1日時 | 平成9年12月18日(木) 14:00〜16:00 | |
2場所 | 富国生命ビル第一会議室 | |
3 | 【委 員】 | 岩瀬孝、大宅映子、北裏昌興、笹森清、鈴木一麿、関英夫、高梨昌、浜田広、福岡道生、三好正也、吉井眞之、吉沢慎一の各委員 |
【事務局】 | 松原事務次官、征矢職業安定局長、野寺総務審議官、五十畑政策調査部長、中野職業安定局高齢・障害者対策部長、岩田官房審議官、播国際労働課長、大石総合政策課長、松浦職業安定局高齢・障害者対策部企画課長 | |
4議題 | (1)65歳現役社会研究会報告について | |
(2)神戸雇用会議について | ||
5 | 議事 |
○会 長:
これより雇用審議会を開会いたします。
はじめに、新たに一部の委員が交替になりましたので、ご紹介いたします。今日ご出席の全国金属機械労働組合の北裏昌興中央執行委員長です。
また、作家の神津カンナさんは今日はご都合で欠席でございます。後ほど遅れてお見えになりますが、連合事務局長の笹森清さん。この2名の方も新たに委員に就任されておりますので、ご報告させていただきます。
それでは議事に入ります。第1の議題は「65歳現役社会研究会報告について」であります。今年6月に出されました報告書について、事務局からご説明をお願いいたします。
○事務局:
「65歳現役社会政策ビジョン」について説明させていただきます。
この研究会は昨年の10月に発足いたし、座長を東京大学の稲上先生にお願いし、名簿の6名の方で、本年の6月まで検討をいただき、この報告書をまとめていただきました。
第1は「高齢者雇用を取り巻く状況」ということで、本文の1頁目にある統計表が定年制に関するものでございます。一律定年制を定めている企業のうち、60歳以上定年を定めている所が90.2%、改定が決定されている、あるいは、予定を含むという所まで入れますと、約97%が60歳以上定年ということになっております。65歳定年も6.6%ある現状です。こうした中で65歳までの継続雇用制度につきましては、現状約7割の企業で、何らかの制度を持っているということでございますが、希望者全員を対象とするという所は約2割という状況で、その割合もほとんど変化してきておりません。
一旦企業から定年退職等で離職された方々の雇用・失業情勢はどうなっているのかというのがと焦点となる60〜64歳層という所を見てみますと、有効求人倍率が0.08倍と非常に厳しい状況にあります。また、完全失業率については、この年齢層で6.3%、平成8年度平均、年齢全体では3.3%。60歳定年という意味では実現されてきているわけですが、それを超えた層においては、労働市場として非常に厳しい状況です。
第2は「65歳現役社会実現の必要性」。少なくとも65歳までは現役として働ける社会ということで、その必要性、背景というものを簡単にまとめているところです。「今後の高齢化の見通し」ということでは、「新人口推計」が今年1月に厚生省・人口問題研究所から公表されております。総人口のピークが、平成4年推計の2011年から、2007年に修正され、65歳以上の老齢人口の割合も、2015年に24.1%だったものが、9年推計では25.2%になっているところです。
次の労働力人口は、この将来人口推計を踏まえて、再推計したものですが、2005年に総労働力人口6,870万人でピークを迎え、それ以降は漸減していきます。その中で60歳以上の労働力人口の割合が増加していき、1996年に13%ぐらいだったものが、2015年には20.6%、労働力人口のうちの5人に1人が60歳以上になっていくということでございます。
年金保険料率の上昇ということで、年金の保険料率を推計してみますと、2025年で34.3%になるということが明らかになっており、そういう状況の中で厚生省では、年金改革に係る5つの選択肢を年金審議会に示し、さらなる議論を進められると伺っております。
また、国民負担率は、経済審議会の推計では、2025年には、現行年金制度を前提としても51.5%という高負担の状況になると見込まれております。
厚生年金の支給開始年齢の引上げのスケジュールにつきましては、すでに平成6年の改正年金法によって、男性については2001年から始まり2013年までに、女性については2006年から始まり2018年に65歳支給開始年齢の段階的引上げが予定されています。そうすると、2005年から2010年にかけて、60歳定年を迎える団塊の世代の方々の年金支給開始年齢が63歳から65歳となるわけですが、そういった方々が一方では60歳で退職しているということで、社会システムとしての空白が、その時点で顕在化していくことになるということです。
3が65歳現役社会の必要性ということです。この現役世代と引退世代のバランスを考えた場合、高齢者が社会を支える側に回ることが、社会的にも要請され、高齢者の高い就業意欲にも応えるものになるということで、現行の60歳定年という雇用システムと、65歳年金支給という年金システムの間で、空白が生じているのは、社会システム全体として不整合であるということから、少なくとも65歳までは現役として働くことができる「65歳現役社会」の実現を目指して、具体的な政策ビジョンの構築に早急に取り組むことが必要である、という基本的な認識を示しております。
今後の考え方として、65歳現役社会の政策ビジョンを構築するために想定される、3つのシナリオを提起しています。国民的レベルで、積極的かつ多様な議論をお願いしたいという趣旨でございます。
@は、60歳定年を基盤とした65歳までの継続雇用という現在の政策体系を今後とも基本として強化するということです。
