受けた。第2回目に来所したときには、さらにヒューマン&コンセプチュアルスキル、実際のヒューマン・スキルを見た。第3回目の来所時には、そういったものに基づいて相談をして、どういう能力開発をやったらいいのかという自己啓発プランを相談し、情報提供したという一連の流れで現在やっております。具体的には11頁にキャリアマークシートというのがありますが、こういうものを書いていただいて、この方の場合は証券会社で23年間、金融貸付を主にしていた。しかしながら、3年前から人事にもかかわるようになったという、どういう経験をしてきたかということです。この様式自体は非常に簡単なもので、十分かどうかというのはありますが、分かるということです。
12頁にあるのはスキルチェックです。これは各分野ごとにありますが、例えば、「採用決定者の適性と人員計画に基づく適正な配置ができる」という質問があって、「できる」、「できない」とか「どちらかといえばできる」という形で診断をしていき、自分が得意な分野と不得意な分野と。相対的に得意な分野はどこか、相対的に弱みはどこかということを診断するというものです。この方は人事・労務とか経理、その他をやっており、その例を付けてあります。
15頁はヒューマン・スキルですが、コミュニケーション能力とか問題発見解決能力などで、これについては、例えば、「初めての仲間にも比較的容易に溶け込むことができる」ということで、「できる」、「どちらかといえばできる」、「どちらかといえばできない」という質問が93個あって、それにチェックしていき、創造力がどうか、洞察力がどうかといった大まかな傾向を見る。これはアビリティガーデン以外でもよくあるものです。
16頁にキャリアマークシートということで、仕事内容の推移を見て、17頁まで続きます。その中では、成功した仕事、どんな仕事で困難に感じたかといったことも棚卸しをしています。
そして19頁にあるような自己啓発プランを策定し、20頁の情報提供を行ったという一連のものです。これが現在、私どもが行っている施策です。
続きまして戻りますが、5頁の3「論点」です。論点と申しましても実際には、今までご説明した内容も当然1つの大きな論点であろうということですが、本日ご議論いただく上の何らかのきっかけになればということで書いてあります。
1つは、労働者のキャリア形成を支援するシステムの整備について、次のような仕組みを整備することが必要ではないだろうか。1つは、労働者が自分自身の能力を「知る」仕組み。労働者が希望・適性に沿ったキャリア形成を行うためには、自分自身の能力を知ること。実際には職業生活の節目ごとに能力の棚卸しをすることが必要ではないか。その棚卸しということは、実際には労働者に能力を「知らせる」仕組みということになるわけですが、実際には仕事を通じてどのような能力開発を獲得してきたかを客観的に記述する。そういう記述について労働者に助言を行うこと。
そして、そのようなものを踏まえてキャリア・コンサルティング、労働者と十分な話合いの上、労働者の職業経験を把握し、それを的確に記述するとともに、その能力を正確に評価した上で、企業のニーズと労働者の適性・希望・能力を照合し、労働者のキャリア形成の方向と能力開発の方針を確定していくこと。これは在り方研究会の報告の言い回しですが、キャリア・コンサルティングができるようにするため、その機会を労働者に確保する必要があるのではないかということです。
ロは、それを企業がどのように取り組むかということで整理しているものですが、労働者がキャリア形成を考える前提として、企業側がどのような人材を求めているか、どのような人材に成長することが期待されているかということについて、知ることができるようにするため、事業主が、職務、職階ごとに必要とされる能力を、労働者に明示することが必要ではないか。あるいは企業としてもキャリア・コンサルティングをやる。その他、キャリア形成支援を行う。それを行政としても環境整備を図ったり、支援を行っていくことが必要ではないだろうかという、一連のシステムを作ることはどうであろうかという論点です。
(2)は「若年者のキャリア形成への支援」です。これはいわゆるフリーター、早期離転職者が増加しており、もちろんその中には自分自身の希望を非常に明確に持っている方もおられますが、中にはキャリア形成の目標が不明確であったり、計画性に欠けて離転職を繰り返すという場合には、職業能力の形成に悪影響を及ぼすのではないだろうか。またそれは将来の良質な人材の確保にも影響をもたらすということですので、若年者のキャリア形成への支援を充実させていくべきではないだろうかということです。
(3)の「キャリア形成を促進するための能力開発の推進」ですが、1つは「職業能力評価制度の拡充整備」についてです。現在、職業能力評価制度としては、技能検定、技能審査、社内検定という3つを中心に労働省では行っており、特定の技能・知識等を評価するということで、大きな役割を果たしていると考えております。
今後は労働者のキャリア形成を促進するということからすると、こういう特定の知識・技能等の評価制度に加えて、さらに労働者がそれまで経験してきた職務などを基礎にして実践的な職業能力を評価するシステムとか、労働者のエンプロイアビリティにはどういうものがあるのかを労使で定立するなど、新たな評価制度の整備が必要ではないだろうか。
またそういうもの、workplace-based skill とか実践的職業能力の評価に当たっては、イギリスやアメリカの資格制度なども参考になるのではないかということです。
この関係で詳しくはご説明しませんが、21頁以下にイギリス、アメリカの状況を付けてあります。21頁は「イギリスの職業能力評価制度」です。これはご存じの方も多いと思いますが、NVQという制度があって、産業別労使の代表によって構成されるLead Body という所が、実際に基準を付けており、企業の中で実際の仕事をしている状況を質問したり、それを評価者がエビディンスを集めたりして評価していくというものです。これについては23頁にありますように、QCAという実際にやっている所はかなり普及していると言っていますが、右側にあるように、一部の調査ではそれほどではないのではないかという指摘もあります。活用の状況は企業の中で、およそ3分の1は採用・昇進に当たって資格を考慮していますが、雇用条件とまでしているような企業は少ないということです。
24頁の「アメリカの職業能力評価制度」については、1994年に National Skill Standard Board ができて整備を始めましたが、いまのところはまだ整備の途中という状況です。このような制度も1つの参考になるのではないかということです。
6頁に戻ります。近年コンピテンシーという概念が注目されていますが、コンピテンシーについても、能力評価の中に、どのように位置付けられるかを検討することが必要ではないだろうかということです。これは26頁の別紙4に書いてあります。これは本当に簡単なご紹介だけですが、コンピテンシーということが、最近、特に言われてきていますが、どのようなものなのか。
1つはアメリカにおけるコンピテンシーですが、competency とは、あることができる有能さを意味する competence の古い言葉である。普通の欧米人の日常会話ではあまり使用されなかったわけですが、心理学の中で「高業績者の成果達成の行動特性」と定義されて使われていたものが、ヒューマン・リソース・マネージメントの場面に導入されたものです。そこにおいては、ある状況、または職務において高い業績をもたらす一定の類型化された行動様式として概念を把握しております。
一方、イギリスにおいては、コンピテンシーが必ずしもアメリカと同様とは言えないのではないかということで、一応書いておきますが、コンピテンスとコンピテンシーが一応使い分けられているということで、若干アメリカと違う面があります。27頁で日本企業においても、最近コンピテンシーがいろいろ議論されているということです。
「論点」を続けますと、6頁のいちばん下にありますように、以上のようなものに加えて、民間で行われている特定の技能・知識等を評価する制度などについても、公正、適正に行われる等労働者、事業主が活用しやすいような整備を進めていく必要があるのではないか。
「自発的能力開発の推進」については、労働者の希望・適性に沿った個別的なキャリア形成を促進するために、労働者が自ら進んで教育訓練を受けるというような、自発的な能力開発が重要になると考えられますが、それに対する情報提供、教育訓練給付、教育訓練休暇といった施策を講じていく必要があるのではないだろうかということです。
あるいは「事業主が行う能力開発の推進」については、これまで能力開発の実施について、職階別や職能別というか専門別の教育訓練やOJTを行ってきたわけですが、今後はこうしたものに加えて、キャリア形成促進の観点からの訓練を考えていく。例えば、事業主の行う訓練の中では、選択型の研修、実際にはすでに行われていますが、自己啓発を促進するために、事業主が措置をとるといったものも重要ではないだろうかということです。以上、非常に駆け足で説明して恐縮です。
(部会長)
どうもありがとうございました。いまのご説明は、先ほどの「論点案」の1と2に関して、つまり、「キャリア形成をめぐる現状と論点について」をまとめたものだと理解しております。いろいろ問題があると思いますが、ご議論いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
(委員)
6頁ですが、「キャリア形成を促進するための能力開発の推進」で、いちばん初めに「職業能力評価制度の拡充整備」と書いてあって、これはそのとおりだと思いますが、キャリアを構成する能力というものをどう考えるかというのが、いちばんポイントになると思います。
ただ、ここで重点を置いて書かれていることが、どうも技能中心になっていて、アメリカとかイギリスの例も基本的には技能ですね。もちろん技能も大切です。しかし、私どもからすれば、技能は社会的意味での横のベースで比較する技能検定等の普及で、ある意味では社会的な評価というのは、できているほうだと思います。むしろホワイトカラーができていないという意味で言うと、私どもが職業能力評価制度の拡充整備で期待するのは、どちらかといえばホワイトカラーのほうです。
そういった意味で、アメリカとイギリスの例でいえば、アメリカですと、エンジニアの場合はプロフェッショナル・エンジニア、イギリスであればチャータード・エンジニアというのが歴史はそう古くはないのでしょうが、かなり普及しつつあります。日本でも、例えば、エンジニアリングの会社などが海外へ行ってエンジニアで仕事をするときは、プロフェッショナル・エンジニアを取っていなければ出来ないとか、不利だということがあります。
それから、「キャリア」というときに、もちろん「技能」というフレーズでのキャリアというのがあるでしょうが、最近よく問題になっているのは、ホワイトカラーで、いわゆるジェネラリストで育てて、いざ社会的に移動しようという目で見たら、その人の専門は何だと。会社として買ってもらえる能力は何だというと、ジェネラリストとなると、そこは何でもできるということは、何でもできないという形になることからしたら、やはり専門性ということになります。
これまで第6次職業能力開発基本計画などでもビジネスキャリア制度に着目されて、あれをベースにしていくことになっていますので、その視野が届いていると思います。私の希望としては、例えば、ビジネスキャリア制度をかなりやってきていますから、あれを軸にして横断的な社会的な形で評価とする。例えば、社会保険労務士となると、一挙に難しくなり過ぎるのです。あの試験問題などを見ていたら、受けるのが嫌になるような細かい所が問われています。必要なのはランクを分けてもいいのですが、むしろベーシックな社会的な評価、例えば、人事でもいいし、経理財務でもいいし、資材でもいいのですが、第1段階だったら社会的に通常の知識ベースは持っている。第2段階であればこの程度と。ここでの論点は、そういう知識ベースが、極論すれば卒業等はないでしょうけれども、「それに加えての職務経験」と書いてありますが、ホワイトカラーに関しては、まずそういう知識ベースそのものの横断的な評価システムができていないのではないか。もちろんそれぞれの分野、民間でもある程度やっている所はあるのですが、それはやはりまだ社会的に認知されていない場合が多いのではないかと思います。そういった意味で、この「職業能力評価制度の拡充整備」というところで、是非とも、従来は技能のほうは充実されていますから、それ以上にホワイトカラーのほうでビジネスキャリア制度をベースにした社会的な資格みたいなものを考えていただいたらいいのではないかと思います。
(部会長)
どうもありがとうございました。少し議論を実質的にやっていただくために、いろいろ論点を出していただいたときに、それに関連するご意見等があれば、その機会ごとに承ったらどうかと思いますがいかがでしょうか。いまはブルーカラーについては、わりと標準ができてきたけれども、いわゆるホワイトカラーについてはそうでないから、ホワイトカラーに重点を置いたほうがいいと。ホワイトカラーと言ったときに、もっと社会保険労務士とは少し高級であるから、もう少しベーシックなところでいろいろ、どういう専門性を出して、キャリアということを考えたらいいのかを考えていかないといけない、ということをおっしゃったかと思います。いまの点について、何かご意見がありますか。
(委員)
いまのホワイトカラーに関して言うと、おっしゃることについて、私は少し違った感じを持っております。つまり、ドイツ、アメリカ、イギリス、日本の大企業のホワイトカラーの比較調査、アンケートで聴き取りをやりますと、驚くほど似ているのです。日本がジェネラリストではないので、ほかの国が狭い専門家ではないのです。やや幅広い専門性という意味は、非常に共通な点がありますので、むしろその点については案外に心配は要らないのではないかという気はしております。
もう1つ、もっと大事なことは、乱暴に言うと、少し議論を広げさせていただきますと、おそらくここでいうコンピテンシーというのは、いままでの上部中心からコンピタンスという言い方をするのは、決まりきったことを専門的にやるのだけではうまくいかない。だから、何かゴチャゴチャしたことを含めてやろうというふうに、ヨーロッパは変わってきたと感じます。もちろん、どこの国も決まり切ったことをやる人と、面倒なことをやる人に2分化しているのですが、そのうち決まり切ったことでない部分をやる人を、少し増やさないと競争力がうまくいかないのではないか。そうしますと、ゴチャゴチャした部分をどういうふうにするか、ということはあるかもしれません。勝手なことを言いました。
(部会長)
心配しなくてもいいというのはどういう意味ですか。
(委員)