Aは、定年制が我が国に広汎に定着していることを重視して、65歳定年制を実現するという選択肢でございます。
Bは、年齢に関係なく能力に応じて働くことができる、「エージレス社会」を目指すというものでございます。
3つのシナリオどう考えていくかということが、2「シナリオに対する評価」ということでございます。
このシナリオに対する評価をまとめるにあたっては、検討の視点ということで、年金支給の開始年齢との関係、高い高齢者の就業希望に対応しているか、現状の雇用管理システムとうまく整合するだろうか、高年齢者の労働市場の状況を踏まえたものになっているだろうか、ということを一つの判断基準としております。
(1)は、60歳定年を基盤とした65歳までの継続雇用を促進するというものですが、当面、65歳までの継続雇用制度の普及に積極的に取り組むことは前提として必要であるが、60歳までの雇用システムということを基本としている中で、実際に65歳まで働くことが可能になるか、という基本問題が残るのではないかということでございます。
(2)は、年金支給開始年齢との整合性、高齢者の労働市場あるいは高齢者の就業希望といったものを念頭に置いた場合、評価すべき点が多い。現状では、65歳定年制は労使の意識からみれば、高くない状況にあり、実行可能性を疑問視する声もあると考えられますが、他のシナリオとの比較で考えたときには、この65歳定年制の導入を基軸として、具体的政策ビジョンを今後議論していくことが適当ではないか。年金支給開始年齢の引上げのスケジュールなどを考慮すれば、2000年後半に65歳定年が定着することを目標として検討を進めることが、有効な方法ではないかと言っているところでございます。
3番目は、年齢にかかわりなく、意欲と能力に応じた働きができるということで、エージレスの考え方は注目すべき選択肢であるけれども、定年制の持っている雇用保障機能がなくなることになって、65歳現役社会の基本理念に合致したものか、なお検討が必要ではないか、企業の雇用管理の現状から見た場合定年制を廃止することが実行可能かという問題もある、などの指摘をしているところでございます。
4頁目は現行の定年制と65歳定年制ということでございます。1の現行の定年制の意義・機能については、定年制は単なる雇用の終了に関する場面で意義を有する制度にとどまらず、企業の雇用管理全体の基本をなす制度であり、労働者にとっても、将来の生活設計をする上で重要な目安となる制度で労使とも肯定的に評価しているということでございます。
2は、実際に65歳までを一つの雇用管理システムと考えた場合、年功的な人事制度・賃金制度の見直しや高齢期の職務開発等多くの課題が顕在化する。これら制度の変更をしようとすれば、従業員全体にわたっての人事諸制度のあり方を大幅に見直す必要があり、その中で65歳定年制は重要な選択肢であり、これらを含めて、今後65歳定年制について、労使の真摯な話合いが行われることを期待したいという、報告になっております。
第5は、他の労働政策との整合性という形がなければ、単に65歳までの雇用確保、65歳定年の実現は無理であり、能力開発面、男女の均等確保、両立支援対策、さらには今後の定年制のあり方によっては、離転職が増加することもあるので、セーフティネットの整備、いま以上の雇用と年金との連携が重要である、ということを言っております。
最後は「65歳現役社会における働き方」ということで、65歳現役社会の考え方として、フルタイムで働くことができることを基本としながら、高齢期には、健康状況や肉体的能力、年金の支給、資産の有無等々個人差が広がり、労働者個人の就業希望に応じて、多様な働き方ができるようにすることも併せて重要ではないか。その観点から労働者派遣、シルバー人材センター、あるいは、自営業への就業等も具体的に進めていくことが必要である、ということを指摘しているところでございます。
労働省としては、この研究会報告をベースに、65歳現役社会というのを国民的なコンセンサスとしていくように、各界を代表する方々にご参集いただきます「65歳現役社会推進会議」というものを設け、また、この報告書をベースにして、労使の方々にご参画いただく研究会、そういったものを来年の1月ぐらいには開催すべく、いま準備を進めているところでございます。
高齢者の雇用というのは、いろいろな意味で重要な局面にきておりますので、議論を深めていきたいと考えております。
○会 長:
どうもありがとうございました。ただいまの事務局のご説明について、ご意見、ご質問等がございましたら、どこの点からでも結構ですから、お出しいただきたいと思います。
○委 員:
要約版のシナリオの2、65歳定年制に移行するシナリオという所だけゴシックで書いてあります。労働省の意図がどこにあるかということが、歴然と分かる。悪く言えば、他は切り捨てましょうというような捉え方ができるような整理の仕方になっているが、非常に危ない話であり、いつの日かこれにはめ込まされるというような感じがある。これは前から議論をしている世界であり、有識者の方からも、「雇用関係における人間という捉え方だけではなくてもっと幅広い人間というもの、働かない権利もあるし、自営業をやる権利もある。また、多面的なこれからの社会の中でのあり方、自分の人生観とのかかわりあいなど、いろいろな社会があるのだから、必ずこの雇用関係の中に置かなければならないとか、それを必ず強制するというような発想は、もうやめるべきだ」という鋭い指摘がある。そこのところは非常に重要に考えなければならない。
3年前にアメリカで、プロダクティブエージングというテーマでパネルをやったことがあるのですが、向こうの社会というのはまた極端で、いちばん評価されたのはシルバー人材センターで、ほとんどの議論がそれに集中したと言っていいぐらいだった。月に同じ9万円のお金を貰うのにどこが違うのかと言うと、シルバー人材センターの場合は、すべて自分が主人で、配当を分けるという形になっていることであって、雇用関係、つまり、従属関係ではないというところに、非常に特徴があるのだろうという気がした。
アメリカは、国の年金は65歳からですが、企業年金を併せて、62歳ぐらいから貰うといちばん有利になるような仕組になっており、ほとんど62歳ぐらいでやめてしまう。再び雇用関係で働くというのは、罪とか犯罪というような感覚が非常に強いということを感じた。したがって、そこから先は自由に生きさせてくれというのがアメリカの社会だと思う。アメリカの社会だけが全てではないし、真似する必要もないが、肝心なことは、その雇用関係における60歳以上の設計ということだけを考えるのではなく、もっと広く、人間らしさということを中心とした広がりというものを考えておく必要があるだろうということが一つです。
もう一つは、1つの選択肢として、自由な選択肢の中に入ってくることまでを拒否するわけではないのですが、今の日本の、例えば退職金制度のあり方だとか、いわゆる肩書社会からの脱却だとか、日本はいま50歳から55歳のところが、賃金のピークになっているけれどイギリスやアメリカの場合、大体30歳から35歳ぐらいにピークがきて、あとは横這いかラッパ型に強烈に開く形になっている。そういった賃金体系の問題などを抜本的に変えていかないといけないが、いつもいちばん下のほうに付則的に話がくっ付いてきて、それで企業に今の60歳定年制と同じように、65歳までに伸ばしなさいというようなことで持っていこうとする。労働力の自由化と言っている反面、年功的なシステムをできるだけ企業に依存し、企業の懐の中でというものの考え方から、なかなか脱却しきれない。こういう両面があるような気がしますので、あまりこれを決めつけないでいただきたいということを申し上げておきたい。
○事務局:
最初のゴシックになっている点は、研究会報告として、それが最も、選択肢の一つとして重要であろうということから、ちょっと強調させていただいたところでございます。この3つの選択肢を含めて今後、労使の方々が入った研究会の中で十分検討を進めていただきたい。また、選択の問題、あるいは多様性の問題ということも十分念頭に置いた議論というものをさせていただければと考えております。
○委 員:
これから新しい制度なり仕組を作っていこうということですから、固定した考え方を持つ必要はないと思います。働く側からしても、働きたくないというような状況で、無理やり働かせるというのは問題だと思いますが、働きたいというような場合に、働けないという仕組を作ること自身も問題だと思う。これから企業側にもいろいろ考えていただくわけですが、現状制度の中ではそれは無理だなという状況だと思いますので、働く側に立てば、働きたいときにどういう労働条件の下で、どういう就業の仕方をするのかを考えなければいけないと思う。物事の断片的なところを捉えるのではなくて、60歳から65歳ということを念頭に置きながら、あくまで、労働者としては働く場所、雇う側とすれば、きちんと事業をやっていける方法があるのかないのか。そういったところの検討と具体策ということが極めて重要ではないかと思います。
定年ということには、必ずしもこだわらなくてもいいが、それぞれの企業において労使が合意すれば、それは定年でも問題ないのではないか。一律的に定年が良い悪いという問題ではなく、働きたい場合に働ける場所がある、それを準備する。そういった仕組を作ることがいちばん必要なのではないかと思っています。
○委 員:
21世紀の日本というのは、活力ある経済社会を取り戻さなくてはいけないということが一つの大きな命題だと思います。その中で秩序立った雇用、安定的な雇用というのは望ましいのですが、現状では、どうもおぼつかないのではないだろうか。いきなりアメリカ型、イギリス型になれということではありませんが、大きな変更を加えないと活力ある人材、特に若い人材が、創造性を発揮する意欲を持たなくなるのではないか。これは間違いがあるかもしれませんが、現在までの日本は、優秀な人材はどちらかというと大きな組織に入って、安定的な雇用形態が保障され、その中に安住しながらスモールスケールの競争をやり、勝った人が上に行き、負けた人は同じ組織に守られながら若干のフラストレーションを抱いて、定年までいるというような、活力をお互いに殺しながらやっているというようなシステムがあると思います。その中で「日本的いい雇用形態」をある程度保ちながら、若い人の創造性を出すというのはどういうことなのかということで、シナリオの最後のエージレスがあるのだと思うが、いきなりそこへ行くというのはできないことなので、2番目と3番目の中間に別のシナリオがあるのかと思う。例えば、30歳あるいは40歳でもいいのですが、そこまではある程度年功序列的なものを保ちながらそれから上はエージレスで、本当にエグゼクティブになるる人はどんどん、最近、企業で採用しつつある株のオプションというような恩恵にもあずかられる、生産性に結び付くような報酬を得る。そうでない人はそれぞれの専門で、それなりに満足した生活を送って雇用は保障される。30歳、40歳を超えてみんな同じということではなく、こんな差ができるというのが大体、活力ある経済社会のための前提だと思う。