心配しなくていいという意味は、ここで最初に出された論点はおそらく2つの流れが混在しているように思うのです。1つの流れというのは、流動化する日本は遅れているから頑張ろうという流れと、もう1つは、いやいや、日本は案外実務重視のキャリアはこうしてやっているよ、というのがあると思うのです。そうしますと、私は両方書いてもかまわないと思うのですが、むしろ私が紹介した後者の点に光を当てて、そこで日本のいい点をもっと引き伸ばすとやったほうが、はるかに得策だろうというのがあります。
(部会長)
そういうことはかなり事務局案に書いていないことですか。
(委員)
いやいや、事務局案にちょっと書いてあるのです。
(部会長)
ジェネラリストがいっぱいいても心配ないですか。
(委員)
いやいや、ジェネラリストは調査の結果では、どこの国もいることはいるのですが少数派であって、一般に日本の大卒10年クラスから15年クラスを見た場合には、案外に幅広い専門性がアンケートでも聴き取りでも出てくるのです。幅広い専門性というのは、例えばほとんどが広い意味のファイナンス、経理やアカウンティングがそこにフォールするという格好では、あまり差が出てこないのです。
(部会長)
いまのような点、皆さんは実際に現場にいらっしゃって、いろいろご意見はあると思うのですが、いかがでしょうか。
(委員)
欧米と比べてどうかというのは私には分かりませんが、退役してからもう3年になるものですから現実から少し遠ざかっている面はありますが、実際に例えば中途採用をする、あるいは定年10年前ぐらいからの人を含めて、他社に斡旋する。あるいはそういう中高年の労働市場というもので取ったり、送ったりというものを眺めて見ると、やはりエンジニアは比較的そういう部分は社会的な評価は大体確立しているのですが、そういった意味では、営業を含めた事務ホワイトカラーがいちばん弱いなというのを、自分ながら痛感しておりましたので、先ほど申し上げたようなことになっています。
例えばこれはメーカーではないですが、ある銀行の役員の人と話していたときに、例えばアメリカとか、ああいう所の金融業界で大きな競争になって、もう数年前の話ですが、そういうときに自分たちが振り返って見ると、やはりジェネラリストとして育てられてきた。もうあちこち2、3年単位で回され、だから、キャリア形成という意味、ローテーションという意味では非常に幅広く行われていて、幅広く見るという点ではいいのですが、何か具体的に例えば金融政策、あるいは商品の開発、あるいはいろいろな方法の考案ということを含めて、金融の専門家として見たときに、自分たちが何を売り物として持っているかという意味では、非常に問題があり、反省させられるという話を、金融業の人たちもしていました。大なり少なりホワイトカラーの日本における課題かなと。これは私は細かく専門化しろとか、それがいいのだとか、アメリカナイズされたらいいのだとか、そういう意味で申し上げているわけではありません。ジェネラリストの良さはあると思うし、いわゆる幅広い経験をするのを否定しているわけではないです。ただ、そのためには1つひとつ具体的に自分が経験した職務の上で、ビシッと、やはりこれは最低限必要な知識だとか、そういうものを会社も個人もお互いが確認するような方法がほしいなと。それは企業ごとにそれぞれ努力はされているのだと思います。そういった意味で、それが社会的に横断的にできたら、それはそれで1つありがたい手立てになるかなという思いで申し上げたわけです。
(部会長)
いまの点、いかがですか。
(委員)
よその企業に通用する場合と、専門家というのを少し分けて考えたほうが得ではないかという気がします。先ほど言ったように、ちょっとしたゴチャゴチャした、決まり切った標準化されたことをこなすということであれば、これはもうどこでも通用するのですが、それでは競争力がなかなかつかないということで、よその国は困ってきたわけです。そうすると、よその国はゴチャゴチャしたものを入れると、今度は企業を超えて通用する点では、いろいろちょっとした難問を抱えるわけです。それは全然ほかの国も解決していないと思うのです。私はそれがこの別紙3に出てくるアメリカのスキル・スタンダード・アクツというのは、そういう枠組みを作ったけれども、成果を生み出せない。そういう意味では日本と別に変わらない、やはり大変困った問題を抱えているということであって、それでは専門性というのは全然企業なんかとんでもないのだといえば、それはやはりかなりの程度の専門性というのは出てきているということだと思います。どうも勝手なことばかりを言ってすみません。
(部会長)
私の勝手な考え方ですが、わりと基本的な点にかかわることで、いまの点をどういうふうに考えるかによって、基本計画もかなり変わるのではないかと思うものですから、もしご意見がありましたら話し合っていただいて、いますぐでなくてもいいと思いますが。
(委員)
その意味では2頁の「職務ローテーションについて配慮するキャリア形成意識が他国に比べ強いとされている」というのは、ここで男女の問題をもって持ち込みたいと思っているわけではないのですが、実質的には全部の労働者、どの職場もローテーションというものがあるのか、そうしたことがあった場合に、女性は対象とされてこなかったということがあるということは押さえておいて、なぜこういうことを言うかといいますと、この間も申し上げたと思うのですが、能力開発ですとか、能力発揮ですとか、能力評価というのは、非常に労働者間においても公平に行われなければいけないという意識を持っていますから、ちょっとこの書き振りですと、そこまで言えるのかなと思います。
(委員)
いまの問題の関連質問ですが、専門的・実践的な職業能力を持つといったときに、就業している業務の内容というものを、カウンセリングだけでもって解決しようとしても2つの方向があるわけで、どちらかというと細かい領域のものを選びたいという人と、もっと広くローテーションでもっていま言われたようないろいろなことを経験させた上でというのとでは、ある評価の時期になったときに随分違ってくると思うのです。言い換えれば、選ぶ側の権利と申しましょうか、業務を与える側の状況と、それを選ぶ側の権利とがうまくマッチングする。それをカウンセリングだけで果たしてうまくきちんといくのだろうかという懸念があるわけです。それが、その人のエンプロイアビリティの評価というものにつながったときに、どうしてもミスマッチというものを解消し切れないという部分があるわけで、そこのところをもう一歩深く入り込まないとうまい方法がないのではないかという感じがするのですが。
(部会長)
もう一歩踏み込むというのはどういうふうにするのですか。
(委員)
例えばある意味では、こういう選択の仕方、例えばローテーションの中に入る選び方をするか、あるいは専門的な業務というか、能力を伸ばしていくような方向の職業選択を企業の中でも選んでいけるかとか、そういうようなこともある意味では、それは企業の型の中でいろいろ業務は決まっているのでしょうけれども、今度は選ぶほうもいずれは自分たちのエンプロイアビリティの評価というものが問題になってきたときに、これは市場が非常に広ければまたいいのです。それはもうどこかへ行けばいいのですが、そうではなくて、やはり1つの企業という狭い範囲内でそれを与えようとするというと、そこはよほどある程度、場合によっては法的にでも調整することをしないときりがない。もっと悪い言葉で言えば、本人が希望しないのに全く違う業務を与えられていれば能力は伸びないし、評価は上がっていかないというふうなことにもなりかねない、という感じがあるのです。
(部会長)
そうすると、カウンセリングといってもいろいろあって、階層化するとか、何かそういう工夫が必要かもしれないわけですね。
(委員)