そういうことが論じられないで、いきなりこういうシナリオ1、2、3というのはどうか。労働省の雇用政策というのはもうちょっと、21世紀を踏まえて、人口が減る、労働人口も減るといったような前提の下に、活力ある経済社会といったようなものを、また再生させるためにはいかにあるべきかという、こういう問題を取り上げるなど、そういう意気込みがほしいというような感じを持ったわけであります。
○委 員:
使用する側から見れば、定年という言葉を使うと、非常に負担との関係で抵抗されるというのはよく分かります。従来は、日本の雇用形態の中から言うと、定年50歳で、そこから先の余命年齢というのは非常に短くて、かなり早い時期に人生リタイヤしていったが、今の場合は全く違う。また、少子化の中で、これから若い人たちの雇用がどうなるか。
現役というイメージからすると、もうちょっと上までいってもいいという感じもしています。定年とリンクすると65歳という限定した年齢を出さなければいけないが、今の超高齢時代になってきた場合には、リタイヤ後10年、20年という余命の時代があるとすれば、60歳代は全部現役。それと、企業がどのくらい、定年年齢として抱え込めるか。そういう2つの組み合わせの中でやる必要がある。ただ、@ABのところがコンクリートだというのは、それぞれの立場でいろいろあるでしょうから、そこのところはもう少し弾力的に扱ったほうがいい。こんな感じです。
○事務局:
私どもといたしましても、この3つのシナリオがすべて、コンクリートしたものとは考えておりません。各委員から指摘がありましたが、これからの高齢化社会を考えた場合には、活力ある経済社会の維持と活力ある高齢化社会、というものを視点に据える必要があると考えております。
労働力人口の高齢化は、否応なく進んでいるわけですが、高齢者のそれまでに培われた知識や経験、様々なノウハウというものを十分に活かしていかないと将来にはつなげないということも事実と思っております。また、高齢者の場合には、ある一定年齢以上になると資産や体力など、個人差が出てくると思いますが、この個人差を踏まえて、働きたい人は働く、例えばシルバー人材センターなど、そういうようなもので働くということも、一つの選択肢になると考えております。そのような様々な雇用、就業の形態、労働時間などといったものを幅広く、いろいろな面から、この高年齢者の活用というものを考えていく必要がある。その中で65歳定年制というのもそのうちの大きな一つの選択肢であるというふうに考えております。
今後、65歳現役社会推進会議、あるいは労使の実務レベルの方に入っていただいた政策ビジョン研究会など様々な会議等を通じて、いろいろな方のご意見等を踏まえながら、日本の高齢化社会の中での具体的な高齢者対策、雇用対策をどういうふうに進めて行くかを考えております。
○委 員:
定年制というのは見方を変えれば強制雇用みたいなところがあって、できれば60歳代というのは、欧米流に考えれば、年金支給開始年齢までの間に自分が選択してやめていく、というのが理想的ですが、日本の企業というのは、高齢者をあまり使いたがらない傾向があると思います。高齢者の労働生産性は非常に低いというような発想がどこかにあるのだと思う。ILOが、高齢者の労働生産性は、使い方によってはかなり高いものがあるというような意見を出している。様々な仕事の場を用意して働いてもらえば、かなり生産性は上がるというような、いろいろな面から見た高齢者の能力についての考え方を労働省自体としても出してもいいのではないかと思います。そういう具体的な作業をもう少しやったほうが65歳定年制ということで、強制雇用みたいな雰囲気をあまり強く出すよりは、はるかに現実的で良いことになるのではないだろうかという印象を強く持ちました。
○委 員:
研究会報告書では、派遣があまり実績が上がっていないと出ております。制度が創設されて間もないこともあって、高齢労働者については、業種制限なしに派遣が認められているけれども、60事業所において実施されている。また、職業経験活用センターについては2カ所設置されているにすぎない、ということで、あまり実績が上がっていないということですが、その後、半年近くたっているが現状はどの程度なのか。あまり活用されていないとすれば、どういうところに問題点があるのか。
○事務局:
高齢者特例派遣制度におけるこの適用事業所の数は、この5月以降、そう多くは動いていない思います。高年齢者職業経験活用センターにつきましては、東京と福岡の2カ所で、この数も変わっておりません。
その背景、理由ということになりますと、今後もう少し勉強してみたいと思いますが、高齢者にとって、派遣自身がまだ制度として浸透してきていないのではないかと思っています。こういった制度を活用されるように、一層努力していきたいと思います。
○委 員:
派遣にしろ有料職業紹介にしろ、高齢労働者自由化していっても、民間企業にとっては、高齢者だと十分ペイする仕事にはならない。若い人だったら、民間は取り組めるのではないか。一律的なものの考え方ではなくて、多様な形態による雇用・就業の促進ということは非常に重要だと思うのです。その中の一つの選択肢がここにある派遣や有料紹介、キャリア活用センターというものだと思うのですが、これを企業の採算ベースに乗せていくということは、なかなか難しいような気がするのです。だとしたら、何かそれを手助けする道はないか、形を変えたものとして考えていく余地はないか、というような気がするのですが、ご検討いただければ有難いと思います。
○委 員:
日本の経済を支えてきた重化学工業の一番の中心課題は、50歳前後の第一の団塊の世代を60歳までどう雇用継続するかということが、人事労務担当者の最大の関心事ではないかと思う。昭和29年に厚生年金保険の年齢が55歳から60歳に繰り下げられた後、企業は、雇用延長や再雇用でなんとか55歳以降のところを雇用継続してきたと思うのです。それでこの雇用審議会でも、60歳定年が昭和60年にほぼ一般化されることになったと思うのですが、それでも、やっと今度の高齢法の改正で60歳定年が義務化されたが、結局40年近くかかっているわけです。今年金法改正で、2001年から2013年には65歳になる言っている。15年しかない。かなり時間がきついわけです。60歳代前半層をどうつなぐかというのは、問題の争点を少し分けながらいかないと、企業の苦しさがなかなか理解できないのではないかと思うのです。
そういうことでこの65歳の第2のシナリオ、きついように見えるが、これだって2015年ぐらいが目標の、少し長い目で見ながら段階を経て、両方に手当していく必要があるのではないか。こんなことを考えている。
○委 員:
今までの一つの仕組上定年という言葉があった。圧倒的企業内雇用ということからも。これからの社会が相当流動化していくという前提で考えたときに、「定年、定年」となぜこだわるのかというところが一つ非常に大きな眼目にある。前回もずいぶん議論したわけです。これから人口が減っていく、労働力人口が減っていく。その中で日本をどう活性化していくのかという意味では、国民総現役時代というようなものをつくっていかないといけない。65歳にこだわらないで、70歳ぐらいまでやったらいいじゃないかという意見に全く賛成です。現役社会というものをどう考えていくのか。相当大胆に発想を転換しなければいけないということになるわけです。そういう意味での新しい現役社会のあり方というものを大いに議論していただきたいということを申し上げているわけです。
3つのシナリオの真ん中のシナリオをゴシックで書く。こういう発想というのは、トロッコに乗せられていく可能性があるものですから、しつこく申し上げたまでで、定年、定年とあまりこだわらないような形。しかし、何らかの形で働く場所。これは企業と双方の意見が合わなければならないわけですから、そういうことを考えた現役社会について、大いに、議論していただきたいという希望を申し上げているわけです。
○委 員:
はっきりしていますのは、年金が65歳に繰り延べられ、定年制が来年の改正で60歳なる。この間の空白、経済的な生活の安定をどう保障するのかということが、差し迫った問題ではないだろうかと思う。働きたい人、また、働かなければならない人たちの場所をどう保障していくのかということをまず第一義的に考えながら、それ以外の人たちには、もう少し自由な選択があってもいいような制度を考えていくというように、唯一本で全部括るということではなく、もう少し幅を広げた角度から、検討してみる必要があるのではないかと思うのです。
○委 員:
一律定年延長をいま俄かに言っても、産業界はなかなか受け止め難いと思う。いろいろな雇用・就業形態、多様な形態を考えながら、雇用継続をどうやっていくかということだと思うのです。
高年齢雇用継続給付金もかなり利用され始めています。
○事務局:
高年齢雇用継続給付も、平成8年度で約30万人強が利用しています。
○委 員:
シルバー人材センターも含めて、多様な雇用・就業形態を構想しながら、事実上、収入の機会を保障する。フルタイムの雇用以外のことを考えないと駄目だと思うのです。
○事務局:
本日、皆様方から貴重なご意見をいただきまして、私どもはいろいろな観点から出てきたご意見を全部含めて、そういうものを出発点にして検討すべきだと考えております。
国際的に見ても、例えばデンバーサミットで、アクティブエージングというような考え方が出てきましたのは、21世紀になると、いずれの先進国も高齢化社会、超高齢化社会になる。そういう高齢化の中で元気な人も増えていく。一方で、今の制度でいく限りは社会保障制度の給付と負担の問題も避けて通れないという問題もある。そういう中で、65歳現役というよりは、希望する人については、人生、できるだけ現役がいいのではないか。そういう考え方が背景にあるかと思います。
日本の場合は、65歳の年金支給開始年齢が2013年。ここに重点が置かれ議論がされてきたと思いますが、それが重点であるということと、全体的な考え方をどうするかということと、両方あるのではないか。また、個々の実情から言って、高齢者の方は能力が劣るかというと、必ずしもそうでないという問題もあると思いますから、そういう実態の問題と、全体の考え方の整理の問題を幅広く、長期的にやっていくことが、非常に重要ではないかというふうに考えておりますので、そういう意味で本日のご意見、全部踏まえて検討させていただきたいと思います。
○委 員:
定年制という形で企業という共同体のようなものを、社員、会社側一体となって作ってやってきたわけですが、活性化のために、どういう雇用システムが、新しい進んだ、もっとドライで、契約型のシステムなのかというと、スポーツ選手の契約システムです。
入社のときに5年契約といって採用し、5年間にどれだけの仕事ができたか、どれだけの貢献度があったか、本人も居続けたいかどうか、ということを見て、5年後に次の5年を契約するかしないかというステップを踏んで行くというのが、本来の契約社会の契約のあり方なのかと考えたりする。今までの日本のやってきたこと、常識、慣行、風土からいって、そういうことはとてもできないし、マイナスも出てくると思う。
私どもは60歳定年でやってきているわけですが、60歳までというのは会社サイドに義務があって、社員サイドには全く義務のない、一方的なシステムです。途中でやめるのは自由、これは全く止められません。小さな会社でも、年収3倍で優秀な人を引き抜いていく。これを止められないのです。