ですから、カウンセリングという言葉は何か言葉としてはいいのですが、そこの中で本当に少し力を持った方向付けというか、措置というか、どうも言葉がうまく言えませんが、そういうものが必要なのではないかなと思います。
(委員)
いまのカウンセリングの件なのですが、4頁の(4)の「キャリア・コンサルティングを受ける機会」のところを見ますと、やはり労働者側にとっても「あまり受けることができない」とか、「全く受けることができない」というのが大体60%以上になっていますし、企業側にとっても労働者に対するキャリアのそういったアドバイスについては、「ほとんどできていない」、「全くできていない」というのが70〜80%というのが現状です。ですから、誰に相談するか、企業の労働者が、あるいはホワイトカラーでも技術技能者であっても、実際に自分の部分でどういうものを持っていて、どう棚卸しして、何をするかという部分の企業内外の相談援助、あるいはコンサルティング体制というのは、まだまだ不備ですよというアンケートの結果がここに出ているのです。ですから、今回、今後の論点の中で、個別のキャリアを形成するという部分の支援については、やはりここをかなり重点的に支援していく施策がほしいのではないかと思っています。また、前回もらいましたアンケートなどを見ますと、やはり企業側が求める能力と、労働者側が知らされる部分とのミスマッチというのは、すごく多いと思うのです。前回もらいました39頁を見ますと、企業側が労働者に対する能力評価については、能力評価を処遇に反映させるとか、あるいは仕事の成果から見て能力評価を重視するというふうに企業側は言っているのですが、では労働者側から見ると、この評価自身が明確になっていないとか、あるいはこの評価結果を個人に、あるいは本人に表示していない、あるいは上司が勝手にやっているのではないかという、かなり使用者側と労働者側の部分のミスマッチというのがここにありますので、何かそれを明確にするような方法を、支援策としてもコンサルティングを置きながら、第三者、あるいは企業内のコンサルタントでもいいし、外部的なコンサルタントでもいいですから、使用者、労働者のミスマッチをきちっと取り除くような施策、方策を次の段階では強化していただきたいなというふうに思います。
(部会長)
キャリア・コンサルティングを是非強化したいというご意見ですね。先ほどのことについては、性とか年齢とかで、キャリア形成が差別されるようなことがないようにということを、どこかに入れたいということですね。
(委員)
よろしいでしょうか。非常に基本的なところで問題提起されていると思うのですが、私はどちらかというと、やはりいままで弱かった日本の能力開発とか、技能者教育というのはやはりホワイトカラーのところが弱かったと思うのです。それはあまり必要なかったという背景もあるのでしょうけれども、いまの雇用環境その他いろいろな状況を見てみると、やはりそこにいちばん問題があるというふうに思いますので、どちらかというと、そのスタンスを入れてもらったほうがいいなと思っています。それで、具体的な例の説明として別紙2で、アビリティガーデンのいわゆるホワイトカラーを対象にしたキャリアの相談の実例というのを出してきておりますから、私は勝手に解釈したのですが、やはりそういう視点からのものが、少し入るのかなと解釈をしていたわけなのです。欧米はどちらかというと、ジェネラリストが少なくて、それがマイナスになっているという点は、欧米としては分かるのですが、日本はむしろそちらのほうが、やはり弱かったというところもあるので、そちらの再教育というとおかしいのですが、キャリアについて、5年後を見てという議論になれば、やはりそちらに少し軸足を置くというか、バランスを付けていったほうがいいのかなと。国の施策も含めて、すべていままではどちらかというと、技能中心ということはあったと思うのです。それはそれで十分効果を発揮したと思うのですが、これからのことを考えると、どちらかというとホワイトカラーのスタンスを入れてもらったほうがいいなという感じが私はします。
(部会長)
いままでは技能中心だったから、これからはホワイトカラーをもっとやらなければいけないという点は、いろいろご意見があるのではないでしょうか。
(委員)
ですから私はそういうふうに思います。それでバランスを取ったらどうかという感じがします。
(部会長)
ほかの方々はいかがですか。
(委員)
今後の議論の進め方も含めて感じることなのですが、いまいろいろ議論になっていますご説明いただいた整理の、具体的な論点にいく前に、つまりキャリア形成そのものの重要性という、何か共通認識が、キャリア形成が重要ですね、ではその具体化をどうしましょうかというところに、ストレートに自明にいく以前に、今回もかなりご苦労されて、その「キャリア形成」ということをキーワードで出されていますので、それがなぜいま施策としても、能力開発の方向性としても重要なのか。たまたま今日いみじくもフリーターの話と、OJTの現状の報告が2つ出されたわけですが、やはりこれは実は先ほどの日本型の風土の問題で出されたことが、本当に安心である、不安はないのだと、いまはあと変化に対応すればいいのだという状況なのかどうかということです。これは前回で申し上げたことと重なりますが、やはり行き先が見えない、人材育成の方向も見えないという中で、やはり右往左往している状況がここ2、3年続いて、まだそういう意味では設備投資だけではなくて、人材投資の方向も見えない。したがって、人材育成も求める人材像がまだ曖昧だという中で、むしろ私はこの基本計画のスタンスとして、やはりここで一部書かれていますような長期的視点からの育成、あるいは必ずしも一企業内という意味ではない蓄積、そういう日本型というかどうかは別にして、そういう変化する部分に対して変わらない部分について、少なくともいまは、認識が間違っていたら教えてほしいのですが、やはりある程度経営者の方々も、先ほどのOJTの方向などを見ていても、やはり自信喪失の面があるのではないかというのが率直な感想なのです。そこに対して、いや、右往左往しなくても、イギリスやアメリカの例もあるけれども、結局こういうスタンスで基本は大丈夫なのだよと。基本はむしろこれを持続可能、再生可能にしていくのがまずベースにありますよと。その上で、いまご指摘になったようなホワイトカラーの問題、それも結局開発型ですとか、いま求められる人材への対応ということが、いままでだけでは不十分ですねと、何かそういうキャリア形成ということを浮上させる共通認識というものを、結局これは計画といってもやるのは民間ですから、そこに対してどういうメッセージと支援策が与えられるかということなので、その民間に対して、いまの現状がどうなっていて、何が必要かという筋立ての基本線を、いまお話になったことも含めて議論していただくことを、具体的な施策にいく前にやることが重要かなという気がしているのです。
(部会長)
そうするとキャリア形成ということを言う前に、もしそう言うのだったら、それが本当に重要で、これでいけばいい、大丈夫だということをまず言えとおっしゃるわけですね。
(委員)
そうです。
(部会長)
いままでの論点整理というのは、基本的には産業構造が変わっていますと。グローバルそのほかで先が見えなくなってきていますということが前提になっていて、それを前提にして日本の労働市場なり、あるいは人事管理で何がいまは課題になっているかということを次に論じて、その課題になっていることが明らかになって、また皆さんの合意が得られたらそれに対してどうすればいいかということを考えて、企画を作ろうという筋道だと思うのです。
(委員)