定年システムというのは、どこからも引き抜いてこない人を最後まで会社としてしっかり雇っていかねばならないというような内容なのです。会社サイドとしてはそれに対して、いかにすれば優秀な人が引き抜かれないかということと、いかにして途中から同じように優秀な人、あるいは、それに準ずる人を入れていくかということで、補いながらやっていく。優秀な人だけで会社が成り立つかと言うとそうもいかないので、ABCDのランクが調和していくという形では、多数の人が60歳までは頑張ってくれるという前提で、会社サイドもプラスである、というような見方をしているわけです。
今後、日本の雇用システムの流動性の高まりが確実に進むとすれば、この定年制というのは、もっと強烈に経営者サイドに義務として加わるようなことになるのか、雇用の流動性というものとそれは矛盾しないのか、というような疑問を若干持ちながら、私自身は、みんなが長い間勤めてくれるような会社にしたいということでやっています。決して、定年制の否定論ではないのです。その辺の矛盾した感想をお汲み取りいただければと思いますが、それを法制で、もっと先まで、もっと先までと持っていくのがいいのかどうなのかです。
65歳定年というような発想は、年金の給付の年齢が上がるから出てきたのかもっと積極的な理由なのか。少子化で若い労働力がどんどん減り、労働力全体が足りなくなる、ということで「働く場を」ということであれば、仕事があるのに人が足りないというのは大変結構な状況で、65歳であろうが67歳であろうが、求人がある世の中ですから、何も規制をしなくても、会社が欲しがる時代になるのではないかなという感じもします。
○事務局:
従来と同じような意味で65歳定年という形での議論はされておりません。いまの雇用の流動化という側面においては、減少の賃金カーブより、フラット化ということがなされていかなければ65歳までの雇用延長というのは難しいだろうというような考えと、基本的に、能力主義的な傾向がもっと強くなるだろうということを前提としつつ、社会の活力をどう維持していくかといった場合に、高齢者の方々の能力もあるし、一方で、労働市場から引退された方々の負担のために、現役世代の手取り収入が減っていくような社会を作ってはいけないという、トータルとして、活力あるということで考えていかないといけないのではないか、ということで述べているところです。
年金支給開始年齢の引上げが契機にはなっておりますが、今後の少子・高齢化の中での労働力人口、高齢者も増える、一方で若年労働者が激減していくということも、一つの要素ということになっているところでございます。
○事務局:
さらに、今後の少子・高齢化という大きな枠組が一つあり、その中に企業側のいろいろな考え方もある。高齢者個人のいろいろな生き様、考え方もある。そういう様々な要素を踏まえつつ、しかも、21世紀へ向けての労働市場がどういうふうになるかということを見据えて、いろいろな観点からご議論をしていただくことが必要ではないかと思っており、国民的コンセンサスを作っていかないといけない。一方的に割り切ってできるという話ではなかなか難しいのはご指摘のとおりでございますので、私どもとしましては、皆様方のいろいろなお話を伺いながら、国民的コンセンサスが作れるような方向で、物事を考えていきたい。そのためにいろいろなご議論をお願いしたいというのが現在の考え方でございます。
○委 員:
定年制は必要だと思います。企業の社会的責任というか、今まで、年金とのリンクとかいろいろな部分の中で、そのものがどういうふうに整合されているかという、そういう役割を負ってきた部分もある。ベースの労働として、長期終身雇用というのはなくならないだろう。どんな企業でも残るし、流動的にいろいろ移動するという人たちもおられる。多様化の中でミックスがあるのですが、いちばん層の厚さの中で残るというのは、やっぱり長期終身雇用です。そういうことになっていったとき、企業が社会的な責任を果たす役割をどこで終わるのかということになれば、政府がやられているような部分との接点というのが必ず必要になってくるのではないか。定年制というものを全く検討に入れないで雇用問題についてやるというのは出来得ないだろう。ベースとして、そのことは考えておいてほしいと思います。
○委 員:
規制緩和小委員会では、いろいろな規制の話をやってきました。いろいろな決定をお上が決めてきた。なんでお上が決めるのか、要るか要らないかは我々が決めるのだからと、いくら言っても、「いえいえ」という話がずうっとあるわけです。それと同じことかと考えています。これからは、自由に動ける流動性が必要で、選択肢がたくさんあって、それを選ぶのは我々。働きたい人が働けるのもいいけれど、50で引退したい人は引退してもいい。一方で、そこを止めて全然違う所で働けるというような、いろいろな土俵がたくさん提供される、働くチャンスをどう増やすかということが大事なのであって、65歳まで定年を延長するという話は、今までの、フルタイムで一カ所に長く働き続けるのが正しい、由緒ある働き方だみたいなものが、また強化されるというような気がしてしょうがない。
今までみたいにお上が予防したり、保護したりということではなく、我々が決めるのだというところをしっかり考えなければいけないのではないか。国民のコンセンサスという話がありましたが、コンセンサスなんてこれから出ないです。これぞお上のコンセンサスですと、押し付けられるのはもうご免だ、という人たちが出て来なければ、私はおかしいと思っている。もう大きなお世話していただきたくないというのが、私の実感で、そういう人がたくさん出てくると面白い社会になるのじゃないかと思っている。