ただ、第5次、第6次職業能力開発基本計画もやはり現状分析はどうしても前回申し上げたように、変化、変化というところにスタンスがいってしまう。当然施策はそうだと思います。施策は民間はもう大丈夫だなというところで変わろうとしているところに誘導しようという、あるいはバックアップしようと。でも、こちら自身が先ほども重点の話が、いみじくも統計で出ているように、任せておいて大丈夫なのかどうかという、私も結論を持っていないので、そういうことをやはりベースとして押さえておく必要があるのではないか。それに対して変わらない部分が基本的にはあるのですよということについて、メッセージを与えるのも1つの方法かなという気はしています。
(部会長)
何か積極的にこういうふうにというご意見はないのですか。
(委員)
むしろこういうふうにというよりも、ここで書かれている、展開されている日本型を言ってみれば、職務労働者に通じた、ジェネラリスト型の限界はあります。限界はありますが、それがベースになるということについて、一遍、自明かもしれないけれども、ちゃんと確認しておく、書き込んでおくということが必要なのではないでしょうか。
(委員)
私はまず第一にジェネラリストなど全然主張していません。要するに基本は専門家なのです。その専門家というのは標準化された仕事、言われたことだけをやっているのでは全然ない。そのためには専門性をバックにしなければいけない。その専門性でいろいろな問題を処理するためには、単なる繰り返し作業の習得だけでは駄目なので、そのためにもう少し専門の中でいろいろローテーション。ですから何でもやるジェネラリストのローテーションでは全くありません。実態はすでにそうです。はっきり言って、紡績と電力と、そういう所はまだいわゆるジェネラリストは多いです。それから、どんな所でも必ずジェネラリストは上に行けばいます。ただ、私が言うのは、卒業して15年、20年選手ぐらいまでのかなりは、もはや驚くほど専門家です。その実態を日本は基本を保持するのではなくて、それをさらによりよくするという方向を主張しているのです。それで十分という意味ではありません。
(委員)
分かります。
(委員)
それをもっとよくできるのです。それが全然駄目という意味ではなくて、なお問題があるから、もっとよくする。ただそれはジェネラリストでは全くない。それを「幅広い専門性」という言い方をするのです。だから、営業なら営業、経理なら経理ということです。
(部会長)
これは私見ですけれども、ジャーナリズムなどに出ている専門性が必要だとか、あるいは労働移動をして、いろいろな仕事がこなせる能力が必要だという議論というのは、部分的には何か神話に基づいているのではないかと私は思うのです。つまり両方が必要で、ほかのところにも通用することも必要だけれども、しかし、特定の企業でこそ威力を発するということも必要で、両方必要なのではないですか。
(委員)
あと2つのことで、1つはある種の専門性をバックにしないと問題にチャレンジできない。つまり、はっきりしないことを解決するために、専門性をバックにしなければいけないということが第1です。2番目に、要するにここの論旨は、変化に振り回されたから何とかやらなければいけないという論旨と、実はもう1つ、なぜこういうことを計画として出さなければならないかという理由の1つに、実は非常に日本は世界一の高賃金に近い。そうすると高い競争力を持たなければならない。高い競争力を持つための高い技能が必要だ。高い技能というものは、決まりきったこと、言われたことだけをやっているのでは駄目なのです。そこからスタートしますと、ここのいちばんのミソというのは、個別キャリアですから、個別キャリア、あるいは個別の技能形成ですから、非常に高い技能というのはまだよく分かっていないことをこなすのですから、そのためにはどういうことを勉強すればいいかを、カウンセラーだけでは必ずしもよく分かるはずがない。むしろ本人が判断する必要が出てくる。これはすべての人ではありません。かなり高い場合です。そういうふうな線もひとつ十分あり得るということを申し上げておきたいと思います。
(委員)
それに見合うような就業経験をうまく積ませるようなシステムというのを作ることを考えないと駄目なのかもしれませんね。
(部会長)
それも必要だし、企業としても分かっているわけでないところが多くて、むしろ労働者のほうとか、あるいは政府も含めてかもしれないけれども、長期的なビジョンで将来のことを考えないといけないという部分もあると思うから、企業がカウンセリングするだけではやはり十分でないかもしれないから、私などは個人的には労働組合などがもうちょっと、長期的なビジョンから訓練のことを考えてくださる必要があるのではないかと思うのです。ちょっと司会が言いすぎましたが、皆さんからいろいろもう少し言っていただいて、あと10分ちょっとですが。
(委員)
私どもがいろいろ計画とか何かをやるときには、前の計画の成果、総括というのをやって、それで次にどうしようかというのがあるのです。でも、今回はまた積み重ね、積み重ねで、前の計画がどうだったかというのがあまりないわけです。どこかで出てきて、その辺が活かされるような格好になるのでしょうか。
(部会長)
かなり包括したつもりだとは思いますが。
(事務局)
また必要があれば、別にでもご説明させていただきます。
(委員)
そうですか。
(部会長)
少し星取表みたいなものをはっきり出せばいいのでしょうか。ここまでここはやろうと思ったけれども、これぐらいできましたとか、そういう一覧表でも作ればいいのですが。
(委員)
すべてをやるのはちょっと難しいのは分かるのですが、大体傾向とかが分かるようになればなと思います。
(部会長)
私の印象では、狙ったところをかなりこなしているということは言えるのではないかと思うのですが、もう少しはっきり言ったほうがいいかなと思います。
(委員)
あとは結構です。
(委員)
専門性をどう評価するのか、考えるのかということに関係するのか分かりませんが、例えば、驚くほど専門家とおっしったのですが、社内でのみ通用する驚くほど専門家と、これは例えば生き字引みたいなとか、彼に聞けば分かるという場合、それになるのか分からないのですが、このエンプロイアビリティ、あるいはキャリアというときに、社内のキャリア、社内のエンプロイアビリティという面と、おそらくこの中には相当横通しということが強いと私は思っているのですが、そういう場合の専門家となると、いわゆるベテランという人が持っている専門性と、やはり社会的に共通するようなベースはどうしても知識が中心になりますのである程度の経験が要るのは事実ですが、そういうことからしたら、例えばエンジニアは別ですが、どうしても事務屋にいちばん問題を感じていましたので、事務屋で驚くほど専門家というのは、逆にいざ他社に転換というふうに、要するにいま労働市場をオープンにという前提で考えると、問題児になる場合もあるのです。要するに社会的転換がきかない、その会社を離れたらどうしようもないと。実は同じ会社の中でも、同じ人事勤労でも、工場間をよく回りますが、はっきり言って人事勤労だったら、人間関係というか、どれだけ人を知っているかなのです。ですから、どれだけ知識があっても、新しい工場に行ったらゼロからスタートなのです。そういった意味では、いろいろな所を知っているというのは、そこで20年根を生やしておけば、確かにいろいろな意味で専門家になりますが、どうもそこは驚くほど専門家と言われたので、これは高く評価してもらったという意味にとっていいのかどうかというのが分かりにくかったのです。私の問題意識とちょっとずれているのかもしれません。