○委 員:
中小企業というのは、特に地場産業は、60歳定年制の問題についても、ようやく来年入って来る人たちもありますし、なかなかやれないでいる人たちもあるわけです。大企業の皆さん方と違った立場の中で、自分の社会的責任を粛々と全うしていきたいという思いを持ちながらやっているのです。それがまた65歳定年ということになってきますと、ただ単に、今までの60歳定年制がそのままの姿で、延長線上で65歳というふうに、一般的に取られるわけですから、もうこれ以上我々の地域の産業であるとか、労使の問題であるとか、あるいは産業構造等々について、手を入れてほしくない。地場産業は、その世界の中におけるあり方がある。地域の産業としての役割も果たすという思いを持ちながらやるから、これ以上はもう、65歳とかあるいは何々というようなことはご容赦いただきたいというのが、中小企業としては本音ではないかなと思います。
○委 員:
運輸産業は、企業からしてみれば、55歳でもいやがるという実態ですが、今はほとんどいろいろな意味で、60を過ぎてもなんでもない環境にあります。そういうことを考えてみた場合に、これからは少子・高齢化がますます進んで、若年労働力がなくなるということになった場合に、最も目先を向けているのは中高年、特に高齢者。これをどう活用するかということと、この世界にも女性に進出してもらうことをいま一生懸命やっております。そういう意味合いにおいても、定年制で何がなんでもがんじがらめにして働けというシステムは必要ないと思いますが、働く意欲があって働きたいという人に、門戸を開放してやる、入口を広げてやるということは、社会が作り上げていかなければいけないのかというふうに考えております。
○会 長:
それでは、これから「65歳現役社会推進会議」が1月から動き始めるそうですから、その中で今日の議論をいろいろ踏まえて、会議をリードしていただきたいと思います。よろしくお願いします。
次の議題は、先ごろ行われました神戸のいわゆる雇用サミットです。先月11月28、29の2日間にわたり開催されております。この会議の具体的な内容につきまして、事務局からご説明お願いします。
○事務局:
雇用サミットというご紹介がございましたが、毎年6月ごろに行われる先進国首脳会議でも雇用問題というのは重要な問題の一つでございますが、首脳の話をさらに雇用に関係する閣僚が突っ込んで議論をして、その成果を翌年のサミットに持ってきてもらうという役割を果たすのが雇用サミットと言われており、1994年にデトロイトで第1回目、96年にフランスのリール、そして神戸と3回目になります。
出席者は、今年から首脳会議にロシアが加わったということで、ロシアを加え、雇用と産業担当の閣僚をお招きしたということでございます。過去2回ともオブザーバーでILO、OECDの参加をいただいたわけですが、今回初めて労使の代表の方、使用者側は国際使用者連盟、組合側は国際自由労連の代表の方に会議の最初のセッションに参加していただいて、各国の代表と率直な意見交換をしたという、最初の試みがございました。
会議のテーマとしては二つ。Tは構造変化への円滑な調整の推進ということで雇用を創出するために、新規産業の活躍の場を広げる工夫をしようではないかというものです。雇用に直接関係するのは大きなテーマUで、「活力ある雇用社会(Active Working Society)」の実現というテーマでございます。社会を支える側の人をできるだけ増やそう、支えられる側から支える側に回っていただこうということで、その方策を、ライフサイクルに応じて、若年者の雇用、中堅層、高齢者の方と3つに分け、それぞれに雇用を通じて社会の活力を維持する側に回ってもらうための方策についての議論でございました。
議論を取りまとめたものが資料bSです。最初の6頁が会議の議論を取りまとめたものでございます。次に、付属文書でフォローアップ事業というのがございます。会議で得られた共通の認識、これをできるだけ実行に移していくときに、G8のどこかの国がイニシアティブを取って、共通認識をさらに深め、実行に移していこうではないかというようなメニューが6つほど出ているのが付属文書1でございます。
付属文書2は、国別行動計画です。各国が、今あるいは当面、雇用問題で一番大事にしている施策のメニューをお互いに出し合い参考にし、各国の一番重点に置いている雇用対策を会議の議題に沿ってまとめ、お互いに勉強し合おうというものでございます。
その意味で資料bSの1頁から6頁が結論にあたり、それのポイントを絞ったものが資料bRの1頁の「議長総括のポイント」です。
構造変化については、適切なマクロ政策とともに、規制緩和等の構造改革が必要であるということ。若年者の雇用については、学校から職場に移行する段階が一番大事で、その過程で、企業、教育機関、公共職業安定所の連携が必要であるということ。3番目の中堅層については、生涯にわたる教育訓練が必要であるということ。最後の高齢化については、多様な形態による雇用・就業の確保が必要であるというポイントでございます。
なお、来年の2月にイギリスで、同じく雇用サミットというのがございますが、マクロ経済に力点を置いた会議で、両々相俟って、来年のバーミンガム・サミットでの議論につながることが期待されております。
○会 長:
ただいまの事務局のご説明について何かご意見、ご質問はございますか。前回の会議でもこの切り口について、いろいろご意見を伺ったところですが、何かございませんか。