(部会長)
そうですね、今日終わるまでに、別に強制ではありませんが、最初の2回目ですから、皆さん何かご意見があれば、是非一言おっしゃっていただきたいと思います。
(委員)
私の狭い範囲の経験からですが、驚くべき専門性といまおっしゃられたことの必要性、これがあるのであろうというふうに思います。しかし、それが毎年仕事に追われる、人間を減らすという両面から、専門性という能力がダウンしてきているように私は思います。昔であれば人事・労務の専門家という範囲に限ってみても、例えば職務分析評価であるとか、人事考課制度であるとか、そういうものを諸外国のそういうデータも入れて構築していくだけの能力がある人材がいたと思うのです。そういう能力に関して言えば、最近で言えば極端に落ちているように思います。したがって、先ほど銀行で新しい商品の開発というようなことはあったと思いますが、そういう新しいことを研究したり学ばしたり、より深い専門性を身に付けるような仕事のやらせ方をしていないのだろう。簡単に言えば仕事に追われすぎて、人数を絞りすぎて、そういうことになっているように思います。したがって、企業内でいけば、OJTだけでなくOFF-JTも含めて、もう少し専門性を磨くような努力をしないと、能力ダウンに対して、なかなか追い付かないのではないかと思っております。もう1つは、それではそういう専門性を身に付けた人材というのは、社会的な流動性という点からどうかというふうに考えてみますと、そのレベルの人間は社会的に通用すると思うのです。例えば人事考課制度を構築できるというのは、何も1社に限った制度ではありませんから、どこに行っても有効な能力であって、その他労働組合と交渉するとか、労働関係の訴訟を担当するとか、すべて能力的に考えると横断的な能力だと思っていますので、それを深めることが逆に流動性に対応するという感じでおります。
(部会長)
ありがとうございました。ほかの方はいかがでしょうか。
(委員)
先ほどからのお話を聞いておりまして、ジェネラリストがいままで日本でずっと育成されてきたというのですが、確かにそういう傾向はあったと思います。そのジェネラリストもいろいろピンからキリまであります。本物のジェネラリストだったら、これはいろいろつぶしがきくもので、ある程度自分の任された仕事について深みを持っていて、しかも幅があれば、これほど強い武器はないと思いますので、これはいいのですが、ただ単に幅だけを持っている人間だと、なかなかこれからは通用しないということではないかと思います。
はっきり言って、キャリア形成が大事なことは分かりますが、いままでずっと、こういうこれまでの企業の従来型の育成策というか、企業の中で1つの戦力として育ってきた人間にとって、いまさらキャリアがどうのこうのと正面を切って言われても、戸惑いを感じるのが関の山だろうと思うのです。ですから、個別に焦点を向けた育成が大事だというお話がありますが、それは企業としては非常に理解できることではあるのですが、一方それを受けるほうの従業員個人としては、どういう意識を持ってそれを受けとめるのか。かなりこれは自覚を持って、個人が自立していくという意識が必要ではないかと感じるわけです。ですから、その個人の意識改革をどうやっていくか、これはものすごい大変なことだろうと思います。ですから、カウンセリングの話もありましたが、いまさら棚卸しをして、個人の強み弱みというのを見て、弱みをどう補完して、平均点まで上げるということではなくて、その人の持っている強みをいかに伸ばしていくかというような形のカウンセリングが必要ではないかという気がします。
それから、これはある民間の職業紹介をやっておられる方から聞いた話なのですが、例えば中高年の方がリストラなどに遭って、次の仕事を探さなければならないので、いろいろカウンセリングをしたり、相談を受けたりしたときに、何がやはり大事なポイントかというと、その人の専門性とか知識とか、もちろんそういうことも大事ですけれども、それ以上にその人の持つ人間的特性、人間性みたいなものが非常に重視されて、たとえ専門性があっても、人間的にちょっと暗かったり、いろいろ問題がややありという人間は、いくら新しい企業に紹介しても、必ずバッテンが出てしまう、そういう話を聞きますので、先ほどの資料の中で言えば、知識、技能、及びコンピテンシーですが、やはりコンピテンシーの人間的な部分は、やはり無視できない部分なのかなと、そんな感じがします。
(部会長)
難しいですね。
(委員)
皆さんの議論を聞いておりまして、やはり能力とか、あるいは能力開発だとか、あるいは評価というものについて、やはりブルーカラーのほうが非常に分かりやすいのです。特に先ほどはスペシャリスト、あるいはジェネラリストという話がありましたが、私どもは理想的にはブルーカラーの場合はジェネラリストだってスペシャリストがほしいというようなことを考えているわけです。これは能力開発、あるいは評価にすぐつながりますし、すぐ目で結果が出ますから評価もしやすい、非常に分かりやすいのです。ですから、やはり先ほどから出ておりましたホワイトカラーについては、非常にその辺が難しいのかなというふうに、皆さんのお話を聞いて感じていたところです。
(部会長)
ほかに何かございますか。どういうふうにまとめるかはいまこれから考えなければいけないのですが。
(委員)
ジェネラリストというのは営業5年、人事5年、生産管理5年というようなタイプを言っているわけです。これは非常に少なくなりました。私が言うスペシャリストというのは、狭いのと広いのがあって、広いスペシャリストというのは経理だったら経理の財務管理の予算も原価も、それからファイナンスもなるべくやるというのが幅広いという、そういう程度のことなのです。その場合に企業に移る移らないというときに、2つのことをはっきり区別したほうがいいように思います。企業に特有な事情で移ると損をする。これはどこの国にもあります。人脈を活用しないし、高級な仕事など、私が見たときはありません。ある程度はどうしても減る。だけどそれだけではなくて、業種の特殊性というのはあって、例えば同じ予算統制みたいにどこでも通用するようでも、しかし原子力の事業本部の予算統制の場合は、予算と実際の実績との乖離の原因分析になりますと、原子力生産の場合と産業機械と、事業本部で非常に違ってまいりますので、やはり違う業種に移ると少し損をするという意味の特異性というのは、やはり多少考慮したほうがいいわけで、エンプロイアビリティのときは、一般に景気の同時方向性で、ある産業の景気が悪いと多少凸凹があるけれども、概して似たような企業は景気が悪くなる。そうすると、ちょっと例えばトヨタの人は日産に移りにくい、日産の人はトヨタに移りにくい。しかし、トヨタの人が例えば東芝に移りやすいことはある。しかし、そうすると持っていたノウハウの幾分かは使えないというのがあって、それはちょっとどこの国にも共通な現象があるのではないか。その点は少し区別したほうが得ではないかということです。
(部会長)
ありがとうございました。どうしましょうか。基本的な問題をお出しいただいたのですがエンプロイアビリティのいまの論点案でいくと、キャリア形成ということが大事である。そういうことになると能力評価ということも大事である。だからそのキャリア形成と能力評価ということを基本にして、その上で施策を考えようという論理構造になっているのですが、そこのところの出発点は大丈夫かという、そういうふうに問題提起をされたのですが、そこのところを確認するところから今度はやりますかね。どうしましょうか、いかがですか。何かご意見はありませんか。
(委員)
非常にいい勉強をさせていただいております。私もちょっと勉強不足で認識が違っていたら教えていただきたいのですが、いまの議論でホワイトカラーの評価というのは非常に困難だということが、おそらく業種、業態、それからどの角度から眺めても同じだと思うのです。ただ、これを評価していくというのは、いろいろな手法でこれまで何回か、いろいろな方がトライしてきたのだと思うのです。ここで1つお願いなのですが、そういう手法というのはいままであったのかどうかという問題、外国の例が先ほどアメリカとイギリスの話が出ましたが、日本というのはどういうようなことでやられてこられたのか、教えていただければ非常にありがたいなと思います。あと、専門性ということと、ジェネラリストという話が非常に出ておりますが、実はこの方向というのは、経済がある程度一定の成長を遂げて、ある程度景気がいい時代というのは、非常に企業のほうも目標ができていますから、人材育成もどういう人材がほしいかということになりますと、ある程度の定型ができた。ただ、いまのような非常に時代が激しく動いて、先行きの見通しがきかない。そういうようなところというのは、企業のほうもおそらく各経営的な立場に立たされた方から見ても、例えば2、3年先を予測する、5年先を予測するといっても、非常に困難ではないのかと思います。そうすると、どういうような人間を採ったらいいのだろうということになりますと、先ほどの事務局のお話に出た即戦力というところにどうしても頼らざるを得ない。そういうところに先ほどの調査結果が現れてきているのではないか。経営から見ますと、そんなところでは人材は育たないということははっきりしていますので、どういう人材を育てていくのが本当にいいのか。これは企業によって個別的に考えていくべきでしょうけれども、ただ、先ほど事務局のお話に出ました日本の方向性というのをどういうふうに持っていくのか、その人材とか日本の競争力を維持するためにどういう人材を作っていくのがいいのだろうかという大きな指針みたいなものは、やはり示してあげたほうが個人という立場、経営という立場に携わる各々の方々にとっても、是非とも必要ではないかと考えています。
そうしていただいたほうが、それが保障されるわけではありませんが、ただ日本の国際的な立場、それから、これから日本が生きていく立場を考えて、選択肢として出てくるのがこういう考え方ではないかというご提示をすれば、ある程度コンセンサスが生まれてくるというふうなことが考えられるかなというふうに思っています。
もう1つ、このキャリア形成の中で、非常に職業能力と経験と、このミスマッチというのは非常に重要な点なのですが、先ほどのお話に出ましたコンピテンシーの中で、非常に人格と申しますか徳と申しますか、あまり触れられない点が非常に隠れた問題として出てきつつあるのではないかと思うのです。と申しますのは、先ほどお話が出ましたように、企業のほうでは能力の高い人、動きのいい、フットワークのいい人を求めるわけですが、実はそれを保障するというものは一体どういう人物なのだろうかというところが、実は採用する企業側にとっては、いちばん興味があるところではないかと思います。これは人格の問題にかかわることですから、非常に難しい問題なのですが、やはりそういう方向性も必要なのだよということを、少しやはり匂わせていただいたほうが、これからの人づくり、技能を詰め込むというばかりでなくて、そういう人格形成、日本の国づくりという大きな観点から見れば、そういう観点も少し盛り込んでいただいたほうがよろしいのではないかということを感じた次第です。間違っていたらご指摘をいただきたいと思います。
(部会長)
ありがとうございました。3つポイントがありましたが、最初の点について、何か簡単に答えられますか。
(事務局)
ご専門の先生がいらっしゃるので、私どもでどの程度お答えできるか。おっしゃったようにホワイトカラーについて、いまどういうふうな評価かというのは非常に難しいというのはそのとおりでして、私どももそこのところは何らかの形で評価する形ができないかということで考えたのが、ビジネスキャリアというわけです。ただ、もちろんビジネスキャリアというもの自体が非常に細分化されているとか、果たして実態に合っているのか、いろいろな問題があるのは確かです。今後も本総括部会のご議論なども踏まえて、抜本的に見直していかないといけないという問題意識は持っております。ただ、手探りながらも、そういった仕組みというものを、またこれから作っていかなければいけない。特にやはり労使の参加、ご意見を踏まえてやっていくということが、極めて重要であろうというふうに思います。
ですから、ブルーカラーの場合は業種ごとの大きな違いというのがあるわけです。ホワイトカラーの場合、業種の違いもありますが共通の部分もあり、かつ企業内特有なものもあり、そこら辺の専門的な考え方の整理みたいなことをじっくり進めて、どういった形のものをどういうセクションといいますか、どういった担当分けをして作っていくのか、そこら辺を私どもとしてもいろいろヒアリングを進めたりしながら考えてまいりたいと思っております。審議会でもこれからまとめていく中で、いろいろご示唆があればそういうことを踏まえて、研究してまいりたいと思います。今回、今年中にどうこうというのは難しいかと思いますが、積極的なご意見をいただいて、手探りながら、そういう何らかの評価ができるようなものを考えていく必要があるなと思っております。答えになっているかどうか分かりませんが。
(部会長)
ありがとうございました。十分ではないけれども、多少はやりつつあるということではないかと思います。司会があまり上手でなかったのでいろいろなことが出てきて、あまりまとまりませんが、案としてはこういうことでどうでしょうか。つまり、構造変化、産業変化、グローバル化等々で状況が変わっている。だから職業能力についてもここで新しく考え直してプランを作り直していく必要があるということは、多分十分確かに言えると思うのです。その上で、ではそのキャリア形成ということと、それに対応する能力評価ということを基本にして、今日事務局からご説明したようなことを中心に考えていくということで、多分いいのだろうと思うのですが、そこを確認することを含めて、今日はいろいろ出していただいたご議論を基本にして、しかも今日事務局からご説明いただいた論点案の後の3、4、5、6とありますが、それも射程に入れながら、次回議論を深めていただくという中で、だんだん焦点が定まってくるのではないかと思います。要するに今日のご議論を前提にして、次回はこの議論を続けていただくということでいかがでしょうか。
(事務局)
3、4、5、6をざっととりあえず次にやっていただいて。また全体に戻っていただく。ここをやっているときりがないので、ざっとやっていただいて、また振り戻って全体の中で議論していただくという、事務局の勝手で恐縮ですが、よろしくお願いします。
(部会長)
ではそういうことにさせていただいて、あともう1つ、やることがございます。議題の「その他」というのがあり、これについて事務局から報告をしていただきたいと思います。といいますのは、本年6月以降に、中央職業安定審議会雇用安定等事業部会において、「雇用保険三事業における各種給付金の整理合理化等について」の議論が行われたそうです。その結果、去る9月1日に報告書がまとめられたのだそうです。そこの中では、能力開発対策関係の助成金の整理合理化等の方向が触れられておりますので、このことは本審議会における今後の議論との重要な関係があるものですから、本報告書の概要について、いま申した9月1日の報告書について、その概要を事務局から報告いただきたいと思います。合わせて本年5月22日の中央職業能力開発審議会総会において諮問され、妥当である旨答申がなされた「ものづくり基盤技術基本計画」についても、去る9月1日に国会に対して報告がなされまして、このことについても、合わせてご報告をお願いしたいと思います。