○委 員:
この会議を通じて、日本とヨーロッパやアメリカとの雇用に対する考え方の違いというものをどういう点でお感じになったか。参考までに伺いたいと思います。
○事務局:
議論の中でいくつか大事な言葉が出てきたような気がいたします。その一つとして、エンプロイアビリティという言葉を挙げることができると思います。
資料bSの国別行動計画の22頁にイギリスの行動計画というのがございます。その概要の4に、「英国として、雇用可能性、成長、雇用創出の柔軟さ及び社会的一体性の問題に対する新たな課題設定が必要である」とあり、この雇用可能性というのがエンプロイアビリティという言葉で、非常に手短に幅のあるエンプロイアビリティという概念を説明してもらっていると思います。そして、イギリスを代表してスミスという雇用教育訓練担当の大臣が、エンプロイアビリティの説明にあたりまして、「柔軟性があり、社会的責任を自覚した若者を育成する。これがエンプロイアビリティの中で一番大事である。あるいは、自動車の作り方を学習する方法を教えること、作り方そのものではなくて、学習する方法を教えることが大事である」というようなことを発言しており、かなり各国代表の共感を得ているような気がいたしました。
くい違いがどこら辺にあったのかというのとむしろ逆ですが、職業能力を相当幅広くとらえて、学習する能力、あるいは柔軟性、社会的責任ぐらいまで広げて、そういう能力を育成する。そういう意味での広い能力を育成することによって、雇われやすくする、雇いやすくする。そういう議論について、かなりの共感が得られたという点は、ご紹介させていただきたいと思います。
○委 員:
付属文書1、フォローアップ事業の(1)、(2)がベンチャーであるというのは、今後の雇用政策、労働政策にとって重要なポイントだと思う。このベンチャーというのが人材なのです。日本は、優秀な人、いろいろ考え巡らす能力のある人が、かなり官僚機構に吸い取られてしまう国です。
ピーター・ドラッガーが書いた本の中にもありますが、MITとかハーバードとかを優秀な成績で出た学生は、必ずしも大企業に入らないで中小企業に行く。あるいは自ら業を起こす。アメリカは、非常に労動の流動性が高い社会で、一度失敗してもすぐチャンスがある。セーフティ・ネットがあるわけです。
イスラエルはまた別の意味で、ロシアから比較的若い科学者、技術者が何万と移民で入って来ていて、その人たちにいかに職を与えるかということで、インキュベーターをたくさん作って、それに政府が30万ドルぐらいずつ渡して、2年間はむだ飯でもいいからやってくれ、そのあとは知らないよというようなシステムをやっている。そういう中で、ロシアから来た人材がユダヤ系で優秀なので会社を作って、それがナスザックに過去6年の間に、100社を上回るいわゆるベンチゃービジネスが店頭に公開されていて、みんな利益をあげている。
また台湾は、韓国と違って中小企業、ファミリービジネスが多いが、非常にベンチャーマインドに富んだ企業がどんどん出ている。政府、アメリカに留学してPHDを持った人を補助金を出して台湾に呼び戻して、その中小企業、ベンチャービジネスにはめていく。そういうことをやって、今やパソコンでは世界一。大変なノベーションをやっているわけです。
そういう例を見ていますと、日本の労働政策、雇用政策でも、このベンチャーが出てきたというのはまさに、ロシアを含めたG8、サミットではそういう意識が強い。労働省でもそういう意識はもちろんお持ちでしょうが、いろいろなしがらみ、制度があって、ベンチャーまでいっていないのではないかという感じがします。組合の方もおられますが、組合も活力ある社会を作って、雇用を増やしていこう、そして生産性を高めていこうと。少子化・高齢化で人口が減りますから、一人ひとりの生産性をいかに高めていくか、今までの制度では駄目だと思うのです。ベンチャーをいかに簇生させるか、これも重要な雇用政策ではないか。たまたまこれが1に出ておりましたが、なにか仕組を変えないと、いき詰まってしまうのではないかという感じがしました。
○委 員:
中小企業を調査していますと、結構、現場の熟練職人に中卒、高卒ぐらいで、相当の人が入っている。この人たちは割合に独立志向が強いのですが、なかなか独立できない。チャンスがない。こういう問題があると思う。その人たちは定年に近づきつつあるから、大変な問題だと思っています。
○委 員:
ベンチャーのエバルベーションとか、アメリカは個人でお金持がたくさんいますから、その人たちが投資するわけです。日本は土地本位制度でしたから、担保がないと金を貸さない。
○会 長:
そうですね。貸し渋りでますます困っている。
他にございませんか。今日は高齢者問題が中心でございました。神戸の雇用会議も高齢者問題がいちばんの柱だったと思うのですが、今後、高齢者の雇用・就業問題というのは、労働政策の中でも大変重要な政策の柱だと私も思っています。これはもちろん、産業の労使の方々の自主的な努力も大変必要なわけですが、この雇用審議会でもそれぞれ意見を出し合って、いい知恵を出して効果をあげていきたいと思っていますので、ご協力をお願いいたします。今日は大変長時間どうもありがとうございました。
(署名委員の指名)
次回につきましては事務局と相談の上、追ってご連絡いたしますのでよろしくお願いします。本日はどうもありがとうございました。
(注) | 本文中に記述されている資料については多量なため省略しております。資料についての詳細及び問い合せについては、大臣官房政策調査部総合政策課 03-3593-1211(代)までお願いします。 |