(事務局)
それでは資料No.5に基づき、中央職業安定審議会の雇用安定等事業部会報告の内容の概要を報告いたします。先ほど座長からもありましたが、本年5月の中央職業安定審議会の本審において、雇用保険三事業における種給付金の整理合理化等について検討を進めていくということとなりました。それを受けて雇用安定等事業部会において、6月29日以降8月23日までの間に4回にわたり検討が行われました。その結果が、9月1日の中央職業安定審議会に報告され、雇用安定等事業部会報告として全会一致で了承されたところです。
資料No.5の表紙に書いてありますとおり、この結果、別紙の報告内容については、「今後、雇用保険三事業における各種給付金の見直しに際しては、本報告の内容を十分に踏まえて検討されることを希望する」というように掲げられております。
内容について簡単に説明します。この報告書を1頁開いていただき、別紙のほうですが、大きく3つのパートに分かれており、1つが「雇用保険三事業の見直しの『背景』と『基本的な考え方』」、2番目が2頁の下から4行目から「基本的な三事業の見直しの視点」、3番目が6頁の真ん中辺りで「主要な対策分野別にみた見直しの視点」という3パートになっております。
まず1頁の「雇用保険三事業の見直しの『背景』と『基本的な考え方』」の部分においては、総論的な考え方として、各種給付金の見直しにあたっては、雇用を取り巻く状況の構造変化に対応していかなければならないということで、「背景」と「基本的な考え方」が掲げられていますが、この方向性として2頁のハ、各種給付金の整理合理化については、「重点化」を図る、「体系化」を図る、あるいは政策手法、運用面からの点検を図ることによって、「簡素合理化」を図るといった重点化・体系化・簡素合理化といった方向性が示されております。
こうした基本的な方向性の下で、2番目のパートである「基本的な三事業の見直しの視点」という部分において、まず(1)で重点化・体系化に関し、各事業別の指摘がなされております。ここでは「能力開発事業」の部分についてのみご説明を申し上げますが、3頁の下の部分、ロの能力開発事業の部分です。能力開発事業については「能力開発事業による給付金は、教育訓練期間中の賃金や教育訓練の実施・受講に要した費用に対する助成等を通じて、職業能力の開発向上を図ろうとするものであり、今後ともその重要性は高まっていくと考えられ、次のような観点に立って見直しを図っていく必要がある」とされまして、今後ともその重要性が高まるというふうな認識を示した上で、次の丸のところです。「企業における職務編成のフラット化や能力主義・成果主義の傾向の強まり等に伴う企業内での働き方の変化、労働者の主体的なキャリア選択志向の高まり、労働移動の増加等、労働市場をめぐる構造変化が進展する中で、労働者個々人について、職業生涯を通じて適切なキャリア形成が図れることが重要性を増している」という認識の下に、この以下の部分については、先般ご説明いたしました在り方研究会の内容等も踏まえながら議論がなされました。「こうした中で、能力開発事業の給付金については、今後、労働者個々人の適切なキャリア形成や労働者の主体性を踏まえた就業能力(エンプロイアビリティ)の向上に資する職業能力開発により重点をおいて体系化していくことが必要である。その際、職業能力評価制度の整備を促進するとともに、労働者個々人による主体的なキャリア形成の取組みに対して事業主が支援する仕組みについても重要な手段として位置付けることが適当である」と指摘されております。 さらにこの部分では(2)として「各種給付金の手法・運用面等からの簡素合理化等の見直しの視点」と、これは各事業共通ですけれども、(2)のイから6頁のヘまで、こういった観点から見直し・点検を行ってほしいという指摘がなされております。
さらに6頁の第3番目のパートですが、「主要な対策分野別にみた見直しの視点」、この中にも能力開発事業の1つの対策分野と見て、指摘がなされておりまして、7頁の(5)の部分については「能力開発関係の給付金については、人材高度化助成金、生涯能力開発給付金、認定職業訓練関係助成金等多数のものが存在しているが、今後の職業能力開発の在り方研究会報告の内容等を踏まえ、産業の高度化に対応する高度な能力開発はもとより、労働者個々人のキャリア形成の支援や労働者の主体性を踏まえた就業能力(エンプロイアビリティ)の向上に重点化する方向で、効果的な能力開発が図られるよう、給付金の目的の明確化、簡素化について検討するべきと考える。また、民間の事業主等の行う職業訓練については、国及び都道府県の役割を踏まえつつ、効果的な振興を図っていくべきと考える」とされています。能開給付金に関し、目的の明確化、給付金の簡素化、さらには国、都道府県の役割を踏まえた効果的な支援といった点が、さらに指摘されているところです。
以上、内容の概要を申し上げましたが、今回の報告については、本審議会で現在総論の議論をしていただいておりますが、その総論の議論の後、個々具体的な施策の議論になった段階で、この給付金についても重要な施策手段としてそのあり方を検討していただくことになると思います。その際にこの報告についても、十分参考にしながらご議論いただければと考えております。
(部会長)
要するに節約しろと。そのためには重点的にやっていけということですね。もう1つあります。
(事務局) 資料No.6「ものづくり基盤技術基本計画」というものが冊子になっております。この計画については、去る5月22日、本審議会に諮問して妥当である旨、ご答申をいただいたところです。その後主要な手続を経まして、9月1日に閣議決定し、国会報告されましたのでご報告申し上げます。なお、本計画について閣議決定する際に、やはり閣議の中で若干議論はありまして、「ものづくり振興」ということにあたっては、やはりそういう人材の処遇という、ものづくりに携わる人材の処遇ということが非常に重要ではないか。これがほかの分野に比べて賃金等、処遇が劣る面がある、そういうところが改善されるということが非常に重要であるという指摘がありました。非常にもっともなところです。ただ、これは市場の中での問題ですので、直接どうするということはなかなか難しいわけですが、そういったことが処遇されるような形の政策展開という意味で、ある意味では能力評価ということ、ものづくりというものをきちっと評価してあげる。特に熟練とかそういうものをちゃんと評価して、それが処遇につながりやすいようなことというのも我々としては考えていかなければいけない。また、そういうことを踏まえて、是非労使でもこういった処遇、ものづくりの労働者の処遇ということを考えていただく必要があるのではないか、こうした指摘がありましたのでご紹介申し上げる次第です。そういうことで、一層のご理解、ご協力をいただければということです。
(部会長)
ありがとうございました。何か皆様から特にありましたらどうぞ。なければこれでおしまいにして、次回は9月20日(水)、午前10時にお集まりをいただきたいと思います。どうもありがとうございました。
(事務局)
どうもありがとうございました。
照会先 厚生労働省 職業能力開発局
総務課 政策計画・調整係(内線5959)